お茶にどうぞ 思い出話、今後の挨拶
狐野径
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シナリオID:3484
オープニング
帝都奪還がなされ、二か月近く。
フィルエス大森林の灰火の氏族の、とある里。
グレイオンスはいつもと変わらない朝を迎える。
変わったことは多くあり、変わらないことも多くある。
モルアモの巫女のファシオは時折現れるのは変わったこと。
グレイオンスの所に縁があっているウル・ヘルバを訪ねる。
世界樹の声を聴くという立場であり、混乱していた時期もあるが、今はむしろ、前向きに何か探しているようだった。
ウルも里を離れることになった。
ウルは十年位前に里を出て、二年くらい前に戻ってきていた。
ハーフビーストの捨て子であり、旅するエルフのハルシ・エルとナツキ・エルに拾われ、グレイオンスの住む里に預けられたという経緯がある。
エルフの子らと一緒に育ててくれたことはありがたいし、恩を感じる面はある。
一方で、エルフとの時間の流れの違いを強く感じていた。
ここにいれば、ずっと赤子のままのような気すらする。
十年くらい前に、里を出たのもそれが理由の一つだった。
今回、大森林を離れることを考えていたが、旅に出ようとしたことを察した里の人たちや知り合いから色々言われた。
森の中に小さな家などを持つことを勧められた。
そして、ムーセルという里があった近くに住めそうだと分かった。
エルフではないため心配もあったが、居住予定地の周辺から特に異を唱えられなかった。
その際連れていくのは、ナツキがグレイオンスに送り付けたヤギ三頭。相棒のハルシが「旅するのにどうするのか」と怒った結果だった。
里の人たちはヤギを気にせず、ヤギも生活を気にせず……とはいえ、何かあると放置するのも危険ということで、ウルが引き受けることになった。
ウルは、ヤギの世話しつつ、植物を植えたり、調査していけばいいだろうと前向きに考えていた。
「てか……ま、家を持つのはいいけど、森出てねぇな……つーか、モルアモ近ぇよな……」
人とのつながりはありがたいからいいけれども。
背後に気配を感じた。
扉が開いており、グレイオンスが覗いている。
「忘れ物があっても取りにくればいい」
「いや、そんなに荷物ないし……それより、グレイの方こそ、飯……いや、俺、いない間、食べてたんだよな……」
出ていこうとしつつ、そうしない理由を探すような気がして、ウルは口をつぐんだ。
グレイオンスはうなずきつつ、真顔で「空気と水と光があれば大丈夫だ」と返した。
「洒落になってねぇ!」
グレイオンスは笑った。
グレイオンスはウルが以前出ていったときより、今回はほっとして送り出す。
子どもと言ってもいい頃出ていったときは、ナツキとハルシという旅慣れた二人がいたが、心配はあった。
今回は、大森林の中であるだけでなく、ウルがどうしたいかということが明白だ。
引っ越した後、旅に出たとしても、目的があるから戻ってくると考えられる。
「それより……冒険者がいつここを訪問するかはわからない」
グレイオンスは冒険者ギルドに伝えていることがあった。
――いつでも寄ってほしい、と。
大森林に暮らすエルフも相談等で来ることはある。
それだけではなく、大森林を出入りする冒険者はこれまでのようにいるだろう。
また、大森林で何らかの理由で暮らす予定もあるものがいるだろう。
ギルドには、冒険者が里やグレイオンスに用があってもなくても、寄ってくれて構わない、ということ。
ちょっとした話をするためでも、目的があって情報を求めるときでも。
グレイオンスとしては、里の外のことを聞ける機会であるし、色々な人とのつながりを生むことでもあった。
テーブルの上には菓子や茶がある。
来訪者があったら出せるようにと里の人が用意してくれたもの。
「今日は来るだろうか?」
誰も来ないのは寂しい。
一方で、何もないということは平穏であるともいえるから喜ばしい。
難しいことだった。
里の子どものエキルとラビトは植木鉢に水をやる。
「カカオ」
「カカオっ!」
カカオの種が埋まっている。
二人の希望は大森林でカカオ豆を作って、チョコレートを作ること。
去年はその情報収集を兼ねて、あちこち回った。
相談に乗ってくれた冒険者の話もあり、まずは植木鉢で試すことから始めた。
日当たりの調整も、温めるための仕掛けを作るにしても、植木鉢サイズならしやすい。
元々難しいとされることだけれども、何かできるかもしれないし、難しかったら火山も近いとか考えたり、視野は広がっていた。
カカオが発芽する温度になるように祈り、毎日植木鉢を覗き込む。
「キツネさん、いなくなるんだよね」
「でも、居場所は分かっているし、ヤギいるから長い間家を空けないよ」
「ボクたちもいけるね」
「あ、冒険者の人が来たね」
何か面白い話が聴けるかもしれないと、冒険者の方に向かった。
自分たちもすることあるし、エキルとラビトは里を駆け回る。
フィルエス大森林の灰火の氏族の、とある里。
グレイオンスはいつもと変わらない朝を迎える。
変わったことは多くあり、変わらないことも多くある。
モルアモの巫女のファシオは時折現れるのは変わったこと。
グレイオンスの所に縁があっているウル・ヘルバを訪ねる。
世界樹の声を聴くという立場であり、混乱していた時期もあるが、今はむしろ、前向きに何か探しているようだった。
ウルも里を離れることになった。
