【帝国】帝国奪還連動 帝都決戦編

バルディオン
……こちらにおいででしたか、殿下。ミルド卿が拠点確保の件で謁見を賜りたいと、探しておられましたが。
レイウェスト・バルダス
ああ……直ぐに戻る。少し、考え事をしていたのだ。
バルディオン
――遂に世は帝都奪還へと動き、我ら帝国民の悲願が実る時が近づいております。しかし、旗頭となられる殿下の御心労は如何ばかりか。お察し申し上げます。
レイウェスト・バルダス
ありがとう、バルディオン。
かの『天霧りに消ゆる幽界樹』、そして皇妃イダ・バルダスは、そなたにとっても妻子の仇だ。必ずや討ち果たしてみせよう。
バルディオン
皇帝陛下と征竜も動こうとしております。此度の戦は、想像を絶する激戦となりましょうな。
レイウェスト・バルダス
正直に言えば、恐ろしく思うよ。だが、私はやらねばならぬのだ。
……私が皇帝ヨゼフの首を獲ろうとも、ついて来てくれるか。バルディオン。
バルディオン
――仰せのままに。このバルディオン、如何なる時も殿下の盾となり、矛となることを誓いましょう。
帝都シルトラース奪還作戦が始まろうとしています――
(10月31日より 【帝国】連動シナリオリリース開始!)
assignment【帝国】帝国奪還連動 帝都決戦編 概要
「【帝国】帝国奪還連動 帝都決戦編」では、シルトラース帝国第八皇子レイウェスト皇子を旗頭とした帝国軍および彼を支持する国々の支援から成るロスガリア大陸連合軍による、帝都シルトラース奪還作戦を扱います。
assignmentここまでの流れ
『預言の魔女』オペラは、帝国皇帝ヨゼフ・バルダス一派と征竜が帝都に現れる夢を見た。ヨゼフは娘イダを倒し、征竜の力を利用して悲願たる大陸制覇を成すために。征竜は創造神の創りし世界の理を変え得る『超越者』イダ、エフレム、そしてエフレムを思うままに動かし得る者として危険視するレイウェストを滅し、人の数を神代と同等まで減じるために。イダの居城と化した帝都を目指す。
帝都奪還を目指すレイウェストの前には、黒い霧を吐き仔を操る『天霧りに消ゆる幽界樹』、人の心を失い人の世を乱す祖父と母、更には人の世の繁栄を恐れ人を粛清せんとする征竜までもが立ちはだかる。
シルトラース帝国、リーンエス王国、エラトゥーン都市同盟、ディズル大湿地帯、辺境都市群、ゴールディ、フィルエス大森林、ドワーフ王国、シグモル火山帯は「ロスガリア大陸連合軍」を成し、帝都シルトラース奪還へと動き出した。
assignment連動スケジュール(予定)
2023/10/30 連動特設ページ公開
2023/10/31 連動シナリオリリース開始
2023/11/29 決戦特設ページ公開
2023/11/30 第1決戦シナリオ オープニング公開
2023/12/18 第1決戦シナリオ リプレイ公開
2023/12/19 第2決戦シナリオ オープニング公開
2024/01/11 第2決戦シナリオ リプレイ公開
※スケジュールは連動シナリオの結果により変更となる可能性があります。
person_pin関連NPC
亡国となった帝国の皇族の、唯一と思われていた生き残り。皇帝ヨゼフとその子女である第三皇女イダとの間に生まれた生粋の皇族と言われていたが、実際はリザードマンの大酋長アシムベートとイダの間の息子であった。大陸一の美姫と謳われた母譲りの長く、美しい髪と気難しげな真紅の瞳の持ち主。エフレムとともに帝都から脱出して以降、帝国復興のために周囲の協力を得ながら奮闘していた。ヴィント奪還作戦に於いてエフレムに不審を抱き、帝国滅亡の真相を問いただした結果、彼と袂を分かつこととなった。
《本連動での動き》
帝国軍およびロスガリア大陸連合軍の旗頭として、帝都奪還作戦に挑もうとしている。
帝国南部の守りの要『ヴァイセントラフ砦』と南部の経済的中心『帝国南部鎮守都市ヴィント』をレイウェスト皇子から任された帝国の重鎮。帝国崩壊時に妻と息子バルディオンJrを亡くし、その後アンデッドと化した息子と対峙することになった過去を持つ。帝国崩壊以降、将軍としてレイウェストに仕え、陰日向になり支えてきた。
《本連動での動き》
皇帝ヨゼフの生存により忠誠心の置き所を迷う事もあったが、レイウェストを主君と定め、帝都奪還作戦に挑もうとしている。
帝国北部鎮守都市「オルセン」の太守兼将軍である若きハーフリング。代々太守を拝命する名門マフダル家の長で、弓の腕も高いが軍を動かす方が得手な頭脳派。ほぼ孤立状態かつ厳しい環境にありながらも多くの人口を抱えるオルセン太守として、都市を守り民を食わせることを最優先してきた。征竜に対する人類の盾として北を守ってきた自負もある。これまでレイウェストらヴィント勢に合流して兵を動かす余裕はなかったが、帝国民を救う為にもっとも粉骨砕身の努力をしてきたレイウェストを正当に評価し、冒険者の尽力やオルセンの状況変化も受けて、帝都奪還作戦に兵を出すことを決める。
《本連動での動き》
