【茜蔓】ありがとう
岩岡志摩
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シナリオID:3498
オープニング
●罪業
帝都シルトラースにおける一大決戦の際、ある罪人がリーンエス王国に属する貴族、フローラ・ウォレス伯爵に投降したことはあまり知られていない。
罪人の名はメドゥの指先幹部『黄の小指』ロコ。
多数の魔獣を率いて大陸各地に出没し、様々な罪を重ねた。
その行動理由は故郷を滅ぼされ、大切な人々も虐殺されたことへの復讐。
ロコから故郷と大切な人々を奪った元凶のヴィガ・リスタ子爵は、殺した人々に犯罪者の汚名を着せ、義勇兵の虐殺行為を義挙に偽装した。
今もその偉業を称える記念碑が、かつてロコが民として認められた村の跡地に建てられている。
虐殺を働いた義勇兵達は故郷へと帰還し、その後ロコの手で次々と殺された。
ただディズル大湿地帯で暮らすギシュム族所属のプドル、フィルエス大森林のとある里で暮らしていたルグレの2人は、冒険者達の尽力で殺される前に身柄を確保することができた。
なおルグレは最近になって記憶が戻り、プドルと共にリスタ子爵が犯した罪の証言者となった。
そのリスタ子爵も【呑竜】事件において、2度の暗殺未遂とウォレス伯爵領への侵攻の他、偽の帝国兵や召喚した幽界分樹を使い、己の領土や領民達も巻き込む形でシルトラース帝国がリーンエス王国に攻め込んだという実績を捏造しようとした。
いずれの企みも冒険者達や王国騎士、フローラ伯爵の手勢、そして子爵一派を仇と狙うロコに阻まれて失敗に終わり、子爵や実行犯達の一部は冒険者達の手で捕縛され、今は秘匿された場所に収監されている。
当初王国騎士は子爵がヒューマン至上主義から暴走したと考えていたが、捕縛に貢献した冒険者達の証言から本当の動機が明らかになる。
――ただ暴力を行使できる機会がほしい。
そのためだけに一連の事件は引き起こされ、子爵はロコの故郷や大切な人々、そして自身の領土や領民すら犠牲にした。
王国騎士は子爵の主張が理解できなかったが、供述内容をそのまま記録した。
そして投降したロコも、自身の罪を含め子爵がこれまで隠していた悪行の数々を素直に話し、裏付けが進められる。
ロコの罪をどこで裁くのかについては関係者達が話し合いを重ねた結果、リーンエス王国で裁く形に落ち着いた。
ただし王都までロコを連行するのは危険だとみなされたため、【呑竜】事件で被害を受けたリスタ子爵領内のとある場所を使い、王国騎士達が周囲を固める中、ロコやその配下とリスタ子爵一派への裁きが始まった。
ここなら例えロコが暴れても、王国への被害は少ないと判断されたためだ。
最初に判決が下されたのは【CP】事件の際、リスタ子爵に騙されてエルフの里への破壊活動を行っていた者達。
彼らは黒幕と目されていたリスタ子爵が捕縛されたことで詮議がやり直され、諸事情を考慮した刑罰が科される。
次にメドゥの指先構成員だったスアとブオ。
2人はロコの指示に従い各地で行った犯罪に対する相応の刑罰が科された。
続いて【呑竜】事件や過去に罪のない人々を虐殺し、村ごと壊滅させてきた実行犯達にも厳しい刑罰が科された。
子爵達が殺戮を義挙だと偽装できたのは王国内で子爵に協力した貴族がいたためだが、その貴族も【呑竜】事件の中で死亡している。
偽の帝国兵を率いてリスタ子爵領の人々を虐殺したサディ男爵は、過去にロコが暮らしていた場所や周囲で暮らした人々への虐殺も指揮していたことも判明し、罪状相応の厳しい刑罰が科された。
そして一連の首謀者リスタ子爵に判決が下る。
「ヴィガ・リスタに死刑を宣告する」
ロコにも判決が下された。
「メドゥの指先幹部『黄の小指』ロコに死刑を宣告する」
●願い
以前ロコは帝国東部鎮守都市エスタル、湾岸都市エスト・ポーラ近郊にて結果として人助けをしたこともある。
また【鬼哭】事件においてロコはサウゼル大樹海にある遺跡への道案内を行い、【泥乱】や【呑竜】、そして帝都シルトラースへの先行偵察において現地の人々や冒険者達に助力したこともあった。
ただしこうした事項はたまたまそうなっただけで、ロコの罪状を軽くする要素にはならない。
