悪意は蠢く
弓月 蒼
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シナリオID:435
オープニング
リーンエス王国東方――――イグノ砂漠。
陽が十分に差し込む前。早朝の砂漠は凍てつく程に寒い。
そこは大陸有数の一大砂漠地帯である。
そこは蛮族と魔獣が闊歩する、人理不及の危険地帯である。
例えば、砂龍。例えば、大砂蟲。例えば、巨大蟻やその眷属。
国境線を実戦力を備えた貴族が守らなければ、とても人の領域など守れない魔境。
金にうるさい行商人でも、護衛を雇わなければまずそうそうは足を踏み入れない。
そんな場所に在って、その少女は1人で佇んでいた。
「さてさてさて。準備は出来ているけれど……何処から崩してあげようかしらあ」
声音は静かに。けれど奇妙に甘く、昏く、耳に残る。
装いは古い黒の盛装であり、露骨に場違いも良いところだ。
誰も居ない砂漠でなければ。例えば大都市の一角などであれば。
すれ違った者がまず振り返らずにはいられないだろう、一際目を引く金銀妖瞳。
奇妙な色彩の桜色の髪と良い、人目を惹くと言えばこれ以上派手な人種もそうは居ない。
そんな少女が砂漠という、砂一色の場所に立っているのは異常以外の何物でもなかった。
「まあまあまあそうね。まずはまずは小手調べからですわね。
弱い者いじめは貴族らしくありません。一人前位から始めましょう。名案名案名案ですわあ」
嬉しそうに愉しそうに、少女がくるくるくるくると舞い踊る。
貴族の夜会であればさぞ微笑ましく見守られただろう、古式ゆかしい完璧な舞踊。
けれどここは危険なイグノ砂漠である。繰り返すが、場違いも良いところだ。
例えばそんな幼くも無邪気な獲物が踏み込めば、一息に喰われて終わりである。
事実、少女が踏み込んだ場所は砂龍の縄張りだった。
とん、っとピンヒールが触れた地面が盛り上がり、鋭い牙が砂塵を吹き上げる。
砂漠に擬態していた砂龍の口腔は、既に少女をその捕食圏に納めている。
顎を閉じ、一息に呑み込む。それで終わり。呆気なくも哀れな犠牲者は消化されるのみ。
それは、事実その哀れな亜龍すらもが確信していた未来だった。
砂龍の全身が捩じ切れて、血溜まりに変ずる。その僅か一瞬前までは。
砂漠が赤黒い血に濡れる。どぼどぼと血液を供給する肉塊になった物体など一瞥もしない。
少女はただ虚空を見つめ。周囲を澱が満たしている事実を確認する。
「あらあらあら。服が少し汚れてしまいましたわあ」
残念、と言わんばかりの声色で。しょんぼりと肩を落とした少女が爪先で地面を叩く。
この世ならざる場所へ、一方的に送られる呼出状。
圧倒的強制力で以て世界と世界の間の狭間が歪んで捻れて切り換わる。釣り上げられる異界の獣。
それを正規の技術の最高峰――――近衛騎士エフレムであればどう称しただろう。
正道になく。外法ですらなく。そもそもが、現在体系化されている魔法とは異なる何か。
そんな道とも言えない道を辿って異なる世界へ干渉する……そう、いっそ邪法とでも言うべきか。
産声を上げたそれが、通ってきた扉を無理矢理に閉じられ狂乱する。
発狂寸前の飢えを肉塊と化した砂龍を喰い散らかして凌ごうとするも、その程度で賄える訳もなく。
「いってらっしゃい。頑張ってねえ。私の愛しい愛しい愛しい仔」
――――かくて、状況は次の段階へと進む。
●新年間近
時も新年間近となれば、行商人にとって大都市へ向かう理由は必要十分だ。
何せ年が明ければお祝いムードに誘われて、人々の財布の紐はこれはもう露骨に緩む。
で、あればこそ。その行商人は現時点で大陸有数の大都市。
王都『クランスパーダ』を目指して愛用の2頭建ての馬車を走らせていた。
彼はあまり商才に恵まれた人間ではない。まだまだ 若手ということでコネもなく。