帝都奪還作戦に向けて、帝都の北側へ兵を送る事を表明している。
シルトラース帝国近衛連隊出身の元軍人で帝国魔導院エスタル支部長。最愛の妻と娘を帝国崩壊時に失って以後しばらくは攻撃性の塊のような時期もあったが、現在は生来の子供好きの性格が復活し、他人の子供の世話を焼いていることが多い。幽界樹の最大の脅威である【黒い霧】への対策として『凝黒紋具』を、幽界分樹発生の対策として龍脈異常探知装置『状捜楔』を制作した。
《本連動での動き》
帝都奪還作戦に向けて、凝黒紋具「本格式凝黒装置(大型)」20基の輸送を行う。
40代程のヒューマンの男性。シルトラース帝国近衛連隊長として最強の戦士とされ、滅亡前の帝国では四方将軍の上席にあり、帝国軍人の頂点であった。【泥乱】連動においてヨゼフ・バルダスより切り捨てられ、現在はレイウェスト皇子に協力している。
《本連動での動き》
帝都奪還作戦に向けて、橋頭保となり得る拠点確保を行う。
現シルトラース帝国皇帝。幼少期より皇帝になるために切磋琢磨し、皇位継承以前から周辺国家や兵士たちへと積極的に介入し、来るリーンエス王国との決戦に備えていた。武力をもって大陸を統べる夢を見、娘イダの異能を利用してアシムベートを篭絡し、王国に攻め入る直前まで準備していたが、イダとエフレムによる幽界樹出現で覇道を阻まれた。民も国も失った今でも「大陸制覇」に固執し、それしか見えていない。レイウェストとはイダ打倒までの消極的共闘を約束しているほか、イダを倒しその後の大陸制覇にも利用するため征竜とも同盟を結んだ。
《本連動での動き》
11月末に征竜を伴い、帝都に現れる事がオペラにより預言されている。
シルトラース帝国現皇帝ヨゼフ・バルダスの第三皇女であり、皇妃(側室)でもある女性。第八皇子レイウェスト・バルダスの実母であり、『大陸一の美姫』と謳われた美貌の姫だが、ヨゼフ帝と婚姻し成人とされた後の彼女の姿を見た者は極端に少ない。1220年の夏、エフレムに命じて『天霧りに消ゆる幽界樹』を召喚させ、帝国を崩壊させた人物。人を超えた『超越者』となり、独善的に『美しい世界』を追い求めている。美を極めた末の異能『魅了』によって帝都の幽界樹と多数のクリーパーを支配下に置いているようだ。
《本連動での動き》
オペラの『夢の神』として神託を授けていた人物である事が判明。征竜およびヨゼフとの戦いに備え、幽界樹に力を蓄えさせているようだ。
皇子レイウェストの護衛騎士。現在、イダと並んで最も神に近い超越者。護衛騎士の中で唯一のリザードマンであること、クリーパーを召喚し支配することを得手とする《召喚術》の達人であること、そして寡黙に過ぎる性格から『語らずの智者』の異名を持つ。亡国の騎士となっても単身で各国の介入からレイウェストを守る忠義の人物……と思われていた。ヴィント奪還作戦における不自然な立ち回りから、レイウェストに帝国崩壊の引き金を引いたのが彼であると看破され、袂を分かつこととなる。
《本連動での動き》
レイウェストの元を去った後も、ドワーフ王国への助力の対価としてレイウェストへの支援を取りつけ、レイウェストが滞在していた王国の危機に際してはクライスに助言して龍脈異常探知装置『状捜楔』を完成させていた事が判明している。
四対八眼の金眼に多数の角、六対十二枚の翼を持つ、いわゆる西洋竜の形状をした生物。創造神が世界を造った際に『世界の守護者』として生み出された竜たちの最後の生き残り。創造神が造った世界に変革をもたらす『昇神』を快くは思わず、ドン・ゴーフルと同時代にエフレム、イダと昇神が続きかねない状況と、力なきレイウェストがエフレムを意のままに昇神させ得る「人という生物ゆえの欠陥」を危険視。彼らの殺害を決める。同時に、神に至れる超越者が増えた原因はヒトの数が増えすぎた事と考え、自身の理想とする神代の数まで減じることを宣言。イダの打倒という点で利害が一致し、ヨゼフと同盟を結んでいる。
《本連動での動き》
11月末にヨゼフを伴い、帝都に現れる事がオペラにより預言されている。
「必ず的中する」予知夢を見ると証明された女性。帝国崩壊の夏以降、予知の範囲はロスガリア大陸全土にわたり、夢の中に「白い鳥」が現れることが彼女の予知夢の特徴である。彼女はそれを神の預言であると信じ、世界中の人々を救うべく予知夢の情報を冒険者ギルドへ提供していた。
《本連動での動き》
11月末に征竜とヨゼフが帝都に現れる予知夢を見、同時に夢の神の正体がイダである事を知った。その後も予知夢は見続けているようだ。
ウィリアム・リーンエス王子の妹にあたるリーンエス王国第一王女。人形のように可憐な容姿からは想像もつかない行動力と気の強さで、周囲を驚かせることもある。現王家唯一の王女であり、国王や王太子、ウィリアム王子の寵愛を一身に受ける影の女王。レイウェストの婚約者であり、未来の帝国皇妃として彼を支える立場である。
《本連動での動き》