それが裁判での判断だった。
その一方で、義勇兵によって犯罪者の汚名を着せられて殺された人々や、滅ぼされた村への名誉回復も実施されることが決まる。
これはリスタ子爵やその一味の罪を明らかにするため、必要な処置だった。
悲願が叶ったメイレは首を垂れ、死刑を受け入れる。
なおロコは判決に至るまで抵抗することなく終始協力的であったため、処刑方法を選ぶことができた。
そのロコは現在リスタ子爵領内に設けられた臨時の牢屋内に幽閉されている。
処刑後はその体が利用されることを防ぐため、迅速に火葬されることも決められている。
【呑竜】事件以降、リスタ子爵やロコと関わっていた王国騎士は取り調べの際ロコから頼みごとをされていた。
「できれば冒険者の方々に渡してほしいものがあります」
尋問の際、ロコはある紙の束を提出していた。
それはロコがこれまで取り扱ってきた魔獣に関する情報の記録だった。
対象となる魔獣の種類は狭いものの、成体になるまでの生育記録が細かく記載されていたので、必要とする者もいるかもしれない。
あわせてロコは自身がこれまで貯蓄した資金の隠し場所も王国騎士に提供していた。
「知識や資金に罪はありません。貴方がたや冒険者の方々なら上手く役立ててくれるものと信じています」
王国騎士は即答こそ控えたものの、一応預かる形となる。
「どうか私のような邪悪を再び生み出さないようお願いいたします」
王国騎士としてはロコの願いを聞き届ける義理などない。
しかし一個人としては思うところがあったのだろう。
王国騎士は冒険者ギルド支部に使者を派遣する。
「リスタ子爵領内に残る記念碑を抹消し、新しい石碑を建立する。その作業への人員を募ってもらいたい」
使者は応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスに対し、王国騎士からの依頼を伝える。
新しい石碑には王国騎士が自身に与えられた裁量権を使い、ここで起きた内容を事実として刻むが、使者は冒険者達に対してある意見を募りたいと追加注文を出していた。
――再びロコやリスタ子爵のような存在が現れないようにするため、再発防止となるような文面も考えてほしい。
「後世の人々への忠告と考えてくれればいい。冒険者ならば価値の高い文言を出してくれるはずだ」
石碑にはここで起きたことに関する説明の他に、冒険者から出された意見の中で、有効と思われる文言も皆様冒険者の名前と共に刻むと使者は約束する。
なお使者は重要な案件ということで、相場よりも高めの報酬を提示していた。
●ロコ=メイレ
かつて暮らしていた場所で。
かつて流浪の民を受け入れてくれた村で。
やさしい人達と過ごした記憶。
何よりこれが、今の自分にとっては最後に残されたもの。
勇敢で頼もしく、礼儀は知らないが大切な人達ばかりだった。
決して豊かでない環境でも互いを慈しみ、助けあって生きてきた。
愛――そう、彼らを心底愛していた。
彼らのためならば、すべてを賭しても構わなかった。
ああ、でも――。
自分には別の願いもあった。
そしてそれも叶えられる。
だからその報いも喜んで引き受けよう。
これは悔恨と憎悪と。
願いの先にあった、終わりの話。
帝都シルトラースにおける一大決戦の際、ある罪人がリーンエス王国に属する貴族、フローラ・ウォレス伯爵に投降したことはあまり知られていない。
罪人の名はメドゥの指先幹部『黄の小指』ロコ。
多数の魔獣を率いて大陸各地に出没し、様々な罪を重ねた。
その行動理由は故郷を滅ぼされ、大切な人々も虐殺されたことへの復讐。
ロコから故郷と大切な人々を奪った元凶のヴィガ・リスタ子爵は、殺した人々に犯罪者の汚名を着せ、義勇兵の虐殺行為を義挙に偽装した。
今もその偉業を称える記念碑が、かつてロコが民として認められた村の跡地に建てられている。
虐殺を働いた義勇兵達は故郷へと帰還し、その後ロコの手で次々と殺された。
ただディズル大湿地帯で暮らすギシュム族所属のプドル、フィルエス大森林のとある里で暮らしていたルグレの2人は、冒険者達の尽力で殺される前に身柄を確保することができた。
