【代像】ある晴れた日に『さよなら』を

菊華 伴

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シナリオID:3291

オープニング

●とある報告
「カインとイザラさんについての報告書があがったよ」
 とある日、帝国にほど近い冒険者ギルド。
 冒険者達は、レビジュ・バトーの出した依頼のその後の報告を聞くために集まった。レビジュはどこか寂し気な表情でその内容を読み上げる。

 カインに術を施されていたイザラは、冒険者達の処置が早かった為、一か月ほど療養すれば術の影響を脱することが出来るだろう。ただ、後遺症なのかやや不眠気味だったり、たまに幻聴を聞いたりするらしい。
 一方、カインは、強力な術を使うべく複数の強化薬を何者かに煎じてもらっていた。その服用を続けていたため、身体の中がボロボロである、と。
 レビジュは報告書を手に報告を続け、最後に、静かに付け加えた。
「このまま、カインは帝国に連行する。その意味は分かるでしょ?」

●終わりは潔く
 モルアモの里から北へ2時間ほど進んだところに、ココノという里がある。そこは旅の途中で病に罹った者や大きなけがを負った者を治療し療養させることを生業としている里だった。その一角に、カインとイザラが療養している部屋があり、シトラス、ガク、スケアクロが監視と看病をしていた。
 イザラの方は徐々に回復してきており、食欲も徐々に取り戻しつつある。だが、カインは食が細くあの事件以来よく熱を出すようになっていた。
「カイン、今いいか?」
 スケアクロが部屋を訪れる、カインは1つ頷いた。
 彼は、カインの目を見、淡々と現状を伝える。このまま帝国に連行する事、おそらくは処刑されるだろうという事を。カインは何も言わず、瞬き1つせず聞いていた。
 すべて聞き終えたところで、金の目のハーフリングは僅かに泣きそうな顔で笑った。
「……そう、だよなぁ。それしかないよな」
「カイン……」
「そりゃ、怖いよ。でも、さ。けじめはつけないといけねぇんだ」
 なるべく平静を装うとするスケアクロに、カインは微笑んだ。
「俺はお前ら(帝国の兵士)に捕らえられた。その意味ぐらい解るよ」
 その笑顔が、スケアクロには憑き物が落ちたように見えた。

 その事は、イザラもそれとなくシトラスから話を聞いていた。
 姉と共に里から離れ、旅をしながら生きていたイザラは、カインの処遇を聞くと目を見開いた。
「貴方があの子を家族として迎えたいという言葉をきいたら、多分喜ぶと思うよ。でも、あの子は、もう決めているみたいなんだ」
 己を『母』にしようとした少年は、その罪を受け入れ、帝国に連行される。
 ここできちんと話さなければ、次はない。
 イザラはシトラスと話すまでカインが犯してきた罪を知らなかった。その重さに、言葉を失う。
「それでも、カインさんに伝えたい。私は家族になりたいんだって……」
 イザラは、ぐっ、と手を握り締めたままシトラスにそう言った。

●ある晴れた日に
 イザラは体調が戻り次第、姉が待つ里へと旅立つ。その事を聞いたカインは、せき込みながらも小さく微笑んだ。
「お前の移送は、3日後だ。……別れを言うなら、早めにな」
 スケアクロと入れ替わりに来たガクの言葉に、カインは頷く。だが、少しだけ真面目な顔で
「イザラさんに、せめて花でも送りたいな」
 と呟き、意味深長な視線をガクに送った。

* * * * *

 あなたがたは、カインの移送を手伝う為に呼ばれた冒険者である。
 その旅の果てに、彼は何を残すだろうか?

