レピド被害者の会~ティーチャー・最後の授業

おおくまねこ

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シナリオID:3360

オープニング

●暗殺教室
「愛する生徒諸君! 本日をもって君達の訓練を終了する。卒業試験は――本番、すなわち、『彼』の暗殺だ!」
 仮面の暗殺者ティーチャーは生徒達の前で高らかに宣言した。

「……」
 卒業――。四人いた『生徒』達はティーチャーの言葉をずしりとした重みを持って受け止める。いよいよ、厳しい訓練が報われる時がくる。この、ティーチャーによる十日間の暗殺教室は、ただの一人の男を殺すためだけに行われたのだから。

「最初の日にも言ったが! 暗殺者は仕事が失敗した時には、その代償を己の命で支払う覚悟が必要だ! その『覚悟』を持たぬ者に暗殺者たる資格はない。今一度問おう。君達は、たとえ返り討ちに遭おうとも、『彼』を殺したいかね?」

 ティーチャーの言葉に、生徒達は静かに頷いた。すると、ティーチャーも満足そうに頷く。

「よろしい! では、作戦を説明する。まず大前提として、いくら授恵者であるとはいえ、たった十日の訓練を積んだぐらいでは、『彼』を暗殺することなど不可能だ。そこでベテランの暗殺者である私が秘策を授けよう。彼の暗殺には『エドゥノーグダンジョン』を利用する。あそこは神が人類を試すために作った修行場だからね。暗殺に使える仕掛けも山ほどある。ここならばっちりだ!
 もっとも、ダンジョン内で怪しい人死にが出た場合は厳しい調査が行われるから、完全犯罪にはならないがね。この場所を選んだのは君達を無罪にするためではなく、君達に彼を殺すチャンスを与えるためだと思ってくれたまえ!」

 ティーチャーの言葉に、再び四人の生徒達は首を縦に振る。もとより、生徒達は刺し違えてでも『彼』を殺すつもりだ。今更殺人を罪に問われる、などという当たり前なことでしり込みする者などいなかった。

「ターゲットをおびき寄せるのは私がやろう。君達はただ、ダンジョンで彼が来るのを待ち伏せればいい。もちろん、私も現場には同行する。私には教師として結末を見届ける義務があるからね。だが、私は手は出さない。この暗殺は、君達の仕事だ」
 ティーチャーはそう言うと、ぴしり、と教鞭を鳴らした。

「暗殺に絶対の保証はない。時には天がターゲットに味方することもある。ベストを尽くしたまえ。私は、君達が過去と決着を付け、前に進めることを祈っている!」
(その結末がたとえ、愛しい教え子との別れであろうとも)

●ティーチャーからの手紙
『親愛なるブラッドへ
 君に会わせたい人がいる。
 三日後、この場所に来たまえ。
 待っているよ。
 君のティーチャーより。

 追伸:
 猫にチョコレートは毒だ。誤ってショウガ君に与えたりしないよう気を付け給え』

「またあの男からか……俺に会わせたい人、だと?」
 ティーチャーはレピドの過去を知っている。もしかすると、レピドが記憶を失う前の知己である可能性は否定できない。それに、最後の追伸の一文は猫を飼っているレピドに対する脅迫とも取れる。レピドにこれを拒む選択肢などありえなかった。

「しかし、待ち合わせ場所にエドゥノーグダンジョンを指定してくるとはな……一体何を企んでいる……」

 ティーチャーからの手紙には、一枚の依頼書が同封されていた。それは、迷宮都市エドゥノーグの枝葉ダンジョンのボスの攻略依頼だった(依頼人の名前はしっかり「ティーチャー」となっていた)。ご丁寧に、ティーチャーが冒険者ギルドに依頼を出したのだろう。

「いいだろう。望み通り、会いに行ってやるさ。今度こそ奴と決着を着けてやる」
 レピドは自分を待ち受ける過酷な運命をまだ知らなかった。

●最後の授業
「よく来てくれた、ブラッド!」
 仲間達と共に、エドゥノーグダンジョンを踏破したレピドは、迷宮の奥底でティーチャーと対峙していたそこは、血のように赤い河が流れる不気味な空間だった。だが、モンスターは既にティーチャーたちによって倒されたのか、一体もいなかった。

「まずは君に、この場所について説明しておこう! この部屋は特殊な霊験がかかっている! 効果は『必殺』。ざっくり言うと、授恵者の防御力が限りなくゼロに近くなるのだ!」
 ティーチャーはハイテンションに叫んだが、レピドは冷たくティーチャーを睨み付けた。

「何を企んでいる。さっさと要件を話せ。その人達が俺に会わせたい人か?」
(この人達は誰だ。見覚えは無いが……なぜ、俺を睨んでいる?)

