【CP】容疑者レイウェスト
革酎
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シナリオID:286
オープニング
ヴァイセントラフ砦から東方に数日進むと、峻険な山岳地帯へと足を踏み入れる。その山中に、ロモズ旧村と呼ばれる難民キャンプがあった。
十数年前に住民の高齢化と過疎化で廃村となった土地だったが、帝都を発った一部の難民が、近隣のカルケル集落群の長老達に紹介され、ロモズ旧村を難民キャンプとして活用する運びとなったのだ。
放棄された施設や畑地は、少し手を加えればすぐにでも復活させることが可能であり、カルケル集落群を臨時の難民キャンプとして定めていた帝国民達は、ロモズ旧村への難民キャンプ移設をふたつ返事で受け入れた。
カルケル集落群の臨時難民キャンプを守っていた冒険者や傭兵達も、約半数がロモズ旧村へと移動した。クリーパーのみならず、賊や魔物の襲撃からも難民達を守らなければならない。その為には、一定数の戦力がロモズ旧村に腰を据える必要があった。
ロモズ旧村が本格的に難民キャンプとして機能し始めた後も、帝都を脱出した帝国民の流入は数日おきに続いた。
その中にひとりの貴人の姿があった。名を、リーヴァー・シュランドルという。帝国崩壊直前に家督を継いだばかりの、若き子爵であった。
リーヴァーはロモズ旧村へ到着するや否や、難民や冒険者達に奇妙な問いかけを並べ始めた。曰く、
「レイウェスト殿下がいずれの難民キャンプにいらっしゃるのか、ご存知の方は居られぬか?」
シュランドル家は皇族周辺に近い家柄ではなかった為、純粋に帝国貴族のひとりとしてレイウェスト皇子の安否を気にかけての問いかけだとばかり思われていたが、しかし、その真意は誰にも分からなかった。
このリーヴァーの行動は、ロモズ旧村での支援物資調達を担当していたフランクス商会の隊商頭カーノス・フランクスの耳に、半日と経たずに飛び込んできた。
カーノスはリーヴァーが宿泊所として使用している旧村長宅を訪ねた。
「シュランドル閣下。レイウェスト殿下をお探しのようですが、我が商会を通じてご連絡差し上げた方が宜しいですかな? 実は明日か明後日頃に、殿下がロモズをご視察にいらっしゃる手筈になっておりまして」
「いや、それには及びませぬ。それに私が殿下をお探しする理由は、決して前向きな理由ではありません」
一体どういうことなのか。
カーノスが困惑気味に沈黙すると、リーヴァーは驚くべきひと言を放った。
「此度の帝国崩壊直前、我が父テレンスは暗殺されました……下手人は恐らく、レイウェスト殿下です」
そのひと言に、カーノスは驚きを禁じ得なかった。
テレンス・シュランドルは生前、対メドゥの指先戦略の軍事作戦に関わっていた武闘派貴族だった。そしてその薫陶を受けたリーヴァーもひとりの武人として、メドゥの指先殲滅に強い意欲を燃やしていた。
父テレンスが、レイウェストの手にかかるまでは――。
●課せられた使命
ロモズ旧村近くの山道で、その美青年は弾ける様な勢いで飛び起きた。
既に陽は斜めに傾き、樹間からオレンジ色の力無い光が差し込んでいる。身震いする程の冷え込みに、美青年は思わず己の肩を抱いた。
が、同時に異変を感じた。強烈なまでの血の臭いが美青年の鼻孔を鋭く衝いた。
美青年が左右に視線を走らせると、驚くべき光景が飛び込んできた。周囲に、幾つもの遺体が散乱していた。いずれも中年の男女で、美青年には見覚えのある顔ばかりであった。
「そうだ……クリーパー……ッ!」
美青年は、手近に放り出してあった長剣を拾い上げ、慌てて立ち上がった。だが無情なる殺人生物の姿は、どこにも見当たらない。
そうこうするうちに、やっと記憶が蘇ってきた。美青年は、今やものいわぬ遺体と化した従者や召使、給仕、或いは護衛兵といった面々と共に、ロモズ旧村を目指していたのだ。
ところが昼食を終えた直後、小型のクリーパーの群れに襲われたのである。
美青年は果敢にも、護衛兵達と肩を並べて立ち向かったが力及ばず、強烈な一撃を腹部に浴びて気を失ってしまった。その後のことは、分からない。
全ての従者、召使、給仕、護衛兵らは無残に殺害され、こうして目の前に遺体を晒している。では、あのクリーパー共は一体どこへ消えたというのか?
