わたちとのっぽさんたち
キャラクターノベル(グループ)制作 炙りとろ左門納品 2024年04月13日 23時44分35秒
わたちのお嬢様は、わたちに負けないくらいかわいいの。
綿毛玉が如しのわたちほどふわふわとはしていないけれど、お嬢様に頬擦りするといつも、柔らかくていい匂いがするわ。
だからわたちは、お嬢様が大好き。ブラッシングとお散歩が次に好き。できればずっと一緒に遊んでいたいの。
でも、お嬢様は遊ぶのが好きではないのかしら。ううん、遊んでる時は楽しそうだけれど。
のっぽさんたち自身は、あんまり遊ばないの。そのちいさいほうはよく一緒に遊んでくれるけれど、ずっとじゃない。お嬢様はちいさいほうだけれど、おおきいほうと同じくらい、最近は忙しそう。
今日はなんだか小さなおうちに入れられて、ごとごと揺られているわ。駆け回らない遊びははじめてだけれど、揺られているだけなのはちょっと退屈ね、お嬢様!
おうちの窓を脚で掻いたら、お嬢様のお顔が見えたわ。
『もしかして、暗くて怖い……? 我慢させてごめんなさい、もう少しですから』
なんだか、お嬢様がしょんぼりしているわ。わたちと一緒に遊びましょ! そしたら元気が出るから。
『いや、この様子は……遊びたいだけだろう。今にも飛び出していきそうだ』
――あ、旦那様も近くにいるのね?
ならわたち、大人しくしているわ。番の邪魔をするつもりはないもの。
『……急に大人しくなったな。……もしかして、俺を怖がって……?』
『それはないと思いますが……はじめてお連れになった時も、ナハティガルさんに心を許している様子でした』
なにか話しはじめたわね。何を言っているのかはわからないけれど。のっぽさんたちはわたちたちとは違って、いっぱい、ながーく喋るのね。でもわたち、お嬢様と旦那様のお喋りが好きだわ。聞いているとなんだか、眠くなってくるもの。
『あら、あくび。眠かったんですね』
『あれだけはしゃいでいればな』
『ナハティガルさんにリナリアちゃんを見てもらっていたので、荷造りも思ったより早く済みました。ありがとうございます』
『本当に相手をしているだけだった。……荷運びのほうは任せろ――』
ごとごと。ごとごと。ところでこの遊び、本当に揺られているだけなのかしら?
●
――はっ!
わたちとしたことが、随分ぐっすり寝てしまっていたみたいね。ごとごと揺られる遊びも、いつの間にか終わってたわ。まだちょっと揺れてる気がするけれど。
……あら? ここは……おうちの中みたいだけれど、いつものおうちじゃないみたい。お嬢様の匂いはかすかにするけれど……くんくん……『ジューイサン』のおうちではないみたいね! 安心だわ。
『あっ、リナリアちゃん。おはようございます。今日からここが、わたしたちのあたらしいおうちですよ』
あらお嬢様、素敵な笑顔ね。何か良いことがあったのかしら。お嬢様が嬉しそうにしてると、わたちも嬉しいわ!
『ゲルダ、荷物はこれで全てだろうか』
『ありがとうございます、ナハティガルさん。ほとんど運んでいただいてしまって……ナハティガルさんもお部屋の準備をしないといけないのに』
『もとより気ままな旅烏だ、俺の荷物など片手で足りる。だがアンタは、ひとりでは日が暮れるだろう。特に家具などは。それに――』
『それに……?』
『……今日から隣人なんだ。頼ってほしい』
『は、はい……そうですよね! よろしく、お願いします』
あら? なんだか良い雰囲気じゃない? わたち、お邪魔かしら。ならふたりが仲良くしている間、わたちはこのおうちを探検するわね。
『あ、リナリアちゃん!』
『庭で遊ばせておくのはどうだ? これから家具を運ぶし、中よりは危なくないだろう』
ニワ!? わたち、それ大好き! お外で遊んでいいってことでしょう? ならおうちの探検はあとね、さあ、ニワに案内して!