「そうだとも! 紹介しよう、私の新しい生徒達だよ! 彼らは『レピド被害者の会』。ブラッド、君がかつて暗殺したターゲットの被害者の遺族たちだ。彼らは君が今は『レピド・クロサイト』と名乗っていることも知っているよ。だから、私はあえてこの名前で彼らを呼ぶことにした」
「なん、だと?」
 その言葉に完全に虚を突かれたレピドは呆然とその場に立ち尽くした。

「ブラッド。彼らはみな、君を殺したがっている。過去との決着を望んでいる。レオ、スコーピオン、ユピテル、バーン。四人全員が過去に囚われ、一歩も前には進めなくなった哀しい生徒達だ!
 ブラッド。たとえ君が記憶を失おうとも。過去を切り捨てることはできない。君が忘れてしまっても、彼らは君のことを憶えている。愛しい人を冷たい屍へと変えた、赤い髪の暗殺者を!」

「ティーチャー!!」
 レピドは色々なことがぐるぐると頭の中を回る中、かろうじてその名を叫んだ。
「さあ、ブラッド。最後の授業だ。こんな御時世だからね、悩み事は今の内に解消して、前向きに仕事に励もうじゃないか!」

解説

舞台:エドゥノーグダンジョン上層枝葉ダンジョン「等活地獄の層」 目標:「レピド・クロサイト被害者の会」との決着。 ※表向きの依頼内容は「エドゥノーグダンジョン上層ボスの撃破」 依頼人:ティーチャー(偽装依頼のため、後に冒険者ギルドに目を付けられる。死んでなければ) ●フロアギミック「等活地獄」 戦場にいる全ての者の防御力・魔法防御力を0にする。ちなみにフロアは屋外エリアとなっており、血のように赤い空と、血の河が流れる河原となっている。 ●登場人物 ティーチャー 三体 仮面をつけた暗殺者。レピドと「被害者の会」の決着を見届けようとしている。邪魔が入った場合、邪魔者を排除すべく、分身して交戦する。戦闘力は以前に出現した際より弱くなっているが、ダンジョンの仕掛けが強力なため、危険な相手であることに変わりはない。 武器は教鞭で、シーフクラスの多数のスキルを操る。 ●レピド被害者の会 四名 メンバー全員がかつて暗殺者「ブラッド」の標的となった人物たちの遺族。10レベル前後の低レベル授恵者(それでも非授恵者の熟練冒険者並には強い)。ティーチャーから戦闘訓練を受けているが、全員人を殺したことはない。ちなみに名前は本名ではなくコードネーム。 戦闘が始まると、「一人ずつ自らの恨みを告白していく」という精神攻撃を行いつつ、残りのメンバーが攻撃してくる。告白が全員分終わるまでは30ラウンドかかる。 ※「告白による精神攻撃」による影響は、プレイングの内容を見てMSの裁量で判断します。 レオ 十歳 獣人の少年。父は汚職に手を染めた都市同盟の政治家だったが、不正が露見しそうになり、口封じのため暗殺者に消された。 スコーピオン 十六才 かつて都市同盟のとある都市を裏で仕切っていたギャングの娘。父は対立組織の長に雇われた暗殺者に殺された。 ユピテル 二十七才 未亡人。夫は不倫相手に雇われた暗殺者に刺殺され、川に浮いていた。 バーン 二十一才 リーンエス王国のとある貴族に仕える、官僚の家柄の次男。兄は清廉な役人だったが、それを疎んだ領主が雇った暗殺者に家ごと燃やされた。 上層ボス 「大獄の鬼王」 故人。このフロアを仕切るボスだったが、すでにティーチャーによって暗殺されており、フロアギミックだけが残っている状態。

マスターより

こんにちは。おおくまねこです。教え子には手厚いが、猫には容赦のない男、ティーチャー。一応戦闘の依頼ですが、RPの比重が大きいシナリオなのでカテゴリは「冒険」としました。過去との決着を付けましょう。

リプレイ

●
 いよいよ、私が愛した生徒達の結末の物語を語る時がやってきた。君は私の育てた『暗殺者』ブラッドなのか。それとも、『冒険者』レピド・クロサイトなのか。さあ、答えを見せてくれ!