「よぉ殿下。お目覚めかね」
不意に背後から、やや渋みのある声が美青年の鼓膜を叩いた。振り向くと、そこに白銀虎のハーフビーストが静かに佇んでいた。
「心配要らんよ。あのクリーパー共なら俺が追い払っておいた。そのうち、ロモズに向かうだろうがな……ところで、大丈夫か?」
ハーフビーストが、頑健な体躯を僅かに屈めて美青年の顔を覗き込む。最初は疑念の色を浮かべていた猫科の瞳が、やがて得心したかのように笑みを湛えた。
「おやおや、そういうことかい……だがまぁ、案外その方が、都合が良いかもな」
「貴殿は……?」
美青年は訳も分からず、訊いた。白銀虎の戦士は、からりと笑った。
「俺はジルベルさ。まぁ覚えてねぇなら、別にそれでも構わんよ」
漆黒の革鎧に身を包んだ屈強なハーフビーストは、美青年に背を向けて下りの山道へと足を踏み出した。だが数歩進みかけたところで、ふと足を止めた。
「お前さんのおつむがどうなってようが、正直俺の知ったこっちゃねぇがな。ただ、やるこたぁちゃんとやってくれよ、レイウェスト殿下」
美青年――『レイウェスト・バルダス』はごくりと息を呑んだ。
己が為すべきこと。
その内容に、ようやく思い至ったのである。
(そうだ、私は……)
レイウェストは、鉛の様に重たい足を引きずって、山道を登り始めた。
(ロモズで……仕留めなければならない。あの男を)
その男の名は、リーヴァー・シュランドル。
入手した情報では現在、リーヴァーはロモズ旧村の難民キャンプに身を寄せている筈であった。
解説
マスターより
リプレイ
カルケル集落群から難民キャンプが移設されたロモズ旧村は、今やこの地に移り住んだ帝国難民達にとって唯一の拠り所となっていた。自分達の生活を辛うじて成り立たせる為の、最後の砦だといって良い。
そのロモズ旧村に対する小型クリーパー接近という情報は、彼らにとって受け入れ難い事実であった。
当然ながら、護衛として雇われた冒険者や傭兵達の出番となる。
ロモズ旧村は山地に囲まれた僅かな平地を切り拓いて造営された村であり、外壁としての木造柵や物見櫓が防衛機構の一部を為している。
だが当然ながら、それだけでは不足だ。
そこでシスル・ノーティラスの発案により、鳴子や落とし穴を周辺に設置することで守りの増強とした。設置には巡視隊や難民らの手も借りたが、いざクリーパーが出現した際には冒険者が前面に立って戦うこととし、彼らにはロモズ旧村内へ速やかに避難するよう指示が出されてあった。
そして、陽が山裾の向こう側へと完全に消えた、宵の薄闇の中――シスルは全ての迎撃準備が整ったことを自ら足を運んで確認を進めていたが、物見櫓の上に立ったルチル・プルメリア・グレイハーツからの警鐘の声に、はっと面を上げた。
「来たよ、南西の方向、河原沿いの平地。巨大蜘蛛型一体、四足歩行の猛獣型一体、それから……二足歩行の人型が一体」
呼びかけた直後、ルチルは数メートルの高さの物見櫓からするすると滑り落ちるような勢いで地上に降り立った。戦闘態勢に入る動作そのものは極めて俊敏で何の迷いも無い。だが頭蓋の仮面の奥に隠された瞳には、戸惑いの色が僅かに見られた。
ルチルも、そしてシスルもリーヴァー・シュランドル子爵から、彼の父親であるテレンス・シュランドル殺害の一件を聞かされていたからである。
ふたりはクリーパーが接近してくる方角に最も近しい南西角の木造柵外側で布陣することにした。
「それにしても、本当に下手人はレイウェストかね? 奴等……メドゥの指先は目的の為なら何でもするような連中だ。特定の人物の姿を利用した暗殺、とかも十分あり得るんじゃないかね」
「さぁ、どうだろうな。どうも話がややこし過ぎる。本当に間違いねぇのかって思うんだがね」
駆け寄ってきたルチルに、シスルは僅かに肩を竦めた。だが、この話題に関してはここで一旦打ち切りとなった。河原を遡ってくる三体のクリーパーがいよいよ視界に入ってきたからだ。
と、そこへ主戦力たるアレン・ボールドウィンとレイ=レーベンス=レックフォード、そして後方火力担当のリディリディ・トゥラ・イェレミースの三人が駆けつけてきた。