なおルグレは最近になって記憶が戻り、プドルと共にリスタ子爵が犯した罪の証言者となった。
そのリスタ子爵も【呑竜】事件において、2度の暗殺未遂とウォレス伯爵領への侵攻の他、偽の帝国兵や召喚した幽界分樹を使い、己の領土や領民達も巻き込む形でシルトラース帝国がリーンエス王国に攻め込んだという実績を捏造しようとした。
いずれの企みも冒険者達や王国騎士、フローラ伯爵の手勢、そして子爵一派を仇と狙うロコに阻まれて失敗に終わり、子爵や実行犯達の一部は冒険者達の手で捕縛され、今は秘匿された場所に収監されている。
当初王国騎士は子爵がヒューマン至上主義から暴走したと考えていたが、捕縛に貢献した冒険者達の証言から本当の動機が明らかになる。
――ただ暴力を行使できる機会がほしい。
そのためだけに一連の事件は引き起こされ、子爵はロコの故郷や大切な人々、そして自身の領土や領民すら犠牲にした。
王国騎士は子爵の主張が理解できなかったが、供述内容をそのまま記録した。
そして投降したロコも、自身の罪を含め子爵がこれまで隠していた悪行の数々を素直に話し、裏付けが進められる。
ロコの罪をどこで裁くのかについては関係者達が話し合いを重ねた結果、リーンエス王国で裁く形に落ち着いた。
ただし王都までロコを連行するのは危険だとみなされたため、【呑竜】事件で被害を受けたリスタ子爵領内のとある場所を使い、王国騎士達が周囲を固める中、ロコやその配下とリスタ子爵一派への裁きが始まった。
ここなら例えロコが暴れても、王国への被害は少ないと判断されたためだ。
最初に判決が下されたのは【CP】事件の際、リスタ子爵に騙されてエルフの里への破壊活動を行っていた者達。
彼らは黒幕と目されていたリスタ子爵が捕縛されたことで詮議がやり直され、諸事情を考慮した刑罰が科される。
次にメドゥの指先構成員だったスアとブオ。
2人はロコの指示に従い各地で行った犯罪に対する相応の刑罰が科された。
続いて【呑竜】事件や過去に罪のない人々を虐殺し、村ごと壊滅させてきた実行犯達にも厳しい刑罰が科された。
子爵達が殺戮を義挙だと偽装できたのは王国内で子爵に協力した貴族がいたためだが、その貴族も【呑竜】事件の中で死亡している。
偽の帝国兵を率いてリスタ子爵領の人々を虐殺したサディ男爵は、過去にロコが暮らしていた場所や周囲で暮らした人々への虐殺も指揮していたことも判明し、罪状相応の厳しい刑罰が科された。
そして一連の首謀者リスタ子爵に判決が下る。
「ヴィガ・リスタに死刑を宣告する」
ロコにも判決が下された。
「メドゥの指先幹部『黄の小指』ロコに死刑を宣告する」
●願い
以前ロコは帝国東部鎮守都市エスタル、湾岸都市エスト・ポーラ近郊にて結果として人助けをしたこともある。
また【鬼哭】事件においてロコはサウゼル大樹海にある遺跡への道案内を行い、【泥乱】や【呑竜】、そして帝都シルトラースへの先行偵察において現地の人々や冒険者達に助力したこともあった。
ただしこうした事項はたまたまそうなっただけで、ロコの罪状を軽くする要素にはならない。
それが裁判での判断だった。
その一方で、義勇兵によって犯罪者の汚名を着せられて殺された人々や、滅ぼされた村への名誉回復も実施されることが決まる。
これはリスタ子爵やその一味の罪を明らかにするため、必要な処置だった。
悲願が叶ったメイレは首を垂れ、死刑を受け入れる。
なおロコは判決に至るまで抵抗することなく終始協力的であったため、処刑方法を選ぶことができた。
そのロコは現在リスタ子爵領内に設けられた臨時の牢屋内に幽閉されている。
処刑後はその体が利用されることを防ぐため、迅速に火葬されることも決められている。
【呑竜】事件以降、リスタ子爵やロコと関わっていた王国騎士は取り調べの際ロコから頼みごとをされていた。
「できれば冒険者の方々に渡してほしいものがあります」
尋問の際、ロコはある紙の束を提出していた。
それはロコがこれまで取り扱ってきた魔獣に関する情報の記録だった。
対象となる魔獣の種類は狭いものの、成体になるまでの生育記録が細かく記載されていたので、必要とする者もいるかもしれない。
あわせてロコは自身がこれまで貯蓄した資金の隠し場所も王国騎士に提供していた。