ウルは十年位前に里を出て、二年くらい前に戻ってきていた。
ハーフビーストの捨て子であり、旅するエルフのハルシ・エルとナツキ・エルに拾われ、グレイオンスの住む里に預けられたという経緯がある。
エルフの子らと一緒に育ててくれたことはありがたいし、恩を感じる面はある。
一方で、エルフとの時間の流れの違いを強く感じていた。
ここにいれば、ずっと赤子のままのような気すらする。
十年くらい前に、里を出たのもそれが理由の一つだった。
今回、大森林を離れることを考えていたが、旅に出ようとしたことを察した里の人たちや知り合いから色々言われた。
森の中に小さな家などを持つことを勧められた。
そして、ムーセルという里があった近くに住めそうだと分かった。
エルフではないため心配もあったが、居住予定地の周辺から特に異を唱えられなかった。
その際連れていくのは、ナツキがグレイオンスに送り付けたヤギ三頭。相棒のハルシが「旅するのにどうするのか」と怒った結果だった。
里の人たちはヤギを気にせず、ヤギも生活を気にせず……とはいえ、何かあると放置するのも危険ということで、ウルが引き受けることになった。
ウルは、ヤギの世話しつつ、植物を植えたり、調査していけばいいだろうと前向きに考えていた。
「てか……ま、家を持つのはいいけど、森出てねぇな……つーか、モルアモ近ぇよな……」
人とのつながりはありがたいからいいけれども。
背後に気配を感じた。
扉が開いており、グレイオンスが覗いている。
「忘れ物があっても取りにくればいい」
「いや、そんなに荷物ないし……それより、グレイの方こそ、飯……いや、俺、いない間、食べてたんだよな……」
出ていこうとしつつ、そうしない理由を探すような気がして、ウルは口をつぐんだ。
グレイオンスはうなずきつつ、真顔で「空気と水と光があれば大丈夫だ」と返した。
「洒落になってねぇ!」
グレイオンスは笑った。
グレイオンスはウルが以前出ていったときより、今回はほっとして送り出す。
子どもと言ってもいい頃出ていったときは、ナツキとハルシという旅慣れた二人がいたが、心配はあった。
今回は、大森林の中であるだけでなく、ウルがどうしたいかということが明白だ。
引っ越した後、旅に出たとしても、目的があるから戻ってくると考えられる。
「それより……冒険者がいつここを訪問するかはわからない」
グレイオンスは冒険者ギルドに伝えていることがあった。
――いつでも寄ってほしい、と。
大森林に暮らすエルフも相談等で来ることはある。
それだけではなく、大森林を出入りする冒険者はこれまでのようにいるだろう。
また、大森林で何らかの理由で暮らす予定もあるものがいるだろう。
ギルドには、冒険者が里やグレイオンスに用があってもなくても、寄ってくれて構わない、ということ。
ちょっとした話をするためでも、目的があって情報を求めるときでも。
グレイオンスとしては、里の外のことを聞ける機会であるし、色々な人とのつながりを生むことでもあった。
テーブルの上には菓子や茶がある。
来訪者があったら出せるようにと里の人が用意してくれたもの。
「今日は来るだろうか?」
誰も来ないのは寂しい。
一方で、何もないということは平穏であるともいえるから喜ばしい。
難しいことだった。
里の子どものエキルとラビトは植木鉢に水をやる。
「カカオ」
「カカオっ!」
カカオの種が埋まっている。
二人の希望は大森林でカカオ豆を作って、チョコレートを作ること。
去年はその情報収集を兼ねて、あちこち回った。
相談に乗ってくれた冒険者の話もあり、まずは植木鉢で試すことから始めた。
日当たりの調整も、温めるための仕掛けを作るにしても、植木鉢サイズならしやすい。
元々難しいとされることだけれども、何かできるかもしれないし、難しかったら火山も近いとか考えたり、視野は広がっていた。
カカオが発芽する温度になるように祈り、毎日植木鉢を覗き込む。
「キツネさん、いなくなるんだよね」
「でも、居場所は分かっているし、ヤギいるから長い間家を空けないよ」
「ボクたちもいけるね」
「あ、冒険者の人が来たね」
何か面白い話が聴けるかもしれないと、冒険者の方に向かった。
自分たちもすることあるし、エキルとラビトは里を駆け回る。
解説
●目的・目標
とある日、何らかの用で灰火の里に寄る。
●現地にいるNPC
・グレイオンス フィルエス大森林のエルフ最古老の一人。
人々の話を聞きたいと、茶と菓子を用意して待っている。
話すのはこれまでのこと、今のこと、未来のことなど問わない。
茶は穏やかな味わいのハーブティ(イメージは桑の葉茶)。
菓子は木の実等の粉で作ったクッキー。
・ウル・ヘルバ 冒険者。
捨て子だったのだが、旅する二人のエルフに拾われて、ここに預けられた。
色々な流れを経てヤギ三頭連れて、新居に向かう準備中。
・エキルとラビト 年齢が同じだから一緒に育つ子ら。12歳くらい。
チョコレートを作って配りたいということで、カカオから育てることにした。
森では育たないと言われているけれども、何事もすべきということで、植木鉢で育てる所から始めた。
冒険者からは色々話を聞きたい。見たことがないものがあるだろうし。
※OPで名前が出ているモルアモの巫女のファシオ、ナツキ・エルとハルシ・エルに用がある場合はプレイングに記載していただいて構いません。登場可能です。
マスターより
こんにちは、狐野径です。
ふと、コンテンツのラストの方なんだよなぁと不思議に思っています。
