【呑竜】眠れる竜は王国を呑むか

メドゥの左腕

あんなものを征竜と間違えるなんて、悪い夢でも見ていたような気分だわ。そもそも夢を見たなんて、いつ以来になるのか覚えていないけれど。

メドゥの右腕

……おはよう、左腕ちゃん。それで……、気は、……晴れたかな?

メドゥの左腕

思ったよりも、平気そうね。

メドゥの右腕

……はは、ちょっと死んだくらいで……死ねるなら、……吸血鬼の神だなんて、名乗れない、さ……。これでボルガニスクちゃんのようにしばらく眠れるなら、それでも良かったんだけどなあ。で、悪い夢から目が覚めた君は、この先どうするの?

メドゥの左腕

つまらないことを聞くのね。征竜を殺すわ。

リーンエス王国を揺るがした内憂と外患は、秋の到来と共に潰えました!
「【呑竜】決戦:眠れる竜は王国を呑むか」リプレイと特別褒賞・負傷者一覧が公開されました!

assignment【呑竜】眠れる竜は王国を呑むか 概要

「【呑竜】眠れる竜は王国を呑むか」は、レイウェスト皇子とメアリー王女の婚約が進む中、ヒューマン至上主義という旧来の価値観からくる内部対立に揺れるリーンエス王国を扱います。

assignmentここまでの流れ

アシムベートがレイウェスト皇子の実父であるという知らせが大陸中を駆け回り、それでも王家はメアリー王女との婚約を進めていく。反感を露わにする貴族に対し、王家はウィリアム第二王子の臣籍降下を発表し、第三派閥の形勢を匂わせた。強硬な姿勢を固める貴族派末端の動きを受け、一時の協調を見せていた二大公爵家は再び道を分かつ事となった。
(8月23日追記)
複数の方面で『龍逓架』が持ち込まれている事が判明し、リーンエス王国は『幽界樹』への対処法を知り、婚約の儀に向けて来訪したレイウェストへ協力を呼びかけた。一方、皇帝ヨゼフと決裂したメドゥの右腕、左腕は王国への介入に本腰を入れる。内憂外患で揺れる大国で、貴族派筆頭たる『黒鋼竜』ライゼンナクト家は過激派諸家を糾合する動きを見せつつあった。
(9月22日追記)
ライゼンナクト家当主ダミアンは、集めた過激派諸侯と共にこの世を去った。一瞬にして多数の貴族家当主を失った混乱が冷める間もなく、メドゥの指先がリーンエス王国を揺さぶる。右腕の意を受けたグリゼルダは学園へウィリアム・リーンエスを誘い、何者かが『龍逓架』を起動、王都郊外に複数の『幽界樹』が出現。その隙をついた右腕は王城を強襲し、留守居の近衛を退けメアリー・リーンエスを追い詰める。メアリーが中庭の剣を抜き右腕を刺すと同時に、王城の地下に眠りし『竜喰らい』が目覚めた。

assignment結果

封印を解かれた竜喰らいは王城を半壊させ、中庭一帯を砂地に変えたが、冒険者達とメドゥの左腕、ジュールをはじめとした近衛騎士達と聖剣を手にしたメアリー王女の手で滅び去った。メドゥの右腕はその戦いに手を出さずに灰と化して消える。王都郊外に出現した幽界樹は以前よりも巧みな戦い方を見せたが、クライス・アクバーの凝黒紋具により黒い霧をほぼ無力化され、レイウェスト皇子と冒険者達、王国騎士団の攻撃の前に倒れた。そして、学園に姿を現した『青の親指』グリゼルダもまた、ウィリアム王子と冒険者達、近衛騎士ハスラムに討ち取られる。かくして、内憂の暴発たるライゼンナクトの乱と共に王国を悩ませた外患は潰えた。

person_pin関連NPC

亡国となった帝国の皇族の、唯一と思われていた生き残り。皇帝ヨゼフとその子女である第三皇女イダとの間に生まれた生粋の皇族と言われていたが、実際はリザードマンの大酋長アシムベートとイダの間の息子であった。大陸一の美姫と謳われた母譲りの長く、美しい髪と気難しげな真紅の瞳の持ち主。エフレムとともに帝都から脱出して以降、帝国復興のために周囲の協力を得ながら奮闘していた。ヴィント奪還作戦に於いてエフレムに不審を抱き、帝国滅亡の真相を問いただした結果、彼と袂を分かつこととなった。

