【死軍】拠点攻略戦! ゾンビクリーパーを撃破せよ!

霧柄頼道

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シナリオID:413

オープニング

●
 漆黒が天を覆う深夜。闇の眷属が闊歩する時間の、シルトラース国境山中にて。
 突如、聞く者の背筋におぞけを催すような叫喚が夜気を裂き、次いで巨大な質量が、うなりを上げて振り回される。
 それは眼前にいたクリーパーを圧し潰し、岩肌へ張り付けた。
 その様子を窺っていたヤコブ配下の吸血鬼が、感心した風に声を漏らす。
「さすがはヤコブ様御自ら作り出されたゾンビクリーパー、そこいらの雑魚など問題にならん……」
 クリーパーを素体にゾンビ化させたその怪物は、まるで人間の頭部を肥大化させたかのような醜悪な姿をしていた。
 全身からは変色した人間の手足みたいな器官が伸びてゆらゆらとざわめき、それを乱雑に振るう事によって敵を無造作に叩き砕く。シンプルながら実に破壊力がある。
 と――ふいにそいつが吸血鬼の方へと頭を傾ける。乱杭歯の連なった口腔がぐぱりと開かれ、勢いよく毒のブレスが噴射された。
「むっ……」
 とっさに大きく真横へ飛びのき、回避する。するといつの間にか吸血鬼の後ろに迫っていた別のクリーパーがその直撃を受け――鼻につく腐臭を漂わせながら腐り落ちた。
「……強力だがこの通り、味方までも巻き込みかねない攻撃や、何より一晩中叫んでうるさいから、アジト内にはとても置けないのは問題だが」
 単独かつ離れた場所で警備させておく限りであれば、勝手に侵入者を始末してくれる。
 吸血鬼はゾンビクリーパーの仕事ぶりに満足して、踵を返した――。

●
「先日の死軍決戦、参加してくれたみんなのおかげで、ヴァイセントラフ砦は守られた! 本当にお疲れ様だ!」
 冒険者ギルドに集まる冒険者達を、受付の男が労っていた。
「しかし、首魁と目される吸血鬼ヤコブ・ヴィリアンを討つ事はかなわず、奴の勢力にも大幅に打撃を与えはしたものの、完全に壊滅したわけじゃない……」
 そんな折、冒険者ギルドには、帝国と王国国境の西側――小さな湖のやや東の山地にある人工洞窟に、ヤコブがこれまでの生涯で集めてきた宝物を保管しているという情報が伝わったという。
「現地の施設情報や敵の構成も詳しく分かっている。しかもヤコブ本人は不在ときた。この機を逃す手はない……このアジトへ攻め込み、連中の戦力をさらに削ぎ落としてやろう!」
 それに、かつてヤコブにやられた王国貴族や騎士団が、持ち去られた宝物などを取り返す機会でもある。
「もう一つ付け加えると、現在この洞窟は工事中だ。もし拠点としての機能が完成してしまえば、後々大きな脅威を及ぼしかねない」
 ヤコブの拠点を攻略する狙いは、二重三重にあるわけだ。
「敵戦闘員の主な構成としては、ヤコブの配下吸血鬼が六体ほどに、ゾンビが最低でも四十体程度。そして死霊ガーディアンが若干数に、ゾンビクリーパーがいくらかだ」
 解除が必要な罠はなく、解錠が必要な扉もさして存在しない。内部は広大だがそれだけで、至って単純な作りと言えるだろう。
「せいぜい通路、広間、吸血鬼用の部屋、宝物庫に使う小部屋が多少くらいだな。とはいえ守備している戦力はそれなりに精強なので、おおまかな予定としては昼から夕方くらいまでをかけて攻撃する事になる」
 今回このギルドで担当するのは、敵戦力の一部であるゾンビクリーパーの討伐である。
「ゾンビクリーパーとは、ヤコブが山地で襲ってきたクリーパーを返り討ちにし、それをゾンビ化させて蘇らせたものだ」
 防衛力の足しになればいいか、くらいのノリで作成されたものらしいが、元となったクリーパーが強いため、ゾンビ化してもその危険性は据え置き――否、種類によっては能力が噛み合い、より強化されている事もあり得るはずだ。
「俺達が相手にするのはそのうちの一体……中型クリーパーだ。吸血鬼によって支配されているとはいえ、こいつはその凶暴性から洞窟の外へ追いやられているも同然だという」
 洞窟へ直接踏み込んでの攻略は他の組に任せ、こちらは付近をうろつくクリーパーを倒し、仲間達がスムーズに侵攻及び脱出できるよう、援護する事が任務となる。
「洞窟突入組が敵を撃滅し、宝物を回収した後、ヤコブ一派に二度と洞窟を使わせないため、最後に洞窟を崩壊させる――全体としてはそういう流れになるだろう」
 さらにこの件に関してもう一つ、王国騎士団からの依頼が追加で寄せられている。
「過去、騎士団に所属する貴族家が、ヤコブによって家宝を奪われたため、取り返してもらいたいとの事だ」
 その家宝が洞窟のどこかの宝物庫に隠されているのは事前に判明しているため、見つけ出して奪回できれば、王国側に恩も売る形にもなる。
「どこの貴族家からの依頼かは、まぁ彼らの名誉のためにも詳細は伏せておこう。こなすかどうかはみんなの判断に任せる」
 首尾良くクリーパーを倒せてかつ、余力が残っているようなら、洞窟内を探索してみてもいい。
「その頃には洞窟内での攻防、制圧もひと段落しているだろうし、残っている敵への対策は最低限程度でいいかもしれないな」
 死軍決戦では砦を防衛するのがやっとだったが、今度はこちらからの反攻だ。万事うまくいけばヤコブを戦力的にも精神的にも、ぐっと追い詰める事ができるだろう。
「ゾンビクリーパーは手強いが、みんなならきっと勝てる。――頑張ってくれ!」

