【聖祭】ご馳走がいっぱいある慰霊祭

岩岡志摩

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シナリオID:426

オープニング

●慰霊祭本番
 ロスガリア大陸に住まうものたちにとって、12月は大きな意味を持つ。この時期に執り行われる祭りや催しを、聖霊節と呼ぶ。
 その由来はハーフリングの英雄、ジド・ルウがその身をエーテルと成して世界に穿たれた大穴を塞ぎ、彼に小さな神々が続いたことが、今年までの平穏の礎を作った――という逸話に拠る。詳細な時期が定まっていないのは、この頃に暦が存在していなかったため、神代における『冬の時代』、という比喩的表現を、文字通りに解釈したためであるとされる。
由来はともあれ、ジド・ルウの英雄的行為を称え、名を失った神々に祈りを捧げることから始まった聖霊節は、様々な土地の風習や営為と重なった結果、亡き祖先や、近しい人々への思いを捧げることや、想い人と過ごす特別な時期――という習慣が定着して久しく、特別信仰心の無いものであっても神殿や家庭でモミの木や柊を飾り立てて祈りを捧げる。街をあげて催しを行い、厳しい冬の中でもとっておきのごちそうを食すこの時期は、収穫祭に続く特別な時節といえた。
 赤白の服装も今代まで続く伝統(テンプレート)の一つとなっており、そこかしこに仮装をした人物も目立つ。
 ――さて。今年も、各地で慰霊祭が執り行われようとしてた。

●あの村は今
 皆様は、猪肉が大量に取れすぎたので、腐らせないよう猪肉をご馳走へと変える依頼を出した村のことを覚えているだろうか?
 その村は山あいに位置していたが、山の幸が不足気味だったのか、猪達が村の作物を荒らすようになった。
 このため村人達は狩りの腕を発揮し、出没した猪達を全て狩ることで作物を守り抜いた。
 このとき得た大量の猪の処理に困った村は、冒険者達に手伝いを依頼した。
 このとき依頼に応じた冒険者達の尽力により、村人達は猪の肉を燻製にしたり、様々な料理へと変えることで、慰霊祭用のご馳走にと蓄えることができた。
 しかし話はこれで終わらない。
 山での不作が影響を与えているためか、今度は鹿まで村の周囲に出没するようになる。
 畑を荒らすなら、これを駆除する。
 それが村における山の動物たちへの対処の仕方だった。
 村人達と鹿との対決は、狩猟にも長けていた村人達のほうがその強さを発揮し、村人達は多くの鹿を狩ることに成功する。
 鹿の解体を進め、食べられる部位と利用できる部位へと切り分けていた村人達は、あることに気づく。
「これひょっとして、慰霊祭で食いきれる量におさまらないんじゃ……」
 以前依頼に応じた冒険者達からは、一晩その肉を赤ワインに浸せば匂いが取れ、柔らかくなるといった熟成方法や、香草(ハーブ)やチーズを使った料理など数多くの調理方法を教わっていたので、あとは調理するだけの状態に持ち込んでいる。
 そのため、鹿肉をそのまま腐らせるといった事態にはなっていない。
 しかし冒険者達の助力や指導によって完成できた猪の燻製肉は、寒風にさらされて程よく熟成し、そろそろ食べ頃を迎えている。
 順番から行けば燻製肉のほうを食すのが妥当であるが、鹿肉料理も捨てがたい。
「ちょうど時期的に慰霊祭だ。お世話になった冒険者の皆さんを、今までの恩返しも兼ねて村に招待してはどうだろう?」
 この村のまとめ役である老紳士が提案すると、反対する村人はおらず、話はまとまっていく。