解説

こんにちは。今回は、真面目なお話となります。 悲しいエンディングは、確かにブレイクされました。 しかし、カインが重ねた罪は、とても重い物です。 このシナリオをもって、カインは退場します。 今回は、帝国で罪を裁かれることを選んだカインの願いを叶える他、彼と対話する事、レビジュと対話する事ができます。 >カインからの依頼など 『モルアモへの謝罪の書簡を届けて欲しい』、という物と、『イザラへ花を届けて欲しい』というものです。 彼は帝国で罪を裁かれる事を選びました。その前に、どうしてもやっておきたいそうです。 なお、モルアモの人々は彼が罪を償う姿勢を見せていることを知れば書簡を受け取ってくれるでしょう。 また、イザラはカインに対し何度も説得を試みていました(彼女は、カインが欲している物を感じ取っていた模様です)。故に、カインからの花を届けたら喜ぶ事でしょう。 ※イザラもまたカインへ手紙を用意しています。 レビジュはカインの処遇について既に話を聞いています。 彼は静かに、その意味を深く受け止めています。 >注意 このシナリオでカインが逃走した場合、レビジュ達は信用を失ってしまいます。 その事を十分踏まえた上で参加願います。 >解説の終わりに カインがレビジュ達と和解し、己の罪を受け入れた事はとても重要な事です。 冒険者の皆さんが手を貸してくれたおかげでここまでたどり着きました。 もし、この事件を解決しなかった場合、カインは『母親や弟を蘇らせる』事に固執し、同じようなことを繰り返していた事でしょう。 彼の決断を、どうか受け入れて下さい。

マスターより

【代像】の最終回となります。 よろしくお願いします。 デゼスポワルの中で最後までメドゥの指先に残っていたカインの終着点となります。

リプレイ

●
「カインは、裁かれるんですよね」
「できる事ならば、カインには生きて欲しいけど、罪を償う気持ちに此方の気持ちを押し付けたくないなぁ」
「カイン様の罪は重い物。そして、彼自身が立ち止まる機会を振り払っている事も存じております。けれども、殿下暗殺未遂の罪をレビジュ様達が償われているように、最後にもう一度だけ、機会を与えたい思いがあります」
 アリア・ティーダとレティシア・レインフィールの言葉に、トーラは静かに頷く。
 彼女達3人は、今この場に居ないイズル・M・ヴォルゴールと共に、カインの移送の手伝いに来ていた。
 そして、彼女達はカインとイザラと数名での食事会を行うべく、食事を作っていた。
 ふと出たトーラの呟きにアリアとレティシアが胸の内を明かし、それを聞いていたスケアクロがちょっとだけ目を細める。
「気持ちはとても嬉しいよ。あいつはレビジュと一緒に古巣(『メドゥの指先』)での居場所(『デゼスポワル』)を作ったんだもの。自分だって……」
 そこで何かを言いかけたスケアクロだったが、首を振った。
「でも……複雑な事情もあるから、処刑は回避できないと見たほうがいい」
 冷たいかもしれないが、と付け加える彼に、アリア達は口を噤む。
 しばし無言で調理を進めていくうちに、とてもいい匂いが辺りに立ち込めた。
「とても美味しそうだね」
「秋の茸と玉葱のシチューです。この辺り、美味しいキノコがいっぱいとれるって里の方が分けてくれたのもあって」
 スケアクロがぱっ、と明るい表情になり、トーラが優しい目で答える。具材はレティシアが食べやすく刻んでくれた。彼女曰く「私も食が細い方ですから……」だそうな。
 また、秋鮭のムニエルや黒パン、リンゴなどをも用意された。その様子を見ながら、アリアはモルアモへカインの書簡を届けたことを思い出していた。

●
 ――モルアモ
 フェンヌ・ダーニが眠る里へアリアは書簡を手に訪れた。
 最初はやや警戒されたものの、カインが帝国にて裁きを受ける事、彼自身がそれを受け入れている事を告げると里長がその書簡を受け取ってくれた。
 里長は、静かにその内容を読み、暫く考えるとアリアへ礼を述べるとしばし待つように告げお茶を与えた。
「これを、あの少年に」
 里長は、手紙をアリアへ渡す。これを確実に渡してほしい、と言って。
 アリアは静かに一礼し、丁寧に受け取った。

