【死軍】人狩りと知識と生かす道

狐野径

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シナリオID:358

オープニング

●悪人たち
 トラウム・エアウァルトはため息を漏らした。
 御者の仕事を引き受けたが、どうも嫌な予感がしてならない。
(本当にこいつら、荷物を届けて終わりかねぇ)
 今回、御者の仕事が回ってきたのは、帝国と王国の国境の地理が分かるという理由からだった。
(詳しいっていったって、俺が国にいたのはいつだったか?)
 むしろ、その村があると知っている彼らの方が地理に詳しいのではないのだろうか。
 生きるのにカネはいるけど、トラウムはまっとうに働くつもりはないし、積極的に悪事を働くつもりもない。宙ぶらりんだ。
 御者依頼を出してきたのは、鑑定の目を買ってくれた人たちである。
 トラウムが犯罪を直接請け負わないというのを知っている連中だ。だから気遣ってくれた……とまで思う程トラウムはお人好しではない。
 今回、向かっている村にはヴァイセントラフ砦に避難後、こちらに避難した民がいる。その人たちにということで物資を届けるというのだ。
 村が避難民を受け入れたとしても、その先が見渡せないのだから、助けはいる。
 そのことはトラウムだってわかる。
 ただし、自分を雇った人物たちが崇高な考えで物を送るなど考えられなかった。

 村の人たちは、篤志家の贈り物に驚くとともに、喜んだ。
 避難民を捨てることはできないが、食料などが潤沢にあるとは言えないからだ。
 避難民を追い出すことをせず、共存することができるのは大切だ。
 一瞬、運んできた人物をみて「うさんくさい」とは思ったのだが、きちんと対応はしてくるし、話は矛盾がないためおかしいという気持ちは消えていた。
「町で働き口も必要ならあっせんしますよ。冬の間、衣食住足りて稼げるなら良い話でしょうよ?」
 そのような話を言ってのける。
「避難する人たちだって、ただいるだけだと心苦しいでしょうさぁ」
 畳みかける。
 村で働くとしても、仕事は限られている。
「なるほど……確かに……そういった選択肢も必要ですね」
 村人は相手の言っていることを納得したようだった。
「じゃ、話をしましょか?」
 荷物を運搬してきたものたちは周囲を見る。それらしい人たちはいない。
「今、男たちは狩りに出ているんですよ。女子どもは薪拾いに出てますよ。呼び戻しましょうか?」
「いえ、また物資を運んできましょうさねぇ」
 彼はにこにこと笑う。
 村人はどんな人が物資を送ってくれるのか気になったが答えは濁された。その上で、狩場や薪拾いの話になり、その場所の話などをした。
 世間話のように見える。
 一方で、裏を想像できるトラウムは、狩りをする肉食獣が、草食動物を懐柔しているように見えていた。
(まさか、本気で人狩りをするのか、こいつら。ここで俺が訴えた場合、村人は信じない。こいつらにリンチに遭って、殺されるのがおちか)
 御者台で聞いていたトラウムは落ち着きをなくす。
 いい考えは浮かばなかった。

●薪拾い
 イアハイト・シュトルツは避難先の村で、薪拾いに向った。
 狩りに行こうにも、腕力や体力がないイアハイトは足手まといだ。
 薪拾いに行くといったとき、子どもたちはイアハイトが来るということで単純に喜ぶ。女たちはうれしいとは思っているようだが、頼りにされていないのは分かる。
 戦えるように努力をしたいが、どうしていいか分からない。
 知識を生かそうにもどうしていいのか分からない。そもそも、知識だってあるという自信はもうない。
 先日、村の危機に何もできなかったし、冒険者たちと一緒に行動して自分が何もわからないと感じた。
 冒険者たちが「正解はない」けれども、先がいくつか想定できる「今」を考えてくれた。
(僕は……どうすればいいんだろう)
 よく分からない。
「イーア! このキノコ食べられる?」
 子どもが枯れ草の陰に生えていたキノコを指さす。
「よく、見つけたね。食べることはできるよ」
「じゃ、こっちは」
「それは、触っても駄目だよ。危険なキノコだよ。触っていないね?」
 イアハイトに子どもは激しく首を縦に振った。
 子どもたちは素直に言うことを聞く。夕食になるということでキノコを集める。
 ふと、馬車の音を聞いた。
 山の下にある道を進むならば、砦に向かうはずだ。物資を運ぶ誰かが通るのかもしれない。
 他の人たちは特に異変だととらえている様子はない。
 おかしいと思うことがおかしいと考えた。
 だから、気にしないことにした。

