【CP】実り豊かな地をここに
藤原ゆう
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シナリオID:309
オープニング
悩める女領主リオン・レスティは、また何かに頭を悩ませているようだ。
食料などの心配がなくなった帝国難民キャンプ。
リオン率いる領民たちの暮らしも、徐々にではあるが軌道に乗り始めたようだ。
そんな中、リオンは何に悩んでいるのだろうか……。
「ねえ、ノイル。ここの景色は、あまりにも殺風景だと思わない?」
リオンの後見役ノイルは、肩をすくめ、
「たしかに殺風景と言えばそうですが……。しかし、それは仕方ないのではないですか?」
難民たちは皆、着の身着のままで、ここまで逃れてきたのだから。
「ここをもっと住みやすい場所にしたいわ。みんなが笑顔でいられる。子どもたちが怖がらずに過ごせる。そんな場所にしていきたい」
ノイルは少し意外な思いで女主人を見た。
少し成長したのだろうか。
難民キャンプの敷地を見渡す横顔からは、たくましさと意志の強さすら感じられる。
「お嬢さまのお気持ちはわかりました。これからは、そのお気持ちを具体的なものにしていかなければなりませんね」
「そ、そうね。でも――具体的にって、どうしたらいいのかしら?」
難民たちが必要としている物はたくさんある。
レスティ家の領地は豊かな田園地帯だった。
麦や野菜がたくさん収穫できる良質な土壌。
領民みんなが、質素ながらも誇りをもって領地での生活を送っていた。
「やはり忘れられないのよ、みんな。毎日体を動かして、農作業に精を出していたことを」
「……」
「うん、そうだね。やっぱり私は、その生活を少しでもいいから取り戻してあげたい。土を耕して、肥料をやって、種を撒いて、作物を収穫する。そんな生活をみんなにもう一度送らせてあげたい」
「――しかし、どうするのです。ここには何もない」
ノイルの不安をよそに、リオンの方は盛り上がってきた。
「畑づくりを始めましょう!」
この難民キャンプを、レスティ家領地のような緑あふれる地に。
すぐには無理だけれど、少しずつ、作物が採れる土地にしていこう――。
●
依頼を受けて集まった冒険者たち。
リオンから説明を受けて、さっそく作業を始めた。
畑づくりはまず耕すところから。
テント地の前にある、だだっ広い土地を開墾しよう。
雑草が生えているところもあり、根の処理も大変そうだ。
耕した後は肥料を加え、冬の間は休ませる。
春になれば種まきだ。
「それだけでは、みなさん、すぐにお仕事できちゃいますから、花壇も作りましょう」
レスティ家がキャンプ地としている土地のぐるりが花畑になったら……。
その光景を想像して、リオンはうっとり微笑む。
「では、畑の開墾と花壇の整備をおねがいいたします」
リオンはぺこりと頭を下げた。
解説
マスターより
リプレイ
とある砦を巡って、激しい戦いが繰り広げられていることなど信じられないくらい、穏やかな日。
レスティ家がキャンプ地としているのは、難民キャンプの中でも西の端っこ。草だらけの荒れ地だった。
日当たりは良いものの、何もない、ただだだっ広いだけの草だらけの荒れ地。
しかし、そこを開墾することができれば、おそらく良い畑となるだろう。
レスティ家の要請で集まった冒険者たちは、さっそく作業を開始した。
●ここを畑とする
「ほう、なるほど。のどかな田園風景であったのですな」
作業に取り掛かる前に、領民たちに故郷の風景がどんなものであったかを尋ねて回っているのは、ハリス・アル・ターミル。
「小川の両側に小麦畑が広がり、各家庭の庭先に畑があったと……」
ハリスはそうやって聞き取りしたものを畑造り班に伝え、測量班がハリスが図面に起こしたものを元に、土地の区割りをしていくことになった。もちろん、その設計図には他の参加者の意見も取り入れる。
「故郷のように多くの作物がたくさん収穫できるようになるには、時間を要するやもしれません。しかし、しっかり手入れをしてやれば必ず応えてくれるのが土というもの! その為にもしっかり耕しましょう!」