解説

●勝利条件  ゾンビクリーパーの討伐 ●ゾンビクリーパー×一体  暗褐色の人間の頭部に、無数の赤黒い人間の手足が頭髪の如く生え揃った姿をしています。タフですがスピードは鈍いです。  近接戦においては手足を振り回しての殴打や、少し遠くの敵には頭ごと転がって体当たりをして来ます。どちらも威力はそれなりに高く、強度低めの毒状態にして来ます。  たまに広範囲かつ長射程かつ高威力の猛毒のブレスを吐き、強度高めの毒状態にして来ます。  目や耳、嗅覚で敵の位置を把握します。  顔部分が弱点ですが、最初は手足の部位がガードしているため、防御力は高いです。手足を破壊できれば、補正つきで大ダメージが入るようになります。 ●場所  標的のゾンビクリーパーはちょうど緑の途切れた山肌を転がっています。見通しは良く岩も固く厚く起伏は少ないため、戦場に選んで支障ない程度に足場は安定しています。  ヤコブアジトの地層そのものはゾンビが手堀りできる程度の柔さしかないため、内部へいくらか攻撃を加えれば崩落させるのは難しくないです。  回収依頼で提示された家宝は、ヒューマンの犬歯の紋章が刻まれた白銀製の剣と盾と鎧兜で、武具一式を合わせるとそれなりに重量があり、洞窟内のどこかにある宝物庫の、頑丈な錠前付き豪華宝箱の中に納められています。 ●状況  冒険者側はゾンビクリーパーと互いに向かい合った状態で開始となります。  ゾンビクリーパーは基本的に一体で行動し、他の敵の増援もありません。撤退もしません。  洞窟へ入る場合、最終的には崩落させるので、目的を済ませた後は可及的速やかに撤収した方がいいでしょう。

マスターより

 霧柄頼道です。よろしくお願いします。  シルトラースの人達の怒りや無念も込めて、力を合わせて拠点を攻略し、反撃を成功させましょう!