なぜかというと、私がOP出しているからです。自分の持っている話がそのころは終わって残らないからです。
とはいえ、そういう流れなのだということで、ありがたく思います。
大きな戦いも終わり、旅立つ人、そして、来る人、残る人……未来に向けて様々動き出しています。そんなある日の里の様子。
「アニエピカ」は中途からの参加でしたが、連動であれこれしたり、貴重な体験させていただきました。それらが進んだのは参加してくださる冒険者の方々がいたおかげです。
お礼をここで申し上げます。
よろしくお願いします。
リプレイ
●里へ向かう
シルヴィア・A・カペルはフィルエス大森林の灰火の氏族の里に行く前にモルアモに寄った。
先日、大森林でブドウを育てリーンエス王国カペル領でワインを作るという計画を立て、動き出している。その時に、モルアモに寄り、話をした。そのこともあり、今回、話をできればと思っていた。
族長によると、巫女のファシオは出かけているという。
シルヴィアは突然の訪問だから仕方がないと思う。
族長は「これからどちらまで?」と尋ねる。
「グレイオンス様のところで色々な話をしようと思っています」
「それならば、ファシオと会えるでしょう。その里に出かけていますから」
シルヴィアはお礼を言い、すれ違いにならないように急いだ。
トーラは世界樹の跡を訪れた後、灰火の氏族の、この里に寄った。
世界樹がいた場所では「力添えありがとうございました」とエーテルに還った世界樹に礼を述べた。
大森林の里であっても、冒険者を気にせず迎えてくれる雰囲気や、元からあるだろう穏やかさにほっと息を吐いた。
「久しぶり」
「無事でよかった」
と、声がした方を見ると、エキルとラビトが駆け寄ってきていた。
「お久しぶりです。おかげさまで無事です」
と、笑顔で応じた。
エキルとラビトは「カカオ、埋めたよ」や「植木鉢に」と近況報告。
「カカオ育成が始まったんですね」
「でも、まだ芽は出ないよ」
「埋めたばかりだしね」
トーラは「後で見に行きますね」という。
「何か、お仕事?」
「ボクたちもすることあったんだ」
「グレイオンスさんとお話してきます。そのあと、見せてくださいね」
トーラに言われて二人は大きくうなずく。
「ボクたちすることして急いで戻ってくる」
「おじいさんの家の近くで待ってて」
「分かりました」
トーラはグレイオンスの家に向かった。
イズレンディル・パラリムとヴィナスはシルヴィアと共にグレイオンスにワイン作りなどの話をする予定で来た。
大森林のどこの里とも変わらない作りだが、突然の来訪者であっても特に気にされないようだった。
エキルとラビトが走っていたが、二人に気付いて「こんにちは!」と近づいてくる。
イズレンディルとヴィナスも「こんにちは」と返す。
エキルとラビトは「冒険者?」や「おじいさんに用?」と問う。
問われた方は「おじいさん」が誰か考えるけれども、状況からすぐに理解できた。
イズレンディルが「そうですが、その前に友人を待ってます」と続けた。
ヴィナスは「まだ来ていないみたい」と見渡して言う。
「えっと、来る人はヒューマン?」
「そうだよ」
「なら、今日はお兄さんが初めだよ」
エキルとラビトは答えた。
「そうか。待たせてもらったいいかな?」
「問題ないよ」
「お話聞きたいけど」
「ぼくたちもしないといけないことがあるんだよ」
「残念だけど、またね」
子どもたちは手を振って走り去っていくので、二人は手を振り返す。
ヴィナスは不思議そうに、嬉しそうに「俺気にされてないよね」とつぶやく。
「ここの里はこれまでも冒険者が行き来してますし、むしろ好奇心旺盛で話聞きたい雰囲気でしたね」
「確かに。どんな話が聴きたいんだろう」
イズレンディルとヴィナスは色々話しながら待つ。
●一人目の客
トーラはグレイオンスの自宅の扉をノックした。
「こんにちは」
扉が勢いよく開いたので驚くが、ウル・ヘルバだったので納得した。
「グレイオンスさんはいらっしゃいますか?」
「いるぞ。あ、久しぶりだな」
「そうですね。先ほど、エキルさんとラビトさんに会いました」
「そうか。元気だろ」
「はい。あとでカカオ見せてもらいます」
ウルが扉をおさえてくれているので、トーラは中に入った。
室内は暖かい香りが漂っていた。
トーラは「お久しぶりです」と挨拶する。
グレイオンスは応じ、席を勧めた。
「無事な姿を見られてよかった」
トーラが座ると、茶と菓子が供される。
「ありがとうございます」
喉を潤して、トーラは帝都奪還の決戦の話をする。
「御存じでしょうけれど、征竜さまの最期の言葉は世界樹と同じものでした」
グレイオンスはトーラの話を静かに聞く。
「征竜さまも世界のためヒトを減らす決断をしたのでしょう。それを否定した私たちは征竜さまの分まで世界を慈しみ、護らないといけません。もちろん、世界樹の分も」
トーラの言葉を聞き「そうだな」とグレイオンスがうなずく。
世界を思っても、どこかでぶつかることもある。
「慈しむためには考えていかないとならない。どうやったら護れるか」
「考える……そうですね。征竜さまの考え、世界樹の考え……私たちの……色々ありますね」
世界のこと、近況等話した後、トーラは家を辞した。
ウルは里の中でファシオに会った。
「よく来るな」
「別にいいだろう。それより、引っ越しの準備は完了したのう?」
「まぁ荷物は元々ねぇからな」
ウルは三人の冒険者がこちらに来るのに気づく。