●冒険者たち
 依頼を受け荷物を届けに来た冒険者たち。途中で道を逸れる荷馬車を見た。
 村に到着すると、物資を運んでいる村人たちの姿がある。
 冒険者たちが、避難している人たちように荷物を運んできた旨を告げると、村人は驚く。
「先ほども受け取ったんですよ」
 冒険者はギルドの依頼を介して受けたものだが、篤志家が直接人を使って送ってきたこともありうる。
 山の方に何があるかと問えば、村人は「ヴァイセントラフ砦方面なので、行くなら砦に物資を運ぶものですよ」と告げる。
 道を逸れる荷馬車は何か運んでいただろうか?
 このような話をすると、村人の中には、先ほどの人たちが奇妙だったと感じる人も出てきた。
 先ほどの人物たちはどこかうさんくさくあったし、避難民のいる場所を聞いている風だった、と。
 そのため、村人たちは、冒険者に薪拾いに行った人たちの様子を見てきてもらいたいと頼む。
 受ける必要もないが、断る理由も薄い。何かあったらでは遅いからだ。
 直線で行けば、馬車を使うより速いという。
 冒険者たちは急ぐことになる。

 山の下の道に馬車は止まっている。
 冒険者の姿を見た瞬間、トラウムは目を見開く。御者台から降りると、冒険者と山ではない方に走り出した。
 一方で、山からは悲鳴が聞こえる……。

解説

●目的  避難民で薪を取りに行っている人たちの安全確認。  必要ならば、悪党を取り押さえること。 ●マップ(初期位置)  ※1マスのサイズ指定なし。おおよそ位置。 ト□□□□ □□□□冒 馬□□□□ □□□□□ 山山山山山  ト=トラウムがいるところ。草地。その先には林はある。冒険者から約200メートル。  冒=冒険者。形状は舗装されていない道。  馬=荷馬車。形状は舗装されていない道。  山=傾斜地。道はないが、薪拾いに入るため、ある程度、通り道はある。  木が植わっているため、見通しも悪い。  避難民の女子供および悪党たちは山にいるものと思われる。 ●NPC  ・イアハイト・シュトルツ 一般人、男16歳。  見た目はいいし、頭もいいけれども、大変頼りないのに頼られていたという問題。  自分がどうしていいか、本当にわかっていない。  ただし、子どもを守ることは優先順位高く行う。  ・避難民の女と子ども この村に避難している人々の一部で一般人。女性6人、子ども10人。  薪拾いに来ているだけであるし、戦うすべはない。基本、隠れると逃げる。  赤子を背負っている女性や大き目の子も一人ずついる。  ・トラウム・エアウァルト 男30歳くらい。  とりあえず逃げる。巻き込まれたくないから逃げる。  参考、初出、狐野径「詐欺にご注意!」読まなくても問題ない。  ・人さらいたち いわゆる悪人。男、一般人。6人。  短刀や剣などで武装もしている。飛び道具はないけど、ナイフや物は投げる。必要なら人質もとる。  一番メーンらしい人物は、ちょっといい服を着ているし、武器もしっかりしている。

マスターより

 こんにちは、狐野径です。  解説のNPCについて「一般人」ってなんか書いてるですね。  非授恵者がいいです? ……何か濁してますね、私。まあ、大きな局面に関係ない点ですけどね……このつぶやき。  さて、ピンチ迫る避難民を助けてください。  なお、「【死軍】選ぶ道は未来を決める」の時より、避難民多そうなのは、先に避難していた別の人々もいるためです。念のため。  よろしくお願いします。