一人でも虎口を凌げるようにはなったものの、年を越すに十分な貯蓄とは言い難かった。
その状況が一変したのは、ついの先日の事である。
王国北方で難民に襲われた一件を通して『同盟』の冒険者ギルドにちょっとしたコネが出来た。
これを最大限利用してギルドの仕入れに一口乗せて貰った直後、旧帝国国境で局地戦だ。
主に扱っていた物が保存食料であった事も幸いして、思いがけず大きな利益を得た。
彼は今、乗りに乗っていた。未だ嘗て無い大きな波が来ていると感じていた。
そんなタイミングの年越しだ。好機だ。これは好機に違いない。
先の一件で幸運を運んでくれた冒険者という存在に、験を担ぐ意味で新たに護衛も雇った。
準備万端整えて、さあ、いざ王都へ――――と、イグノ砂漠へ踏み入ったその時だ。
――――咆哮が上がった。
視線が上を向いた。つい一瞬前にはそんな物は居なかった筈だ。
蜃気楼か何かだと思い込もうとした。何せ、それは、どう見ても――――狂人が描いた鰐だ。
異形ではあるが鰐だった。水場でもなければ川辺でも湿地帯でもない。なのに、砂漠なのにだ。
その全長はどの程度だ。目算で……そう、ざっと見繕って、5m近い。体躯には無数の針が突き出す。
怪物だ。怪物以外の何物でもなかった。え? 何? 嘘だろ? と、脳裏を疑問符が駆け巡る。
でかい。生半可なでかいとかじゃない。でか過ぎる。頭がぼうっとした。
気付けば声を上げていた。それが自分の物だと理解するまで1呼吸以上の間があった。
悲鳴だった。矢も盾もたまらず声を上げた。新調した幌から冒険者が跳び出してきた。
さて。状況は分からずとも。砂漠に立ち塞がるのは5mの鰐だ。
行商人は悲鳴を上げ、馬達も完全に怯えきり竦んで足を止めている。役には立つまい。
そして最大の重要項目は――――件の商人が雇った護衛とは、あなた達である。
戦い突破する以外、選択出来る道は、最早無い。
つまり行商人と冒険者たちが新年を迎えられるかは、この一戦に掛かっている訳である。
解説
マスターより
リプレイ
依頼人から上がった悲鳴に冒険者が馬車から跳び出す。
ここまでなら、如何にも良くある光景だ。幾らかの仕事をこなした冒険者らにとっても平常業務。
今更珍しくも無い――――ここまでなら。
「おかしなこともあるもんですねぇ、砂漠に鰐なんて。しかもトゲトゲしてるし……」
「いや、え、ちょ、コレ、マジどこから出てきた!?」
けれど、あまりの事態に呆っとその敵影を見上げ呟いた、シャーデンフロイドはともかくとして。
『【秋祭】仮装コン優勝者』ルーズリーフにとっては、最早平常とは到底言えない。
何せ彼は“天の眼”を用いて周囲の状況を俯瞰的に警戒していた。その筈なのだ。
幾ら夜明けとは言っても、障害物もこれと言って無い砂漠で5m近い存在を見落とすなど考え難い。
もしも素面でそんな話をした日には、駆け出しを卒業したばかりでシーフ廃業である。
「おいおい……なんてサイズの鰐だよ!?」
「でかい……な。どこに隠れてたんだ」
そして状況は中堅に差し掛かりつつある冒険者。『首狩りの武』ケン・Z・ブラッドリーにせよ。
『義骸の無者』ヨル・スレイマンにせよ大差ない。鰐と言う生物の大きさで、5m弱は最大級だ。
こんな砂漠で、その巨体を維持出来る程餌が取れる訳もなく。遭遇戦を想定する方が無理がある。
普通に考えれば“居る訳がない”。そしてそんなものが実在する以上は――――
「まぢゅいでちゅね……これ、クリーパーでちゅ!!」
パティ・ポップの言に、ずっと悲鳴を上げていた行商人が遂に白目を剥く。
後ろから支える人間が居なければ、倒れたままその生には終止符が打たれていた事だろう。
「おい、あんた! 確りしろ!!」
『赤獅子』ハヤト=ガラン=ヴォルファングに身を揺すられ頭を振るも、前後不覚甚だしい。