リプレイ

●
「クリーパーをゾンビに……か。成程、厄介な存在であるのは容易に想像できるね」
「クリーパーもアンデッド化するものなのですね。――なんて、おぞましい」
 ユーリス・レインフォードやリュスィオール・ラ・フォンテーヌ達冒険者は、ゾンビクリーパーのいる地点へ向かう道すがら、恐るべき敵との邂逅に気を引き締めていた。
「とはいえ、此方は討伐を任された身だ。作戦の成就の為にも、怖気づいてはいられないさ」
「ええ。二重の意味で、このマテリアル界に在ってはならないものですわ。疾く誅滅致しましょう」
 ゾンビと化したとはいえ、クリーパーである事に間違いはない。世を蝕む存在をみすみす逃すわけにはいかない。
 やがて、標的のゾンビクリーパーが見えてきた。
 腐臭のような死臭のような、背筋をぞわりとさせる異様な臭気が立ち込め、神経をやすりで削るかのような咆哮があたりに響き渡る。
「……うっわぁ、不気味な感じ。あまり趣味がいいとは言えないよねぇ」
 トゥーリが身震いし、ナハティガル=ラーもまた、鋭く睥睨しながら皮肉げに呟く。
「化物を使って更なる化物を造ったという所か。――随分と良い趣味をしているな」
「でもこのキモい物体を倒せば、ヤコブは泣く。たぶん」
 クー=ウィッシュはヤコブへの嫌がらせになるなら、敵が途方もなく不気味であろうと構わず相手取る心づもりだ。
 バンビも任務を達成し、ヤコブのプライドを完膚なきまでに打ちのめすべく、気合を入れて進んでいる。
 ゾンビクリーパーの側も冒険者達の存在に気が付き、ゆっくりと視線を向けると、濃い黄土色に染まった双眸をかっ開き、空間を震わせる雄叫びを張り上げた。
「このクリーパーには人の魂が無理矢理入れられているんですよね。一刻も早く解放しましょう!」
 それを開戦の契機とばかりにトーラが杖を構え、精神を集中させ――!
「しょっぱなから思いっきりいきますよ!」
 数瞬の発光とともに噴き上がった魔力が、杖の先端より放出された。
 ゾンビクリーパーの叫びをもかき消さんばかりの轟音、そして山肌を揺るがす衝撃を伴い、巨大なエーテル光波が迸る。
 敵は手足を前面に集めてガードの体勢を取るが、タイダルストリーム2は表面部分を守る手足をごっそりと吹き飛ばし、その巨躯をも震撼させてのけた。
 トーラの脇を抜け、ナハティガルが地を蹴って突っかける――!
「ちょこまかと動いてくれるなよ? ――我が縛糸の針で影ごと縫い止める」
 仲間とは散開するように側面へ回り込みながら、赤光のエーテルを纏わせた得物でもって、駆け抜けざまに一閃する。
 うごめく手足は見た目より脆いのか、一振りで数本切断できた。汚液と腐肉が飛び散る中、敵も緩慢に振り返るが、その頃にはナハティガルは攻撃範囲外へと飛び退っている。
 一方、クーは無言でゾンビクリーパーを眺めていた。
 それにしてもほんとキモい。キモすぎる。キモいの一言に尽きる。
 人の頭部っぽい外見。わらわらうごめく気持ち悪い手足。かっ開かれた目玉。裂けたような口元から覗く汚い乱杭歯。このエグいセンスたるやである。
 元々こんな姿だったのか、それともゾンビ化した事でより冒涜的になったのか。こんなのを好んで守りにつかせるとは、吸血鬼は正気度も負の値なのだろうか。
 とはいえ。
「灰は灰に、塵は塵に、ゾンビはゾンビに……じゃなくて土に還る!」
 キモさ程度に萎えるようではタンカーは務まらない。クーは駆け出すや、変色した舌を意味もなくレロレロしている敵の眼前へ仁王立ちし、シーザーロアをぶちかます。
「えっと、キモーパーだっけ? まぁいい。かかってこい」
 襲い来る手足の束。質量の暴力に吹き飛ばされないよう、角度をつけた盾で受け止めつつ衝撃を流し、返す刀で大剣の斬り上げをお見舞いする。
「やはりゾンビというだけあって、知能そのものはゼロに等しいようですね」
 手足を振るうゾンビクリーパーを、一歩引いた後方から観察するグレイブ・ヤード。
「目の前で動くもののみを攻撃する習性。迂回するとか、無駄だからやめておこうとか、そういう理性はないという事でしょう」
 しかしそれだけであれば、わざわざ吸血鬼も単独で守備につかせたりはしないはず、と分析を続ける。
「単純だからこその脅威を、まだまだ隠しているようです」
 そこで言葉を切ったグレイブはおもむろに腕を差し伸ばし、癒しの光をクーへ撃ち込んで回復させた。
 全体の状況を把握し、なおかつサポートは欠かさない。一度戦線が崩れれば、そのまま押し切られてしまう可能性とてあるのだから――。
「こっちこっち! 相手になるよ!」
 一方でトゥーリもゾンビクリーパーへ接近を試み、鼻先で軽快に駆け回って注意を引く。
 このゾンビクリーパーに関しての情報は、ギルドなどで聞いたもの以上はなかった。
 つまり実際の実力は、こうして交戦しながら測るしかない。トゥーリは俊敏に立ち回って攻撃の機会を窺いつつ、先ほど敵が見せた攻撃についても推測した。
 知性はないが本能は戦闘に向いているというべきか、手足を器用に振り回しての殴打は強力だ。
「一発が大きいタイプかぁ……できれば短期決戦で決めたいな」
 至近距離に居続けるのはなるべく避けたい。近すぎない位置から隙を見て魔矢を放つ。
 発射されたエーテルの矢はゾンビクリーパーの手足を撃ち抜き、地面へ叩き落とした。
「奴は目でこちらの位置を把握する……それなら死角から……!」
 ユーリスはクーやトゥーリが最前線を張ってくれている間に、背面側へ回り込む。
「まずはこの障害をどうにかしない事には、始まらないか……」
 背面部にもみっしりと手足が密集し、特にその指先は薄気味悪くわさわさしている。
 ユーリスは腰を落として引き寄せるように槍を構え、エーテルを纏わせた。
 気合一声。枝葉を打ち払うが如く横一線に薙ぎ、うごめく手足を切り裂く。
 同時に注ぎ込まれたエーテルが、手足全体の防御力を低下させてのけた。
「正面戦闘となれば、工夫を介在させる余地はあまり無さそうですわね」
 小細工無用。攻撃は最大の防御。これはそういう類の戦い――リュスィオールは最大射程ギリギリのポジションに立ち、仲間とも距離を離した上で、意識を研ぎ澄ませた。
 味方前衛がゾンビクリーパーと密着状態にあるため、今範囲攻撃魔法を使うと巻き込んでしまう恐れがある。
「氷の矢よ……!」
 よって選んだのはフリーズボルト。掲げた杖先より冷気を宿す魔力の矢を発射し、ゾンビクリーパーの横っ面へ撃ち込む。
 氷の矢は敵の手足によって打ち砕かれたが、触れた部位から見る間に凍てつかせ――その重量に耐えきれなくなった手足の先端からバラバラと落下して砕け散っていった。
 緒戦はこちらの作戦通りに推移している。だが、敵もまた全ての力を見せてはいない。
 冒険者達はそれぞれの役割に注力しつつ、戦いはさらに過熱していく――。