《本連動での動き》

アシムベート・グリオウにより自身も知らぬ出生の秘密を明かされ、動揺しつつもメアリー王女の身を案じている。
(8月23日追記)
婚約の儀の準備のために招かれていたリーンエス王国へ『龍挺架』が持ち込まれていたことを受け、クライス・アクバーらを連れて王国入りを果たす。
(9月22日追記)
王都郊外に幽界樹の出現の知らせを受け、リーンエス王家の依頼のもと討伐に同行している。
(10月16日追記)
幽界樹討伐後、後始末に揺れる王都滞在を遠慮してヴィントへと帰った。

ウィリアム・リーンエス王子の妹にあたるリーンエス王国第一王女。人形のように可憐な容姿からは想像もつかない行動力と気の強さで、周囲を驚かせることもある。現王家唯一の王女であり、国王や王太子、ウィリアム王子の寵愛を一身に受ける影の女王。

《本連動での動き》

レイウェストとの婚約の儀を王都で挙行することを宣言し、ヒューマン至上主義者の憎悪を一身に集めている。
(9月22日追記)
メドゥの右腕の強襲を受け、父王と兄王太子ら他の王族を逃がす。中庭にて封じられた剣を抜き、右腕を退けるも『竜喰らい』の復活を招いた。
(10月16日追記)
竜喰らい討伐後、一日ほどは寝込んだがその後は元気な姿を見せている。今は剣術を学んでいるらしい。

リーンエス王国の第二王子。文武ともに優れた才能を有した《授恵者》であるが、王族らしからぬ軽薄さ故に近親以外の王族からは見下され、対立する貴族からも「毀れ者(こぼれもの)」と揶揄されている。王国の代表として冒険者ギルド本部のあるリブラネスタに派遣されているが、本人はこれ幸いと市井を味わい、自らも依頼をこなす日々であるだとか。

《本連動での動き》

国策により、長きにわたる放蕩生活に終止符を打つこととなる。正妻、側妻、愛妾の区別はあれども広い階層から複数の妻を娶る可能性もあり、王国内では玉の輿狙いの女性がざわついているようだ。
(8月23日追記)
正妻予定:エルヴィラ・バデーニ 側妻予定:パーシア・アイオーラ
(9月22日追記)
王都周辺に迫ったグリゼルダからの『学園デートの誘い』を受け、罠と知りつつも少数の供のみで討伐に向かう。
(10月16日追記)
グリゼルダを討ち、独身時代の悲しい出会いに終止符を打った。

貴族派貴族バデーニ公爵家の長女。バデーニ家は始まりの百家ではなく、領地の規模も侯爵並であるが数代前の語られぬ功績により公爵となった。辺境伯や公爵と渡り合うには厳しい身代であるものの、無難に領地運営をこなし敵を作らず今代まで長らえている。なお、当人の体格はぽっちゃりしており、気にはしているがダイエットが苦手である。

《本連動での動き》

エルヴィラの婿は次期公爵となることがほぼ確実であったため、ウィリアムの臣籍降下に際して名乗りをあげた。婚姻の暁にはウィリアムが公爵となり、現公爵は引退する事を宣言している。

シルトラース帝国近衛連隊出身の元軍人で帝国魔導院エスタル支部長。最愛の妻と娘を帝国崩壊時に失って以後しばらくは攻撃性の塊のような時期もあったが、現在は生来の子供好きの性格が復活し、他人の子供の世話を焼いていることが多い。幽界樹の最大の脅威である【黒い霧】への対策【凝黒紋具】を制作した。

《本連動での動き》

暗殺集団『天陽道』の蠢動に気づき、更なる幽界樹封じの方法として新たな仕組みを作ろうとしている。
(9月22日追記)
幽界分樹の黒い霧対策として、レイウェストに同行し大型の凝黒紋具の使用を指揮している。
(10月16日追記)
レイウェストと共にひとまずヴィントに引き上げたようだ。