「知識や資金に罪はありません。貴方がたや冒険者の方々なら上手く役立ててくれるものと信じています」
王国騎士は即答こそ控えたものの、一応預かる形となる。
「どうか私のような邪悪を再び生み出さないようお願いいたします」
王国騎士としてはロコの願いを聞き届ける義理などない。
しかし一個人としては思うところがあったのだろう。
王国騎士は冒険者ギルド支部に使者を派遣する。
「リスタ子爵領内に残る記念碑を抹消し、新しい石碑を建立する。その作業への人員を募ってもらいたい」
使者は応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスに対し、王国騎士からの依頼を伝える。
新しい石碑には王国騎士が自身に与えられた裁量権を使い、ここで起きた内容を事実として刻むが、使者は冒険者達に対してある意見を募りたいと追加注文を出していた。
――再びロコやリスタ子爵のような存在が現れないようにするため、再発防止となるような文面も考えてほしい。
「後世の人々への忠告と考えてくれればいい。冒険者ならば価値の高い文言を出してくれるはずだ」
石碑にはここで起きたことに関する説明の他に、冒険者から出された意見の中で、有効と思われる文言も皆様冒険者の名前と共に刻むと使者は約束する。
なお使者は重要な案件ということで、相場よりも高めの報酬を提示していた。
●ロコ=メイレ
かつて暮らしていた場所で。
かつて流浪の民を受け入れてくれた村で。
やさしい人達と過ごした記憶。
何よりこれが、今の自分にとっては最後に残されたもの。
勇敢で頼もしく、礼儀は知らないが大切な人達ばかりだった。
決して豊かでない環境でも互いを慈しみ、助けあって生きてきた。
愛――そう、彼らを心底愛していた。
彼らのためならば、すべてを賭しても構わなかった。
ああ、でも――。
自分には別の願いもあった。
そしてそれも叶えられる。
だからその報いも喜んで引き受けよう。
これは悔恨と憎悪と。
願いの先にあった、終わりの話。
解説
●目標
リスタ子爵が建立した記念碑を消す
新しく設置する石碑に追加で刻む文言について意見を出す
登場
ロコ
メドゥの指先幹部『黄の小指』。本名はメイレ。
流浪の民だった自分を受け入れ、育ててくれた村や村人達に犯罪者の汚名を着せ、その殺戮を義挙と偽ったリスタ子爵や実行犯の義勇兵、その協力者達への復讐として大陸各地で暴れ回った。
今はリスタ子爵領内で下記記念碑近くにある建物内にて王国騎士監視のもと厳重に拘束され、今後その場で処刑される。
希望すれば王国騎士立会いの下、刑死前の短い時間内に面会することは可能。
王国騎士
依頼人。リスタ子爵領内での裁判権を有する。ロコより提供されたものは王国騎士団や上層部と相談の上で処分を決める。
ロコが率いていた3種の魔獣に関する生態と生育を記録した情報は、希望すれば写しをもらえる。
アルヒ・ラスカス
冒険者ギルド支部職員。皆様から出される意見の記録役も務め、皆様の指示に従う。汎用スキルはテレパス。
記念碑と旗の群れ
今回の攻略対象。複数建立されている。
記念碑には義挙を示す文言や義勇兵達が所属していた部族を示すシンボルマークが部族の名と共に刻まれている。その周囲にも部族を示す旗らしきものも多く立ち並ぶ。
刻まれている文言は以下の通り。
――我ら義勇兵は種族や国の垣根を超え、共に力を合わせて義挙を成した。その証をここに残す。
――先の未来で語られる英雄の名は我らしかありえない。我らの正義は互いの欠点を覆い隠すほど人々の胸を打った。
――我らはそのほとばしる愛と正義によって万民を守る剣である。
状況
リーンエス王国のリスタ子爵領内にある記念碑付近。現地時刻は正午で快晴。
現場には皆様や関係者以外誰もいないので、皆様が避難誘導を行う必要はない。
記念碑が立つのはかつてロコが民として受け入れられた村の跡地。
その近隣に残っていた建物内でロコは幽閉され、王国騎士と同僚達が跡地とロコを交代で見張っている。
記念碑を破壊し、用意された石碑を建立できれば依頼は達成扱いになる。
以下は位置関係。下記の範囲なら皆様は全ての場所に行くことができる。