●
「呪われし我が血と刃 その身に刺し穿たん――侵食せよ……!」
 ナハティガルは不可視のエーテルを纏わせた暗針をひらめかせる。
 敵の側頭部めがけて突き入れたその一撃は、邪魔な手足を斬り散らし、切断面からも痛烈な毒を染み込ませていく。
 開戦後いくばくかの時間が経過したが、このように戦況は冒険者側の優位に傾いている――。
 矢先だった。敵がやおらに口を閉じ、ぷくーっと頬を膨らませる。
 眼球が標的を見定めるかのように、ぎょろりとこちらを睨み据え――ナハティガルはとっさにその場を離れつつ警告を飛ばす。
「何か来るぞ、避けろ……!」
 直後、敵は大口を開き、濁った暗緑色の毒ガスを大量に噴出した。
 距離を取っていた冒険者達はからくも直撃を免れる事ができたが、常に前へ出ていたクーがその渦中へ飲み込まれてしまった。
「……くっさ」
 真っ向からまともに毒を浴び、あまりの激臭にも耐えかね、倒れこそしないもののさすがにがくりと膝が折れる。
「わわっ、大丈夫!?」
 すぐさまトゥーリが駆け付け、治癒にかかった。
 手のひらから暖かい光を与えると、活性化した抵抗力が体内の毒素を消し去り、クーの顔色はみるみる良くなっていった。
「毒性のみならず、威力そのものも相応に高いようですね」
 続いてグレイブも、ヒール2をクーへ飛ばす。状態異常もそうだが、ブレスそのものによって蓄積されたダメージ自体も、回復させなければいけなかったのだ。
「ですが、彼女がこうして壁役をしてくれていたおかげで、被害は最小限にとどめられたと言っていいですし、ブレスを吐く直前の兆候も覚える事ができました」
 奴はブレスを吐く時、頬を膨らませつつ標的の位置を見定める。その刹那を見逃さなければ、今後も対処していけるはずだ――。
 お返しとばかり、クーがエーテルをまとわせた大剣を振り下ろし、ゾンビクリーパーの手足を数本斬り飛ばす。
 トーラもまた杖を掲げるや、周囲に無数の光弾が出現する。
 それらは猛禽類よろしく、上空から狙い澄ますように旋回しながら上昇し――。
「そのガード、崩します!」
 叫ぶと同時、光弾が一斉に降り注ぐ。流麗な軌跡を残す一発一発はゾンビクリーパーの手足一本一本へと精密に着弾すると、先端部や関節部を派手に吹き飛ばしていった。
 リュスィオールも目まぐるしい戦局に合わせて巧みに立ち位置を変更し、静かに魔力を解き放つ。
「不浄を押し流してさしあげます」
 杖より極太の水流が射出され、一直線上の空間を貫くように、ゾンビクリーパーまでまっしぐらに奔る。
 激しい水圧が敵を叩きつけ、もはや半分以下にまで減っていた手足を、この期に及んでなおも乱雑にちぎり飛ばしてのけた。
「もう少し……最後の一本まで排除してしまおう」
 ユーリスは如才なく踏み込むや、槍を振りかざす。
 残る手足は迎撃するかのように持ち上がるも、ユーリスは渾身の力を込めて斜めに振り下ろし、それらを一息に叩き落とした。
「これで丸裸も同然……ここから畳みかけよう」
 不快な腐汁とともにちぎれ飛ぶ手足の先から現れたのは、身の毛もよだつ醜悪な造作の顔。
 後はこれを破壊すれば、きっと勝利できる。冒険者達は最後の詰めを行うべく、一層戦意を奮わせた――!