 アリアには、考えがあった。それは『イザラが心身回復・納得するまでカインに責を全うさせる』という形でカインに少しでも生と責の背負い方を模索してもらえないか、と。
 アリアはもう一度だけモルアモを振り返り、そっと目を細めた。

 里長からの手紙は、食事の後渡す予定である。
 おそらく、『大人の対応』的な手紙だろうという予想はアリアにはあった。

●
 イズルはスケアクロたちが寝泊まりしている部屋をシトラスと共に掃除し、食事会の準備をしていた。ガクは今イザラの様子を見に行っている。
「そういえば、さっきカインと何か話していたっぽいけど。何話してたの?」
「まぁ、近況報告だね」
 シトラスにそう答えたイズルは、準備前にカインの部屋を訪れていた。

 カインに許可を得、ベッドに腰かけたイズル。彼はカインが望んだので、内緒話をするような距離で話していた。カインは「エクレールとも、こんな風に話したな」と懐かしそうに瞳を細めた。
 そこで出たのが、イザラへ花を渡したいという話である。イズルは「うーん……」と考えた。
(女の人への贈り物だとそうもいかないんだよな)
 ただでさえ花言葉には「いい意味」も「悪い意味」もある上、言葉の数も複数。その上季節で用意できないことも多いためだ。彼はとりあえずその事を説明しながらイザラへ送るのにふさわしいだろう花をひねり出す。
「他の冒険者も相談に乗ってくれるとは思うけど、俺のおすすめはバーベナかな。この季節でもぎりぎり手に入るかも。花言葉の一つは『家族の和合』なんだ」
「家族の、和合……」
 カインはその花言葉が気に入ったのか、バーベナが見つかるといいな、と小さく零す。
「そういえば食事会の話が出てるんだ。その時にお前から直接渡したらどうだ?」
「できるならば、そうしたいな」
 カインは食事会の話が渡りに船だと思ったのだろう、少し頬を緩めて頷いた。

 カインが外の空気を吸いたいという。そこでイズルは様子を見に来たレティシアと交代した。
「カイン様、お花を探してらっしゃるのですか?」
「うん。イズルはバーベナを進めてくれたから、それを探してるんだ。でも花に疎いから困っていて……」
 カインが頭を掻きながらそういえば、レティシアは「おそらくこれかと」とピンクのバーベナの花を見つけてくれた。
「こちらにしますか?」
「ありがとう。……実はちょっと聞きたいのだけれども……」
 レティシアにカインがおずおずと問う。それはバーベナも色によって花言葉が違うのか、という事だった。
「えぇ。たとえば、この白いバーベナには……」
 レティシアの説明を聞き、カインはピンクと白のバーベナを選んだ。カインはその花を見て微笑むも、辺りを見渡した。
「……『謝罪』とか『ごめんなさい』を花言葉にする花は、ないのか?」
「そうですね。カミツレの花は『ごめんなさい』を花言葉に持ちますが春から初夏の花ですから……」
 レティシアが申し訳なさそうに言えば、カインは首を振り「ごめん」と謝罪する。そして、僅かに瞳を細め……何かを見つけた。その花の花言葉を確認すると、彼はレティシアに礼を述べ、それも花束に加えた。
 そうこうしているうちに、食事会の準備が出来たことをレビジュが伝えに来たのだった。

