【祝祭】劇場で勝利と平和を味わおう
夜月天音
コメント 4
シナリオID:3459
オープニング
幽界樹や征竜らが滅びた事で世界は取り戻した平和に歓喜し、世界各地で祭りが開催され笑顔に溢れていた。
このリーンエス王国の首都グランスパーダの一角に佇む小さな劇場『アクス』も朝から大忙しであった。
その様子はというと、
「今夜、戦勝祝いの特別公演をしますよ! 音楽や演劇でこの平和を噛み締めましょう! 是非、鑑賞しませんか?」
「同時に本日限りの出演者とお手伝いも募集しています。色んな舞台衣装を着たり、様々な楽器を奏でたり、主役でも脇役でも好きな役を演じたり、全力で勝利と平和を味わいましょう!」
「演者として舞台に立てるのは、1演目だけですが、冒険者さんの経験を是非、舞台で見せて下さい! 仕事や出番以外は観客席以外に舞台袖で演目を間近に見る事も出来ますよ!」
劇場関係者達は笑顔で、宣伝と求人募集を行っていた。
「手元に置く冒険者を品定めに良さそうだ」
「冒険者さんと一緒にお仕事が出来るなんて」
「今日は祝い倒すぞ!」
宣伝を聞いた人々の反応は、すこぶる良いものであった。
宣伝により無事に人手を確保した劇場は、一際忙しいひとときを迎えるのであった。
このリーンエス王国の首都グランスパーダの一角に佇む小さな劇場『アクス』も朝から大忙しであった。
その様子はというと、
「今夜、戦勝祝いの特別公演をしますよ! 音楽や演劇でこの平和を噛み締めましょう! 是非、鑑賞しませんか?」
「同時に本日限りの出演者とお手伝いも募集しています。色んな舞台衣装を着たり、様々な楽器を奏でたり、主役でも脇役でも好きな役を演じたり、全力で勝利と平和を味わいましょう!」
「演者として舞台に立てるのは、1演目だけですが、冒険者さんの経験を是非、舞台で見せて下さい! 仕事や出番以外は観客席以外に舞台袖で演目を間近に見る事も出来ますよ!」
劇場関係者達は笑顔で、宣伝と求人募集を行っていた。
「手元に置く冒険者を品定めに良さそうだ」
「冒険者さんと一緒にお仕事が出来るなんて」
「今日は祝い倒すぞ!」
宣伝を聞いた人々の反応は、すこぶる良いものであった。
宣伝により無事に人手を確保した劇場は、一際忙しいひとときを迎えるのであった。
解説
劇場にて、勝利と平和の喜びを存分に表現して下さい。
出演者、観客、裏方など、お好きな方法で、活動して下さい。
活動時間は夜になります。
【劇場『アクス』について】
規模は小さいですが、飲食物やグッズの販売スペースなど、客に向けた施設も含め設備はしっかりと整っています。
衣装や化粧道具、楽器など活動に必要な道具は劇場から借りる事が出来ます。
【披露する演目について】
劇、朗読、演奏、大道芸など、観客を楽しませたいという思いがあれば、披露する演目と順番など好きに選ぶ事は出来ますが、出番は1回だけになります。同じ順番を希望する方が複数いた場合は夜月の方で決めさせて頂きます。
(例)
順番は最後で派手なドレスを借りて明るく堂々と歌って勝利を祝う。
順番はお任せで冒険譚を演じる。
※活動したい順番や交流したい劇場関係者や利用者や利用したい施設など活動に必要な事がありましたら、プレイングに記載をお願いします。
※公式NPCとは交流出来ません。
マスターより
オープニングを読んで頂き、ありがとうございます。
演じたり奏でたり鑑賞したりグッズを販売したりと、忙しくも平和な劇場でのひとときを味わってみて下さい。
リプレイ
良く晴れた夜空の下、リーンエス王国の首都グランスパーダの一角に佇む小さな劇場『アクス』では、勝利と取り戻した平和を祝う舞台で賑わっていた。冒険者を巻き込んで。
公演が始まる前。
「出演者が当日着ていらした衣装のレプリカを量産して販売するのはいかがでしょうか? お子さん向けに、舞台の登場人物になりきるセットなんて作ったら喜ぶと思いません?」
レラ・F・ギュンターは、劇場の責任者にとある提案を持ち掛けていた。
責任者は、劇場への人気と収入面から提案を受け入れてくれた。
という事で、