↑北
墓
記念碑
建物
墓:義勇兵達に殺された村人達をロコが密かに埋葬し守っていた場所。
記念碑:殺された村人達が暮らしていた村の跡地
建物:ロコの幽閉場所。牢屋と刑の執行場所を兼ねている。
マスターより
メイレ(ロコ)「英雄の皆様。ありがとうございます」
【茜蔓】最終話です。
今まで【茜蔓】やロコにお付き合いくださり本当にありがとうございました。
『黄の小指』ロコは刑死を受け入れました。
これにてロコは退場です。
殺された人々の名誉回復もありますが、人々の心に再び自分や子爵を生み出すような愚行は繰り返さないという気持ちが生まれることを、ロコ=メイレは切望していました。
そしてそうした願いはいま、皆様冒険者達によってほぼ叶えられつつあります。
ご参加下さった皆様の中から1人以上の方が具体的な意見を出してくだされば、「意見を出す」部分は達成扱いになります。
ロコは処刑された後、その体が利用されないよう速やかに火葬され、村人達が埋葬された場所に葬られる予定です。
王国騎士に希望すれば、皆様はロコの埋葬にも参加できます。
必要なものがあれば、アルヒに頼めばよほど貴重なものでもない限り用意してくれます。
ご不明な点がございましたら、出発36時間前まででしたらアルヒが答えられる範囲のことは答えます。
リプレイ
●茜蔓の終わり
これは冒険者達が一つの終わりを見届け、その先へと進む話だ。
●最後の会話
この日、ストレガ・L・リベルガストラは、メドゥの指先幹部『黄の小指』ロコが収監されている建物内に足を運んでいた。
(私は一部関わったに過ぎないから、石碑の内容は他の者に任せたいのだ)
そうした理由から、ストレガはロコが処刑される前の会話を優先した。
現在ロコは全身を厳重に拘束され、自由なのは首から上の部分くらいだった。
王国騎士が立ち会う中、頑丈な格子越しにストレガはロコと対面する。
「ゴールディの件で助力していただいたため、改めて礼を言いにきたのだ」
ストレガは以前【鬼哭】事件の際、ロコがサウゼル遺跡への道案内を行った件について礼を述べる。
「おかげで彼は神の一柱となり、現在は祀られるに至るところなのだ」
なおストレガやロコに、彼の記憶はない。
知識としてそうした人物がいて、そういうことがあったと知っているだけだ。
「上の命でやったことでも実際にやったのは君であるのだ」
冒険者達の道案内をロコに命じたのは『メドゥの左腕』であることはストレガも承知している。
「あの件は私が主導で書いている新しいゴブリン史に末永く残されるのだ」
ストレガは自身の手がけるゴブリン史に、ロコのことも含め全てを記録に残すと明言した。
「悪人の手助けを受けたことを嫌がる方もいるのではないでしょうか?」
「史実だから嫌とは言わせないのだ」
ロコが懸念を示すと、ストレガはそう言い切る。
「魔獣の資料提供も感謝するのだ。王国がいらなくても私は頂こう」
そしてストレガはロコから提供された魔獣に関する資料についても感謝を口にすると、それまで後ろで話を聞いていたロゼットが前に出てロコとの対話に加わる。
「貴方が残した記録は、私が火山の神殿に寄贈するわ」
ロゼットもストレガと同じように、ロコが提供した魔獣に関する資料の写しをもらえるよう王宮騎士に頼み込んでいた。
そして手続きを済ませた後、ロゼットとストレガはロコが提供した資料の写しを手に入れている。
「あそこには辺獄という魔獣の大きな生息地があるからね」
ロコがまとめた魔獣の資料は範囲こそ狭いものの、長い時間をかけて綿密に調べたことが良くわかる内容だった。
資料に記載された情報は、そうした場所への対応に役立てることができるとロゼットは考えている。
「お役に立てるのでしたら幸いです」
ロコは透明な笑みを見せ、限られた面会時間の中でやり取りが交わされる。
最後にロゼットは見送りの言葉をロコに伝える。
「……魂が行く場所で、懐かしい人達に再会できることを願っているわ」
それを聞いたロコは、ロゼットやストレガに対し頭を下げる。
「お先に参ります。貴方がたはゆっくりお越しください」
それがロコ最期の言葉だった。
そしてメドゥの指先幹部『黄の小指』は、ストレガが立ち会う中で処刑された。