独力での逃走は困難であると見て、嘆息一つ。如何にも大仰に啖呵を切る。
「ブレイブファング傭兵団が護衛してんだ! 絶対ぇ守り抜いてやっから安心して避難しときな!」
「いいいいいいやしかし幾らあんたらだってあんな、どうやって……!」
「血の匂い。腹ペコみたい、ですね……次はボク達。でしょうか」
「ひぃっ!?」
『斧戦士』ハルハン・ツァガーンナルが呟いた言葉に改めて上がる高い悲鳴。
怯え切った行商人にこれ以上関わっても仕方ないと、“傭兵団”の2人が互いに得物を携える。
とはいえ、この状況で淡々と戦闘態勢に入れる者ばかりではない。
むしろそちらがおかしいのであり、そうでない方が正常だ。
「鰐!? ワニ!? さ、砂漠に何であんなのがいるのよ!!」
「こんな所にあんな大物が……這者は突然出現するとは言っても、こうまで唐突なものか。
いや、そう言えば帝都の異変も……」
目を白黒させるエーリカ・アムブロシアを護る様に、一歩前に進み出ながら。
『獅子心』レイ・ロバーツが小さく独り言ちる。状況は違えど、何処か引っ掛かると言う様に。
「発生直後のクリーパーなら、エーテルを吸収させなければ勝手に居なくなる筈だけど……」
同様の感覚は『ベインシューター』シャトン・アルジェントも感じるところ。
けれどこちらはリーンエス王国出身と言うこともあって、より地に足が付いた違和感である。
砂漠に出る危険生物の話は聞けど、このサイズのクリーパーが闊歩していたら騎士団の出動案件だ。
おまけに王国はエーテルが肥沃で知られる土地。飢えたクリーパーならまず疑いなく人里へ向かう。
であれば――――或いは、本当に野良ではないのか。
「……! 来る……!」
然るにその猫耳のお陰ではなく。彼女が馬車の馬達を落ち着けようと感情を交感していたが故に。
動物特有の鋭敏な感覚が、鰐が巨体へ漲らせた殺気を誰より早く感知した。
声を上げた瞬間、砂が瀑布となり盛り上がる。動きこそ鈍重だが、大きさが大きさだ。
舞い上がる砂埃も馬鹿にならない。視が砂一色に染め上げられる。
「ぐ、う――――おおおおおッ!!!」
然して。冒険者側は未だ隊列すら敷けてはいなかった。
互いに前後衛の役割分担こそ決めてはいた。その通りに各人の立ち位置は分散もしていた。
連携が取れているとは言い難く。何より彼らは距離を“詰める”手段に欠けていた。
それは即ち――――この異形の鰐へ、攻撃権を譲るに等しい。
唯一、その攻撃手段を無数に想定し、その進路上へ割り込む意志を持っていたケン。
彼だけが鰐が口腔を開き、その鋸の様な牙を露わにした時真っ直ぐ跳びこむ事が出来た。
牙は最大限に開き、閉じる時最も威力を発揮する。そして敵は中型として上限域に居る存在なのだ。
大太刀を突き刺し支えとして、盾で一撃を抑えんと試みるも牙が喰い込む。鮮血が噴き出す。
「させない――――食べられるものなら食べてみろ!」
状況の推移を悟り、ツァガーンナルが咆哮を上げる。矛先を己へ向け、その進路を固定する。
視線を受けて踏み込むのはハヤト、パティ、そしてルーズリーフと続く。
「ナル! どー見ても硬そうだからな、気合い入れてかかるぞ!!」
「毒は効きまちゅかね! ぶっ刺すでちゅよー!」
「ウソだろ!? こんな仕事だなんて聞いてないんだけど!?」
冒険者は、思う以上に無造作に命懸けになる事態へ陥る。これもまた、一つの教訓だろう。
悲鳴じみた声を上げるルーズリーフの傍らで、ハヤトの二連撃が異様に鈍い音を立てる。
「―――――――、か、ッてえッッッ!!」
経験と言う意味では一党の中でも屈指の赤獅子が、余りの手応えの硬さに瞠目する。
その頑丈さたるや生半可ではない。苦い物を噛んだ様な声が漏れるや、すぐさま距離を取る。
その体躯へ放たれる無数の針。幾つかを避け、かわし、けれど全ては避けきれず血飛沫が散る。