●求む、腹ペコ冒険者
 そしてギルド支部へとその村の老紳士が到着し、依頼を出す。
「先日はお世話になりました」
 老紳士は以前猪肉を処理した件での感謝を述べる。
 冒険者達のおかげで村では料理の幅が広がり、日々の食事も改善され、大量のご馳走を得ることができた。
「今回ですが、お世話になった冒険者の皆様への恩返しも兼ねまして、村で作った料理を食べてくれる方々を募りたいのです」
 職員が事情を聞くと、どうも村では慰霊祭に冒険者達を招待したいというのが本音のようだ。
「村に冒険者の方々が着きましたら、慰霊祭という名目で食べ放題を実施します。お財布の心配は不要です。調理や片付けなども村人達のほうで全て行いますので、冒険者の方々にやってもらいたいことは、ご馳走を食べることのみとなります」
 そして老紳士は持参した紙を職員に手渡す。
 それは依頼を受けた冒険者であることを示す招待状が人数分と、どういう料理が出されるかといったメニューが書かれた一覧表だった。
「承りました。これは冒険者にとってはある意味メリーユールフェスプレゼント、というものになりそうですね」
 職員は集まった者らに招待状を一枚ずつ配りながら、楽しそうに笑う。
 ――ヒトノカネデクウメシハウマイ。
 ギルドの建物の中にいた人達は、ふとそんな幻聴が聞こえたとか聞こえなかったとか。

●食事について
 現段階で村のほうで用意できる料理は、ほとんどが以前この村からの依頼に応じた冒険者より教わったものが多いです。
 冒険者仕込みの燻製肉(ハム)も大量に作成できました。
 燻製肉ですが、村人達はそのまま切って網の上に乗せ、炭火で焼いて食べるのが主流のようです。
 なお鹿肉は冒険者の薫陶を受けた村人達が、赤ワインに漬けたりハーブを使用する等して臭みを抜いております。
 鹿肉の食べ方ですが、塩をふってステーキにしたものや、赤ワイン煮にしたものが食べられます。
 ハーブを使った煮込みスープという方法もありますが、現在村では野菜やキノコを具に添える方式が主流となっています。
 これ以外でも赤ワイン煮や鍋で溶かしたチーズをからめて食べるチーズフォンデュも、村人達は冒険者より学んでいるので提供できます。
 またデザートとしてリンゴやブドウが用意されています。
 飲み物としてハーブティや紅茶、ワインやエールが提供され、未成年の冒険者にはリンゴやブドウを絞った果汁ジュースが用意されています。
 お酒については成人の方だけです。外見年齢20歳以上でも、設定欄に「未成年」とある場合はNGです。

解説

●目標  村人達と一緒に慰霊祭を楽しむ  登場  村人達  以前猪の解体やご馳走に変える作業などで、冒険者のお世話になった人達。  冒険者達に感謝の念を向けており、今回は皆様をもてなす側として張り切っている。  燻製肉(ハム)と鹿肉  今回のヒロイン候補たち。猪の燻製肉は熟成され今が食べごろ。鹿肉は血抜きも終え、赤ワインに漬けられたり香草(ハーブ)にまぶされた肉の塊の状態で皆様を待っている。  燻製肉はそのままでも食べられそうだが、鹿肉は火を通す必要があるので炭火で焼くか、煮込んだものが提供される。  皆様が村人達に指示を出し、別の調理方法にすることもOK。  状況  ある山あいの小さい村。現地の時刻は正午で快晴。この村では山の幸と村の農地からとれる作物で生計を立てていたが、今回山の幸が不作だったためか猪や鹿が村の畑を荒らすようになり、そうした動物を村人達が狩っていた。  今は慰霊祭も近いので、その準備も進めていた。  皆様は既に村に到着し、村人達が全ての料理を提供できるだけの状態でスタンバイしているところからスタート。  新たに料理を教えるためという名目で、皆様が別の料理を作っても構わない。  その場合調理するために必要な道具や調味料(岩塩、胡椒、ニンニク、オリーブオイルなど)、付け合わせの野菜やチーズといった調理に必要なものや食材は、村で全て用意してくれるので、皆様が用意する必要はない。  ただしゲテモノ料理になってしまった場合は、製作者が責任をもって完食すること。