「悪い、少し遅くなった。子爵と話し込んでたら、ついつい長話になっちまった」
頭を掻きながら、アレンは盾を背負い、槍を両手で構えた。傍らではレイも槍を小脇に抱えているが、こちらは盾を構えての防御姿勢だ。突撃のアレン、防御のレイといった具合に役割分担が出来上がっているらしい。
「射程に入ったら、最初に私が仕掛けます。後は、その、皆さん、援護をお願いします」
幾分緊張気味にリディリディが声を震わせる。だが決して怯んでいる訳ではない。ただ単に、難民を守りたい一心で目の前の敵に集中しているだけであった。
「子爵も、もうすぐ駆け付けてくる……しかし大した御仁だ。貴族でありながら自ら刃を振るって民を守ろうという気概は見上げたものだよ」
レイの言葉に、シスルとルチルは互いに顔を見合わせた。
更にアレンが意外な台詞を口にした。
「俺も直接話を聞くまでは想定していなかったんだが、レイウェスト皇子はリーヴァー子爵にとっては確かに父の仇と見做せるそうだが、実際に殺された親父さんから見れば、皇子は寧ろ恩人だって話らしいぜ」
一体、どういうことなのか。
シスルとルチルが更に話の続きを促そうとしたが、しかしそれは叶わなかった。先頭を突き進んでくる猛獣型クリーパーが仄かな月明かりの下で、リディリディの巨岩炸裂弾の射程内に飛び込んできたのである。
リディリディは予告通り、何の迷いも無く先制攻撃を叩き込んだ。
●見えぬ真意
旧村長宅で武装を整え終えたリーヴァー・シュランドル子爵は、冒険者のセロンガード・シュタインドルフと隊商頭カーノス・フランクスを従えてクリーパー出現地点へと足を向けようとしていた。
「お父君は満足そうな死に顔をしておられた、ということですか」
暗い村道を進みながら、セロンガードは肩を並べるリーヴァーの横顔を覗き込んだ。リーヴァーは複雑そうな面持ちで静かに頷き返す。
「父は不治の病に侵され、余命幾ばくも無かった。武人でありながら病魔に破れて人生を終えることに、最大の屈辱を感じていた」
しかし暗殺者が現れ、父テレンス・シュランドルは激闘の末に命を落とした。最期の最期に武人として刃を交え、戦いの中で死ぬことが出来たとして、心からの満足を得て世を去ったというのである。
「つまりその暗殺者……レイウェスト皇子殿下は敢えて真正面から刃を切り結んだと?」
カーノスも驚きを禁じ得ない。暗殺者ならば最も確実な殺害手段を取る筈だ。なのに敢えて危険を冒して刃を切り結ぶとは一体、どういうことであろう。
「私が駆けつけた時、殿下は父の書斎の窓から離脱なさろうとしていた。殿下は、御尊顔をお隠しになろうともされていなかった」
その時のレイウェストの表情が酷く悲しげに見えた、とリーヴァーは語る。更にセロンガードが何かを問いかけようとした時、不意にリーヴァーの歩みが停まった。瞳の中に動揺の色が泳ぐ。
セロンガードとカーノスがその視線の先を追い、そしてあっと驚きの声を漏らした。
村道前方に、長剣を携えたレイウェスト・バルダスの姿があった。何ともいえぬ空気が、場を支配した。セロンガードもカーノスも、どのように動くべきかで大いに迷った。
だが、口火を切ったのはレイウェストの方であった。
「クリーパーが三体、迫っている。私の護衛や付き人らも全員殺された。迎撃に行くぞ」
「……御意。お供致します」
リーヴァーは即答した。目の前に居るのは、父親殺しの容疑者かも知れない。であるにも関わらず、リーヴァーはクリーパー迎撃を優先させたのである。英断といって良い。
セロンガードは内心で感嘆を禁じ得なかった。
そしてこの様子を、ロモズ旧村南西角で対クリーパー戦に臨んでいるルチルも、ペットの栗鼠の感覚を通して認知していた。リーヴァーの証言と、レイウェストがロモズ旧村に向かっている情報から、リーヴァーの近くに栗鼠を配置していたのである。
アレンは巨大蜘蛛型、レイは人型、そしてシスルは猛獣型を相手に廻しており、三人はいずれも一進一退の攻防に突入している。ここにセロンガード、リーヴァー、そしてレイウェストの三人が加われば、それぞれ二対一の状況に持っていくことが出来るだろう。
だがしかし、あのレイウェストを戦力として数えて良いのかどうか。