レイウェストらと共に世界樹の元を訪れた。帝都奪還作戦では後方拠点の将として出陣するつもりのようだ。
リーンエス王国の第二王子。文武ともに優れた才能を有した《授恵者》であるが、王族らしからぬ軽薄さ故に近親以外の王族からは見下され、対立する貴族からも「毀れ者(こぼれもの)」と揶揄されている。王国の代表として冒険者ギルド本部のあるリブラネスタに派遣されているが、本人はこれ幸いと市井を味わっていた。国策によりバデーニ公爵家への婿入りを予定しており、独身生活に終止符を打とうとしている。
《本連動での動き》
帝都奪還作戦ではリーンエス王国軍の主将として出陣するつもりのようだ。
ディズル大湿地帯の最大派閥であるギシュム族の酋長。ギシュム族が泥血啜る月吸蟲を封印している一帯の管理を担うことから、大酋長とも呼ばれる。武威ばった人物ではあるが、人柄は良く義理堅い。帝国近衛騎士になったエフレムの兄貴分でもあり、マナズィールも共にしたことがある。かつてイダの異能を知るヨゼフの策により彼女と出逢い、盲目的かつ一方的な恋をした末に子レイウェストが誕生。王国との開戦に向けて同盟を結ぶに至った。
《本連動での動き》
レイウェストらと共に世界樹の元を訪れた。子であり同胞であるレイウェストを支持し、援軍を率いての帝国入りを表明している。
フィルエス大森林のエルフの最古老の一人であり、まとめ役。かつて『灰火』の族長も務めていた。部族間のもめごとなどが起きた際に調停にあたったり、他国や他種族に対してはフィルエス大森林を代表した立場で外交を行うこともある。
《本連動での動き》
レイウェストらと共に世界樹の元を訪れた。帝国へ援軍を送るにあたり、各氏族間や帝国、冒険者ギルドなどとの調整を行う。
menu_book関連用語・情報
ロスガリア大陸連合軍
帝都奪還作戦に参加する全ての国家の連合軍。 帝都奪還、イダ・バルダス打倒、ヨゼフ・バルダス打倒、幽界樹伐採、征竜との対決など、を目標に、レイウェスト率いるシルトラース帝国軍は帝都へ進軍する。リーンエス王国、エラトゥーン都市同盟、ディズル大湿地帯、辺境都市群、ゴールディ、フィルエス大森林、ドワーフ王国、シグモル火山帯はそれを支持し、援軍派遣、物資や資金の支援など様々な手段で協力する。
天霧りに消ゆる幽界樹
帝都崩壊事変に際して帝都の中央に現れた樹木型の超大型クリーパー。同種と思われる樹木型のクリーパー(幽界分樹)が同時に帝国各地の主要都市に出現し、帝国の崩壊の引き金となった。
帝都の幽界樹が本体であるか、それとも地中やアストラル界などに真の「本体」が存在するのかは判明していない。
エーテル能力の低い者の感覚を著しく阻害する黒い霧を都市を覆う規模の広範囲に吐き出す事、木の実にも見える自身の一部を他種のクリーパーに植え込んで『幽界樹の仔』とし、同調、操作することがある。また、自身の分身である新型の『仔』を生み操る能力も得た。
かつて討伐された幽界分樹の例でいえば、特殊能力の強大さと裏腹に、幽界樹自体の攻撃手段は根状の巨大器官で地下から突き上げるもの、葉状の物を全周囲にまき散らすものなど『比較的』貧弱であった。
大地のエーテルを吸い上げ糧とする性質があり、帝国全土と王国北部に不作をもたらしている。現在はイダの意向を受け、ヨゼフと征竜との戦いに備えて急速にエーテルを吸収し力を蓄えているようだ。
帝都シルトラース
帝国最大の都市にして帝国滅亡の発端となった首都。一辺10kmの方形大城壁に囲まれた難攻不落の都市であった。近衛騎士エフレムが召喚した『天霧りに消ゆる幽界樹』によって全域を濃い黒霧に覆われており、力なき者の侵入を拒んでいる。幽界樹の仔など多数のクリーパーが跋扈し、城壁に近づく者にもそれらは襲いかかる。
市内には皇妃イダ・バルダスが居るとされ、幽界樹をはじめとしたクリーパーが彼女の支配を受けていると推測される。
超越者
授恵者のようにエーテルの扱いに長けた者は、人の身のまま神へ至るための階梯を昇っていくという。神に至る直前の階梯まで達した存在は「超越者」と呼ばれ、人間の枠を超えたような強大な能力を得るようだ。しかし、階梯を昇るにつれてその個人は徐々に変質していき、一つの目的しか見えなくなるとメドゥの右腕によって語られた。
昇神
超越者となり、神へと至る階梯を昇り切った者の一部は、自身の存在の在り方を変え、神に成ることができるようだ。かつて「名もなき小鬼」がゴブリンをヒトへと変じたように、創造神が創った世界の理(ルール)を変え「新たな法則を産む」と共に「その法則に関わる神」となる。「名もなき小鬼」以外の例としては、昇神により吸血鬼を生んだとされる「メドゥの右腕」などが該当する。
世界樹
フィルエス大森林中北部にそびえる大樹。実は神代に創造神によって生み出された『大地の守護者』であり、征竜と並ぶ強大な力を持つ。現在は、その身をもって足下にあるアストラル界との境界の裂け目を塞いでいるため身動きはできない。フィルエス大森林のエルフに導きを与えていたハイアルヴの正体も世界樹である。