リプレイ

●現場
 ニーラ・メッコは村の人の頼みに快く応じる。
「薪拾いしに行った人たちの様子を見てくればいいの? お安いご用だよ!」
 村人によると物資を運んでいた人たちが怪しいといえば怪しいが、確証はない。
「変な方向に行く荷馬車を見かけたよねぇ」
 お安いご用で済めば良いし、何かあってからでは遅い。
「そうだ、人数と名前、年齢、性別とか教えてもらっていいかな? 探すとき聞きやすいし」
 人数は多いため、何人かの情報を教えてくれる。
「シュトルツ氏が巻き込まれている?」
 キーゼは先日でヴァイセントラフ砦からこの村に避難する人たちの護衛をしている。その中にいたのがイアハイト・シュトルツである。線の細い少年で、青年というにはどこか頼りない。

 一行は急ぐ。

 一行が該当の山の近くに来たとき、荷馬車から男が走り出した。
 同じく、山の方から悲鳴が上がる。
 一行の足は速くなる。
 ミツキ・アインホルンは山に向かう。
「そっちの逃げた人は任せるわ!」
 ガルレイド・S・グリディッカーは「了解した」と答える。
 キーゼは「あれが、馬車の関係者なら、何か知っているでしょう」と言い、男の方に向かう。
 関係者ならば捕まえて答えさせる必要がある。

 アクティオンはミツキに続く。
「この非常時に短絡的な自己利益に走る……遠慮は無用、ということで」
 何者が何のためにここに来ているか不明だが、女や子どもしかいないところに向っている上、悲鳴が上がっているのだから悪事だろう。
 エレノア・D・グリフィスはそれに同意するような言葉を発する。
「このような事態を見過ごすわけにはまいりませんわね」
 エレノアのそばを狼フェルズが走る。

●逃げるモノ
 ガルレイドとキーゼは馬車から逃げる男トラウム・エアウァルトを追う。
「待てっ!」
 ガルレイドの威圧の籠もった言葉に、一瞬、トラウムは見たが、逃げるのは止めない。
「質問に答えるならば、貴殿に何もしない」
「逃げるなら攻撃しますよ」
 ガルレイドとキーゼの言葉に、トラウムは振り返る。逃げるのを止めない。
 二人が武器を構えたところで、トラウムは両手を挙げて止った。
「分かった……話しはしてやるよ。だから、近づくなっ!」
 ガルレイドとキーゼが距離を一歩詰めると、一歩下がる。
 無力化して捕らえてから聞くということも選択肢としてあるが、時間も惜しいため、ガルレイドは質問を始める。
「あっちは何がある」
「わからん。俺の推測でしかない」
「推測でもいい」
「避難民の女と子どもがいる。あとは、何か企む六人の野郎だよ」
 トラウムは彼らの行動を唾棄すべきものととらえているようだ。
 ガルレイドは目の前の男が嘘は言っていないと感じる。
「先に行く」
 ガルレイドはキーゼに告げて先に山の方に向った。
「じゃ、俺はこれで」
 トラウムは一歩一歩後ろに下がる。
「貴方だって十分怪しい人ではないですか? おとなしく、捕まって……」
「捕まる気はないぜ? そもそも、俺の罪は何だ? 物資を運ぶ御者だぜ?」
「出すところに出せば分かるでしょう」
「あんたはここで善良でも、悪人でもない俺にかまっていていいのかねぇ?」
 トラウムはにやりと笑う。
 確かにこのままやりとりしていて堂々巡りをする。その間、山の方で何があるかわからない。
「今度会ったとき、罪を犯していると分かれば問答無用で捕まえますよ」
「ま、会いたくないねぇ。俺も今回ので懲りたから、色々考えるさぁ」
 トラウムは大きく息を吐いてから、立ち去った。
 キーゼはその背を一定見送り、馬車に向う。
 山の方では戦いの音や、声がしている。気にはなるが、逃げて来た人の安全確保のため、動かない。
 念のため、馬車の状況を確認した。
 隠れている人も、不審な物や持ち主を証明するような物もない。
「ヴァイセントラフ砦からの避難民がいるならば、僕がいる意義はありますね」
 何があっても対応できるように、杖を持つ。