「こっちは刺さったでちゅ!」
「いやいやいやいや無理無理無理無理」
パティが猛毒の刃を差し入れた一方で、ルーズリーフは尋常でない手の痺れに頬が引き攣る想いだ。
恐らく、ハヤトやパティで攻撃が通るが通らないか。これはせめて攪乱して時間を稼ぐ他は無い。
「だったらこれで――――どうだッ!!」
「AHHHHH!! そう、此方だ! 君を殺すのは俺達だぜ!!」
他方。物理的に硬い敵とあらば、戦士の一撃はこれを打破する為に在る。
レイの大剣が叩きつけられ、治療士にしては異様な膂力の持ち主であるヨルがこれを追撃――――した。
ケンに突き立てていた異形の鰐の牙が緩む。他とは異なり明確に“通った”手応え。
巨体の這者から不快気に見下ろされた獣の骨が、我が意を得たりと小さく頷く。
「おや。効くじゃないか」
「こいつ――――硬ぇが魔法には弱そうだぞ!!」
ヨルが漏らした呟きを拾い、ハヤトが周囲に発破を掛ける。
最大の問題は前衛の大半が魔法攻撃の持ち合わせがないことだが、こればかりは仕方がない。
「う、わあ……ちょっと、確り!! 死んだりしたら許さないんだからね! 分かってる!?」
愛刀を振って一旦下がったケンの傷を見てエーリカの顔が青褪める。
帝国貴族として荒事になど縁無く育った身だ。冒険者になったからと言って直ぐ慣れる訳も無い。
癒しの魔法が傷を消していくが、その間絶え間なく視線が泳ぐ。次は、誰が運ばれて来るのか。
「ほら、大丈夫、落ち着いて。下がれる?」
「まま、大丈夫ですよ。ドーンと任せて下さい。ワタシたち、とーっても強い冒険者ですから♪」
そんな最中にあっても気楽な声音を崩さない時点で酷く胡散臭いシャーデンフロイドが行商人へ。
動物慣れしているシャトンが荷馬へと向かい、混乱止まぬ依頼主を鰐の傍から遠ざける。
とはいえ街道から外れたら合流出来る保証もなく、この際街道を戻らない訳にもいかない。
震える荷馬を引いてゆっくりと距離を取ったシャトンが、響いた轟音に思わず振り返って見たものは。
振るわれた棘まみれの尾に薙ぎ払われる、仲間達の姿だった。
●漠砂の死闘
「なん……!」
間一髪で一撃を避けたルーズリーフが起きた出来事に目を白黒させる。
噛みつき、に比べれば大した威力ではない。依頼人が直接攻撃された訳でもない。
けれど、前衛がまとめて攻撃を受ける可能性など一体誰が想定したろう。騙し打ちも良い所だ。
――――いや。
「鰐なら尾ぐらい使うだろ……ん、なんだ。良く見れば本物の鰐じゃねぇなこいつ」
最初の手傷の回復を終えたケンからすれば、形状が見た通りなら無駄な備えなど無い。
例え空振ったとしてもする事は殺すだけ。ならば警戒と想定は敷いておくべきだ。
容易な相手ならばともかくも、大型間近のクリーパーを僅か十人で仕留める気ならば猶更に。
「まあいい、やることは変わらん!!」
パティが突き刺した後ろ足の刺し傷へ、真っ直ぐに大太刀を突き立てる。
確かに硬い。呆れる筋肉の厚みだ。が――――通る。斬り殺せない硬さではない。
「危なかったでちゅ、危うくちゅぶちゃれるところだったでちゅ」
これまた上手く攻撃を避けたパティが更に傷痕を広げている様は、見た目も相まってえげつない。
片足を抉られた剣山鰐が大きく呻く傍らで、手傷を負ったツァガーンナルへヨルが駆け寄る。
「傷を負ったなら、倒れる前に下がるのも仕事の内だよ」
「ありがとうございます。でもボクだって戦士です。一度皆を護ると決めたなら護り通したい」
かつて。初めての冒険では散々な目にあった少女も、既に幾度の戦いを超えている。
その眼差しを受けたヨルもまた、回復の光を翳して頷き返す。
――――戦いは持久戦になる。それは確信に近い直感だ。護り手は、多ければ多いほど良い。
「分かった。でも俺が此処に居る以上、誰一人倒れさせやしない。誰一人だ」