1220年夏の帝国崩壊直前ごろに異変を察知、様子を見に根を伸ばしたところ帝国皇女イダ・バルダスにより力を収奪され、ハイアルヴとしての能力も奪われた。回復を目指して大森林各地で異変を起こし、人類とケンタウロスの族長ルカンドラの助力を得てイダの干渉および大森林に侵攻中のヨゼフを退けた(【樹謂】連動)。その際にイダと幽界樹による世界の滅亡の預言を与え、人類とケンタウロスに彼女らの打倒を呼びかけ、そのために助力する旨を宣言した。
1223年秋、帝都奪還作戦を前にレイウェストらが世界樹を訪問。世界樹は『神に祝福されし授恵者達』へ自身の力を少しずつ分け与えると、自身はその身をエーテルに換えて足下の裂け目を塞ぎ、消滅した。
『聖地』のケンタウロス
『聖地』は複数の部族のケンタウロス達が住む土地で、場所はシルトラース帝国の東端。ドワーフ王国や辺境都市群に近い平原にある。彼らは神代の英雄ジド・ルウとの約束によりこの地を守っているという。
1222年初頭に聖地がメドゥの左腕の襲撃を受けたことによりケンタウロスの大移動(【人馬】連動)が起き、聖地とそこに住まうケンタウロス達、そしてエーテル石の存在が明らかとなる。聖地奪還戦においては冒険者が主戦力となり、ケンタウロスと帝国の停戦協定の締結に大きく貢献した。エーテル石はそれ自体が多くのエーテルを含有するが、紋具や神代の魔方陣などの触媒として用いた際の効果も極めて大きい。
【樹謂】連動の際には一部族の長ルカンドラが冒険者とともにフィルエス大森林の世界樹を訪れ、幽界樹により世界が滅亡するとの預言を聞いた。その後、【天馬】連動での交流も経て、聖地のケンタウロス達の人類への敵対感情はかなり薄れ、友好的関係を築けそうな段階にきている。
1223年秋、それまで明確な「不作」の影響が表れていなかった『聖地』周辺でも樹木や草木が生気を失っていく様子が確認された。人類との交流経験が豊富なランランとルカンドラ、ヌロブアの3名が帝国軍の駐屯所を訪れ、情報交換を行ったらしい。
古砦都市シャルト
建国王イェーラウ・バルダスの時代に砦が作られた場所で、シルトラース帝国の地方都市の1つ。帝都シルトラースの南方に位置し、現在奪還済みの都市の中では最も帝都に近い。
帝国崩壊に伴い幽界樹が発生し瓦礫だらけの廃墟と化したが、クーネと冒険者を加えた帝国軍が奪還に動き、1223年春からの戦いで幽界樹を倒しクリーパーの掃討を行った。
ヴィントから帝都へ進軍する際の後方拠点・物資集積の中継拠点として利用される。
本格式凝黒装置(凝黒紋具)
・大型:クライス・アクバーが制作した、エーテル石を内部に収めた紋具装置。大型は大きめの竈ぐらいの大きさで、荷馬車に積み込んで移動させる。幽界樹の吐き出す『黒い霧』を黒い結晶岩に変えることで空間から除去し、人間への悪影響を抑える。ただし、完全に除去できるわけでは無く、授恵者であれば多少の変調を覚える程度にまで抑えられるが、一般人にとっては不快さが残る。動作中は基本的に自動で作動するが、作動開始や停止などの操作には最低10人の術者が必要となる。最大効果範囲は直径約500m、最長稼働時間は2~3日と推定される。
・小型:大型と同様の効果をもつ、アクセサリー程度の小型紋具装置。術者は1人で良く、最大効果範囲は直径200m弱、最長稼働時間は1時間と推定される。
ああ、また夢を見ているのだと『預言の魔女』オペラは気付いた。
黒い霧と禍々しい枝葉に覆われた何処か。寒国の秋特有の弱々しい陽光がごく限られた範囲にだけ降り注ぎ、その中心に座すのは――長く、艶やかな黒髪の女。
「うふふ。もうすぐ、あの男が此処へやってくるのね。私を殺しに。征竜を連れて」
後ろ姿ゆえに表情は見えない。コロコロと愉しげに笑う彼女の声には、一片の邪気も感じられなかった。
「帝国が王国を攻め落とす。帝国が世界を支配する。そんな世界は美しくないから、帝国を無くしてあげたのに。あの男は未だに叶わぬ夢を見続けているのね。……それに、征竜は人類の数を減らしたいのですって? 酷いわ。この美しい世界を壊そうと言うのよ」
「…………」
隣に立つ白鱗のリザードマンは、傾国の魔女――イダ・バルダスの言葉に、ただ沈黙のみを返す。
「エフレム、またお出かけして来てもいいのよ。あなたはあの子を助けたいのでしょう? なんて美しい忠誠心なのかしら」
「……拙は」
何かを言おうとしたエフレムの口は、優雅に立ち上がったイダの動きに止められた。
イダは陽光の庭園を囲む黒い霧の向こうへと目を向け、鈴が鳴るような声音で呼びかける。
「さあ、征竜とあの男をお迎えする準備をしなきゃ。――ねえ、クリーパーさん、お願い。もっともっと強くなって、この美しい世界を守って頂戴?」
オペラの視界は一度暗転し、気づいた時には荒野の真ん中に立っていた。
目の前の地面を見れば、いつもの白い鳥が静かに遠くを見つめている。
(――時間軸が切り替わったの……じゃろうか?)