「王子様やお姫様なんてきっと定番ですよね」
話は量産するレプリカ衣装のデザインだ。
「ギュンタはですねえ、ドラゴンになりたいですね! がおーってやりたいです。かーいらしー上にぱわふるなんて最強ですね!」
定番の次に自身の好みを手振り身振りで伝えた。
デザインは受け入れられ、すぐに作製に入り公演終了後に販売となった。
話し合いが終わった所で、
「いらっしゃいませー、本日の舞台の出演者さんのぬいぐるみはいかがですかー?」
ギュンターは販売スペースにて、ぬいぐるみの販売に取り掛かった。
そのぬいぐるみの出来は、
「どれも欲しいなぁ」
「お隣の子は独特な愛敬があるわね」
「もしかして、あなたが作ったのかしら?」
普通に可愛くて客達の目を楽しませる程の『裁縫』の技術だ。当然、ぬいぐるみのモデルになった出演者には許可を貰っている。
「はい、ギュンタが作ったのですよ! 日頃より培いましたすぺしゃるな技術をたくさん活かしているのですよ! ギュンタは旅するぬいぐるみ屋さんなのです」
ギュンターは誇らしげに、客の相手をする。
「お隣の子達は、ギュンタが普段作ってますぬいぐるみですよ」
もちろん、劇場関係以外の物も販売している。
(おひとりでも善き方のところへお渡しできたらよろしいのですけど)
そうして賑わっている中、
「ギュンタさん、ぬいぐるみを買いに来ました」
「お店の調子はどうだい」
ネーヴェ・グラヌローザとシルヴィア・A・カペルがぬいぐるみを買いに現れた。
「いらっしゃいませー! 待っていたですよー!」
ギュンターは笑顔で迎えた後、2人そっくりのぬいぐるみを差し出した。
それぞれ受け取ったネーヴェとシルヴィアは、
「ふふ、自分がこんな風になっているのを見るのは少しくすぐったいですわね」
「今日の素敵な記念になったよ」
ぬいぐるみの可愛らしさ、ギュンターの『人形作成』による精緻さに感心した。
「作るからにはご本人に似せつつもきゅーとですぺしゃるな逸品を目指したのですよー」
ギュンターは、ぬいぐるみに対する熱意を語った。
「実在人物に寄せますので普段のギュンタの作風とは違いますけども、これはこれで老若男女どなたにも愛されるかーいらしーものになったかと」
2人の反応に喜んで声に興奮を帯びつつ。
「何といっても、いつでも持って歩いて頂けるよに大きさも工夫したのですよ!」
一番の押しポイントにはドヤ顔で。
「確かに持ち運びがしやすい大きさだ」
シルヴィアは手にあるぬいぐるみからひしひしと、手軽さを実感する。
「これも、ええと、推し活? とかゆのでしたっけ? いつでもどこでもいっしょに連れ歩いて頂けたらと」
ギュンターのその工夫は持ち主とぬいぐるみ双方にとって、素敵な事であった。
「色んな工夫が詰まったすごいものですわね!」
ネーヴェはぬいぐるみを隅々まで見つめる。
こうして買い物を終えた2人は舞台へと急いだ。
「舞台、頑張ってくださいねー!」
ギュンターは2人を元気に見送った後、ぬいぐるみの販売に忙しくした。公演が始まり忙しさがひと段落すると、観客として覗きに行った。
「シルヴィ、どこに行っていたんだ」
舞台袖で出番に備えていたキオルティスは、同じく出演者である知った顔がいつの間にか消えていた事を訊ねた。
「ぬいぐるみの購入に行っていたんだ」
シルヴィアは、自分そっくりの可愛らしいぬいぐるみを見せた。
「出番まで少し時間がありましたので」
隣にいたネーヴェも、ぬいぐるみを愛でつつ言った。
「2人の可愛さをばっちり再現しているね……いい記念になりそうだ」
キオルティスは2人のぬいぐるみをまじまじ見ながら、相手が女性とあってか褒め言葉も抜かりなく添えて。
「そうだろう」
シルヴィアは、口元を楽し気に歪めた。
「ふふふ、ありがとうございます」
ネーヴェは、褒め言葉をありがたく受け取った。
その時、出番の知らせが届き、
「んじゃ、行って来る」
キオルティスは気を引き締め、舞台袖を抜けて舞台へ。
「あぁ、ここで見学させて貰うよ」
「頑張って下さいませ」
シルヴィアとネーヴェの励ましを背に受けながら。