「メドゥの罪はここで裁かれる。それは仕方ないのだ」
見届けたストレガは、ぽつりとそう呟いた。
●記念碑の更新
処刑執行の一報は、記念碑の撤去に従事していたトーラやナハシュたち冒険者のもとにも届けられた。
「処刑を受け入れたのですね……」
トーラはロコに投降を呼びかけた経緯があったため、内心罪悪感もあった。
なおロコは刑死前、ストレガやロゼットたちにトーラへの伝言も託している。
――悪人として報いを受ける。これは私が望んだ結末です。
自分が望んだことだから誰かが気に病むことはないと。
それを聞いたトーラは内心で折り合いをつけたのか、ロゼットと共に記念碑の撤去を再開する。
トーラは淡々とした様子でセルリアンエッジとシアンブレードにエーテルを通し、伸ばした光を近接武器の形にすると、記念碑の1つへと振るった。
トーラの攻撃を受けた石碑は上下に断ち割られ、宙に浮いた上部分は地面に叩きつけられて砕け散る。
ロゼットも別の記念碑に近づくと、真心改宗撃を乗せた神材の祭棍で殴りつけた。
打撃音と共にロゼットの前で記念碑は砕け、その破片が周囲の地面に散乱していく。
トーラやロゼットたち冒険者の攻撃が繰り出されるたびに、記念碑は打ち砕かれ、順次撤去される。
その後王国騎士と配下の者たちも加わり、冒険者達は新しい記念碑をその場に設置した。
新しい記念碑にはこの場所で起きたことやリスタ子爵一派が引き起こした犯罪の詳細が刻まれていたが、犠牲となった人達の名前も同じように刻まれていた。
その近くにロゼットは次の一文を刻むよう意見を出している。
――正義を語る者は、悪より自身の心こそを厳しく戒めるべきである。
ロゼットの意見はその場で承認され、記念碑に加えられていく。
(……私たちも勇者だ、英雄だと言われて浮かれないようにしなければね)
ロゼットは自身を戒めるように、内心そう呟いていた。
王国騎士側は冒険者達の意見を可能な限り取り入れるつもりでいたが――。
――彼らのような犠牲者が出たことを反省し、今後出ないよう最大の努力を行う。
トーラの提案した文言に対し、王国騎士の配下が難色を示す。
「この一件はリスタ子爵や同調した者達の暴走によって起きた稀有な例だ。同じような事が再び起きるとは思えない」
配下の発言に対し、トーラは抗議を入れる。
「そういうところが、ロコのようなテロリストを生む原因になったのでは無いですか?」
ロコが罪悪を積み重ねたことはトーラも異論はない。
だがロコが暴れ回った原因は、権力を持った人間達が私利私欲のためにロコにとって大切な人達を虐殺し、犯罪者と貶め続けたことへの復讐もあったことは事実だ。
確かに稀有な事例かもしれない。けれど今後起きないとは限らない。
(わたしは本気です!)
トーラは対人・対魔物用威圧術を発揮し、その配下を威圧した。
思わず配下が後ずさると、不穏な空気に気づいた王国騎士が割って入る。
「認めよう。責任は私がとる」
最終的には王国騎士が責任を負う形で、トーラの提案した文言も記念碑に加えられた。
●その記録は後世に
ロコの骸は速やかに処理された後、埋葬が行われる。
埋葬にはロゼットやストレガ、そしてトーラも参列していた。
(……旅立つ魂が行く先で、安らぎを得ますように)
ロゼットは静かに祈りを捧げる。
「記録の効き目は長いのだ」
ストレガは埋葬されたロコに向け、そのような言葉を投げる。
(この地にメイレという女がいた。記憶は失われてもそれは石碑と資料によって伝えられていくだろう)
ストレガはそうした内容も記録に留めるつもりでいる。
最後にトーラが、ロコの墓周辺にシロツメクサの種を蒔く。
トーラがシロツメクサに込めた言葉は私を思って。幸運。約束。
――そして復讐。
(忘れないように)
トーラはそう願う。
かつて悲劇があった。
そこから憎悪が生まれ、新たな罪悪となった。
冒険者達は悲劇と罪悪を終わらせ、根底にあった願いを叶えた。
これからも冒険者達は歩き続ける。
未来に向かって。
これは冒険者達が一つの終わりを見届け、その先へと進む話だ。
●最後の会話
この日、ストレガ・L・リベルガストラは、メドゥの指先幹部『黄の小指』ロコが収監されている建物内に足を運んでいた。
