【PT】乾き死にゆく者を喰い
北上辰巳
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シナリオID:378
オープニング
窓を覆う分厚いカーテン。真昼にも関わらず、その部屋は薄暗かった。
微かな灯の中に響くのは何かの書類をめくるような音と、醜悪な男の笑い声。
「ぐひ、ぐひひひ……」
男は、商人であった。
リーンエスとエラトゥーンを往復し、食料品や茶葉などの嗜好品を売買し、一代にしてそれなりの財を築いた才覚と運の持ち主である。
だが、この男のいくつかある悪癖の一つ……生まれ持った才ではとうてい足らぬ野心は、停滞を始めた己が商会の更なる発展の機会を待ち望んでいたのだ。
「アロシュナバラの大勢は決したようなもの……そろそろ王国も傷を負った村々の再建を考え始める頃だろうて」
自分を含めた鼻の利く商人は既に動き始めている。
家々を建て直すための建材、冬支度の為の燃料に、畑を潰された地域では食糧も当然必要になるだろう。
これらの品が不足すれば、バルバロイの脅威から逃れた村も生き残れはしない。
常ならば二束三文で売られるようなそれらの品が、今あの地であれば何倍もの価値に跳ね上がるのだ。
「ぐひっ、ぐふふふっ……!」
既に商品は集め終えている。
これが果たしてどれだけの価値に跳ね上がるのかを考えると、彼の口から漏れる笑いは止まることなく暗闇に響いていく。
何も、バルバロイのように狼藉を働くのではない。
むしろその逆。存分に村々を救い、稼がせてもらおうじゃないか。
●悪徳商人、動きます
「仕事だ、冒険者諸君」
冒険者ギルドの一室、若いとも老いているとも言えぬ男の声で語りだしたリザードマンへと、集められた冒険者の注目が集ま……るよりも先に。
「ほうれ仕事だぞゴロツキども! このゼニナーラ・モットルネンが直々に美味い話を持って来てやったわい!」
ギルド職員の横に立っていた肥満体の中年の男が大きな声を張り上げ、半ば無理やり冒険者の注目を集めるのであった。
「モットルネン殿、彼らに直接依頼するのは我々ギルドという形なので……」
「面倒くさいのう……まあええわい、分かりやすく頼むぞ」
依頼者に直接出てこられると、冒険者に仕事を斡旋するギルドの立場が無い。
職員から頼まれ、ゼニナーラが顎肉を揺らしながらしぶしぶ下がったところで改めて冒険者への依頼説明が始められる。
「という事で、今回もアロシュナバラの一連の騒動に関する依頼なのだが……此処にいらっしゃる商人、モットルネン殿の護衛が君達の主な任務となる」
職員の言葉に、冒険者達の視線が改めてゼニナーラと名乗る男へと向けられる。
寂しい頭髪、ニヤニヤと笑みを浮かべるその顔つきは、商人は商人でも奴隷商が似合いそうだ。
体型はだらしなく太った肉が服に締め付けられているような状態で、裕福さ故か清潔感だけはそれなりにある点くらいしか褒めるところが見つからない。
なんとなーく冒険者の士気が下がっていくような雰囲気を感じたのか、職員は若干焦った様子で言葉を続けていく。
「モットルネン殿には、壊滅した村々への物資販売をご提案いただいた。バルバロイは数を減らしているが、それでもあの地が危険なことには変わりない。こんなのでも、現地に赴いてくれる方は貴重なのだ」
「今お前、こんなのって言わなかったか?」
要するに。
このゼニナーラ氏がアロシュナバラの村々へ食糧だの木材だのを売りに行くので、彼と馬車の護衛をして欲しいというのが今回の依頼内容だ。
……あれ、お一人?