●
 その後さらに冒険者達からの攻撃が積み重なり、ゾンビクリーパーを追い詰めていく。
「――成程。分かりやすい弱点だ」
 ゾンビクリーパーの激しい反撃に対し、落ち着いて回避に徹していたナハティガルが、その合間を縫うかのように巨大な顔面へと突撃する。
 袈裟懸けの斬撃を浴びせると、敵は顔中から腐液を噴き出し、耳を塞ぎたくなるような声量でわめいた。
 トゥーリもスピードを活かして寸時に切迫し、間髪入れずに斬りつける。
 その瞬間敵が、もぞもぞと身体というか頭部をうごめかせた。嫌な予感がよぎる。
「転がって来るよ、躱して!」
 倒れ込むみたいに横合いへ離脱すると、直前までいた場所を、戦車の如く敵が転がっていく。
 そしてその射線上には、ちょうどトーラも立っていた。轟音を伴い、視界いっぱいに迫る質量。
「当たるわけには、いきません!」
 対するトーラの姿は、残像を残してかき消える。アクセラレイターだ。
 トーラはゾンビクリーパーの駆け抜けたすぐ後方に現れながら構え、光球をぶっ放す。
 その魔弾は敵の不意を突く形で勢いよく後頭部を穿ち、巨体を大きく揺るがせる。
「避け損ねたか……すまない、治療を頼みたい」
 直前のラウンド中、猛毒のブレスを受けたためによろめくユーリスが治癒を請う。
「謝られる事はありませんよ。元々毒の状態異常がある事は、承知済みでしたし」
 グレイブがただちに駆け付け、抵抗力を増幅させる作用のある光を与える。おかげでユーリスを蝕む苦痛は次第に和らぎ、再び戦線へ戻れるようになった。
 そうしてクーが、魔弾を受けて吹っ飛んできたゾンビクリーパーを唐竹割りに叩き斬る。
 続けざまに近づいたユーリスも、敵の視覚を弱らせるべく、眼球へ槍の穂先をぶち込む。
 引き抜いた槍を追うように、潰れた右目からは滝のような腐った血液があふれた。
「これでお眠りなさい……」
 リュスィオールがエーテルを燃焼させ、増幅した魔力を生成した氷の矢一点へ収束させる。
 大きく杖を振るって撃ち放つと、フリーズボルトは吸い込まれるようにゾンビクリーパーの眉間を射抜く。
 敵は瞬間、氷結したかのように凝固したかと思うと、直後には内側から弾け飛ぶみたいに、粉々に砕け散ったのだった。