●捜索と捕獲
 悲鳴や走る音などがする。ただし、山の下からほとんど何も見えない。
 焦らず、素早く進む必要がある。そのため、役割を分けて効率を上げる。
 囮または陽動となるミツキとニーラ、隠密行動を主体にとるエレノア。アクティオンも隠密に近い行動を取るが、臨機応変の対応だ。
 何があるか、悪党がいるならば何人かがわかっていない。

 ミツキとニーラは薪集めで使いそうなルートを、互いに一定距離を保ち、上がっていく。
「おーい! 誰かいませんかーっ!」
「声が聞こえましたが、大丈夫ですかー?」
 ニーラとミツキが大きな声をあげる。
 女子どもを狙う相手に対し、少女の声音は緊張させないだろう。つまり、獲物が増えたという認識につながるかも知れない。
 二人が声を上げて進むということは、まさに、囮でもあった。
「誰かっ……」
 女性と子どもがやってくる。
「何があったんですか?」
 ミツキに「男たちが来て、あたしたちを連れて行こうとしたの」という。
「捕まっている人は?」
 ニーラが問うと女性は「あたしの周りにいた人は逃げていると思う」と答えてくれた。
「ここからなら麓に行って下さい。冒険者の仲間がいます。ヴァイセントラフ砦から逃げた方なら、そのときの冒険者の一人です」
「そうだよ。私たちの仲間だから安心して」
 ミツキとニーラは安心させ、逃がした。二人は焦らないが急いで登り始めた。

 アクティオンはまずは悲鳴がしていた方に行くことに専念する。ただし、音の反響などで、確定は難しい。
 超視覚、ホークアイなどを用いて確認していく。急ぐ必要もあるため、急いで進む。
 ミツキとニーラの声に反応して、一旦様々な音が止まった。しばらくすると音は増える。
 反応が薄かったが、近づいてくる音に気づいた。
 一旦身を隠し、状況を伺うと、女性だった。
 彼女の前に突然飛び出すと驚かせることは確実だ。そのため、そのまま陰を利用し、彼女の背後をうかがう。
 男が追っているのがわかった。これは問題ある人物だと判断し、アクティオンは【精密射撃】を用いて狙う。矢は狙いたがわず、男の脚に刺さる。
 突然の攻撃に男も驚いたが、女性も驚く。
「安心しろ、冒険者だ。自分に構わず、下に行け」
 女性に短く告げる。
 男は、足に刺さる矢をどうにかして、逃げようとし始めた。
「今、逃げられても、人がいるから困るんだ」
 無力化するため、アクティオンは再度攻撃をした。
 アクティオンは倒れた男の状況を確認し、周りに隠れている人がいないか見る。
 そこから捜索を開始する。

 エレノアは【エーテルリンク】している狼に先行してもらう。
 自分自身は【ホークアイ】を用いて、索敵して上がっていく。
 声を出している仲間を囮もしくは陽動として、彼女は隠密行動を意識する。敵がいれば、不意打ちを狙いたい、動きを封じていきたい。
 用心深く進んでいくと、狼が人を発見した。
 茂みに隠れているのは子どもを背負った女性だ。
 一方で、近づく男がいることにもエレノアは気づいた。
(状況によっては、フェルズに攻撃させないといけませんね)
 エレノアは狼から伝わる状況を分析し、まずは自分が攻撃しやすく、すぐにその場に駆けつけられる位置に回り込んで行く。
 男の方は好機を逃さまいと動いた。
 そのため、狼がその前に飛び出す。
 女性は驚き、悲鳴を上げると、転がるように麓の方に駆け出す。
「なんでこんな所に狼がっ!」
 男は武器を抜くと、狼に向おうとした。
 そこにエレノアが【重射撃】を放った。
 男はさらなる攻撃に驚いた様子。攻撃元に対して振り返る。
 エレノアはすかさず【精密射撃】を放った。
 男は意識を失った。
「この男は不審者ですわね」
 エレノアは再び移動を始めた。

