【燃纛】冬の火
望月誠司
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シナリオID:100
オープニング
――アルサーラムに旗はまだ立っているか?
過日、帝国弓騎兵ツェツィーリア・クラインは、四人の冒険者達と共にヴァイセントラフ砦から物資を満載した荷馬を引きつれ旅だった。
砂煙が吹きすさぶ荒野にて、アルサーラムの町の御伽噺に出て来る、伝承の悪鬼達からの襲撃を受けるも、護衛の冒険者たちの奮戦により撃退し、物資を守り抜く事に成功する。
そうして荷馬隊と共にアルサーラムの町付近まで帰ってきた時、彼女の胸中をそんな疑問がよぎった。
――ああ。
目視できる距離まで近づいた時、ツェツィーリアは胸をなでおろした。
アルサーラムの町旗とシルトラース帝国の旗が、郭壁の上で陽の光を浴びながら鮮やかにはためいていたからだ。
町がクリーパーに呑まれていれば、旗も無事には立ってはいられない。
――良かった。故郷はまだ滅んでいない。
十中八、九、クリーパーの群れの襲撃を受けた筈だが、どうやら町の守兵達は仕事を果たした。かつての聖騎士は誓いを守ったようだ。
「開門! 開門ー!!」
「ツェツィが帰ってきたぞーーーっ!!」
郭壁の門が開き、荷駄隊と共に町に入ると、町の人々の歓声が出迎えてくれた。
駆け寄ってきた町の子供たちに囲まれながら、
(帰ってきたのだな)
と女兵士は思った。
●
「澱より這い出し者どもを操っている何者か、というのは存在すると思うか?」
町囲む郭壁より伸びる塔の上、地平を睨んでいた痩せた壮年男が振り向いて、そう尋ねて来た。
「クリーパーの知性は低いです、普通は。彼等は人間のような社会を作らない、普通は」
「まぁ今、この国で起こってる事態はどう見積もっても普通じゃねぇわな」
ツェツィの返答にガリガリと傭兵隊長レイズは頭を書きながらぼやくように言う。
「ですが、考慮には入れておくべきですが、まずは普通を想定して、あたるべきです。普通は普通だから普通であって、非常は非常である故に非常であります」
「なるほど、ごもっとも……」
レイズは頷いた。
「まぁ何かに操られた群れであろうが、単なる野生動物や蟲の群れみたいなもんだろうが、町の近くで群れられているなら、いずれにせよ、撃滅せにゃならん」
「……いるのでありますか? 近くに?」
「先日、人の影みたいなクリーパーが町を襲ってきたって話は聞いてるな?」
ツェツィは頷いた。彼女が留守の間にやはり町は襲撃を受けていた。一時危うい場面もあったが、遊撃隊の冒険者達の活躍もあり、なんとか撃退する事に成功したらしい。
「アルサーラムの町から少し離れた場所には森がある。斥候からの報告によれば、あの時退いていった影人達は今、その森の中に居る。おそらく、あそこは他より若干エーテル濃度が高いんだろうな。昔からあの森は実りが豊かだった」
この、かつて上官をぶん殴って騎士修道会を除籍され諸国を巡る傭兵隊長に成り果てたという男も、アルサーラム出身の人間だ。周辺の地理には詳しい。
「お前さんが砦から貰って来てくれた物資のおかげで当座は凌げている。だが、当座は凌げているが、あくまで当座だ。長い冬を越すとなると、十分な量じゃない」
それはそうだろう、とツェツィは頷いた。
小さくても町は町だ。多くの人々が生活している。
「特にこれから量が必要になるのは燃料だ。アルサーラムの冬は冷えるからな……暖を取るにはやはり火だ。つまり、燃やすものが必要になる。薪だ」
そして、その薪が取れる森は今、先日の影人達が逃げ込んだ為、占拠されている。