ファシオは「葡萄の話を持って来た者だのう」という。
言われたシルヴィアは微笑む。
「覚えていてくれて嬉しい。それと、先日のお礼と話をしたいと思ったから、会えてよかった」
「うむ。わしらも葡萄畑始めてみるつもりじゃ。簡単にはできんだろうが」
「しようと思ってくれなければ、進まないから嬉しい」
「うむ」
「そのことも含めてグレイオンス様のところで話をしようと思っているのだが、一緒にお茶を飲みながらどうだろうか?」
ファシオの顔色が変わるため、シルヴィアが心配そうに「何か不都合がある?」と問う。
事情を知っているウルが「こいつ、グレイが苦手」と言った瞬間、ファシオが「そうじゃない!」と怒る。
そこにトーラがやってくる。
「皆さん、こんにちは。グレイオンスさんに御用ですか?」
イズレンディルが「そうです。今、お時間あるようですか?」と答える。
「はい、私の後に予定がなければ」
ヴィナスは「ないことを祈るよ」とうなずく。
ファシオが怒りに任せて「行く! このようなことに負けたくない」と胸を張ってずんずん歩き出した。
心配そうなシルヴィアの顔を見て「別に、俺いない時、グレイと話してるし、苦手なだけであんたらが気にしなくていい」と慰めた。
知らなくて当然の話なのだから。
状況がわからず困惑するトーラにウルが説明しつつ、一行を見送った。
●ワインもゲームも世界の一つ
シルヴィアとイズレンディル、ヴィナスはグレイオンスの家に入った。
明るい屋内に、甘いにおいとハーブティのような香りが漂う。
「今日は色々人が来る日だ」
グレイオンスは淡々と言葉を紡ぐ。どこか楽し気だ。
シルヴィアたちは自己紹介をして、勧められたテーブルの席に着く。
イズレンディルは近況として大森林を出ることを伝える。
「私は王国北方辺境伯の外交官を務めることになりました。長く世界を回ってきましたが、新しい知見を得られそうです」
「これまでも冒険者として回っていたとしても、立場は随分変わる」
「そうですね。私は大森林が第一とお伝えしたにも関わらず、お誘いいただけました。根本が柔軟な方々ですね」
元々、森と外を行き来していたとしても立場が変わってくるだろう。
ヴィナスとシルヴィア、イズレンディルはラベルやワインなどをテーブルに並べた。
シルヴィアが丁寧に切り出す。
「本日伺いましたのは、大森林と王国の交流促進を目指したワインのことです」
気を引き締めて、丁寧に伝える。
「それを行おうと思ったきっかけですが……」
イズレンディルが語尾を引き取り「啓示がなくなり、自分たちで決断しなくてはならなくなりました」と話す。大森林のエルフだからこそ考えることがあると伝える。
啓示への頼り方は氏族や里によって差はある。それでも、頼れるものがなくなったというのは大きい。
「決断のためには世界の情報が必要で、得るためには交流が必要です」
最近、里の周辺やこちらまで出かけるファシオがうなずいている。
モルアモや先ほど見たような快活さがないファシオに、シルヴィアは「苦手」の意味を想像した。思いっきりしゃべったら悪いとかそういう遠慮もあるのだろう、と。
イズレンディルは交流と特産品について話を続け、一度締める。
「それで……王国のカペル領とワインを作るという話になりました。それを特産品として、経済的なつながりもできますし、そこから継続的な交流の仕組みになります」
グレイオンスが「なるほど」と顎を引いた。
「これからの世代が困ることないような仕組みを作ります。グレイオンスさんが冒険者ギルドに働きかけたように。私もエラトゥーン都市同盟内に交流できる場所を作りました。あくまで私設ですが、誰かの支えや交流拠点にできればと思います」
シルヴィアは「ワインを作る事業は王家から許可を得ています」と告げ、許可を得た理由も簡単に説明した。王国の事情というのも伝えられるなら伝わる方が、協力できる関係によいはずだ。
ヴィナスが「カードゲームをしませんか?」と声を掛ける。
「シンプルなルールでカペルに住まう者は老若男女問わず気軽に遊んでいます。いかがでしょうか。カペルの人たちの……外の空気を知る手助けになるかもしれません」
カードゲーム「ROSE&SEED」のためのカードを取り出す。
ヴィナスが用意したカードセットは大森林とカペルの懸け橋になるように描かれた図案に物語性がある特別仕様。
「幾人で行うものか?」
と、グレイオンスに問われ「二人で行います」とヴィナスは説明を始めた。
「五枚一組カードです。その中からカードを出し合って強さを競い、三回先に勝てば勝ちです」
カードを並べながら、その説明をする。
「これが『種と姫』、これが『苗と農民』、『葉と商人』『蕾と魔術師』『薔薇と騎士』です。並べた順に強いです。ただし、『薔薇と騎士』は『種と姫』には勝てません」
グレイオンスが理解したとうなずく。
「『薔薇と騎士』以外には弱い『種と姫』、『種と姫』以外には最強の『薔薇と騎士』をどこで出すかの作戦も重要です」
シルヴィアとヴィナスでデモンストレーションをする。
五枚一組のカードを手に、ゲーム開始。
シルヴィアとヴィナスが交互に勝ち、勝敗は五回目にもつれ込む。
ヴィナスが頭を抱え、シルヴィアが微笑む。
次にグレイオンスと対戦する。
一回目、二回目はヴィナスが勝つが、三回目でグレイオンス、四回目をヴィナスが取り勝敗が決まる。
「これなら、私でもできるし、子らもできるだろう」
「さっき俺たちがあった子たちでしょうか。俺がいても気にしないで話してくれました」
