老人と海と蛸

紀藤トキ

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シナリオID:529

オープニング

 辺境都市の海は恐ろしい場所だ。切り立った崖からなる北方の海の冬場の荒れ方は言うに及ばず、比較的マシな岬の南であってもエーテルの乱れによる危険な生態が行き交う船に牙を剥く。だが、そういった場所だからこそ貴重な魔獣が発見されたり素材が見つかったりもするのだ。それゆえに、夢を追い求める一部の冒険者は辺境の海を目指す。後、一部の学者も。

「……まあ、獲れる海産物が美味しいって言うのも吾輩にとっては魅力なのじゃがな」
「おう、分かってるじゃねぇか!」

 わざわざ王国からやってきたという学者先生リヴァマスが言うのに、地元漁師は胸を張る。とはいえ、だ。この学者先生がはるばるやってきた目的を聞かされて、少し消沈してもいた。彼らが見つけたのは、多分この老人が望んでいるものではないのだ。

「ああ、この先は危ないんで少し船の中に戻っていてもらえますかね? あとは冒険者の皆さんに働いてもらいやす」
「うむうむ。吾輩は荒っぽい事の役には立たぬ故な。よろしく頼むぞ」

 そんな事を言って、老人を船内に誘導してから。船乗りは疲れた顔で語った。

「俺達が見つけたのは、あそこの崖の窪みにいる……たぶん大蛸なんだ。こう、凄く長い触手が襲ってきてな?」

 彼らの報告書に曰く、斧で叩いても切れないほどに硬く、太い紐状のものが船体に何本も巻き付き、ついにはマストをへし折られたので船を放棄して逃げた……。それを読んだ、王国の学者先生が「これはウミヘビに違いないぞ! 先日シーサーペントがカニ漁の現場に出たとも聞いておる故な!」と盛り上がってしまったのだ、という。

「いや、この辺だとああいう魔獣はそこそこいるからな。こんな沿岸近くなら、次から航路から外せばいい。いちいち退治するもんじゃねえんだ。ねえんだけどよお……」
「最初はいい金づるだし、適当に話を吹いて現物は見せずに帰ってもらえばいいと思ったんだがよ……。あの爺さん、人が良くってなあ」

 魔獣がいるなら、放置するより退治した方が良いだろう、依頼料は出すから見学させてほしい、などと言われてうっかり頷いてしまったのが運の尽き。依頼は済ませてきたぞ、とか。しばらく船を借りるのだからその料金も払わねばな、とかどんどん話を進められてしまったようだ。爺さん、押し強い。

「何とか、こう、いい感じに……、辻褄を合わせられないか今まで俺達も頑張ったんだ」
「老い先短そうなセンセイをあまりがっかりさせない感じで、こう……な?」
「他の場所ででっかいウミヘビもう一回くらい見つからないかな、とか他の連中にも話を聞いてさ……」

 だが、普通サイズのウツボとかウミヘビならばいくらでも用意できるにせよ、似たようなサイズの魔獣はさすがに都合よくは見つからなかったらしい。とうとう、そこにいるのがウミヘビではなく大蛸魔獣だと告げることができないまま、ここまで案内してしまったのだという。

「おーい、魔獣が動いたぞ!」

 マストの上の方から、見張りの声が響いた。蛸魔獣とは言わない辺りに、まだなんとか誤魔化せないかと言うそこはかとない期待が透けて見える。底が見える位に浅い海を、にゅるにゅると触手が伸びてきた。先日の船を相手にした戦いで人類恐るるに足らずとでも思ったのか、本体の頭部も岩場の隙間からにゅるりと顔を出す。

「これ以上、岸に寄せると座礁しちまう。ここで船は固定する。お前らは浅瀬に降りてもいいし、船の上で戦ってもいい。まずはあいつをぶっ潰してくれ! 爺さんの話はそれからだ!」

