【呪輪】命の輪、冥い棘

グレイオンス
騒々しく戻ってきたと思ったら……ウル、何があった?
ウル・ヘルバ
大森林の南東の方に出かけてきたんだけど、木も草も枯れてたんだ。
グレイオンス
木が枯れるのは自然の摂理だ。寿命か、虫食いか……お前も見たことはあるだろう?
ウル・ヘルバ
そのくらい分かってる。ただ、その近くの里の奴ら……人たちもおかしいっていってた。
グレイオンス
不審な点があるということか? ……現地へ行こう。
フィルエス大森林の南東部で、森が枯れる奇妙な現象が起きています――。
(7月24日 【呪輪】連動シナリオ公開開始!)
ウル・ヘルバは植物に強い興味を持つ授恵者である。わけあって故郷のフィルエス大森林に滞在しており、植生の調査をしながら森の中を歩いていた。
大森林の南東に差し掛かった時、周囲の有様に驚く。
「なんだよ、これ」
木が、枯れていた。
特定の木に元気がないということではなく、その一帯の木々、草などの力がなかった。
根元や樹皮の状態を見たり、手で葉を触るなど、確認する。
しかし、病気や虫の影響は特に見られない。
情報収集するため、彼は近くにある「プロステン」という名のエルフの里に向った。
ハーフビーストであるウルは葛藤があった。
大森林のエルフたちは、総じて異種族との交流が乏しい。不穏な状況のところに見知らぬハーフビーストが訪ねてくれば、彼らがどういう反応するか容易に想像がついた。
しかし、先ほど見た森の枯れ方は普通ではないし、放置はできない。
行く前から悩んだらだめだと、覚悟を決めて急いだ。
●
プロステンでは、案の定、警戒したエルフに矢を射かけられてしまったが、ウルがエルフの最古老の一人であるグレイオンスの里から来たことや、冒険者ギルドに登録していることを話すと、一応話をする気になってくれた。
しばらくして、ウルは無事、里の出入り口に到着した。
代表として出てきたエルフは、人間でいうところの中年に当たる年齢だろうか。
エルフたちは警戒しており、話をしている相手の後ろには多くの顔があった。
「里の者が済まない。怪我をしなかったかい」
「大丈夫だ。ここの異変が気になって、話を聞きたいと思ったんだ」
ウルは続けて「植物が広い範囲で枯れてた。あれはどういうことだ?」と問う。
「突然ああなったというより、徐々に広がっていったのだとは思う」
エルフの声音は後悔がにじみ出るものだった。
「植物は自然にも枯れるから、最初は病気か虫だろうと思っていた。だが、気づいたときには、里の周囲に広がっていた」
そうなって初めて、彼らは事態の深刻さに気付いた。病気でも虫でも既知のものであれば見られる症状に特徴があるが、それも見えない。
だからこそ、最初の異変で対処できれば原因が特定できたかもしれない、という思いがある。
「できれば、原因を特定して排除したい。それができないなら、この里では暮らせなくなる」
大森林の中で引っ越し先を探すのか、それとも出て行かないと行けないのかという問題も出てくる。
ウルは鼻を動かした。風向きによってはそれを感じる。
「……なぁ、匂いが……」
「匂い? 植物が枯れれば、やがて土に還る。その時に匂いも出るが……」
「分かってる……にしても……」
「そんなにするか?」
ウルは「時々する」とエルフの言葉に答えた。
「この状況はうちだけではなく、隣の里でも同じ状況だ」
「やべぇんじゃねぇか?」
「詳しく調査したいのはやまやまだ。だが、原因がわからない以上、里の者は里の外に出ることを恐れている。君はグレイオンス氏に縁があるそうだな。どうか、彼にこの現状を伝えてもらえないだろうか」
頭を下げられ、ウルは深刻さを肌で感じた。
「俺に頭下げんなって。実際に調査に来てくれるヤツがいたら、そいつに下げろ」
ウルは多くのエルフの不安を受け止め踵を返した。
その足で向かうのは、グレイオンスのところだった。
「グレイ、いるよな」
グレイオンスの自宅に駆け込んだウルは、入り口で帽子とコートを脱いで、ずかずか入っていく。
グレイオンスはウルの方に目を向けた。
捨て子として里に連れてこられた、赤子のころから見ている顔だ。グレイオンスは彼の表情を見て、何かただならぬことが起きたと直感した。
「どうした? 何があった」
ウルは自分が見たものや里で聞いた話をした。
グレイオンスの表情が厳しいものになった。
「森が枯れる。範囲が広い……か」
「ああ。その里だけじゃねぇって。しかも広がってるって」
ウルの答えの後、グレイオンスが黙考する。
その間、ウルはテーブルにあったタンブラーから、ぬるい茶をカップに注いで飲んだ。
グレイオンスが口を開いた。
「現地の里の者たちでは対処しきれんだろう。冒険者ギルドに依頼を出すよう、それぞれの里の長に伝えることとする」
木々が枯れている現場はどのような状態か。現状の把握と原因究明をしていかないとならない。