白い鳥の視線を辿ると、その先には黒い霧に覆われた帝都シルトラースの城壁がうっすら見えた。乾いた風に細かな雪が舞い、季節は冬の初めのように思う。遠くに見える二本角のような山の頂に、薄雲に遮られた太陽がちょこんと収まっているのが目に入った。
(昔、家族と帝都を訪れたことがある。あの二本角の間に太陽がすっぽり入る日は、一年に2日とないはずじゃ)
『よく見ていて、預言の魔女さん。あの男と征竜は、この日に帝都へやって来るわ』
「――!?」
オペラの頭の中に、女の声が直接響く。
恐る恐る見下ろした先で、白い鳥がじっとこちらを見据えていた。
荒野を踏みしめる、幾つもの靴音。幾つもの武器が奏でる硬質の音。
黒馬に跨り、竜骨の具足に身を包んだ偉丈夫――帝国皇帝ヨゼフ・バルダスが、幾人もの男女を従え西から姿を現した。
やがて空が暗く陰り、轟音のような羽音とともに突風が吹き荒れる。
「これが……征竜……」
呆然と呟くオペラの頭上。空には巨大な白き竜が舞い、四対八眼の金眼が帝都を向いていた。
『彼らはこの美しい世界を破壊するわ。だから皆に伝えてほしいの。私と一緒に、あの男と征竜を倒しましょう。この世界を守るのよ』
鈴の鳴るような声音で。イダの声音で、白い鳥は言う。小刻みに震える身体を自身の腕で抱きしめて、オペラは何とか言葉を絞り出した。
「神、様……貴女は、わらわの神様ではない……!」
『まあ。私はあなたの神様よ? ずっとお告げを授けてあげたじゃない。あの夏から』
「違う……! 神様は、神様はわらわが幼い頃から、わらわを導いて――」
あの夏、オペラの見る夢は変わった。
それまで自分自身の運命しか夢に見ることができなかったにも関わらず、ある日夢の中で『神様』に出逢い、大陸全土の夢を見るようになった。
「イダ・バルダス! おぬし、わらわの神様に……何をしたのじゃ……!?」
『大した事はしていないわ。あの夏に、あなたの神様が私にちょっかいをかけたから』
――食べちゃっただけよ。
●
(……私を危険視すると言ったな、征竜よ)
窓から見える白き大地。その果てに極北の征竜を幻視しながら、レイウェスト・バルダスは心の中でそう呼びかけた。
(私がエフレムを動かし得る? 違うな。あの者は、頼まれれば断れぬ――こわれてしまった男だ。あの者にとって、私だけが特別な存在ではあるまいよ)
右手の甲に刻まれた征竜の紋章に視線を落とすも、かの巨竜の声は聞こえない。
(……私の事は良い。征竜よ、『人よ 神の御代へ帰れ』とは、貴方が人の数を減じようという意味か。であれば、人は貴方の所業を許さず敵となろう。――貴方は、人と敵対するおつもりか)
返答なきは肯定と受け取らざるを得ない。
クリーパーの侵攻に晒され続けていた神代の記録は殆ど存在しないが、学者らの推定によれば、当時の大陸人口は現代の百分の一にも満たないと言う。征竜が自身の理想とする『人の数』が神代末のものなのか、クリーパーがいまだ姿を現さぬ時期のことかは定かではないが、いずれにせよ現代よりは遙かに少ないだろう。それを現代に再現するのならば、ごく一握りの人類のみを残して他は死ぬという事だ。
「……」
レイウェストは征竜との対話を諦め、懐から書簡を取り出して視線を落とした。帝国東部鎮守都市エスタルを任せたリカルダ=C=アーレンス将軍から、先日届いたものだ。
(……リカルダにも、思う所があるのやもしれぬ)
無数の帝国民の仇たる幽界樹とイダ・バルダスの打倒、そして帝都の奪還は、全ての帝国民にとっての悲願である――といった主旨の文から始まるその書簡には、オペラの預言を受けていよいよ帝都奪還に動くべく派兵の要請を行ったレイウェストへの返信が書かれている。
バルディオンの配下からエスタルに配置換えしていた兵士400名と、リカルダの募兵に応じた帝国北部出身兵士の一部を、ヴィントの帝国南部方面軍に合流させる。残りの兵とリカルダはエスタルに残り、民の保護と東部国家群からの支援を受け取る中継地として都市を機能させる役割を果たす。それがリカルダの返答だ。復興途上のエスタルの状況を思えば十分であり、それ以上は望めまい。
ただ、彼女の返答に皇帝ヨゼフの名は一度も書かれていない。レイウェストはその小さな違和感を、今は無視した。
「――レイウェスト・バルダス皇子殿下」
「コンラート」
貴賓室の扉を開けて現れた小柄なハーフリングの将軍と、レイウェストが向かい合う。レイウェストはしばし、面食らったような表情で彼を見つめていたが、先に沈黙を破ったのはコンラートの方だった。
「オルセン太守コンラート・マフダルにございます。此度は遠き南部より、私の為に御足労を賜り、光栄の至りに存じます」
