魔獣使いの忘れもの:前編
コースケ
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シナリオID:3415
オープニング
黒色の鱗の竜から変じた人型が呪いの言葉を吐く。
『おのれ、よくもこのニドヘグの眼を奪うとは……!! この屈辱、我が魂に刻み込んだ! 覚えておけ。いつかお前の両目を抉り、四肢を折り、臓腑を裂いて山の頂へ晒してやる!!』
ニドヘグと名乗った邪竜は左目を押さえ、残った朱の右目を憎しみに染め背中の羽を広げ飛び去った。
子を抱いたドワーフの女性が頭を下げる。
『ありがとう、本当にありがとうございました……!!』
それに何と返しただろうか。その後にかけられた言葉の記憶が強すぎて、その辺りは覚えていない。
『エルフなどに助けられるとは!』
振り返ると、集落の長である老ドワーフの忌々しげな顔が目に入った。
●師弟問答
「……久しぶりに夢に見た。まあ、10年前だしそう古い記憶でも無いか……しかし寒いね」
寝床で身を起こしたディアナ・ローロシェーナスは、隙間から入り込んで来た冷気に身を震わせる。シグモル火山帯は温暖な気候だが、彼女が居る場所は標高が高く冬はそれなりに冷える。加えて、現在寝泊まりしているのはお世辞にも立派とは言えない小屋であり、雨漏りがすることもあった。
「ここに腰を落ち着けるなら、この辺りも何とかしないといけないか」
そんな事を呟きながら顔を洗い、彼女に一時弟子入りしていた事もある何でも屋のオッターに夢の話をする。
「クリエスター山脈に居着いた時の話なら、10年と言わずもう11年になる頃だと思うんすけど」
オッターが用意した朝食を受け取ったディアナは、黒パンを千切りながらそうだったかねと呟いた。
「集落の長の物言いにキレて集落と邪竜の間に嫌がらせの様に棲家作ってやったって何度も聞かされたんでね」
「そうそう。私が住み着いたと知った時の長の顔は傑作だった」
「……俺がそれ聞かされた時は逃げ出そうかと思ったからな?」
愉快そうに笑うディアナを睨みオッターはため息をつく。知らずに弟子入りした先が邪竜の縄張りだったのだから無理もない。
「あれは頭も良い上に用心深い。勝ち目が薄い内は仕掛けて来ないよ」
「勝ち目があれば襲って来るって事だろ? そうなると手遅れだったって事じゃねーか。……ん?」
そう突っ込みを入れたオッターは、頭に浮かんだ嫌な考えをおそるおそる口にする。
「……なあ。師匠がシグモルに来てからもう一年過ぎたよな?」
「そうだね」
「師匠が居ないと邪竜が知ったら、集落が襲われるんじゃねえか?」
「だろうね」
「いやいやいや。そりゃ不味いだろ!?」
オッターの叫びに、ディアナは平然と答える。
「良いじゃないか別に。ドワーフの集落が邪竜に襲われようが私にはどうでも良いことさ」
「そんな事言ってるけど、集落のマヘリアおばさんとかに良くして貰ってたじゃねぇか?」
「そうは言うが、ドワーフ王国の集落ってのは邪竜に備えて常に引っ越しの準備はしてるもん――」
「それでも被害が出ない保証は無いだろ? 現に10年前に出てるじゃねえか!?」
オッターの説得に、ディアナは根負けしてぼやく。
「……しょうがないね。まあ、邪竜を仕止めればここの改築代くらいは手に入るか」
●神徒と魔獣使い
「そう言う訳でね。一旦クリエスター山脈に帰って心残りを片付けて来るよ。その間にサピラを頼みたいんだ」