リーンエス王国二大公爵家の一つ、貴族派の筆頭である『黒鋼竜』ライゼンナクト家の当主。貴族原理主義的思想に染まった、王権を拒む貴族たちのとりまとめ役である。あくまで王家の臣下を演じつつ、自らの権利を守ろうとする穏健派と、王家を廃しいずれは自らが王権を奪おうと画策する過激派が入り混じっていた貴族派の手綱を取りきれず、反乱を起こして鎮圧される高位貴族が複数出るなど、ここ数年に派閥は急速に弱体化を進めた。

《本連動での動き》

王家の中央集権化の動きは理解しており、そこに至るまでの影響力争いで王家に後れを取った敗者であると自認する。一部貴族派の過激な発言に呼応する動きを見せているらしい。
(9月22日追記)
郊外の自邸に招集した集会において、不穏な動きを見せつつあった過激派貴族や護衛とともに死亡した。現場は崩壊し地下に埋まっており、調査は進んでいない。

リーンエス王国二大公爵家の一つ、王党派の筆頭である『白薔薇』アルヴァローエン家の当主。臣下としての貴族の役割に徹する貴族たちのとりまとめ役である。中央集権を進める王家のもとにあって王党派貴族に既得権益の全てを奉還する程の覚悟は無い。忠誠と引き換えに、なんとか自分たちの地位と権利を残すべく王家へ働きかけてきた派閥である。

《本連動での動き》

より王家の希望に近い第三派閥の成立を、そこに加わることこそが唯一未来があると看破するもののここまでの王党派筆頭としての立場からそうは動けない。
(9月22日追記)
ダミアンの『死の茶会』の直後、王へと面会を行ったらしい。
(10月16日追記)
ライゼンナクトの乱の後始末に際し、派閥を超えて厳罰回避のための根回しと交渉に骨を折ったようだ。

メドゥの指先足指幹部『青の親指』。死霊術師。魔獣やクリーパー・亜人と人類の死体を縫合して作る改造ゾンビ、『キメラゾンビ』の作成を得意とするゾンビメイカー。

《本連動での動き》

ウィリアムのストーカー。(グリゼルダ製造のものとしては)最強のキメラゾンビ『レミーラ』と共に国境を破って王国に侵入したことが確認された。
(9月22日追記)
どのような手段を使ってか、ウィリアムへ『学園デートの誘い』を送りつけ、虎視眈々と現場にて待つ。大鎌も操る背中の第三の腕(アランの腕)には本人曰く「アランが憑いている」そうで、弱点でもあるが死角は無い。
(10月16日追記)
パンクリアース学園の中庭にて、ウィリアム率いる冒険者達、近衛騎士ハスラムと戦い、中庭を半壊させるほど激しい戦闘の末、レミーラ(ゾンビ)共々果てた。なお、最期までウィリアムが亡き想い人アランとは別人であることを理解することはなかった。

メドゥの指先の大幹部。非常に強力な吸血鬼であり、また血を媒体とする混沌魔術の使い手でもある。常に楽しげに振る舞う彼だが、よく見れば作った笑顔であることもわかるだろう。征竜との共闘に反発した左腕と行動を共にし、ヨゼフ一派から距離を取った。左腕とは長い縁であるようで、相互に協力する場合もあるようだ。

《本連動での動き》

王国内の混乱の背後にその影があるらしい。王国へ混乱を招く理由が何かあるようだが?
(9月22日追記)
戦力の分散に乗じて王城を強襲、メアリーに祠の聖剣を抜かせて『竜喰らい』を復活させた。
(10月16日追記)
灰と化し、消滅したようだが……。

メドゥの指先の大幹部。飛行術を用い、また世界の障壁の裂け目を広げる儀式なども知っている無感情な女性。右腕とは長い縁であるようで、相互に協力する場合もあるようだ。その目的は征竜の打倒であるという。

《本連動での動き》

征竜と手を組んだヨゼフ一派の元へわざわざ訪れ、自身がかつて征竜の巫女であった事と征竜が人の味方ではなく御せる存在でも無い事を告げてヨゼフらの決断を罵る。
その後は失意の中、メドゥの右腕と共に行動しているようだ。
(9月22日追記)
冷静さを失い、復活した『竜喰らい』へ猛攻を仕掛けている。
(10月16日追記)
竜喰らい討伐後、拘束を拒否して空へと消えた。