「……良い。面を上げよ。私は、そなたに頼みがあり来た立場だ」
「先の使者より話は伺っております。このオルセンに駐留する帝国北部方面軍を、来たる帝都奪還の戦――幽界樹と滅国の皇妃イダ、憎き征竜、そして皇帝陛下との決戦に借り受けたいとの事」
「その通りだ。率直に言おう、オルセンの参戦なくして帝都奪還は叶わず、居並ぶ敵を倒す事は出来ぬ。……私は帝国の敵たる征竜と通じた身。人類の盾として北を守り続けるオルセンを裏切ったようなものだ。その上、私は孤立したオルセンの民に手を差し伸べることすら満足にできていなかった」
青と紅の瞳が見つめ合い、やがて長い睫毛が紅に影を落とす。
征竜に対する人類の盾として国家の最北に在る、帝国北部鎮守都市オルセン。帝国崩壊をほぼ無傷で生き延び、周辺からの避難民をも抱え込んだその都市は、現帝国において最大の人口と人口密度を有する。
極寒の地で孤立し、国内と極北の双方から現れるクリーパーから民を守り、そして衣食住を確保し食わせていくためには、遠い南部や東部での戦に兵を送るなど到底無理な話であった。その状況を知りながら満足な支援を行う余裕もなかったレイウェストが『兵を貸してくれ』と頼みに来たのだ。皇子といえど、理由をつけて門前払いされる事も覚悟していた。
「……私は皇帝ではない。そなたに命じる資格はない。だが私には、征竜と結び人類に災禍をもたらす祖父ヨゼフを討ち、この帝国の未来を背負う覚悟がある。どうか、オルセンの力を貸してはくれまいか」
エラトゥーン都市同盟の女傑ヴィルジニア・テレーザ・セルッティは、帝国に対する一層の支援を表明している。レイウェストとメアリー・リーンエスの婚約により、リーンエス王国からの物的援助もより厚く行われる見込みだ。
帝都奪還の為にオルセンから兵を借りている間、民が飢える事のないよう最大限取り計らうと、レイウェストは言う。
「――畏れながら申し上げます。今一度、殿下の御覚悟をお聞かせ願いたい」
「良い。申せ」
智将コンラートの瞳は鋭く目の前の床に落とされ、揺らぐ事は無い。
「シルトラース帝国を統べる皇帝として、オルセンの民三万を……いえ、人類の存亡を賭けた戦の旗頭として、その御身命の全てを、我ら帝国の民の為に捧げる覚悟はおありですか」
貴賓室に入ったその時から、この瞬間までずっと。コンラートは跪き、皇族とは言え一介の皇子に対するには大仰とも思える臣下の礼を取っていた。
孤立したオルセンの問題に対処すべく、幾人もの冒険者が何度もこの都市を訪れ、現状を打破せんと尽力していたと聞く。更には、帝都への進軍も視野に入れて行動していた者も居ると。
レイウェスト来訪の報せを受けたその時から――否、それよりも前から、コンラートの心は決まっていたのかもしれない。
「――当然だ。私の身命は常に帝国の民と共に在る。例えこの命が尽きようとも、必ずや帝国に安寧を取り戻してみせる」
「殿下の御覚悟、確とお聞きいたしました。この北方将軍コンラート・マフダル、帝国北部方面軍を率い帝都へ馳せ参じましょう」
●
オルセン参戦の報を持ち、レイウェストはゴールディの手配したビッグオウムでリブラネスタへ飛んだ。
同盟を結んだ征竜と帝国皇帝ヨゼフ・バルダスの宣言を受けて、ロスガリア大陸各国は既にレイウェスト支持を表明している。それは同時に、現皇帝ヨゼフおよびその実娘であり帝位継承順位がレイウェストよりも上位に在る皇女イダを討ち、次代の皇帝と成れという諸外国からの圧力に他ならない。
レイウェストは皇族として――孫として、子として、彼らが人類にもたらした災禍の責任を取らねばならないのだ。
そのためには帝都に攻め入り、世界を滅亡へと導く『天霧りに消ゆる幽界樹』と母イダを討つ必要がある。更に、祖父ヨゼフを討つとなれば、彼と同盟を結び、人の世の繁栄に終止符を打たんとする『世界の守護者』征竜との戦いも避けられぬだろう。
それら全てを、レイウェストが陣頭に立って成し遂げなければならない。
「オペラ嬢が神さん……じゃねえや、イダに教えられた『征竜とヨゼフ帝が帝都を攻めに来る日』ってのは、この日か。何もその日にこっちが合わせるこたぁねぇ。勝手に潰し合わせて、生き残ったほうを叩けばいいんじゃねぇか?」
各国の首脳陣が集う会議場に、かつてゴールディの代表であったサチコの姿は無い。ブラックデスの幹部を名乗った青肌のゴブリンの言に、異を唱えたのはシグモル火山帯のオルグレイ、そしてフィルエス大森林のグレイオンスだった。
「そう上手くは行かん。忘れたか、ボルガニスク様があのヨゼフめに力を奪われた事を」