事情を聞かされた神徒のマグダリアは、こめかみを押さえて額の皺を深くする。ディアナが監視している特異個体の魔獣は、理由もなく暴れるような事はない。だが、ディアナがやろうとしている事については懸念があった。
「事情は分かりましたが、その邪竜は成体の様です。倒せる確証はあるのですか?」
成体の邪竜は肉体的、魔法的に優れた強力な存在であり、いくらディアナが強力な魔獣使いであっても一人で倒すのは無理がある。
「冒険者を頼るよ。竜喰らいを倒せる位なんだ。邪竜の一体くらい何でもないだろう?」
「それだけの腕の冒険者を雇う為の依頼料はあるのですか?」
「その位の蓄えはあるよ。成体の邪竜なら財宝のひと山くらい溜め込んでるだろうし、仕止めれば十分に元は取れるさ?」
飄々と答えるディアナに、マグダリアはため息をついて釘を刺す。
「貴女が帰って来ない様な事があれば、サピラを見守る者が居なくなります。出来れば向かって欲しくない所ですが、邪竜に晒される集落を放置する訳にも行かないでしょう。くれぐれも無理をしないようお願いいたします」
「分かってるよ。」
こうして、ディアナはクリエスター山脈へ向かうのだった。
●ドワーフの集落:ホルン
「チクショウ、得物さえ届けば……!!」
ドワーフの戦士達が、上空を旋回する巨大な影を睨み付けていた。
「邪竜め魔獣使いが居ないことに気付きやがった!」
「バカモン! エルフなんぞに頼っておったからこうなるんだ。恥を知れ!!」
「ごちゃごちゃ言ってないで女子供が逃げる時間を稼げ! ――!? こっちに気付いた、来るぞ!!」
ドワーフ達は降下する邪竜へ矢を射るが、突如吹き荒れた風に煽られ、矢は邪竜に届かない。邪竜は何らかの技で身を守り、剣や槍等が届かない位置から魔法や炎を吐きかけるなどして一方的な破壊を行っていた。
『矮小よな。己の無力さを呪いながら灰となるがいい』
口を歪めた邪竜が息を吸い込み、白く輝くほどに高温の息吹を吐きかける!
「ぐああー!!」
ドワーフ達は文字通り黒焦げになって地面に倒れ伏した。しかし、一人だけ息吹に耐え、身体の端々を炭化させながらも膝を付かず立つ老ドワーフが残っていた。老ドワーフは赤黒い刃の戦斧を握り締め、滞空する邪竜を睨み付ける。
「卑怯者め……!」
『ほう。倒れた中にも息のある者が居るな。だが、再び我が息吹を受ければ立ってはおれまい。このニドヘグに刃が届かぬ以上、耐えても無意味な事と知――――!?』
ニドヘグと名乗った邪竜は息を吸い込み、白熱の吐息を吐き出そうと口を開く。――だが、何かに気付いて上空へ退避する。
「チッ、勘の良い奴だ」
『――戻って来たか、魔獣使い』
ニドヘグは後方に現れた魔獣使い――ディアナ――へ頭を回らせ、自身の影に潜り込もうとしていたディアナの相棒――影猫のフェリス――を警戒するように更に上へ昇る。
「あのまま姿を消してたら、そこのドワーフに逃げ出したと思われそうだからね。少々癪だからお前を仕止めて行こうと思ったのさ」
『ハハハ! その様な理由で我が前に再び現れるとはな!? だが嬉しいぞ。これで魂の雪辱を果たすことが出来ると言うもの!!』
ニドヘグは両の瞳を爛々と輝かせ、ディアナを仕止めるべく息を吸い込んだ。
解説
マスターより
リプレイ
冒険者達は邪竜ニドヘグがディアナに気を取られている隙に動き出した。
(『邪竜を何とかしなさい』は難題すぎませんか先生……!)