断言するその声に、ツァガーンナルが淡く笑った。そうであるなら、恐れる事は何もない。
「っ、一撃が重い……けれど、騎士は断じて背中は見せない……!」
「こっちだ、来い怪物! ボクはまだここに居る!」
合間を縫って噛みつきを引き付けていたレイと交代するツァガーンナル。
その間近を矢嵐が奔った。その幾つかは確かに鰐の鱗を射抜き、注意を散漫にさせている。
「何、正面向きなさい。ちょっとした小細工って奴よ」
真っ向勝負なんてやっていられない。と肩を竦めたシャトンに加え、依頼人の傍振り上げられる古杖。
「硬いなら解せば良い。料理と一緒ですよ、狩った獲物をお酒に漬けこんだりねぇ♪」
くっくと嗤って脆弱化の呪いを放つ姿は、ピカピカ新米冒険者と言うより悪の魔法使いにしか見えない。
シャーデンフロイドの呪詛が、剣山状の眉間の鱗をどろりと溶かすと――――
「こういうのを、待ってたんだよぉ――――!!」
灼熱する光を棚引かせたハヤトが両手の刃を弱った一点に叩き込む。
鰐が鬱陶しがるように頭を振るも、この一撃は流石に軽くない。一瞬身をふら付かせて頭部が下がる。
けれど、まだだ。
「GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
咆哮した。頭部にしがみついていたハヤトが振り落とされ着地する。
剣山の鱗を持つ異形の鰐は未だ健在だ。その事実に、漸く戦慄が伝播する。
(なーんか……ヤな感じですね、このコ)
こんな物が、こんな場所に。いや、それが何処であろうとほいほい出現する訳が無い。
シャーデンフロイドの感じた気持ち悪さは、冒険者全員の総意ですらあった。
●悪意は嗤う
そこから先の戦いは、これが泥沼であると言う他は無い。
「依頼人は、必ず護り抜いて下さいね」
「折れません。ボクの覚悟は、絶対に――――!」
盾となり、牙を、尾を、体躯に生えた槍の如き一撃を受ける者。
「オラオラァ! そんな攻撃じゃ千回やっても当たらねえぞウスノロ野郎!!」
「だぁもうっ! 無理に縋り付くなんて柄じゃないんだけどなぁっ!」
鰐の矛先を撹乱し、盾役が傷を癒す僅かな時間を稼ぐ者。
「大丈夫だ、まだ間に合う。いいや、間に合わせる……!」
「もう、もう……! 馬鹿! 無理ばっかして!! 怪我したら下がりなさいよっ!!」
癒し手に徹し毀れる寸前の命を、流血に身を染めながら繋ぐ者。
「あれだけ動くんだもの、退路なんか無いわよ! 的はデカいんだから当て放題でしょ!」
「人使いが荒いですねぇ、万が一の話じゃないですか♪」
依頼人の間近に侍りながら絶え間ない支援をとばす者。
「やばいでちゅ、エーテルが尽きそうでちゅ」
「自然の生き物じゃなくとも、生きてんなら首を狩れば大概は死ぬ!!」
冒険者たちは異形の鰐を斬り付けた。斬り付け、斬り刻み、痛めつけ続けた。
だが決定打が足りない。幸いだったことは、敵もまた冒険者を崩し得る術を十分備えなかったこと。
癒しの厚みが。盾に徹する者達の奮戦が。身を挺し撹乱に駆けた執念が。突き立てる刃の鋭さが。
狂える鰐を依頼人から遠ざける。数分と言う時間は瞬く程忙しなく過ぎ去る。そして――――
「いい加減……終いだ!!」
「死ぬ、でちゅ!!」
叩き込まれた大太刀の一撃。被せた短剣の一刺し。その手応えを確かめたその瞬間。
まるでこれまで相対していた物が陽炎か何かであったかのように。巨大な鰐はその姿を消していた。
「……やった、のか?」
不可解な事態にヨルの声音に僅かな困惑が混ざる。流石にそろそろ仕留められても良いはずだ。
そう思う一方で、ケンとパティの表情はどうにも不可解な色を滲ませている。
「消え、た……?」
それは、ツァガーンナルも同様だ。もう一撃受けたらまた下がらないといけないと。
そこまで覚悟していた彼女が対していた敵影は、呆気ないほど一瞬で溶けてしまった。
