【帝国】パン窯の燃料にしてやる!
馬車猪
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シナリオID:3368
オープニング
帝国の冬は厳しい。
帝都の外で戦う戦士達も、激しい戦いが終われば冷たい風に吹かれて体を冷やしてしまう。
心身共に頑健で覚悟が決まっていても寒いものは寒いのだ。
はるばる帝国までやって来た戦士達は、外套で体を包んで次の戦いまで体力を温存しようとしていた。
「ほきゅうでーす!」
「マジカルポケットを使うので場所あけてくださーい!」
シャルトの方向から兵士が駆けてくる。
誰何する前に所属と目的が伝えられる。帝国からの補給物資の運搬だ。
「だしまーす!」
現れたのは小型コンテナだ。
「受け取りください! はいありがとうございます!」
元気な兵士は異様に手慣れていて、万が一程度の確率で偽物も有り得ると警戒していた戦士達が流されるままに署名し受け取ってしまった。
帝国兵が全力疾走で元来た方向へ戻っていく。
本来なら呼び止めて詳しい話を聞くべきなのだろうが、それをできる者は1人もいない。
「隊長っ」
「待て。いや本当に待て」
戦士達は大混乱している。
木箱は開封されていないのに猛烈に漂ってくるのは焼きたてのパンの香り。
ここ数日食べていた戦闘糧食とは文字通り次元が違う。
戦闘の緊張と寒さで衰えていた食欲が猛烈に刺激され、腹が獰猛にぐるると鳴った。
「あ、開けますっ」
開封される。
焼き立ての香りはますます強くなり、もう誰も食欲を抑えられない。
マジカルポケットに運ばれてきたので文字通りの焼きたてで熱々でもあるのだ。
「隊長っ!!」
「公平に分配する。隣の部隊にも知らせてこい!」
戦士達の顔に、笑顔と活力が戻っていた。
●
幽界樹の仔が細剣で切り裂かれ地面に崩れ落ちる。
攻撃はそれでは終わらず、枯木でできた人間サイズの五体が丁寧に切断されていく。
「薪割り終わりました!」
「3番のパン窯に補給お願いします!」
ここは後方拠点ではない。
帝都の城壁も黒い霧も薄ら見える戦場のまっただ中だ。
「代官様! クリーパーが2体接近中です!」
「報告御苦労。燃料になりに来るなんて気が利いているじゃない」
ピンク髪の少女が上機嫌に笑う。
他国出身で差別主義者という平時なら近寄りたくもない人物ではあるが、陣頭指揮をして部下を全員生き残らせるているので頼りにはされている。
「3人ついて来なさい」
代官は真っ先に敵を迎撃する。
敵の見た目は枯木の人形だ。
全高はセニャと同程度で、枯れきった体は強そうには見えない。
「っ」
だが敵は幽界樹の仔だ。
踏み込むだけで乾いた地面にひびが生じ、突き出される拳は技術もないのに恐ろしく速くて重い。
理屈は分からないが情報の共有まで可能なようで、頑丈な個体が前衛となり破壊力のある個体が拙いながらに連携して襲いかかってくる。
(厳しいわね)
部下がバフを浴びせた枯木人形に細剣の連打を浴びせてその命を削る。
不規則に飛来する投げ槍は、回避用のスキルを使わないと躱しきれないほど狙いが正確だ。
地面に突き刺さった投げ槍は、固い地面で砕けもせずに3分の2ほどが地面に埋まっている。恐ろしいほどの威力だ。
(帝都の城壁の外なのに)
自らが作り出した削りかすを浴びながら細剣を突き込む。
既に膨大な生命を削ったはずなのに敵はまだ生きている。
(強くて嫌になるわ)
冒険者ならもっと早く消耗も少なく勝てると理解できてしまうのも腹が立つ。
セニャは数分かけて1体の枯木人形を徹底的に破壊する。
その頃には、後衛で槍を投げていた枯木人形は視認不可能なほど遠くへ退却している。
(幽界樹が指示を出しているのかしら。だとしたら大戦力で攻めて来るまで時間がないわね)
緊張で表情が強ばりそうになるのを耐えながら、セニャは枯木人形の残骸を燃料にしてパンを焼き続けるよう指示を出していた。
●
「忙しいのに悪いわね」
焼きたてパンの香りが立ちこめる野外仮設厨房で、帝国の役人が冒険者に話しかけている。
「この香り? この種類の幽界樹の仔が燃料になりそうだったから試して見たらその通りだったの。敵の戦力を引きつけるために有効利用したらこうなった訳」
窯で焼いたパンは補給物資として前線に送り込んでいる。
「計画した私が言うのもなんだけど、ここは長続きしないわ」
送り込まれてくる敵戦力が徐々に増えている。
次の襲撃はセニャとその配下だけでは守り切れないし、冒険者がいても防御施設もない剥き出しのパン窯複数を守りながら戦うのは難易度が高いし実行する意義がほぼない。
「私からお願いしたいのは明日の夜明けまでのここの防衛よ」
何も来なければパンを食べているだけで終わるがまずあり得ない。
ここは帝都のすぐ側なのだ。
「おそらく私くらいの大きさの、枯木人形っぽい幽界樹の仔が襲撃してくると思う。冒険者の活躍、期待しているわね」