(私は一部関わったに過ぎないから、石碑の内容は他の者に任せたいのだ)
そうした理由から、ストレガはロコが処刑される前の会話を優先した。
現在ロコは全身を厳重に拘束され、自由なのは首から上の部分くらいだった。
王国騎士が立ち会う中、頑丈な格子越しにストレガはロコと対面する。
「ゴールディの件で助力していただいたため、改めて礼を言いにきたのだ」
ストレガは以前【鬼哭】事件の際、ロコがサウゼル遺跡への道案内を行った件について礼を述べる。
「おかげで彼は神の一柱となり、現在は祀られるに至るところなのだ」
なおストレガやロコに、彼の記憶はない。
知識としてそうした人物がいて、そういうことがあったと知っているだけだ。
「上の命でやったことでも実際にやったのは君であるのだ」
冒険者達の道案内をロコに命じたのは『メドゥの左腕』であることはストレガも承知している。
「あの件は私が主導で書いている新しいゴブリン史に末永く残されるのだ」
ストレガは自身の手がけるゴブリン史に、ロコのことも含め全てを記録に残すと明言した。
「悪人の手助けを受けたことを嫌がる方もいるのではないでしょうか?」
「史実だから嫌とは言わせないのだ」
ロコが懸念を示すと、ストレガはそう言い切る。
「魔獣の資料提供も感謝するのだ。王国がいらなくても私は頂こう」
そしてストレガはロコから提供された魔獣に関する資料についても感謝を口にすると、それまで後ろで話を聞いていたロゼットが前に出てロコとの対話に加わる。
「貴方が残した記録は、私が火山の神殿に寄贈するわ」
ロゼットもストレガと同じように、ロコが提供した魔獣に関する資料の写しをもらえるよう王宮騎士に頼み込んでいた。
そして手続きを済ませた後、ロゼットとストレガはロコが提供した資料の写しを手に入れている。
「あそこには辺獄という魔獣の大きな生息地があるからね」
ロコがまとめた魔獣の資料は範囲こそ狭いものの、長い時間をかけて綿密に調べたことが良くわかる内容だった。
資料に記載された情報は、そうした場所への対応に役立てることができるとロゼットは考えている。
「お役に立てるのでしたら幸いです」
ロコは透明な笑みを見せ、限られた面会時間の中でやり取りが交わされる。
最後にロゼットは見送りの言葉をロコに伝える。
「……魂が行く場所で、懐かしい人達に再会できることを願っているわ」
それを聞いたロコは、ロゼットやストレガに対し頭を下げる。
「お先に参ります。貴方がたはゆっくりお越しください」
それがロコ最期の言葉だった。
そしてメドゥの指先幹部『黄の小指』は、ストレガが立ち会う中で処刑された。
「メドゥの罪はここで裁かれる。それは仕方ないのだ」
見届けたストレガは、ぽつりとそう呟いた。
●記念碑の更新
処刑執行の一報は、記念碑の撤去に従事していたトーラやナハシュたち冒険者のもとにも届けられた。
「処刑を受け入れたのですね……」
トーラはロコに投降を呼びかけた経緯があったため、内心罪悪感もあった。
なおロコは刑死前、ストレガやロゼットたちにトーラへの伝言も託している。
――悪人として報いを受ける。これは私が望んだ結末です。
自分が望んだことだから誰かが気に病むことはないと。
それを聞いたトーラは内心で折り合いをつけたのか、ロゼットと共に記念碑の撤去を再開する。
トーラは淡々とした様子でセルリアンエッジとシアンブレードにエーテルを通し、伸ばした光を近接武器の形にすると、記念碑の1つへと振るった。
トーラの攻撃を受けた石碑は上下に断ち割られ、宙に浮いた上部分は地面に叩きつけられて砕け散る。
ロゼットも別の記念碑に近づくと、真心改宗撃を乗せた神材の祭棍で殴りつけた。
打撃音と共にロゼットの前で記念碑は砕け、その破片が周囲の地面に散乱していく。
トーラやロゼットたち冒険者の攻撃が繰り出されるたびに、記念碑は打ち砕かれ、順次撤去される。
その後王国騎士と配下の者たちも加わり、冒険者達は新しい記念碑をその場に設置した。
新しい記念碑にはこの場所で起きたことやリスタ子爵一派が引き起こした犯罪の詳細が刻まれていたが、犠牲となった人達の名前も同じように刻まれていた。