(さて、吟遊詩人として、勝利を祝うかな)
照明紋具が自身を白く照らす中、キオルティスは観客席に一礼し、
「♪♪」
『演奏』の技術を活かし正確に流麗に竪琴を奏で、ステップを踏みならしてアンクルベルを鳴らす。
紡ぐのは、大きな戦いに勝利した寿ぎの詩。明るく勇ましい音色にのせて。
「怯えなくていい 怖がらなくていい」
舞う度に身軽な服の上に羽織ったシャルガネ風の金色でファーの付いた女物の羽織がひらひらと靡き、軌跡を残す。
「キミが嬉しいことは何」
竪琴は主旋律を絡めた伴奏をメインにして、主旋律をほぼ歌で賄う。ただ歌うのではなく歌詞に合わせて声音を変えるという見事な『歌唱』の技術も見せつける。
「楽しんじゃっていい 気にしないでいい」
元気一杯の歌声に正確な足さばきで美しく鳴るアンクルベルは、8拍子を正確に刻む。
「キミがやりたいことは何」
髪と胸を彩るチューベローズまたは月下香の花が、白い照明を受けて煌めく。
間接照明が演出を引き継ぎ、
「この幸せを両手いっぱいに」
優しい歌声と共に色とりどりの照明がくるくると回り、広い舞台を照らす。
「声色がこんなにも変わるなんて、凄い」
「聞いてて、元気になる歌ね」
「これは勝利を祝うにはぴったりね」
観客達は、キオルティスの舞台に吸い込まれて、すっかり夢中だ。
「明るくて勇ましくて、踊りたくなりますねー」
ギュンターも他の観客同様に楽しんでいた。
「この当たり前を胸いっぱいに」
キオルティスは、指先から足先に至るまで動きは細やかでミス1つ無い。ベルの音は歌詞を表現するかのように、軽やかに刻む。
「新しい世界を紡ぐんだ
さぁ 始まってるよ
乗り遅れちゃダメさ」
希望に満ちた歌声と巡る色彩豊かな光を追いかける度に、髪と胸に飾ったチューベローズから発せられる濃厚な甘さを含んだ艶やかな大人の香りが舞台を満たしていく。
「そう」
照明が回転する中、キオルティスは胸を飾るチューベローズを手に取った。
そして、
「主人公はキミ」
照明紋具が客席を広く明るく照らすと同時に、手に持ったチューベローズを客席に放り投げた。
最後の音が舞台に響き溶け沈んだ所で、
「照明が消えた」
「……終わった?」
「あぁあ、何て力強い歌なのかしら」
突然の暗転。客達は驚き、舞台を注視する。
(残り香すら残さないように)
キオルティスは『ハイディング』を使い、エーテルを体の周囲に張り巡らせ、 認識を妨げて観客席から消えたように見せつつ、静かに舞台袖へ。
曲の余韻や自身の存在を残り香のひとかけらも残さぬように、闇に沈んで消えるように。
「お疲れ様」
「素敵な歌でしたわ」
シルヴィアとネーヴェは、舞台袖に戻って来たキオルティスを労った。
「ありがとう。2人共、頑張って」
キオルティスは労いをありがたく受け取り、2人を応援した。
同時に出番が知らされ、
「行こうか、ネーヴェ」
「はい、行きましょう、シルヴィアさん」
シルヴィアとネーヴェは舞台袖を抜け、舞台へ。
暗転から光が戻ると、共に現れたのは酒場だ。
「おかわりをくれー」
「勝利の酒は美味しいな」
「『踊る小熊亭』でこのまま宴会だー」
勝利と平和を喜び、酒を飲み騒ぐ客達の声。劇場のダンサーである。
その中に、
「平和を取り戻した人々の表情は何とも晴れやかだ」
カクテル片手に客達の騒ぎを見守るシルヴィアの姿。
「♪♪」
客の1人が笛を演奏し始めた。
それをきっかけに、
「よっしゃ、おれも」
「私も」
「おいらも」
酔いと興が乗った冒険者達が次々と歌や踊りで加わる。
観客達は楽しそうに手拍子をする。
「…………まさに一期一会」
どこの誰とも知らぬ人達が共に喜ぶひとときに、幸せを感じるシルヴィア。
「しかし……」
ふとよぎる切なさに表情が曇る。
シルヴィアはフィドルを構え、
「♪♪」
余すことなく『演奏』の技術を発揮する。切なさを吹き飛ばすような力強く本日のテーマである祝福を込めて。
(帝国決戦を生き残った2人の冒険者が、それぞれの故郷に帰る前夜に馴染みの酒場で酌み交わし、翌日再会の約束をして帰っていく……あの時の出来事を思い出す)