説明するセニャは、夜明け寸前に数十体による襲撃が発生するなど予想もしていなかった。
帝都の外で戦う戦士達も、激しい戦いが終われば冷たい風に吹かれて体を冷やしてしまう。
心身共に頑健で覚悟が決まっていても寒いものは寒いのだ。
はるばる帝国までやって来た戦士達は、外套で体を包んで次の戦いまで体力を温存しようとしていた。
「ほきゅうでーす!」
「マジカルポケットを使うので場所あけてくださーい!」
シャルトの方向から兵士が駆けてくる。
誰何する前に所属と目的が伝えられる。帝国からの補給物資の運搬だ。
「だしまーす!」
現れたのは小型コンテナだ。
「受け取りください! はいありがとうございます!」
元気な兵士は異様に手慣れていて、万が一程度の確率で偽物も有り得ると警戒していた戦士達が流されるままに署名し受け取ってしまった。
帝国兵が全力疾走で元来た方向へ戻っていく。
本来なら呼び止めて詳しい話を聞くべきなのだろうが、それをできる者は1人もいない。
「隊長っ」
「待て。いや本当に待て」
戦士達は大混乱している。
木箱は開封されていないのに猛烈に漂ってくるのは焼きたてのパンの香り。
ここ数日食べていた戦闘糧食とは文字通り次元が違う。
戦闘の緊張と寒さで衰えていた食欲が猛烈に刺激され、腹が獰猛にぐるると鳴った。
「あ、開けますっ」
開封される。
焼き立ての香りはますます強くなり、もう誰も食欲を抑えられない。
マジカルポケットに運ばれてきたので文字通りの焼きたてで熱々でもあるのだ。
「隊長っ!!」
「公平に分配する。隣の部隊にも知らせてこい!」
戦士達の顔に、笑顔と活力が戻っていた。
●
幽界樹の仔が細剣で切り裂かれ地面に崩れ落ちる。
攻撃はそれでは終わらず、枯木でできた人間サイズの五体が丁寧に切断されていく。
「薪割り終わりました!」
「3番のパン窯に補給お願いします!」
ここは後方拠点ではない。
帝都の城壁も黒い霧も薄ら見える戦場のまっただ中だ。
「代官様! クリーパーが2体接近中です!」
「報告御苦労。燃料になりに来るなんて気が利いているじゃない」
ピンク髪の少女が上機嫌に笑う。
他国出身で差別主義者という平時なら近寄りたくもない人物ではあるが、陣頭指揮をして部下を全員生き残らせるているので頼りにはされている。
「3人ついて来なさい」
代官は真っ先に敵を迎撃する。
敵の見た目は枯木の人形だ。
全高はセニャと同程度で、枯れきった体は強そうには見えない。
「っ」
だが敵は幽界樹の仔だ。
踏み込むだけで乾いた地面にひびが生じ、突き出される拳は技術もないのに恐ろしく速くて重い。
理屈は分からないが情報の共有まで可能なようで、頑丈な個体が前衛となり破壊力のある個体が拙いながらに連携して襲いかかってくる。
(厳しいわね)
部下がバフを浴びせた枯木人形に細剣の連打を浴びせてその命を削る。
不規則に飛来する投げ槍は、回避用のスキルを使わないと躱しきれないほど狙いが正確だ。
地面に突き刺さった投げ槍は、固い地面で砕けもせずに3分の2ほどが地面に埋まっている。恐ろしいほどの威力だ。
(帝都の城壁の外なのに)
自らが作り出した削りかすを浴びながら細剣を突き込む。
既に膨大な生命を削ったはずなのに敵はまだ生きている。
(強くて嫌になるわ)
冒険者ならもっと早く消耗も少なく勝てると理解できてしまうのも腹が立つ。
セニャは数分かけて1体の枯木人形を徹底的に破壊する。
その頃には、後衛で槍を投げていた枯木人形は視認不可能なほど遠くへ退却している。
(幽界樹が指示を出しているのかしら。だとしたら大戦力で攻めて来るまで時間がないわね)
緊張で表情が強ばりそうになるのを耐えながら、セニャは枯木人形の残骸を燃料にしてパンを焼き続けるよう指示を出していた。
●
「忙しいのに悪いわね」
焼きたてパンの香りが立ちこめる野外仮設厨房で、帝国の役人が冒険者に話しかけている。
「この香り? この種類の幽界樹の仔が燃料になりそうだったから試して見たらその通りだったの。敵の戦力を引きつけるために有効利用したらこうなった訳」
窯で焼いたパンは補給物資として前線に送り込んでいる。
「計画した私が言うのもなんだけど、ここは長続きしないわ」
送り込まれてくる敵戦力が徐々に増えている。
次の襲撃はセニャとその配下だけでは守り切れないし、冒険者がいても防御施設もない剥き出しのパン窯複数を守りながら戦うのは難易度が高いし実行する意義がほぼない。
「私からお願いしたいのは明日の夜明けまでのここの防衛よ」
何も来なければパンを食べているだけで終わるがまずあり得ない。
ここは帝都のすぐ側なのだ。
「おそらく私くらいの大きさの、枯木人形っぽい幽界樹の仔が襲撃してくると思う。冒険者の活躍、期待しているわね」