 ミツキとニーラは中腹辺りまで来た。
 少しずつ避難できている人がいる一方で、逃げられず隠れている人もまだいるというのが感覚として分かる。
 二人の位置からは半分死角になっているが、男二人が武器を抜き、木の奧を見ている。
「助っ……うっ」
 声と殴られたような音がして、苦鳴が聞こえる。
「おいおい、顔は殴るなよ」
「治るだろ、そのくらい」
 男たちの余裕ある会話が聞こえてくる。
「この子たちはっ。僕はどうなっても……」
 か細い、少年の声がする。少年というよりは大人に近い物だ。
 ミツキとニーラは相手の意識をこちらに引きつけるためにも声を掛ける。
「いたわね。さぁ、貴方たち、覚悟はいいわね?」
 ミツキは【白の魔導書】を構える。
「悪人には、問答無用!」
 その横でニーラが【メテオライト2】を用いた。ニーラから見えない位置にいる人が狙われていることや、人質にされることを避けるために早く片付けたいところだ。
 攻撃は男二人に当たる。
 すぐにミツキは走り寄り、木の陰に入る人物を確認後、間に立つ。
 男はミツキにとびかかる。回避するのはよくないため、その攻撃はあえて受ける。それだけでなく、相手には、危険な相手だと思わせたいという意識もあった。
「ふっ、その程度? こちらからいくわ!」
 ニーラとミツキの攻撃で二人は気絶した。
「大丈夫? 私たちは冒険者よ」
 ミツキが振り返る。
 青ざめている少年イアハイトがうなずいた。背後に三人子どもをかばっていた。
「他の、人たちは……」
「誰がどっちの方に行ったか分かる?」
 ニーラの問いかけにイアハイトは首を横に振った。
「逃げるのに精一杯で」
「そりゃそうだよね」
 ニーラはうなずいた。
「少しずつ相手を無力化しているから、隠れつつ麓まで下りられるよね?」
 ミツキの言葉にイアハイトはうなずくと、子どもたちを促し下りていく。

 ガルレイドが上がっていくとき、逃げてくる人がいるのが見えた。
 彼女は彼を見ると一瞬警戒した。
「冒険者だ。あっちの馬車に、一人いる。そこで待機してくれ」
 うなずくがどこまで信用されるかわからない。ともかく、ここを離れてくれることは重要だった。
 木々があるため視界が悪いが、遠目に逃げる人影があった。ただ、それは上へ上へと逃げている。
 襲われた人の可能性もあるが、何かおかしい。
「冒険者や自分たちを捕まえる人間が来ていると気づいたか」
 ガルレイドは逃げる人影を追うように、それに気づかれないように回り込むように登っていく。
 途中でエレノアの狼に出会う。
「敵は六人だそうだ」
 短く情報を告げると、狼はうなずくような仕草のあと、走り去る。
 しばらく上がると、隠れたら見つかりにくそうな場所にやってきた。灌木が絡み合って、奧が見づい。
 音からすると息を殺してこちらの様子をうかがっているのは明白だ。
 加害者だと推測しているが、被害者の可能性も否定できない。
 エレノアの狼がやってきた。ガルレイドは向こう側に回り込めというようにジェスチャーすると、狼は走っていった。

 ミツキとニーラ、アクティオンが合流する。途中で見つけた被害者は麓に下りるようにいったし、倒した加害者は四人だと分かっている。
「茂みに……何かいる」
「なるほど……」
 アクティオンが【看破】や【捜波】を試みる。
「二人かな」
 アクティオンが言う。
 冒険者たちは茂みを取り囲み、攻撃の準備をする。
「ここにいるのは分かっているわ」
「もう、貴方たちだけよ」
 ミツキとニーラが大きな声を掛ける。
 茂みの背後に回った狼とエレノアが動いた。灌木がしっかりしているため、エレノアはやや強引な入り方になる。
「襲撃者ですね。大人しくしてください」
 エレノアと狼の攻撃は威嚇だ。ここで戦うのは厳しい。
「うわああ」
「ちっ」
 男二人は、慌てて逃げる。茂みの外へ。
 二人は武器を抜いてはいたが、戦うことに万全を期していた冒険者たちにより捕縛されるのだった。