●
 食事会は、ささやかなものではあったが、とても温かな物になった。
 少しずつではあるが、カインもイザラも口数が増え、気付けばレビジュたちも会話に巻き込んでいた。そして、カインは自然な笑みを零していた。
 食欲がなかったカインも、小さく切られた具材のお陰で食べる量が少し増え、病み上がりのイザラもまた食べやすさに感謝していた。
 温かな秋の茸と玉葱のシチューは茸の歯ごたえがよく、玉ねぎの甘味が心を穏やかにする。食欲をそそる香りを放つ鮭のムニエルはカインが気に入ったらしく、半分以上食べることが出来たようだ。ガク曰く、ココノに来てからこれほど食べたことがなかったらしい。
「久しぶりに、カインの元気な姿を見れた気がする」
 喜びの滲んだ声をシトラスが漏らし、レビジュの表情も和らいだのが印象的だった。
 ある程度食事が終わったところで、カインは傍らのイズルと頷き合う。しばし考えていたが、呼吸を整えると彼はイザラに向き直る。
「これを……」
 カインはバーベナとパンジーの花をイザラに渡した。すると、彼女は僅かに目を見開き暫くの間その花を見つめる。どうやらこの花言葉を知っているようで、その目にうっすらと涙を浮かべていた。それが喜びの物だと冒険者達には感じ取れた。
「ありがとう。私からも、あなたに渡したいものがあるの」
 そう言って、彼女もまた懐から手紙を取り出す。カインは驚いた様子だったが静かに「ありがとう」と言って受け取った。
 そして、アリアもモルアモの里長から預かった手紙を渡し、カインは静かにそれを受け取った。彼女は、その際にそっと「これはボクのエゴでもある。でも生きることもまぁ、背負うことだよ」と付け加えた。カインは暫くの間、瞳を閉ざし何かを考えているようだった。
(これで、カインの依頼は2つとも達成されたんだよな)
 イズルは手紙を大切そうに抱きしめるカインの姿を見、内心で確認した。彼の横顔は子どもらしい笑顔に彩られ、僅かに胸が軋む。だが、次の瞬間には達観した笑みを浮かべていた。
 トーラはイザラが受け取った花束にそっと目を細め微笑む。
「綺麗ですね」
 トーラがイザラに言えば、彼女は小さく頷く。彼女は「白いバーベナの花言葉、知っていますか?」と問いかけ、トーラが答える前にそっと言った。
 ――私のために祈ってください
(そうなんですね……)
 トーラは、改めてカインの心境を感じ取った。彼は、特別扱いを望んでいない。そのまま裁かれる事を望んでいる、と。それはカインと共に花を選んだレティシアも同じだった。

