空へ~君と夜明けの虹色卵は黄金の潮騒で微睡む様に~
弓月 蒼
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シナリオID:261
オープニング
「最高の目玉焼きとは、なんぞや」
――辺境都市群の一角、学術都市『ヴェルクリエ』
冒険者ギルドの支部受付が併設されている昼間の酒場の一角で1人のドワーフが呟いた。
ドワーフと言えば髭が特徴とされるが、件の人物についてはその限りではない。
まず視線が行くのは頭部だ。七色だった。形状は何と言うのだろう。筒……?
頭の上に髪の毛でコック帽を作り上げている。と言えば果たして伝わる……のだろうか。
そんな前衛的な髪型に対し、髭は大人しいものだった。
単に黒い髭が細かくトゲトゲに固められ全方位に伸びているだけなのだから。顎下に毬栗付けてるみたいな。
ともあれ、ヴェルクリエにありがちな、派手で、特殊な、ちょっと……かなりアレな人に見える。
だが彼こそは創作料理で一世を風靡し、世の美食家達に時を百年進めたと言わせしめる稀代の料理研究家。
「我輩は考え、問い、質し、突き詰め、そして一つの天啓を得た」
ボンドヴァ・メルージュ・ブブリヴィエ。その人なのである。
もう一度くり返そう。ボンドヴァ・メルージュ・ブブリヴィエだ。
過去にパンクリアース学園の編入試験問題に使われたこともあるが正答率は10%以下だったらしい。
閑話休題。
「世界はエーテル無くして存在し得ない。人も然り。クリーパーも然り。動植物も然り。
エーテルとは生命力そのもの。人はただ在るだけでもエーテルを吸い、吐いていると我輩は仮定する」
こつこつと、机を爪先で叩く音からは神経質なまでの潔癖さが感じられる。
言っていることはもしかすると真っ当なのかもしれないが、見た目が凄過ぎてなにも頭に入ってこない。
「その前提に則るのであれば、最もエーテルを蓄えているのは始点。
つまり、外界に出たばかりの卵こそが至上食材であると言えるのではないだろうか」
「ふ―――ん。凄いじゃん」
話を聞いていたギルド受付のハーフリングがどうでも良さそうに頷いた。
例え支部とはいえ、真昼間とはいえ、申し訳ないが冒険者ギルドは暇ではないのだ。
「なので、我輩は行こうと思うのだ」
「はい。うん。そうだね」
「空へ」
指を上向ける七色頭の毬栗髭ドワーフを、ギルド受付のハーフリングが帳簿から頭を上げて見つめる。
丁度折よく、酒場の入り口を顔馴染みの衛兵が通り掛かった。
「あ、ちょっとちょっと衛兵さん。ごめんだけど、ちょっとこのおっちゃんもう駄目みたいで」
小さく、けれどはっきりと哀しげに頭を振るハーフリングに、衛兵が足を止め首を傾げる。
「何故だ! 何も駄目ではない!! 我輩は正気だ!!!」
「おかしくなった奴は必ずそう言うんだよ」
必ずそう言うらしい。なのでボンド(略)氏は衛兵に連れていかれた。
いや、正確に言えば連れていかれる筈だった――――本来であれば。
「ならば、これでも我輩がおかしいと言えるのかね!!!」
ボンド(略)氏が筒状の己の毛髪の中に手を突っ込む。
すわ事件かと身構える衛兵とハーフリングに、取り出したるは黄金の輝き。
放り出したテーブルの上でガツゴトン、と。全く洒落にならない重量感を感じさせる音が響いた。
誰が見ても見誤ることはそうあるまい。それは輝きも何も黄金そのもの。金の延べ棒だ。
通貨がゴールドと呼ばれる様に、当然ながら黄金には特別かつ普遍的な価値がある。
ドワーフの天敵たる邪龍が事更に好む為、流通数こそ少ないもののその分単価は高騰して久しい。
まともなところへ出て行って捌けば、小さな村が飢饉から救われる程度の値段で売れるだろう。
つまり本当に全く微塵も洒落になっていなかった。出所次第では戦争だった。
「……ちょ、こ、お前、遂に――絶対いつかやると思ってたけど」
戦慄する衛兵とハーフリングの眼差しは、完全に犯罪者を見るそれだ。