神徒であるロゼットは、恩師であるマグダリアからの手紙でディアナの護衛として同行していたが、予想外の遭遇に頭を抱えたい気持ちを堪え、ドワーフを救援すべく駆ける。
「強い、狡猾、しかも飛ぶ……これ程厄介な敵もそういないな」
「ディアナさんに片眼を奪われたそうですが、そのお陰で臆病になったというところですか」
闇夜の外套のフードで顔を覆ったレピド・クロサイトは、その隙間から覗く群青色の瞳でニドヘグを見上げ、道中にディアナから経緯を聞いていたバル・ヌール・スケアクロウは冷静に相手を観察する。
「はん、邪竜か。後夜祭にしちゃ中々楽しめそうじゃねえの。と言いてえが……あンな所にいちゃどうにもならねえな。ったく、興ざめもいいトコだぜ」
一方、エルフでありながらドワーフに育てられた為にドワーフを自認するアーテミシアは、ドワーフの宿敵とも言える邪竜相手に獰猛な笑みを浮かべつつ、頭上のニドヘグに鼻を鳴らす。
「上等だ! 邪竜狩りの実績ならこちとら一匹や二匹じゃねーってとこ見せてやんぜ!」
そして疾風の様に飛び出したハヤト=ガラン=ヴォルファングは、満身創痍の老ドワーフの所へ駆け付けると天眼で俯瞰的に戦場を把握し、軍神の祝福とも呼ばれる戦闘センスも合わせてこの危機を乗り越えるべく思考を回らせる。
「貴様ら、アレの、連れか? ここはワシらの集落。余計な事はせず、逃げ……ろ!!」
「私たちが時間を稼ぎます。重傷者を連れて地下から避難を!」
ボルグがハヤトを押し退けようと手を伸ばすが、魔法が届く距離まで駆け寄ったロゼットが簡略化された動作による癒しでボルグと地に伏すドワーフ達を回復する。だが、傷が癒えたことにより威勢を取り戻したボルグは腹立たしげに声を荒げる。
「ワシらが退けば奴は地下へ逃れた女子供を追って皆殺しにかかる。ここでワシらが止めねばならんのだ……!」
「ですから、私達が――」
説得しようとしたロゼットの視界を、轟音と共に眩い光が染めた――!!
●邪竜の息吹
「竜を倒したことは何回かあるけど……いやぁ、これはまた規格外なの来ちゃったねえ」
ドワーフ達の元へ駆けるディレイン・オールドケイジの視線の先の地面には、ニドヘグの息吹により直径15メートル程が窪み、赤熱した地面から煙が上がっていた。
(ディアナちゃんは上手く躱したけど、あれをまともに受けたらここに居る何人が立っていられるか……)
そのディアナは相棒である影猫のフェリスの背に乗り集落から離れるよう移動するが、ニドヘグは行く手を遮るように翼から風の刃を放ち、息吹を吐いてディアナを逃がさない。
『どうした。手も足も出ぬか?』
「相変わらずお喋りな蜥蜴だ……クッ!」
ディアナは連続で襲い来る攻撃を躱し続ける事が出来ず、フェリス共々風の刃で全身に裂傷を受け、血飛沫が上がる。
『こうなれば呆気ないものよ。だが、お前は油断ならぬ相手。一息で灰としてやろう!』
ニドヘグは大きく息を吸い込むと、二度目の渾身の吐息をディアナに吹き掛けた!!
●説得
「あれが成体だ。お前達まで命を賭す事は無い。今の内に退け」
「ですが、次にブレスを浴びたら傷付いた三人はまず助かりません!」
ディアナがニドヘグを引き付ける間にボルグを説得する冒険者だったが、癒しを受けて起き上がったドワーフの戦士達も含め、ニドヘグに挑む意志を崩さない。
多くの冒険者にとって想定外だったのは、彼らが文字通り決死の覚悟を決めている事だった。加えて、邪竜に対抗できる手段を提示できない事が、冒険者に任せ自分達だけ避難するという行動を由としない。
「お主達では空の邪竜を退ける術は無かろう。死ぬのはワシらで十分だ」
「ですが――!」
――ガンッ!!
食い下がるロゼットを押し退けドワーフ達が邪竜に向かおうとする。その眼前の地面に、戦槌が叩き付けられた。
「「!?」」
「頭の固ぇオッサン共め。てめぇらが命賭けたとこで稼げる時間なんぞタカが知れてンだよ。ブン殴ってお寝んねして運ばれてぇか?」
「エルフの小娘なんぞにワシらが寝かされると言うか!?」
「あぁ? オレを耳長扱いすンじゃねぇ」
竜骨の戦槌を手にしたアーテミシアとドワーフ達の間に険悪な空気が漂う。だが、それに平淡な声が割って入った。
「やめなよ。ここで揉めて時間を無駄にするのは。彼らも安心して眠れないでしょ?」
倒れたドワーフ達に息がない事を確認していたディレインは、僅かに瞑目するとボルグに声をかける。
「俺だって無駄に命を捨てたく無いんだ。無理と思ったら退くから、お互いに生き延びる確率を上げる為に協力し合えないかな?」
「…………」
ボルグはディレインの目を見据え、その奥に宿る意思を察したのか厳かに口を開く。
「……良かろう」
「長!?」
声を上げる戦士達を手で制し、ボルグはディレインへ言葉をかけた。
「彼らを気懸けてくれた事に感謝する」
(良いのか? あんなこと言って。あのボルグってオッサン以外、まともに戦える状態じゃねえぞ?)