故郷で農作業に従事していた領民たちを鼓舞するような言葉をかけ、ハリスは自ら率先して鍬を振るう。
その姿に、領民たちも勇気をもらったようだ。
ハリスの説明を聞いてから、セヴラン・クアルトは提案した。
「野菜ごとに区割りをするのもいいと思うけどどうだろう」
「おお、とてもいいと思います!」
みんなが賛同し、麦畑の他に、各種野菜ごとに区割りされた畑も作られることになった。
バクル・バスリーはとりあえず畑の範囲を決めようと測量を始めた。
居住域の南側。大きな岩が転がっている所にも、抜群の位置感覚でもって真っすぐな線を引いていく。
荒れ地に線が引かれて、メインとなる麦畑の区画ができる。
小路を挟んだ向かいは野菜畑の区画になる予定だ。
「おお、できたね」
バクルは測量道具を農機具に持ち替えて土を耕す。
懸命に鍬を振るう、バクル。
「地道な作業だなあ。確かに、これは良い鍛錬になるね」
農作業を通して魂磨きをする同族たちのことを思うと、今まさに自分がしていることもそうなのだと思う。
ベゴニアは家庭菜園用の畑の区割りをしている。
「ここは、これからゆっくり開墾していけばいいからね」
故郷を追われ、ここまで流れてきた領民たちが、家庭菜園で野菜を作ることで、いつまでも仲良くいてくれたらと思う。
もし、この畑の前に各家庭の家が建築されたなら……。
そんな未来の光景も頭に浮かんでくる。
まだまだ先のことだろうけれど、楽しみになるベゴニアだった。
区割りができると、次は土の中の石を拾う。
「少しでも領民の人が作業を始めやすいようにしてあげたいね」
体力がないから鍬で耕すのには向いていないと自分では思う。
しかし、石拾いも地味ではあるが、根気のいる仕事。中腰で作業をするのも大変だ。
●領民たちの未来がここに
「掘るぞー!」
スコップを頭上に掲げながら気合を入れるのは、ティラミス・ノーレッジ。
看破を乗せた探波を使って、土中に埋まっている石がないか調べる。あれば、掘り出して脇にまとめておく。小さな石は手で拾えばいいが、少しい大きなものはスコップで掘り出さなければならない。
「これは存外大変だな」
しかし石や岩は作物の根にとって生育の妨げになるものだ。なるべくない状態の方がいい。
地道で根気のいる作業だ。
「農家ってのも大変だな」
もうすっかり耕されたあとの畑しか見たことないから、こうやって一から畑づくりをすることの大変さを知る。
来年の秋の収穫祭には、このキャンプ地産の野菜にお目にかかれるといい。
ティラミスは石を取り除いた土に鍬を振り下ろした。
ケン・Z・ブラッドリーはティラミスの近くで耕していた。
「オレはこういうの初めてだ」
と話す、ティラミスに、
「俺は里でも耕すことはしていたな」
と、ケンは返す。
「なら、耕し方にもコツはあるか?」
尋ねられて、ケンはティラミスに鍬の振り方を指南する。
「常日頃の鍛錬の結果を、ここで発揮するぞー!」
ティラミスの気合いに、少々気圧されながら、ケンは区割りされた畑にせっせと鍬を入れた。
「本当は水路を引けたらいいのだけど、それはまた後日になるのかな……」
エルゼリオ・レイノーラは、計画を話し合う仲間たちに自分の考えを述べる。
「今回は、貯水槽を作りたいんだよね」
領民の中にも協力を申し出る者がいて、木材や石材を集めて、貯水槽の製造が始まった。
たらい型の貯水槽に、雨水を貯める仕様だ。
「畑の近くに置いておけば、いつでも水やりができるよ」
しばらくはこれでしのぎ、また余裕が出れば、水路を引くといいだろう。
エルゼリオは次に、堆肥作りに取り掛かった。
ここでも領民たちが協力する。
家畜の世話をしているおじさんが堆肥の元となるモノを提供してくれた。
「これを温度が下がったら混ぜて、半年ほどしたら完成だね」
来年の今頃には、この堆肥を使った土で育った冬野菜が畑で育っているかもしれない。
シファー・アルムグニーは泥んこになって草を抜いていた。
「ふあー、大変ギャー」
「あらあら、シファーちゃん。がんばっているのね」
近くで草抜きをしていたリーザヴェールがシファーに声をかける。
