【秋祭】収穫祭2020 2
ヒルルクは以前購入した魔除けの藁人形を携え、冒険者ギルドを訪れていた。
貼り出された依頼書を吟味する者や、カウンターで受諾の手続きをする者など、当然のことながら冒険者達で賑わっている。
では冒険者ではない彼女が何を目当てにやって来たかと言うと、答えは彼女が抱えた紙束にあった。冒険者達が携わった案件の報告書だ。ギルドでは誰でも報告書を閲覧することができる。
多種多様な収穫祭があると知り興味を持った彼女は、各地の祭りで冒険者達が活躍したことを小耳に挟み、征竜の巫女として調査すべく報告書を読みに来たのだった。
借り受けた収穫祭関連の報告書は二十を越えた。その多さにちょっぴり気圧されたものの、少しめくってまた驚く。王国、同盟、辺境、大森林など、実に広い範囲の報告書が集まっていたからだ。
「これはちょっと、気合い入れて読まないといけないわね」
ヒルルクは席を確保すると、温かなお茶を頼んでしっかり腰を据える。
「さぁて、まずはコレから……」
一口に収穫祭といっても、祭りの内容は本当に様々で。
恵みを分かち合い感謝する”昔ながらの収穫祭”形式の祭りをとって見ても、皆で語らいながら食事をしたり、氏族の伝統である特別なケーキを作ったり、巫女が山の祠へ捧げものをしに行ったりと、場所によって祝い方も祈り方も違う。
鎮魂祭の趣きが強い祭りでは、蝋燭を乗せた小舟を川に流して故人を偲ぶものや、ワタボシなる不思議発光生物を入れたランタンを囲み、皆で思い出を語らうものなどがあった。幻想的な光景が目に浮かぶようだ。一方で、お化け当人達と全力で祭りを楽しむことで満足させてやる驚きの祭りもあったりした。
「随分ノリのいいお化けもいるのねー……」
勿論、背中が冷たくなるような幽霊絡みの報告書もある。盗賊を追って踏み込んだ曰く付きの幽霊屋敷で、クリーパーに取り込まれた憐れな魂を解放したというものだ。
「ん? こっちの報告書も幽霊屋敷……じゃなくて、悪戯屋敷? 楽しそうじゃない!」
他にも、仮装した子供達にお菓子を配ったり、仮装コンテストがあったりと、楽しそうな祭りも多くあり。ヒルルクはすっかり冷めたお茶で喉を湿すと、
「はー、来年はどこかのお祭りを覗いたりしてみた、い……って、勿論楽しそうだからとかじゃないわよ!? あくまで調査のためなんだからっ」
誰宛なのか分からない言い訳を捲し立てた。
報告書を返却し表へ出ると、外はすっかり暗くなっていた。空を仰げば、残照の中を渡り鳥達が南を目指し飛んでいく。
冷たい風にふるりと首を縮こめて、
「……きっと来年こそ……!」
密かに気合を入れる彼女は、気付いていなかった。
祭りのシーズンが終わると何が始まるか。
次なる祭りのシーズンが幕を開けるのである。
真冬の一大イベントに向け、密かに動き始めている町の中を、ヒルルクは何も知らぬまま踵を鳴らし歩いていった。
執筆:鮎川 渓
貼り出された依頼書を吟味する者や、カウンターで受諾の手続きをする者など、当然のことながら冒険者達で賑わっている。
では冒険者ではない彼女が何を目当てにやって来たかと言うと、答えは彼女が抱えた紙束にあった。冒険者達が携わった案件の報告書だ。ギルドでは誰でも報告書を閲覧することができる。
多種多様な収穫祭があると知り興味を持った彼女は、各地の祭りで冒険者達が活躍したことを小耳に挟み、征竜の巫女として調査すべく報告書を読みに来たのだった。
借り受けた収穫祭関連の報告書は二十を越えた。その多さにちょっぴり気圧されたものの、少しめくってまた驚く。王国、同盟、辺境、大森林など、実に広い範囲の報告書が集まっていたからだ。
「これはちょっと、気合い入れて読まないといけないわね」
ヒルルクは席を確保すると、温かなお茶を頼んでしっかり腰を据える。
「さぁて、まずはコレから……」
一口に収穫祭といっても、祭りの内容は本当に様々で。
恵みを分かち合い感謝する”昔ながらの収穫祭”形式の祭りをとって見ても、皆で語らいながら食事をしたり、氏族の伝統である特別なケーキを作ったり、巫女が山の祠へ捧げものをしに行ったりと、場所によって祝い方も祈り方も違う。
鎮魂祭の趣きが強い祭りでは、蝋燭を乗せた小舟を川に流して故人を偲ぶものや、ワタボシなる不思議発光生物を入れたランタンを囲み、皆で思い出を語らうものなどがあった。幻想的な光景が目に浮かぶようだ。一方で、お化け当人達と全力で祭りを楽しむことで満足させてやる驚きの祭りもあったりした。
「随分ノリのいいお化けもいるのねー……」
勿論、背中が冷たくなるような幽霊絡みの報告書もある。盗賊を追って踏み込んだ曰く付きの幽霊屋敷で、クリーパーに取り込まれた憐れな魂を解放したというものだ。
「ん? こっちの報告書も幽霊屋敷……じゃなくて、悪戯屋敷? 楽しそうじゃない!」
他にも、仮装した子供達にお菓子を配ったり、仮装コンテストがあったりと、楽しそうな祭りも多くあり。ヒルルクはすっかり冷めたお茶で喉を湿すと、
「はー、来年はどこかのお祭りを覗いたりしてみた、い……って、勿論楽しそうだからとかじゃないわよ!? あくまで調査のためなんだからっ」
誰宛なのか分からない言い訳を捲し立てた。
報告書を返却し表へ出ると、外はすっかり暗くなっていた。空を仰げば、残照の中を渡り鳥達が南を目指し飛んでいく。
冷たい風にふるりと首を縮こめて、
「……きっと来年こそ……!」
密かに気合を入れる彼女は、気付いていなかった。
祭りのシーズンが終わると何が始まるか。
次なる祭りのシーズンが幕を開けるのである。
真冬の一大イベントに向け、密かに動き始めている町の中を、ヒルルクは何も知らぬまま踵を鳴らし歩いていった。
執筆:鮎川 渓