説明するセニャは、夜明け寸前に数十体による襲撃が発生するなど予想もしていなかった。
解説
●目的
クリーパー枯木人形の撃退または撃破
●戦場
帝都が遠くに見える平地
クリーパーの残骸を燃やして焚き火や仮設パン窯を複数稼働中の場所です
この場にいるのは冒険者とセニャだけです
ときどき輸送担当の兵士が現れますが、戦闘には参加しませんし参加してもあまり役に立ちません
●枯木人形
全高1.6メートル程度のクリーパー
外見は枯木でできた人形です
新型の幽界樹の仔の1種で、頑丈な上にエーテル知覚での索敵が得意で近くの同種と情報共有まで可能
幽界樹がある程度操作しているため、前衛と後衛の役割を分担し防御が弱そうな相手に集中攻撃してくるかもしれません
夜明け前に各種あわせて20体が1つの部隊として襲撃を仕掛けてきます
半数が撃破された時点で必ず撤退しようとします
・枯木人形(素手)
生命と物理防御に優れた個体です
人間に対し移動4で積極的に近づき殴ったり蹴ったりしてきます
・枯木人形(投げ槍)
物理と魔法の攻撃力に優れる反面、生命が少なめな個体で移動は3
自身の体の一部を投擲用の槍に変化させることが可能で、射程20メートルの射撃攻撃を人間に対して行います
物理と魔法を切り替える際は約5秒間攻撃せず集中する必要が有ります
●他
・パン窯
有り合わせの資材で造ったパン窯
焼く前のパン生地が大量に入った箱も用意されています。窯は3つあります
有志のパン職人(低レベル授恵者)が使っていました。パン職人は冒険者と交代でシャルトに帰還します
冒険者が関与しない場合、パン窯は放置されて数日後に自壊し、パン生地は戦闘開始前にシャルトへ輸送されます
・焚き火
夜に備えて複数用意されています
冒険者が関与しない場合はセニャが維持します
・セニャ
帝国で代官をしている役人
冒険者の邪魔にならないよう行動し、夜明けの後はシャルトへ撤退する予定です
・輸送担当の兵士
マジカルポケットが使える帝国弓兵。セニャの部下
冒険者が到着するまでは拠点にいますが、冒険者が到着すると前線への焼き立てパン配達を再開します
あまり強くありません。逃げ足はなかなかです
・小型コンテナ
セニャとその部下達が愛用しているマジカルポケット用の箱。今回は木製
使い捨てではないですが、予備がいくつも用意されています
マスターより
枯木人形の襲撃は、闇の中から顔のない木製人形の集団が隊列を組んで全力疾走してくる場面から始まるかもしれません
リプレイ
●
倒れたばかりの枯木人形に足をかけ、ピンク髪の代官が高笑いをしている。
背後のパン竈からはパンの残り香が濃厚に漂い、前線へパンや物資を運ぶ帝国兵士がセニャに気付かないふりをして走っている。
(体調不良のときの夢に出てきそうな光景ですね)
帝国出身でしかも代官の身内と繋がりがある者として愛想良く拍手などしているが、セロンガード・シュタインドルフの評価は正しくそれ故に辛辣だった。
(フラグは立ってないですよね?)
今回、目の前の代官が高転びする条件が揃いすぎている気がした。
「意思ある人類ならこの光景にポカンとするところなのだ」
ストレガ・L・リベルガストラは率直な感想を口にしてからセニャに声をかける。
価値観の偏りが酷く差別主義者ですらあるセニャではあるが、極端なエリート主義者でもあるのでゴブリンの賢者に対する態度は柔らかい。
「挑発をクリーパーが理解してるとは思えないが実際に敵が現れたなら何かの効果はあると判断するのだ。……単に授恵者のエーテルに魅かれてるだけかもしれないが」
枯木人形を調べるとなかなか強そうに感じた。
同時に、燃料として良質であることも理解する。
「良くやったな、セニャ! 俺が来たからにはもう安心だ!」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトは上機嫌だ。
とても親しい少女に久々に会えて、しかもアルベルトが良いところを見せられそうな状況なので気合いも入る。
「待ってたわよ! どんどん倒して焼いていって頂戴!」
セニャのテンションも明らかに高い。
(敵を燃やしてパンを焼くという行為に一抹の……ちょっとした狂気を感じます。しかし、燃やすという行為自体は悪くはありませんね)
セロンガードは熟練の斥候らしく周辺の状況を素早く確認し、単独でも周辺に対する警戒が可能な場所に陣取った。
「パンを焼く匂いは香ばしさがあって良いのですが、もしや敵はパンを食べに来ているんですかね?」
フリーダ=ブロムヴィストはパン種が入った大箱を軽々運んでいる。
「啓示によれば『大群をいかに効率良く倒せるかが鍵』との事ですし、夜明けまで何とかこの場をしのぎましょう」
半ば無意識に周辺を戦場予定として評価し、最後に改めてセニャの顔を見る。
「医療用の道具を持ってくればよかったかなー……」