●
 あのゾンビクリーパーには、人の魂が入れられていた。怪物を作るために、罪のない人の命と尊厳が確実に一つ、弄ばれたのだ。
 トーラはせめて、その人の魂に冥福があるようにと黙祷する――。
「そう言えば。余力があったら、と言う条件付きで探し物を頼まれていたな」
 ぽん、と手を叩くクーに、リュスィオールも頷く。
「家宝の回収でしたわね。確か武具一式だとか。……私の嗜好をくすぐるものではございませんが、戦道具を尊ぶ価値観は十分理解の範疇にあるものですわ」
 他の者達もめいめい、ヒールで傷の回復をしたり、毒を治したり、道具の用意をしたりと準備を済ませた上で、さっそく全員で洞窟内へと踏み込む。
 光源としてはトゥーリがエンライトを使用し、耳を澄ませて注意深く宝物庫を探していく。
 罠や潜伏している敵を看破するため、トーラが探波を適宜用い、慎重ながらも思い切って進んだ。
 洞窟内の敵は他の突入班に任せたいが、それでも時折、進路上でゾンビに遭遇してしまう。
 そんな事態ではユーリスやバンビが攻めかかり、手早く始末してのけた。
 宝物庫と思われる部屋をあさっていると、ついに頑丈な錠前付き豪華宝箱を発見する。
「罠の類は仕掛けられていないみたいです」
 宝箱を調べ、トーラが報告する。開けた瞬間爆発したり、毒ガスが噴き出したりする事はないようだ。
 トーラとナハティガルの二人がかりで解錠された宝箱の中からは、壮麗な白銀製の武具一式が顔を出していた。
「……ヒューマンの犬歯の紋章? これがそうか」
「目的の品ですね。安全に運ぶためにも収納しておきましょう」
 宝箱ごと数人で持ち上げ、そっとグレイブのマジカルポケットへ入れる。
 周辺から戦闘音はしなくなっているし、そろそろ崩落作業が始まる頃かも知れない。
 冒険者達は踵を返して宝物庫を出て、足早に洞窟を脱出した。

 こうして冒険者達の活躍によりゾンビクリーパーは倒され、ヤコブの拠点も破壊が完了。
 奪還した家宝も、ギルドを通して依頼主の貴族家へと無事返却された。
 後にギルドへは、その貴族家から謝礼のみならず、直々に感謝状が届いたという。
 やはり家名を明かされる事はなかったが、この功績や名声はじきに王国に広まり、冒険者ギルド全体への評価や信頼が、ぐっと高まる事だろう――。

マスターコメント

お疲れさまでした。 ゾンビクリーパーを打ち砕き、貴族の家宝までも無傷で奪い返し、みなさんの連携はお見事でした! さんざん拠点を荒らし尽くされ、ヤコブはきっと大いに悔しがり、大いに泣く事でしょう……。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年01月08日 15時45分49秒 公開