「そう。お前さん達が運んできてくれた物資を町の連中に配ったから、今の所は無謀な行動は抑えられちゃいる。だが、これが長く続いて物が欠乏して来ると、わからなくなる。何人かは森に薪を取りにいっちまうだろう。実際そうしなきゃ何人かは凍死するはめになるからな。かといって森にいっても、二割か三割か十割かは知らんが、そいつらは大体クリーパーに喰われて死ぬんだ」
よくある話だ。そういうのは。
「そうなるってわかりきってんだから、防がなきゃならん。その為の手を先んじて打つ。森を占拠する影人達の群れを征伐し、冬の火を取り返す」
征伐。
腐っても聖騎士か、と兵士は思った。きょうび、お偉いや神の徒達でもなければそういう言い方はしない。
「近々、討伐隊を編成する。だが、先に飛ばした斥候からの報告によれば、森の影人達の中には特異個体が発生しているらしい」
人を、エーテルを喰らって能力を向上させたのかもしれん、と彼は言った。
「この特異個体はえらい機動力が高い上に手強いらしい。偵察に送った連中は手練の騎兵だったが、追いかけられて逃げ損ない二人やられた。森に籠る影人達から森を取り返す為には、森に踏み込まなけりゃならん。だが、この機動力の高い連中を自由にさせたまま、踏み込めば、討伐隊には大きな被害が出るだろう」
アルサーラムの兵の大多数は授恵者では無い。一般の影人相手でも苦労するのに、さらに強力な特異個体などが相手となったら歯が立たないだろう。一方的に斬殺されるだけだ。
「そこで俺は考えた。
斥候からの報告によれば連中は侵入してきた人間達を追い回す。
ならば、まずは囮を送り込んでから退かせ、特異個体達を森の外まで釣り出し、そこへ特別に編成した精鋭隊をぶつける。
敵の通常個体、いわゆる本隊達も遅れて追って来るだろうが、これにはこちらも本隊が森へと踏み入って対応する。
そうして別個に叩けば、普通にごちゃ混ぜであたるより、被害を抑えて勝てるんじゃないか? とな」
なるほど、悪くない作戦かもしれない、とツェツィは思った。
その囮になる人間というのはご愁傷様だったが。
誰がその役割をやるのかは知らないが。
嫌な予感はしてたんだ。
「この囮を無事にこなす為に必要なのは――機動力だ」
「すいません、ちょっと急な腹痛がアーリーストリームにて、自分はこれにて失礼……」
「まぁ聞けよ」
ガシッと肩を掴まれた。
「お前、騎兵だろ? しかも重騎じゃなく機動射撃がウリの軽弓騎兵だ。足が……速いじゃないか……! さらには伝説の悪鬼まで退治した腕利きと来る!」
「それ自分はほとんど何もしてないであります! ほっとんど冒険者さん達がやってくれたのでありますっ!! マジでっ!!!!」
「頼むよツェッツィー。俺とお前の仲じゃないか」
「自分とアンタがいつどんな仲になったってんだあっ!!」
ツェツィは叫んだ。手足をバタバタと動かし逃げようとする、しかし、逃げられない。
ああ、わざわざ名指しで呼び出された時点で、嫌な予感は、してたのだ。
●
「――そういう訳でありまして、手筈の通り、敵の特異個体というのを、ここまで自分が誘き寄せて来るであります。必ず誘き寄せて参りますので、その、殲滅の方は、どうかお願いするのですよ。町の未来の為、どうか平にお頼み申し上げます」
女兵士が貴方達へと頭を下げてくる。
そう、特別に編成された精鋭達というのは貴方達であった。
女が軍馬に飛び乗り、森の中へと消えてゆく。
その小柄な背を眺めつつ貴方達は思う。
なるほど、ツェツィは貧乏籤かもしれない。
しかし一番の貧乏籤は――
その誘き寄せられて来た特異個体達相手に、矢面に立って対決しなければならない、他ならぬ自分達なのではないか……?