歌劇のテーマとなった実際の出来事を思い出しながら。
「♪♪」
「体が思わず動くわ」
「楽しいわね」
観客達はすっかり、舞台の賑やかさに飲み込まれた。
「楽しいですねー」
ギュンターも手拍子をして思いっきり楽しんでいた。
演奏がひと段落し、
「少し休憩」
シルヴィアは休憩がてらにカクテルを一口。
「素敵な演奏でございましたわ」
ネーヴェは拍手を送りながら登場。
「私はネーヴェ・グラヌローザと申します。あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」
自己紹介をしながら向かいの席に座る。
(まるで今までの私達の関係をなぞるよう……)
と過ぎた時を懐かしみながら。
「私はシルヴィア・A・カペルだよ」
シルヴィアは名乗った。
「ふふふ、よろしく、シルヴィアさん……彼女と同じカクテルを」
ネーヴェは穏やかに笑むと、マスターにシルヴィアと同じカクテルを注文した。
そして、カクテルが運ばれた所で、
「勝利と平和と……」
「この出会いを祝って」
シルヴィアとネーヴェは賑やかな雰囲気の中、乾杯をしてから飲んだ。
「ミント・ビアは清涼感のあるお味ですわね。きっと素敵な思い出なのでしょう」
ネーヴェは、当時飲んだミント・ビアの味を思い出しつつ演じる。ちなみに、歌劇のため中身は酒ではない。
「あぁ、ミント・ビアは思い出のカクテルなんだ」
シルヴィアはカクテルを飲み、口元を優しく歪めた。
飲み終わると、
「今度は君のおすすめのカクテルを飲みたいな」
次は自分の番と、シルヴィアがおすすめのカクテルを訊ねた。
「でしたら……」
ネーヴェは、マスターに声を掛けて2人分のカクテルを注文。
カクテルが届くと、
「今宵のこの一時にはシェリー・フリップが相応しいと思いますの」
ネーヴェは優雅に一口。
「シェリー・フリップは甘やかな花のような美味しさだね。気に入ったよ」
シルヴィアは、本当に酒を飲んでるかのようにゆっくりと味わった。
「この後は故郷に戻りますの?」
ネーヴェは何気なく話し掛けた。
「あぁ、戻るよ」
シルヴィアは明朗に答えるとカクテルを一口。
途端、
「そうですの。少し寂しいですわね。折角、知り合えたのに夜が明ければ、お別れだなんて」
ネーヴェは、仄かな寂しさを表情と仕草に滲ませた。
「お別れとはならないよ。私達は生き残ったんだ。国境など越えて何時でも会える」
シルヴィアは少しだけしんみりとしてから、
「故郷に帰ったら手紙を書くよ。互いに落ち着いたら、またここで会おう」
2つの約束を持ち掛けた。
「私も、お手紙します。きっとまた、ここで会いましょうね」
ネーヴェの表情からさっと寂しさが去った。
「手を出して」
突然のネーヴェの言葉に、
「手を?」
シルヴィアは意図が分からぬまま、手を出した。
すると、
「私はいつでも、どこに居ても、シルヴィの幸せを祈っていますわ。どうか貴女に祝福がありますように」
ネーヴェはシルヴィアの手首に、そっと祝福のブレスレットを巻いた。
「……これは……ありがとう大切にするね……」
シルヴィアは予想外の事と愛称呼びが嬉しくて微笑んで、ブレスレットに触れた。
そして、
「ネーヴェ」
今度はシルヴィアの番。
「何です?」
ネーヴェが小首を傾げていると、
「君がずっと笑っていてくれるようにと願いを込めたんだ。その旅路に祝福があらんことを」
シルヴィアは、万年暦『予祝の雪』を差し出した。
「まぁあ」
ネーヴェは驚きと喜びと共に受け取りつつ、
(これまで重ねた文は幾十にも上り、依頼でも親交を深めてきた。様々な出来事があった。喜びも、悲しみも。それでも私達の友情は変わらない)
歌劇の続き、現実の今に思いを馳せ胸中で微笑んだ。
互いに再会の約束をした後、
(……皆に祝福を)
シルヴィアはフィドルを演奏しながら、晴れやかに笑顔で堂々と祝福の歌を高らかに歌い上げる。
(世界に訪れた平和と互いに生き残った喜びをを込めて……親愛なる彼女に、そしてこの場に居る全ての人達に祝福を未来に幸あらんことを)