●一歩ずつ
 馬車のところでキーゼは見張っていた。
 恐る恐る避難民と思われる女と子どもが、やってくる。
 徐々に事態はよい方向に動いている。
 ただ、女性はキーゼを見て警戒はしていた。
 人さらいに次ぐ人さらいと思われても致し方がない。
「皆さんを確認してくるように言われた冒険者です。僕はヴァイセントラフ砦からその村に避難した人を護衛した縁もあります」
 キーゼは答える。
 不安そうにしている女性の後から逃げて来た女はキーゼを覚えており、そのときの冒険者と認めた。
「馬車の中か、馬車の外で山から隠れる方で待っていてください」
 キーゼは説明した。
 しばらくするとイアハイトと、子どもたちがやってきた。イアハイトはホッとした様子を見せる。
「キーゼさんでしたよね? また、お会いできるとは思いませんでした」
「無事で何よりです」
 女と子ども、および、冒険者がやってくる。
 ニーラが元気よく「怪我はない?」と声を掛けてくる。
 その表情などから、不審者の討伐は終わったとわかる。

 ガルレイドとアクティオンが目を覚ました不審者たちを捕まえてやってくる。
「六人なら、これで全てだな」
「被害者が出ず良かったです」
 不審者たちは縛られ、身動きはできない。文句を言う元気もないようだった。
 被害者たちの冷たい視線が彼らを貫く。

 エレノアは念のため、周囲を確認し、山から下りる。
 被害者の人数確認は集まればできるだろうが、下りてから一人残っていたとかあるのは問題だ。
「不審者は排除しましたわ。隠れている方がいれば、一緒に皆の所に行きましょう?」
 声を掛けるが、反応はない。
 そのため、下りた。

 ミツキは表情が固いイアハイトに気づく。
「どうしたの?」
「いえ……その……」
 イアハイトは異変に気づいたけれども、放置してしまったことについて告げた。
「おかしいと貴方は感じたのね。なら、一歩目はクリアね。次は、その違和感を信じて動いてみなさい」
「え?」
「勘違いだったとしても、最悪でも笑い話になるだけよ。それより、行動した方がいざという時はためになるわ」
 確かに現状を考えればイアハイトも理解できる。
「違和感を否定するなら、確固たる事実が確認できるまで否定しては駄目よ」
 ミツキは助言した。
 不安定な世情なのだから、少しでも考える必要があるのだ。

 キーゼはイアハイトが視線を逸らした事に、何かあると考えた。
 以前あったときも、悩み動けなくなっている状況だった。それに対して進展がないなど悩んでいるのだろうかと考える。
「あれからの『今』はどうですか?」
「それが……僕は……」
 歯切れが悪い。
 悩むと考えが同じところを巡ることは多々ある。
「そうですね、考え方を変えて、これからどうしよう、ではなく、これからこうしよう、と考えみては?」
「え?」
「目標や目的を見つけることで、すること、が見えてくるかもしれません」
 イアハイトはうなずいた。

 村に戻る。
 村人は薪拾いに行った人たちの無事を見て、ほっとしていた。
 捕まえた者たちはしかるべきところに突き出すことになる。

マスターコメント

 ご参加ありがとうございました。  人質の想定もあり、つつがなく対処終了となりました。  マスターとしては人質取りたかったけど、取られない方がいいに決まっていますしね。  トラウム、また名乗らず。名乗れといわれて名乗りませんけどね。  イアハイトへは徐々に動くことができるのでしょうか?  ご縁があれば、お会いしましょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2020年12月24日 12時35分16秒 公開

成功

相談掲示板

  1. キーゼ

    さて、宜しくお願いします。 ひとまず満たすべき最低限の必達目標は 〇避難民の保護 ですかね。 ここを満たすにあたり、ひとさらいへの対処は必須になってくるかと。 あと、組織的なバックがいる可能性を考えると、ここで逃がすのは出来れば避けておきたいところですかね。 それと、トラウム・エアウァルトに関してはどちらでもいいですが。 逃亡手段を塞ぐ意味でも馬車は抑えておきたいところです。 確保しておけば、無事に逃がした際こちらが避難民の輸送で扱えるでしょう。 それに、既に捕まえて戻ってくるときに取り戻せる可能性もありますしね。 あとは、そうですね。 授恵者にしろ何にしろ、人さらいが既に捕まえた避難民を人質にする可能性を考慮すると、正面から気を引くものと、闇討ちするもの、が必要でしょうか。 見通しに関しては同条件ですし、うまくいけば隠れながら隙を突くこともできるでしょうか。