エーリカが半泣きで癒していたレイへ視線を向けるも、彼もまた頭を振るばかり。
「終わった……ん、だよな? 勝てたのか?」
ルーズリーフが視線を巡らせるも、誰も彼もが頭を振る。けれど生きた。生き残った。
「……――――めっちゃ強かったぁ……!!」
もう限界とばかりに倒れた彼の隣で、ハヤトが珍しく無言で強く眉を寄せる。
「何でも良いわ。良い加減水浴びしたいわね。尻尾もざらざらだし」
終わったとみて近付いて来たシャトンと、依頼人の荷馬車。
そしてシャーデンフロイドがおかしな表情のまま固まるハヤトへ首を傾げる
「何か面白い物でも見つけましたかねぇ?」
いつまでも楽しげな問いかけに、苦虫を潰したような顔で視線が向かう。
辺りは一面砂一色。激戦の跡が全て夢ではなかったことを示している。
けれど、ならば。だからこそ。こんな場所で、そんな物を感じたなどと。それこそ笑い話で。
「何でもねぇよ」
まさか言葉には出来まい。戦いの最中に――――甘ったるい、百合の香りがしたなどと。
かくて冒険者たちは本来の役目へ舞い戻る。悪意の痕跡は、舞い散る砂に呑まれ。
「くす。」
――――消えた。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準10 / 8〜10人
2021年01月08日 17時09分21秒 公開
参加者
相談掲示板
ボクはウォーリア。ハルハンの子、ツァガーンナルです 呼びにくいときは、ナルと呼んでもらえたら。 主にカバーリングなど防御主体の特性が多いです
ちゅーっ! あちし、パティ・ポップ。ちーフでちゅ。 よろちくでちゅー!
シャトン・アルジェント。 シューターよ。 何人かお仕事を一緒にした人もいるけど、よろしくお願いするわね
オレはシーフのルーズリーフだ。 戦闘だと超接近型の物理攻撃になるかな。 他にもシーフがいるみたいだから、合わせて毒攻撃しようぜとかなら装備スキルごそっと変更することも可能だ。 そんじゃま、このピンチ、頑張って乗り切りまっしょい!
末席をお借りします、キャスターのシャーデンです。 なにぶん新参者ですので、皆さんからお勉強させていただきますねぇ。 後方からバッドステータス系でご支援と、依頼主さんの保護を優先して余力があれば攻撃を……と考えている次第です。よろしくお願いします♪
おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、みんなよろしくな!! なかなかの強敵っぽいな! 俺も基本は近接攻撃しか出来ねぇが注意を引き付けとくくれぇは出来ると思うぜ!
ヒーラーのヨル。宜しく頼むよ。 個人の動きは前衛攻撃+回復が多いけど、役割は作戦に合わせて変えていくので。 >ラウンド中1回まで【防C】を発動 これが一番特徴的だね。高火力で殴らないとカウンターが入るって感じか。 そうなると理想は、これが発動できないくらいの高火力が出せる人が最初に近接攻撃して、回数を潰してしまうことかな。 でも相手の生命力と防御は高いみたいだから、火力で越えるのがそもそも無理の可能性もあるよね。 高火力単体攻撃も毎R2回ずつ入るのはなかなか大変そうだ。ある程度攻撃を受けるものがスイッチして、ダメージを分散させることも考えておいた方がいいのかも、と思う。
相手の通常攻撃の射程って幾つなのかしらね? まあ、弓レベルに遠くまで届くって事は無いと思うから、あたしは後ろの方からハーツベインショットと鋭射で削るわね あとは前衛が崩壊した際の抑え役って所かしら
ウォーリアのレイだよ、よろしく頼むよ。 前衛を務めつついざという時のカバーとして動いて行こうと思ってるかな。
ヒーラーのエリカよ、皆よろしくね! 私は戦闘は苦手だからみんなの回復や強化に努める事にするわね!