「ふふ。汗を拭ったら、お顔が泥まみれよ」
拭いてあげましょうと、リーザヴェールは手巾でシファーの額を拭う。
「リーザ、ありがとギャー」
「あら、シファーちゃん、何を作ってるの?」
周りの草を抜き終えたシファーは、ひと休みしたあと、泥の塊を作り始めた。。
「これをコネコネして、マルマルにして、ギュギュって固めたら、泥団子になるギャ! リーザもやろうギャー!」
「まあ、楽しそうね。泥遊びなんて、いつ以来かしら」
「マルマルにするギャよ」
「シファーちゃん、上手ね」
泥団子を丸めながら、リーザヴェールは土の状態を確認する。
まだまだサラサラで栄養が少なそうな土だった。
「ここから、どう変わっていくのかしらね」
つやつやの綺麗な泥団子ができあがったらお互いに見せあいっこする。
「見てると食べたくなっちゃうくらいツヤツヤだけど、食べたらダメギャよー!」
リオネル・パストラルとファイサル・アル=ファルドは、畑を耕していて偶然隣同士になった。
リオネルは元羊飼い。牧畜には詳しいが、農業は門外漢。
「畑を耕すのも大変だな!」
隣の列を耕していたファイサルは笑顔で応える。
「はい。俺も初めてだから……。でも、あともうちょっとですね。がんばりましょう! リオネルさん、農業やったことないとは思えないです。上手いですね」
「そうかあ? へへ、難民の人たちの食料確保に繋がると思えば頑張れるよな!」
「本当にそうですね」
初対面とは思えないくらい打ち解けて、たくさん話をした二人。
「なんだろうな。気が合う奴ってのは、何も考えなくてもすぐに親しくなれるもんだな」
「そうですね。お話が楽しくて、すっかり話し込んでしまったけど、あともう少し耕しましょう」
「おう、そうだな!」
リオネルとファイサルはその後も仲良く鍬を振るい続けた。
トーラは土の水はけを見て、
「お芋類を植えるのもいいと思います」
と、リオンに助言した。
「なるほど、お芋ですか。たしかにお芋があれば、いざというときの食糧難にも備えられてよいですね」
来年の秋には、ここに芋のツルがたくさん伸びているだろうと思うと楽しくなってくる。
リオンとひとしきり芋畑の計画のことを話してから、トーラは石垣造りに参戦。
パヴェル・A・サムルガチェフが持って来てくれる石はまだまだある。畑を囲うには十分だ。
「石垣があれば、動物避けにもなりますし、余計な争いごとも防げますね」
それから花壇には向日葵の種を撒こうと持ってきた。
向日葵の種を撒くのは春になってからだが、ここに向日葵畑が広がれば、領民たちは明るい花に誘われて、もっともっと前向きな気持ちになれるだろう。
黙々と畑を耕している、マシロ・ロスコ。
時折手を止めては、腰を伸ばしている。
「んん~。これは、なかなか腰にくるなー」
普段は狩りをして過ごしているマシロは、農作業は不慣れだからか、ついつい余計なところに力が入ってしまうのかもしれない。
「まあ、これも人助けと思えばこそ」
えっほ、えっほと鍬で耕す。
だがしばらくするとまた、
「ああ~、腰が~」
と、ストレッチ。
領民たちが少しでも喜んでくれたらと頑張ってみるが、腰の痛みはどうにもならない。
「明日の筋肉痛が心配だなー」
終わったら、しっかりマッサージしようと思う、マシロだった。
「うむ」
グレイ・ナックラーは目の前でできつつある畑の様子を満足そうに見ている。
「これだけの土地を開墾すれば、それだけで立派な鍛錬じゃ」
領主もよくわかっておる。
うんうんと頷いて、グレイは再び鍬を持った手を動かし始めた。
こうして汗をかけば、自分自身の中にたまった『老廃物』を流してくれるだろう。
「まさに、いいこと尽くめじゃ」
この老骨も、日頃鍛えた肉体で、難民たちのがんばりに応えよう。
キーゼは、畑造り全般を通したマニュアル作りを行おうとしていた。
各冒険者がどんな道具を使っているか、開墾の手順、そして作業の反省点など、聞き込みの内容は多岐に渡る。
「これを、冊子にまとめれば、これからの食料増産の足掛かりになりそうです」
教導を使って、調査内容をまとめていく。
