【突壁】森に響く槌の音
馬車猪
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シナリオID:3253
オープニング
会心の手応えだった。
肉体とエーテルが連動して得物を加速させ、進路上の地面を抉って傷口に衝撃を残す。
「素晴ら」
感動の言葉は爆発じみた轟音にかき消される。
地面が急流の川面のように揺れ、巨大過ぎて広がりきらない衝撃が無差別に周囲に襲いかかる。
ハンマーの使い手も影響から逃れることは不可能で、倒れはしないが土と砂にまみれて酷い格好になる。
(素晴らしい!)
ゴブーナは長い間、格相応の武器が入手出来なかった。
緑の中指という立場を保ってきたとはいえしょせんは下級の幹部でそれが限界だ。
格相応の装備を購入するコネも財力も、それほどの武器が納められている場所から奪う実力もない。
だからゴブーナは、ハンマーの作り手には心から感謝していた。
「間抜けめ」
吐き捨てるような言葉が投げつけられる。
年老いたドワーフ鍛冶師がゴブーナに近付いて、変色した手でむしりとるようにハンマーを奪い取る。
「ヒビが入っている」
拳で叩くと違和感のある音が発生する。
修復しても機能の低下は避けられず、放置すれば戦闘中に壊れかねない深刻な傷だ。
「加減して使えば問題ない。同じ物を作」
「あぁっ!?」
ゴブーナの言葉が今度は怒声でかき消された。
実験を散々繰り返しても完成品を作れない苛立ちが、もともとないに等しい堪忍袋の緒を断ち切っている。
こうなるとゴブーナでも止められない。
物理的に黙らせるのは簡単だがそんなことをしてもゴブーナの目的には一歩も近づけない。
そのことが分かっているから、ハンマーをとられたときも抵抗しなかったのだ。
「糞っ、燃料の質か? それとも……」
老鍛冶師は次に作る作品のことで頭が一杯だ。
狂気とも執念ともつかぬものを撒き散らす老人に、ゴブーナは道具を見る目を向けていた。
●
リットとビヒモーがぐったりしている。
帝国の僻地を1人と1頭で横断できる程度には猛者ではあるのだが、魔獣が出没する山道を大急ぎで移動するのは荷が勝ちすぎる。
「こんなもん何に使うんだ?」
情けない表情のリットが零すと、特大の荷物を実際に運んでいる相棒がじろりとリットを睨む。
「愚痴くらい言わせてくれよ」
忍び寄ってきていた猿魔獣を振り返り様に上下に両断。
返り血を躱すのには失敗して表情の情けなさがひどくなる。
「ちくしょー」
肩を落として手ぬぐいで顔を拭く。
義兄の婚約者が上司だった頃はまだマシだった。
要求が厳しく報酬も特に高くはない代わりに渡される情報は正確で支払いも確実だったのだ。
「最近こんな仕事ばっかりだ」
しかし代官として独立してからは騙されたり不利な条件を押しつけられたりすることもしばしばで、最近は酷い条件でも請けなければ運転資金を稼げないほどだ。
「もう少しで届け先だ。気を抜くなよ」
リットは相棒を励ます。
ビヒモーの中での特に体格の良い相棒は小回りが利かない。
障害物を破壊するのも使い捨ての橋や坂を作るのもリットの担当だ。
ビヒモーがリットの背中を頭でつつく。
「なんだよ邪魔すんなよ」
もっとつつく。
「ゆらすんじゃねーよ、メシは届け先についてからだ。ただでさえ遅れてるんだかっ」
つつく代わりに蹴り飛ばす。
「てめっ」
受け身を取った直後に青筋を立てて立ち上がったリットは、予想外の光景をすぐには認識できなかった。
濁った目のゴブリンが、見上げるほど大きなビヒモーとその背にくくりつけられた荷物を見て頷いている。
「ここを嗅ぎつけるとは大したものだ」
授恵者として中堅の域を超えているリットも、戦闘力に限ればリットと同程度の特大ビヒモーも動けない。
力の差があり過ぎて抵抗は不可能、逃亡もリットのせいで不可能になった。
なお、今回の輸送依頼を請け負ったのもここまで来たのもただの偶然である。
「君が無才に見えるのは私が無才だからだろう。悔しくはあるが……」
見た目だけは若いゴブリンが口元だけで笑う。