解説

 まだ寒い北の海辺で大きな蛸と戦います。 ●敵(大蛸魔獣)  単純打撃しかしてこないのですが、最大で8回攻撃してきます(攻撃回数自体が2~8のランダムです)。  攻撃が命中した時点で、束縛とスリップの複合バッドステータスを受けます。  解除する際は一つのバッドステータスとしてカウントします。束縛だけ、スリップだけと言う事は無いです。  海に引きずり込むこともできますが、捕まえたら締め上げるのが主な戦法です。  蛸の頭部は2m弱で、だいたい斜めになっているのでちょっと低めです。  触手はまっすぐ伸ばすととんでもなく長く、30m位あります。船に巻き付くことも可能です。  毒性はなく、吸盤はプルプルしており、弾力があっておいしいです(PL情報)。 ●船  すごく頑張って固定しているので、触手に絡まれても浅瀬に引っ張り込まれて座礁することは無いです。  触手でガンガン締め付けられるとそれなりに船は壊れます。  ただし、蛸魔獣の力で締め付けて壊すにはかなり時間が掛かるので戦闘敗北以外で沈むことは無いです。  舷側から浅瀬に飛び降りる部分は面倒なので特にアクションを消費しません。移動力1でOKです。 ●戦場  水深30cmほどの浅瀬から、すとんと切り立って水深10mくらいになっている都合の良い海底地形です。  浅瀬マスに侵入するとそのたびに移動力が-2されます。一マス移動するのに3使う感じです。 (飛んでいるときは関係ないです)。  頭部は船から20m程離れた岩場にあります。 「え? ここから出てきたの?」と言いたくなるような小サイズの穴から這い出てきたようです。  なお、卵とか伴侶とかのハートフル要素が巣に残されているようなことはないです。 ●その他  船長はシャルガネ出身で、船には醤油と日本酒が積まれています。  首尾よく退治した後は船の上で宴会でもしてお爺ちゃんを慰めようと思っている気配があります。  なお、触手の締め付け加減はあまりエロくない痛い奴です。

マスターより

見ての通りの単純な戦闘依頼です。 お爺ちゃんのお守までは依頼に含まれませんが、漁師の皆さんはそこそこ彼に懐いているようです。 皆さんの「冬場なのに海に入る依頼とかマスター馬鹿じゃないの……!」的な憤懣に満ちたプレイングをお待ちしております。 別にこの依頼のために水着イラストを発注してくれてもいいんじゃよ?(よくない)

リプレイ

「……さっむうううい!」
 寒空にシャロン・ラ・モリエールの声が響き渡った。いかに授恵者とはいえ、水着は無茶なのでは? と漁師たちも鼻の下を伸ばすより心配顔になっている。
「いえ、お洒落には忍耐が必要。これも水垢離と思えば……」
 きりりと引き結んだ唇は紫色だった。
「どうせならサウナの後……あれがいない時に入りたかったです」
 遠くの蛸影を見つつ、しょんぼりした様子のマリイ・パルティスも海へ入る組だ。水着という訳ではなく鎧をがっつり着込んでいる。
「マリイ、頑張れ! 後で毛布貸してやるからな!」
 声援を送るシュロは、今回のメンバー唯一のウォーリアとして船の守りに就いた。セリオス・オーガストも船上から弓で蛸を狙うつもりのようだ。
「え? 冬の海? 入るワケ無いじゃん……」
 言って、舷側から外を見て、キオルティスは身震いしながらマントを纏い直した。ナハシュとナハティガル=ラーの二人も含め、シーフトリオはお得意のフェザーステップで水に足をつける機会を最小限に抑える算段だった。まあ、移動を止めた時に浅瀬に降りる位は仕方がない。正面から冬の海へ挑む強者は嫋やかな女性二人だけだった。
「……風邪はひかないようにね?」
 驚き、口を差し挟もうか迷った様子だったイネス・エレディアだが、結果的に若者たちの決断を尊重することにしたらしい。ところで外見的には最年少に見えるイネスだが、こう見えて他の全参加者を合わせたよりも長い時を生きているエルフである。まあ村から出ることがあまりなかったにせよ、この長命のエルフをして――
「これだけ大きいタコ、これはこれで貴重だし見る人が見れば研究対象にはなりそうね」
 と言わしめる程度には今回の敵は大きい。