知人であろうと、否。知人であればこそ法を侵したのであれば裁かれねばならない。悲愴な決意だった。
無実を訴えるボンド(略)の言が証明され、金の延べ棒が私物であること。
実は冒険者ギルドに食材回収の依頼を出しに来たのだということが伝わるまでには……
――――未だ、しばしの時間が必要だった。
●ヒ"ッ"ク"オ"ウ"ム"ー
「……と言うことで、空へ行って欲しい」
――――学術都市ヴェルクリエ。冒険者ギルド支部。
受付のハーフリングが全てを諦めたハイライトの無い目でそう言った。
別に精神感応系スキルを受けたとか洗脳されているとかそういった事情は一切無い。
ただ、ある種の変態が何故か金だけ持ってると言う世間の世知辛さに打ちひしがれただけである。
「良いだろう、事情は我輩から説明しよう」
視線を隣に向けると、無作法にもカウンターに腰掛けるのは頭虹色の毬栗髭ドワーフことボンド(略)
当人曰く、正装であるらしい純白のコック服を着ての登場である。
「極楽鳥、と言う鳥を知っているだろう。そう、虹色の尾羽で知られるあの鳥だ」
それは、人以外の殆どの文明圏では吉兆であるとされる美しい七色の尾羽を持つ鳥である。
誰が呼んだか極楽鳥。その尾羽は最上級の装飾品の材料になる。
海鳥らしく陸地では滅多に見掛けないが、見ればその一年健やかに過ごせるとまことしやかに囁かれる。
そんな霊験あらたかかつ縁起の良い、しかし魔獣でも何でもないただの鳥である。
「その極楽鳥の卵が欲しい。あれだけ美しい鳥だ、さぞエーテルを溜め込んでいるに違いない」
理不尽の極みだった。
「彼の卵を使い、我輩は今日こそ虹色卵とサルミゴンドのパッチョン・クルートを完成させるのだ」
……、……。不自然な間が、沈黙が広がる。
? 何て言った? サルミ? パッチョン?……な、何?
冒険者だけではない。受付のハーフリングも真顔になっていた。何が出来るのか全く想像がつかない。
音の響きだけならばそれは高級料理というより難攻不落の地下迷宮だ。
卵料理だろうか。お菓子だろうか。広大な迷路と化した脳内をパッチョンとクルートが駆け巡る。
ただ、それをどうにかする為に、とりあえず。卵が必要らしい。
折しも、この時期は発情期らしく卵が全く見つからないということは無いだろうとのことだった。
「無論、我輩も現地へ向かうぞ。ビッグオウムもギルドに依頼して用意した。
さあ、共に料理界の明日を! 飛ぼうではないか……!」
頭虹色の毬栗髭ドワーフも付いて来るらしい。もしかすると、冒険者ギルドって暇なのだろうか。
物言いたげな眼差しで見つめる冒険者に、受付のハーフリングは静かに頭を振った。
つまり、此度も冒険者達は金を積まれて厄介事を押し付けられたのである。
解説
マスターより
リプレイ
「はー、こりゃ高いな! 中々に苦労しそうじゃ」
上から崖下を覗き込んだ『大食いモンスター』ジョン・ベアーが目を丸くする。
視界の下はまさに虚空。命綱無しで投げ出されたなら、授恵者であろうとタダでは済むまい。
こんな場所に料理人が挑もうとしていると聞けば、9割の人間は正気を疑い、残り1割は耳を疑う。
率直に言って頭おかしい。
「……高い。う、え? ここを? 降りる、ん……ですか?」
1割の側の人間だったらしい、ハルハン・ツァガーンナルが目を瞬かせて眼下の海を見る。
海風が冷たい。視界が揺れる。見るんじゃなかったとすぐに後悔するが、見ずには降りられない。
元よりガチガチだった身体が余計に緊張するのが分かる。と言うか一体どんな因果が巡ったか、
彼女に至っては初仕事でこれである。冒険者業界が厳しいからってあんまり過ぎる。
「うん……ピックを用意してきて正解だったな。思ったより、冒険してるね」
いや、実は初仕事はハルハンだけではなかったりする。隣で眼下を見つめるハーフリングの青年。