崩壊した帝国の皇族の生き残りである皇太子レイウェストの護衛騎士。護衛騎士の中で唯一のリザードマンであること、クリーパーを召喚し支配することを得手とする《召喚術》の達人であること、そして寡黙に過ぎる性格から『語らずの智者』の異名を持つ。亡国の騎士となっても単身で各国の介入からレイウェストを守る忠義の人物……と思われていた。ヴィント奪還作戦における不自然な立ち回りから、レイウェストに帝国崩壊の引き金を引いたのが彼であると看破され、袂を分かつこととなる。

《本連動での動き》

幽界樹の活発化とレイウェストの危地を察し、王都へと助言のために訪れる。クライス・アクバーが『状捜楔』の製造に適した材料の選定で行き詰まっていることを知り、名乗らずに助言を置いていった。

40代程のヒューマンの男性。シルトラース帝国近衛連隊長として最強の戦士とされ、滅亡前の帝国では四方将軍の上席にあり、帝国軍人の頂点であった。【泥乱】連動においてヨゼフ・バルダスより切り捨てられ、現在はレイウェスト皇子派のクライス・アクバーに協力している。

《本連動での動き》

王国の危険な状況を察知し、万一に備えてヴィントから追加の凝黒装置を輸送してきた。
(10月16日追記)
レイウェストと共にひとまずヴィントに引き上げたようだ。

リーンエス王国国王の勅命を受けて動く王国近衛騎士であり、男爵。現国王ジョージ四世の懐刀的存在と言われる事もある。豪胆、傲岸不遜、傍若無人が服を着て歩いていると言われる王国の問題児だが、それに見合う実力を有している。

《本連動での動き》

グリゼルダの誘いに乗ったウィリアムの指名を受け、『介添人』として現地に向かった。
(10月16日追記)
ウィリアム王子を助け、グリゼルダを討ち果たした一員として称えられている。現場では実子とも共闘したらしい。

王国近衛騎士にして老練な魔術師。前ヴェルジー伯であるが、王家への篤い忠誠心から早期に息子に爵位を譲って近衛に返り咲いた。現在でこそ近衛で厳格な教官役を担うが、若き頃は二つ名を『血風の魔術師』と言う程に血気盛んであったらしい。

《本連動での動き》

警護役として王城中庭のメアリーに同行している。
(10月16日追記)
メアリー王女を助け、竜喰らいを討ち果たした一員として称えられている。現場には孫がいたようなのだが言葉を交わす余裕は無かった。近衛の間では新たな二つ名が何になるかが話題となっているようだ。

menu_book関連用語・情報

リーンエス王国の聖剣(9月22日追加)

王家において『聖剣』と言われた場合は、現在ウィリアム王子の所持する『名もなき剣士が用いたとされる剣』を指すことが多かった。しかし、中庭に置かれた祠の中、大地に刺された古びた剣こそ、名もなき剣士がその身を変えて『竜喰らい』を封じていた物である、らしい。聖剣そのものが意思を持つらしく、メアリーへ『竜喰らい』の出現を伝えた。
(10月16日追記)
竜喰らいを封じる概念として神となった名もなき剣士は、人類を守る聖剣の神になるべく眠りに就いた。「子孫を守る」や「王国を守る」ではないらしい。現状の問題は、帝国に嫁するメアリーが契約者である事。

ウィリアムの創る第三派閥【集権派】

王家への中央集権体制の確立を進めたい王家は、権益の拡大を狙う貴族派でも権益の維持を願う王党派でもなく、時が来れば全ての権利を王家へ奉還する事を約した【集権派】を設立する。失う権利のない法衣貴族はともかく、領地貴族の多くにとってその公約に益はなく、彼らの誇りも傷つける選択だ。しかし、そこに早く参画することで領主権は無理でも未来の有力家系としての影響力を保持するべく、既存派閥から集権派へ鞍替えを考える目聡い者もいる。その多くはウィリアムの元へ奥方を送り込む事を画策しているようだ。
王家の中央集権化の動きと、それに伴う貴族の動きについては詳しくは
こちら。

龍脈即時通信装置『龍逓架』(8月23日追記)