「図説は必ず入れないといけませんね」
バクルやリオンから話を聞きながら、必要な事項がまとめられた察しができ上がった。
「この作成マニュアルは、レスティ家だけでなく、難民キャンプの管理者に贈り、冒険者ギルドにお願いして、広く普及させてもらおうと思います」
「素敵です! ありがとうございます! マニュアルが広まって、もっとみんなの暮らしが良くなるといいですね」
リオンはマニュアルを手に、キーゼにぺこりペコリとお辞儀した。
●見栄え良く、防御力を上げていく
パヴェルが石を乗せたイカダを運んできた。
タイダルストリームとフリーズボルトを上手く使って、面倒な場所を通りやすくして効率よくしたのだ。
運んできた石は、井戸を掘っている現場から掘り出されたもの。
それを運んで来てくれたのだ。
次々と石を運んで来てくれるパヴェルに、リオンは感謝した。
「石材があれば、作れるものの幅が増えますね。本当にありがとうございます」
「ちょうど、井戸掘りが同時進行していて良かった。よし。それじゃ、俺は、この石使って石垣造るかな」
畑をぐるりと囲むように、ちょうど人の胸辺りの高さまでの石垣を造った。
石垣づくりには仲間たちも集まってくる。
畑だけでなく、花壇の周りにも石が積まれていった。
ララベル・サン・ディーベルはせっせと花壇となる予定の区画に、区割りされた縁に沿って石を積み上げていた。
畑を囲む石垣よりは低い。
「素敵な花壇になるといいなあ」
「ララベルさん、こんにちは」
声をした方に顔を向けると、領主のリオンが立っている。
すっかり顔なじみの二人だ。
リオンも石を運ぶのを手伝いながら、ララベルと他愛のない話をする。
「故郷もこんな感じに石垣が畑を囲んでいました」
「へえ、そうだったんだね」
それは長年農民たちが守り続けてきた、和やかな田園風景だっただろう。
「花ってどんなのが咲いていたの?」
訊ねられ、リオンの口から出てくるのは、よく見かける花の名前ばかりだった。けれど、そんなどこにもあるありきたりな風景こそ、今の難民たちには必要なんだなと、ララベルは思う。
「綺麗な花が咲くのが今から楽しみだよ」
石を積みながら、ララベルは目をキラキラさせて言った。
●花いっぱいの花壇を作ろう
花壇造り班は、それぞれ持ち場の花壇に散って、それぞれの作業を始めた。
事前に領民たちが森から運んできていた腐葉土を混ぜ込んでから、花の苗や球根を植え始めた。
コルネリウス・アーラは久々に会ったリオンに挨拶をすませ、ビオラにカレンデュラ、それからアリッサムを植えた。
「私は花壇の手前に暖色系の濃い色、奥に寒色の花を植えて、配色に奥行きを持たせたいなと思います。みなさんの気持ちが明るく前向きなものになるといいなあと思います」
コルネリウスは丁寧な手つきで球根を植えながら、一緒に作業をするリオンに、そんな自身の思いを語るのだった。
「花はいいものですね」
そう語るのは、ユネスコ・ビスコ。
ユネスコは花壇の縁取りに、石ではなくレンガを使う。
素焼きのレンガにはいろいろな色があって、それを並べるだけでお洒落な雰囲気になる。
「暑くても、寒くても、山奥に住んでいても、海辺に住んでいても――。花のある暮らしはずっと人の記憶に残るものですよね」
手伝う領民のおばさんも花が好きなのか、ユネスコの言葉ひとつひとつににこやかな反応を返す。
「ここには何の花を植えようかね」
そう尋ねられると、ユネスコは。
「ボクはスイセンがいいです。冬を乗り越えた春先に、可憐な花を咲かせます」
それは、このキャンプ地にとてもふさわしい花のように思える。
『ここからですよ』という思いを込めて、ユネスコはスイセンの球根を、レンガの縁に沿って植えた。
ライル・クライブスは昔世話をしたことがあるからか、花壇造りには思い入れがあった。
「植えるのは、黄色いカトレアがいいなあと思います」
言って、ライルはリオンをちらりと見た。
「ん? ライルさん、どうされました?」
首を傾げたリオンに、ライルは何でもないと首を振る。
この花はリオンをイメージして選んだというのは内緒だから。