ネーヴェは明るく高らかに物語を歌い上げ力強いステップで、一夜の宴を盛り上げる。
続いて、客や酒場の店員達が歌い舞い最後を締めた。
舞台袖に戻ったシルヴィアとネーヴェを迎えたのは、
「お疲れ様、見事な歌劇だったよ」
キオルティスであった。
「ふふふ、ありがとうございます」
「お互いに」
ネーヴェとシルヴィアは、労いをありがたく受け取った。
続いて、
「皆さん、お疲れ様ですよー。とっても楽しかったですよー!」
ギュンターが皆を労うために現れた。
「そりゃ、嬉しいな」
「嬉しいですわ」
「楽しんでくれてありがとう」
キオルティスとネーヴェとシルヴィアは、労いを受け取った。
「ギュンタも頑張るのですよ」
用事を終えたギュンターは販売スペースに戻り、
「本日の公演で出演者が着ていた衣装のレプリカはいかがですかー? お姫様にも勇者にもかいじゅーにもなりきれるますよー!」
販売に忙しくした。
とにもかくにも、冒険者達のおかげで劇場は勝利と平和を賑やかなほど、堪能した。
公演が始まる前。
「出演者が当日着ていらした衣装のレプリカを量産して販売するのはいかがでしょうか? お子さん向けに、舞台の登場人物になりきるセットなんて作ったら喜ぶと思いません?」
レラ・F・ギュンターは、劇場の責任者にとある提案を持ち掛けていた。
責任者は、劇場への人気と収入面から提案を受け入れてくれた。
という事で、
「王子様やお姫様なんてきっと定番ですよね」
話は量産するレプリカ衣装のデザインだ。
「ギュンタはですねえ、ドラゴンになりたいですね! がおーってやりたいです。かーいらしー上にぱわふるなんて最強ですね!」
定番の次に自身の好みを手振り身振りで伝えた。
デザインは受け入れられ、すぐに作製に入り公演終了後に販売となった。
話し合いが終わった所で、
「いらっしゃいませー、本日の舞台の出演者さんのぬいぐるみはいかがですかー?」
ギュンターは販売スペースにて、ぬいぐるみの販売に取り掛かった。
そのぬいぐるみの出来は、
「どれも欲しいなぁ」
「お隣の子は独特な愛敬があるわね」
「もしかして、あなたが作ったのかしら?」
普通に可愛くて客達の目を楽しませる程の『裁縫』の技術だ。当然、ぬいぐるみのモデルになった出演者には許可を貰っている。
「はい、ギュンタが作ったのですよ! 日頃より培いましたすぺしゃるな技術をたくさん活かしているのですよ! ギュンタは旅するぬいぐるみ屋さんなのです」
ギュンターは誇らしげに、客の相手をする。
「お隣の子達は、ギュンタが普段作ってますぬいぐるみですよ」
もちろん、劇場関係以外の物も販売している。
(おひとりでも善き方のところへお渡しできたらよろしいのですけど)
そうして賑わっている中、
「ギュンタさん、ぬいぐるみを買いに来ました」
「お店の調子はどうだい」
ネーヴェ・グラヌローザとシルヴィア・A・カペルがぬいぐるみを買いに現れた。
「いらっしゃいませー! 待っていたですよー!」
ギュンターは笑顔で迎えた後、2人そっくりのぬいぐるみを差し出した。
それぞれ受け取ったネーヴェとシルヴィアは、
「ふふ、自分がこんな風になっているのを見るのは少しくすぐったいですわね」
「今日の素敵な記念になったよ」
ぬいぐるみの可愛らしさ、ギュンターの『人形作成』による精緻さに感心した。
「作るからにはご本人に似せつつもきゅーとですぺしゃるな逸品を目指したのですよー」
ギュンターは、ぬいぐるみに対する熱意を語った。
「実在人物に寄せますので普段のギュンタの作風とは違いますけども、これはこれで老若男女どなたにも愛されるかーいらしーものになったかと」
2人の反応に喜んで声に興奮を帯びつつ。
「何といっても、いつでも持って歩いて頂けるよに大きさも工夫したのですよ!」
一番の押しポイントにはドヤ顔で。
「確かに持ち運びがしやすい大きさだ」
シルヴィアは手にあるぬいぐるみからひしひしと、手軽さを実感する。
「これも、ええと、推し活? とかゆのでしたっけ? いつでもどこでもいっしょに連れ歩いて頂けたらと」