  2. アクティオン

    シューターのアクティオンです、よろしく。 名を明かしている以上は、トラウム君は後からでもいくらでも追えそうですし……避難民の保護の方から優先に異論はなく。 隠れるのはともかく、見抜く・狙撃に関してはそこそこの腕はありますし、早めに人さらいに仕掛けてはいけるかと。 ただ、あまりに早々に優勢にしてしまうと向こうも逃げるのを優先しそうなので、そこの逃亡阻止は考えないといけませんか……

  3. ミツキ・アインホルン

    キャスターのミツキよ。よろしくね。 わたしも避難民の保護優先でいいと思うわ。 スタティックフィールドとアーケインテンペストを持ち込む予定だから、逃亡の妨害はできると思うわ。 闇討ち作戦は実行できるならいいのだけど、今回キャスター3、ヒーラー1、シューター2のクラス構成だから、皆のビルド次第ではきつくないかしら。

  4. ニーラ・メッコ

    キャスターのニーラ・メッコです。 よろしくね!

  5. キーゼ

    >逃亡阻止 仰る通りこれも必要ですよね。 順当に草地側から山狩するのが一番かと。 とはいえ広そうですし、ひとまず悲鳴の方が優先になるのでしょうか。 >闇討ち そこまで本格的なものでなくとも。 相手に人質戦略を取られたときに背後なりから襲える役割があれば。 正面切って人質をとられた際の保険でしょうか。 正々堂々、というか目立つように救援に来た役と潜みつつ近づく役、という感じですかね? >馬車 これはどうしましょうね。 僕としては抑えたいですが。

  6. ガルレイド・S・グリディッカー

    ガルレイド・グリディッカーだ。一つよろしく頼む。 某も馬車は抑えておいてよいかと。もう捕まっているのかもしれんしな。 ついでに逃走防止なら、トラウムから相手が何人いるか聞いておきたいところ。無論、事前に分かっているのであれば必要ないかね。

  7. アクティオン

    >馬車 ふむ……人狩りを逃がさないなら押さえたいのは確かです。 馬車を押さえるのも大っぴらにやらずに、近場に潜むようにすれば、逃げようと馬車へ向かう人狩り達への奇襲兼逃亡阻止になりませんかね。

  8. ニーラ・メッコ

    馬車の抑えに人を残すのは、戦力的にちょっともったいない気がするよ。 逃亡防止、ということなら馬車の車輪を壊しておくとか……。 でも馬車を壊すのももったいない気がするよ。 私は奇襲とか闇討ちとか向いていないから正攻法?で悪者達と相対する方がいいかも。役割分担をするならね。 森での行動には慣れている(ハズ)けどね。 【アーケインテンペスト】で相手の逃げる足を鈍らせる事はできると思う。 人質を取られても、【対象識別】のある範囲攻撃スキルを使えば悪者にだけダメージを与えられるかな? ちょっと荒っぽいかもしれないけど。

  9. エレノア・D・グリフィス

    シューターのエレノアです。 よしなに。 闇討ちを用意するのは賛成です。

  10. キーゼ

    >馬車 確かに人手を割くのは厳しいかと。 ただ、総勢16名、しかも赤子を背負う者や子供も多い以上、助けた先から引き連れてというわけにも行きませんし。逃がす先の安全地帯は必須かと。 あとは既に言われているよう、追い切れず戻ってきた者の確保も容易ですし。 1名は逃げたトラウム氏を確保しつつ馬車の確保もありかと。 希望者がいないなら僕がやりましょう。 >山狩り どう動くか、ですね。 目立つように追い立てる側と潜む側にするか。 一方向からローラーのように山狩りするか、二手ほどに分かれるか。 ひとまず悲鳴がある以上そこを優先になると思いますが。 広いとなると、二手ぐらいには分かれたいところですが。

  11. アクティオン

    >馬車 あまり人を割けない、というのはその通り。 キーゼ君が行ってくれるというならば、ありがたいところです。こちらは山狩りでその分の働きはしましょう。 >山狩り この人数で大っぴらに二手は厳しいかもしれません。 基本は一方向からローラーかけつつ、人質をとるような相手には闇討ち役が奇襲、という流れではいかがか?