Liminality・Borderもまた、今回初めての冒険だ。逃げ足だけが身上の彼に一体何があったのか。
どの辺を見てこの仕事を受けて良しと判断したのかは神話の英雄にすら分からないに違いない。
用意周到に自前のピックと楔を用意してくる辺り周到ではある様だが……
「ジャイアントパンダ神は告げた――『昆布を食べた後は卵を食べよ』と。
そう、重要なのはバランスなのだ」
「なるほど、バランス。意味は分からないけれど、ここからは水平線が綺麗に見える……
いい場所だね、なんだか冒険みたいでわくわくする」
とは言え。冒険者としては相応の経験を積んでいる筈の『白黒神の伝道者』ハッタ・ムラムラ。
『義骸の無者』ヨル・スレイマンに至っても、何だか今日はこんな有様である。
これを大物の貫禄と捉えるか、経験と個人のおかしさはあんまり関係ないと捉えるかは別の話だ。
何かの磁場とか平穏な世界とか正常の基準値だとかが、ちょっと狂っているとしか思えない。
「……これも神龍の与えし試練……か?」
「良き風、良き天候、そして良き試練よ! これを超えてこそ我輩の料理は光り輝く……!」
呟いたガンシャルアはゴブリナである。決してリザードマンではない。
しかし、彼女にとって神なる龍の言葉は特別な意味を持つ。試練と受け取ればこれは試練なのだ。
隣に並んで腕を組み、風よ吹けとばかりに佇む偉そうなコックは関係がない。
そう、関係がないのだ。得るものを決めるのは、所詮は己なのだから。
――――何処と無く、何だか少々不憫な気がするのは、きっと気の所為に違いない!
「だがしかし、だ。ボンドヴァ・メルージュ・ブブリヴィエよ」
とは言え、そこで突然フルネームで虹色頭の毬栗髭コックを呼ぶ者が居るなどと。
一体誰が想像しただろう。驚くべき事態に、しかしボンド(略)は余裕の風体で身体を向ける。
「何だね、我輩の名を呼ぶ者よ。何か懸念でもあろうか、否、それは無い」
反語で勝手に結論付けたボンド(略)とのコミュニケーションの難しさよ。
しかしこのジャイアントパンダ、そこで躊躇う程軟弱ではない。
「君が挑戦する必要は本当にあるのかね?」
「無論である」
無駄と理解した上での問い掛けに、ボンド(略)は即応する。
真意を測ろうとするハッタの鋭い眼差しに、けれど料理一筋のドワーフは笑みすら浮かべ。
「料理とは即ち殺生である。我輩が生む料理が誰かを生かす一方、我輩は料理で命を摘む。
ならば我輩もまた命を賭すは当然の道理。殺される気概無く殺す者が一体誰を生かせようか!」
其処には、偉大なる創作料理人ボンドヴァ一流の美学が込められていた。
これを正攻法で崩そうとするならば、それこそ息の根を止める以外有りはしないと言う様に。
「――――その意気や良し! じゃがきちんと命綱はつけていくんじゃぞ!」
にんまり笑ったジョンの一声に、一瞬で互いの価値観をぶつけ合ったハッタとボンド(略)。
両名に間で張り詰めていた空気が弛緩する。そこには理解を分かち合った2人の戦友が居た。
「あれが極楽鳥か。美しいなあ」
全く完全に我関せずとばかりに崖下をひらりひらりと舞う虹色の輝きに瞳を細めるヨル。
冒険者には、つまりこれほどまでに確固たる自我と強烈な自意識が必要なのである。
「……、……。本当に、本当に大丈夫なんでしょうか」
「うん、とりあえず降下する手順は事前に確り相談しておきたいね」
顔を見合わせたハルハンとLiminality。彼女と彼が一番真っ当に冒険者しているなどと。
そんな哀しい現実を直視したとしても。きっと、状況は何も変わりはしないのだから。
眼下に広がる境界線。雲ひとつない蒼穹描く空と海との水平線はとてもとても美しく。
何だかとても理不尽だった。
●断崖絶壁の死闘
「それで、まず誰が取りに行くのだね?」
命綱を用意し終えたボンド(略)の問にハッタが隣のヨルを見た。ヨルが隣のジョンを見て。
ジョンが隣のガンシャルアを。ガンシャルアがLiminalityを。Liminalityが――――