「怖がることはない。私が、ゴブーナが念入りに鍛えてやるとも」
強くなって私の強さになるのだよ、と優しく囁かれた気がしてリットとその相棒が涙目になった。
●
白い鳥がじっと見下ろしている。
剣の素振りをする少年に手はあげず延々と理詰めでフォームを訂正していく緑の中指に、地獄のような労働環境で働かされる鍛冶師達。
相棒を見捨てるつもりのないビヒモーは、普段食べている食事と比べると不味い草をもそもそと食べている。
今は血が流れていない。
だが、大量の血を流すための武器が、今まさに猛烈な勢いで生産されていた。
●
「戦闘依頼です」
冒険者ギルド職員が大きな地図を広げる。
「場所は帝国南西部にある小さな森です」
昔は猟師や木こりが集まる賑やかな場所だったが、あの日の後は近付いた者が誰も帰還しない場所と化した。
「ここに帝国の人間が捕らわれているそうです」
魔女オペラの予知夢による情報だ。
捕らわれているのは帝国代官見習いのリット。
小さな商会を兼業する授恵者で、大柄なビヒモーと共に様々なものを輸送してきた。
「彼の救出は必須ではありません」
騙されたとはいえ非合法な品の輸送に関わったから、ではない。
「現地で違法な素材を使った武器が生産されています」
最大の問題かつ脅威はこれだ。
メドゥの指先に属しているか帝国過激派に繋がっているかは分からないが、高性能な武器がろくでもない個人や組織に供給される可能性が極めて大なのだ。
「予知夢の中に緑の中指の姿もありました。装備は万全ではないようなので皆さんなら討伐できるかもしれませんが……」
鍛冶場の破壊が最優先。
職員は硬い表情のまま淡々と依頼の説明を終えた。
解説
マスターより
リプレイ
「理詰めでリットくんのフォームを矯正するゴブーナさん……妙だな……」
アルマ・ヴァレンタインがクレーターの中を見てシリアス顔でつぶやく。
潜入がばれそうにも見える行動だが、森の中から迫ってくる猿の鳴き声の方が何十倍も大きいので気にしても意味がない。
「……あれはゴブーナ様でしょうか。厄介な事になりそうです」
フリーダ=ブロムヴィストはアルマが豊富に用意した肉や発酵食品を受け取っている。マジカルポケットに詰め込んできたので量は十分だ。
餌を拾いながら仲間同士で奪い合っていた猿が、フリーダが片手に提げた袋に気付いて速度を上げる。
金のかかった鍛冶場が広場の中にある。
(あれが呪われた武器の製造元でしょうね。一体どんな人物が造っているのでしょう? 啓示によれば『どう見ても社会不適合者です。本当にありがとうございました』との事ですが)
フリーダは肉入り袋を投げ込み鞘から剣を抜く。
(それだけでは無さそうです)
非常に濃い気配が、炉の至近に感じられた。
若いのに疲れた顔をした授恵者達がフリーダに向いて、その虚ろな目に微かではあるが困惑の感情を浮かべる。
フリーダが投げた肉を目指して駆ける猿より、背中を晒したフリーダを狙う猿の方が多い。
(後衛を狙いましょう)
後ろから攻撃されるとフリーダでも防ぎにくいが装甲とアダマントボディを貫通するほどではない。
真正面に向かって落下するかのように急加速。鋭い切っ先に重さと速度を与えてキャスターと思われる授恵者に強打しようとする。
即座に前衛授恵者が庇って防ぐが大打撃をくらって意思とは関係なく悲鳴がもれた。
●
(猿にはこのまま状況をかき回して貰いたいのだ)
ストレガ・L・リベルガストラが猿と賊の争いにエーテルで介入する。
発した言葉は一定の空間に特別な性質を与える。
稲妻のごとき光が重なり合い大蛇を思わせる動きをして、猿も敵授恵者も関係なくその移動能力を邪魔する。
必然的に両者が至近距離に居続けることになり、移動を邪魔された猿達が遠くのストレガではなく至近の賊に拳と牙を向け出すことになった。
「被害者がいるならビヒモーに向かって逃げるのだ」
ストレガの言葉に鍛冶が混乱する。
疲れと絶望に気力体力を奪われているのだ。
(高性能装備が量産されて手が付けられなくなる前になんとかしないと……)