レイウェスト参戦の事実をルチルから伝え聞いたリディリディは、疲れた様子ながらも歓迎の意を示した。戦闘開始直後の序盤、炎の魔術を立て続けに行使したことで心身共に相当な犠牲を払ったリディリディだったが、その瞳はまだ闘志に溢れていた。
「もしかしたら、ここに現れた皇子は本物なのかも知れないね」
「それはそれで私達も、色々と気苦労が多くなりますけどね」
薄い笑みを返すリディリディに小さく肩を竦めながらも、ルチルは支援の鏃をそれこそ雨あられの如く降り注がせた。
●撃破
三体のクリーパーは決して弱い敵ではなかったが、しかしアレン、レイ、シスルの手に負えないという程の強さでもなかった。
最初に敵を斃したのは、アレンであった。兎に角攻撃に全力を注ぎ、巨大蜘蛛型に反撃の余地すら与えない猛攻であった。己の耐久力がどこまで削られるかという懸念もあるにはあったが、アレンの技量と巨大蜘蛛型の戦闘力の差は歴然だった。
「よし……次はあの人型だな」
巨大蜘蛛型を仕留めたところで、アレンはレイの戦線に加わった。
セロンガード、リーヴァー、レイウェスト、カーノスらが到着したのは、その直後であった。増援は、先に斃せると踏んだ人型に対して戦力を集中させた。
「やぁ、久しぶりだね。私を覚えているかな」
抜き身の長剣を携えて傍らに駆けつけてきた美貌の青年に、レイは探るような声を投げかけた。かつて酒を酌み交わした仲だと伝えたが、生憎レイウェストの方は短期間に出会ったひとが多過ぎた為、申し訳ないがすぐには思い出せないとややつれない返事で応じてきた。
確かにそれもそうかと、レイは苦笑を禁じ得なかった。
人型クリーパーは、正面で防御を固めるレイとセロンガードの圧力に押され、左右から仕掛けるアレンとレイウェストの攻撃を捌き切れなかった。明らかに、手数で冒険者の側が圧倒している。
ならばと、ルチルが至近距離にまで駆け付けてきた。ほとんどゼロ射程に近い位置から、猛烈な破壊力を纏った矢を叩き込んだ。
「よぉし、あとひと息だよッ!」
ルチルの号令を受けて、冒険者と貴族が一斉に刃を振るう。その数秒後には、人型も斃されていた。
残るは猛獣型であったが、こちらは少々厄介だ。その俊敏さと機動性に対抗出来るのは、シスルひとりだけだった。尤も、最初にリディリディが持てる魔力の半分以上を尽くしてこの猛獣型に決定的な打撃を加えていた為に、その動きは相当に鈍っている。
速度では互角ながらシスルが戦いを優位に進めることが出来たのは、リディリディの開幕魔法連撃が大いに寄与していたといって良い。
「機動性を潰せッ!」
レイウェストの音頭で、冒険者達と貴族が猛獣型の移動範囲を潰しにかかった。こうなると、シスルの独壇場である。
「良い加減、じっとしてろッ!」
シスルが二刀流に構えた刃から光の帯が放たれ、猛獣型の動きを一瞬、封じた。猛獣型はアレンとレイに気を取られていたのか、シスルの光の呪縛から逃れるタイミングを失った。そのシスルが猛獣型の側面と脚部に次々と深手を負わせてゆく。
やがて、この猛獣型も数分と経たずしてものいわぬ骸と化した。
冒険者達も、貴族も、そしてレイウェストも多少呼吸があがってはいたが、まだまだ余力を残している。圧倒的勝利といえるだろう。
「何とか、守り切ることが出来ましたね」
手近の岩にやや腰から砕けるような格好で座り込むリディリディ。だが、その表情に浮かんだ笑みも一瞬で消えた。レイウェストが沈痛な面持ちで、リーヴァーと対峙する位置に立っていた。
「リーヴァー卿。貴殿に、お父君の最期のお言葉を伝えなければと思っていた」
そのひと言は冒険者達に、衝撃を与えた。目の前に立つレイウェストが、テレンス・シュランドル殺害犯であることを自ら認めたことになるのだ。
対するリーヴァーは、臣下の態度を崩すことなく、黙然と佇んでいる。
●風雲
きゅるきゅると、何かが空を切る音が急速に近づいてくる。
最初に気づいたのはルチルとシスル、そしてセロンガードだった。ルチルとシスルには何の音かは分からなかったのだが、セロンガードにはすぐにピンときた。以前、一度だけこの音を耳にしたことがあったのだ。