「……――え、ボク?」
時計回りに隣のハッタを見たら視線が返って来たハルハンが困惑に目を瞬かせる。
命綱を身に纏ったジョンは、その類稀なるバランス感覚でフォローに回る気満々であり。
ヨルもまた極楽鳥に対する囮を務める心算だった。
選択肢は他に存在しない。高所が恐いとか言ってられない現実がそこにある。
一体彼女が何をしたと言うのだろう。初仕事なのに。
「よし、では二番手は我輩が担おう。冒険者達よ、健闘を祈るッ!」
空気に酔ってか滂沱の涙を流しながら敬礼する虹色頭の毬栗髭ドワーフ。
まず下準備と命綱を着けたガンシャルアが飛ぶ。空が、君を、待っている。
「おおおおおおお――――っ!」
鬨の声を上げて自由落下。長さの調整はばっちりだ。巣は視線の僅か上にある。
ただし、崖上がやや歪曲していた所為で妙に空間が開いてしまっているわけだが。
「大丈夫じゃ! 空中でバランスを取ってロープを揺らせば壁面にしがみつける!!」
「!?」
同様に跳び下りたジョンのアドバイスに、ガンシャルアが振り子の要領でロープを揺らす。
「が、がんばって! その調子っ! あ、極楽鳥が!」
「寄ってきたみたいだね。あ、光ってる光ってる。綺麗だなあ……」
ハルハンが応援するも、2つがいの極楽鳥がガンシャルアとジョンを襲う。
七色の光条は思っていた3倍ほど眩しく、ヨルが安穏としているのは天眼のお陰だろう。
「こっちじゃこっちじゃ、おっと、来た来た」
「光る! 位で! 意識が! 朦朧とする! わしでは! ない!!!」
ジョンが上げた大声に鳥達の注意が向くと、その隙を縫って絶壁に張り付くガンシャルア。
決死の覚悟で楔を打ち込み、絶壁に張り付く為の足場を形成する。
あとは命綱を繋いで登れば彼女の任務は達成だ。
と、思ったその時である。巣を荒らされると思った極楽鳥の一羽が骨をがつんがつん嘴で突く。
ただの野生の鳥と侮るなかれ。母は強し。そう、子を守る母鳥は凶暴なのである。
「わああ、お前この、大事な龍の神の骨を!」
斟酌もなく召喚されるは縛鎖の光檻。単に侵入を拒むものの為、落下したりはしない。
しかしこの場合、被った龍骨をがつがつされない事が最重要だ。
「はあ、はあ……あとは、頼んだ」
「……はい」
冒険者って易しくない。バトンタッチするはガンシャルアとハルハン。
「はいこれ。手で持って降りるわけにはいかないし、崖に当たらないよう背中側に着けてね」
「ジャイアントパンダ神の加護が在る。抜かりなくゆこうじゃないか」
Liminalityから預かったベルトポーチを身に着け、ハッタからの激励を受ければ。
覚悟を決めて跳び下りるだけだ。尚、この間気が立った極楽鳥にジョンが諸に襲われている。
「ええいっ!!」
絶対。割らない、落とさない。成功厳守の志は、冒険者と呼び称すに相応しい。
眼下はとにかく虹色にギラギラ光っているが、目を閉じれば恐くはない。
まあ、絶壁に張り付くのも必然的に難しくなるわけだが。
しかしそこでLiminalityの念動力が炸裂する。怪奇・突然動き出すベルトポーチである。
引っ張られるポーチを頼りに絶壁へ近付く光景に、ガンシャルアが何とも言えない感を纏う。
とは言え、急いで楔を打ち込むのに念動力は向かないのだ。何せ秒速5cmである。
1m近付くのに20秒。ジョンが囮になっていなければ行動不能は免れない。
「はああああ、無事持ち帰ってこそのエッグハント! 届け救済の神威」
「まあ、落ちても死ぬわけじゃないし良いんだけど、怪我をするのもね」
ハッタとヨルが虹色光の目眩ましを受け続けるジョンを癒して癒して癒し続ける。
何の拷問だろうという状況だが、フォロー体制はばっちりだ。
かくて、ハルハンはその決意の程に反して驚くほど容易に虹色卵をその手に掴む。
光の結界によってガンガン突付かれることも無く脱出出来たのは、手厚い支援の賜物であろう。