そのような会話をしつつ、対戦相手を変えてゲームを楽しんだ。
その中でファシオにするかと問うが「今はいい」とかたくなに逃げる。興味は持っているようだ。
ヴィナスはカードをしまいながら、
「説明書もついています。皆で遊んで欲しいです」
と、贈呈する。
「ファシオは覚えているだろうから、ウルや子らと遊んでくれればいい」
グレイオンスに言われ、小刻みにファシオはうなずいた。
ワインの話に戻り、シルヴィアが説明を始めた。
「こちらが大森林の琥珀の試作品第1号です。大森林をイメージしたアンバーワインです。大森林の葡萄畑とカペルの醸造所の合作です」
ヴィナスは「これが大森林の琥珀のラベルのサンプルです」と見せる。
ラベルには薔薇モチーフの飾り窓に、大森林に小鳥や小動物がいる風景が描かれる。
その説明の後、シルヴィアがもう一つのワインの説明をする。
「こちらが花領の薔薇――カペルをイメージしたロゼワインです。こちらも、大森林の葡萄畑とカペルの醸造所との合作になります。こちらがラベルです」
ラベルには木々に小鳥や小動物がいる飾り窓に、花と湖のカペルの風景が描かれている。
「瓶の中身のワインは試作の段階です。今後、改良していきます。また、ラベルもまだサンプルですが」
「イメージはしやすくなる」
「そういっていただけると嬉しいです。ワインですが、いずれも試飲できますので、よろしければ」
グレイオンスとファシオは興味を示した。
ヴィナスがワインのことについて補足する。
「記念日ワインも考えています。また、特別な包みとして、ワイン染めの布を使ったり、と、多くの者が関われるように考えてます」
そして、シルヴィアが進展具合を伝える。
「販路は王国内だけではなく、帝国オルセンの太守から取引を前向きにご検討いただいています。ワインを卸す代わりに寒冷地特有の樹木――良質な木材として提供される予定です。酒造りに必要な資材だけでなく、大森林の復興にも使えるはずです」
「色々考えてもらい、話を聞いたものは喜ぶだろう」
「そういってもらえると嬉しいです。少数生産とはいえ葡萄がなければならないため、協力してもらえる里や氏族を探していくことは続きます」
「私からも声はかけてみよう。知り合いに、興味を持ちそうな人もいるから」
グレイオンスが微笑む。
シルヴィアとイズレンディル、ヴィナスは「ありがとうございます」と礼を述べた。
ワインの試飲をしつつ、森のこと、外のことなど色々話をする。
ヴィナスは帰りがけ、試作品やゲーム以外の土産として、茶葉の入った箱も渡した。
「こちらはアーダベルト商会で販売されているハーブティー『明日への行進』です。大森林の外でどういうものが扱われているか、試していただければ」
グレイオンスが「大森林の者たちを気遣ってくれて、その一人として礼を述べよう」と頭を下げた。
●植木鉢のカカオ
トーラが待っていると、エキルとラビトが走り寄って来た。
「カカオ、植木鉢に埋めたんだ」
「育つかどうかわからないけど、やってみないと分からないし」
「種って埋めたから絶対出てくるわけじゃないんだよね」
「心配だけど、あんまり動かさないようにして様子見てるんだ」
口々に言う。
トーラはそれを聞き終わったところで「実際見てみましょう」と言った。
三人は植木鉢が置いてあるところに向かった。
日当たりが良く、風も通る場所に植木鉢が二つ置いてあった。
まだ何も出ていない。
トーラは園芸の知識で見て、植物共感で何か得られないか試みる。
カカオの種は可も不可もない状況に感じられた。眠っているのか、これから目覚めるのか……悪い状況ではないけれども、すぐに変化は起きないかもしれない……そんな感じ。
「そうですね……発芽したいって思う何かが足りないのかもしれません」
「暑さかな」
「水気かな?」
「温室が難しいですから、それに似たことができれば、いいと思います」
ちょっと濃い色の植木鉢に触れると、ぬくもりがはっきりとあった。
「この植木鉢温かいですね。太陽の光のお陰ですね」
エキルとラビトは何かひらめいたようだ。
「そっか、ここを大きくして、かぶせれば」
「お日様も当たるね」
「試してみることはいいことですよ」
トーラが言うと、二人は「植木鉢入手して試すよ!」と元気よく声をそろえた。
「チョコレート、楽しみにしていますよ?」
「もちろんだよ!」
「ボクたち、みんなに配りたいもの」
「協力してくれた人もだよ」
エキルとラビトがトーラにお礼を述べる。
「とりあえず、キツネさんが生きている間って話はしてる」
「エルフの命で考えると駄目だから」
二人は一応色々考えている。
「そうですね」
トーラは笑った。
シルヴィアとイズレンディル、ヴィナスはグレイオンスの家を辞し、里を歩く。
ファシオは預かったカードをもって、ウルを探しに行った。
エキルとラビトに見送られたトーラが一行に気付く。
皆、厳しい表情はない。
目が合えば微笑み合える、そんな空気があった。
里の穏やかな日常。
冒険者たちの日常の一コマ。
また会うのはワインができたとき、チョコレートができたとき――いや、その前だって会えるだろう。
行き来を阻むものがない限り。
おしまい
シルヴィア・A・カペルはフィルエス大森林の灰火の氏族の里に行く前にモルアモに寄った。
先日、大森林でブドウを育てリーンエス王国カペル領でワインを作るという計画を立て、動き出している。その時に、モルアモに寄り、話をした。そのこともあり、今回、話をできればと思っていた。