マスターより

 前回猪をご馳走にする依頼ではお世話になりました。  皆様のご指導とご助力により作成された燻製肉は、いま食べ頃を迎えています。  そして鹿肉も、皆様冒険者の薫陶を受けていた村人達によって解体され、食べられる状態になっています。  村人達はお世話になった冒険者の皆様に、慰霊祭の名目でご馳走を振る舞って恩返ししたいようです。  以前猪をご馳走にするためにご尽力下さった方だけでなく、冒険者であればどなたでも村は歓迎いたします。  ということで、ご馳走を食べて楽しんでくれる冒険者を、村では募集しています。

リプレイ

●集まる
 今年のその村での慰霊祭が例年と違うのは、先日村を助けてくれた冒険者達が来てくれたことだろう。
「この村で食べ放題かー、いいよねー……食べ放題……」
 アルマ・ヴァレンタインは以前この村の人達と共に、燻製肉作りを行ったり、料理を教えた1人だ。
 アルマはその村が冒険者達へご馳走を出してくれると聞き、今回の依頼に参加している。
「前にみんなで作ったり教えたりした料理のほかに、新しいヒロイン?(鹿さん)までいるんだねー……」
 村人達から出される料理の種類を聞いたアルマは、期待を高める。
「せっかくだからボクは思いっきり食い道楽するぞーっ!」
 アルマの宣言に賛同する冒険者は少なくない。
 ノノアとマシロ・ロスコも、アルマと同様この村が過去に出した依頼に参加し、ご馳走づくりに貢献している。
「村人達のご厚意で、燻製肉と鹿肉を食べれるのですね」
「おー、嬉しい依頼だと思えば前に依頼で行った村だったかー」
 ノノアとマシロは、今回村がご馳走を振る舞えるようになったことを純粋に喜んでいる。
「そういえばご一緒するマシロさんは鹿の半獣ですが、鹿肉を食べて共食いにならないのでしょうか……そこは少し気になりますわね」
 ノノアはそんな疑問と共に、マシロへと視線を向ける。
「久しぶりだなー。なんだ、またなんか食べきれなくなったのか? それなら喜んで……」
 そのマシロは、そんなノノアの疑問(?)に気づくことなく、村人達と談笑を始めている。
「うまいご飯を食べに来た!」
 ジョン・ベアーは村に到着するなり、そんな叫びをあげる。
「げに食べるだけ食べて帰ってええのか? 太っ腹じゃのぉ!」
 表向きは慰霊祭を楽しむという話だが、ジョンの言う通り冒険者達のやることは「好きなだけ食べる」ことがメインだ。
 ということでジョンは早くも食欲、もといやる気を見せている。
「……食べ放題、の村……ここ?」
 コハクはたまたまこの村に関する依頼を目に留め、参加を決めた。
 なにしろコハクは、よく食べる。
「今回は……ひたすら、食べる」
 コハクは目の前に料理を並べられたら、いくらでも食べられる。
「……問題ない。食べ尽くせる」
 ということでコハクはお腹を空かした状態で、食事会へと臨む。
「仕事でタダ飯とタダ酒が手に入るなんてなあ……いやあ、ありがたいねえ」
 ディレイン・オールドケイジも、今回タダで飲食にありつけると聞いて参加した1人になる。
「好き嫌いもないんで、味わいながらも腹に入るだけ入れたいところ……なるべくいろんな種類を食べたいよなあ」
 と言いつつも、ディレインは調理が得意でもないので、料理が揃うまでは待機の姿勢をとる。
「……そうだな、何かやって欲しいことがあれば起こしてくれ」
 そう言い残し、ディレインは建物の片隅で村より借りた毛布をかぶり、眠りにつく。
(クズ肉が申し訳程度に浮いているスープですら、故郷ではごちそうだったのに……)
 シャロン・ラ・モリエールからの視点では、今回食べられるものは本当にご馳走だった。
「今回のヒロイン(?)である猪肉や鹿肉に口づけしたい気持ちです」
 猫を被っているときの口調で、シャロンは今回の食材へ感謝を捧げる。
「まぁ賑やかし程度に幻影や手品を使っていこう」
 ティラミス・ノーレッジは今回食事の席で村人達を楽しませるつもりだった。
「飲み食いしつつ、オレも楽しみながら村の人達を楽しませていくぜ」
 そのためティラミスは村人達と交渉し、手品などに必要な道具になりそうなものを借りていく。
 ティラミスが準備を進める間に、追加の料理を提供しようと冒険者の中でも動きを見せた。