アルマ・ヴァレンタインが、フリーダと視線を交わして肩をすくめていた。
●
元枯木人形の薪も戦場近くで稼働するパン竈も時代の徒花だ。
決戦に負ければ無意味になり、決戦に勝てば入手や利用される機会もなくなるだろう。
「惜しまず使うのだ」
それを分かっているストレガは節約は一切せずに設備と道具を酷使する。
「いいから寝ておくのだ」
「はいセニャさんはこっちだよー」
特に必要もないのに状況を詳しく説明しようとしたセニャがアルマに連行されていく。
(既にかなり痛んでいるのだ。熱の偏りもかなり……うむ)
どうせ持っては帰れない。
ストレガは割りきって翌朝まで使い潰すつもりで薪を追加し熱を調節する。
「火の番をすることになるからあまり離れられないのが問題か」
パン種を小さくせず、数名の兵士が分けて食べられるようなサイズで並べて竈の蓋を閉じるストレガ。大は小を兼ねるのだ。
「数体なら対処できそうです」
セロンガードは技術も体力も集中力も必要な警戒を延々続けている。
矢が届く範囲までは近付いて来ないが、枯木人形とその背後にいる幽界樹はここにも意識を向けているようだ。
「待ち構える戦いになるな」
アルベルトの戦術眼が冴え渡っている。セニャとは文字通り次元が違い、セニャの計画の穴もよく見える。
(今回は俺達が補えるさ)
楽観ではなく冷静な計算と判断を経てそう考えていた。
「はいたつでーす」
「ありがとうございまーす!」
焼きたてパンを詰め込んだコンテナがマジカルポケットで収納される。
「御苦労なのだ。夜食に食べていくと良いのだ」
パン職人と化したストレガが配達人達に声をかける。
ホットチョコレートとそれに浸して食べるのに丁度良いサイズと柔らかさのパン。
熱してとろけたチーズをつけたパンや、豪華に調理済み干し肉を載せた品まである。
「わー!」
「ありがとうございますっ」
兵士から年相応の少年少女に戻ってしまった彼等を責める者はいない。
帝都内よりははるかにマシとはいえ、並の戦場より危険な場所で輸送に従事して消耗も激しいのだ。
「調子を崩さぬよう気を付けるのだ」
ストレガは見送る間も新たなパン種を竈の中へ入れている。
複数並行してのパン焼き、もちろん耐熱硝子として機能するような紋具はないので勘と経験頼りという難行を遂行中なので、超越1歩手前の調理技術と優れた味覚があってもかなり辛い。
「かわるよー」
体質を活かして丁度良い長さの眠りから目覚めたアルマが作業を引き継ぐ。
ストレガと比べれば平凡とはいえ一般基準では十分に料理上手だ。
暗視能力も活かして警戒のついでに前線の兵士が口にすれば感動で涙ぐむ水準のパンを生産……する前にその時がきた。
「敵が接近中です。数は19、いえ20」
セロンガードが索敵結果を共有する。
夜明け寸前の闇と光に紛れての接近は酷く見つけ辛く、しかし超視覚と暗視能力を兼ね備えるセロンガードから逃れることはできない。
ストレガが地面のセニャをちらりと見る。
肉体的にも精神的にももがいて起床しようとはしているが、連日の無理がたたってまだ立ち上がれてもいなかった。
●
フリーダはセロンガードから渡された松明を掲げる。
材料は元枯木人形で接近中なのも枯木人形だ。
数は20。見るからに強靱で素早い8体が整然とした隊列を維持。
残る12体は禍々しい形と気配の槍を複数抱えて前衛の後ろを進軍中だ。
「たいしたものですね」
敵の数が多すぎ、冒険者5人と代官1人では前衛が前衛として機能し辛い。
接敵すなわち囲まれての乱戦になってしまう。
「では」
フリーダは立ったまま敵に向かって落下する。
その奇妙な動きが終わっても、鎖帷子と装甲で徹底的に守りを固めたとは思えない速度で枯木人形部隊へ突撃する。
(アダマントボディを使い終わる前にどれだけ減らすことができるかですね)
迎撃の拳や蹴りはフリーダか見てもなかなかの脅威。
しかし装甲とそれを操る術と素の防御力に優れただけでなくアダマントボディまで使いこなすフリーダには通用しない。
蹴る殴るに対して速度をのせた体当たりで返礼し、そこで速度を止めずに枯木人形の後衛に向け落下する。
(今回の我々より連携ができているかもしれませんね)
枯木人形は自身のパーツで出来た槍を投擲し命中コースに載せる。
その数なんと11。
それは拳や蹴りより強く、高位の授恵者相手でも十分通じるはずだった。
「くっ。いたいじゃないですか」
若干棒読みのフリーダは特に痛みを感じていない。
アダマントボディが機能している限り、彼女の防御は直接的な攻撃を全て防ぐ無敵の盾となる。少なくとも枯木人形相手なら。
(さすがに騙しきれませんか)
後衛枯木人形のうち4体ほどが得物を持ち替え魔力を込める。
フリーダは光塊を振り回して積極的に襲うが敵を削りきれず1本を躱し残る3本に直撃された。
枯木人形あるいはそれを操るものが動揺に似た気配を見せる。