カトレアは地植えよりも鉢植えに向く。
ウッドチップを入れた鉢にカトレアを植えた。管理が良ければ、年中花を楽しむことができるだろう
花壇の脇だけでなく、さらに花壇のない居住区域にも置かれたカトレアの鉢は、これから領民たちの心を慰めてくれるに違いない。
ノノアは石を加工してモニュメント作り。
星型やハート形に上手に削っている。
「こういう物を石垣に飾れば、みなさんの心も和むと思いますわ」
手芸が得意なおばさんたちにも手伝ってもらいながら、器用にモニュメントを作る。
そこチューリップの球根をそのイメージに合わせて植えていく。
チューリップは咲いていた花と同じ色を翌年にも咲かせるため、こんな時には都合がいい。
赤い花が咲く予定の球根。白い花が咲く予定の球根。柔らかい土を少し堀って、球根の頭を植えにして置いていく。
春には色とりどりの花が咲き揃い、見る人の心を慰めるチューリップ畑となるだろう。
そこに、スィーリーンがやって来た。
スィーリーンは農業が盛んな故郷にあって、生活に必要な細工物を作るのが得意だった。
「私も仲間に入れていただけますか?」
「わあ、スィーリーンさん、もちろんです。さあさ、どうぞ」
二人におばさんたちを交えた賑やかな手芸会が始まった。
出来上がったモニュメントをノノアが飾っているそのそばで、スィーリーンはチューリップの球根を植えていた。
赤い花が咲く予定の球根。白い花が咲く予定の球根。柔らかい土を少し堀って、球根の頭を上にして置いていく。
生活域から小麦畑までの小路の両脇に植えられた球根。春先に春には色とりどりの花が咲けば、きっと農作業に励む領民たちの慰めとなるだろう。
「チューリップは育てやすいですし、領民の方たちの負担にもなりにくいです。チューリップの花が揺れるこの道を歩くたびに、明るい気持ちになってくださったらいいですね」
スィーリーンの優しい気持ちは、領民たちにしっかり伝わるはずだ。
「私はパンジーを植えようと思います」
最初に何を植えるか話し合った席で、シャルロット・ド・オーシュはそう提案した。
彼女が担当するのは、領民たちが暮らす生活域の近くの花壇。
そこに黄色のパンジーを植える。
「パンジーは色によって花言葉が違うけれど、黄色い花のは『故郷の喜び』という意味があるそうなの。ここの人たちに故郷を思う縁にしてもらいたいわ」
自分たちの故郷の思い出を大事にしてくれる冒険者に、領民たちは深い感謝の意を表した。
この花の黄色を見るたびに、在りし日のふるさとを思い出すだろうと――。
シャルロットのパンジーの隣の花壇には、プリムローズの可愛らしい苗が植えられた。
それを植えたのは、プリム=ホワイトリバー。
この花の花言葉には、『運命を開く』というものがある。
この花言葉を与えた人は、厳しい冬を越え可憐な花をつけるこの小さな花に、生き延びる力強さを見出したのだろうか。
「平和な暮らしが戻り、人生が豊かなものになりますように――」
プリムの願いを受けたプリムローズの花は、早ければ年が明けてすぐ、花を咲かせるだろう。
月の足元には、ペットのバルバトス。
その背を撫でつつ、
「畑を耕したり、花壇を造ったり、難民の人たちもそういうことができるようになったっていうことは、余裕が出てきたのかな」
と、造成されていく荒れ地を眺めながら呟いた。
「お花の色が綺麗に見えるように並べたいね」
花壇班の打ち合わせの折りには、そう提案する。
何と言っても、月が大切に思うのは、植物自身の健康状態だ。
「ニンゲンの価値観より、お花が快適な状態にあるかどうか。そこが一番大事だよ」
植物共感で苗の健康状態やキモチを聞き、その子に最適な肥料や日差しの当たり具合、それから植える深さなども考慮した。
セヴランが、吹き流しや風車を、畑や花壇の側に立てている。
「少しでも農閑期の彩になればいいと思ってさ」
「うん。わたしもそう思って、モニュメントを作ったよ」
ノノアは作った石の星や、ハートを石垣の上に飾り、それから案山子を土に差す。
「これで穀物が実っても大丈夫かなあ」
ノノアが呟いたことに、セヴランはうんうんと頷いた。