●調理する
 料理が運ばれる中、まずリリリリスが村人達に追加の料理を作ることを申し出る。
「食材、余裕があるようでしたら、私(ワタクシ)の手料理を出させて頂いてもよろしいでしょうか?」
 リリリリスの他に、複数の冒険者より申し出があり、幸いにも食材には余裕があるので、冒険者達の申し出はすんなりと受け入れられる。
「私が居れば、地味なお祭りも華麗に優雅に華憐な一時にしてあげますわ!」
 リリリリスは調理台の前で大見得を切ると、借りた調理道具を駆使して料理の作成にとりかかる。
「ふむ、これならぱ、レシピはいくらあっても、良さそうだ。私も何か簡単なものを、考えてみるか」
 サマエラ=フォリウムも食材を一通り確認した後、持参した鍋を取り出すと、ピュアウォーターで作成した水を鍋に張る。
「というわけで、鹿鍋だ。煮込みに近いが、これはスープも多めになるな」
 サマエラは調理スキルを活用しながら、鍋にキノコや野菜を投入し、村より調達したエールも使って旨味を追加していく。
「肉が硬くなり過ぎないよう、火が通ったあたりで塩で味を整え、完成だ」
 サマエラの鹿鍋が、だんだん形になっていく。
「おお、ついに猪肉の燻製や鹿肉が完成したのですね」
 フリーダ=ブロムヴィストは、以前この村が出していた燻製肉作成の依頼についても耳にしていた。
「啓示でも『肉を食べると元気が出るのでウマ=アジ』と出ています。ここは皆様のご厚意に預からせていただきましょう」
 フリーダは村の厚意に応えるべく料理を追加する側に回り、今は調理場で鹿肉を使った料理の作成に勤しんでいる。
「ここは鹿肉にチャレンジしましょう。料理は無難に赤ワイン煮込みを作ります。赤ワインは持ってきましたが、それ以外の煮込む食べ物に関しては村にある物を使います」
 持参した鍋や赤ワインも使い、村から融通してもらった食材を調理スキルで煮込み料理へと仕上げていく。
「俺は香草にまぶされた肉塊を融通してもらって、鹿肉バーガーを作るつもりだ」
 カイン・ステラは猪肉の燻製肉と鹿肉を借りると、調理スキルを駆使した包丁さばきで肉をスライスし、細かく刻み挽肉状にしていく。
「ミンチしたものを混ぜ、塩胡椒を加え、捏ねたら、焼く。焼きめがついたら水を入れて蒸し焼きだよな」
 カインは言葉通りの手順で粘り気が出るまで肉をこね、丸型状へと形成していく。
 できたところでその真ん中をくぼませてから、村より借りた底の浅い鍋を使い、手際よく焼いていく。
 焼いている間にカインは野菜や果物をすりおろし、香辛料や塩、オリーブオイルを加えたドレッシングの作成も行っている。
「貴族と結婚する(予定)アンゼリカに料理なんて必要ないけれど……でも、お世話になりっぱなしなのもカッコ悪いわよね……」
 アンゼリカ・ミケーレ・ラディーチェは、そのような動機で料理作成を申し出ていたようだ。
「みんなにいいところを見せるため一念発起。アヴェラに教わるわ……!」
 アンゼリカは自分の限界を理解していた。
「アンゼリカ、料理挑戦してみるの?」
 アンゼリカの元使用人でもあったアヴェラ・ウッチェロは、アンゼリカからの指名に応じつつ確認を取る。
(放置して村の方に迷惑かけるわけには行かないわ)
 そう自分を納得させると、料理の講師役を引き受ける。
「指を切らないように、食材を抑える手は指をしっかり曲げて。指は切らないようにね」
 大切なことなので、アヴェラは2度言った。
「だ、大丈夫よ! 猫? 猫がどうしたっていうの!?」
 アンゼリカはアヴェラより「猫の手の形で押さえて切るように」と包丁の動かし方を見せられ、包丁を持つ手を震わせながら、その動きについていく。
 一部「実習」も兼ねていたが、冒険者達が作成する料理は着実に増えていった。