「……イダ・バルダス、ヨゼフ・バルダスはともに、打ち負かした相手の力を収奪する。彼らの戦いを放置するという事は、ヨゼフが幽界樹やイダの力を、もしくはイダがヨゼフや征竜の力を収奪する可能性を看過するという事だ」
おっかねぇな、と肩を竦めて頭を掻くゴールディ代表。この場の議長でもあるエラトゥーン都市同盟のヴィルジニアは、正面に座したレイウェストと、その隣に婚約者として並んだメアリー王女へと視線を移した。
「放っておけないなら介入するしかないね。征竜とヨゼフ帝がまずイダ妃と幽界樹を狙うなら、出来るだけ便乗すべきさ。この前はアタシ個人での支持表明になっちまったけど、今は都市同盟の総意だよ。帝都を攻めるなら支援は惜しまない」
「同感だ。彼ら『超越者』の戦いを黙って見ているより、利用する方が得策だろうね」
ヴィルジニアに同意を示したのは、リーンエス王国第二王子ウィリアム・リーンエスだった。臣籍降下と婚約が決まり、幾分か軽薄な印象が薄れたようにも思えるその青年は、レイウェストの未来の義兄としての立場も有している。
「仮にヨゼフ帝や征竜より先に帝都に攻め入ったとして、恐らくイダ妃と幽界樹、その配下のクリーパーとの戦いで僕たち人類は疲弊しきっているだろう。正直、勝てるかどうかすらわからないさ。そうなれば、もはやヨゼフ帝や征竜を止められる者はいなくなる」
つまり、レイウェストと休戦状態にあるヨゼフと、その同盟者である征竜を上手く利用し、イダと幽界樹を討つ。その際に、ヨゼフやイダに『収奪』をさせぬ事が重要だ。そして、如何にヒトを超えた者達といえども、戦いが起きれば勝者とて無傷ではあるまい。そこで漁夫の利を得る事ができれば最上の結果だ。
しかしそれは、神々にも匹敵する超越者達の戦いに首を突っ込む事に他ならない。最前線であれ、後方支援であれ、例外なく――帝都へ近づく誰もが、生きて帰れる保証のない戦になるだろう。
「……だが、イダ妃は何故オペラ殿に未来を告げたのだ。まるで、儂ら人類に敵対の意思は無いと伝えるかのように」
「そう、母上に敵意は無いのだろう。アシムベート殿」
重い口を開いたという風情で疑問を呈すディズル大湿地帯のアシムベート・グリオウへ、レイウェストは一度瞼を閉じてから、告げた。
「人は神への階梯を昇り、人を超えた『超越者』となる。神に近づけば、世界の見え方が変わる。ただ一つの目的しか見えなくなり、そこに在る矛盾も、犠牲も、何も見えなくなってゆく……そのような話を、王国で耳にした」
淡々と言葉を紡ぐレイウェストへ、隣のメアリーが気遣わしげな視線を送る。
「母上も、ヨゼフ帝も、己の理想とする『美しき世界』や『大陸制覇』しか見えてはおらぬ。そこに悪意も敵意もない。ただ盲目的に、独善的に己の理想を追い続けるだけの――怪物だ」
会議場は静まり返り、時計の針の音だけがやたらと大きく響いていた。
「あの、さ」
珍しく空気を読んだように、おずおずと口を開いたのはドワーフ王国のシグルランだった。
「征竜はアタシら人類を殺すつもりかもしんないけどさ、なんか、レイレイっちの事も、エフレムの事も、殺そうとしてんだっけ……?」
「そのようだな。エフレムと母上を殺す理由は、彼らが神に至れる者であるからだろう。私は恐らく、エフレムを意のままに昇神させられる者だと……つまり、私が私の望みを叶える為にエフレムを神に成らせ、世界の理を変えさせることができる者だと、征竜に買い被られているのではないか」
自嘲気味に唇の端を緩めてみせたレイウェストを見て、辺境都市群のキサキ・アカネと何事かを言い交わすシグルラン。皆が不審に思って見ていると、彼女は意を決したようにレイウェストの方へと向き直った。
「実はさ……ウチの国のマミダ地域が邪竜のバイアーディスに攻められた時、リザードマンの賢者が助けてくれたんだけど……。それ、エフレムだったんだよね。レイレイっちにもっと支援してくれるなら、って交換条件でさ……」
ざわり、と会議場に波紋が広がる。その中で、当事者の一人であるアカネがシグルランの言葉を継いだ。
「エフレム様は、貴方の傍を離れた後でも、陰ながら貴方を助けているのです。レイウェスト様」
「エフレムが、私を……?」
そんなはずはない。エフレムにとって、自分はそこまでの存在ではない――そう言いかけて、レイウェストはふと、リーンエス王国で龍脈異常探知装置『状捜楔』の開発を成し遂げた元帝国魔導院エスタル支部長クライス・アクバーと先日交わした会話を思い出した。
『状捜楔』の開発には、多くの冒険者達の協力と、最終的には知り合いの智者の助言が必要不可欠であった、と。多くを語らぬクライスという男ゆえにその場では気に留めなかったが、困難な開発の最終段階において彼に助言が出来るほどの智者とは、一体誰なのか。