●
「ほぇ? ダンジョンのボス居なくなってると思ったら変なおじさんがいる??? え? あのおじさん、れぴっぴの知り合い? てか、レピド被害者の会って????」
 サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは状況に理解が追いついていないのか、困惑していた。だが、私の授業はすでに始まっている。生徒達はレピド・クロサイト(ブラッド)を包囲するべく動いていた。そして私も、授業を邪魔しようとするブラッドの友人達を阻止すべく、分身を三体に分け、動き始めていた。

●
「レピドのストーカーとやらにはここらでご退場願うとすんぜ! っつーか、何で3人もいやがんだよ!?」
 ハヤト=ガラン=ヴォルファングは吠えると、分身した私(ティーチャー)の一体に向かって突進した。

「一流の暗殺者たるもの、分身の心得ぐらいはあるとも!」
 私はそう答えながら、彼の飛び蹴りを最小限の動きで回避した。だが、彼は空中で一回転しながら両手の刀で斬りかかってきた。私はそれも華麗なステップで回避する。
「まだまだ!」
 さらなる追撃。一瞬で放たれた四撃目のキックを、私は身をよじって回避した。

「これどういう状況~!??」
 サフィラは困惑しつつも、精神を集中し始めた。その瞬間、彼女の気配が消え、三人の私は彼女を見失った。

「みんな、ティーチャーの相手を頼む。俺は、この四人と向き合いたい。手は出さないでくれ!」
 ブラッドはそう言い、両手の刀を鞘に納め、部屋の隅へと移動した。誰にも邪魔をされずに被害者の会と向き合いたいのだろう。
 
「君達は邪魔をする気満々のようだね! ならば、私が相手をしてあげよう!」
 三人の私はブラッドの友人達に攻撃を仕掛けた。二人はハヤトへ。一人は、ディレイン・オールドケイジの前に立ちふさがっていた、コルネリウス・アーラへと。

「遅い!」
「素晴らしい身のこなしだ! ハヤト君!」
 ハヤトは迫りくる私達二人の攻撃を全て回避しきって見せた。この瞬間、私とハヤトは同時に悟る。この戦いは、恐らく膠着状態になると。
「ぐっ……!」
 コルネリウスは三人目の私に切り刻まれ、全身を血に染めた。とはいえ、このフロアで私の攻撃を三度受け、倒れないだけでも大したものだ。

「エドゥノーグダンジョンでの犯罪行為は探索支援ギルドが固く禁じています。私怨で人を傷付けると言うのなら、力付くでも止めますよ!」
「素晴らしい殺気だ。君には素質がある」
 私はハーフリングの少女の凍てつくような殺気を受け流しながら、そう返した。トーラは三人の私を見比べた後、コルネリウスと対峙していた一体へと斬りかかってきた。

(これは、躱せん!)
 流れるように放たれた、流麗な斬撃。刹那に放たれた斬撃の内、三度目の斬撃は私の胴を捉え、私の胴から激しく血が零れた。意地で四度目は回避したが、もう一撃は耐えられぬほど深い傷だった。

「……」
 彼女は三人いる私をよく観察している。三人の中に「本体」がいないか、探しているのだろう。着眼点は良い。分身するならば、本体がいるのは道理だ。さて、私の本体が見つけられるかな?

「この人は本体ではありません! 血の零れ方がおかしいです!」
「見事だ! そうだ! 『私』は本体ではない!」
 私は思わず手を叩いた。トーラは私の傷つき方から、それが本体ではないことを看破した。私の分身は極めて精巧な作りであり、血も零れるし、死体もしばらくは残る。だが、流体力学までは完璧に再現しきれない。

「……この人達、もしかして……」
 ルアンナ・ミュラーは私と「レピド被害者の会」を見比べながら、何かを考えているようだった。

「ブラッドって人はもういない。ここにいるのはレピド君だ。人違いなんだから、速やかに帰ってもらおう」
 ディレインは少し悩むそぶりを見せた後、ブラッドの肩に自分の上着をかけた。そして、ディレインの体から暖かなエーテルが迸る。彼は私と対峙するメンバーに、バフをかけたようだ。ブラッドへの配慮からか、友人であるはずのブラッドも対象には含めなかったようだ。そして、血に濡れたコルネリウスへと、回復魔法(サイドヒール)をかけた。

「レピドさん、大丈夫ですか。しっかりしてください」
 コルネリウスはブラッドにそう声をかけながら、私を弓で撃ってきた。激しく傷つきながらも、ブラッドを想う彼女は美しかった。だが放たれた矢は全く優しくはなく、『私』は眉間を貫かれて絶命した。