「授恵者と盛大に戦うバルバロイの話に商会の連中がビビってしまってなぁ……仕方ないので儂が単身乗り込む事としたのだ!」
「で、流石にそれは危険すぎると周りが我々ギルドに話を持ってきたわけだ」
金がかかるから嫌だったが……と不機嫌そうにするゼニナーラを、職員がなだめる。
いずれにせよ、今回は既にバルバロイを討伐した地域に赴くことになるだろう。
依頼人には癖がありそうだが、楽ではあるかもしれないと考えた冒険者たちは、提示されたこの仕事に名乗りを上げていくのであった。
●で、現地
「――誰も居らんっ!?」
ゼニナーラの操る商品満載の馬車と共に、アロシュナバラ方面の村へやってきた冒険者一行。
だが、荒れ果てた村落を見たゼニナーラの叫ぶ通り、彼らを迎えるであろう村の住人たちは誰一人としてそこには居なかった。
憤るゼニナーラをなだめながらも、冒険者たちは顔を見合わせる。
護衛そのものは襲撃もなく終わったので、後は報酬をもらうだけ。
けれども、曲がりなりにも村を無くした人々のために物資を持ってきたゼニナーラが、空振りで終わるというのも少し気の毒な話だ。
「ぐぬぬぅ……我が金づる、げふん。大切なお客様方はどこへ消えてしまったというのだ……!」
やっぱりそんなこと無いかもしれない。
「しかし、本当にどうなっとるんだ? ギルドから聞いた話ではこの村に生き残った近隣の者が集まっていると聞いたのだが……いや、これは!?」
あきらめて帰ろう、いやもうちょっと粘らせて。
そんなやりとりをゼニナーラと冒険者の間で行っていた矢先の事、地図を眺めていたゼニナーラは恐るべき事実に気付く。
「目的の村!!! 小山挟んだ隣の村ではないか!!!!」
間違えなければ多少荒れていても進みやすい街道を通ってたどり着けたはずの目的地。
嗚呼だけど、このデブが地図を読み違えたせいでお客様方はちょっとした山の向こう側である。
そして恐るべきはこの守銭奴商人、護衛任務の中で、冒険者たちはこの男が次に言い出す言葉を予測できるほどには人となりを知っていた。
「仕方ない……登山と行こうか!」
止めれば一人でも山に向かいそうなその瞳の輝き。
物資ごと遭難されれば巡り巡って村々の不利益になるだろうと理解してしまった冒険者たちは、重い足取りで山へと向かう馬車へ続くのであった。
解説
マスターより
リプレイ
「せめて、道くらい楽なとこ選ぼうよ」
気持ちを改めいざ出発、そんな気持ちで馬を操ろうとしたゼニナーラに頭上から声がかかる。
ゼニナーラがなんじゃいと顔を上げた先にある骨、荷馬車の上からひょっこり顔を出していたヨル・スレイマンは、地図を広げながら語るのだ。
「多少迂回してでも木とかが少ない方が結果的に早く着けるだろう? 地図上で探るのは限界があるけど、やらないよりはマシさ」
「その理屈だと、山に入ること自体が間違いだと思うんだけどね……」
「嫌じゃ嫌じゃ、ここまでの時間が丸々ムダになる感じが嫌なんじゃー!」
登山を強行する方が時間のムダではないか。
その気持ちをどうにか抑えるシャトン・アルジェントは、その猫耳をピクピクと動かしながらも荷台へと上がりヨルの広げる地図を覗き込む。
「うーん……まあ標高はかなり低いみたいだし、何も頂上を目指すわけじゃない。絶対に無理とは言わないけれど」
「もっと高ければゼニナーラ君も折れたかもしれないけど、雇われは辛いね」
馬車自体も、商会の主自らが乗ってきたものだけあって、非常に大きく、少々の悪路ならば多頭引きの馬力で踏破できそうではある。
しかし、満載された積み荷は相応の重量を持ち……これで山をいくとなると、無理とは言わないが、明らかに苦労する。
猟師としての経験からそれを予期し頭を抑えるシャトンに答える形で、セリフほどの悲壮さは無いヨルの声が発せられる。
それを聞いたゼニナーラはにっこりと笑みを浮かべ、改めて馬たちを操る手綱を握る。
無理ではないのなら、この守銭奴が諦めることは無い。
「ようし、では出発じゃあ!」
「商売のことはあんまり分からないけど、壊滅した村々への物資販売って荒稼ぎできるのかな……?」
「なんだかいやらしい感じの人だし、弱みにつけこむつもりなのかしら……」
本格的な働きが始めるまでの、少しの時間。
馬車の後方を歩きながら小首をかしげて疑問を口にするアルマ・ヴァレンタインに対して小声で返事をするのは、赤猫の修道女、シャロン・ラ・モリエールだ。
バルバロイに追い立てられた人々に、金銭的な余裕は無いだろう。
アルマの疑問は商業に明るいシャロンとしても抱いていたものであり、かなーり胡散臭いゼニナーラと言えど、そのことに思い至らぬとは思えない。
では、何故彼は今回、このアロシュナバラまで来たのか?