直後、レイウェストの頭部が激しく前に揺れた。闇の中で血飛沫が舞った。
緩やかにVの字を描く物体の先端が、レイウェストの後頭部から生えるようにして突き刺さっていた。それは握り手部以外の全てが鋭利な刃として作られている巨大なブーメランであった。
「……で、殿下ッ!」
慌てて駆け寄ろうとするリーヴァーを、アレンとレイが思わず押しとどめた。その場に昏倒した美男は驚きの表情を浮かべたまま絶命していたが、しかしその面はレイウェストとは全く似ても似つかぬ、別人へと変貌していたのである。
程無くして、河原脇の茂みの奥から、ひとりのハーフビーストが姿を現した。白銀虎の毛並みが月光の下によく映えていた。
「……ジルベルッ!」
猛然たる勢いで矢を構えるセロンガード。だがその白銀虎、即ちジルベルは薄ら笑いを浮かべながら、待て待てと制するように掌を振った。
「勘違いすんな。俺は敵じゃねぇよ。しかし危のうございましたなぁ、閣下。その男はメドゥの指先に属する暗殺者で、ジェリウス・イーグラーって野郎でしてね。お父上を殺害したばかりか、閣下のお命まで付け狙っていたんですよ」
乾いた笑いを漏らしながら、ジルベルは不敵にも真っ直ぐに冒険者達と貴族のもとへと歩を寄せてきた。
冒険者達は一斉に警戒し、リーヴァーを守る布陣を取った。だがジルベルは先程までレイウェストだった者の遺体頭部から鋭利なブーメランを抜き取ると、背負っている専用の鞘へと収めた。二刀流の剣も腰に吊るしたままである。つまり、戦う意志は無いということを態度で示していた。
「お前、メドゥの指先の暗殺者じゃないのかい?」
「それならもうすっかり、足を洗ったさ。今じゃ王国の、とある貴族様専属の遊撃兵ってな身分でね」
ルチルの問いかけに、ジルベルは小さく肩を竦めた。だが、その台詞が虚偽か真実かを確かめる術は今のところ、誰も持ち合わせていない。
ならば、事実が確認されるまでは敵と見做すべきであった。
セロンガードは、奥歯を噛み鳴らした。ジルベルへのリベンジの為に、更なる訓練を己に課してきた。この場で決着をつけて良いのであれば、今すぐにでも叩きのめしてやりたい。
だがもしも――ジルベルが本当に王国貴族所属の遊撃兵であったとすれば、ここでジルベルと斬り結ぶ訳にはいかない。
斃すべき仇が目の前に居るというのに、手を出すことが出来ないジレンマ。セロンガードの悔しさは、同じくリーヴァーを守る布陣を取っているアレンやシスル、レイ、ルチルらにも十分に伝わっていた。
「時に閣下。現在ご滞在中のロモズ旧村ですがね、実は私の雇い主の貴族が保護領として迎え入れようと準備を進めております。その雇い主……ヴァンティール子爵が是非ご挨拶したいと、そのように申しております」
それだけいい残して、ジルベルは踵を返した。余りにも、話が出来過ぎている。暗殺者から命を救ったという形で、ジルベルはリーヴァーと縁を繋ぐことに成功した。
ジルベルの極めて一方的な台詞に、リディリディは疲れを忘れて跳び上がる様に立ち上がった。表現そのものは難民保護の為という建前だが、要はロモズ旧村と帝国避難民を自らの領地領民として、公式に支配下へと引きずり込もうという魂胆であろう。
それは形を変えた覇権主義だ。遂に一部の王国貴族が、崩壊した帝国に牙を剥き始めた瞬間だった。
(もしかすると彼は……王国貴族の野心の為に利用されただけなのか)
レイは若き暗殺者の亡骸をしばしの間、じっと見つめた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2020年12月05日 15時10分53秒 公開
参加者
ルチル・プルメリア・グレイハーツ
- イェレミース トゥラ リディリディ
レイ=レーベンス=レックフォード
シスル・ノーティラス
アレン・ボールドウィン
セロンガード・シュタインドルフ
相談掲示板
情報屋のルチルだ。 クラスはシューター。よろしく。
シスル・ノーティラス。シーフだ。 とりあえず小型クリーパーの群れから村を守ること、その上で事態を収拾、って感じか? 何がどうなりゃ正解かわかんねーな……少し報告書漁ってくるか。