「レピド・クロサイト。いや、ブラッド! 私の顔に見覚えがあるか。いや、ないだろうな。教えてやる。私はお前に兄を殺されたのだ。兄はある貴族に仕える、清廉な役人だった。だが、貴様に殺された。答えろ。なぜ、兄を殺した!」
 被害者の会の中で真っ先に口を開いたのは、バーンだった。ブラッドは「分からない」と答え、静かに首を横に振った。ブラッドは記憶を失っている。本当に覚えていないのだろう。

「なら、俺が教えてやる。貴様を雇ったのは兄が仕えていた領主だ! 悪党だったあの男は、清廉な兄がジャマになったのだ! これを悪行と呼ばず、なんと呼ぶ!!」
 バーンは声を震わせ、叫んだ。その瞬間、側にいたレオ、スコーピオン、ユピテルが一斉にブラッドへと攻撃を仕掛けた。すると、ブラッドはその場からほとんど動かず、三人の攻撃を躱し切った。
 カラン。
「む……」
 乾いた音に私達は思わず注意を向ける。その音は地面に短剣が落ちた音だった。直後、Alexandra・Hexe・Claudiaの放った光の雨が私達二人に向かって降り注いだ。私達は当たれば即死であろう光の雨を、体ごと飛び退いて躱す。
「……」
 だが、今のは牽制程度のつもりだったのか、彼女自身は私にはさほど注目していなかった。Alexandraは私の生徒達の方をじっと見つめていた。

●
「レピドにどんな過去があろうが俺にとっちゃ今のレピドがレピドだ……過去に犯した業は背負っていかなきゃならねぇにしても、今これからどう生きるかが意味を成すってもんだ!」
「そうだとも! 私は見極めたいのだ! 彼はブラッドなのか! それとも、今は違う誰かなのかを!」

 荒れ狂う嵐のようなハヤトの攻撃を、私は必死に躱す。彼らは手練れだ。回避に意識を大きく割かねば、一瞬で倒される。
「……!?」
 ぞくり。背後にただならぬ殺気を感じた私は、反射的に身を躱そうとしたが、すでに遅かった。次の瞬間、稲妻のような炸裂音がフロアに響いた。ハヤトと対峙していた私の分身は背後に迫っていたサフィラの手掌に胴を貫かれ、大地へと崩れ落ちた。

「見事な暗殺だ。油断したよ、レディ……」
「暗殺成功! 二人が偽物って事は、こいつが本物?」
「……いや、コイツも偽物みてえだぜ。言われて見りゃ、血がなんかおかしい。……どういうことだ?」
 ハヤトは大地に倒れた私を見下ろしながら、眉をひそめた。

「消えなさい! 分身!」
 トーラの剣閃が再び閃く。回避に専念していた私はなんとか彼女の攻撃を凌いだ。

「少し痛い目にあってもらおう!」
「来ましたね、変態仮面!」
 ハヤトの横をすり抜けた私は、ルアンナへと襲い掛かった。すると、ルアンナはいきなり激しく発光した。私は閃光に目が眩み、鞭を外した。だが、すぐさま鞭は翻り、ルアンナを二度打ち据えた。
「痛っ! 変態ぶりに磨きがかかりましたね!」
 ルアンナは血を吐き出しながら、吐き捨てるように言った。

「もう……終わりにしましょう!」
 コルネリウスはお返しとばかりに私へと矢を放つ。その矢は私の眉間を見事射抜き、最後の分身が地面へと崩れ落ちた。

●
 30秒と経たずして三体のティーチャーは敗れ去った。だが、決着はまだついていなかった。

「レピド! 私の夫は背中にナイフが突き刺さった状態で川に浮かんでいたわ。それもあなたがやったことでしょう! この悪魔が!」
「……」
 被害者の会たちの糾弾に、レピドは黙って耐えている。まだ無傷のまま攻撃を躱し続けていたが、レピドの動きは精彩を欠いている。普段の半分も実力は出せていない。それでもなお、被害者の会の攻撃は届いていなかった。

「レピドさん、大丈夫ですか。しっかりしてください」
 コルネリウスは聞こえてくる被害者の会の言葉に胸が締め付けられる思いがした。手段はともかくとして、彼らの怒り自体は正当なものだ。だからこそ、レピドが黙って堪えている。その気になれば、レピドは十数秒で彼ら全員を返り討ちにできるはずなのに。