こういった純戦(?)初めてなんで、正直みんなの足を引っ張らないかが心配なオレ…… 一応ルール貼っておくなー。 【防C】: 防御宣言を行い、ダメージ判定を行う前にのみ使用可能。 使用者はその攻撃に対して【不壊】の効果を発動した上で、その攻撃のダメージ判定でダメージ値がスキル使用者の最大生命の10%以下だった場合は、攻撃者に通常攻撃で反撃を行なう。ダメージが10%を上回った場合や対象が射程外の場合は、使用回数のみ消費し、反撃を行うことはできない。 【不壊】: ダメージ判定の際に最低保証値を無効化する。
あと、連投でごめんだし、まだ来てない奴もいるけど、明日出発だし、一応確認しておきたいことがあって。 1.戦闘の方向性 かなりの強敵ってのは対峙した瞬間にある程度分かると思うんだけど、短期決戦を目指すのか、遅延作戦で敵が諦める・もしくは守るべき依頼人(行商人)を逃がすのを優先させるのかぐらいは決めておきたいかな、と。 2.依頼人(行商人)の護衛について どっちにしろ馬が怯えて動かないらしいんで、行商人1人で逃がすのは難しそうだよな。 一応今、シャーデンフロイドが保護(護衛?)に付くって言ってくれてるんで、ジリジリと距離離すように動いてくれればそれでいいかなと思ってる。 そんで敵は『移動可能距離は巨体相応に長い』らしいんだけど、幸い今回は接近戦型が多いから、接近戦仕掛ける側が注意を引き続けることが重要になるんじゃないかな。 場所は砂漠ってことで視界は良いだろうし、依頼人に付く人以外はなるべく依頼人から引き離すような立ち回りが必要かなって思ってるんだけど、何かもっと具体的にいい感じの案があれば言って欲しいかな。
>依頼人(行商人)の護衛について 馬もそうだけど、馬車もあるものね。命あっての物種と言えど、この辺全部守ってあげるのが一番良いとは思う。 なので 1.出来る限り依頼人側から引き離す(執着付与できる人がいれば尚良い) 2.無理なら馬車への侵攻方向を塞ぎ押し留める 3.それも無理なら依頼人を抱えてでも離れる って感じになるのではないかな? 俺は光縛封は持っていこうかなと思うので、万一2〜3の状況になった時に敵を閉じ込めて時間を稼ぐことはできる。 >戦闘の方向性 スキルには限りがあるので状況的に短期決戦はしたいと思うけど、敵ステータス的に長引くと思うね。 この場で目立つのは馬車だと思うし、此方のスキルが尽きると1が2に移行する可能性はあるので、「倒れないように防御や回復は徹底しつつ」「可能なら最大火力が出せる近接が最初に攻撃してカウンターを相殺」、ある程度どっちもやらなきゃいけない気はする。スキル数を考えると、できたら36Tより前に倒してしまうのが理想だよね⋯⋯難しいのかもしれないけど。 >光縛封 此方の回復が間に合わなくなった場合に、時間稼ぎで敵を閉じ込めてしまうのは考えてる。
戦場になる砂漠だけど機動性は下がるかもね。回避主体はもしかしたらキツいかもしれないわ。 岩石砂漠ならそうでもないんだけど、砂砂漠だと砂に足を取られる可能性があるわ。 砂浜ダッシュと同じようなもんだからね。 SPに余裕があれば、一般スキルの温度耐性を取得しておくのも環境対策になるわ。 砂漠で全力戦闘なんてしたら、暑さで参りそうだし。 馬は動物交感で落ち着かせて戦場から離れてくれるのが最善になるかしら。 誰もスキルで持ってないなら取得して、あたしがやってもいいわ。基本的に敵からある程度距離を取る以上、馬車の近くに居る事になるしね。