ギュンターのその工夫は持ち主とぬいぐるみ双方にとって、素敵な事であった。
「色んな工夫が詰まったすごいものですわね!」
ネーヴェはぬいぐるみを隅々まで見つめる。
こうして買い物を終えた2人は舞台へと急いだ。
「舞台、頑張ってくださいねー!」
ギュンターは2人を元気に見送った後、ぬいぐるみの販売に忙しくした。公演が始まり忙しさがひと段落すると、観客として覗きに行った。
「シルヴィ、どこに行っていたんだ」
舞台袖で出番に備えていたキオルティスは、同じく出演者である知った顔がいつの間にか消えていた事を訊ねた。
「ぬいぐるみの購入に行っていたんだ」
シルヴィアは、自分そっくりの可愛らしいぬいぐるみを見せた。
「出番まで少し時間がありましたので」
隣にいたネーヴェも、ぬいぐるみを愛でつつ言った。
「2人の可愛さをばっちり再現しているね……いい記念になりそうだ」
キオルティスは2人のぬいぐるみをまじまじ見ながら、相手が女性とあってか褒め言葉も抜かりなく添えて。
「そうだろう」
シルヴィアは、口元を楽し気に歪めた。
「ふふふ、ありがとうございます」
ネーヴェは、褒め言葉をありがたく受け取った。
その時、出番の知らせが届き、
「んじゃ、行って来る」
キオルティスは気を引き締め、舞台袖を抜けて舞台へ。
「あぁ、ここで見学させて貰うよ」
「頑張って下さいませ」
シルヴィアとネーヴェの励ましを背に受けながら。
(さて、吟遊詩人として、勝利を祝うかな)
照明紋具が自身を白く照らす中、キオルティスは観客席に一礼し、
「♪♪」
『演奏』の技術を活かし正確に流麗に竪琴を奏で、ステップを踏みならしてアンクルベルを鳴らす。
紡ぐのは、大きな戦いに勝利した寿ぎの詩。明るく勇ましい音色にのせて。
「怯えなくていい 怖がらなくていい」
舞う度に身軽な服の上に羽織ったシャルガネ風の金色でファーの付いた女物の羽織がひらひらと靡き、軌跡を残す。
「キミが嬉しいことは何」
竪琴は主旋律を絡めた伴奏をメインにして、主旋律をほぼ歌で賄う。ただ歌うのではなく歌詞に合わせて声音を変えるという見事な『歌唱』の技術も見せつける。
「楽しんじゃっていい 気にしないでいい」
元気一杯の歌声に正確な足さばきで美しく鳴るアンクルベルは、8拍子を正確に刻む。
「キミがやりたいことは何」
髪と胸を彩るチューベローズまたは月下香の花が、白い照明を受けて煌めく。
間接照明が演出を引き継ぎ、
「この幸せを両手いっぱいに」
優しい歌声と共に色とりどりの照明がくるくると回り、広い舞台を照らす。
「声色がこんなにも変わるなんて、凄い」
「聞いてて、元気になる歌ね」
「これは勝利を祝うにはぴったりね」
観客達は、キオルティスの舞台に吸い込まれて、すっかり夢中だ。
「明るくて勇ましくて、踊りたくなりますねー」
ギュンターも他の観客同様に楽しんでいた。
「この当たり前を胸いっぱいに」
キオルティスは、指先から足先に至るまで動きは細やかでミス1つ無い。ベルの音は歌詞を表現するかのように、軽やかに刻む。
「新しい世界を紡ぐんだ
さぁ 始まってるよ
乗り遅れちゃダメさ」
希望に満ちた歌声と巡る色彩豊かな光を追いかける度に、髪と胸に飾ったチューベローズから発せられる濃厚な甘さを含んだ艶やかな大人の香りが舞台を満たしていく。
「そう」
照明が回転する中、キオルティスは胸を飾るチューベローズを手に取った。
そして、
「主人公はキミ」
照明紋具が客席を広く明るく照らすと同時に、手に持ったチューベローズを客席に放り投げた。
最後の音が舞台に響き溶け沈んだ所で、
「照明が消えた」
「……終わった?」
「あぁあ、何て力強い歌なのかしら」
突然の暗転。客達は驚き、舞台を注視する。
(残り香すら残さないように)
キオルティスは『ハイディング』を使い、エーテルを体の周囲に張り巡らせ、 認識を妨げて観客席から消えたように見せつつ、静かに舞台袖へ。
曲の余韻や自身の存在を残り香のひとかけらも残さぬように、闇に沈んで消えるように。
「お疲れ様」
「素敵な歌でしたわ」