(彼が声を聞くと決めたからには、意志を尊重したいと思います。確かに過去は変えることは出来ない、痛みが伴うとしても向き合う事は誰しもに必要な事でしょう)

(糾弾しながらレピドさんに斬りかかっていますが……四人に殺人経験は無いようです。ならば、レピドさんの命を断とうとする際は躊躇するはず。しかし……その前に、当てることすらできませんか)
 Alexandraは暗殺者達の刃がレピドに届き、彼らがトドメを刺すことをためらったのなら、それを咎めるつもりでいた。しかし、どうやらレピドは彼らの訴えは聞いても、攻撃をあえて受ける気まではないようだ。Alexandraはため息を吐き、レピドに向けていた弓型の魔術刀を降ろした。

「ずっと考えていたんだ。二度目の生を得てしまった、その意味を」
 レピドは以前コルネリウスにもらった笛を大切そうに懐の中で握り締めながら、言葉を絞り出す。
(俺が暗殺者だったと知った時……最初は被害者の手で裁かれろ、そういう神の意思だと考えた。だけどそんな俺にも友人や、仲間や、家族が出来て……本当の意味でその罪の重さを知って……それでも!)

「俺に『生きろ』と望んでくれる者が一人でもいる限り、この命は渡せない! それがどんなに身勝手で、罪深い事だとしても!」
 レピドは叫び、バーンの握っていたダガーを短刀で打ち払う。レピドの刃はバーンの刃を根本で斬り飛ばし、破壊した。

「勝手なことを抜かすな!」
「この、薄汚い殺し屋が!」
「パパを返してよ!」
 なおも、被害者の会はレピドへと刃を向ける。しかし、実力差は歴然だった。真の実力を解放したレピドは全ての攻撃を躱し切り、あっという間に全員から武器を奪った。

「許さなくていい、ずっと恨まれ続けたって構わない、だけど、アンタ達を『ブラッド』にするわけにはいかないんだ。俺を殺して一度人殺しになってしまったら、もう戻れない……アンタ達が今吐き出した苦痛を、他の誰かにも味わわせたいと思うのか?」

●
「三体とも分身……? なら、本体が別にいるのでしょうね」
「どこにいやがる、ティーチャー……」
「必ずどこかで見ているはずです!」
 Alexandra、ハヤト、トーラは目の皿のようにし、フロアにもう一人分の気配がないか探っていた。倒した3体のティーチャーは全てが分身――偽物だった。ならば、どこかに本体がいるはずなのだ。

「コルネちゃん、ルアンナちゃん、大丈夫かい」
「はい、なんとか」
(壁エルフが壁になれないなんて……)
「頑丈さには自信があるんです!」
 ディレインは深く傷ついていたコルネリウスとルアンナへとヒールをかけた。

●
「マジでいないよ!? 変態仮面、どこ!?」
 目を凝らすサフィラ。このフロアのどこにもティーチャーはいない。

(考えろ。俺が奴なら、どこに隠れる? 分身をコントロールしながら、俺達の様子を観察できる位置は……)
「そこだ!!」
 ハヤトが指差したのは、フロアの外側。一つ上のフロアへと登る階段だった。パァン、という炸裂音と共に、ティーチャーの『ハイディング』が解ける。階段を登り切った場所に、匍匐(ほふく)前進の姿勢でこちらを覗き込んでいる仮面の暗殺者(ティーチャー)が現れた。

「しまった!」
「取っ捕まえてやるぜ、ティーチャー!」

 慌てて上のフロアに一時撤退しようとするティーチャー。しかし、ハヤトは一瞬で階段を駆け上がり、ティーチャーに追いついていた。Alexandra、サフィラ、トーラもティーチャーの本体を仕留めるべく、フロアの階段を駆け上がっていく。多勢に無勢。追いつかれたティーチャーは何故かダンジョンの外には逃げようとせず、上のフロアで奮戦したが――。

「勇牙最終無限撃(ブレイブファングファイナルアンリミテッド)!!』」
 それは正に最終兵器。人類の限界すら超え、刹那の間に放たれたハヤトの八連撃が死角からティーチャーへと襲い掛かる。ティーチャーはその連撃を6度まで回避したが、七発目でとうとう肩口を切り裂かれ、無防備のまま八撃目を受け、地面に崩れ落ちた。

●
「……どうやら、俺達に勝ち目はないようだな。仇と狙った相手に手加減されて……なんてザマだ。もういい。好きにしてくれ」
 もはや勝機は無いと悟ったのか、被害者の会たちは次々と武器を手放した。