●美味しい料理を振舞おう
花を植え終えたコルネリウスは、炊事場に来て料理のお手伝い。
炊事係のおばさんたちに感謝されながら野菜を切る。
「みなさまは、故郷の領地で何をされていたのですか?」
「私は男爵さまのお屋敷で女中頭をしていましたよ。今日はリオンお嬢さまがどうしても冒険者さんたちにお礼がしたいって仰るから、私がおかみさんたちに声をかけて集まってもらったんですよ」
そう言って、女中頭であったという女性はカラカラ笑った。
「まあ、そうなんですね」
コルネリウスもつられて笑い、炊事場を穏やかな時間が流れた。
「僕はシチューを作ろうかな」
ライルはそう言って、大きな鍋に野菜を入れる。
「お水はまかせて」
シャルロットがピュアウォーターで水をたっぷり入れた。
「ありがとう。シャルロットさん」
「井戸もまだ掘削中みたいだから、水汲み大変だろうなって思って。お料理中必要になったら、私がお水を出すよ」
「ありがとう!」
お鍋の中で、コトコト煮え始めた野菜たち。
「このキャンプ地産の野菜で料理ができる日が楽しみだね!」
今度はパン生地をこねながら、ライルが楽しそうに言った。
●お疲れ様パーティ
大きな焚火を囲むように置かれたテーブルで、思い思いにお疲れ様パーティを楽しむ冒険者たち。
ぐったりと机に寄り掛かりながら、コップを傾けているベゴニア。
「疲れた時のお酒はまた格別だけど、酔いが回るのも早いな……」
心配は明日の筋肉痛。
「いや、明日来れば、まだいい方だよね?」
誰に問うでもなく。
ベゴニアはゆっくり目を閉じた。
「うわあ、美味しいギャ~!」
シファーはひたすらご馳走を口に運ぶ。
傍らにはリーザヴェールと一緒に作った、ツヤツヤの泥団子。
「ふふ。いっぱい食べてね。シファーちゃん」
リーザヴェールは楽しげに笑って、グラスを傾けた。
バクルは、一緒に作業をした仲間や同席した領民たちと、畑の未来像を語り合う。
「人参とか収穫できたら、みんなでバーベキューしたいな」
ふと口にした言葉に、周りから賛同の声が上がる。
「来年の収穫祭はバーベキューだろうかな」
「楽しみー」
夢は彼らの希望となり、明日を生きる力になる。
冒険者たちの力添えがある限り、その夢が潰えることはないのだ。
セヴランが演奏を始めた。
それに合わせて彼のペットである栗鼠のララが、まるで踊っているように飛び跳ねる。
「さあ、誰か歌ってくれる人はいないかな?」
声をかけると、領民の中から何人かが、セヴランの演奏に合わせて歌い始めた。
その歌はすぐに、集った人々に広まって……。
「みなさん、今日は本当にありがとうございました!」
いつしか、リオンのお礼の言葉もかき消されるくらいの大合唱になっていた。
マスターコメント
イベントシナリオ普通 報酬:標準25 / 4〜25人
2020年12月12日 14時53分24秒 公開
参加者
相談掲示板
おおおおおっ…このような依頼をどれほど待ったことか…! このハリス、かつてないほどに心の奥が熱く燃えております!! 授恵者が協力し開墾に取り組むならば、地平の果てまでも美しく耕せましょう! (深呼吸)( …農業は日々の糧を安定して得られる基盤として非常に重要な要素です。 この開墾が成れば難民の方々の暮らしもより良いものになる筈。 僭越ながら一農民として全霊を以て作業に当たる所存です。 皆様どうぞ、宜しくお願い致します。 >作業について 依頼主の領主様はかつての所領の風景に近づけたいとの事です。 良ければお話を聞き、それに沿うような形で造園でレイアウトを行おうかと。 要するに花壇や畑を過去の所領を想起させる形に配置する試みですね。 無論皆様の同意と協力が不可欠でありますが、問題なければ是非。 これが難民の方々に心の安寧を齎すことになれば、お喜び頂けるはずです。 ただ、ここは気候も土壌も当然異なります。ある程度の調査は必要でしょう。 土壌などについては地質学で調べる予定でおります。 野菜の種蒔きは後日ですが、その折の参考にはなるかと。 初手から長々と失礼いたしました。共に良き開墾に致しましょう!