『リナリアちゃん、垣根の向こうには行っちゃダメですよ』
ダメ? それはあれね、いけないことってやつだわ! ニワで遊ぶのは良いけれど、しちゃいけないことがあるのね。お嬢様を心配させないように、あまり遠くには行かないようにしましょ。
●
ニワは素敵なところだったわ。
土や石が剥き出しじゃなくてよかった。転がって汚れることがないもの。草丈もないし、いっぱい走れて満足よ。
でもきっと、囲われた外へは行っちゃいけないのね。ええ、ひらひらを追って思わず突っ込んでしまって、抜けなくなって大変だったけれど。一生このままかと思ったわ、ありがとうお嬢様。
お嬢様にだっこしてもらっているから、おうちの中がよく見えるわね。ごちゃごちゃいろいろ置いてあったのが、歩き回りやすくなっているわ。
そういえば、のっぽさんたちは重たいものを軽々運んでしまえるのだったわ。きっと旦那様が大活躍したのね。さすがだわ。
『良い物件を紹介してくださって、ありがとうございます』
『いや……話を持っていった時は、驚かせてしまった。悪い』
『も、もちろん分かっていました。一緒に住もうという意味ではないと……』
『俺もまだ命が惜しいしな。まずは隣り合わせの物件を借りようと――リナリアの世話をするにもちょうど良いだろう』
あら? あら? ふたりでおでかけかと思ったのに、旦那様だけ?
『はい。リナリアちゃんもここが気に入ったみたいで、よかった』
あ、お嬢様が笑ってくれたわ。やっぱり、笑っているとより素敵ね! 旦那様がいるとお嬢様はよく笑うから、できるだけはやく帰ってきてね。
●
――遅いわ。お空はすっかりきらきらしてるのに!
お嬢様の様子もなんだかちょっと変だし。
でも向こうに旦那様らしき気配はあるのよね。どうしてこっちに来ないのかしら。
『リナリアちゃん、壁を擦ってはダメですよ』
むう。これはダメなこと。わかったわ、わたち、賢いもの。あと、今日はいっぱいだっこしてもらえて嬉しいわ。
『隣にナハティガルさんが暮らしていると思うと、ちょっと、落ち着かなくて……へ、変ですよね。なんでも……なんでもないのに』
んん?
くっつけてるお嬢様の顔、いつもよりちょっとあったかいわね。もしかして具合が悪いのかしら!?
『ふふっ。リナリアちゃん、そんなに舐められたら、くすぐったいですよ』
うーん。具合が悪いわけでは、ない?
でも、のっぽさんたちがわたちをいっぱい撫でたり、だっこしたり、抱きしめるのは、もちろんわたちを可愛いと思ってくれているからだけれど、のっぽさんたちが不安だったり、そわそわ落ち着かない時だったりするのよ。
――だから今日も、わたちが一緒に寝てあげるわ! そうしたらお嬢様は、明日も元気いっぱい、優しく笑いかけてくれるはずだものね。
綿毛玉が如しのわたちほどふわふわとはしていないけれど、お嬢様に頬擦りするといつも、柔らかくていい匂いがするわ。
だからわたちは、お嬢様が大好き。ブラッシングとお散歩が次に好き。できればずっと一緒に遊んでいたいの。
でも、お嬢様は遊ぶのが好きではないのかしら。ううん、遊んでる時は楽しそうだけれど。
のっぽさんたち自身は、あんまり遊ばないの。そのちいさいほうはよく一緒に遊んでくれるけれど、ずっとじゃない。お嬢様はちいさいほうだけれど、おおきいほうと同じくらい、最近は忙しそう。
今日はなんだか小さなおうちに入れられて、ごとごと揺られているわ。駆け回らない遊びははじめてだけれど、揺られているだけなのはちょっと退屈ね、お嬢様!
おうちの窓を脚で掻いたら、お嬢様のお顔が見えたわ。
『もしかして、暗くて怖い……? 我慢させてごめんなさい、もう少しですから』
なんだか、お嬢様がしょんぼりしているわ。わたちと一緒に遊びましょ! そしたら元気が出るから。
『いや、この様子は……遊びたいだけだろう。今にも飛び出していきそうだ』
――あ、旦那様も近くにいるのね?
ならわたち、大人しくしているわ。番の邪魔をするつもりはないもの。
『……急に大人しくなったな。……もしかして、俺を怖がって……?』
『それはないと思いますが……はじめてお連れになった時も、ナハティガルさんに心を許している様子でした』
なにか話しはじめたわね。何を言っているのかはわからないけれど。のっぽさんたちはわたちたちとは違って、いっぱい、ながーく喋るのね。でもわたち、お嬢様と旦那様のお喋りが好きだわ。聞いているとなんだか、眠くなってくるもの。
『あら、あくび。眠かったんですね』
『あれだけはしゃいでいればな』
『ナハティガルさんにリナリアちゃんを見てもらっていたので、荷造りも思ったより早く済みました。ありがとうございます』
『本当に相手をしているだけだった。……荷運びのほうは任せろ――』
ごとごと。ごとごと。ところでこの遊び、本当に揺られているだけなのかしら?