「かつてのレピドさんはブラッドと呼ばれる暗殺者でした。しかし、彼をそこまで育て上げたのは誰か? それは、そこに倒れている仮面変態教師その人よ」
 ルアンナはハヤト達に捕縛され、気絶しているティーチャーを指差し、そう教えてあげた。

「あのオッサン、妙にレピドに詳しいと思ったが、そういうことだったのか……」
「てっきり、商売敵か何かだと思ってた……」
 被害者の会のメンバーに動揺が走る。どうやら、ティーチャーは自分とレピドの関係については伏せていたらしい。
「どうやら、あの変態仮面は自分の都合の悪いことは黙っていたようだね。君達、騙されてたんじゃない? ……安心しなよ。レピド君が許すなら、キミ達を痛めつけようって気はないんだ」
 ディレインは仲間達の無事に安堵しつつ、被害者の会に悲しい目を向けた。

●
 こうして、ティーチャーは捕縛され、被害者の会達も投降したことで、エドゥノーグ迷宮の偽装依頼事件は終わった。

「アンタのして来た事は『俺』にとっては滅茶苦茶で危険で迷惑で散々だったが……『ブラッド』を生徒として……『人』として接してくれた、その事には礼を言う」
「ありがとう、ブラッド。……いやレピド」
 レピドがそう声をかけると、ティーチャー(素顔)は憑き物が落ちたような顔で答えた。だが、すっきりした表情をしているのはティーチャーだけだ。サフィラにふん縛られた被害者の会の方は幽鬼のような表情で、エドゥノーグ探索者ギルドへと連行されていく。彼らはきっとレピドを許すことはないだろう。
(それでいい。俺が彼らが奪ったものはもう返せない。なら、俺は呪われ続けるべきなんだろう)

「彼らはやり場のない気持ちをぶつけたかっただけじゃないかな」
 ディレインはそう言って、レピドの肩を叩いた。
「ありがとう。気休めにはなった」

 レピドの寂しげな表情に何かを感じ取ったのか、コルネリウスも優しく微笑む。
「大丈夫ですよ、これから先みんなが側(そば)にいますから」

マスターコメント

ティーチャーとの決着はすっきり付きましたので、判定結果は成功とさせていただきました。お疲れ様でした。
ショートシナリオR

ショートシナリオR非常に難しい 報酬:多い8 / 4〜8人

2023年12月22日 11時04分02秒 公開

成功

相談掲示板

  1. レピド・クロサイト

    レピド・クロサイト、シーフだ。よろしく頼む。 ……今回は俺の事情に巻き込んですまない、来てくれて本当に感謝だ。 精神攻撃……キツそうだな……

  2. ディレイン・オールドケイジ

    ヒーラーのディレイン・オールドケイジ。よろしく。 …いやほんと、ろくでもないこと思いつくよね。 防御無視っていうのがつらいところかな。おじさん回避は苦手なんだけどなあ… まあデバフ解除は持っていくつもり。回復との兼ね合いが難しいけど、出発までにはレベル45になるから、範囲ヒールの強化版も持ってこうかと。

  3. コルネリウス・アーラ

    ウォーリアのコルネリウスです。よろしくお願いしますね。 どうしましょう、壁エルフが壁になれません……! 回避は私も苦手なので、火力を上げてなんとかするか…スキルを確認しながら少し対策を考えてみます。

  4. トーラ

    シーフのトーラです。 出来そうなことがあるので参加させて貰いました。 よろしくお願いします! レベルの低い被害者の会よりも、やはりティーチャーの妨害が恐いですね。 シーフのスキルを使ってくるなら、やはり回避も高いのでしょうか? それにしても三体……???

  5. ルアンナ・ミュラー

    キャスターのルアンナです。まさかの防御無視フィールドとは…。 これは、HPが多い者が有利という事ですね!(現状3位) エーテルバリアなど攻撃を凌ぐスキルはいくつかありますので、持って行こうと思います。 恨みつらみの精神攻撃はきつそうですね…。

  6. Alexandra・Hexe・Claudia

    キャスター、クラウディアです。よしなに。 …、……。…─?……あの。 今回の件ですが、被害者の会については1〜2人で制圧できそうですね? 特に苦労を感じるようでしたら、私が4人を受け持ちます(※)が… ※自PCは被害者の会を『制圧を要する対象』としか見ていません。 都合初手から1人ずつワンショットキルを狙うも辞さない構えを取るでしょう。 対応手段を選ぶのであれば早いうちに打ち合わせが欲しいです。