「仕事は仕事だからちゃんとするけど……」
彼を希望通り護衛することは、傷ついた人々の為になるのだろうか。
『というわけで、今回は女子受けが大変悪いゼニナーラさんの依頼です。難易度の割に報酬がウマ=アジ、ガ=バを重ねて失敗したとしてもキャラが大怪我する心配はありません。キャラによってはゼニナーラが生理的に受け付けず難易度が上がりますが……』
「まあまあ、危険を顧みず物資を届けるなんて誰にでも出来る事ではありませんよ。神も、人を見た目で判断してはいけないと戒めておられます」
『今回はちゃーんとチャ=トを組んでいるので、フリーダちゃんはそんなことありません! こっちの啓示を素直に聞いてくれやすい優等生チャ=トの強みが出てますね』
「ええ、まずは信じることが大切です!」
「お前、なんでさっきから虚空へ向かって相槌打ってるんだ……?」
そして、アルマたちの前を歩いていたのが他人には聞こえぬ声を聞くフリーダ=ブロムヴィストと、それを見上げるゴブリンの少年ギャメル。
フリーダとしては宣言した通りに見た目で判断するつもりは無いし、ギャメルは元々ヒューマンとは美醜の感覚が大きく異なる。
がめつい言動や無茶な登山を譲らない点には困ったものだが、他の面々ほどにはゼニナーラへの不信感を募らせてはいなかった。
……むしろギャメルは、隣を行くフリーダの方が、ちょっと怖かった。
●
一行は、山を東回りに北上するルートを取りながら、山向こうの集落を目指す。
山に慣れたシャトンが先導し、そのすぐ後ろを鼻の利くギャメルがついていく。
荷台の上には一人で全方位を警戒できるヨルが控え、一行唯一のウォーリアであるフリーダは後方を担当。
馬車の側には木工や動物の扱いに長けたシャロンとアルマが同行し目を配るなと、突発的山登りとしては、十分すぎるほどの陣形が組めていた。
そう、ここまでは。
「む、坂じゃのう……」
「坂ね……とはいえ、此処以外を通るとなると木の密度から考えても現実的ではないわ」
「あんまり見通しが悪いと、俺やギャメル君でも危険を見落とす危険があるしね」
前を歩いていたシャトンが立ち止まる様を見ながら、ゼニナーラがぽつりと呟く。
目の前の急勾配、無理に馬車だけで登れば馬が潰れてしまうであろうから、冒険者たちにも押してもらって進むべきだろう。
「よしっ、皆の者……」
「では皆さん力を合わせて押しましょう! 神も強靭な力を合わせれば4倍とおっしゃっています!」
しかしゼニナーラ君、ここで出遅れる。
彼が音頭を取るよりさらに先、フリーダの号令により冒険者は各々行動を開始する。
じゃあ俺土質確認するよ、腕力足りないから側面見とくね……寂しくなってきたから自分も手伝おうと言ってみるけど、どうせ力が足りないから馬を見ていてくれとの正論で御者席から下ろしてもらえない。
「いいもんね、お馬さんは儂の味方……」
「前からも引っ張った方が良いと思うけど……馬のすぐ近くにロープを通しても平気かしら?」
「大丈夫そうだよ、ボクも見ておくし……ほら、おやつ食べてる。穏やかで良い子たちだね」
「なん……じゃと……?」
その目に映るのは、シャロンとアルマにちやほやされながらご機嫌に鼻息をふんすと愛馬たち。
一代で財を成した者としての性か、ふんぞり返るのは好きでもお仕事が無いとなんだか寂しくなるのが、ゼニナーラというおっさんである。
馬たちがそっぽを向いているような感覚――大体は無茶ぶりするゼニナーラが悪い――に、ゼニナーラの背中がすすけていく。
「なあなあ、オッサン」
だが、すべてがゼニナーラを見捨てたわけではなかった。
子供のゴブリンであるギャメルは、皆と協調して馬車を押すには少々体格面での問題がある。
だが、サボっているのも悪いだろうと、彼はゼニナーラの腕を引く。
「オレ、エーテル操って物しまえるんだよ。釘とか、大きさの割に重いものを預からせてもらったら、オッサンたちも楽だと思うんだけど」