「おお、あれは蛸じゃな。これは随分大きいではないか!」
 専門は確かに蛇だが他の珍しい生物も嫌いではないと、リヴァマス老人は大喜びだった。シャロンとシュロは安全のために船員含め船内へ隠れて貰おうと考えたのだが。
「気持ちはありがたいが、俺達が仕事しないと船を止められないからな」
 蛸に浅瀬に引き込まれないよう、船員にはいろいろとやるべきことがあったらしい。
「吾輩は船内に待機でも、まあ仕方がないとは思うのじゃが……」
 そう口では聞き分け良く言いつつも、やっぱり未練のある目線をちらちらさせていた老人については。
「前に出ないように俺が注意しておこう。いざとなったら引っ張ってでも戻すさ」
「コルデラ、先生さんを守ってね」
 セリオスとマリイの狼のコルデラの二人(?)がお守りを請け負った。

●
 かくして、船が岩場へと漕ぎ寄せられる。
「皆様、頑張りましょう! 漁師の方々と美味しいお魚のために!」
 シャロンがレゾナンス・オブ・ヴァローで周囲の味方を支援。シュロは盾を手に船縁ぎりぎりに立ち、相手の様子を見て殺界を準備した。セリオスは甲板中央に構えている。
「よし、動いたな。……お先!」
 身軽に舷側を越えたナハシュが宙を駆け、伸びてきた触手へ死をもたらす斬撃を見舞った。エーテルがじくじくと纏わりつく。驚いたように引っ込んだ触手の先端が、そのままぼとりと落ちた。
「足が切れれば攻撃の回数も減る……言うほど簡単じゃないのかな?」
 ナハシュに続いたキオルティスが見るに、触手自体の能力は落ちていない。根から落とせば話は別なのだろうが、足の付け根を刺しに行くのはカウンターが怖い。
「傷がついているなら、そこから確実に行こうか」
 故に、ナハシュが狙った触手へと追撃した。他方、ナハティガルは蛸の左方へ走り、追ってきた触手へ連続攻撃を叩きこむ。
「海産物系と戦うのは三度目だが……どれもしぶとい。一筋縄ではいくまい」
 大鎧蟹に、同じ北の海での大ウミヘビ、そして今回と、体力自慢の大物ばかりだった。そういう歳の周りだとしたら、もしや次はイカか、などと思いつつ宙から浅瀬へ降りた。
「……まずは一本、落としておくぞ」
 船上から、エーテルを纏った矢が飛ぶ。セリオスの矢は過たず弱った足の付け根に刺さった。触手がくたりと項垂れる。三人がかりでようやく一本、と思えばかなり体力は高いようだ。

「行きますよ! コルデラ、後は任せましたからね!」
 覚悟を決めて海へ向かう主を少し心配げに見送るリボンの狼。浅瀬に降りたマリイは水を蹴立てて大きく左へ走る。蛸の目標を分散させる狙いなので、あまり離れすぎもせず、ほどほどの場所で矢をつがえた。こうしてみると、大きい。長い。そして、にょろにょろだ。
「……怖っ、悪魔がいるよ……」
 感想は、拾ってくれた師の教えによるものか。思考は現実逃避しつつも、手は慣れた通りに動く。狙うは頭と言いたいがまずは邪魔な足から。7本残る足の手近な一本へと撃ち込んだ。
「……効きはほどほどですね」
 魔弓に載せた魔矢は特別な手ごたえがあったわけでも無く、想定外に堅い防御に阻まれた感触もない。その前の男性陣の攻撃と比較するに、物理と魔法のどちらかに偏った防御力という訳ではなさそうだ。ただひたすらに体力は高そうだが。

 イネスも嫌々ながらも後を追う構えではあるのだが、まず最初に一仕事。自らの立つ甲板へと【濃煙炸弾】を射こんだ。
「うむ、煙……?」
「その中は少しは安全のはずよ、しばらくそこでじっとしていなさい」
 声を掛けてから、えいやと海へ飛び降りた。先行したシーフトリオは、蛸を中心に数メートル間隔をあけている、そのうち、ナハシュの背後になる位置へと足を進めた。