崩壊前のシルトラース帝国が実用段階直前にまで開発を進めていた通信装置で、帝国内主要都市の魔導院に設置されていた。龍脈を利用した遠隔地同士の即時通信装置であり、リーンエス王国との決戦に備えて設計された。この龍逓架が発する魔法的な信号が龍脈を通じて帝都の幽界樹に感知され、帝国内の各都市に幽界分樹を呼び寄せたと推測されている。その推測は【泥乱】における帝国近衛連隊の行動により実証された。
また、メドゥの指先が一つを確保していたが、それを元に新たに量産している可能性がある。
(8月23日追記)
龍逓架は数多くの部品から構成されるが、中でも発信器、増幅器、分波器、分配器の4つが重要とされている。

龍脈異常探知装置『状捜楔』(8月23日追加)

龍脈の異常が発生した位置を知る為の紋具装置。大型の杭の様な形をしており、頂部には球状の表示部が結合されている。球状表示部には龍脈異常が発生した方角に向けて、おおよその距離が色(青=徒歩で行ける距離、黄=馬を飛ばして行ける距離、赤=ビッグオウムでないと到底行けない様な距離)で示される。
近距離の青と黄の間は十段階ほどに細分化され、細かい距離が判明するが、遠距離の黄と赤の間は三段階ほどでしか判断出来ず、大雑把なものとなる。量産性に優れ、実用化して間もないが十分な数が製造されている。固定式と可搬式の2種類があり、王都の他幾つかの拠点には固定式が設置されている。
この装置はクライス・アクバーが制作したが、完成までには、多くの冒険者やエルフの賢人、元帝国近衛連隊長、謎のフードの男といった多様な面々の協力があったらしい。

本格式凝黒装置(大型)(9月22日追加)

クライス・アクバーが制作した、人間の頭大のエーテル石を内部に収めた紋具装置。大きめの竈ぐらいの大きさで、荷馬車に積み込んで移動させる。幽界樹の吐き出す『黒い霧』を黒い結晶岩に変えることで空間から除去し、人間への悪影響を抑える。ただし、完全に除去できるわけでは無く、授恵者であれば多少の変調を覚える程度にまで抑えられるが、一般人にとっては不快さが残る。動作中は基本的に自動で作動するが、作動開始や停止などの操作には最低10人の術者が必要となる。
最大効果範囲は直径500mであるが、今回は相手が四本分の幽界分樹であったために念を入れ、その半分の距離で使用されている。

龍脈

ロスガリア大陸の地下深くを流れるエーテル地脈。エーテル浄化者はここに働きかけてエーテル浄化儀式を行っている。

幽界分樹

帝都シルトラースに聳える幽界樹を「本体」と見做した場合の、帝国内主要都市に出現した幽界樹の「分樹」。ただし幽界樹については未だ不明点が多く、帝都に出現した幽界樹が本体であるか、それとも地中やアストラル界などに真の「本体」が存在するのかは判明していない。

黒い霧(8月23日追加)

幽界樹周辺にただよう黒い霧は、範囲内の生物の行動や認識を阻害し、方向感覚等を狂わせる。クリーパーへの悪影響は無い。ある程度実力のある授恵者であれば影響を軽減できるが、一般人はそこに存在するクリーパーが見えないことすらあり、黒い霧の除去が奪還作戦には必須事項と言える。
かつてはレイウェストの持つ宝剣を用いた儀式魔術で散らすことしか出来なかったが、クライス・アクバーが制作した【凝黒紋具】により一定範囲の霧を結晶化し、戦闘等に支障が無い程度まで空気中から除去できるようになった。

征竜の虹宝剣(9月22日追加)

シルトラース帝国の前身シル・ウァキアが滅んだ夜に討ち取られた征竜の遺骸から得られた宝剣。別名、首刈宝剣【零の剣:虹耀】。宝物庫に安置されていた虹のように輝く頭骨を材料に首刈帝の命で削りだしたものと言われる。戦時における皇帝の佩剣とされるが、紛失を恐れ実際に戦場へ持ち出された例は数えるほどしか記録されていない。帝国滅亡に際してエフレムがこっそり持ち出していた。
クリーパーを滅する征竜の力が込められた剣は幽界樹にも届くと言い、エフレムがレイウェストを帝位継承者として登録した。大量のエーテルを用いれば黒い霧を晴らす力を持つ。

●
 大陸一の大国となったリーンエス王国の、人材の層は薄い。領主は血筋により受け継がれるが故に、だいたいの家では長男と次男、せいぜい三男程度までしか領主としての教育を受ける機会が無いのだ。後継候補が絞られるこの形は、血で血を洗う家中の争いを生まぬ為には良かっただろう。しかし、幾つもの貴族家が一族ごと滅ぼされるような事態においては、国家にとって致命的な欠陥となった。