トゥーリが戦場に突入する。
少し大回りして、猿ともフリーダとも離れた方向からの突入だ。
老ドワーフが槌で迎撃する。
トゥーリは決して速くはなく、しかし回避は得意だ。
神材製の祭刀はもともと優れたトゥーリの回避能力を数段上の領域に引き上げ、それを理解しているトゥーリは回避を優先した構えで流れ弾も槌の一撃も余裕をもって躱してみせる。
(どこにいたの? 武装してるから加害者だよね)
あのゴブリンと比べると数段落ちるとはいえ格はトゥーリより上だ。
合流されると撃破も難しくなるし逃亡阻止は不可能に近くなる。
「魔法は効きそうっ」
トゥーリの魔力を込めた杖が、人間がまとう鎧としては非常識に分厚い鎧をぽこりと叩く。
老ドワーフは不気味な笑みを浮かべて、両手で槌を振り上げた。
別の戦場をちらりと見たアルマがむうと唸る。
バフは対コブーナ戦まで温存したい。
今使っている装備はとてつもない魔力をもたらすが制御面ではふつーだ。強い敵相手にはまず当たらない。
(でもー)
自意識過剰な攻防しか考えていない敵なら話は別だ。
ただの魔弾が、不気味な装甲の最も厚い箇所を脇腹ごと食い破った。
冒険者が引き連れてきた魔獣と敵授恵者が血で血を洗う死闘を繰り広げている。
だからフリーダが装甲の薄い後衛授恵者に歩み寄ることは簡単で切り捨てるのも同様だ。
(あの鎧には効果が薄そうですね)
フリーダが冷静に敵の戦力を判断している間にストレガから術が飛んでいく。
最初は霞状のエーテル。術の命中と付与術による対術抵抗突破が必要な運用難易度が高めの術だ。
もっとも格相応の腕前を持ち圧倒的にもほどがある付与術の使い手であるストレガにとっては基本的に当たる術だ。
老ドワーフの攻撃が、槌をぶんぶん振り回すだけの雑な動きに変わる。
次の術は青藍に光る鎖付きの錨だ。同じく命中と抵抗突破が必要だがストレガにとっては何の障害にもならず、ゴブーナにふさわしい武器を造った老ドワーフの逃走手段を奪い取る。
戦いの中でもゴブーナの動きを確認していたトゥーリが危機感を強める。
あれは全体の戦況が冒険者有利なのを承知の上で、目を輝かせてこちらへ接近中だ。
「指先ってかわりものがおおいのかもー」
アルマは積極的に前へ出る性質は持たないが、それが必要なら平然と実行する。
「な、ぜ」
老ドワーフは攻撃力も防御力も維持したまま、アルマの圧倒的な魔力に追い詰められる。
物理防御優先の鎧ではアルマ級の魔法攻撃には対抗しようがない。
「最近の鍛冶さんは神材の扱いが増えてるからー……?」
無意識か意識しては分からないが、アルマは丁寧に相手の心をへし折ってから魔法で止めを刺すのだった。
●
ゴブーナは熱心にリットへ指導している。
そこにベルク・オスマットは静かに忍び寄る。
特別に隠密向きのスキルはないが、抜群に隠密に向いた装備と格の高さがあれば、ほとんど遮蔽物がない戦場でも隠密行動できる。
(あれが子供のように夢中になっているからできることだがな。……リット坊も仕事中に拉致られるとは運の無い)
鍛冶場の方角から大きな音が聞こえてくる。
囮の猿と冒険者が行動を開始したのだ。
ベルクは対象から50メートルの距離で瞬身術を使用する。
技か術があるいは神秘的な何かであるかはベルクにしか分からないが結果は分かる。
リットとベルクの位置が一瞬で入れ替わってゴブーナも邪魔できなかった。
朦朧としたリットをシルク・メイプルリーフが抱き上げる。
「リット君は返していただきますね?」
憧れの女性に密着されても反応できないリットの精神および肉体の状況は深刻だ。
「嫌だなんて言いませんよね?」
青い瞳に本気の怒りを滲ませ、シルクは小柄とはいえ人1人を抱えて自らを盾にするようにして走り出す。
もそもそ草を食べていた巨大ビヒモーが、状況の激変に気付いてリットとシルクとの合流を目指す。
ハンマーが超高速で旋回してベルクを狙ってくる。
「これまで手を抜いていたか?」
ベルクはスキルを使い被弾時の危険も承知の上で回避優先で行動しているのに躱せたのは半ば偶然だ。