シューターのセロンガードです。 お見知り置きを。 ふむ、ジルベルですか…奇妙な縁ですね。 奴がいるという事はメドゥの指先絡みですか。
No.4
キャスターのリディリディです・・・。 その、よ・・・、よろしくお願いします。
まだ全員揃ってないが話を進めた方がよさそうかね。 大きく分けてやる事は「クリーパーの対処」と「レイウェストとリーヴァーの衝突の対応」か。 クリーパー自体は大した事ないようだが、後からくるレイウェストや近くにいそうであるジルベルの方が問題かね。 リーヴァーも武人となれば戦闘に参加する可能性もあるし、リーヴァーが味方せよ敵にせよ後で言う理由から放置したくない。 戦闘中に内ガバとか洒落にならんし、レイウェストが入ってきたら誰かが確保して情報を引き出しておくのがよいかね。 >メドゥの指先 各自過去依頼を参照したとは思うが(メタ視点でいう同じMSの出した依頼で)難民キャンプに潜り込んだ『メドゥの指先』が確認されている。 ジルベルとの直接の邂逅はないから、こちらはセロンガードの方が詳しいか。 メドゥの指先絡みとなれば恐らくテレンスは奴らに暗殺されたのだろう。メドゥの指先を知っているのなら、事前情報として疑う事もできそうさ。 リーヴァーのメドゥの指先への敵対意識が確かならこちらも抹殺対象に入ってそうだね。 実はというと、今ロモズに向かっているレイウェストが果たして本人なのかという疑念がある。 偽レイウェストはこれまでにも難民キャンプに出た事があるようだからね……。実際に本人だったら悪いが前例があるとね。 レイウェストと思い込まされた暗殺者の可能性もある。 一応迷宮都市で面識はあるがMSが違うからそれを本人かどうかの確認に使いづらいのがやや困った所だな。 アタイの想像だがNPCにはメドゥの指先が何か仕込んでいる可能性がある。リーヴァーの警戒を怠らないようにしたい理由はこの辺りだよ。
ウォーリアのレイだ。 よろしく。
No.7
えっと、前提として私たちはロモズの難民キャンプを守る形として就いていて、テレンス・シュランドルさんの殺害を行ったのがレイウェスト殿下だと被害者の子息であるシュランドル子爵から聞いているわけですね。 そしてPL情報ですが、レイウェスト殿下と思わしき人がロモスへと向かっている・・・。 そうですね・・・。 依頼として受けているリーパーの対処は確実に行っておきたいです。 グレイハーツさんも大きく分けてと仰っているように、相手リーパーは小型なので対応を分けてもいいかもしれません。
アレン・ボールドウィン、クラスはウォーリアだ。 よろしく頼むな。 >レイウェストと思い込まされた暗殺者 そんな感じするよな。描写からしてすんげぇ胡散臭ぇし。 つっても、俺は会ったこともねぇから、今んとこ正体を見破る取っ掛かりがねぇや。 >対応を分ける いいんじゃね? 1人か2人くらいは自称レイウェスト対策に回った方が、対クリーパー側は落ち着いて対処できんじゃねぇかな。 後手に回るよりは先に手を打っときてぇ。 具体的にどう手を打つかはまだ思い付かねぇんでノーコメントで。 あー、レイウェストがロモズに向かってんのはPC情報だが、 ”今”ロモズに向かってるって意味ではPL情報ってことになんのかね? イイ感じにPC情報に落とし込みてぇな。
このレイウェストが本物なのかどうか、だよなあ。 つってもルチルの言う通り、あたしらにはそれを断言する根拠がねー。 あたしは視察の時、本人に会った。会ったけど、偽物になんかしら仕掛けがあったら、見抜けるかどうかはわかんねーしな。 対応を分けるのは賛成だね。アレンの言う通り、1~2人割くのがいいと思うぜ。 具体的対応は……とにかくあたしらには詳細を知る手段が少ない。 だから、目端聞かせてうまく止めに入るしかねーかと思ってんだけど。 最悪の事態を避けること。つまりレイウェスト(?)とリーヴァーが殺し合うような事態を避けられれば即座にとりあえずは良しなんじゃねーかなと思ったんだけど、どーよ。 それこそメタだが、このレイウェスト(?)、なんかの切欠で自分がレイウェストじゃないって思い出しそうな気配もある。 生かしといて締め上げりゃなんかわかるんじゃねーか?