と。
その疑惑は、気のせいであったのなら、良かったのだが。
解説
マスターより
リプレイ
美味いものを飲み、喰いもした。
しかも仕事と称して行えた事だったのだから、あれこそが極楽というものだ。
故に、
「ならば、次は面倒な敵の相手をしなければならない」
パンダのハーフビースト、ハッタ・ムラムラはそう考える。
彼はGP教の僧兵である。
GP、その教え、均衡こそが肝要と説く。
実際、白と黒とを司る神は彼へと言ったのだ。
「人生楽あれば苦もあった方が良いよ」
と。
おそらくきっと、雨上がりの空にこそ虹の橋もかかるのだろう。
「――今回、ツェツィーリア様が囮役を買って出て下さった為」
声が響いた。
そういう事になっていた。
あれは買って出たとはいわんのでは? という疑問は闇に葬られるのがソサエティ。
「先手を取れるので優位ではありますね」
大岩の陰にしゃがみこんで身を隠しながら少女が言う。
「ですが相手は特異個体、油断はせずにゆきましょう。啓示でも『こいつらはク=サリマ=ンなので注意しましょう』と出ています」
彼女こそが”最速に執着する神”からの啓示を受け、英雄を目指す事になった農村出の少女フリーダ=ブロムヴィストである。
ク=サリマ=ンとは――許されない存在である。
要するに……厄介な敵だという事だ。
このパーティ、神の声を受信してる人が割と多い。
「そうだな、彼のクリーパーの能力の程、体長から大凡の判断はつくが――」
ハッタは頷いた。
クリーパーは大きい程、原則強い。
それをハッタは知っている。
だが、
「中には外見不相応のパフォーマンスを持つものもいる――」
それもハッタは知っている。
故に、
「実際にボコって確かめるのが手っ取り早いだろう」
パンダ氏のこの言に対し、啓示の少女は重々しく頷いた。
「真理ですね」
とにかく一発ぶち込んで観れば良い。実地に基づいた観測というのは、そういうものだ。
フリーダの神も言っている、トライ&エラーが大事だと。最適化だ!
神系の二人がそんな会話を交わしている傍ら、
「……大丈夫だよコルデラ」
マリイ・パルティスは岩陰で伏せている狼の毛並みを落ち着かせるように撫でていた。
マリイは以前は帝国で仕立て屋を営んでいた。だが帝国はクリーパーによって滅び、彼女達は逃げて来た。
今のコルデラは微かに神経質になっているように見えた。敵があの時のソレと同種の存在だと、気付いているのだ。
「――今度こそ立ち向かおう、何も奪わせない為に」
少女と狼はクリーパーに思う事は多々あるけれど、今は倒すことに集中する。
「レッドキャップだっけ? 確かそんな妖精いたよな」
ナハシュは大陸伝承の妖魔に関して思い出し不敵に笑った。凶悪な妖魔だ。人を殺める。
「噂には聞いた事がありますね」
そんな敵でこそ倒し甲斐がある、とでも言いたげな様子の妖鬼の男に海神・江流が頷く。
アクティオンは、
(誰かが引かなければならない貧乏籤なら、信用の表れと受け取る……と思っておいた方が、精神衛生上良い、かな)
これに味をしめられたくはないけど、と傭兵隊長の采配に対して思いを馳せていた。
まぁあの隊長の場合は、そうなのだろう。ツェツィや冒険者達なら上手くやれると見込んでいる。
(ツェツィーリアが命を張るんだ。俺も相応に働きを見せないと)
フィーレン・ステオラーズは己に気合を入れている。
手に持つ棍を握り締めた。
(アルサーラムの火を守ってみせる……!)
各々、思う所はそれぞれの様子だった。
「……見えました」
岩陰から様子を窺っていたドローミが言った。
森の方から、弓騎兵が一騎、赤い影達を引きつれ冒険者達の方へと駆けて来る。
激突の時が、迫った。
●
黒髪赤眼の十五歳の少年フィーレン、自身の位置を把握する感覚が鋭い。また、五感も鋭く、天から地を見下ろすかのように周囲の気配を察知する。
彼の耳は今、駆馬の蹄鉄の音が近づいて来るのを捉えていた。
「あと200ってとこかな?」
タイミングを測る。
タイミングを測れれば、待ち伏せする側だ。二人ぐらいには強化しておけるだろうか?