成功

相談掲示板

  1. グレイブ・ヤード

    ヒーラー、グレイブ・ヤード。 好きに呼んでもらって構わんよ。 厄介なのがいたものですね

  2. トゥーリ

    トゥーリだよ、みんなよろしくね! ゾンビクリーパーのある程度の情報は受付の人から聞けてる感じでいいのかな? 敵が1体だけなら目の前の敵に集中すればよさそう? ・敵の行動 殴打:射程短めの物理攻撃+低確率の毒 転がり:射程不明(移動力ぐらい?)の物理攻撃+低確率の毒 ブレス:射程不明・物理/魔法属性不明の攻撃+高確率の毒、頻度少な目。広範囲・高威力 視覚・嗅覚・聴覚あり、知能不明、高耐久力、回避やINIは低め ブレスへの対応をどうするかが鍵になりそう? 一方向への噴射型ならまだ対象は絞れそうだけど、周囲にまき散らすような形だとちょっと対処が難しいかも。高抵抗・高防御を揃えて耐えきる方向か、ある程度のダメージを一旦許容して回復で対応するのとどっちがこのメンバーとしては準備しやすいかなぁ。 ワタシは自分だけならほとんどの攻撃がまず当たらない(回避149)レベルまで鍛えることはできるけど、その場合はヒーラー武器が持てないから一部の依存スキルが持ち込めないんだよね……光縛封とかが必要なら装備は調整するけど、そうなると攻撃も防御も割に中途半端になっちゃうかも。

  3. バンビ

    ハイスピードキャスターのバンビですわ。 クリーパーを倒しただけでは飽き足らず産業廃棄物として復活させるなんて ヤコブ様はほんとうにろくでなしですわね。 料理して二度と再び立ち上がれないようにしてやりましょう。

  4. トーラ

    シーフのトーラです。よろしくお願いします! 障害物もない広い場所みたいですし、あまり工夫も思い付かないですね…。 なるべく固まらないようにしてブレスで複数が巻き込まれないようにするのがいいでしょうか。 魔法攻撃なら魔乱印で威力を下げることもできそうですけど、はっきりしない上に毒には関係ないんですよねぇ。

  5. グレイブ・ヤード

    >ブレス 現場を考えるのでしたら「即時回復を行う」がベターな選択肢かな、と私は思いますね。 抵抗・防御は水物ですから、失敗した時の対策をまず考えたほうがよろしいかと。 一人で戦うわけでもないですし >自分 私は回復と補助に特化しておきましょう。 そのほうが動ける方が増えるでしょう? こういう手合いは時間をかければかけるほど無駄なリソース使わされますからね。 万が一の対策以外はフルアタック仕様で早期に片づけたほうがいいと思います。

  6. リュスィオール・ラ・フォンテーヌ

    リュスィオール・ラ・フォンテーヌと申します。 クラスはキャスター。 どうぞよろしくお願いします。

  7. クー=ウィッシュ

    壁ウォーリアのクー=ウィッシュだ。 タンカーだ。 真正面から突っ込んで シーザーロアでゾンビクリーパーの 攻撃対象になりに行く予定。

  8. トーラ

    時間をかけないなら、先制で範囲魔法スキルを使おうかと思います。ゾンビクリーパーとの距離によりますけど、射程が12あるので2回くらい当てれれば腕を消耗できるんじゃないかと。 乱戦になれば魔矢と魔弾に切り替えますね。 回避とINIは下がりますけど、もう少し魔攻を上げることも出来るのでもっと火力が必要そうなら言ってください。

  9. ユーリス・レインフォード

    ウォーリアのユーリス・レインフォードだ。 一応アタッカー寄り…となるのかな。よろしく頼むよ。 一先ずは邪魔な手足を除けるのが先決…かな。範囲攻撃も無いし、最初はそっちを中心に狙ってみるよ。

  10. グレイブ・ヤード

    別にフルアタックとはいえ考えなくていいわけでもないですし、 いかに有効打を与えるかは考えたほうがいいことですよね >感覚器官 視角と聴覚と嗅覚・・・人基準でしたら視覚のウェイトが大きいんですけどね。 さすがに聴覚と嗅覚で距離感は掴みづらいと考えられますが。 何かこう、粘着力のあるものをぶつけられませんかね? 墨でもいいですが、ダメージにはならなくても邪魔になるようなもの >行動について 一応確認いたしますが、前線に立つ予定の方はどのように動くご予定で? 敵は一体であり、前で攻撃を行う、攻撃を止めるというのはまず普通のことだと思いますので。 例えば右側を担当する、とか膝を重点的に狙って足を使えなくする、とかブレスの兆候が分かれば合図をする、とか具体的なイメージがございますでしょうか? 支援を行うにしても優先度の問題があります、状態異常の解除は個人ごとですからね。 もちろん不慮の事態はありますが、行動の傾向がわかるとこちらサイドとしてはとても助かります。