●みんなで食します
 一部で調理は引き続き行われていたが、慰霊祭の名を借りた食事会が始まる。
 冒険者仲間に起こされたディレインも席に着くと、思い思いの姿勢でそれぞれ料理を口に運ぶ。
 言葉はなかった。
 冒険者や村人の区別なく、その大半が笑みを浮かべて頬が緩み、やがて皿の上は騒がしくなる。
「イノシシなぁ、自分で焼くと肉が固うていかんが、こうして調理されると美味いもんじゃのう!」
 焼いた肉の匂いの香ばしさといったら、耐え難いほどだった。
 ジョンは難しい食レポはできないので、その分料理をもりもり食べていく。
「祭じゃけぇな! 賑やかな方が食も進む。わしが!」
 ジョンの口へとものすごい勢いで料理が消えていくが、料理はまだまだ沢山ある。
 シャロンは……焼いた肉を食べながら、生まれて初めて雪を見たときのような顔で、空を仰いでいる。
「私、知ってしまいました……」
 お肉は焼きながら食べると美味い、ということを……。
 焼きたての燻製肉からは、時折脂がしたたり落ちて、じゅうじゅうと音を立てており、香ばしく焼けた表面はこげ茶色に輝いていた。
「いろんな味のバリエーションを、ひとつずつ順番に頂きましょう」
 その美味しさをかみしめながら、シャロンはゆっくりと食べていく。
 薄切りにして焼いた燻製肉で、野菜やチーズを巻いて食べれば、程よい塩味が素材の旨味を何倍にも引き立て、シャロンの舌に美味を広げるという贅沢の極み(シャロン談)。
「私ってば、はしたないことを……」
 ここでハッとしたような表情をシャロンが見せるが、何があったのかは不明だ。
「今回は食べ専だな、ノノアと一緒に飯を食べるぜー。種類は違うが同じ半獣同士、食事をしながら交流を深めたいなー」
 マシロも熟成された燻製肉や、鹿肉を網に乗せてはじっくりと火を通して食していく中、ノノアより「共食いにならないの?」と尋ねられる。
「……いや、俺は半獣だから問題はないぞ?」
 ――無いよな?
 ご安心くださいマシロさん。共食いにはなりません。
「それとマシロさんの腕やお腹は、私とまた違う感じがするので調査が必要かしら?」
 ノノアも燻製肉や鹿肉を食しながら、マシロにその腕や腹を触れることを打診してみる。
「腕や腹を触ってみたい? 別に良いがそれならノノアの尻尾も触らせてもらうぜ?」
 ――俺のと違いモフモフしてて手触りが良さそうだからな!
 それぞれの思惑が一致し、ノノアはマシロの腕や腹を触り、マシロはノノアの尻尾に振れる。
「まさにわたしと違った感触ね! もしかしてこれがムチムキという物なのでしょうか?」
 ――尻尾を触られるのは大丈夫ですが、少し恥ずかしい感じがしますわね。
 ノノアはマシロの硬い肌触りを楽しみながらも、内心の恥ずかしさを押し隠す。
 ある程度全員が料理を口にして楽しんだところで、ティラミスが「芸」を披露し始める。
「そんじゃ楽しむとするか! ショータイムってやつだな!」
 ティラミスは幻影を行使して幻を作り、手品スキルで村より借りた道具を使い、披露した「芸」が観客となった村人や冒険者達を楽しませ、食事会に賑わいを演出していく。
「うう、料理ってこんなに大変なの……? ワタシ絶対に、絶対に貴族と結婚するわ……!」
 この頃アンゼリカは包丁や食材相手に悪戦苦闘を続けていたが、見かねたアヴェラが助け舟を出す。
「アンゼリカはこちらを切ってくれないかしら」
 そう言ってアヴェラがアンゼリカに回したのは、切りやすい野菜の類だった。
 アヴェラの指導のもと、アンゼリカはどうにか野菜を切り分けて料理を完成させ、ようやくテーブルへと出すことに成功する。
 ティラミスが手品や幻影を駆使して村人達を楽しませている間に、アンゼリカも食事の席につき、料理に手を付ける。 