(……引く気が無いなら仕方ないよ。彼らだけで戦わせるより、協力した方がまだ可能性はある)
先程の言葉に引っ掛かるものがあったハヤトは、ディレインに小声で話しかける。当のディレインも、友人であるハヤトは誤魔化せないと感じたのか複雑に口を歪める。それは邪竜という理不尽と、自らの無力さへの憤りの様だった。
●囮
(出番か。これで上手く騙せるといいが)
二度目の渾身の息吹を受ける寸前、ディアナが一瞬自分を見たのを確認したレピドは外套を脱ぎ捨てる。その下から現れたのは暗い赤毛に一房白いメッシュが入った髪のホムンクルスではなく、シルバーアッシュの長髪を紐で括った群青色の瞳のエルフだった。
集落の上空を飛ぶ邪竜を発見し、そこへ駆け付けるまでの間にエーテルも利用した卓越した変装技術でディアナに変装したレピドは、囮となるため姿を表し竜骨の短弓に番えた矢にエーテルを纏わせ放つ!
「どこを見ている? 私はここだ」
『そこに逃れたか魔獣使い!』
矢は邪竜の身を守る風によってあらぬ方向へ逸らされ、ニドヘグは反撃の息吹を吐きかける!
(これは……危険だな)
レピドは反撃を読んで回避するが、スキルを使っても僅かに対応が遅れていれば息吹を浴びていた事にぞっとする。だが、息をつく暇を与えぬ様にニドヘグの翼から放たれた風の刃がレピドを襲う!
「くっ、速い……」
息吹のように凄まじい威力は無いが、視認が難しく範囲も広い刃はシーフであるレピドを易々と捉え切り裂いていた。加えて、深く裂かれた傷からは流血が止まらない。
『魔獣はどこだ?』
ニドヘグは更に連続で風の刃を降り注がせる。レピドは回避に集中して避けようとするが、スキルを使った上でも回避は絶望的だった。
「ここまでか……」
三度目の刃を受ければ危険と判断したレピドは奥の手を使ってそれを避けるが、その代償による生命力の喪失で視界が暗くなる。辛うじて意識を保つも、気絶するのは時間の問題だった。
『やはり偽物か。本物は何処だ――ん?』
レピドに止めを刺そうと刃を放とうとしたニドヘグは、真下から飛んで来た複数の不可視の衝撃に気付き、風を纏ってそれらを避け更に高度を取って目を向ける。
そこには得物を手にしたハヤトとアーテミシア、バルの姿があった。
●空の邪竜
「どーよ? テメェが一方的に攻撃される気分は? どーせビビって降りて来れねーんだろーからとっととシッポ巻いて逃げてもいいんだぜ?」
「成程、貴方はあの子に痛い目にあわされたから上空に逃げる、と。よくわかりますよ、怖いですもんねぇ?」
「ハッ、蜥蜴なら蜥蜴らしく地べた這い回ってる方がお似合いだぜ?」
下りて来いと言わんばかりの挑発に、ニドヘグは無言で全力の息吹を放つ!
「やべぇぞ、全力で耐えろ!」
大きく息を吸う予備動作の後は、息吹の威力が上がることを観察していたハヤトが警告の声を上げる。
ハヤト自身は影法師のスキルによりニドヘグには上手く捉えられておらず、巻き込まれても直接狙われないため回避は容易だろう。前に立って射線を塞ぐ事も考えていたが直上からの攻撃にそれは難しく、たとえ出来たとしても諸共に息吹に焼かれる事になるだろう。
ゴウッ!!