  11. バンビ

    粘着力のありそうなものを店でみてみましたが、せいぜいが溶けたチョコかチーズくらいしか 思いつきませんわ。 しかし、クリーパーが何の感覚で敵を感知しているかははっきりしていないので、目鼻耳を塞いだとしても効果があるかどうかは未定ですわ。死体が材料だとすればどれも損壊している可能性が高いので効き目はどうなんでしょうか? むしろデバフ系の魔法を集中してかけてやる方がいいんじゃないでしょうか?

  12. トーラ

    クリーパーの存在にはエーテルが必要らしいですし、エーテルでこちらを感知している可能性もあると思います。 確実なのはバッドステータス付与のスキルだと思いますけど、抵抗を抜くには付与を上げる必要があるでしょうか。

  13. クー=ウィッシュ

    >グレイブ・ヤード タンカーはタンカーだぞ? 敵の攻撃を引き受ける防御、耐久特化の壁役だ。 シーザーロアでゾンビクリーパーに 「執着」を与え、攻撃を受け、耐え続ける。 その分、攻撃対象から外れる皆が楽に攻撃出来るだろう? タンカーとはこう言うこと。 具体的イメージはこれで良いか?

  14. ナハティガル=ラー

    ナハティガル=ラー。 不意討ち暗殺何でもござれのシーフだ。宜しく頼む。 >行動予定 俺も前衛として基本的には接近戦を挑む予定だ。 攻撃力は落ちるが、代わりに付与を上げて【縛糸刃】【毒撃2】等のBS攻撃が中心になる。 >ブレス対策 ・可能な限り分散 ・発動前の予備動作があるなら、気付いた者が注意を促す …考え付くのはこの位だろうか? >家宝奪還 ゾンビクリーパー討伐後、余裕があるなら奪還に向かう方向で良いだろうか? その場合、念の為にシーフズツールと【罠解除】は持って行くつもりだ。

  15. グレイブ・ヤード

    クリーパーとはいえ生物をかたどってるのですし 骨を砕けるような部類の攻撃のほうが有用だったりするんでしょうかね? 骨折などが起きるかは知りませんが >物理的な目潰しは意味があるのか 実際有効かどうかはわからないんですけどね? ゾンビですし、そもそもクリーパーですし。 ただ「邪魔」と拭うなり払うなり何なりの動作があれば少しは隙が増えるかと思いまして >タンカーについて なるほど耐久型の盾、ですか。 でしたら回復の優先度を上げないといけませんね 毒もおそらく発動されやすいでしょうし、減りも早いでしょう 堅甲なども付与しておきましょうか? ありがとうございます >デバフ系 これについては私は比較的お手上げですね。 該当しそうなものが足止めのものくらいです。 有用そうなものを使える方いらっしゃいますか? >家宝について そうですね、出来る限りは回収したほうが私もいいと思います。

  16. ユーリス・レインフォード

    反応が遅くなってしまい申し訳ない。 >行動予定 前衛としてどう動くか、についてだけれど…先に言った通り、最初は防御を担う手足の除去を行えればと考えている。 あとは、あちらが目や耳に頼っている事を活かして…死角からの攻撃を意識する、或いは目や耳に類する器官そのものを狙う。などが出来れば御の字かな。 無論、ブレスの兆候についても注意を払っておくよ。 …と、こんな具合で問題なかったかい?

  17. グレイブ・ヤード

    問題については些かわかりませんが 他の方が行動を組み合わせやすくなればいいとは思っています >状態異常について 流石に外観でスリップ(毒)の有無については判断できませんから、 もし回復が必要であれば連絡を下さらないとわかりません。 抵抗に成功した方に使っても無意味でしょうし、回数も限られていますからね。 少しばかり留意していただけると助かります 怪我であれば見た目でわかるのですけどね。

  18. バンビ

    デバフでしたら4種類一通り持っていますのでお任せくださいな。

  19. グレイブ・ヤード

    さて、あと12時間は切っておりますが大丈夫でしょうか? 私は回復・補助関係で600字を埋めておきました。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0