「蛸はああ見えて頭のいい生き物じゃ。それと、視野は広いが視力はそこそこらしいぞ」
 船上では老人がそんな解説を入れている。大蛸魔獣は自分に痛撃を与えてきた者を見定めて、にょろにょろと足を延ばしてくる。シーフトリオにそれぞれ1本、マリイへも1本。セリオスのいる船へは2本だ。残り1本はお休みらしい。
「来たな! よし、わたしがこの船を守り切るぞっ」
 ところがどっこい。触手2本が突っ込んだのはシュロの展開した殺界のただなかだった。離れた蛸の本体がびっくりしたように目を向ける。視線はセリオスからシュロへ移った。伸びてくる触手を盾で受け止める。痛みはさほどではないが盾を持つ腕に絡みつかれた。もう1本はシャロンの支援のお陰か空を切る。返す勢いで、エーテルブレードが二閃した。
「おお、うっかり船を切らないようにしないとな!」
 エーテルブレードの手ごたえの軽さに、そんな事を口にする。絡んでいた触手は往生際わるく彼女を締め付けているのだが、逆に言えば1本分は余計な事をされる心配をしなくて良い。もう1本はびっくりしたように引っ込んでいった。なお、シーフ三人は危なげなく回避。マリイには当たったのだが、幸運な事に絡みつきは逃れた。

●
 蛸の触手はそこそこの命中精度を持っていたが、シーフトリオは反応強化も使えばほぼ回避できる程度だった。マリイは若干当たる目が残ってはいるものの、半ば以上は避ける。レゾナンス・オブ・ヴァローの効果がなければもう少し分が悪くなっていただろう。イネスが撃ち込む攪乱射撃の効果も大きい。その間、船を狙う攻撃は防御に専念したシュロが防ぎ切った。シャロンが必要に応じて回復と解呪を欠かさなかったこともあり、今のところは危なげない。前衛の反応回避が切れるか、回避が切れるか、足が無くなるか。とはいえシャロンのヒールが尽きても幾人かは自前でヒールを持って来ている。持久戦の分は悪くない。

 ひとつ、変化があったのは、戦闘開始から一分も過ぎていない時期だ。
「……ん? 相手の攻撃が途切れたか……?」
 セリオスが首を傾げたのは、2本目の脚が落ち、隙を見て頭部を狙った矢が防がれた時だった。
「そうだなー。一息つけるのは、嬉しいぞ。攻撃したら反撃されるのかもだ」
 セリオスが有効打を与えられなかった時に、船への攻撃が無かった。天眼の使い手のシャロは俯瞰していたが故に、その関係性を見抜く。イネスも別の視点から気付いたことがあった。
「私が狙われていないってことは、やっぱり誰かの後ろから矢を撃つといいみたい……?」
 本来なら彼女に向くべき反撃がナハシュに向いていると彼女は理解した。イネス的には想定通りではあるのだが、その事を周囲にも伝える。
「なるほど。では……、私もどなたかの影に入らせてもらえますか?」
「もちろん。レディの為とあらば喜んで」
 位置取り的に、キオルティスがマリイへの射線を遮る位置に入った。
「となると、船の上から撃つのは避けた方が良いかもしれんが……」
「いえ! 今いる人は動かない方が良いと思います」
 シャロンが言う。せっかく勝てる流れなのだから、大きく崩す事もないだろう。

「なるほど、あとは時間との勝負という事か……」
 ナハティガルはクールに呟いた。初手で蛸の背面を取った彼はそのままヒット&アウェイ。側面に回ったキオルティス+マリイ、正面寄りのナハシュ+イネスがペアを組んだのに対して、行きがかり上孤独に戦っていた。一度、足に捕まってしまった時にはマリイが魔矢で援護して事なきを得ている。足が減ってきてからは危なげが無いのだが。そろそろ腰が冷えてきた。30代半ばの彼は、肉体年齢的にはパーティで一番上である。
「コルデラのもふもふ……」
 マリイの目が虚ろであった。北国育ち故に寒いのは耐えられるが、タコ足由来のぬるっとした海水が気持ち悪い。早く終わりたいのに、蛸の体力は無尽蔵にすら見える。よく見れば、最初にへたった足が復帰してきていた。
「だが、そろそろ頃合いだろう」
 ナハティガルが言う。じわじわ減らして足が半減したタイミングだ。敵の行動パターンを見切ってからは、強射を控えるなど反撃が船側多めにならないように調整していたセリオスがここぞとばかりに目に力を籠める。さっきと違ってフリーの蛸足はない。
「詰めに入るかい。それなら」
 キオルティスが、蛸へ縄を投げた。反対側を船へ託すべく、後退する。マリイの前衛には、ナハティガルが回った。
「……その目、貰うよ」
 怒りに燃える目でマリイが放った矢は、ガードがおぼつかなくなった蛸の片目を抉る。
「これでどうだ」
 直後、セリオスの放った矢が胴体にぶち当たった。奇怪な鳴き声を上げてのたうつ蛸が、逃げようとする。シャロンが光縛封で閉じ込めようとしたが、大きすぎて抑えきれそうにない。船に投げたロープが一瞬の時間を稼いだ。
「ふむ、しかし蛸はあれで賢いからのう。すぐに外されてしまうじゃろうな」
 解説役と化した老人がそんな事を言う。逃げるのが早いか、追い込むのが早いか。矢が刺さり、追いすがる短剣が表面を裂く。本当に体力が無限なのではないかと思ったところで、蛸の動きが止まった。