「纏めて来られると厄介だからね。確実に仕留めていきたいんだ」
フィーレンは小さく印を切りエーテルを放った。
マリイの杖とアクティオンの弓が淡い光に包まれてゆく。
「武運を」
ドローミもまた祈り、エーテルを発するとフリーダの脚が淡い光に包まれる。
直後、
「――来た」
冒険者達が隠れている二つの大岩へとツェツィが到着した。
岩陰より機を窺い静止していたアクティオンが弾かれたように動いた。
輝く弓に矢を番え、飛び出す。
先頭を駆ける赤影人を目視する。のっぺらぼうの赤い人影。彼我の距離はおよそ十メートル程度か。
(――不意をうてる初手で数の有利を確保するのが大事だ)
リザードマンの男はエーテルを全開に解放すると、目にも止まらぬ動きで素早く二連の矢を放った。
旋状回転しながら唸りをあげ、真っ直ぐに飛んだ二矢は、先頭の赤影人の不意を突き、その胴体に生えるように連続して突き立った。炸裂した衝撃に赤影人の身が独楽が回転するように弾かれ大きく揺らぐ。手応え有り。
直後、マリイが仕掛けた。
低い姿勢で攻撃に集中し、岩陰より身を乗り出して輝く長杖の先端を二番手を走る赤陰人へと向ける。
エーテルを収束させ、発射。閃光が矢となって空間を一瞬で貫く。
この赤影人も不意をうたれた、回避できない。
マリイ、敵の股関節を狙っている。
急所だ、装甲が薄い。
集中で威力が増している。
フィーレンの輝刃でさらに威力が上がっている。
元々の火力がそもそもからして高い。
光が爆裂し、赤影人が馬車にはねられたように勢い良く吹き飛んだ。
赤い身が僅かな滞空の後、荒野に激突し、ゴロゴロと転がってゆく。
それきり動かない。
撃破。一発で仕留めた。
「攻守逆転、こっからは俺達のステージだ!」
江流は隠れていた大岩を駆け登ると、その頂を蹴り、青空へと高々と跳躍した。
先頭の赤影人が大きく態勢を崩しつつも足を止め、空を仰ぎ見る――気付いた。隠蔽が看破された。
「ハーハァッ!!」
青年は笑声と共に宙で回転するとエーテルを天へと向かって爆発的に噴出、その反動で地上の赤影人へと急降下する。エアーライドだ。
江流が宙で身を捻り、右手に握る細剣と、左手に握る短剣を交差するように同時に閃かせた。
先頭の赤影人は気付きはしたが、急降下の動きに不意をうたれ、身を捻るもかわし損ね、連続して双刃に斬り裂かれる。
(――表情が読めないな)
どれだけ効いている? 江流は不敵な面持ちで斬り裂きながらも、冷静に観察していた。
他方、江流が跳躍した直後、意識の隙を突くようにナハシュもまた飛び出していた。
姿勢低く、荒野を這うように駆け、よろめいている赤影人の側面足元へと風の如く潜り込む。
エーテルを収束させ不可視の刃と成し、脚部を狙って黒曜石の短剣を薙ぎ払うように一閃。
黒い閃光が赤影人の脚を切り裂き、身を蝕むエーテルが猛烈な勢いで纏わりついてゆく。猛毒の刃だ。
赤影人は身を浸蝕されながら倒れてゆく。
撃破。
ナハシュは軽快な動きで流れるようにそのまま右翼へと展開してゆく。
フリーダ、先頭と二番手が倒れている。単騎で突撃すれば三体目へと攻撃は出来そうだが、
(孤立するのは良く無いですね)
袋叩きにされてしまう。
よって少女は江流達と並ぶ位置で停止し、獅子の如き咆吼を三体目の赤影人へと放った。
「ジャイアントパンダ神は告げた。前過ぎてもだめ、後ろ過ぎてもだめ、真ん中ら辺にいなさい、と」
ハッタは戦況を睨むと、右翼にはナハシュが展開しているので、江流の左翼斜め後ろの位置に一歩退きつつも側面を守れるように展開した。
もし赤影人達が江流の左側面を突いてきたら、その赤影人の側面を取ってぶん殴る構えで威圧し、踏み込みを牽制する寸法だ。
懸念点は。
(赤影人が誰をどう狙ってくるか予測が難しいという点だよな)
人間相手なら予測もつこうものだが、相手はヒトではない。
異界から這い出て来た化け物どもだ。
何を考えているか解らない不気味さがあった。
他方、
「――って訳で囮ご苦労さん! 余裕があったら後ろからシューターの腕を見せつけてくれてもいいんだぜ?!」
「了解でありますよ!」
ツェツィが江流に答えつつ黒馬を停止させ、弓に矢を番えて鞍上で上半身を捻り放っている。
風の如くに迫ってきている三体目の赤影人は、腕を細い刃状に変化させ肘から先を風車の如くに回転させると矢を弾き飛ばし、荒野を蹴って跳躍した。
宙空より三日月の放物線を描く軌道でフリーダへと突っ込んでくる。
「負けません!」