「……エフレムさ、レイレイっちのこと、結構トクベツに思ってると思うよ」
「……」
帝国皇帝ヨゼフ・バルダスと征竜は、11月の終わりにイダ・バルダスと幽界樹の居城たる帝都へ現れる。
この事態に対し、シルトラース帝国、リーンエス王国、エラトゥーン都市同盟、辺境都市群、ドワーフ王国、ディズル大湿地帯、フィルエス大森林、シグモル火山帯、ゴールディは『ロスガリア大陸連合軍』を組織。
帝都シルトラース奪還作戦へと、舵を切った。
●
じわり、じわりと、しかし急速に。大地のエーテルは帝都の幽界樹に吸い上げられていく。
収穫期を終えたばかりの帝国や王国北部では草木がみるみる萎れ、それまで『不作』の影響が見られなかった地域にまで緩やかに被害が拡大していった。
帝国の東部辺境に位置するケンタウロスの『聖地』とて、例外ではない。
『やはり、あれが人類の言う『不作』ですか。このまま聖地の草木が枯れれば、狩りの獲物も死に絶えますね』
帝国東部に置かれた帝国軍の駐屯所を出るなり、神妙な顔で呟いたのはメイド服の女ケンタウロス、ランランだった。
ここ数週間の間に、『聖地』の周囲では急速に草木が萎れ、生気を失っていく様子が確認されている。ランラン達はこれまで聖地を訪れた冒険者らから幽界樹の影響による『不作』の話を聞いたことがあったが、あまりにも急速な異変に戸惑い、一体何が起きているのかと代表を立てて帝国軍の元を訪れたのだ。
『人類は幽界樹を倒すと言う。聖地には未だ人類を受け入れぬ者達も居るが……』
かつて帝国兵と共にひと月も暮らした事がある男ケンタウロスのヌロブアもまた、考え込むように言葉を切る。彼と顔見知りの帝国兵は、情報交換に現れた彼らケンタウロスに「心配するな」と言った。近く、帝国軍は他の人類部族と共に帝都に攻め入り、幽界樹を倒すのだと。だから大丈夫だと、そう話したのだ。
『世界樹の預言は現実になる。このまま傍観者でいるつもりはない』
いつか聞いた世界樹の預言を思い出しながら、大柄な男ケンタウロスのルカンドラは歩を早める。
人類が敗ければ、世界は滅びる。
平原を行く3体の人馬は、いつしか駆け出していた。
●
リブラネスタでの諸国会議から数日後、よく晴れた日のこと。
「『大地の守護者』世界樹よ。帝国皇子レイウェスト・バルダス、約束通り貴方の御前へ参じました。我ら人類は、間もなく皇妃イダ・バルダスと『天霧りに消ゆる幽界樹』の居城たる帝都へ攻め入ります」
大きく枝葉を広げ、穏やかにフィルエス大森林を見下ろす世界樹。
征竜と並び立ち、この世界を守るべく創られた『大地の守護者』の前には今、レイウェストとメアリー、グレイオンス、アシムベートの4人が跪いていた。
(これが世界樹……)
メアリーは、初めて目にする世界樹の威容に圧倒されていた。
昨年夏、ヨゼフ配下の死霊術師ザフィーア・ハイセンらによる大森林侵攻を退けた際、レイウェストらは世界樹の言葉を聞いたという。
この世を破滅に導くイダ・バルダスと幽界樹を倒せと。そして、いつかその時が来たなら世界樹の前に集うのだと。
――小さき者達よ、よくぞ来た。
ざわざわと枝葉を揺らし、幹を脈打たせ、かの守護者は思念で応えた。頭の中に直接響き渡る、優しげな声音で。
――神をも喰らう彼の者と幽界樹を滅ぼし、愚者と結びし竜を倒すか。小さき者達よ。
「……竜は我らリザードマンの目指す先。しかし、竜が我が同胞をも害すると言うならば、戦うしかあるまい」
――彼の竜は世界の守護者なれど、最早この世に残る最後の竜。我ら守護者が世を守り、慈しむ時代は幕を閉じよう。
「世界樹よ。神より預かりし力を我ら人類に分け与えると、貴方は約束した。そうすれば、貴方は大地の守護者としての力を失うのか」
グレイオンスの問いに、世界樹はしばしの沈黙を経て答えた。
――我は力を授け、世界の狭間へと没する。我が力を得たならば、彼の者の異能とも戦えよう。小さき者達よ、この豊かな森を、神の創りし世界を……守り、慈しむのだ。
「――!?」
世界樹の幹から広がった白き光が溢れ、森を、空を――世界を駆け抜けた。
神に祝福されし者達は例外なく眩い光に包まれ、やがて己の身に起きた変化に気付く。
身体の内から僅かに湧き上がる温かなものを感じながら、4人は再び瞼を開いた。
空を覆わんばかりに聳えていた世界樹は消え、目の前には何も無い茶色の地面が広がるのみ。守護者の足下に在ったというアストラル界との障壁の裂け目も、今やどこにも見当たらなかった。
執筆:桃谷かな