尚、一方で。ボンド(略)氏の挑戦に際しては同氏が獲得した卵を落としそうになるものの。
ハッタ奇跡のジャンピングキャッチにより九死に一生を得たことを記すに留める。
●虹色卵とサルミゴンドのパッチョン・クルート
「びっくりした。案外泳げないものだね」
「うむ、わしも相当びっくりした。無抵抗で静かに沈んでいくとか思わんけぇのぅ」
奇しくもボンド(略)でなく仲間の命を救ってしまったジョンに、ヨルが被った骨を掻く。
まさか喜んで海を見つめていたら跳んだハッタのロープに引っかかって落ちるとは思わない。
偶然だとか凶運だとかでは断じて無い運命的失敗の恐ろしさを垣間見ながらも。
戦闘依頼でなくて良かったというべきだろうか。多分、依頼人も驚いた。
「うむ、しかしここに諸君らの冒険の結果2つの虹色卵が手に入った。感謝する。
そして我輩はこれより芸術の調理作業に入らねばならん訳だが……」
手にしたボウルの上には虹色卵と言いながらも、見た感じただの白い卵が2つ。
材料が揃った以上こんな絶壁に用は無いとばかりに踵を返そうとするボンド(略)
しかしここで、依頼人は予期せぬ。けれど冒険者側からは当然の要求が出ること出ること。
「それにしてもどんな料理になるんだろう? 楽しみだなあ」
「何、勿論後で食べさせてくれるのであろう?」
「この場合、海に飛び込む労苦に見合う物が報酬だけではバランスに欠けると思わんかね」
「崖を跳び下りるのは怖かったですけど、美味しいランチのために頑張りました!」
「折角だもの、少し味見してから帰りたいな!」
「大丈夫だ、まさかここまで来て食わずに帰れなんて事が有るわけがない。よな?」
凄い圧だ。何かもう凄い圧だった。空気読めない虹色頭の毬栗ドワーフが完全に気圧されていた。
そう、彼らは冒険者である。未知を踏破せず冒険を名乗れようか。否、それは無い。
回収した卵を見て、冒険者達を見て、回収した卵を数えて、両目を閉じて腕を組んだ。
物凄く眉間に皺が寄っていた。料理人の中のパッチョンとクルートがせめぎ合う。
「ぐ……ぬ…………良かろう、その身で、奇跡を体験させてやろうではないか――――ッ!」
思わず上がる喝采。これを、冒険者達の勝利と言わずして何とする。
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かくして。ビッグオウムはギルドに回収されていった。
場所は移り変わり――辺境都市群の一角、学術都市『ヴェルクリエ』。
「ボンドヴァ・メルージュ・ブブリヴィエの料理工房へようこそ。
さあ、未来の英雄たる冒険者たちよ。我輩の至高の一品、その自伝にとくと刻むがいい」
テーブルクロスが掛けられた一つの円卓。上に乗った1つの大皿と銀の円蓋。
料理人ボンドヴァの如何にも仰々しい一礼に、嫌が応にも期待が高まる。
とは言っても。正直、銀食器なんて殆どの庶民には無縁な貴族の道具である。
今回の依頼を受けた冒険者全般、まさかここで礼儀作法を求められるなんて思ってもいない。
「……良いか、上げるぞ」
一番槍の縁か。ガンシャルアが蓋を持ち上げる。中には――――何かがぽつんと1つ。
「これはすごいな。何なのか全く分からない。初めて見た」
ヨルが、口火を切った。これによって戦いは始まってしまったと言って良い。
「匂いからすると……パイ? なのかな。美味しそうな気配はするけれど」
Liminalityが継ぐ。ハードルが上がる。状況が読めてきた者たちが焦る。
「本当に料理がお上手なんですね。美味しそうなパッチョン・クルートです」
ハルハンには何も分からないけれど、多分最後に回った人間が食べることになるのだ。
「正四角形だな。四角形は良い、バランスの良い形状だ」
ハッタがここでも上手くギリギリの境界をすり抜けた。かくて、視線は1人に集う。
「……お? なんじゃ、誰も食べんのか。なら遠慮なく」