族長によると、巫女のファシオは出かけているという。
シルヴィアは突然の訪問だから仕方がないと思う。
族長は「これからどちらまで?」と尋ねる。
「グレイオンス様のところで色々な話をしようと思っています」
「それならば、ファシオと会えるでしょう。その里に出かけていますから」
シルヴィアはお礼を言い、すれ違いにならないように急いだ。
トーラは世界樹の跡を訪れた後、灰火の氏族の、この里に寄った。
世界樹がいた場所では「力添えありがとうございました」とエーテルに還った世界樹に礼を述べた。
大森林の里であっても、冒険者を気にせず迎えてくれる雰囲気や、元からあるだろう穏やかさにほっと息を吐いた。
「久しぶり」
「無事でよかった」
と、声がした方を見ると、エキルとラビトが駆け寄ってきていた。
「お久しぶりです。おかげさまで無事です」
と、笑顔で応じた。
エキルとラビトは「カカオ、埋めたよ」や「植木鉢に」と近況報告。
「カカオ育成が始まったんですね」
「でも、まだ芽は出ないよ」
「埋めたばかりだしね」
トーラは「後で見に行きますね」という。
「何か、お仕事?」
「ボクたちもすることあったんだ」
「グレイオンスさんとお話してきます。そのあと、見せてくださいね」
トーラに言われて二人は大きくうなずく。
「ボクたちすることして急いで戻ってくる」
「おじいさんの家の近くで待ってて」
「分かりました」
トーラはグレイオンスの家に向かった。
イズレンディル・パラリムとヴィナスはシルヴィアと共にグレイオンスにワイン作りなどの話をする予定で来た。
大森林のどこの里とも変わらない作りだが、突然の来訪者であっても特に気にされないようだった。
エキルとラビトが走っていたが、二人に気付いて「こんにちは!」と近づいてくる。
イズレンディルとヴィナスも「こんにちは」と返す。
エキルとラビトは「冒険者?」や「おじいさんに用?」と問う。
問われた方は「おじいさん」が誰か考えるけれども、状況からすぐに理解できた。
イズレンディルが「そうですが、その前に友人を待ってます」と続けた。
ヴィナスは「まだ来ていないみたい」と見渡して言う。
「えっと、来る人はヒューマン?」
「そうだよ」
「なら、今日はお兄さんが初めだよ」
エキルとラビトは答えた。
「そうか。待たせてもらったいいかな?」
「問題ないよ」
「お話聞きたいけど」
「ぼくたちもしないといけないことがあるんだよ」
「残念だけど、またね」
子どもたちは手を振って走り去っていくので、二人は手を振り返す。
ヴィナスは不思議そうに、嬉しそうに「俺気にされてないよね」とつぶやく。
「ここの里はこれまでも冒険者が行き来してますし、むしろ好奇心旺盛で話聞きたい雰囲気でしたね」
「確かに。どんな話が聴きたいんだろう」
イズレンディルとヴィナスは色々話しながら待つ。
●一人目の客
トーラはグレイオンスの自宅の扉をノックした。
「こんにちは」
扉が勢いよく開いたので驚くが、ウル・ヘルバだったので納得した。
「グレイオンスさんはいらっしゃいますか?」
「いるぞ。あ、久しぶりだな」
「そうですね。先ほど、エキルさんとラビトさんに会いました」
「そうか。元気だろ」
「はい。あとでカカオ見せてもらいます」
ウルが扉をおさえてくれているので、トーラは中に入った。
室内は暖かい香りが漂っていた。
トーラは「お久しぶりです」と挨拶する。
グレイオンスは応じ、席を勧めた。
「無事な姿を見られてよかった」
トーラが座ると、茶と菓子が供される。
「ありがとうございます」
喉を潤して、トーラは帝都奪還の決戦の話をする。
「御存じでしょうけれど、征竜さまの最期の言葉は世界樹と同じものでした」
グレイオンスはトーラの話を静かに聞く。
「征竜さまも世界のためヒトを減らす決断をしたのでしょう。それを否定した私たちは征竜さまの分まで世界を慈しみ、護らないといけません。もちろん、世界樹の分も」
トーラの言葉を聞き「そうだな」とグレイオンスがうなずく。
世界を思っても、どこかでぶつかることもある。
「慈しむためには考えていかないとならない。どうやったら護れるか」
「考える……そうですね。征竜さまの考え、世界樹の考え……私たちの……色々ありますね」
世界のこと、近況等話した後、トーラは家を辞した。
ウルは里の中でファシオに会った。
「よく来るな」
「別にいいだろう。それより、引っ越しの準備は完了したのう?」
「まぁ荷物は元々ねぇからな」
ウルは三人の冒険者がこちらに来るのに気づく。
ファシオは「葡萄の話を持って来た者だのう」という。
言われたシルヴィアは微笑む。
「覚えていてくれて嬉しい。それと、先日のお礼と話をしたいと思ったから、会えてよかった」
「うむ。わしらも葡萄畑始めてみるつもりじゃ。簡単にはできんだろうが」
「しようと思ってくれなければ、進まないから嬉しい」
「うむ」
「そのことも含めてグレイオンス様のところで話をしようと思っているのだが、一緒にお茶を飲みながらどうだろうか?」
ファシオの顔色が変わるため、シルヴィアが心配そうに「何か不都合がある?」と問う。
事情を知っているウルが「こいつ、グレイが苦手」と言った瞬間、ファシオが「そうじゃない!」と怒る。
そこにトーラがやってくる。
「皆さん、こんにちは。グレイオンスさんに御用ですか?」
イズレンディルが「そうです。今、お時間あるようですか?」と答える。
「はい、私の後に予定がなければ」