「お肉も果実も美容にもいいそうだし目一杯食べるわよ! 料理上手な人たちもいるみたいだし楽しみね!」
 そう宣言してアンゼリカは少しずつ各所の料理を皿に盛りつけ、食していく。
 アンゼリカが歯を入れるだけで、食した肉は弾けるように裂け、その美味を教えてくれる。
(結局過保護になってしまったわね)
 アヴェラはアンゼリカを送り出した後、残りの料理を完成させてから自身も食事の席に着く。
「これは普段なら豚肉を使うのだけど、今日は猪肉ね」
 アヴェラは村人達に特定の食材がない場合、代用できるものを教えていたが、程よく焼けた燻製肉を拾い上げると口に運ぶ。
 アヴェラの超嗅覚が燻製肉にまぶされた香草の香りを捉え、噛むほどに口の中に滋味が広がり、最後に飲み込むと肉の暖かさが喉から胸に落ちるといった具合。 
「この村には、初めて赴くが……食べ切れぬほどの肉、か」
 鹿鍋を作り終えたサマエラも鍋と共に参戦し、視界いっぱいに広がる肉の群れを見渡す。
「善いことだ、餓える心配無き日々は、安寧にも近い」
 そう言いながら、サマエラは空いた皿を片付けると、村の人々や冒険者へと鹿鍋を提供する。
「せっかくだから、ボクは思いっきり食い道楽するぞーっ!」
 ここで様々な形で調理された肉を食っていたアルマが、サマエラの鹿鍋にも目を向ける。
「せっかくだから今回のにゅーひろいん、鹿さん料理メインで食べてみようかな」
 なぜか「せっかくだから」と2度言ったアルマは、サマエラの鹿鍋を皿によそうと口に運び、周りの村人達も後に続く。
 サマエラの鹿鍋は、一緒に入れたキノコや野菜が肉に香りと味の深みをつけ、その暖かさと滋味がアルマや村人達の舌を喜ばせている。
「そして……食べ切れぬなら振る舞おうという心持ちもまた、ありがたい」
 自作の鍋が空になっていく光景を、サマエラは周囲の料理を平らげながら穏やかに見守る。
 ――ついでにボクのもう一つの胃袋を満たしてくれるゲテモノ料理があると言うことなし、なんだけどねー。
 まさかそんなの作るひといるのか分からないけどさ。
 鹿鍋を味わいながら、ふとアルマはそんなことを考えるが、アルマの期待(?)はこの後に叶えられる。
「私の自信作ですわ!」
 ドヤ顔とともに、リリリリスが「それ」をテーブルの上に並べていく。
 リリリリスの作成したのは、2種類の鹿肉料理になる。
 いずれもスライスした鹿肉と野菜をカットしたパンに挟み込んだものだが、リリリリス曰く「リリリリス特性」なるものもあるらしい。
「新たな味覚を求めた「リリリリス特性」料理も完成ですわ!」
 そう言ってリリリリスが提供したのは、見た目こそ先程と同じパンに鹿肉と野菜を挟んだものだが、調味料として香水(誤字にあらず)をふんだんに使っている。
 リリリリスのカリスマとメシマズスキルが合わさった時、何らかの反応を引き起こして完成した「リリリリス特性」料理が、アルマの目の前に鎮座した。
 匂いからして他とは一線を画す「特性」料理を、アルマはためらうことなく手に取り、口に運ぶ。
「すごい味だよ……もう一口っ!」
 どうやらアルマが持つという「もう1つの胃袋」の趣向に、「リリリリス特性」は合致したらしい。
 周囲の村人達がしり込みする中、アルマは「リリリリス特性」料理を消費していく。
「残ったら私が残さず食べて、持って帰るつもりでしたが、大丈夫そうですわね」
 「特性」料理はアルマによって片付けられていく中、フリーダ作成の赤ワイン煮が鍋と共にテーブルに運ばれてくる。
「啓示でも『一人より皆で食べた方が料理は美味い』と出ていますし、よろしければどうぞ」
 フリーダは最初から自作の料理が完成したら、村人や冒険者にも分けるつもりだった。
 さっそくディレインが、フリーダの作った煮込み料理を鍋から自分の皿へと盛り付けて食す。