「リットくんしっかり!」
強力極まる癒やしは全身の擦り傷を癒やすが深刻な疲労までは癒やせない。
シルクは全身を使ってリットをビヒモーの背中へ放り投げる。
「そろそろ決着つけてやんぜゴブーナ!」
肉体的にも精神的にも若々しい声が戦場全体に響く。
おお、と喜びの声を共に振り返ったゴブーナは、ハヤト=ガラン=ヴォルファングの頭頂から足先まで食い入るような目で何往復も見て、破顔した。
「よくぞそこまで鍛え抜いた」
淀んだエーテルが熱を発して動き出し止まらない。
「私とと戦う権利をやろう」
心にも体にも無駄な力みはどこもにもなく、格相応の身体能力をそれ未満でもそれより上でもなく100パーセント発揮する。
ただ走ってしてよく狙ってハンマーを振った。
「錆が落ちたかよ!」
ハヤトは手札の切り時を間違わない。
自身の回避技術の高さを証明することにこだわらずに特性スキルを使用。
残像が生じるほどの速度でハンマーの凸部分を躱す。
(敵の気紛れに期待するのは趣味じゃないな)
死が至近にある状況でもハヤトの戦闘勘は冴えたままだ。
羽のような軽さと恐るべき鋭さの刃2つは本命であると同時に牽制。
神材装備による速度と力に対する後押しがあるとはいえ鍛え抜いた足技こそが本命だ。
薄らとエーテルを纏ったゴブーナの肌を、跳ね上げる蹴りが抉り血と肉片を戦場へ散らばらせた。
「私をここまで喜ばせてどうする気だっ」
一撃離脱で後退するハヤトをゴブーナが追う。
若く見える顔に浮かぶのは、孫から初めて贈り物を渡された祖母に限りなく近く同時に遠い。
ハンマーの間合いの外へいるハヤトへ、当たれば重体確実の技を躊躇なく使う。
「はしゃぎおって!」
高速を誇るベルクが死角から攻める。
薄くても強靱な防具と皮膚を刃で切り裂くが命までは届かない。
ハヤトによる傷とベルクによる傷をそのままに、ただ一人を狙った衝撃がハンマーからハヤトへ伸びる。
舌打ちを1つ。
油断はなく回避も冴えてはいるが最高ではなく、調子がほぼ最高寸前の打撃がハヤトの胸へ直撃した。
ゴブーナの攻撃は終わらない。
冒険者の中で初めて認めた対等な敵手の至近に着地。止めの一撃を腹部目がけて振り下ろそうとする。
「ゴブーナ! 貴様の行いは決して許せるものではない! ここで貴様を討つ!!」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトの登場である。
かばうためのスキルは今は使えず、しかしハヤトを殺害されたならその直後のゴブーナを戦闘不能に追い込めるかもしれない一撃は繰り出せる。
(遅れてしまったか)
アルベルトの戦術眼は情では曇らない。
(ここでゴブーナを討っておかないと手が付けられない存在になってしまう。ここで討って後顧の憂いを断つ!!)
アルベルトはゴブーナに比べれば格が低く、重武装をしているので移動力は限定されたものになる。
だが短時間ならスキルで追いつける。
「死ねゴブーナ!」
呼気に言葉と殺意を載せる。
物理的にも霊的にも鍛え抜いた心身の力を剣技の形にして、神材で強化された刃を振り下ろす。
それは、シーフが使うような特殊なスキルがない限り躱せはしない一撃だ。
アルマによるバフと攻撃集中の組み合わせは緑の中指を切り倒すには十分な威力であり、これで人類社会の長年の懸案の1つが片付くかと思われた。
「おっと」
ハンマーくるりとまわして鉄の塊で受ける。
直後に生じた衝撃は全身の骨を痛めつけ複数の亀裂を生じさせるがゴブーナを倒すには足らない。
「あっちに向かわなくていいの? 鍛冶場もせっかく作った武器も、壊れちゃうよ? 混乱を鎮めた方が良いと思うな……」
音で事情は察しているだろうがゴブーナの位置からでは鍛冶場の目視できない。
トゥーリは魔弾を叩き込みながら言葉でも牽制する。
「貴方は人類の繁栄に邪魔な存在、ここで潰えていただきます」
リットを置いて戻ってきたシルクが白兵攻撃を敢行。