バルは儀装【銀の手の乙女】を、アーテミシアはシールドガントレットを構え被害を抑える。だが、渾身の息吹を受けた二人の負傷は大きい。非常にタフな上に防御に集中し、崩れかけた建物を盾にしたアーテミシアは比較的に余裕があるが、バルは気絶する程の負傷を自身を癒すことで何とか持ちこたえていた。
『地を這うのはお前達の方が似合っているようだが?』
ニドヘグは嗤いながら再び息吹を吐こうと息を吸い込む。その側面に、数本の矢が飛来した!
『無駄な事を――ほう?』
ニドヘグは風を纏って矢を逸らすが、その中の一本だけは逸らされずニドヘグの身体に命中する!
「やっぱり! 魔法攻撃は防げないみたいね。そして飛行も魔法も、無限に続けられるものじゃないはず。このまま消耗を狙っていきましょう!!」
魔矢を放ったロゼットは、ドワーフの戦士達を鼓舞し神材の祭棍を構えた。
『死に損ない共が。そしてそこの女、癒し手だな?』
ロゼットを邪魔者と見たニドヘグは、まずはそこから排除すべく身を翻した。
「相変わらず無茶をするねえ。けれど、お陰で彼らの回復は出来たよ」
「そうか。だが、避難していない……」
半壊した建物の陰でディレインの癒しを受けるレピドは、矢を射るドワーフ達とディレインの顔を見て立ち上がろうとする。
「駄目だよ。まずは血を止めないと傷が塞がりにくいんだから」
「しかし……」
レピドもまた、命が失われる事を何よりも厭うこの友人の性格を知っている。ドワーフ達が危険に曝されても尚、自分の治療を優先することの意味を察しレピドは大人しく指示に従った。
●邪竜ニドヘグ
「散会しろーっ!!」
「くっ……」
ハヤトの叫びにロゼットはドワーフ達と距離を取る。それを追って吐き出された息吹に焼かれ、ロゼットは失いそうになる意識を自身を癒すことで必死に繋ぎ止めるが、ニドヘグは再びロゼットを焼こうと息を吸い込む。
「あの娘を守れ!」
ボルグの声にドワーフ達が矢を射るが、矢は風に遮られ邪竜には届かない。
『お前が倒れれば後は有象無象よ!』
口を開いたニドヘグの喉奥が輝き、視界を白く染める程の奔流がロゼットを飲み込まんと迫る!
冒険者達にそれを阻む術はなく、唯一邪竜の吐息への備えを用意していたディレインは、レピドの受けた流血に回復が手間取っていたため届く位置に居ない。
「……え?」
息吹に焼かれることを覚悟したロゼットだったが、その前に何者かが飛び出した!
「ボルグさん!」
「もうい……い……逃げ……」
ロゼットはワイドヒールプラスも合わせ連続で癒しを行うが、全身に酷い火傷を負ったボルグはそれでも危険な状態だった。
『フン、僅かに命長らえただけよ!』
全力で癒しを行った為に動けないロゼットへ、ニドヘグは更に息吹を吹きかける!