宙空よりの振り下ろしに対し脚部を輝かせているフリーダ、半身を回転させ素早く左腕の鉄の盾を翳しつつ軽快にステップ、一撃をいなし回避し、直地後の続く連撃を、身を捻り甲冑の肩装甲で弾き飛ばす。
他方、
「一気に来るぞ!」
江流が叫んでいた。
わかっちゃいたがこいつら速い。授恵者のシーフと同じだ。五十メートル程度の間合いなんぞはゼロに等しい。
赤き奔流の如く、五体の赤影が突撃していた。
向かったのは、フリーダへさらに一体、江流へ一体、ハッタへ一体、ナハシュへ二体。
瞬く間に肉薄すると、総じて十連の赤刃光を荒野に竜巻の如く閃かせてゆく。
フリーダ、盾で止め、装甲の厚い部分で弾き飛ばす。
江流、迫る一閃を上体を反らして間一髪でかわし、続く二撃目に脇腹を斬り裂かれる。宙に鮮血が舞う。
ナハシュ、二体来ている。身を捌きかわさんとするも肩口から袈裟に斬られ、胴を薙がれ、脇腹を刺され、脳天への振り下ろし、血飛沫が噴出する中、フリーダが瞬間的に加速して飛び込み鉄盾を翳した。
盾と赤刃が激突して轟音が鳴り響く。
ハッタ、盾を翳して一発を受け、もう一発に身を叩かれている。多少効いたが、大事は無い。
「チッ!」
ナハシュ、血塗れの妖鬼の男は舌打ちすると意識を集中し身に走る激痛を遮断する。
派手に出血しているが即座に倒れる程ではない。敵の一発一発は軽い。
ナハシュはそう判断すると短剣に赤光を纏わせ一閃した。七体目の赤影人の身から血飛沫があがり、赤い光が絡み付いてゆく。縛糸刃だ。
江流が五体目の赤影へと細剣を反撃に振るい、赤影が飛び退いてかわす。
(くそっ――! ちょっとヤバイか?)
フリーダが隣の領域へカバリングにいったので、江流の周りには今、三体いる。
「頑張って! 皆様と一緒ならきっと勝てます!」
フリーダが赤糸に絡まれている赤影人へと大剣を叩きつけ、
「オオッ!!」
江流の付近にいる一体へと咆吼を飛ばし注意を惹く。
「癒しの光よ!」
フィーレンは呪を唱えて印を切り棍を掲げた。黒髪の少年の身より光り輝く波動が溢れ出し、周囲一帯へと広がってゆく。
ヒーリングオーラだ。
ナハシュ、江流、フリーダ、ハッタの傷が癒え生命力が急速に回復してゆく。
光が溢れる中、
「江流殿、退がって!」
ドローミの鋭い声が響き渡った。
シャルガネから来たと語る黒髪の青年は咄嗟に地を蹴って大きく後方に飛び退いた。
すると、江流がいた領域を囲みこむように、地より輝く六角柱状の光の柱が爆発的に天へと向かい立ち登った。光の檻、光縛封だ。
瞬く間に光の結界の中に三体の赤影人が囚われ、脱出を封じられる。
「十数秒は隔離できます!」
ドローミが言って、ツェツィの矢が飛ぶ。アクティオンが右翼へと駆けつつ輝く弓に矢を番え放つ。
「それだけあれば――」
リザードマンが側面より放った矢が赤影人の脇腹を射抜き、吹き飛ばした。撃破。
「――十分!」
コルデラの噛みつきを八体目の赤影人は飛び退いてかわし、直後、マリイの全力攻撃、輝杖から放たれた閃光が爆裂し、頭部をぶっ飛ばされて倒れてゆく。撃破。
ノーマルの宝石程に弱点ではないが、やはり頭などの急所を突くと効果が高いようだ。ただ、普通に撃つと避けられやすそうではある。
「ふむ、少しヒヤッとしたが――」
戦況へと意識を配りつつハッタはナハシュへと癒しの光球を飛ばし、さらに間髪入れずに光の波動を自身を中心に周囲へと放ってゆく。
「――問題は無いようだな」
光が収まった時には全員が全快していた。
赤影人が双刃を振るい、ハッタが盾を翳し装甲で受け止める。
ナハシュの短剣と江流の細剣が閃き、アクティオンとツェツィの矢が突き立ち、マリイの閃光がハッタと格闘する赤影人を吹き飛ばす。
「……手持無沙汰になりました」
フリーダが光の檻の中を見詰めつつ言う。中で三体の赤影人が暴れているが、ドローミが形成した光縛封は破られそうな気配が無い。
フィーレンは棍を掲げ、ナハシュと江流の防具に光を与える。
ドローミは弓を回し、自分とアクティオンの武器に光を与える。
ハッタは戦槌を振り、自身を癒し、自身とフリーダの防具に光を与える。
そして――冒険者達は光の檻の周りを包囲した。
光の檻が消える。
赤影が飛び出し双刃を振り回す。
江流が飛び退いてかわし淡光の鎧で受け、ナハシュが身を捌いてかわし後退してかわす、フリーダが盾を翳して弾き飛ばした。
ハッタとフィーレンの身が輝き癒しの光の波動が場に満ちてゆく。
江流、ナハシュ、フリーダの剣が閃く、ツェツィ、アクティオン、ドローミから弓矢が飛ぶ、コルデラが飛び掛かりマリイの光矢が炸裂する。
赤影は一体、また一体と倒れて、やがて完全に殲滅されたのだった。
戦後、
(う~ん、何も感知できなかったね)