小さな子供からの申し出は、仲間たちを気遣ってのもの。
なにより、この瞬間すっごい手持無沙汰なゼニナーラにとって、構ってもらえるとそれだけで嬉しい。
フリーダの号令で馬車が押される中、ギャメルの申し出へとゼニナーラはにこやかに言葉を返すのである。
「なるほど……飴ちゃん舐めるか?」
「なんで急に優しいんだ!?」
●
「――てぇぇいっ!!」
勾配を乗り越えた先で、少女の叫びが森に響き渡る。
さっきは殆ど仕事が無かったから格好つけたくなったのか、木々を前にした一行へとゼニナーラがすべての始末は自分がつけると得意げに言ったのがつい先ほど。
此処に集いし冒険者は、例外なくエーテルの扱いを可能とする授恵者である。
そのような規格外の猛者に、なんでもありなどと言った日には……。
「えいっえい! そうれもう一発!」
「いらないいらない。もう道は拓けたし、残りは温存しておいてくれよ」
馬車が通る道を拓く為、気の遠くなるような伐採作業を覚悟した冒険者に待ったをかけたのはアルマであった。
彼女の構える杖から放たれるエーテルの奔流、二発三発と続けて放てば、うっそうと生い茂っていたはずの木々はいっそ哀れなほどに軽々と吹き飛んでいく。
ちょっと楽しくなってきちゃったアルマがヨルに止められる頃には、数本の木々の残骸が残るだけの分かりやすい道がそこにはできていたのだ。
「……じゃあ、残りの数本くらいはあたしたちが切ろうかしら。刃が欠けたらゼニナーラさん持ちでいい?」
「あ、ああ……残ってるのも大分ボロボロじゃし、欠けたりはせんだろうが」
静かに語るシャトンの胡乱な目は、剣以外の事象についてゼニナーラへ問いかける。
ここまで森を吹き飛ばして、本当に責任が取れるのか、と。
一行が出発した側の村は既に滅んでしまっているのだから、山のこちら側が多少荒れたところで困る者も居はしない筈である。
だが、猟師として山の恵みで生きてきたシャトンからすれば、それにしたってやり過ぎたような気もするが……まあ、うっかりゴーサインを出したゼニナーラが考えればいい話だ。
吐いた唾を飲む気は無いのか、ゼニナーラはやり切った顔で馬車の付近にまで戻ってきたアルマへ特に文句を言う様子もない。
「木を切るなら、枝を取るのも手伝ってもらってもいい? ギャメルさんが泥の匂いが強くなってきたって言ってて……対策しときたいのよね」
「ああ、なら俺も手伝うよ。アルマ君が派手にやったせいか獣の気配が引いたし、暫くは見張り役も要らないだろうさ」
「なら、ヨルさんはまずあたしと一緒に大物ね。やり方は知ってるけど、単純に腕力があるに越したことは無いから」
シャトンへと同調した者たちも含めて残りの木々へと対処した一行は、さらに山を進んでいく。
いくらかの木材を詰め込んだ馬車と共に歩くその姿を、大きく丸い月が真上から照らしていた。
●
夜も更けた中で、小回りの利かない馬車と共に山を行くなど明らかな自殺行為。
しかし、それは常人のみであればの話だ。
大きな馬車でも押し上げられるような膂力に、危機や困難を見ずとも察する感覚、不可思議な癒しと破壊をもたらす術。
なにより、彼らがそれまでに培ってきた知恵と機転があるのなら。
「ブランケット敷いてきたよっ!」
「ぬかるみが深い所の板渡しもできたね。切った木を雑に加工しただけだけど、一度通るだけなら十分さ」
「……ええ、かんじきも装着完了。では、馬車の操作をお願いしますね」
ギャメルにより事前に察知されていたぬかるみ。そこに差し掛かった一行の行動は的確であった。
ぬかるむ道を補強し、車輪にも沈み込まぬような工夫を施した馬車は、ゼニナーラの鞭の一振りで面白いように進んでいく。
「ほっほっほ、仕事ができるのうお主ら! 村まではあと少し、このまま一気に行くぞ!」
「――そう言ってたじゃんよオッサン! あとちょっと、あとちょっとなのに!」