だが、今度は間に合ったディレインが展開したエーテルが息吹を減衰させ、ロゼットとボルグの傷を癒して被害を抑えていた。
『……ほう。しぶとさだけは対したものだ』
「まあ、手が届かないならこれくらいは出来ないとね?」
軽口を返すディレインだったが、内心は絶望的な状況を覆す方法を探して思考を巡らせていた。
全力で吐き出すニドヘグの息吹の威力は凄まじく、展開しているエーテルだけでは凌ぐことは出来ない。実際、ロゼットの癒しも合わせて何とか持ちこたえている状況だった。しかし、そのロゼットも簡易に扱える癒しを使い切っており、あと二度も息吹を受ければ立っていられないだろう。
何より、上空のニドヘグに対し有効な攻撃を与えられないことが何よりの問題だった。復帰したレピドとドワーフ達が矢を射ているが、今のところ風の守りが途切れる様子は無い。
(これは耐えるのしんどいよ。まあ、やるしかないわけだけど、やれるのかな……)
ディレインの頬を冷たい汗が流れた。
●引際
(……澱を使い過ぎたか)
一方、ニドヘグもまたこの状況の行き詰りを覚っていた。体内の澱が尽きかけていたからだ。
全力で吐く息吹は威力に見合った澱を消費し、風による刃と矢避けは空に居る間は少量の澱で効果を発揮するが、回数が多ければそれだけ消費も嵩む。
『この身が傷付かぬからと風の守りに頼り過ぎた。魔獣使いの偽者と死に損ないのドワーフ共め』
あと数回は全力の息吹を放てるだろうが、それで眼下の癒し手二人を始末したとして、澱を使い切れば地上に下りて爪と牙を振るう必要がある。だが、何処かに身を潜める魔獣使いが待ち構える場に向かう危険を冒すつもりは無い。
(澱があれば魔獣使いへの対処も出来ようが……手詰まりよな)
ならばと翼を羽ばたかせ、最低限の成果を得るため向きを変える。その目は弓を構えるドワーフ達を向いていた。
「しまった……!」
「逃げて!」
ヒーリングワールドを展開するディレインは動けず、ロゼットも未だ危険な状態のボルグから離れる事が出来ない。
「させるかよ!」
「止まれ……!」
ハヤトの双神刀 紅狗璃と、レピドの弓から放たれたエーテルを込めた矢がドワーフに向かうニドヘグへ飛ぶが、邪竜の黒鱗はその衝撃の大半を受け流しニドヘグの前進は止まらない。
「嫌らしいとこばっかり狙いやがって!」
「ですが、向かって来るなら好機とも言えます」
アーテミシアとバルはドワーフの前に走り、ニドヘグを止めるべく身構える。
『邪魔をするな!』
ニドヘグの翼から巻き起こる強風が二人を襲い、それに抗ったバルは踏み止まるがアーテミシアは吹き飛ばされてしまう。
『鬱陶しい。ならば望み通り引き裂いてくれる!』
「……形成」
苛立ったニドヘグが爪を振り下ろし、バルは青白く輝く刻死の剣を構え、回避を捨てたカウンターの構えを取る!
――ぐしゃり
しかし、傷を受けたのはバルだけだった。いくら痛みを無視しても、受けるダメージが一定を越えればカウンターのスキルは発動しないのだ。
「バルっ!」
戦士であるバルは、爪に裂かれながらもまだ立っていた。しかし、邪竜はバルを無視し強風に転倒したドワーフを牙にかける!
「ぐああっ!」
ニドヘグはそのまま上空へ舞い上がり、首を振ってドワーフを投げ捨てた!
「何て事を……!」
岩に叩き付けられたドワーフが絶命し、憤る冒険者達の頭上から声が響く。
『魔獣使い、予定外の横槍で不覚を取ったが、貴様への復讐はいずれ果たしてやろうぞ!』
そう宣言し、邪竜ニドヘグは北の空へ飛び去って行った。
マスターコメント
ショートシナリオ非常に難しい 報酬:標準6 / 4〜8人
2024年01月26日 14時21分08秒 公開
相談掲示板
ヒーラーの神官ロゼットよ。よろしくね。 やることは。 ・邪竜ニドヘグの撃退 ・ホルン集落住民の救援 ・ディアナの護衛 邪竜は生半可な相手ではなさそうね。 もし戦況が悪くても、ドワーフを全員避難させてから、 私たちも離脱まですれば目的は達成されるかな。 ドワーフには、地下の住人が避難する時間と安全の確保、 あと長老ボルグと、気絶で済んでる3人の戦士の対応ね。 ディアナは自力で回避、退避の予定があるようだから、 がっちりとした護衛には付かなくても大丈夫そうかしら。 とりあえず、気絶した戦士3人はそのままだと攻撃に 巻き込まれてしまうから、地下に運ぶなりしたいところね。
ウォーリアのバル・ヌール・スケアクロウです。 よろしくおねがいしますねー とりあえず邪竜さんを叩き落さないことにはなんともなりませんでしょうかねー?