マリイは捜波を最後の赤影人が倒される前にかけて、操られているのならば何か痕跡でも出ないだろうかとエーテルを感知する事を試みてみたのだが、特に何も感じる所はなかった。
探波ではそういうものを感じ取るのはちょっと難しい所もあるし、もし仮に操っているのだとしても、そういう直接的な操り方でも無いのかもしれない。
また、赤影人がどうやって周囲を知覚しているのかも戦いながら探っていたが、こちらもよくわからなかった。
ただ、コルデラの吼え声には反応していたから、影人達は音は拾っているようだ。
他方、
「ツェツィーリアも馬も無事かな?」
フィーレンは囮になった騎兵の安否を確かめていた。
「おかげさまで掠り傷一つ無いであります。皆様の奮戦に感謝するであります」
言葉の通り、ブロンドの小柄な女兵士もその馬も生命力全快であった。ピンピンしている。
フィーレンは笑った。
「それは何より。お疲れ様。しかし、特異個体ってのは厄介だね、もう出てこないのを願うよ」
黒髪赤眼の少年の言葉に一同は頷いた。
かくて一行は特異個体釣り出し撃破の任務を無事に果たし、森奪還作戦の行方は後の本隊の活躍に託されたのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2020年10月28日 13時48分44秒 公開
相談掲示板
ハッタだ。世話になる。 初手でどれだけ蹴散らせるかが決め手になりそうか。 どう飛び出すか、いつ飛び出すか、誰から飛び出すか。 どちらかと言えば短期決戦を想定した、攻撃寄りのスキル構成の方が相性は良いかと見ている。
皆さまごきげんよう、僕の名前はドローミと言います。 宜しくお願いしますね。
アクティオンです、よろしく。 引き付け過ぎて乱戦にはしたくないですが、あまり早くに手を出すと流れを取る前に向こうにも準備される。匙加減が難しい。
ヒーラーのフィーレンだ。 宜しく頼む。 俺個人でやれる事は皆の援護と回復だけど、 どう仕掛けたものかな…。
シーフの海神江流だ。宜しく頼むよ。 移動力増加に壁歩き? 移動系スキルばっかり取ってる俺と丸かぶりだな。 ツェツィーリアを除けば8対8で数は互角。 個人的にはハッタさんの言うように初動で1・2体どうにかして早い段階で数の面での有利が取れると手厚いのかな。
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いしますね。 ハッタ様の言うように、基本的には初手で何体か撃破して数的有利を確保するのがベストでしょうか。 今回はシューターの方も多いようですし、合図と共に集中攻撃できれば1体は確実に倒せると思われます。 ただ、数的有利を取れたとしても相手の機動力の高さは脅威です。 前衛をすり抜けて後衛を直接狙ってくる可能性も十分考えられますし。
シーフのナハシュだ。よろしくな。 同じくハッタの言う、初手で数を減らしていくのにゃ賛成だね。短期決戦を見据えた方針てのも異論ねえや。折角奇襲すんだしよ、最低でも1~2体は仕留めておきてえとこだよな。 連中ひたすら縦に長ぇし、7~8体目辺りは普通にやってりゃ確実にフリーだろうな。 初手から前方の敵を遠距離組が仕留められんなら、それに合わせて海神や俺、もしくはどっちか一人でもそっちに駆けて行っちまえば、後方の動きも止められんじゃねえの? 後衛がどさっとやられんのが拙いならよ、火力を後衛、連中の動きを抑えんのを前衛でやりつつ火力集中とかそんなんはどうかね。
シューターのマリイと申します。よろしくお願いしますね。 初手で可能な限り数を減らすのが後を考えると安定しそうです私も賛成です。 遠距離は……私とアクティオンさんの二人のみでしょうか? 敵にこれといった弱点もなさそうなのが悩ましいところですね。 不意打ちで足を狙って崩せれば、一気に畳みかけることもできそうですが……。後続の心配とか、崩せなかった時の対処とか、考えることが多いですし、んー。 身を隠す岩も心もとないですし、抜けさせて後ろを取るのは難しそう、ですかね……。
ああ、二人か!なんかかなり多いイメージだったぜ。 そんなら無理して後ろへ走ることもねえ気はすんな。 連中がツェツィーリアに夢中なら案外最後尾まで行けるんじゃねえの。全体で後方取れんのは強そうだ。 その場合抜けてった奴らに俺らが追いつくまでツェツィーリアに頑張ってもらうか、こっちに反転して戻ってきてもらう形になるか? もしくは基本俺らでやんなら、真ん中付近で割っちまうのもいいかもしれねえ。悩ましいな!