 食事会もお開きとなり、シトラス達が先にイザラを部屋に連れていく。
 冒険者達は顔を見合わせ、頷いたアリアはそっとカインに声をかけた。カインは不思議そうに首をかしげ、アリアを見つめる。
「カイン君は、死者を使役する死霊術士だったよね。ならさ、最後に少し生者を活かす手助けもしてみない?」
 その言葉に、カインはしばし考える。が、ピンとこなかったのか怪訝そうな顔になる。
「どういうこと?」
「提案したいことがあるのですが……」
 そう言ったのはレティシア。彼女はレビジュを見ながらこう切り出した。
「例えば、レビジュ様が仮死状態となる薬を作り、『毒による処刑』を表向き行った後名前と姿を変えて、皆様と共に償う事はできないのでしょうか?」
 もし、望むのであれば帝国側と交渉したい、と彼女は提案する。アリアも書簡を作る下準備をしている、と告げた。しかし、それに対しレビジュとカインは表情を曇らせる。
 二人はレティシアから彼女自身の過去を聞いていた。
 彼女は帝国で生まれた事、実母がレティシアや恩人達を守る為に帝国貴族の愛妾となり……自害して果てたことを。そして、沢山の犠牲の上に生きていることを。
「だから、私は幸福になる資格は無いと思っていました。……でも、今は後悔の無いよう生きたいと考えています」
 だからどうか……、と切実な目をカインに向けたことも覚えている。
 だが、脳裏に過った眼差しを振り切り、カインは声を振り絞った。
「それで、俺を生き残らせ場合、『帝国側のメリット』は何になる?」
「そうですね。欠落を埋めるテストケースとして、研究する価値がないかと思うのですが。レビジュ達のケースもありますし。家族になる人が居れば、カインさんの欠落は埋まるのではないか、と考えたのです」
「多分、帝国はそれをメリットとして受け取らないと思う。帝国の利益にならない、と言い換えたほうが分かりやすいかもしれない」
 トーラがイザラの事を思い出しながら言うが、カインは首を振り二人は僅かに息をのむ。
 次に提案したのはアリアだ。
「せめてイザラ君が元気になるまで、そばにいてあげるのはどうかな?」
「うん……」
 そこで漸く合点がいったのだろう。カインは少しだけレビジュを見た。レビジュは少し考え、アリアと目を合わせた。
「カインが望むならば、移送の日までイザラの傍にいることならできるよ」
「そっかぁ……」
 アリアは頬を掻き、苦笑するがカインは首を振った。
「生きて欲しいて、思ってくれる人がいる事が嬉しいや。でもね、けじめだけは、つけさせてくれないか?」
 カインはどこか寂し気な微笑みで、そっと言った。
「俺の為に手を尽くそうとしてくれたことには、感謝している。でも、俺は、あいつらより罪を重ねた。だから、俺が減刑されたらあいつらに迷惑かけちゃうかもしれない。それに、俺は死霊術士だし、危険視されても仕方がないんだ」
 カインは真面目な、それでいて申し訳ないというような顔で言う。嘘偽りのない物だと感じたアリアはきゅっと唇を引き締める。
「……あんなに酷い事をやり続けたのに、『生きて罪を償ってほしい』って知恵を出してくれるなんて思ってもみなかった。だから、驚いている。上手く言葉には出来ないけれど、とても胸が暖かい。だから、俺はきちんと向き合わなくてはいけないんだ。家族がきちんと生きられるように」
 カインは、時折咳き込みながらも、必死に感謝の意を伝える。その姿を冒険者達は静かに受け止めた。
「あんたらが、思い出させてくれた。『デゼスポワル』のみんなのことを。……あんなこと(イザラの洗脳)をしなくても、死んだ弟に縋りつかなくても、ちゃんと『家族』は居るって……」
 カインは、金色の目にうっすらと涙を溜めながら、にっこり笑った。
「本当にありがとう」
 黙って成り行きを見守っていたイズルは、ぐっ、とこぶしを握り締めた。カインの決意は固い。ならば、自分は……。
 彼は、そっとレビジュにとあることを確認した。

 カインを部屋に戻した後。イズルは頭を下げ他の冒険者達にカインとレビジュの3人だけで話したい、と願う。トーラたちは何かを察し、「先に行く」と言ってその場を離れた。
 レビジュが見守る中、イズルはカインと目を合わせる。
「前にした約束の話もしていいか?」
その言葉に、カインは静かに首を振る。イズルは、僅かに困惑した。
「俺の死霊術は、本当に独学なんだ。実家にあった死霊術の本を出て行く前に持ち出して読んだり、他の同業者の真似しただけだったから」
 その本の内容等はすべて覚えてしまったので、もう他の構成員に売ってしまった、とも。
「それでもいい。覚えている限り教えて欲しい」
「じゃあ、1つ約束して。俺みたいにならない(それを使わない)でって」
 カインは「約束できる?」と問いかける。イズルがこくりと頷くと、彼はレビジュに書くものを持ってきて欲しい、と頼んだ。

●
 それから2日後。帝国へ向けて一行は出発した。
 その間、カインは冒険者やレビジュ達と少しずつ話し、時折何かを書いていた。
 レティシアがいつでも摂取できるように、とレビジュにも与えたことのあるチョコレートバーを渡すと、彼は仄かに嬉しそうにそれを口にした。
 日が暮れると、ランプの光を頼りに、彼は書き物を続ける。時折冒険者達が様子を見に行くと、そのまま眠ってしまっていた事もあった。
 そして、ヴァイセントラフ砦に到着した際、イズルはカインにネクタイをすると、彼はにっこりと礼を述べた。
 カインは冒険者達に一礼し、帝国兵の顔となったシトラス達と共に砦へと消えた。