森の外から来るものの影響か、内部で何か起こっているのか。
それとも、未知の自然現象なのか。
ウルがぽつりつぶやく。
「……もし、これが止めようもない自然現象なら、森のエルフはどうなるんだ?」
「自然に、か。我々エルフは永き時をこの森とともに生きてきた。止められないことはない」
グレイオンスはそういって立ち上がった。
「この里は現地から遠い。情報の遅れは対応の遅れにつながるだろう」
情報の統括が必要であるのだから、早い方がいいに決まっている。
「ウルが話を聞いた里に私も行こう」
「はぁ? グレイ、あんた、年考えろよ!」
グレイオンスににらまれウルは黙る。
ウルにだってグレイオンスが前に出る意味は分かる。
情報を得るというだけの話ではない。
冒険者を入れるということは、来るのはエルフや歴史的になじみあるリザードマンだけではない。
森のエルフのもつ異種族への排他的感情の影響で、これ以上後手に回る訳にはいかない。
説得するためには、近い所に、彼らが信用できる人物が必要である。
ウルはため息をついた。
「出発は?」
「今すぐだ」
「まじかっ! 俺も一緒に行くからなっ! 鎧と武器持ってくる」
騒々しく出ていくウルの背中をグレイオンスは見送る。
そして、自身も出発の準備を始めた。
執筆:狐野径
assignment【呪輪】命の輪、冥い棘 概要 特設ページ
【呪輪】命の輪、冥い棘連動とは、フィルエス大森林の南東部で発生した植物が枯れる現象を調査し、原因の排除を行う一連の出来事を指す。自然と共に生きるエルフにとって森の存在は必要不可欠である。生命の輪の正常に戻すため、大森林に住まうエルフの最古老の一人であるグレイオンスは、冒険者ギルドに協力を求めた。
assignmentここまでの流れ
フィルエス大森林の南東部で、次々と木や草が枯れる奇妙な現象が発生。被害は急速に拡大し、彼の地に長く住まうエルフたちの目から見てもその原因は不明である。現地のエルフたちは生活をおびやかされ、長年守り続けてきた里を捨てる選択を迫られている者たちもいる。グレイオンスは森が枯れる現象の原因を探るため、また、動揺する現地のエルフたちのケアを行うため、冒険者ギルドに依頼を出すことにした。
person_pin関連NPC
フィルエス大森林のエルフの最古老の一人であり、まとめ役。部族間のもめごとなどが起きた際に調停にあたったり、他国や他種族に対してはフィルエス大森林を代表した立場で外交を行うこともある。
《本連動での動き》
原因究明、解決のための前線での情報集約および指揮を行う。異種族との交流が乏しく保守的なエルフたちをまとめ、彼らと冒険者たちの間に立つ。
様々な植物を見るために旅をしていたハーフビーストの授恵者。赤子の時に拾われてグレイオンスに預けられ、大森林のエルフの里で育てられた。故郷のエルフに恩義を感じているが、種族間において複雑な感情も持っている。
《本連動での動き》
冒険者とともに原因の究明および排除を行う。
menu_book関連用語・情報
フィルエス大森林
大陸西部に広がる大森林、エルフが住まう地。ここに住まうエルフたちの暮らしは、大森林に現れるクリーパーなどの『外敵』を鑑みても長く安定している。彼らにとってそれは、外部の種族や国家との交流を不要と判断するには十分な根拠となっていた。
気候は穏やかで、年中暖かく寒さに凍えることもない。常春の森というにふさわしい環境である。ほとんどの氏族で農耕や牧畜は行っておらず、自然の恵みの中で暮らしている。
フィルエス大森林のエルフ達
エルフとは、大陸各地の森の中で暮らし、その森における調和を保ちながら暮らす種族である。伝統や生活、価値観は異なっても自然を愛し、保守的。
他種族にはない長命性や美貌を誇るものの彼らに選民思想はなく、彼ら自身は"森"という複雑な生命体系に属する一因子、という姿勢が根本にあり、基本的には謙虚な種族である。
環境を破壊し収奪する各国家・都市やドワーフという種への軽蔑は長い歴史の中で綿々と形成され、特にフィルエス大森林においては一部の氏族を除いて他種族との交流が乏しい。歴史的に友好関係を築いてきたリザードマンくらいしか交流がないエルフも、大森林では多数を占める。
氏族について
フィルエス大森林のエルフ達は入植当時から存在する「五氏族」を源流とし、現在ではたくさんの氏族に分かれている。彼らの社会では、各氏族の長が合議によって意見を出し合い、ときに長老が助言を述べる。速断には向かないものの、もとより外部からの干渉を拒む同地域にとっては大きな支障を来たすことはなかったようだ。
各氏族の多くは、【ハイアルヴ】と呼ばれる霊的存在を頂いている。その姿や存在の描かれ方、受け入れられ方は氏族ごとに異なるが、【ハイアルヴ】と交感することができた者は『覡』・『巫女』として氏族の方針決定のキーパーソンとして扱われている。