SPはありますが、ボクは位置的に馬車のケアは難しいです >足場 バランス感覚があっても、足を取られそうですね 足元は注意が必要そうです >戦闘 方向性は、短期決戦は、難しいと思います。けど、撃破しないと難しそうですね 安全確保を最優先に、撃破を狙う形、でしょうか……? 足止めと引きつけなら、ウォーリアの特性。殺界と、シーザーロアの執着を使えば、ボクも可能です ウォーリア全員が同じ構成になると、カバーリングなどが無くなりそうなので、誰が何を活性していくかは、示し合せておきたいですね 物理攻撃が通りづらい、との話なので、魔法や毒などで削るのが効果的でしょうね 物理攻撃は、防御力を下げるしかなさそうです 他、最悪、戦況次第では行商人の方を連れて離脱してもらう事も頭に入れておいたほうが良さそうです
顔出しができなくてすまん ウォーリアーのケンだ 戦闘スタイルは攻撃重視の近接首狩りスタイルだ ま・・・余裕があるからスキルは色々超デイできるがね どのみち撃破しなきゃ、いつかだれかに危険がつきまとうってんだったらっここで倒し切るつもりで挑むべきだろうな んで・・・長期戦か短期戦っていうならここは短期決戦で行くべきだろう 長期戦にしてもこちらの消耗が増える上に依頼人への危険が増えるからな
>【A】戦闘の方向性 見るからにつよそーですし、この場で止められるようであればそうしたいなぁ。 依頼人さんをお守りしつつ撃破を狙いたいものです。 望ましいのは短時間での討伐ですが、ヨルさんの仰る通り難しそうですねぇ。 「短期戦を望みつつ、長期戦を覚悟して、ここで撃破したい」がワタシの意見です。 >【B】依頼人(行商人)の護衛について 1.当初は「依頼人を馬車・敵対存在から離す」と認識してましたが、 「馬車・依頼人から敵対存在を離す」というかたちで相違ありませんでしょーか? ※敵対存在から我々依頼人&護衛組もサブアクションでジリジリ後退した方がよい? ※馬車も一緒に移動する場合ですが、おうまさんをうまく誘導できる自信がちょっとないですね。 2.依頼人さんの護衛について、ワタシの他、もう少し後衛の人手が欲しいところです。 ハルハンさんが仰っているように、状況を見定めて依頼人さんを連れ戦線を離脱する ことも頭の片隅に入れてもよろしいかと。 >【C】足場 ワタシ絶対ずっこけますねぇ……。 環境・移動対策のすべを持ち合わせていないもので、すみません。 ですので、【B-1】「馬車・依頼人から敵対存在を離す」の方がありがたいのかもですね。 以上を踏まえてワタシの動きとしましては、「馬車と依頼人を守りつつ魔法で戦闘に参加、状況を見て依頼人と戦闘を離脱する」でしょうか。
>馬車・依頼人から敵対存在を離す 行商人も馬車から離れるのは抵抗あると思うし、基本はこれでいいと思う。 もちろん依頼人側も離れられるなら離れる方がいいと思うけど、敵が『突然出てきた』のは少し気にかかるよね。離れられるだけ離れるよりは、手の届く程度の距離の方がいいのかもしれない。 依頼人のみ状況に応じて離脱は賛成。 >個人の動き 前衛寄りの中衛で前衛回復重視。前衛の消耗が間に合わなくなった時は一時的に前に出る。 光縛封は適宜。それ以外は攻撃に徹する感じで動くよ。
ギリッギリの顔出しになってゴメンよ。 んで、回答くれたヨル、ナル、ケン、シャーデンフロイドはありがとなー! >足場について んー……難しいとこで、メタい事言うんだけど、オープニングでも解説でも足場についての言及が全く無いので、多分深く気にしなくて良いんだと思う。 (PL:うっかりファンブルとか出た時に利用される程度のフレーバーじゃないかなーと……違ったらゴメンナサイ) 最も、プレイングに気を付けるとかいう一文があった方が心証は良いと思うんで、文字数に余裕があるなら入れて良いかも。 オレ自身は毒とか絡め手じゃなくて、接近攻撃あてていくことにした! 頑張って当てて、頑張って避ける!!