ティラミスだ、宜しく頼むぜ。 おぉう白ハチマキのあんちゃん気合入ってるな、全身から頼もしさが溢れ出てるぜ。 俺はあまり畑知識はないが、とりあえず草毟ってスコップで掘り返せばいいんだっけか?
ハリスさんが燃えてる…! あ。トーラです。園芸が少し出来るので畑と花壇と両方やろうと思います。 畑に植える作物は小麦でしょうか? 植えるものに合わせた肥料とか土作りをしないとですね。
マシロだ、どーぞよろしく。 お、なんだか燃えてるのがいるなー。 俺は知識は無いがそこそこ体力はあるつもりだから畑の方を手伝おうと思ってるぞー。
スィーリーンと申します。よろしくお願いします。 ハリス様が張り切っておられて頼もしいですね。 畑は日々の糧を得るのに重要ですし、 花は心を癒してくれます。 難民の方々の為にも頑張りましょう。
おうおう、よっぽど食い物を育てる事に思い入れがあんだな。 タンカを切るのも様になってたぜ。 俺も未来に旨いもんが食えるんなら、力になりてぇなっ。 あーでも、なにをやったらいいかわかんねぇ。なぁ。 ああ、俺はパヴェルな。よろしく。 コネでいえば、よ。前に護衛任務で世話になった農村から、堆肥……つうか糞だな、あれを分けて貰うのはできそうだ。耕した地にまけば少しはマシになると思うぜ。 運び物なり、できそうな事があれば俺も手伝うからなんでもいってくれよ。
コルネリウスです、よろしくお願いします! 私は経験を生かして花壇の整備に取り組みたいと思います。 造園を活用しながら、お花用の土づくりや花が咲いた時のバランスなどを考えてながらやっていきたいです。
私の名前はベゴニアだよ。 皆、今回はよろしくお願いするよ。 うーん、農業に詳しい人がいるとやっぱり気合いが違うね。 基本的には畑の方を手伝いたいと思っているけれど、 私は体力が無いからね……途中で花壇の方に移ることになるかもしれない。
ファイサル・アル=ファルドだ。 農業初めてなんで、頼もしい人がいるのはありがたい。 畑作りで頑張って鍬を振るおうと思います。 どなたさんもどうぞよろしくお願いします!
ノノアよ。よろしくね。 すごくハリスさんが張り切っていますわね。好きな仕事は精が出るわね。わたしも同胞の為に頑張りますが、畑か花壇かどちらか考えるわ。料理に関しては食器配置などのお手伝いだけですね。
ルナだよ。よろしくね。 詳しい人がいるのは頼もしいね。 ルナは植物共感でどうにかするつもり。 料理はニガテかなー。
バクルだよ。よろしくね ハリスさん詳しいね。尊敬するなぁ。 ぼくも体力には自信あるから、畑側で測量や土の耕しの手伝いをしようと思うよ
ライル・クライブスです。 よろしくお願いします。 僕は花壇と料理の方を手伝おうと思っています。 料理は何かリクエストがありましたら言ってください。
No.14
ユネスコ・ビスコです。 花壇の整備に興味がありますので、そちらが中心になると思います。 よろしくお願い致します。
グレイ・ナックラーじゃ わしは田んぼでも耕すつもりじゃ 肉体労働で汗を流す・・・うむ いいことじゃな
No.16
リオネルだ。よろしく頼む。 今のところは畑の手伝いをメインにとは思っているよ。
ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラだよ。 今回はヨロシクね! >行動 ボクは畑作りのお手伝いをする予定。 貯水タンクや堆肥の作成を考えてる。
>土作り あー突然なんだがよ。同系(【CP】カテゴリの)ちげぇ依頼で穴を掘る事になっちまった。はは(笑) もし時間に余裕があんなら、そっちで取れる砂利や石を運ぶ事ができるかもしれねぇね。 そういうのは明るくねぇもんで、詳しい奴ぁ、いねぇか……?