「……この三年で四つの侯爵家と連座した一部の寄子貴族が反逆の罪で取り潰されておる。それに加えて今回のこれか……」

 ダミアン・ライゼンナクト公爵と共に地下に埋もれた王国貴族は20名を数える。書簡などの調査を進めれば、関係した者の数は増えることはあっても減ることはないだろう。王家への反逆は重罪であり、正しくその罪を裁くのなら全ての家が断絶となる。が、統治の正統性と能力を持つ者をそれだけ欠いてしまえば王国の混乱は避けられまい。

「ライゼンナクト公爵家の進退も含め、扱いは王家に委ねるというのが彼の遺志でした」
「……ダミアン・ライゼンナクトの意図は今後の王国にとって不要な愚か者を、自身と共に葬ることであったと? それだけとは思えぬな。この事態を突きつけ、王家へ貴族の持つ価値を再認識させようとしたのではあるまいか」

 派閥での立場上、ダミアン・ライゼンナクト公爵と対立することも多かったウォレス・アルヴァローエン公爵が彼の遺言を告げると、リーンエス国王ジョージ・リーンエスは溜息を吐いた。反逆者を炙り出すライゼンナクトの計略であったと明かせば、公爵家のみは残すことができるが、引き換えに反逆行為が明るみに出る20家は取り潰す事となろう。その遺領を混乱無く引き受ける余力は王家にすら無い。さりとて、反乱謀議には触れず、単なる崩落事故として扱えば。国内の混乱は抑えられようが、裁くべき者を裁けなかった王家の弱腰は、中央集権化を目指す王国の前途に暗い影を落とすだろう。

「……しかし、アルベイル・ライゼンナクト。君がダミアンの予想外の行動を取ったお陰で、もう一つの道が開けたのですよ」

 声を向けられた先には、一人の少年がいた。公爵家の長男ですらない彼は、もちろんこの内密の会議の参加者ではない。関係者として彼が呼ばれたのは、事情を聞かせてやろうという、せめてもの温情かもしれなかった。

「父ダミアンを始め、反逆の意志を固めた貴族の暴挙を知り、それを阻止した。そういう事になれば、その功は王家も考慮せざるを得ない。ライゼンナクトに関して当主と子の功罪を分けるのであれば、他の家に関しても当主の暴挙を知らなかった者の罪を問わぬ理由ができる」

 反乱に加担した当主は罪を問われるが、知らなかった子らの罪は免じ、家を保つことは許す。それぞれの領主家には当主の罪に応じた爵位の降下や金銭負担、領地の一部返上などを課すこととなろう。首謀者であったダミアン・ライゼンナクト公爵の罪は最も重く、その全てが重くのしかかる。

「……とはいえ、それはそう長い話では無いよ。首謀者を出したライゼンナクト侯爵家が、反逆を企てた全ての共犯よりも重い罰を受けるのはそこだけ見れば正しい。しかし、その正しい裁きが無情であるが故に、アルベイルが不憫だという世論を作りやすい。これ以上おかしなことさえ起きなければ、そう遠くない将来に、公爵へ戻って旧領を全て取り戻すことが叶うんじゃないかな?」

 ウィリアムが言う遠くない将来が1年や2年では無いことはアルベイルにも分る。しかし、50年や100年ということもあるまい。王家やアルヴァローエンが影から援助し、アルベイルが若き当主として評価を重ねていけば、10年か20年過ぎる頃には誰もが納得する形で復権が叶う。これは、そういう筋書きだ。

「もうわかっただろう。この話は君が当主にならねば始まらないのだ。ライゼンナクトには年長の男子が居たはずだが、君以外が当主となる事をもはや時勢が許さない。次期国王として、君にはライゼンナクト家当主となり私を支えてくれることを期待している」
「リーンエス王国とライゼンナクト、そして我がアルヴァローエンが続く限り、我らは共犯者となると言うことです。ダミアン・ライゼンナクト公爵を反逆者として貶め、真実に蓋をするのです。良いですね?」