シルヴィアとネーヴェは、舞台袖に戻って来たキオルティスを労った。
「ありがとう。2人共、頑張って」
キオルティスは労いをありがたく受け取り、2人を応援した。
同時に出番が知らされ、
「行こうか、ネーヴェ」
「はい、行きましょう、シルヴィアさん」
シルヴィアとネーヴェは舞台袖を抜け、舞台へ。
暗転から光が戻ると、共に現れたのは酒場だ。
「おかわりをくれー」
「勝利の酒は美味しいな」
「『踊る小熊亭』でこのまま宴会だー」
勝利と平和を喜び、酒を飲み騒ぐ客達の声。劇場のダンサーである。
その中に、
「平和を取り戻した人々の表情は何とも晴れやかだ」
カクテル片手に客達の騒ぎを見守るシルヴィアの姿。
「♪♪」
客の1人が笛を演奏し始めた。
それをきっかけに、
「よっしゃ、おれも」
「私も」
「おいらも」
酔いと興が乗った冒険者達が次々と歌や踊りで加わる。
観客達は楽しそうに手拍子をする。
「…………まさに一期一会」
どこの誰とも知らぬ人達が共に喜ぶひとときに、幸せを感じるシルヴィア。
「しかし……」
ふとよぎる切なさに表情が曇る。
シルヴィアはフィドルを構え、
「♪♪」
余すことなく『演奏』の技術を発揮する。切なさを吹き飛ばすような力強く本日のテーマである祝福を込めて。
(帝国決戦を生き残った2人の冒険者が、それぞれの故郷に帰る前夜に馴染みの酒場で酌み交わし、翌日再会の約束をして帰っていく……あの時の出来事を思い出す)
歌劇のテーマとなった実際の出来事を思い出しながら。
「♪♪」
「体が思わず動くわ」
「楽しいわね」
観客達はすっかり、舞台の賑やかさに飲み込まれた。
「楽しいですねー」
ギュンターも手拍子をして思いっきり楽しんでいた。
演奏がひと段落し、
「少し休憩」
シルヴィアは休憩がてらにカクテルを一口。
「素敵な演奏でございましたわ」
ネーヴェは拍手を送りながら登場。
「私はネーヴェ・グラヌローザと申します。あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」
自己紹介をしながら向かいの席に座る。
(まるで今までの私達の関係をなぞるよう……)
と過ぎた時を懐かしみながら。
「私はシルヴィア・A・カペルだよ」
シルヴィアは名乗った。
「ふふふ、よろしく、シルヴィアさん……彼女と同じカクテルを」
ネーヴェは穏やかに笑むと、マスターにシルヴィアと同じカクテルを注文した。
そして、カクテルが運ばれた所で、
「勝利と平和と……」
「この出会いを祝って」
シルヴィアとネーヴェは賑やかな雰囲気の中、乾杯をしてから飲んだ。
「ミント・ビアは清涼感のあるお味ですわね。きっと素敵な思い出なのでしょう」
ネーヴェは、当時飲んだミント・ビアの味を思い出しつつ演じる。ちなみに、歌劇のため中身は酒ではない。
「あぁ、ミント・ビアは思い出のカクテルなんだ」
シルヴィアはカクテルを飲み、口元を優しく歪めた。
飲み終わると、
「今度は君のおすすめのカクテルを飲みたいな」
次は自分の番と、シルヴィアがおすすめのカクテルを訊ねた。
「でしたら……」
ネーヴェは、マスターに声を掛けて2人分のカクテルを注文。
カクテルが届くと、
「今宵のこの一時にはシェリー・フリップが相応しいと思いますの」
ネーヴェは優雅に一口。
「シェリー・フリップは甘やかな花のような美味しさだね。気に入ったよ」
シルヴィアは、本当に酒を飲んでるかのようにゆっくりと味わった。
「この後は故郷に戻りますの?」
ネーヴェは何気なく話し掛けた。
「あぁ、戻るよ」
シルヴィアは明朗に答えるとカクテルを一口。
途端、
「そうですの。少し寂しいですわね。折角、知り合えたのに夜が明ければ、お別れだなんて」
ネーヴェは、仄かな寂しさを表情と仕草に滲ませた。
「お別れとはならないよ。私達は生き残ったんだ。国境など越えて何時でも会える」
シルヴィアは少しだけしんみりとしてから、
「故郷に帰ったら手紙を書くよ。互いに落ち着いたら、またここで会おう」
2つの約束を持ち掛けた。
「私も、お手紙します。きっとまた、ここで会いましょうね」