「俺の嗜好だってことが前提になるけど、味や食感の具合なんかを伝えるよ」
 フリーダの赤ワイン煮は、そのほとんどが村で収穫されたもので構成されているが、塩や火加減といった旨さを決めるための調和がとれており、美味に仕上がっている。
「このあたりの料理も、冒険者から教わった調理法を試してるんだろ?」
 ディレインの指摘に村人達は頷きで応える。
「燻製肉についてはそのままでも美味しさを感じる事ができると思いますし。一通り食べ終わったら他の皆様の料理も見てみましょう」
 ここでフリーダも程よく焼けた燻製肉を味わいながらディレインの話に加わり、村人達へと助言を送り始める。
「それで色々改良できれば、俺の腹も役に立ったってことで、本当に心置きなく食って飲めるな」
 ――次回があるのを楽しみにしちゃうよねえ。
 ディレインは様々な料理を味わいながら、そんなことを考える。
「失敗した料理についても、何かできる事があるかもしれません」
 今のところ、そういった料理はほとんどないが、フリーダも手近な料理から手を付け、楽しみ始める。
「ほう、はんばーが? というのか。成程、手づかみで食いやすうてええな!」
 この頃ジョンは、カインの作成した料理に手を伸ばし、その食べやすさを称賛する。
「農作業中に気軽に食べられたらって思って、作ってみたんだ」
 カインはジョンの賛辞を聞きながら、村人達にも作り方を教えていく。
 実際ジョンや村人達が食したカインの料理は、こんがりと焼けた全体や噛んだ時に口に広がる肉汁の香ばしさもさることながら、肉を細かくしてある分、肉の旨味が感じられる一品に仕上がっている。
「あと、野菜嫌いの子供も食べやすいかなと。どうだろう?」
 実際カインの作ったドレッシングは村の子供達にも好評で、子供達は野菜にカイン作製のドレッシングを振りかけ、平らげているようだ。
「俺は村の人の料理も美味しくいただくつもりだ」
 ――いただきます、ご馳走様でしたは忘れずに。
 カインもまた他の人達の料理を味わっていき、ジョンはティラミスの「芸」を盛り上げようと、演奏スキルを駆使して周囲にあるものを打楽器代わりに使い、即席の音楽を添えていく。
「楽しんでくれたら何よりだ」
 ここで一芸を披露し終えたティラミスは拍手を受けながら、その場から退いていく。
「酒もつまみのチョコレートもあるし、この後は思う存分羽を伸ばさせて貰うさ」
 ティラミスは酒やデザートが用意されている区画へと足を進め、つまみとなるものを適度につまんでいく。
 チョコレートは高価なので村で用意できたのは少量だったが、その心地よい甘味がティラミスの舌に広がる。
 あわせてティラミスがこの村で作ったという赤ワインを口に運べば、ワインの濃縮した味わいや、微かに混じる苦みが、チョコレートの甘さを引き立てていく。
 冒険者達の多くが良い食べっぶりを見せる中でも、コハクの食べっぷりは圧巻だった。
「……焼肉、食べる。……鍋も、ご馳走」
 頬をぱんぱんに膨らませながらもぐもぐと咀嚼を続け、コハクは焼肉だろうが鍋だろうが片っ端から平らげていく。
 コハクの手はものすごい勢いで、料理を口に運び続けている。
「香り……よし。味も……なかなか」
 その舌は目の前の全てを味わいつくさんと、コハクの口の中でうねり猛っていた。
 周囲に並んでいた皿の上から料理が消え、白さを取り戻し、コハクがそれまで周囲にあった料理を全て平らげると、近くでその光景に圧倒されていた村人に尋ねる。
「……次の、料理……何?」
 コハクの体のどこにあれだけの料理がおさまっていくのか謎だが、コハクはまだまだ食べられるようだ。
 肉体の意志こそが、コハクの全てとなった。
 無限に見えた料理も次々と平らげられ、テーブルから消えていく中でも、冒険者と村人達の楽し気な喧騒は続いていく。