 王太子が、そして父の好敵手であったアルヴァローエン公爵が、若者の覚悟を試すように念を押す。

「承りました。我が父も王国史に悪党として名を刻み、さぞ本望な事でしょう」

 古強者に呑まれること無く、『竜の仔』アルベイルは己の意志で静かに頷いた。

●
 短いが激しい戦いを経て、超大型クリーパー『竜喰らい』は斃れた。復活から撃退までの僅かな時間に生じた損害は極めて大きい。歴史あるリーンエス王国の王城は半壊。地盤となるべき場所が中庭を中心に砂漠化が進んでしまった事もあり、そのまま建て直すのは困難だろう。直接対峙した冒険者や近衛騎士、倒壊に巻き込まれた人々の中にも、被害を受けた者がいる。だが、伝説の怪物の襲来を切り抜けた人々の顔は、もう前を向いていた。

「……メアリー王女。ここにいたのか」
「二十八、メアリーで構いませんと申し上げましたわよ、レイウェスト! ……二十九、……三十っ」
(だいぶ芯がぶれなくなったぞ。夕食の前にも忘れずに10セットを行うように。剣術は裏切らぬ)

 手を止めて汗を拭うメアリーに聖剣に宿る名もなき剣士が声を掛ける。授恵者として最低限の訓練は受けていることは知っているが、どちらかといえばインドアのイメージが強い彼女へ、レイウェストが怪訝そうな目を向けた。

「行きがかりとは言え、ご先祖様の宿る聖剣を抜いてしまったのですもの。それに恥じない使い手でありたいと思うのは、不思議ではないでしょう?」
「その話は聞いている。……しかし、君は私の妃になるのだろう。伝国の剣を持ち出すわけにはいかないのでは無いだろうか?」

 当然のこととして、聖剣はリーンエス王国に残していくと考えていたレイウェストの疑問に答えたのは、当事者である聖剣の思念であった。

(いや。私は確かにこの国の王家の祖ではあるが、存命中にこの国は無かったのでな。使い手が移動するならば佩剣は共にあるのが当然。そもそも私が願ったのは、かの『竜喰らい』を退け人を守る力なのだ。そこに国の垣根は意味を成さない)

 爽やかに言う聖剣の思念に触れたレイウェストは、どことなくウィリアムと通じる血筋(胡散臭さ )を感じて難しい顔をする。聖剣の中ではメアリーが使い手であることが既定の事実であり、それを押し通すためにあらゆる屁理屈をこねそうな予感がした。

「……とはいえ、王城もこの様子ですし、婚約の儀は延期になりそうですわね」
「その間に君が聖剣を得たことを理由として横槍が入る可能性はあるだろうか」
「間違いなく。ありますわね……」

 淡々と事実と予測を述べる二人の間には婚約者同士という華やいだ感じは無いのだが、言葉を重ねるに従い空気が僅かに重くなる。言葉にすればまだ恋でも愛でもないにせよ、婚約が白紙に成りかねないと言うことを『嫌だな』と思う程度には、二人の間に情は通っているのだろう。

(なるほど、婚約の儀式が必要なのだな? 良いだろう。神の名において、私が君達の婚約を認めようでは無いか)
「え? ご先祖様?」
(私はもうしばらくすれば、眠りに就くつもりだ。『竜喰らい』が消えた今、神としての在り方を作り直す必要があるのだ。その前に先達として、今を生きる若者に少しくらい世話を焼いても良かろう。うむ。そうしよう)
「名もなき剣士殿、一体何を?」

 嫌な予感がメアリーの思考をよぎり、レイウェストの警戒心が警告を発する。が、その時には既に遅かった。

『……聞け、王都の民よ。名もなき剣士にしてリーンエス王家の祖で有る私が、神の名においてレイウェスト・バルダス君とメアリー・リーンエスの婚約を認める。おめでとう! 世界のため、人々のため、聖剣たる私を末永く夫婦で管理していくと良い!』

 王都周辺に、突然響き渡った思念の声。ライゼンナクトの乱の後始末を終え、王妃と茶を楽しんでいたリーンエス王は紅茶の椀を落として割った。

●
 王都の混乱を鑑みて、パンクリアース学園の自由登校は続いている。冒険者の配慮もあり戦闘の激しさの割には被害は少なめであったが、グリゼルダとの戦闘の舞台となった中庭は、許可なき者の立ち入りが禁止となっていた。