「すまんのう、ゴブリンの坊や……儂はここまでじゃ、どうかお主らで、儂の分まで金を巻き上げ……がくり」
「オッサーン!!」
「がくりまで言える辺り、だいぶ余裕あるわよこの人」
最後の試練は、山をほとんど降りきった直後に待ち受けていた。
突如止まった馬車、今度は何だと訝し気に御者席を覗いた冒険者が目にしたのは、すっかり燃え尽きた様子の雇い主であった。
ゼニナーラ自身が言い出したことではあろうが、授恵者ですらない身で山登りを敢行したのだ。
御者としての仕事だけでも、中年の商人に過ぎないゼニナーラの身に蓄積された疲労は相当なものだったろう。
「ちょくちょく休憩挟んだり、シャロンさんがクッション用意したり飲み物渡したりしてたから、大したことは無いわよ……むしろ、商売をするなら此処で夜を明かしちゃった方がいいかもね」
とはいえ、シャトンの判断はもっともで、疲労を抜く意味でも、村に着いた後のことを考えても、此処で大きな休憩を取るのは都合がいいだろう。
かくして、ゴール直前にて、冒険者たちは最後の休息を取ることになる。
●
「……どういうことかしら、コレ?」
「ん、どうしたんだシャロン?」
訝し気な声を上げたシャロンにギャメルが気づいたのは、彼女が馬車内の商品の点検をしていた時だった。
ゼニナーラの許可を得て、破損したものがないかと確認していた彼女は、用意されていた品々の料金表に何気なく目を通していたのだ。
「ああ、ギャメル……ほらコレ、木材とかの値段が書いてあるのよ」
「へー……たっけぇ!? なんだよ、オッサンが買ったって言ってたゴールドの二倍だぞ!」
「逆よ、二倍にしかしてないの。馬車の整備や馬の餌、私たちを雇うお金を考えれば、五倍でも良心的だと思うわ」
「そ、そうなのか……? 俺が貰えるゴールドが、六人いて……」
悩みだしたギャメルに、おおよその計算結果……負の値に突入している答えをシャロンが教えてやる。
素直に礼を言う少年に微笑みながら、シャロンはこの料金表の意味を考える。
なにやら企みがあるのか……いや、相手はバルバロイに追い立てられただけの村人たち、陰謀の線は薄い。
思えば、第一印象で身構えてしまったものの、山中でのゼニナーラは此方の指示にも存外素直に応じていた。
彼の人格という、そもそもの認識に誤りがあるとするのなら……!
「そう、そうなのね……」
「うん?」
「取る前にまず与えるとは。優れた知性と善性の両方がなければできないことです。ゼニナーラ様、あなたは商人の鑑です!」
「……ホントかなぁ?」
「――だ、そうだけど。着いたらどんな商売するつもりなの?」
シャロンの叫びを聞きながら、茶を啜るヨルが問いかける。
離れた場所では、アルマがシャトンの手を借りながら馬の状態をチェックしている。
にこやかに世話をする様子を見るに、ケガをした個体も居ないようだ。
そして、最後の一人……。
「さあ、後ひと踏ん張りです。肩でもお揉みしますね」
どこか年齢にそぐわぬ色気を漂わせながら、ゼニナーラの背中に寄り添うようにマッサージをするフリーダから目を逸らしながら、ヨルはゼニナーラの言葉を待つ。
なんだか、触れるべきではないものを感じるのだ。
彼女というかその背後から、タイムの為なら手段を選ばないナニカの気配を。
「あー、そこそこ……ふふ、よくぞ見破った、とあの娘には言わねばな」
とはいえ、ゼニナーラ自身は純粋にマッサージで癒されているようだし、口を挟む必要も無いだろう。
むしろ、ヨルにとって重要なのは彼の返答。
「つまり……」
「そう、安く売ることでお客様を騙……信頼を得て! 復興の暁には茶とか香水とかの高額商品を売りつ……お客様のためにご用意し! 恩を売っとくことで多少割高でも『あの時助かったしなぁ』的な雰囲気で無理やり買わせ……ウィンウィンな関係をお客様と築くのじゃ!」
「言い直せてないよ、ゼニナーラ君」
この人本当にやり手の商人なのかと思いつつ、ヨルは彼にケトルの茶を勧める。