ネーヴェの表情からさっと寂しさが去った。
「手を出して」
突然のネーヴェの言葉に、
「手を?」
シルヴィアは意図が分からぬまま、手を出した。
すると、
「私はいつでも、どこに居ても、シルヴィの幸せを祈っていますわ。どうか貴女に祝福がありますように」
ネーヴェはシルヴィアの手首に、そっと祝福のブレスレットを巻いた。
「……これは……ありがとう大切にするね……」
シルヴィアは予想外の事と愛称呼びが嬉しくて微笑んで、ブレスレットに触れた。
そして、
「ネーヴェ」
今度はシルヴィアの番。
「何です?」
ネーヴェが小首を傾げていると、
「君がずっと笑っていてくれるようにと願いを込めたんだ。その旅路に祝福があらんことを」
シルヴィアは、万年暦『予祝の雪』を差し出した。
「まぁあ」
ネーヴェは驚きと喜びと共に受け取りつつ、
(これまで重ねた文は幾十にも上り、依頼でも親交を深めてきた。様々な出来事があった。喜びも、悲しみも。それでも私達の友情は変わらない)
歌劇の続き、現実の今に思いを馳せ胸中で微笑んだ。
互いに再会の約束をした後、
(……皆に祝福を)
シルヴィアはフィドルを演奏しながら、晴れやかに笑顔で堂々と祝福の歌を高らかに歌い上げる。
(世界に訪れた平和と互いに生き残った喜びをを込めて……親愛なる彼女に、そしてこの場に居る全ての人達に祝福を未来に幸あらんことを)
ネーヴェは明るく高らかに物語を歌い上げ力強いステップで、一夜の宴を盛り上げる。
続いて、客や酒場の店員達が歌い舞い最後を締めた。
舞台袖に戻ったシルヴィアとネーヴェを迎えたのは、
「お疲れ様、見事な歌劇だったよ」
キオルティスであった。
「ふふふ、ありがとうございます」
「お互いに」
ネーヴェとシルヴィアは、労いをありがたく受け取った。
続いて、
「皆さん、お疲れ様ですよー。とっても楽しかったですよー!」
ギュンターが皆を労うために現れた。
「そりゃ、嬉しいな」
「嬉しいですわ」
「楽しんでくれてありがとう」
キオルティスとネーヴェとシルヴィアは、労いを受け取った。
「ギュンタも頑張るのですよ」
用事を終えたギュンターは販売スペースに戻り、
「本日の公演で出演者が着ていた衣装のレプリカはいかがですかー? お姫様にも勇者にもかいじゅーにもなりきれるますよー!」
販売に忙しくした。
とにもかくにも、冒険者達のおかげで劇場は勝利と平和を賑やかなほど、堪能した。
マスターコメント
参加者の皆様、参加して頂き大変ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。
劇場にて、可愛らしいぬいぐるみで客達の心を癒したり勝利と平和を祝う明るくて元気な演目で、観客席だけでなく劇場も盛り上げて頂き、ありがとうございました。
ほんの僅かでも楽しんで頂ければ、幸いです。
ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜8人
2024年02月29日 17時42分19秒 公開
大成功
相談掲示板
依頼成立ですね! 旅するぬいぐるみ屋さん、ギュンターです! どぞ、よしなに。 ギュンタは舞台に上がる方々のぬいぐるみを作って販売しよかと思ってます。 作っても良いぞ、と仰ってくださる方はいらっしゃいますでしょか?
シルヴィアだ。依頼が成立して嬉しく思う。 友人と共演する予定だよ。今回はよろしくね。 >ギュンター 私で良ければ作って貰って構わないよ。 君が作るぬいぐるみ、楽しみにしている。
ネーヴェ・グラヌローザと申します。無事の依頼成立、大変嬉しゅう御座いますね。 どうぞ宜しくお願い致します。 >ギュンター様 まぁ、素敵ですわね。私で宜しければ、喜んで。楽しみにしておりますわね。
シルヴィアさん、ネーヴェさん、ご許可頂き感謝なのです! ありがたーく作らせていただきますね! ギュンタの右腕が唸りますよー! ギュンタは販売に尽力しますので舞台は見られなさそです。 ですけど影ながら! 心の中で! 盛大に応援してますっ!