その近くにロゼットは次の一文を刻むよう意見を出している。
――正義を語る者は、悪より自身の心こそを厳しく戒めるべきである。
ロゼットの意見はその場で承認され、記念碑に加えられていく。
(……私たちも勇者だ、英雄だと言われて浮かれないようにしなければね)
ロゼットは自身を戒めるように、内心そう呟いていた。
王国騎士側は冒険者達の意見を可能な限り取り入れるつもりでいたが――。
――彼らのような犠牲者が出たことを反省し、今後出ないよう最大の努力を行う。
トーラの提案した文言に対し、王国騎士の配下が難色を示す。
「この一件はリスタ子爵や同調した者達の暴走によって起きた稀有な例だ。同じような事が再び起きるとは思えない」
配下の発言に対し、トーラは抗議を入れる。
「そういうところが、ロコのようなテロリストを生む原因になったのでは無いですか?」
ロコが罪悪を積み重ねたことはトーラも異論はない。
だがロコが暴れ回った原因は、権力を持った人間達が私利私欲のためにロコにとって大切な人達を虐殺し、犯罪者と貶め続けたことへの復讐もあったことは事実だ。
確かに稀有な事例かもしれない。けれど今後起きないとは限らない。
(わたしは本気です!)
トーラは対人・対魔物用威圧術を発揮し、その配下を威圧した。
思わず配下が後ずさると、不穏な空気に気づいた王国騎士が割って入る。
「認めよう。責任は私がとる」
最終的には王国騎士が責任を負う形で、トーラの提案した文言も記念碑に加えられた。
●その記録は後世に
ロコの骸は速やかに処理された後、埋葬が行われる。
埋葬にはロゼットやストレガ、そしてトーラも参列していた。
(……旅立つ魂が行く先で、安らぎを得ますように)
ロゼットは静かに祈りを捧げる。
「記録の効き目は長いのだ」
ストレガは埋葬されたロコに向け、そのような言葉を投げる。
(この地にメイレという女がいた。記憶は失われてもそれは石碑と資料によって伝えられていくだろう)
ストレガはそうした内容も記録に留めるつもりでいる。
最後にトーラが、ロコの墓周辺にシロツメクサの種を蒔く。
トーラがシロツメクサに込めた言葉は私を思って。幸運。約束。
――そして復讐。
(忘れないように)
トーラはそう願う。
かつて悲劇があった。
そこから憎悪が生まれ、新たな罪悪となった。
冒険者達は悲劇と罪悪を終わらせ、根底にあった願いを叶えた。
これからも冒険者達は歩き続ける。
未来に向かって。
マスターコメント
お疲れ様でした。
ロコとその最期にお付き合いくださりありがとうございます。
当初のロコはリスタ子爵や義勇兵への復讐と、殺された人達の名誉回復ができるなら無関係の人達を巻き込むことも躊躇しませんでした。
悲願が達成されれば他はどうでもいいというロコの考えに変化が生じたのは、関わって下さった冒険者達のおかげでもあります。
そして冒険者達の尽力もあって、結果的に悲願が達成できたロコは皆様冒険者への感謝と共に裁きを受け入れ、この世界より退場しました。
改めましてこのたびはご参加下さりありがとうございました。
少しでもその内容が皆様にとって、お楽しみ下さる内容でしたら幸いに存じます。
イベントシナリオ易しい 報酬:標準4 / 4〜25人
2024年03月31日 00時10分26秒 公開
大成功
相談掲示板
トーラです。 よろしくお願いします。 ロコ……メイレの処刑は決定なんですね。 とりあえず石碑への意見を出そうと思います。 後は成立して貰えると良いんですけど……
ロゼットよ。4人になって依頼は成立ね。 …公正な裁きによる結果であるなら、私に異議はないわ。 石碑の建立お手伝いと、残す言葉への意見は出させてもらうわ。
アルヒ・ラスカスだ。 今回は依頼に応じてくれたこと、感謝する。 何か聞きたいことなどがあれば答えられる範囲で応じるつもりだ。 よろしく頼む。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 ゴールディの話の方で世話になったことを伝えにきただけなので石碑の意見は出さないつもりなのだ。お譲りする
あ、魔獣の記録は写しをいただくつもり。そちらの方の礼も