ウォーリア×1 シーフ ×2 シューター×2 ヒーラー ×3 先頭の二人を先制で片付け、8:6に持ち込む想定が無難そうか。 敵の残りにしても即座に状況を把握できなければ、プラスαで有利が続く形だ。 上記の通り癒し手の多い構成でもあるので、分散せず範囲回復の恩恵を皆が受けられる形にしても良いかも知れない。 別件で報酬もあったので、おれも少し装備とスキルを見直してみよう。
>仕掛けるタイミング、仕掛ける敵 こちらの都合だけ考えるならば抜ける瞬間を横からか、抜けられた直後に後ろから、となるのでしょうが、それでは囮になるクライン君の負担が大きすぎる。 抜けた後に切り返すにしても、機動力の高い敵に追われている状態で切り返してすり抜けるのは難しいでしょうし。 シューター2人ではあまり距離に余裕をもって仕掛けても倒し切るだけの攻撃力は確保が難しいと思うので、前衛の方々が飛び出して向こうが身構える前に襲い掛かれる程度の距離・タイミングで先頭に……かな。 頭を抑えにかかれば、思うように倒し切れなかったとしても囮のクライン君の安全は確保しやすい。 口火を切るのは遠距離攻撃にすれば、完全な不意打ちになるので向こうの動揺も大きくなるかと。
>仕掛けるタイミング クライン様が切り返した瞬間に襲われる際、隣接さえできればこちらのカバリングで庇う事はできると思いますが、 万が一タイミングを間違えて移動力が足りなかったりした場合は、クライン様の危険度が大分上がってしまうのが難点ですね。 >仕掛ける敵 初手を遠距離攻撃にするとしたら、やはり先頭~2番手狙いが良いと思います。 先頭が混乱している間に接近・攻撃、後続が到着する前に撃破ないし痛手を負わせておくのがベストな流れでしょうか。
>仕掛ける敵、タイミング 敵の頭をおさえる感じで戦闘の1,2体を狙う感じで良さそうかな? シューターさん達の攻撃の邪魔にならないようにワンテンポずらして大岩から【エアーライド】で飛んで、頭上から仕掛けてみようかな? 上からなら味方が一斉に突っ込んで渋滞みたいな事にはならない、と思いたいトコロだね。
輝足【回避向上付与】と光縛封【魔法攻撃x・yラウンド維持】を取得しました。
>仕掛け いまいち反応が薄いので全員の認識があっているのかちょっとわかりませんが……とりあえず自分は今のところ先頭からと考えています。 >初動の後 今のところ初動しか話していませんがどうします? 相手もいつまでも混乱はしていないと思うので、数の有利を取った上でどう戦うか、という話になってくると思いますが。 相手が反撃に回った場合、危険度が高いのは前衛の方々になると思います。 こちらのシューターが遠距離戦に回るのであれば、総数で有利をとっても接近戦を行う方の数では不利になる可能性もある。 前衛の方々は囲まれないように引きながら戦いつつ、遠距離役は前衛が囲まれないように回り込もうとする敵を牽制……といった流れはどうか、と考えてみましたが……
>仕掛け こちらも先頭を狙う形だと考えています。余裕があれば2番目を狙う形で良いと思います。 >初動の後 こちらは基本的には前衛として行動します。 シーザーロアで注意を引きつつ攻撃、誰かが狙われたらカバリングといった形になるでしょうか。 囲まれてしまった場合に備えて範囲攻撃も用意したいところですが、そのあたりはまだ未定です。