  12. ミツキ・アインホルン

    >馬車 ということは、キーゼさんに馬車を確保してもらって、そちらに避難民達は走ってもらうって事ね。いいんじゃないかしら。 >山狩り アクティオンさんの策に賛成よ。大々的に二手に分かれて挟み撃ちはきついと思うわ。 一人~二人が闇討ち役で、残りは相手の目を引きつつ攻め立てる感じね。

  13. キーゼ

    >馬車 では、僕がそちらに向かいましょう。 天眼と超視覚、あるいはサーマルである程度の識別も出来るでしょうし。 山狩の方はお願いします。 >避難民 これ、隠れたり逃げたりするんですよね? 隠れてる方は周囲の安全確保ができるまで、出てきてもらわない方がいいのでは? 目立つように攻めたてる際、安全確保できるまで、出てこないように呼び掛けておくのもいいのでは? あと、多分シュトルツ氏もいますので恐らく17名、かもしれませんね、これ。 シュトルツ氏を確保すれば、人数の把握と確認が容易になるかもしれません。 >流れ 数名の方の新たな発言がないので少々早計かもしれませんが、明日は仔細と調整とみると、今夜中に大枠を決めたほうが良いかと思われますので、 改めて纏めると。 【概要】 山狩り担当と馬車確保に分担 山狩り担当:集団で一方よりローラー作戦、目立つよう攻めたて、極少数名が万が一の闇討ち役。 馬車担当:救助した避難民安全地としての馬車の強奪と護衛。間に合うならばトラウムの確保。 救助した避難民は、平地の馬車に戻ってもらう。 こんなところでしょうか?

  14. ミツキ・アインホルン

    分担として、闇討ちはキチンと分けておいた方が良さそうね。 今の所発言からすると分担はこんな感じかしらね ●山狩り・囮(2~3人) ・ミツキ ・ニーラ ●山狩り・闇討ち(1~2人) ●馬車確保(1人) ・キーゼ

  15. ニーラ・メッコ

    作戦は了解です。 私は山狩りローラー作戦で派手にローラーしていきますね。 馬車はキーゼさんに確保してもらうとして、出会った避難民には馬車の方角へ退避してもらうように伝えるね。 私達がローラーしたあとだから、私達と馬車の間に悪党はいないハズ…… だし避難民だけで移動しても大丈夫でしょ。

  16. エレノア・D・グリフィス

    では闇討ちにまわりましょう。 ●山狩り・囮(2~3人) ・ミツキ ・ニーラ ●山狩り・闇討ち(1~2人) ・エレノア ●馬車確保(1人) ・キーゼ

  17. ミツキ・アインホルン

    あ、計算間違えてるわね、これ……。各役割の人数修正するわ ●山狩り・囮(3~4人) ・ミツキ ・ニーラ ●山狩り・闇討ち(1~2人) ・エレノア ●馬車確保(1人) ・キーゼ

  18. アクティオン

    ではこちらは山狩り・囮の方で。 ●山狩り・囮(3~4人) ・ミツキ ・ニーラ ・アクティオン ●山狩り・闇討ち(1~2人) ・エレノア ●馬車確保(1人) ・キーゼ

  19. ガルレイド・S・グリディッカー

    取り敢えず闇かね。盗賊が減れば囮やら捜索メインに移行できるようにしとこうかと。 ●山狩り・囮(3~4人) ・ミツキ ・ニーラ ・アクティオン ●山狩り・闇討ち(1~2人) ・エレノア ・ガルレイド ●馬車確保(1人) ・キーゼ

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0