  7. レピド・クロサイト

    ……確かに被害者の会はアレクサンドラの言うように、武力制圧するだけならそう苦労しない相手だとは思う。 ただ、こう、あまり上手く言葉に出来ないのだが、俺は被害者の会の声をきちんと受け止めないといけない、そう思っている。 個人的な感情で申し訳無いのだが、俺に彼等の相手をさせて貰えないだろうか。 後、ことの原因であるティーチャーなんだが、ケリをつけるなら今回が好機かと考えていた。 毎度逃げ足の早い奴だが、今回は被害者の会との決着がつかない限り早々には逃げないだろう。 なので俺が被害者の会を引き付けつつティーチャー討伐を狙うのはどうだろう……? 危険ではあるが、ここで奴を討伐ないし捕縛出来れば未来の犠牲者を無くせるし、ギルドから報酬も出ると思う。

  8. ディレイン・オールドケイジ

    そうだね、ティーチャーは見届けようと思ってるんじゃないかな。 そのために邪魔者つまりレピド君以外の冒険者を排除しにくるんだろうから、返り討ちにしたい。 防御無視な以上、レピド君以外のシーフのお三方に前面に出てもらった方がいいのかな? あとはレピド君がどれだけ精神攻撃に耐えられるか、かなあ。 回復とデバフ解除…のために側についてたら変態仮面の攻撃がこっちに来そうなんだよねえ。

  9. Alexandra・Hexe・Claudia

    /* ↓語感強めのRP入れます */ ―……その言い草。 "趣味に味方を巻き込む"行為とは、さすがにご理解いただけているようですね。 わかりました。ある程度の負荷はそちらに預けます。 その上で、私個人から所見を。 今回の「被害者の会」…4人の"話を受けとめるだけ”なら時間の無駄と見ます。 現状、彼らにとって貴方は『ブラッドという名の巨悪』でありますから。 この意識が根幹にある限り、貴方の行いは顧みる価値がない と見てよいでしょう。 分けても私個人として、こうした時間の無駄は容認できません。こちらの生命まで害意に曝されるとなれば尚更です。 ―よって、レピドさん。 貴方には彼ら4人の意識を根底から覆すことを求めます。 変革を証明できなかった場合に、私が手を止める理由はありません。 その時は、好きにやらせていただきます。 /* RPここまで */ 対ティーチャーはともかく、対被害者の会であればあまり加味しなくてよさそうですよ。 彼らは視る限り殺人の経験は皆無。恐らくひと息には殺せず、手法としては 「ダウンを奪った後にとどめを刺す」形になるかと。 元々Lv10の授恵者といえば、その攻守はともに良質な装備ありきです。 見た目でそういったものがなければ、警戒には及ばないでしょう。 ―これはある種の最終手段なのですが。 敢えて私に凶行を打たせた上で、レピドさんが命懸けで止める なんて振る舞いもアリかと。 勿論、大怪我…一撃で再起不能レベルの火砲が飛びますから、救助の手も欲しくなります。 都合、この手法を採用するなら…被害者の会相手にヒーラーも一人つけたいところ。

  10. トーラ

    レピドさんの因縁でもありますし、こういった策を仕掛けてくる相手でもあるので、その縁を断つためティーチャーの捕縛もしくは殺害を狙うのに異論はありません。 そしてティーチャーの逃亡を防ぐためにも、被害者の会を倒さずにこの場に留める利点はありますから、レピドさんがそれを引き受けるのは理に叶っているのではないかとー。 とりあえず、まずは被害者の会へ圧をかけて、妨害に来るティーチャーを迎え撃とうと思います。

  11. Alexandra・Hexe・Claudia

    ティーチャーとの戦闘そのものについても話が必要そうですね。 問題となるのは、相手が統率の取れたシーフ×3である点…でしょうか。 同一人物ですから、さすがに2+4スキルを3体別々で…ということはないと思いますが― 数に加えて防御力が意味をなさない環境…機動力でも総合的には相手が上でしょう。 早期に数を減らさねば被害が嵩むのは自明です。 盤面上、レピドさんを除外して残るはシーフ3・キャスター2・ウォーリア1・ヒーラー1。 ここからさらに被害者の会へ人員を割くことになりますが、一旦その話は脇に置きまして。 キャスタークラスの視点で言うなら、シーフクラスの回避力を遠距離から捉えるのは極めて難しい。 できれば牽制能力強化…回避能力を削ぐアプローチが欲しいところです。 他クラスの視点で言えば、相手が自由に動ける状況は好ましくないでしょうから… 環境効果か、デバフとしての移動力減衰や移動阻害をキャスターから用意する手もありましょうか。