白金に輝く装甲は、穴が開くどころか傷すらついていない。
(これ以上は拙いですね)
スキルを使い切ったフリーダは、少しだけ焦っていた。
小さな光の破片が強固な木の肌を貫通する。
セロンガードによる射撃は構えと味方からのバフもあり一撃一撃がかなりの高威力だ。
(燃えれば楽だったのですが)
セロンガードは次の矢をつがえる。
フリーダは支援前提の動きに切り替え、敵への打撃こそ減ったが敵からの魔法攻撃を受ける機会は減少している。
(ぎりぎりになるかもしれません)
枯木人形製の薪で灯りを作り、セロンガード自身は暗視能力を使っての遠距離射撃。
とても有効な戦術ではあるが、敵が対応するまでに削りきれるか微妙なところだった。
●
「枯れ木人形共! セニャを傷つけるなら容赦はしない!!」
最初に襲撃したのはセニャであることを気にしてはいけない。
アルベルトは自身の移動力の低さも利用して枯木人形前衛に囲まれるまで待ち、組み付かれる寸前にシュトルツを暴風のごとく振り回す。
並の剣では歯が立たない肌も中身も柔らかな紙のごとく引きちぎられて地面と宙にぶちまけられる。
しかし残念ながら対単体の攻撃だ。
3つの枯木人形が薪にすらならないほど砕かれる頃には、5体の無傷の枯木人形がアルベルトを滅多打ちにしている。
(これだけ減ればなんとかなるか)
アルベルトは真後ろへ加速する。
それ高速だが長続きはしない。
5体の前衛枯木人形は移動に全力を出して追い始め、しかし途中でその速度が激減した。
「興味深い個体なのだ」
ストレガは枯木人形の進行方向へもう1つ重力場を置く。
単純だから対策がない戦術だ。
ストレガの策はそれで終わらず、青藍に光る錨付き鎖を4本次々に振り回して1体ずつ合計4体に巻き付ける。
「すごーい! ぜんぜんうごかな……移動しないよー!」
アルマが何をやっているかと言うと、序盤のバフの後は光弾乱射だ。
可愛らしい魔法の箒から放たれる光弾は、バフと構えの効果もあって一発一発がアルベルトの通常攻撃以上必殺技未満の威力がある。
「またー……」
けれど狙いはちょっと甘いので躱されることもある。
実際、3体までは景気よく破壊できたが残りには1発しか当たっていない。
「アルベルトさんヒールヒール! 結婚前に大怪我したらセニャさんに怨まれるよー」
途中で攻撃はストレガに任して治療に集中していた。
セロンガードに散々食われた後衛枯木人形がこちらに近付いている。
(もう一度乱戦になるとまずいのだ)
未だ無傷であり防御用スキルも用意はしているが囲まれたら危険だ。
「何度見ても……」
アルベルトが枯木人形に駆け寄り、1度の斬撃で止めを刺す。
相変わらずストレガの付与術が圧倒的で、サイズの割に強い枯木人形が状態異常の面で雑魚扱いされている。
アルベルトは近い距離にいた枯木人形2体を光塊で破壊する。
次はフリーダと合流して後衛枯木人形との対決だ。
消耗した状態では危険な相手ではあるが、勝ち目は十分にあるはずだった。
「ふむ」
ストレガが足を止める。
枯木人形が一斉に反転し後退しはし始めたのだ。
無防備な背中をフリーダに切り裂かれてもセロンガードの矢に射抜かれても止まらない。
「指示が届いたのだろう。潮時なのだ」
敵戦力を拘束して打撃を与えるという目的は達成した。
これ以上危険を冒す必要はかなり薄い。
側面からの襲撃を警戒していたセニャが大きく息を吐いて、そのまま力が抜け倒れそうになっていた。
●
「これで終わりというのはもったいなくはありますね」
フリーダは最後に焼かれたパンをかじる。
全身運動の直後なのでもともと美味なパンがますます旨い。
ストレガは小型コンテナに詰め込めるだけ詰め込んだ後セニャに任せる。
この1つを除き、他のコンテナはシャルトに運搬済みだ。
「折角成人したのでワインを片手にパンでも食べながら愉悦したかったのですが、荷物の関係でワインを持ち込めなかったので諦めましょう」
セロンガードがちらりと目配せすると、セニャは自身のマジカルポケットから出したコンテナの底から瓶を1本取り出し渡した。
「それで終わりかい?」
「まさか。人数分とはいかないけど私達の分もあるわ」
セニャはアルベルトに笑顔で答えるが荷馬車の上だ。
「せっかくのパン窯を放棄するのも勿体ないと思ったんだけどねー」
アルマはしかたがないなぁという表情だ。
「というわけでー!」
「うむ、余った薪は軍の資材になるだろう」
アルマとストレガが枯木人形の残骸を拾っては荷車に積み込んでいく。
葬儀前のご遺体のような姿になったセニャが冷や汗を流しているが気にする暇はない。
燃料は前線に近くなるほど価値が高いのだ。
「そういえばセニャさん? 戦闘で結構苦戦してたみたいだし、行く暇あれば迷宮神サマの祠にお参りして神材武器を作ってみるとかー?」
アルマが世間話を始める。