ウォリアーのアーテミシアだ。 まああの死にかけてるオッサンは…普通に言っても言うこと聞かねえだろうなあ。 逆にやって欲しくない事をやれって言われたらやるか? それよか30mも上にいたら小手調べするにも攻撃が届かねえぞ。最低でも射程6は必要だな
レピド・クロサイト、シーフだ。よろしく頼む。 飛行能力と知性があるのが厄介だな…… OP描写だと弓矢も防ぐみたいだし、どうにか引き摺り降ろす方向で考えた方が良さそうか?
簡単な話ではないけど、地上で戦いたいなら 落とすか、降りさせるか、どちらかが必要ね。 >邪竜対策 矢を防いでいるのは風の魔法、ハリケーンウォール系だと 思うから、1度に防げる数に制限があるか、そうでなくても 撃ち続けれていればエーテル切れ(回数切れ)を起こすかも。 衝撃刃4でもギリ届くけど、真下から撃たないと届かない。 あとハリケーンウォールだと魔法は防げないから、 射撃魔法なら届きはするかな? 会話が通じるなら挑発の類も届くけど、1度痛い目を見て、 用心深くなっているなら怒ったぐらいでは降りないかもね。 >方針案 討伐案はともかく、避難のさせ方としては。 邪竜の1番の敵意はディアナに向けられているようだから、 彼女の回避行動を援護しつつ、集落から引き離してもらって。 その間にボルグと重傷者、地下のドワーフを避難させる…かしら。 ドワーフ達のいる場所で戦ってしまうと、崩落が起きそうだし。 >自身の行動 とりあえず、ボルグの回復と指示を聞いてもらうために 会話に行こうかしら。それなりの言葉、うーん…(思案)
ブレスや魔法が空から届くンなら、ハッキリ言ってやれることねえな…ガードしながら避難するまで時間稼ぐくらいか。 多少でも降りてくるなら引きずり下ろすチャンスはあるけど、あンま期待しないほうがいいかもな。 というかボルグのオッサンはどうさせるンだ? 戦わせるのか住民の護衛やらせンのかでも説得するやり方が変わるぜ
>ボルグにどうさせる? 個人的には、私たちが地上で時間を稼いでる間に重傷者を 連れて地下に戻り避難を急がせる、と説得をしたいかな。 ボルグさんが長なら、彼が戻って避難の指揮を取ることで 時間が少しでも短縮されるなら、その方がありがたいわ。
バーバリアンデスチェーンでもちょっと足りないんですよねえ、射程 いえまあ、届いても質量差で引き揚げられそうな気もしますけども >降りてくるには 例えばブレス等遠距離攻撃をほぼ完全に防ぎきるとかして、埒が明かないと思わせるとかですかねえ・・・? 弓使いさんがいればそれこそ嫌がらせのように矢をまくとかはよいかもしれませんが。
遅くなっちゃったね。 ヒーラーのディレイン・オールドケイジ。よろしく。 少なくとも住民避難の時間を作らなきゃなのは同意だけど、120ラウンドか…結構厳しいね。 ブレスってセイクリッドウォールで耐えられるのかな… ディアナちゃんたちが回避専念だとしても戦ってる間は、ボルグさんは引き下がらない…ってことはないかな。 「エルフなどに…」っていうのがね。ちょっと気になって。
祈雷…って思ったんだけど、祈雷4じゃないと射程はやっぱり6だし、回数も1回きりだった。まだ衝撃刃のほうが使い勝手よさそうだね。 >ボルグの説得 言葉が足らなかったなと思ったので補足するよ。 説得しても意味がないとかじゃなくて、そこをクリアしないと頷いてくれないんじゃないかなって思ったんだ。 ドワーフ住民に指示を出すのに適任っていう点には同意だから、なんかうまいこと言えればいいんだけどねえ…
とりあえず衝撃刃4は習得しておきました。 多少はプレッシャーを与えられるといいのですが >説得 届かせるために弓の準備をお願いする、とかはダメなのでしょうか? 或いは回復させたうえで「仕留めるための武器を考案してもらうためにも今は一度引く、こちらは時間稼ぎに徹する」みたいな流れにするとか