パヴェルさん、石や砂利が出るのであれば、積んで石垣を作るのどうでしょう? 種を植えたら鹿やイノシシ避けに柵が必要かなと考えていたので、捨て場所を探しているなら持ってきていただけると助かります。 畑を全部囲う程は無くても、石垣の方が強くて長持ちしますし、一部だけでも石垣で囲めたらと思って。
ん。トーラの嬢ちゃん、提案ありがとうな。 漠然とするより目的がありゃぁ俄然やる気がでるってもんさ。
>砂利や石 トーラ殿の案のほかに、柵には量が足りずとも道の舗装などに利用できそうです。 食うに困らぬ状況とはいえこちらは難民キャンプ。資材は幾らでも欲しい所かと。 パヴェル殿が都合してくださるのであれば大変有難く。 >資材について 整備に活用できる資材の総量や限界などが分かればある程度指針となるでしょうか。 素晴らしい案でも材料がなくては実現が覚束ないことになります。 私も聞きたい事がありますので、これも含め領主様に質問させて頂きましょう。
連投失礼、質問をば。 Q1:造園や開墾に使用できる資材の限界はどの程度でしょうか? また、他の地区から廃材を運搬するなどして補充することは可能でしょうか? Q2:以前の所領の風景画のようなものをお持ちでしょうか?無ければ、風景の子細について領主様や後見役の方、領民の方々にお聞きすることはできますか?
プリムです!宜しくね! 花壇の整備をしようかなと思ってます
領主後見役のノイルです。 みなさま、この度はレスティ家の畑づくりにご参加くださりありがとうございます。 ハリス様。 ご質問をいただきありがとうございます。 回答は今しばらくお待ちくださいませ。 ただいまリオンお嬢さまが必死で回答文を作成中でございますので……。
シファーだギャア~。 お団子作って遊びた…ゲフン、土を弄りたいなって思ってるギャ! でも正直何したら良いか分からんので声かけてくれてもいいのよ! ギャギャ!
ハリスさん、お待たせいたしました! ご質問に答えさせていただきますね。 Q1:造園や開墾に使用できる資材の限界はどの程度でしょうか? また、他の地区から廃材を運搬するなどして補充することは可能でしょうか? A.資材はレスティ家が用意したものに加え、井戸掘りの現場の方で確保された資材を難民キャンプ全体で分けて使うことになっていますので、資材不足の不安はほぼないものと思われます。 また、井戸掘りの際に出た石材を、こちらに運んで使用する許可もいただきましたので、どうぞご活用ください。 もしご自分で使いたいと思われる材料がありましたら、自由に持ち込んでいただいてかまいませんよー。 Q2:以前の所領の風景画のようなものをお持ちでしょうか?無ければ、風景の子細について領主様や後見役の方、領民の方々にお聞きすることはできますか? A.残念ながら風景画を持ち出す余裕はありませんでした。 もちろん、私たちでお答えできることなら、なんなりとお尋ねくださいね。 なお、私たちの領地は、麦畑や野菜畑が広がる、どこにでもあるような(西洋風の)田園風景であったと思っておいていただければ良いと思います! お力を貸していただけるだけでありがたいです。 どうぞよろしくおねがいします。
おお、領主様からの返答が!すげえな。 必要だったらさせてもらうぜ。 んじゃ、お許しも出たことで俺は(3)で運搬方面に行動詰めるぜ。 あちらさんでの許可は俺が再度そっちの掲示板で聞いてみるかねぇ
ごきげんよう。リーザヴェールよ。 皆様と一緒にのどかな風景を作る手助けが出来れれば、と思うわ。 あら、ふふ…シファーちゃんったら。一緒にお団子作って遊びましょうね。
>リーザ 遊ぶ~~~!!!
>領主様 ご回答に感謝致します。 資材の不安がないようであれば、相応に大規模な造園が可能になりそうですね。 風景については、現地にて領民の方々と共に様相を聞かせて頂きたく。 そろそろ出発時期も差し迫ってまいりました。 現地で鍬を振るうのが待ち遠しいですね…(
出発直前になってしまったわ……シャルロットよ、よろしく。 皆土いじりする気満々みたいだし、私は料理の手伝いでもしてましょうか。 生活魔法とピュアウォーターがあるだけでも大分違うでしょう。数十人分要るものね。