●
――はっ!
わたちとしたことが、随分ぐっすり寝てしまっていたみたいね。ごとごと揺られる遊びも、いつの間にか終わってたわ。まだちょっと揺れてる気がするけれど。
……あら? ここは……おうちの中みたいだけれど、いつものおうちじゃないみたい。お嬢様の匂いはかすかにするけれど……くんくん……『ジューイサン』のおうちではないみたいね! 安心だわ。
『あっ、リナリアちゃん。おはようございます。今日からここが、わたしたちのあたらしいおうちですよ』
あらお嬢様、素敵な笑顔ね。何か良いことがあったのかしら。お嬢様が嬉しそうにしてると、わたちも嬉しいわ!
『ゲルダ、荷物はこれで全てだろうか』
『ありがとうございます、ナハティガルさん。ほとんど運んでいただいてしまって……ナハティガルさんもお部屋の準備をしないといけないのに』
『もとより気ままな旅烏だ、俺の荷物など片手で足りる。だがアンタは、ひとりでは日が暮れるだろう。特に家具などは。それに――』
『それに……?』
『……今日から隣人なんだ。頼ってほしい』
『は、はい……そうですよね! よろしく、お願いします』
あら? なんだか良い雰囲気じゃない? わたち、お邪魔かしら。ならふたりが仲良くしている間、わたちはこのおうちを探検するわね。
『あ、リナリアちゃん!』
『庭で遊ばせておくのはどうだ? これから家具を運ぶし、中よりは危なくないだろう』
ニワ!? わたち、それ大好き! お外で遊んでいいってことでしょう? ならおうちの探検はあとね、さあ、ニワに案内して!
『リナリアちゃん、垣根の向こうには行っちゃダメですよ』
ダメ? それはあれね、いけないことってやつだわ! ニワで遊ぶのは良いけれど、しちゃいけないことがあるのね。お嬢様を心配させないように、あまり遠くには行かないようにしましょ。
●
ニワは素敵なところだったわ。
土や石が剥き出しじゃなくてよかった。転がって汚れることがないもの。草丈もないし、いっぱい走れて満足よ。
でもきっと、囲われた外へは行っちゃいけないのね。ええ、ひらひらを追って思わず突っ込んでしまって、抜けなくなって大変だったけれど。一生このままかと思ったわ、ありがとうお嬢様。
お嬢様にだっこしてもらっているから、おうちの中がよく見えるわね。ごちゃごちゃいろいろ置いてあったのが、歩き回りやすくなっているわ。
そういえば、のっぽさんたちは重たいものを軽々運んでしまえるのだったわ。きっと旦那様が大活躍したのね。さすがだわ。
『良い物件を紹介してくださって、ありがとうございます』
『いや……話を持っていった時は、驚かせてしまった。悪い』
『も、もちろん分かっていました。一緒に住もうという意味ではないと……』
『俺もまだ命が惜しいしな。まずは隣り合わせの物件を借りようと――リナリアの世話をするにもちょうど良いだろう』
あら? あら? ふたりでおでかけかと思ったのに、旦那様だけ?
『はい。リナリアちゃんもここが気に入ったみたいで、よかった』
あ、お嬢様が笑ってくれたわ。やっぱり、笑っているとより素敵ね! 旦那様がいるとお嬢様はよく笑うから、できるだけはやく帰ってきてね。
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――遅いわ。お空はすっかりきらきらしてるのに!
お嬢様の様子もなんだかちょっと変だし。
でも向こうに旦那様らしき気配はあるのよね。どうしてこっちに来ないのかしら。
『リナリアちゃん、壁を擦ってはダメですよ』
むう。これはダメなこと。わかったわ、わたち、賢いもの。あと、今日はいっぱいだっこしてもらえて嬉しいわ。
『隣にナハティガルさんが暮らしていると思うと、ちょっと、落ち着かなくて……へ、変ですよね。なんでも……なんでもないのに』
んん?
くっつけてるお嬢様の顔、いつもよりちょっとあったかいわね。もしかして具合が悪いのかしら!?
『ふふっ。リナリアちゃん、そんなに舐められたら、くすぐったいですよ』
うーん。具合が悪いわけでは、ない?
でも、のっぽさんたちがわたちをいっぱい撫でたり、だっこしたり、抱きしめるのは、もちろんわたちを可愛いと思ってくれているからだけれど、のっぽさんたちが不安だったり、そわそわ落ち着かない時だったりするのよ。
――だから今日も、わたちが一緒に寝てあげるわ! そうしたらお嬢様は、明日も元気いっぱい、優しく笑いかけてくれるはずだものね。