>仕掛け 前方からだな!なら同じく先頭からで賛成だね。 攻撃を集中しつつ、倒せりゃ2体目に切り替えればいい。 >初動の後 連中が素直にまっすぐ来てくれりゃ楽なんだが、後半はそうもいかねえやな。 ハッタも言ってたが基本前衛はそんなばらけねえ方が良いんじゃねえかとは思う。引きながらってんならシーザーロアを使うフリーダを中心に移動する方が良いかもしんねえな。上手くつられてりゃこっちとしても側面背後つきやすいしよ。 もし牽制しきれねえ奴がいたとしても、光縛封で閉じ込めりゃ時間は稼げるとは思う。 俺も縛糸刃はもってっから、複数追いついて来たらコイツで動きを鈍らせつつやるつもりではいるぜ。
昨夜はきちんと書けず、すみません。 初手、待機で1R分減らしてしまいますがフリーダ殿に『輝足』付与したいです。 名称から言ったら、移動が上がってほしいところですけど。 ハッタ殿、今回も宜しくお願いします。 可能であれば、こちらに合流するツェツィーリア殿に回復を頂けませんか? 確認したところ【スリップ】付与できるのは、ナハシュ殿のみ。 1体目のクリーパーに毒付けていただければ、僕が『光縛封』で捕らえます。 この結界、物理攻撃無効らしいので1体を排除(若しくは重体化)し、後続の遮蔽物を置けると思います。 いかがでしょうか?
間が開いてすみません。 仕掛け> ……む。ツェツィーリアさんの負担へ配慮が足りんかったですね。申し訳ない感じです。 では確実な前方の敵を狙う方向のが良さそうですね。 私は2体目を狙いましょう。1体集中にせよ2体狙うにせよ後ろも止めて置いて損はなさそうかなと思いますし。 攻撃時の敵の位置は近い方が良いのでしょうが、岩の直前で良いのかな? 初動の後> 敵に壁歩きがあるので大岩の傍で戦うのは利用されるとちょっと面倒そうですし、下がるのは賛成ですね。 敵の移動力を考えると回り込まれる可能性も高そうですし、後衛のこちらにも来ること前提で動いた方がよさそうですかね。 まぁ、お互い離れすぎず、孤立しないように注意すれば大丈夫かな?
>仕掛け ならば自分は先頭の個体狙いですね。 タイミング的に、岩陰から飛び出してすぐに仕掛けるならば直前あたりになるのでは、と。 >初動後 ふむ、流れは問題なさそう、ですね。 敵の動き次第ですが、先の発言通りこちらは回り込む敵がいれば牽制中心にしようかと。結果的に、パルティス君の言うような後衛への攻撃に対する牽制にもなるはず。 突破される可能性も考えれば、離れすぎずというのも同意、です。
ギルドの提示した難易度設定も普通であることだし、 そこまで大がかりな策を用いずとも、押し切れる相手だとは思っている。 初動後の流れについては、アクティオンが挙げてくれたものが過不足なく良いと思う。 おれ自身のポジションをどうするかでしばらく悩んでいたのだが…… ウォーリア&シーフの三名を補助するようなスタンスで立ち回ろうと思う。 手数が足りなければ攻撃手に加わりつつ、範囲回復するようなイメージだ。 回り込まれないよう、ここで圧をかけていけたらと考えている。 ツェツィーリアは自分自身で回復手段を有しているし、 こちらが飛び出して敵の注意を引きつけた後は、遊撃的に立ち回ってもらえれば十分かと考えている。
依頼の報酬が入ったので【天眼】を取ってみたよ。 敵さんのお相手しつつ、後続の動きも見て、必要であればシューターさんが直接狙われないようカットに入るようにしておくね。 初手は先の発言の通りで大岩の上から【エアーライド】して頭上からの仕掛けにしてみる。 転倒させて後続が雪崩込んでこないように出来たらってトコで。 ハッタさんが補助してくれるなら、攻める時は思い切って前に出てみるかな。
>アクティオン殿 下にも書きましたように、敵1体目は結界で囲みたいと思います。 ですので、最初の目標は2体目でお願いします。 自身も弓で攻撃行います。 仕様変更で、強射の使用回数も増えました。