悪ぃ、「即座に」が余計だったな…… そこだけだから発言残しとくけど、なんで混ざったんだ?
>前提 リーヴァーとレイウェストの間にある確執は聞いているし、メドゥの指先の名前が出てるから 開始時点で既に裏がある事に勘づけていいと思う。 >対応 考察を長々と語っちまったが、シスルの言うように1,2人で間に割って入るようにレイウェスト(?)を確保するイメージだね。 本物にせよ、偽物にせよ、保護は順当な手筈と思うな。 リーヴァーが戦闘に参加するか、戦闘中も難民キャンプで待機しているかが不明瞭だが遭遇した場合にリーヴァーを諫める人員も必要と思う。 推測だがジルベルがレイウェスト登場の騒ぎにかこつけて何かしでかそうと企んでる可能性もある。 リーヴァーの方にペットをつけておきたいのだがどうだろうか。 それと、レイウェストが自分の正体に気づく可能性についてだが。 「場合によってはレイウェスト自身がPCの皆様と敵対する可能性もあり得ます」とあるように、記憶を取り戻して誤魔化せないと悟ればなりふり構わずなる場合も含んでるように思えた。 クリーパーがまだ暴れてる間は怪しいと思っても踏み込み過ぎない程度が丁度いい気がするね。 後は怪しまれない程度に……具体的にはどうなんだとなるかもしれんが所持品も見ておいた方がいいと思う。 >”今”ロモズに向かってる そうだね、具体的な日付や時間帯は言われてないからその認識で合っていると思う。 逆に時系列によってはレイウェスト(?)の出現を少し早すぎると思うかもしれないね。
No.12
え、えっと・・・。 そろそろ相談を固める時期でしょうか。 とりあえず割り当てだけでも。 私はまずはクリーパー対応側にあたろうと思っています。 魔法を行使して確保や仲裁に入るというわけにもいかないでしょうし。 >ペット シューターの方が扱うペットは感覚を共有して意思疎通ができるんですよね。それならば有り難いです。
対応を分けるのは賛成だよ。 私はレイウェストへの対応を希望しておくよ。 本物でも偽物でも会話を試みて注意を引いてみようかな。何かしらわかることもあるかも知れないし。
そんじゃ、俺はクリーパーの対応すんぜ。 ウォーリアが1人いた方が都合いいだろうしな。
あたしはレイウェスト(?)のほうが気になってる。 どこまで役に立つかわかんねーけど一応面識はあるし、咄嗟に割って入るのに向いてるスキルはあるしな。 リーヴァーの話は聞いてる前提でいいらしいから、そのつもりで身構えとくぜ。 何が起きるかちょっと予測しづらいんで、もしレイウェスト(?)との遭遇がクリーパー迎撃とタイミングや場所が別になるならそっちに集中するし、同時に発生しそうなら戦闘しながらレイウェストを気にしてるって行動になるかな。
私も、レイウェスト(?)側に志願致します。 ジルベルとはケリをつけたいと思いますので…
おっと、それじゃああたしはバランス的にクリーパー対応へ回るかね。 別に因縁があるわけじゃねーし、村を守り損ねたら元も子もないからな。
では人数的にクリーパーの方に当たるか。 足の速い方でもないからね。 併せてジルベルの方にも目を光らせておくよ。