一応の作法を意識してか。銀のフォークを手にしてジョンがパイ生地を刺す。
溢れ出す肉汁、否。それだけではない。目を凝らせば、黄身が混ざっている。
つまり、中は肉と卵か。裂けたパイ生地の中から香辛料の香りが滲む。
凡そ見たことがない組み合わせだが、しかし正直――――そんなことジョンには関係がない。
極めて大雑把に切り分けると、躊躇なく口に放り込む。視覚嗅覚共に毒の気配は感じない。
恐らく美味いものだ。それだけ分かっていれば十分だった。咀嚼、1回。
「むお……!?」
――――それは、閃光だった。
口腔を閉じていられない。口から放たれたるは虹色の光線。極楽鳥の尾の輝きだ。
光が空間を満たす。目が開けられてない程ではないにせよ、何といっても虹色だ。
眩い。世界が色彩で満ちる。上下の感覚すら分からなくなる。光、光、そして光だ。
そうして、口から放たれていた光が徐々に光量を抑えていき消えていくと……
その中央には目を瞬かせるジョンと、表情の分からないハッタ、ヨル、ガンシャルア。
真顔で青褪めたLiminalityとハルハン。満足そうなボンド(略)が居た。当たり前だった。
「……どう、だったんだ?」
意識的に固く。けれど消し切れない不安さを滲ませ問うガンシャルア。
そちらへ視線を向けると、ジョンは数度咀嚼して頷く。
「美味いが……何か思ったより普通じゃな」
――――前衛的料理研究家。ボンドヴァ・メルージュ・ブブリヴィエ。
その料理は、独創的で前衛的な芸術品であるとされ、王国貴族に多くのパトロンを抱える。
しかし、好事家は多くとも美食家に呼ばれることは終ぞない。つまりそういう事である。
彼の料理への挑戦は、未だ始まったばかりだ。
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:多い6 / 4〜6人
2020年12月01日 10時50分45秒 公開
相談掲示板
ガンシャルア。ヒーラーだ。 ……翼は、持ち合わせていない。
ハルハンの子、ツァガーンナル! ウォーリアです ボクも、飛べないから、崖にしがみつきますね
ヒーラーのヨルだ。宜しく頼む。 ビッグオウムまで借り込んじゃうなんてすごいな。 うんうん。崖上にある虹色の卵なんてなんだか冒険っぽくてとても良い。楽しみだ。 ともあれ仕事とあらばきっちりこなそう。 俺も流石に飛べないから崖は登ることになるかな。 バッドステータスに対しては、サルベーションとかも持っていけるね。
僕はリミナ、ヒーラーだよ。 よろしくねー。 シーフの人がいれば壁歩きとか出来るんだろうけど、頑張るしかないねー。 BS対策でごり押し? ビッグオウムでってことは、崖上からロープを使っておりていくことになるのかな。 下から昇るのなら救助班を用意した方が良いかもー。 上から降りるにしろ、下から昇るにしろ、命綱は複数用意したいかな。
ヒーラーのハッタだ、世話になる。 蜂蜜採集(ハニーハント)やアナツバメの巣を狙うようなものか。 美食に崖登りはつきものだ。 鳥には気の毒な話かもしれんが、いつの世も人の食欲は止められぬ。
ウォーリアのジョン・ベアーじゃ。よろしゅう頼む! 虹色卵の料理…ううん、楽しみじゃのう! しかしわしも空は飛べんな!地道に登るか降りるかしかなさそうだ。 命綱(ロープ)は全員で持っとくのに賛成じゃ。 依頼人も登りたがるとのことじゃけぇ、予備に2つ持っていくとええかもしれんなー。 BS対策はわしあんまりしとらんのう。逆も苦手じゃ。 となると、登る奴が登りやすいように鳥の注意を引きつけたり……やらした方がええかもしれんな。卵さえ持って無けりゃあなんべん落されようと構わんじゃろ。
投稿ミスがあった。申し訳ない。 命綱はまぁ複数用意するのに異論はない。 ボンド(略)のフォローで余計に必要かもしれんしな。 ……先に聞いておきたいのだが。 極楽鳥って、撃ち落として大丈夫だと思うか?