 そして、更に数日後。彼は、裁かれた。

●
 ――後日。
 立ち会ったイズルは、カインから受け取った書物を抱きしめ、彼の最期を思い黙祷する。しばらくそうしていると、レビジュがイズルを呼んだ。
 そして、レビジュに案内されるがままに連れていかれたのは、2つの小さな墓だった。カインの『欠落』が埋まるのならば、と過去に自害した仲間と同じ墓地に眠る事となった。これはレビジュ達が頑張ってきた結果であり、レティシアが受け取ったカインの願いでもあった。
 埋葬時、サルビアの種も一緒に埋めた。芽が出れば、いずれ咲くだろう。

(本当は従者としておきたかったけどな)
 イズルが寂し気に笑えば、トーラが肩を叩き、アリアとレティシアが頷いた。これから、イザラにカインの遺品を届けに行くのだ。
 冒険者達は、レビジュと頷き合うとそっと彼らに別れを告げた。

「エクレールに渡す花も、用意しないとな」
 その道の途中、イズルはぽつりと呟いた。

(終)

マスターコメント

おまたせしました。 そして、カインへの心遣いなど本当にありがとうございました。 カインは、欠落を少しでも埋めることが出来ました。 そして、『家族』の元に帰ってくることが出来ました。 冒険者の皆さんのお陰です。 レビジュ達も、彼の決断を受け入れました。 今後はより真剣に生きる意味など考えていく事でしょう。 それでは、このあたりで。また縁がありましたら宜しくお願いします。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜8人

2023年11月09日 14時06分17秒 公開

成功

相談掲示板

  1. トーラ

    成立ですね。 トーラです。よろしくお願いします。 カインは裁かれるんですね…。 考えたんですけれど、イザラさんも含めて食事会などを開くのはどうでしょうか?

  2. アリア・ティーダ

    成立感謝。 アリアだねっ。 自分できちんと決めたなら裁かれるという判断を尊重したい…かなっ。 トーラ氏の言う通り、食事会開催はいいと思う。今のカイン君が自分を必要とする人がいると聞けば、罰だけを望んで朽ちるのを待つ心に何らかの灯がともるかもしれないし。 その上で、ボク達冒険者やモルアモの人達で纏めたカインの言動や反省を記録した物を裁判に持ってけないかなと。 このご時世で特殊な能力の持ち主は使い所が沢山あると思うし、レビジュ君達みたいな例もある。 ボクは大事な人の友としてカイン君の判断は尊重するけど、その上で彼に寄り添って生き続ける道を探したいなと。

  3. イズル・M・ヴォルゴール

    イズル・ヴォルゴールです。よろしく。 食事会はするなら参加します。 個人としてはカインと話をしたいです。 その時に花を選ぶ手伝いや、もし外出も許されるなら監視をしてる三人組も一緒に出かけられたらと思っています。 (外出部分の判断はMSに投げる感じです。無理して出掛けたいわけでもないので) レビジュには事務的な話だけ振ろうと思ってます。

  4. レティシア・R・クラティアス

    ……ごきげんよう。 ヒーラーのレティシア・レインフィールと申します。 皆様、よろしくお願い致します。 食事会の開催については異論はございません。 あとは、出来る限りレビジュ様やカイン様 それにイザラ様のご希望に沿えれば、と。

  5. トーラ

    明日出発ですね。 アリアさんの案ですけれど、別のアプローチとしてカインへ薬物を投与したり、死霊術を教えた相手の事を自供させて司法取引のような形で減刑を出来ないかやってみようと思います。

  6. レビジュ・バトー

    皆さん、移送の手伝いに来てくれてありがとうございます。 報告書(プレイング等)の提出締め切りは11/2の朝8:00になります。 白紙などにお気をつけて。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0