もう少しで夜が明け、出発すればそのまま村に着ける筈。
本番の商売、いらぬことを言って村人から不信感を抱かれそうな気もするが、あちらで盛り上がっているシャロン辺りがいれば大丈夫だろう。
だからこそ、ヨルは何の含みもなくこう言えるのだ。
「俺はあまり商売は得意じゃないけど、君のおかげで助かる人が沢山いるのは素晴らしいことだね」
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:多い6 / 4〜6人
2020年12月27日 12時52分37秒 公開
相談掲示板
おはようございます。 シャロンと申します。よろしくお願いしますね。 私はヒーラーですが物理攻撃と回避を伸ばしておりますので、予想される障害すべてに一通り対処を考えていこうかなと思っています。
シャトン・アルジェント。シューターよ。 屋外ならそれなりに索敵行動が出来るから、先行してルートを調べていこうと考えてるわ。 樹をある程度は斬り倒さないと馬車は進めそうにないわね。
ヒーラーのギャメルだ。みんなよろしくな。 がめついし、すぐに寝ちまうし、まったく困った悪徳商人だなー! 品物の料金表を見たとしても、オレの知識じゃ真相解明は難しいかもな。 でもなんとか真実にたどり着きたいもんだ。 オレはぬかるみとゼニナーラへの対応を頑張ろうかと思ってるぜ。 人数の偏り次第で、腕力のいる仕事以外なら変更可能だ。
>ギャメル様 私はスキルの商業知識がございます。 もともと料金表は見る予定でしたので、一緒にご覧になりますか? それともこの情報を得たい方が多いようであれば、全員に知らせるようにいたしますが。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしく。 急勾配:物理に自信がないので普通に押すより動物交感とアイテムでお馬さんの担当にでも 森林:手荒な手段OKっていうし?タイダル2~3枠いれての連射で吹き飛ばそうかな ぬかるみ:命中回避は並くらいだけどブランケットでも車輪に噛ませてみようかなと 料金表:ボクはあまり興味がないのでパスでいいかなー…
ヒーラーのヨルだよ。宜しく頼む。 腕力ならちょっと自信あるかな。急勾配なんかは頑張っておくようにしようかね。 ゼニナーラ君の対応も楽しそうだから念頭に。 他はほどほどって感じかな。皆優秀そうだから楽ができそう⋯⋯ではなくて、まあ手薄になりそうなところがあれば適当に手伝えるようにはしておく。 楽しい旅になるといいね。
>シャロン 情報共有ありがとう! それじゃ、お言葉に甘えていっしょに見させてもらうぜ。 オレは頑張ってなんとか文字は読めたとしても、卸値とか売値とかのくわしい知識まではないから ゼニナーラの真意をしる手段にちょっと困ってたんだ。 シャロンの商業知識があるなら頼もしい。
>ギャメル様 はい、では料金表を見るときはご一緒にと指定させていただきますね。 私は普段からお買い得情報には聡いですが、いかに大安売りといえどここまで安いのはあり得ない、というように読み取ると思います。 プレイングの参考になれば。
>ぬかるみ 物資が乗ってる木箱のフタとか建材をぬかるみの上に置くとかして車輪が嵌まらないようにすれば、ある程度は通りやすくなるんじゃないかしら。 森林は斧を買う余裕は無いから、鉄の剣で邪魔な樹を切ったりする感じになるかしら。 徒歩で行くなら藪を払うくらいで充分進めるんだけど、馬車ってなると多少の時間は掛かりそうね。
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 能力値的に私が得意そうなのは腕力とか森林辺りになるでしょうか。 ただ、特化するよりもある程度汎用性を詰める形にしたいと考えています。 後はゼニナーラ様の対応も応援する等で頑張ってみたいと思います。