●
 寒い海での激闘の末、大蛸は死して食卓に上がった。
「……ふむ、あれだけでかいタコ足ならいろいろ食い甲斐がありそうだな」
 セリオスが口に出すまでもなく、戦士たちは既に二回戦(宴会)もやる気だ。
「こいつ美味えんだろ? シャルガネの酒とすげえ合うらしいじゃねえか。食っていいよな!!」
 とりあえず足の一本を回収してきたナハシュが言う。漁師たちも大型包丁を手に準備万端だ。あのサイズでは手が足りなさそうと見て、セリオスも解体に手を貸すことにした。陸の獣も海の魔物も、死んでしまえば大した差はあるまい。
(海の幸は食べたい……すごく食べたい。でも我慢よね。私はステイができる良い猫よ)
 シャロンは切り分けられていくタコ足を凄い目で見ていたが、途中で天啓を得た。大勢で調理すれば準備は早くなる。幸い、シャロンは調理に自信はある。申し出て、手伝う事にした。
「お魚……お醤油……この組み合わせは悪魔的ですね」
 なお、味見は調理工程の一つなのではしたなくはない。理論武装も完璧だ。
「これだけ大きいし、マリイっ。今夜はタコパーティーだな!」
 シュロは目をキラキラさせている。マリイの方は、さんざん自分に絡んできた触手に少し思うところがあるようだ。食べるの? あれを? と視線で語っている。
「中々の強敵でした。見た目も、以前本で読んだ海に住まうという天からきた異形の特徴と似てましたし……」
 老人の様子を見に行く素振りで少し、蛸から距離を取った。
「先生は恐ろしくなかったのですか?」
「いや、恐ろしいとも。巨大な怪物との遭遇じゃからな! 諸君らがおるから心配しなかっただけじゃよ」
 老人は食べる気満々だった。小さい奴は街で食べたが、どう味が違うか楽しみだなどと言っている。
「ワサビだっけ? アレも有れば最高なのにね?」
「通だなあ。悪いが持って来てねぇんだ」
 そう言うキオルティスに、船長が頭を下げた。いやいや、お酒の用意があるだけでも十分、と答えつつ老人の隣に座る。
「お爺ちゃんは日本酒、熱燗? それともぬる燗? ……まさかの冷?」
 と尋ねてみれば、リヴァマス老は日本酒の飲み方を分かっていない。教えているうちに刺身が出来上がった。
「へえ、これ生でも食べれるのか? そーゆー文化がある? それじゃあ試してみるか!」
 周りに聞いてから、シュロがさっと手を伸ばす。恐ろし気に見守るマリイの視線の先で、満面の笑みを浮かべた。
「あ、ちょっと安全な食べ物なのか私が確かめますからね。まずは心の準備を……」
「もぐ……うん、美味い! マリイ、これ美味しいぞっ」
「シュロちゃん先に食べっ……!」
「ほら、マリイも食べてみろ! 食べさせてあげるぞ。ほら、あーんだ!」
 微妙な葛藤を吹き飛ばすあーん。これは食べるしかない。
「んっ。……なんだか、あまい? それに不思議な食感で、美味しいですね」
「だろ?」
 と、どや顔の漁師。奥ではイネスが小さな口で感慨深げに頬張っている。
「東方の味付けかしら? 懐かしいわね……。あれは、何年前の事だったかしら」
 フィルエス大森林では中々巡り合えない物事に、冒険者になってから触れる機会は増えた。若返った気がしながら、もぐもぐと口を動かす外見幼女である。
「寒いですから少し揚げてみました。宜しければどうぞ」
 シャロンが持ってきた二皿目も、皆の手が伸びていく。漁師のおっさんは酒蒸しを作ってきた。ひとまず解放されたセリオスも飲み食いに加わっていく。
「ほう、刺身だけじゃないんだ? そりゃ凄いな!」
 ナハシュの酒も進むという物だ。ウミヘビは食えないけど、こいつは食えるから蛸の方が凄いんじゃねえか? と言えば。奥の方にいたナハティガルが神妙にうなずいた。
「……確かに。前に戦った蟹と蛸に比べてウミヘビは有用性が足りなかったな」
「ほう? 君は面白い話を知っていそうじゃな。少し聞かせてはくれぬかのう」
 老人に捕まって、なし崩しに宴席へ巻き込まれていく。キオルティスが歌う大漁の歌が北の海に響いていた。