ヴィナスは「ないことを祈るよ」とうなずく。
ファシオが怒りに任せて「行く! このようなことに負けたくない」と胸を張ってずんずん歩き出した。
心配そうなシルヴィアの顔を見て「別に、俺いない時、グレイと話してるし、苦手なだけであんたらが気にしなくていい」と慰めた。
知らなくて当然の話なのだから。
状況がわからず困惑するトーラにウルが説明しつつ、一行を見送った。
●ワインもゲームも世界の一つ
シルヴィアとイズレンディル、ヴィナスはグレイオンスの家に入った。
明るい屋内に、甘いにおいとハーブティのような香りが漂う。
「今日は色々人が来る日だ」
グレイオンスは淡々と言葉を紡ぐ。どこか楽し気だ。
シルヴィアたちは自己紹介をして、勧められたテーブルの席に着く。
イズレンディルは近況として大森林を出ることを伝える。
「私は王国北方辺境伯の外交官を務めることになりました。長く世界を回ってきましたが、新しい知見を得られそうです」
「これまでも冒険者として回っていたとしても、立場は随分変わる」
「そうですね。私は大森林が第一とお伝えしたにも関わらず、お誘いいただけました。根本が柔軟な方々ですね」
元々、森と外を行き来していたとしても立場が変わってくるだろう。
ヴィナスとシルヴィア、イズレンディルはラベルやワインなどをテーブルに並べた。
シルヴィアが丁寧に切り出す。
「本日伺いましたのは、大森林と王国の交流促進を目指したワインのことです」
気を引き締めて、丁寧に伝える。
「それを行おうと思ったきっかけですが……」
イズレンディルが語尾を引き取り「啓示がなくなり、自分たちで決断しなくてはならなくなりました」と話す。大森林のエルフだからこそ考えることがあると伝える。
啓示への頼り方は氏族や里によって差はある。それでも、頼れるものがなくなったというのは大きい。
「決断のためには世界の情報が必要で、得るためには交流が必要です」
最近、里の周辺やこちらまで出かけるファシオがうなずいている。
モルアモや先ほど見たような快活さがないファシオに、シルヴィアは「苦手」の意味を想像した。思いっきりしゃべったら悪いとかそういう遠慮もあるのだろう、と。
イズレンディルは交流と特産品について話を続け、一度締める。
「それで……王国のカペル領とワインを作るという話になりました。それを特産品として、経済的なつながりもできますし、そこから継続的な交流の仕組みになります」
グレイオンスが「なるほど」と顎を引いた。
「これからの世代が困ることないような仕組みを作ります。グレイオンスさんが冒険者ギルドに働きかけたように。私もエラトゥーン都市同盟内に交流できる場所を作りました。あくまで私設ですが、誰かの支えや交流拠点にできればと思います」
シルヴィアは「ワインを作る事業は王家から許可を得ています」と告げ、許可を得た理由も簡単に説明した。王国の事情というのも伝えられるなら伝わる方が、協力できる関係によいはずだ。
ヴィナスが「カードゲームをしませんか?」と声を掛ける。
「シンプルなルールでカペルに住まう者は老若男女問わず気軽に遊んでいます。いかがでしょうか。カペルの人たちの……外の空気を知る手助けになるかもしれません」
カードゲーム「ROSE&SEED」のためのカードを取り出す。
ヴィナスが用意したカードセットは大森林とカペルの懸け橋になるように描かれた図案に物語性がある特別仕様。
「幾人で行うものか?」
と、グレイオンスに問われ「二人で行います」とヴィナスは説明を始めた。
「五枚一組カードです。その中からカードを出し合って強さを競い、三回先に勝てば勝ちです」
カードを並べながら、その説明をする。
「これが『種と姫』、これが『苗と農民』、『葉と商人』『蕾と魔術師』『薔薇と騎士』です。並べた順に強いです。ただし、『薔薇と騎士』は『種と姫』には勝てません」
グレイオンスが理解したとうなずく。
「『薔薇と騎士』以外には弱い『種と姫』、『種と姫』以外には最強の『薔薇と騎士』をどこで出すかの作戦も重要です」
シルヴィアとヴィナスでデモンストレーションをする。
五枚一組のカードを手に、ゲーム開始。
シルヴィアとヴィナスが交互に勝ち、勝敗は五回目にもつれ込む。
ヴィナスが頭を抱え、シルヴィアが微笑む。
次にグレイオンスと対戦する。
一回目、二回目はヴィナスが勝つが、三回目でグレイオンス、四回目をヴィナスが取り勝敗が決まる。
「これなら、私でもできるし、子らもできるだろう」
「さっき俺たちがあった子たちでしょうか。俺がいても気にしないで話してくれました」
そのような会話をしつつ、対戦相手を変えてゲームを楽しんだ。
その中でファシオにするかと問うが「今はいい」とかたくなに逃げる。興味は持っているようだ。
ヴィナスはカードをしまいながら、
「説明書もついています。皆で遊んで欲しいです」
と、贈呈する。
「ファシオは覚えているだろうから、ウルや子らと遊んでくれればいい」
グレイオンスに言われ、小刻みにファシオはうなずいた。
ワインの話に戻り、シルヴィアが説明を始めた。
「こちらが大森林の琥珀の試作品第1号です。大森林をイメージしたアンバーワインです。大森林の葡萄畑とカペルの醸造所の合作です」
ヴィナスは「これが大森林の琥珀のラベルのサンプルです」と見せる。
ラベルには薔薇モチーフの飾り窓に、大森林に小鳥や小動物がいる風景が描かれる。
その説明の後、シルヴィアがもう一つのワインの説明をする。