「ねえちょっとこれ発火しない? うんまあ、私だと出国の許可も出ない気がするし仮に作ってもらえても慣れるまでの時間があるかどうか。どうなるにせよ半年とかはかからないでしょうし」
セニャの言葉は徐々に弱く、というより眠気を帯びていく。
「そうー? この前の材料と製法が厄い武器とはぜんぜん違うクリーンで強力な武器になるよー? チューニング次第でボクのコレみたいなゲテモノ武器が一丁上がったりもするし」
巨大な魔力の一部を占める魔法の箒を掲げ、得意げに胸を張るアルマである。
木とセニャを固定し終えたストレガが、自身が運べるだけ荷作りして背負う。
シャルトに提供するか研究資料として使うのかは分からないが、人類のために使うのは間違いない。
黒アルパカが荷馬車を牽き始める。
「後少しだな」
アルベルトが帝都を一瞥する。
セニャが見れば惚れ直すシリアス顔ではあるが、今日のいちゃいちゃは無理かなとも考えていた。
倒れたばかりの枯木人形に足をかけ、ピンク髪の代官が高笑いをしている。
背後のパン竈からはパンの残り香が濃厚に漂い、前線へパンや物資を運ぶ帝国兵士がセニャに気付かないふりをして走っている。
(体調不良のときの夢に出てきそうな光景ですね)
帝国出身でしかも代官の身内と繋がりがある者として愛想良く拍手などしているが、セロンガード・シュタインドルフの評価は正しくそれ故に辛辣だった。
(フラグは立ってないですよね?)
今回、目の前の代官が高転びする条件が揃いすぎている気がした。
「意思ある人類ならこの光景にポカンとするところなのだ」
ストレガ・L・リベルガストラは率直な感想を口にしてからセニャに声をかける。
価値観の偏りが酷く差別主義者ですらあるセニャではあるが、極端なエリート主義者でもあるのでゴブリンの賢者に対する態度は柔らかい。
「挑発をクリーパーが理解してるとは思えないが実際に敵が現れたなら何かの効果はあると判断するのだ。……単に授恵者のエーテルに魅かれてるだけかもしれないが」
枯木人形を調べるとなかなか強そうに感じた。
同時に、燃料として良質であることも理解する。
「良くやったな、セニャ! 俺が来たからにはもう安心だ!」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトは上機嫌だ。
とても親しい少女に久々に会えて、しかもアルベルトが良いところを見せられそうな状況なので気合いも入る。
「待ってたわよ! どんどん倒して焼いていって頂戴!」
セニャのテンションも明らかに高い。
(敵を燃やしてパンを焼くという行為に一抹の……ちょっとした狂気を感じます。しかし、燃やすという行為自体は悪くはありませんね)
セロンガードは熟練の斥候らしく周辺の状況を素早く確認し、単独でも周辺に対する警戒が可能な場所に陣取った。
「パンを焼く匂いは香ばしさがあって良いのですが、もしや敵はパンを食べに来ているんですかね?」
フリーダ=ブロムヴィストはパン種が入った大箱を軽々運んでいる。
「啓示によれば『大群をいかに効率良く倒せるかが鍵』との事ですし、夜明けまで何とかこの場をしのぎましょう」
半ば無意識に周辺を戦場予定として評価し、最後に改めてセニャの顔を見る。
「医療用の道具を持ってくればよかったかなー……」
アルマ・ヴァレンタインが、フリーダと視線を交わして肩をすくめていた。
●
元枯木人形の薪も戦場近くで稼働するパン竈も時代の徒花だ。
決戦に負ければ無意味になり、決戦に勝てば入手や利用される機会もなくなるだろう。
「惜しまず使うのだ」
それを分かっているストレガは節約は一切せずに設備と道具を酷使する。
「いいから寝ておくのだ」
「はいセニャさんはこっちだよー」
特に必要もないのに状況を詳しく説明しようとしたセニャがアルマに連行されていく。
(既にかなり痛んでいるのだ。熱の偏りもかなり……うむ)
どうせ持っては帰れない。
ストレガは割りきって翌朝まで使い潰すつもりで薪を追加し熱を調節する。
「火の番をすることになるからあまり離れられないのが問題か」
パン種を小さくせず、数名の兵士が分けて食べられるようなサイズで並べて竈の蓋を閉じるストレガ。大は小を兼ねるのだ。
「数体なら対処できそうです」
セロンガードは技術も体力も集中力も必要な警戒を延々続けている。
矢が届く範囲までは近付いて来ないが、枯木人形とその背後にいる幽界樹はここにも意識を向けているようだ。
「待ち構える戦いになるな」
アルベルトの戦術眼が冴え渡っている。セニャとは文字通り次元が違い、セニャの計画の穴もよく見える。
(今回は俺達が補えるさ)
楽観ではなく冷静な計算と判断を経てそう考えていた。
「はいたつでーす」
「ありがとうございまーす!」
焼きたてパンを詰め込んだコンテナがマジカルポケットで収納される。