私は魔矢を用意しておこうと思う。 矢を防いでいるのがハリケーンウォールなのか、 魔法なら届くかの確認にはなるでしょうから。 >説得 重傷者と住民の生命より、意地を通す方が大事ですかと 説得するつもりだけど、絶対に成功するかは分からない。 成功させるつもりで行動はするけど、保険として、 説得に失敗した場合は重傷者は私が地下に運び込むわ。 ディレインがいるし、ヒーラー不在にはならないから。 >バル >届かせるために弓の準備をお願いする 「考えがあるから今は退いてください」というのは良いと思う。 具体的なアイデアは避難後にドワーフと相談の場を設けるとか。 何を用意すれば、どんな作戦なら邪竜を討伐できるかを 考えておいて、プレイングに盛り込んでおけば後編までに ドワーフ側で出来ることは、準備してもらえるんじゃないかな。 ドワーフ王国には邪竜用の対竜兵器が存在するし、 大型のバリスタの類なら防御技を突破できるかもしれない。 >ディレイン 魔法に長けている邪竜だし、祈雷は察知される可能性が高そう。 セイクリッドウォールは良いと思う。 ブレスが物理でも魔法でも効果は出るし。
うーん……ずっと考えていたのだが、ディアナが待避した後の邪竜は多分そのままディアナを追いかけるよな? そこで事前に俺がフェイクカバーでディアナに化けておいて、タイミングを見てフードを外してディアナの振りをしたら邪竜を引き付けてその場に留めておけないかな、と考えてはみたんだが……ロングアクションなんだよなフェイクカバー。 >ディアナorオッター というわけで、事前のロングアクション(フェイクカバーでディアナに化けておく)は可能か教えてくれると助かる。
武器は今のところ弓で考えてた。 ハリケーンウォール系か確かめないといけないし、射程に余裕がある武器が一つくらいはあった方がいいだろうし。
質問だな。 フェイクカバーを事前に使用して師匠に変装するのは可能だ。 いきなり襲撃の現場に遭遇したのでなく、異変に気付いて駆け付けたという状況だからそれまでに準備はしといて良い。 ただ、相手は用心深いらしいから、動きやフェリスを連れていないことでいずれは見破られるだろうって師匠がいってたから気を付けてくれ。
とりあえずオレも衝撃刃4は一つ用意したぜ。 とりあえず今回は様子見程度だから、そこまでガチで戦う用意じゃねえが 後は気絶してる3人もどうするかな。一人くらいならヒールかけて担いでいけるけど。 方針はフェイクカバーで引き離して、その間に住民と怪我人を避難させるってことでいいかね。
実際、邪竜退治の実績があるわけですし、それをメインに説得というか、一度引く案を飲ませたほうがよさそうですよね。 後は「仲間の敵討ちをしないで共に殉じるおつもりですか?」とかもありですかね? 死者がいますから、それを踏まえた説得も、と >行動について 挑発、というか多少なりともブレス以外の行動を誘発できればと思っていろいろとしゃべってみようかと思います。 情報収集もありますしね。
なるほど、おじさんは地上に残る人たちを支える役、と。了解了解。 説得はお任せするね。 スキル構成はセイクリッドウォールと範囲及び単体のヒールと、何あるかわからないから念のため解呪。 あとは衝撃刃で魔法攻撃してみるのはありだなってとこ。
>ディレイン お願いする形になっちゃうけど、ありがとう。 怪我をしていたみたいだけど、もう大丈夫そうね。 >重傷者の3名 「重傷」状態の3名はヒールでは復活できないはずだから、 地下の集落に運ぶ他ないと思う。ボルグか私で引き受けるつもり。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、ギリギリの参戦だがよろしくな!! さーて、空から一方的にってのは厄介だな… 《人間投石器》で飛ばしてもらって背中に飛び乗って翼を切り刻むくれーも出来なかねーだろーが、そいつは次回の決着まで手札を隠しとくとして… 俺は《影法師》使って奴が15m(射程3)まで降りてくるまでは《衝撃刃4》で狙い撃ちさせて貰うことにすんぜ! ついでに重傷のドワーフ達を集めて後ろ手にしてかばう形にしたら俺が盾になる形で奴のブレスの標的に出来ねーのか試してみるつもりでいんぜ!
>オッター 返答に感謝を。 いずれバレるのも了解だ、少しでもディアナや負傷者の待避の時間稼ぎが出来ればそれでいい。