「……ハハッ、なるほど。地上の民の都合は神には関係ない道理だね。……そうだな、その方がいいかもしれないな」

 その中庭にて、ウィリアム・リーンエスはそう独りごちた。大量のゾンビについてはその場で焼却され、ケンタウロス部族の大族長であったレミーラのみ、遺骸の一部をレイウェストらが引き取ることが決まっている。いずれ彼女は再び、聖地にて眠ることになるだろう。そして、遺体と言えばもう一つ。

「放置したら間違いなく化けて出そうだから処理させて貰ったけれど、君の遺骸はせめて僕の手で送ろう」

 念入りに焼却し、骨も砕かれたグリゼルダの遺灰を特徴の無い樹の根元に埋め、土を掛け始めてから、彼は思い出したように懐に手を入れた。ウィリアム手製の【怨都】戦の活躍を称える勲章が、墓穴の中に放り投げられる。

「一度は共に戦った戦友として、ね。……君は許せない敵だったけれど、助けられたこともある。可哀想な女性に、愛はあげられなくとも少しばかりの感謝をあげてもいいだろう?」

 王子の立場であれば許されまいが、冒険者ウィルとして。王子はグリゼルダに黙祷を捧げた。数秒の沈黙を経てから、くるりと向き直る。

「……と言うわけだ。待たせて済まなかったね、二人とも。しかし、父上や母上ではなく先に僕の所に来て良かったのかな?」
「あちらは色々大騒ぎになっていて面倒そうですもの。お父様やお兄様が周りへ説明を済ませてから行く方が良いと思いますわ」

 ちゃっかりした末っ子らしさを発揮するメアリーと、賢明にも沈黙を守るレイウェスト。「なるほど、逃げてきたわけだ」と苦笑してウィリアムは無事だったベンチを指さした。

「過激派貴族の蠢動はライゼンナクトの乱で幕を引いた。龍逓架の流入も、今ある物は打ち止めだろう。存在を知った以上、簡単に国境を通す事はもう無い。おまけに『竜喰らい』の復活と討伐までついてきた。リーンエス王国は、もう大丈夫だよ、メアリー」
「……そう、ですわね……」

 気遣わしげに、自身を見るメアリーに頷き、レイウェストは口を開く。

「ああ。人類の敵となった母上を、討つべき機は調ったと私も思う。世界樹殿との約束を果たすときだ」
「……その時が来たら、来るようにといっておりましたわね」

 頷き合う二人を、ウィリアムは少し寂しそうに見た。実の妹と、弟のように感じることもある少年の二人が世界の敵と戦おうというこの時、彼には今までなかった枷が嵌まり始めている。婚約は婚姻に変わり、守るべき領地と家ができ、派閥の長となれば今までのように家族のため、妹のために自由に動くことはできなくなるだろう。

「……果たしてその戦いの時、僕はお前を守るために動くことができるかな」
「あら。私はもうお兄様に守られるだけの妹ではありませんわよ?」

 聖剣の柄を軽く叩いた(自分も戦えるのだという )メアリーの意図は、兄に通じなかったらしい。

「なるほど、そうだな。お前の剣となり盾となる者はもう別にいるのだね。うん。兄は寂しいが、受け入れなければね……」
「ええ、盾になれるかはともかく、私には頼もしい剣がいますから。お兄様はエルヴィラ様をこそお守り下さいませ」
「そうか……。レイウェスト。これからの戦いで、自分が何をすべきか、もちろんわかっているね?」

 いくつかの誤解を積み重ねながらも、ウィリアムは義弟になるだろう少年にいつもの笑みを向ける。実母たるイダ・バルダス。実父でこそ無かったが祖父であるヨゼフ・バルダス。神代回帰を宣言した征竜。いずれをとっても世界を滅ぼしかねない怪物だ。冒険者達と人類諸国が力を合わせてなお、勝てるとは限らない。

「……皆で共に、生き延びること。私はそれを願っています」

 レイウェストは一拍おいてから、そう答えた。少年を信じて従う臣下や協力者。彼に期待を寄せ、力を貸してくれてきた諸国の指導者達。個人としての立場で、助言をくれ導いてくれた冒険者。誰一人欠けない未来があれば良い、と。

 それが届かぬ夢想に過ぎないのか、叶えた理想となるのかは、今はまだ分らない。


 執筆:アルパカコネクト運営
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0