「御苦労なのだ。夜食に食べていくと良いのだ」
パン職人と化したストレガが配達人達に声をかける。
ホットチョコレートとそれに浸して食べるのに丁度良いサイズと柔らかさのパン。
熱してとろけたチーズをつけたパンや、豪華に調理済み干し肉を載せた品まである。
「わー!」
「ありがとうございますっ」
兵士から年相応の少年少女に戻ってしまった彼等を責める者はいない。
帝都内よりははるかにマシとはいえ、並の戦場より危険な場所で輸送に従事して消耗も激しいのだ。
「調子を崩さぬよう気を付けるのだ」
ストレガは見送る間も新たなパン種を竈の中へ入れている。
複数並行してのパン焼き、もちろん耐熱硝子として機能するような紋具はないので勘と経験頼りという難行を遂行中なので、超越1歩手前の調理技術と優れた味覚があってもかなり辛い。
「かわるよー」
体質を活かして丁度良い長さの眠りから目覚めたアルマが作業を引き継ぐ。
ストレガと比べれば平凡とはいえ一般基準では十分に料理上手だ。
暗視能力も活かして警戒のついでに前線の兵士が口にすれば感動で涙ぐむ水準のパンを生産……する前にその時がきた。
「敵が接近中です。数は19、いえ20」
セロンガードが索敵結果を共有する。
夜明け寸前の闇と光に紛れての接近は酷く見つけ辛く、しかし超視覚と暗視能力を兼ね備えるセロンガードから逃れることはできない。
ストレガが地面のセニャをちらりと見る。
肉体的にも精神的にももがいて起床しようとはしているが、連日の無理がたたってまだ立ち上がれてもいなかった。
●
フリーダはセロンガードから渡された松明を掲げる。
材料は元枯木人形で接近中なのも枯木人形だ。
数は20。見るからに強靱で素早い8体が整然とした隊列を維持。
残る12体は禍々しい形と気配の槍を複数抱えて前衛の後ろを進軍中だ。
「たいしたものですね」
敵の数が多すぎ、冒険者5人と代官1人では前衛が前衛として機能し辛い。
接敵すなわち囲まれての乱戦になってしまう。
「では」
フリーダは立ったまま敵に向かって落下する。
その奇妙な動きが終わっても、鎖帷子と装甲で徹底的に守りを固めたとは思えない速度で枯木人形部隊へ突撃する。
(アダマントボディを使い終わる前にどれだけ減らすことができるかですね)
迎撃の拳や蹴りはフリーダか見てもなかなかの脅威。
しかし装甲とそれを操る術と素の防御力に優れただけでなくアダマントボディまで使いこなすフリーダには通用しない。
蹴る殴るに対して速度をのせた体当たりで返礼し、そこで速度を止めずに枯木人形の後衛に向け落下する。
(今回の我々より連携ができているかもしれませんね)
枯木人形は自身のパーツで出来た槍を投擲し命中コースに載せる。
その数なんと11。
それは拳や蹴りより強く、高位の授恵者相手でも十分通じるはずだった。
「くっ。いたいじゃないですか」
若干棒読みのフリーダは特に痛みを感じていない。
アダマントボディが機能している限り、彼女の防御は直接的な攻撃を全て防ぐ無敵の盾となる。少なくとも枯木人形相手なら。
(さすがに騙しきれませんか)
後衛枯木人形のうち4体ほどが得物を持ち替え魔力を込める。
フリーダは光塊を振り回して積極的に襲うが敵を削りきれず1本を躱し残る3本に直撃された。
枯木人形あるいはそれを操るものが動揺に似た気配を見せる。
白金に輝く装甲は、穴が開くどころか傷すらついていない。
(これ以上は拙いですね)
スキルを使い切ったフリーダは、少しだけ焦っていた。
小さな光の破片が強固な木の肌を貫通する。
セロンガードによる射撃は構えと味方からのバフもあり一撃一撃がかなりの高威力だ。
(燃えれば楽だったのですが)
セロンガードは次の矢をつがえる。
フリーダは支援前提の動きに切り替え、敵への打撃こそ減ったが敵からの魔法攻撃を受ける機会は減少している。
(ぎりぎりになるかもしれません)
枯木人形製の薪で灯りを作り、セロンガード自身は暗視能力を使っての遠距離射撃。
とても有効な戦術ではあるが、敵が対応するまでに削りきれるか微妙なところだった。
●
「枯れ木人形共! セニャを傷つけるなら容赦はしない!!」
最初に襲撃したのはセニャであることを気にしてはいけない。
アルベルトは自身の移動力の低さも利用して枯木人形前衛に囲まれるまで待ち、組み付かれる寸前にシュトルツを暴風のごとく振り回す。
並の剣では歯が立たない肌も中身も柔らかな紙のごとく引きちぎられて地面と宙にぶちまけられる。
しかし残念ながら対単体の攻撃だ。
3つの枯木人形が薪にすらならないほど砕かれる頃には、5体の無傷の枯木人形がアルベルトを滅多打ちにしている。
(これだけ減ればなんとかなるか)
アルベルトは真後ろへ加速する。
それ高速だが長続きはしない。
5体の前衛枯木人形は移動に全力を出して追い始め、しかし途中でその速度が激減した。