マスターコメント

蛸美味しいですよね、蛸。 攻撃回数ランダムだけど、攻撃していない足は頭へのガードに回るので遊んではいない! という仕組みでした。 故に動ける足を潰していく皆様の作戦は有効とみて、急遽足の耐久力とスタンのルールを作った次第。 結果として、少しばかり長期戦になりましたが、その代わりに戦局は終始危なげなかったです。 リヴァマス老は大分類としては博物学者なので、冒険っぽければ蛇じゃなくても喜ぶ系の人なのでした。 多数決的に観戦を許してもらったのでお爺ちゃん大喜び。 漁師さんの悩みもなくなって、皆で美味しいお酒を飲めたことでしょう。 なお、称号についてはお揃いですが皆さまにそれぞれ付与理由をつけています。 ナレーションっぽく皆様の心の中で読み上げていってください。 でも、運営に止められなかったらセーフかなって思わないでもない、わけで。 若い人にはきっと、伝わらないだろうなって悲しくもある……わけで。 僕はただ、思いついたネタを勢いのままに書いちゃったことを恥じるしかない、わけで。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年02月08日 23時57分31秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. シャロン・ラ・モリエール

    シャロンです。ヒーラーです。 はじめましての方もそうでない方もよろしくお願いします。 水着が着られる上に美味しいものまであるなんて最高のお仕事ですね!(なお気温) とりあえずBS解除は持っていく予定です。 BSはエーテル的なのでなくて物理的なものなので、一応プレイングで触手を引っ剥がすような行動を入れておくほうがいいかも…と考え、一文添えておくつもりです。 それと、提案です。 私がやると水中戦ルール適用になってしまうのが不安ではあるのですが、近接にて触手の切断をやってみたいです。 攻撃回数の8はタコの足の数が8だからでしょうから、切っちゃえば有利になってくると思いまして。 みんなで1本ずつ足を集中攻撃したりしてみませんか? お爺さんのお守りは全員でやる必要はなさそうに思いますが誰もやらないのも不安です。 差し支えなければですが、やってくださる方の立候補があれば、お伺いしたいのですが。

  2. シュロ

    わたしは放浪騎士のシュロ。クラスはウォーリアだ! 今回はよろしくなっ。 冬の海を水着で泳ぐのか? あっ、そーゆー訓練か! でも皆でやれば楽しそうだな! どうやら今回のメンバーでウォーリアはわたしだけみたいだな。 よし、それならお爺さんとか船員の皆の護衛は任せてくれていいぞ! 効果があるか分からないけど【殺界】で近づく触腕を払いつつ、隙あらば『衝撃刃』で攻撃しようかな。 ペットにゴリラも連れてくから、この子にも壁役を頑張って貰おうかな?