BS対抗系のスキルは射程が長めだから、登る組がよっぽどバラけない限りフォローできると思う。 その辺はある程度考えておくよ。 まあ、落ちても死にはしないだろうしね。ボンド君が落ちた時は助けには行った方が良さそうだけど。 >撃ち落とす この辺も決めておいた方がいいところだね。 俺としては希少種らしいし、できれば撃たずに卵だけ拝借できるのがベターだと思うかな。 肉は依頼内容に含まれていないし⋯⋯。 とはいえきっとやむを得ない時は仕方ない。そうならないように頑張りたいね。 もし撃ち落とすことになったら、そっちもきちんと感謝して食べてあげたいとは思う。
サルベーションはおれも用意した。 スレイマンと合わせればまずゴリ押せるとは思っている。 あとは辛抱強くアタックするのみだな。 鳥は殺さず、のつもりで考えていた。 発光に対する備えさえあれば、特に脅威とはならなそうだしな。
>撃ち落とす ボクは、できれば、そのままがいいかもです。 少し可哀想、というのと、撃って、暴れると、卵を潰してしまうかもしれないですし。 >発光 対抗スキル以外だと、つまり、目眩ましなので、直接見ないようにするのも、一つの手段になるかもしれません
……なるほど。 現時点で「避けたい」人が多いようだ。 魔矢ではなく、何か別のものを持っていく。 サルベーションは……足りてそうだな? まあ一応そっちは持ってはいく。 崖の下が地面ならなにかこう、布を張ったり万が一の落下の備えも出来そうだが…… 海では少し面倒か。
生きとったらまた卵産んでくれるしな! 依頼主(ボンド)の墜落防止策は複数の命綱、でよかったかのう。 一緒に落されてしまう可能性を考えると、2人ぐらい同時に綱の先を持っとくのが安心だが…あまり多いいとこんがらがりそうじゃのぉ。 どうにも墜落しそうであれば、浅瀬とのことじゃし下で一人待機しといてもええかもしれんな。布をはるなぁ難しそうじゃが、運がよけりゃあ海面に直落下する前に卵も人も受け止めたりできるかもしれんし。
今更ながら、崖の上から降りて行くのか下から登っていくのか分からなくなってきた…… オウムを見る限りだと上からいけるのか。 ……卵を取りに行く人員は足りてるみたいだから、俺の命綱の位置を調整して、ボンドが挑むときは俺がボンド(と巣)の下に控える形を取ろうと思う。 腕力はたりている……はすだ。
そうなんだよねー>上から・下から 上の地形によっては降りられないのかもしれないし、その辺りは情報がないから両方考えておけばいいんじゃないかな♪ 上から降りる場合は楔で固定して釣れるようにして引き上げる人がいれば割と安心。 下から昇る場合は下で待機している人がいれば安心。 降りる場合は力の強い人、登る場合は泳ぎが得意な人がいると安心かな。 ボンドさんは必ず一回は挑戦したがるみたいだから、フォローを厚くする方向で考えると良いと思ったよ。
成程。両方想定しておくにこしたことはないいうことじゃな! なら、降下する時は上でロープの固定と引き上げる役でもやらせてもらおうかのう。 (ふむ、と頷きながら)
そういえば、ビッグオウムは断崖絶壁には近付いてくれない。のでした。 登るのかもしれないですね。 登る時は、ボクもボンドさんを支えられるように、下で待機してみようと思います
とりあえず、ロープ2本とシーフズツールを持ったよ♪ 水泳と念動力を非常時の準備と登攀の補助に使えないか行動(プレイング)を練ってるよ。 よろしくねー。
水泳に念動力か……頼れるな。
ごめん、ロープを一本にしてバックパックかベルトポーチにする……卵入れるものがないと大変だった!