「興味深い個体なのだ」
ストレガは枯木人形の進行方向へもう1つ重力場を置く。
単純だから対策がない戦術だ。
ストレガの策はそれで終わらず、青藍に光る錨付き鎖を4本次々に振り回して1体ずつ合計4体に巻き付ける。
「すごーい! ぜんぜんうごかな……移動しないよー!」
アルマが何をやっているかと言うと、序盤のバフの後は光弾乱射だ。
可愛らしい魔法の箒から放たれる光弾は、バフと構えの効果もあって一発一発がアルベルトの通常攻撃以上必殺技未満の威力がある。
「またー……」
けれど狙いはちょっと甘いので躱されることもある。
実際、3体までは景気よく破壊できたが残りには1発しか当たっていない。
「アルベルトさんヒールヒール! 結婚前に大怪我したらセニャさんに怨まれるよー」
途中で攻撃はストレガに任して治療に集中していた。
セロンガードに散々食われた後衛枯木人形がこちらに近付いている。
(もう一度乱戦になるとまずいのだ)
未だ無傷であり防御用スキルも用意はしているが囲まれたら危険だ。
「何度見ても……」
アルベルトが枯木人形に駆け寄り、1度の斬撃で止めを刺す。
相変わらずストレガの付与術が圧倒的で、サイズの割に強い枯木人形が状態異常の面で雑魚扱いされている。
アルベルトは近い距離にいた枯木人形2体を光塊で破壊する。
次はフリーダと合流して後衛枯木人形との対決だ。
消耗した状態では危険な相手ではあるが、勝ち目は十分にあるはずだった。
「ふむ」
ストレガが足を止める。
枯木人形が一斉に反転し後退しはし始めたのだ。
無防備な背中をフリーダに切り裂かれてもセロンガードの矢に射抜かれても止まらない。
「指示が届いたのだろう。潮時なのだ」
敵戦力を拘束して打撃を与えるという目的は達成した。
これ以上危険を冒す必要はかなり薄い。
側面からの襲撃を警戒していたセニャが大きく息を吐いて、そのまま力が抜け倒れそうになっていた。
●
「これで終わりというのはもったいなくはありますね」
フリーダは最後に焼かれたパンをかじる。
全身運動の直後なのでもともと美味なパンがますます旨い。
ストレガは小型コンテナに詰め込めるだけ詰め込んだ後セニャに任せる。
この1つを除き、他のコンテナはシャルトに運搬済みだ。
「折角成人したのでワインを片手にパンでも食べながら愉悦したかったのですが、荷物の関係でワインを持ち込めなかったので諦めましょう」
セロンガードがちらりと目配せすると、セニャは自身のマジカルポケットから出したコンテナの底から瓶を1本取り出し渡した。
「それで終わりかい?」
「まさか。人数分とはいかないけど私達の分もあるわ」
セニャはアルベルトに笑顔で答えるが荷馬車の上だ。
「せっかくのパン窯を放棄するのも勿体ないと思ったんだけどねー」
アルマはしかたがないなぁという表情だ。
「というわけでー!」
「うむ、余った薪は軍の資材になるだろう」
アルマとストレガが枯木人形の残骸を拾っては荷車に積み込んでいく。
葬儀前のご遺体のような姿になったセニャが冷や汗を流しているが気にする暇はない。
燃料は前線に近くなるほど価値が高いのだ。
「そういえばセニャさん? 戦闘で結構苦戦してたみたいだし、行く暇あれば迷宮神サマの祠にお参りして神材武器を作ってみるとかー?」
アルマが世間話を始める。
「ねえちょっとこれ発火しない? うんまあ、私だと出国の許可も出ない気がするし仮に作ってもらえても慣れるまでの時間があるかどうか。どうなるにせよ半年とかはかからないでしょうし」
セニャの言葉は徐々に弱く、というより眠気を帯びていく。
「そうー? この前の材料と製法が厄い武器とはぜんぜん違うクリーンで強力な武器になるよー? チューニング次第でボクのコレみたいなゲテモノ武器が一丁上がったりもするし」
巨大な魔力の一部を占める魔法の箒を掲げ、得意げに胸を張るアルマである。
木とセニャを固定し終えたストレガが、自身が運べるだけ荷作りして背負う。
シャルトに提供するか研究資料として使うのかは分からないが、人類のために使うのは間違いない。
黒アルパカが荷馬車を牽き始める。
「後少しだな」
アルベルトが帝都を一瞥する。
セニャが見れば惚れ直すシリアス顔ではあるが、今日のいちゃいちゃは無理かなとも考えていた。
マスターコメント
お疲れ様でした。
ショートシナリオ難しい 報酬:多い5 / 4〜8人
2023年12月16日 02時52分06秒 公開
普通
相談掲示板
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 パン窯を維持する予定。とりあえず生地を焼き終えるまでは。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー ショートスリーパーと暗視もってって枯木人形の迎撃に出ようかなと