  3. ナハティガル=ラー

    ナハティガル=ラー。 不意討ち暗殺何でもござれのシーフだ。 初見の者も、そうではない者も宜しく頼む。 俺はフェザーステップ+エアーライドで浅瀬に降りて戦う予定だ。 基本的にはヒット&アウェイで回避盾としてタコを攪乱しながら戦おうかと思っている。 >タコの足 確かに。攻撃回数が2~8なのは、タコの足の数が8本だからなのかも知れんな。 ならば俺もタコ足切断に手を挙げさせて貰おう。

  4. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず俺は船の上から射撃だろうか。 足が30Mあるということは6へクスぐらいか、射程は <それぞれ足を攻撃 まあ可能ならうちもかまわない。足が減ればその分攻撃も減るだろうしな

  5. マリイ・パルティス

    シュータのマリイと申します。よろしくお願いしますね。 そうですねぇ。攻撃も怖いですし、頭を攻撃するにも岩だけでなく足も使って妨害されそうですから、減らせれば楽そうですね。 私は切り落とすのが難しいので、その分援護や敵への妨害、隙を見て頭狙いになりそうです。うまく目とかを潰せれば敵の攻撃の精度も下げられそうですけど……さてさて。 護衛> 私の狼もおじいちゃんさんの護衛に付けておこうと思います。防御力はありませんが、最悪身を挺して守るくらいはできましょう。

  6. イネス・エレディア

    エルフのシューター、イネス・エレディアよ。 私も武器は刺突系統だから、足の切断を狙うのは難しいわね。 各種BSと【濃煙炸弾】で船員やヘルベルトが狙われないようにするのをメインにするつもり。 後は今回は回避重視にした方がいいでしょうし、【薄煙炸弾】も使おうと思っているわ。 撃つ場所はナハティガルの動きに合わせるつもりだけど、タコのいるヘクスから1,2ヘクス船側にいったあたりで問題ないかしら?

  7. キオルティス

    シーフのキオルティスと言うよ。キオでもルティスでもお好きなように。 今回は宜しくね。 俺もエアーライド駆使でタコの足切りはやってみようか、と思ってるよ。 タコ足が集まっていれば、範囲攻撃も含めても良いかもね。 あと少し気になるのは、タコ足の長さから行くと、1人1本でも良いけど 確実に1本ずつ落としていくのも有りかな~…と思ったりもしてる。 …その辺りどうなのかな… 太さ=強度じゃないとは勿論分かってはいるんだけどね。

  8. シャロン・ラ・モリエール

    タコ足切断案、乗ってくださる方はありがとうございます。 >刺突、打撃 このあたりはMS様判断ではないかと思いますねぇ……たしかに厳しいMS様ですと斬撃ではないと無効とおっしゃいそうです。 ただ現実のタコは驚異を感じるとトカゲの尻尾のように足を自切いたしますから、ダメージを与えるだけでもワンチャンあると思います。 それはそうと、足に集中して胴体を取り逃がす危険もあるため、バラけてくださるのは私としても願ったり叶ったりです。 >一斉攻撃 そうですね、足はある程度ターゲットをまとめていくほうが確実だと思います。 >お爺さん護衛 手を挙げてくださっている方がおいでですのでおまかせできたら嬉しいです。 よろしくお願いしますね。 >個人行動 スキルは解呪、ヒール。 全体バフのレゾナンスオブヴァロー。 足切断用に遠距離攻撃手段として衝撃刃(射程4)。 自衛用の反応強化。 タコが逃げそうになったら光縛封→みんなに合図して解除で一斉攻撃に…という組み立てでどうかなと思っています。

  9. ナハシュ

    シーフのナハシュだ。いや全然来れなくてすまねえな。 脚切断や1本ずつ落としていくのも賛成だな。落とすなら確実にぶった切りてえしよ。 俺も行動としては同じく、フェザーステップやエアーライドで前衛に。 基本脚を切るのに参加しようとは思ってるぜ。

  10. ナハティガル=ラー

    >イネス >薄煙炸弾 撃つ場所は了解した。タコのいるヘクスから1,2ヘクス船側で俺は問題ない。

  11. イネス・エレディア

    了解よ。 下がった位置にあわせてある程度はファジーに調整できるとは思うけれど、そんな感じでプレイングには書いておくわ。 明日の朝には出発、あらためてよろしくね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0