「こちらが花領の薔薇――カペルをイメージしたロゼワインです。こちらも、大森林の葡萄畑とカペルの醸造所との合作になります。こちらがラベルです」
ラベルには木々に小鳥や小動物がいる飾り窓に、花と湖のカペルの風景が描かれている。
「瓶の中身のワインは試作の段階です。今後、改良していきます。また、ラベルもまだサンプルですが」
「イメージはしやすくなる」
「そういっていただけると嬉しいです。ワインですが、いずれも試飲できますので、よろしければ」
グレイオンスとファシオは興味を示した。
ヴィナスがワインのことについて補足する。
「記念日ワインも考えています。また、特別な包みとして、ワイン染めの布を使ったり、と、多くの者が関われるように考えてます」
そして、シルヴィアが進展具合を伝える。
「販路は王国内だけではなく、帝国オルセンの太守から取引を前向きにご検討いただいています。ワインを卸す代わりに寒冷地特有の樹木――良質な木材として提供される予定です。酒造りに必要な資材だけでなく、大森林の復興にも使えるはずです」
「色々考えてもらい、話を聞いたものは喜ぶだろう」
「そういってもらえると嬉しいです。少数生産とはいえ葡萄がなければならないため、協力してもらえる里や氏族を探していくことは続きます」
「私からも声はかけてみよう。知り合いに、興味を持ちそうな人もいるから」
グレイオンスが微笑む。
シルヴィアとイズレンディル、ヴィナスは「ありがとうございます」と礼を述べた。
ワインの試飲をしつつ、森のこと、外のことなど色々話をする。
ヴィナスは帰りがけ、試作品やゲーム以外の土産として、茶葉の入った箱も渡した。
「こちらはアーダベルト商会で販売されているハーブティー『明日への行進』です。大森林の外でどういうものが扱われているか、試していただければ」
グレイオンスが「大森林の者たちを気遣ってくれて、その一人として礼を述べよう」と頭を下げた。
●植木鉢のカカオ
トーラが待っていると、エキルとラビトが走り寄って来た。
「カカオ、植木鉢に埋めたんだ」
「育つかどうかわからないけど、やってみないと分からないし」
「種って埋めたから絶対出てくるわけじゃないんだよね」
「心配だけど、あんまり動かさないようにして様子見てるんだ」
口々に言う。
トーラはそれを聞き終わったところで「実際見てみましょう」と言った。
三人は植木鉢が置いてあるところに向かった。
日当たりが良く、風も通る場所に植木鉢が二つ置いてあった。
まだ何も出ていない。
トーラは園芸の知識で見て、植物共感で何か得られないか試みる。
カカオの種は可も不可もない状況に感じられた。眠っているのか、これから目覚めるのか……悪い状況ではないけれども、すぐに変化は起きないかもしれない……そんな感じ。
「そうですね……発芽したいって思う何かが足りないのかもしれません」
「暑さかな」
「水気かな?」
「温室が難しいですから、それに似たことができれば、いいと思います」
ちょっと濃い色の植木鉢に触れると、ぬくもりがはっきりとあった。
「この植木鉢温かいですね。太陽の光のお陰ですね」
エキルとラビトは何かひらめいたようだ。
「そっか、ここを大きくして、かぶせれば」
「お日様も当たるね」
「試してみることはいいことですよ」
トーラが言うと、二人は「植木鉢入手して試すよ!」と元気よく声をそろえた。
「チョコレート、楽しみにしていますよ?」
「もちろんだよ!」
「ボクたち、みんなに配りたいもの」
「協力してくれた人もだよ」
エキルとラビトがトーラにお礼を述べる。
「とりあえず、キツネさんが生きている間って話はしてる」
「エルフの命で考えると駄目だから」
二人は一応色々考えている。
「そうですね」
トーラは笑った。
シルヴィアとイズレンディル、ヴィナスはグレイオンスの家を辞し、里を歩く。
ファシオは預かったカードをもって、ウルを探しに行った。
エキルとラビトに見送られたトーラが一行に気付く。
皆、厳しい表情はない。
目が合えば微笑み合える、そんな空気があった。
里の穏やかな日常。
冒険者たちの日常の一コマ。
また会うのはワインができたとき、チョコレートができたとき――いや、その前だって会えるだろう。
行き来を阻むものがない限り。
おしまい
マスターコメント
ご参加ありがとうございました。無事出発出来て安堵しました。本当、ありがとうございました。
ファシオがグレイオンス苦手は以前からあるため、あのような流れになりました。本人は楽しんでます、冒険者たちは好きでグレイオンスが苦手なだけで。族長たちみたいに適当に話せる雰囲気がないから苦手なのです。ただ、それだけ。
カードゲームの勝敗ですが、六面ダイス二個振って出しました。
時間の流れを意識し、狂言回しとしてウルをしれっと投入してます……字数に困らないので。
なお、チョコレートができるのはいつの日か。
さて、狐野径のところのNPCのラストシナリオとなりました。
色々ありましたが、こうして、締めシナリオを迎えられたのは皆様のお陰です。
ご縁がありましたことを喜び、今後もどこかでお会いすることが会うかもしれません。
笑顔でいられるよう、お祈り申し上げます。
では、ごきげんよう!
イベントシナリオ易しい 報酬:無し4 / 4〜25人
2024年03月26日 10時23分08秒 公開
大成功
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