【PT】Prologue of “THE” story ――物語のはじまり―― 2

●リオの帰還
「少し、休憩しようかな」

 野良仕事の手を止めて岩に腰かけた私は、しばらくの間、ぼうっとアロシュナバラ村の人々を眺めながら、物思いに耽っていた。

 紆余曲折あったが、私はこうしてアロシュナバラ村に戻ってくることができた。

 私がここに戻ってこれたのは、勇敢な冒険者の人達がこの村を我が物顔で闊歩していた亜人達を一人残らず追い払ってくれたおかげだ。

 私も命からがら街に辿り着いた直後はかなり衰弱していたけど、傷の手当てを受け、暖かい食事とベッドでゆっくり休ませてもらったので、体はもうすっかり元気だ。

 けれど、アロシュナバラ村は完全に平穏を取り戻せたわけではない。

 多くの人は未だにアロシュナバラ砦に連行されたままだ。彼らの安否も気にかかるし、働き手の多くを取られてしまった村人たちは、残された者達だけで必死に越冬の準備を進めている。私もその一人だ。

 それに、もう一つ心配なことがある。

 アロシュナバラ砦とこのアロシュナバラ村は近い。平和な頃は毎日荷馬車で物資の遣り取りをしていたぐらいである。

 この村が解放されたことを知ったバルバロイ達は、いずれまたここを奪い返しに来るかもしれない。

 そうなれば、またあの恐ろしい光景がまた繰り返されるのだろうか。

 もうじき、冬が来る。

 肌を刺す空気の冷たさを感じながら、私は砦に向かって流れていく雲を見上げていた。


●冒険者ギルド幹部の証言
 諸君らの活躍により、アロシュナバラ砦周辺地域の解放は順調に進んだ。新米達の活躍も目覚ましかったと聞いている。まずはギルドを代表して礼を言わせてほしい。

 さて、諸君らの報告書を見て、幾つか気になる点があった。このバルバロイ達の一斉蜂起の裏に潜んでいる者達の存在についてだ。

 諸君の話や、捕えたバルバロイ達から得られた情報を総合すると、バルバロイ達が我々の予想以上に統率が取れた集団であったことや、蛮族に似つかわしくないほど装備が充実していたことが判明している。

 これはバルバロイ達に資金力に優れた何らかの後ろ盾がいる可能性を強く示唆している。

 このバルバロイ達の一斉蜂起が悪意ある者によって人為的に引き起こされたというのなら、非常に由々しき事態だ。黒幕の正体と、その目的について早急に調査を進めてほしい。

 もう一つ、気になる点がある。あの悪名高き『メドゥの指先』の連中もこの反乱に関与している可能性も浮上してきた。奴らがこの一件の黒幕なのか、あるいは事件の影にいる者と何らかの協力関係なのか、それについてもできる限り情報を集めてくれ。

 ギルドに所属する君達には、今後は砦の攻略に向けての情報収集を進めつつ、事件の背後に潜んでいる者達の情報を探っていくことをお願いすることになるだろう。

 また、季節は冬に向け厳しさを増している。バルバロイ達の攻撃を受けた地域の中には、越冬の為の蓄えが十分ではない村も存在する。そういった村々への支援も早急に行っていく必要がある。

 もちろん、バルバロイの脅威が取り除かれなければ、冬を越せない者も多く出ることになるだろう。

 バルバロイ達の脅威から王国に住む人々を守る為、諸君らにはより一層の活躍を期待している。

 ここまでは順調だが、我々に残された時間は決して多くはないのだ。


●ある神官の証言
『メドゥの指先』について、でございますか?

 メドゥという名は、神様の名前でございます。かつて、原初の人々に七日七晩教えを説き、最後に世界の真実を語ろうとしたところで泥となって消えたとされる神、それがメドゥです。

『メドゥの指先』はその神の使徒を名乗る奴ら……失礼、方々なのですが……なんというか、その実態は過激なテロリスト集団なのでございます。

 何よりも厄介なのは、連中の多くが『授恵者』だということです。資格無き者が授かりものを得る……世も末でございますね。社会性に乏しい奴……方々ですが、我を通す力は持っていると。全く、なんと嘆かわしいことでしょう。

 メドゥの指先の目的には不明な点が多いですが、人類に仇なす存在であることは間違いありません。今回もバルバロイの蜂起の裏で、ろくでもないコトを企んでいることでしょう。


執筆:おおくまねこ


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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0