●また来年?
 そして村で用意された料理は、この日全て冒険者と村人達の腹の中へとおさまり、村の慰霊祭は大成功で幕を閉じる。
 今回慰霊祭のご馳走になった猪や鹿達にとっても本望(?)だろう。
 ごちそうさまでした。
 もしまた来年も、猪や鹿といった動物達が村を荒らしに来て、大量にその肉がとれたとしてもこの村なら問題ない。
 この村では冒険者が村人達に伝授した肉の加工方法や、調理のやり方がある。
 それらを活用すれば、村は動物達をご馳走に変えることができる。
 そして今回のように、冒険者達が村で得られた大量の肉や料理を、余すところなく食してくれるだろう。
 やはり慰霊祭は、みんなで楽しいひと時を過ごすに限る。
 もしかしたらまた次の慰霊祭のときも「冒険者達に食べに来てほしい」と依頼が出るかもしれないが……。
 それはまた別のお話。

マスターコメント

 村の慰霊祭をお楽しみ下さりありがとうございます。  今回はご参加下さったPC様がそれぞれの形で村の慰霊祭を楽しまれたり、盛り上げることに貢献して下さったので大成功と判定させて頂きました。  このたびはご参加下さりありがとうございました。  また機会がございましたらよろしくお願いいたします。
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:少ない14 / 4〜25人

2021年01月04日 16時02分49秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. リリリリス

    私(ワタクシ)ですわ!! 最近、また新しい味の開拓ができましたので 早速振舞わらせて頂こうと思っていましてよ! (スキル。メシマズ、ヨシ!)

  2. カイン・ステラ

    途中で送信したんで。 一旦やり直し。 カイン・ステラ。 せっかくなんで、鹿肉使ったハンバーガー作るかな。 食べたい人は、どうぞってところなんで、よろしく。 ニンジンとかの野菜も使うので苦手な野菜あったらごめんな!

  3. ディレイン・オールドケイジ

    ディレイン・オールドケイジだ。 特に何のゆかりもないが、飯と酒をくれるってんだ、行かない理由はないな。 あ、好き嫌いはないぞ。(飲み食い専門)

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0