  12. トーラ

    暗殺技の教育者ということなら回避や隠密に優れていそうですよね。 命中を上げるのが一番基本的な対策でしょうか。 スキルで言えばシーザーロアで釘付けにするか、ヴィクトリーソングやBS付与込みでのノヴァクラスターを当てる等が浮かびますが、ヴィクトリーソングはサブアクションを使うのでフェザーステップを持つ相手には確実性が低いことと、ノヴァクラスターはまず回避や移動を下げるBSを付与しないといけないんですよね。

  13. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! ま~た、あの胡散臭ぇティーチャーって奴の仕業かよ… 被害者の会とやらの4人はレピドに任せるとして、何でか三体に分身してるティーチャーをこっちで〆ちまえばいいってわけだな! 防御が0になるってなぁ、全体的に見ると不利な状況だが当たらなけりゃどうってこたぁねぇ。 普段から喰らえば殺られる死線の中でやりあってる俺には特に何の問題もねーからな。 極力ティーチャーの野郎が他に攻撃を仕掛けられねぇ様にそれぞれに仕掛けるつもりでいるから、その間に皆にゃ行動阻害や回避低下、こっちの命中率上昇あたりをサポートして貰えるとありがてぇな!

  14. レピド・クロサイト

    >ティーチャー 皆に任せる形になってしまうが、どうかよろしく頼む。 ティーチャー達にもフィールド効果はある筈だから、トーラも言うように命中を重視するのが有効だろうか? >アレクサンドラ ああ……これは紛れもなく俺の身勝手で我儘だ。 その言葉、心に留めておく。 ……本当にすまない、そしてありがとう。 >最終手段 (PL:PCとしては気が進まないようですが、PL的にはアリかと考えています。ちょっと上手くRPに落とし込みが出来なかったのでこのような返答で失礼します)

  15. ディレイン・オールドケイジ

    >被害者の会 被害者の会の話を聞くってことは、少なくとも30ラウンドは耐久戦するってことでいいのかな? 一撃一撃は弱くても、スリップや束縛なんかのデバフを重ねがけされることは想定しておいた方がいいかも。 >ティーチャー戦 命中の底上げってことなら、バフはいるよね。インフィニティロア持ってくよ。 効果時間中に1人だけでも戦闘不能にできるといいんだけど。

  16. コルネリウス・アーラ

    シーザーロアでの引き付け自体は可能なのですが、如何せん防御が無効になっている以上、回避が壊滅的な私が引き受けるのは回避盾用の装備とパッシブスキルの持ち合わせがないので、申し訳ないのですが少々厳しいです……。 弓装備などで距離を取り命中を上げなるべく確実に当てる、という方向性なら動けるかと思います。 おじさまがバフを付与してくださるならより当てやすくなりますので。 30ラウンド耐久を視野にいれるのであれば、抵抗なども上げられたら上げておくと良いかもしれませんね。

  17. トーラ

    …あ。 防御0なのですしティーチャー相手にシーザーロアは危険ですね(汗) すみませんでした。 それでしたら出来る限り命中を上げて、ティーチャーをひき止めるようにしますね。

  18. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!シーフのサフィラだよっ! みんなよろしくねっ! うーん…物魔両方の防御0に 被害者の会、かぁ… なかなか難しそーなシチュだけど 被害者の会は…れぴっぴが引受けるってことでいいのかなっ?大変だろうけど、話聞いてあげてねっ んで、あたし達がティーチャー3体を相手にするってカンジだねっ 防御0ならあたしも回避メインのスキル持っていこーかなっ それか、一撃で仕留めるカンジならタナトスバイトとハイディング持ってくけどっ

  19. トーラ

    出発直前にすみません。 レピドさんがローズウィップを持っていくなら、命中と回避の為にエーテルイミテイトで模倣させて頂いて大丈夫でしょうか?

  20. レピド・クロサイト

    「まだ早い」と言われるかも知れないが。 皆、今回は来てくれて本当にありがとう。仲間の存在が今は何よりも心強い。 >トーラ 構わない、存分にやってくれ。

  21. トーラ

    ありがとうございます! お礼は全てが終わってからですよ!?

  22. Alexandra・Hexe・Claudia

    ―後で言い損ねた と嘆くよりはマシでしょう。 こちらも直前確認を済ませてきます。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0