エーテルと祈りたっぷりの鯖折りは彼女の腕と力を引き上げ、躱されはしたがゴブーナの対応能力をかなり消費させた。
「好機を逃す気はないのだ」
ストレガが射程ぎりぎりから鎖付きの錨を投げる。
付与技術の達人かそれ以上であるストレガによる足絡之呪は、当たればゴブーナにも効く。
「負けたか」
「ううん今から終わるの」
トゥーリの祈りを起点に光の六角柱が出現する。
普段なら速さの違いで気付いていたはずのゴブーナも、脅威に気をとられて気付くのが遅れた。
「ゴブーナ! ここで決着をつけるぜ!!」
自ら志願して柱に捕らわれたアルベルトが大剣で押し込む。
柱の中では窮屈に感じるほどそれは大きく、だからゴブーナも避けづらいし防ぎづらい。
「無茶をする」
ゴブーナは心底楽しげにハンマーを全力で振り回す。
振るのが窮屈なはずなのに何度も仕掛けられてその度に挑戦者を屠って来たゴブーナは万全の攻撃力を狭い空間に叩きつけた。
地面が海水めいてうねり閉鎖空間の中で暴れる。
ハンマーが、否、ぺきりと軽い音を残して折れた鉄塊がアルベルトの盾にぶつかり障害物に変わる。
白金のパラッシュがゴブーナの左前腕にめり込む。
「意外ですね。神の領域に半歩くらい踏み込んでいると思っていました」
フリーダは激しい動きとは対照的に冷静だ。
「生憎とそこまで上れる手段が見つからなくてね」
ゴブーナの腹を輝く杖が打つ。
トゥーリの攻撃は非常に強力だ。
ゴブーナにも十分通用する。ゴブーナの防御が物理に偏っていればこの場で気絶していたはずだ。
「まったく、無茶をする」
中途半端に残った柄を杭として持ち替え攻撃に偏ったトゥーリへ使う。
直前の物理攻撃力の数分の1しかなくても、前のめりの攻撃で隙を見せたトゥーリを当てることは難しくない。
気絶したトゥーリが片手で肩に担がれた直後に六角柱が消え、その直後にストレガによる青藍の鎖が絡みついてゴブーナの移動力を奪い、さらにその直後にトゥーリとベルクの位置が入れ替わる。
「殺せそうだと欲が出るな」
圧倒的に早いなベルクが次の行動で先手をとる。
黒く染めた2本の刃は、短剣の形をしている割にはお伽噺じみて強力だが物理攻撃であるためゴブーナにとって防ぎ易い。
「悪いが今日は運が良い日のようだ」
無理に使用して完全に壊れた柄も2度ほどは使用可能だったし、何より対術抵抗の調子が良い。
ゴブーナはストレガから喰らって深刻だった魔霞の影響を鎖の影響ごと振り払う。
「対等の相手に1人で仕掛けるのが愚かで非礼だった。すまない」
「リット防げ!!」
気付いたベルクも攻撃直後で動けない。
投擲された元柄がビヒモーの巨体に突き刺さり、混乱したビヒモーが暴れ出す。リットは最初に吹き飛ばされた。
逃げだし、冒険者の視界から消える寸前。
ゴブーナは唐突に倒れる。
戦闘不能。
冒険者の、勝利であった。
●
見開いたままの目は虚ろなのに何故か満足そうだ。
うむと頷いたストレガは押収した資料に目を通し、全部に封をして宛名を書く。
「帰ってからよく食べてよく休んでねー……」
アルマのヒールでもビヒモーは完治しない。
深手を負った冒険者も癒やす必要があるのでヒールが足りなかったのだ。
「がんばってくれたからこれー」
量は少なくても美味な食べ物は、酷い目にあったビヒモーの心を癒やしている。
フリーダは鍛冶場内部を見回り誰も隠れていないのを確認してから、特に武器を使わず両手であちこち引っこ抜いて足で蹴り潰していく。
悪質過ぎる技術を封印して残すことは有り得るかもしれないが、生産手段を残す意味はない。
「リット坊は災難だったな。とりあえず荷を確認しよう、先方への謝罪には我も事情説明と証人として付いて行ってやる」
ベルクは動揺が止まらないリットを宥めている。
なお、密輸について知らされるのはヴィントに戻ってからである。
シルクは癒し手の顔のまま、ヴィントに送られ情報を搾り取られることになっている被害者と加害者に触れていく。
(この鍛冶師の方は人類の為になりませんね。摘み取るのが我が神の望みともなりましょう)
気絶したままの老ドワーフに、脳内にある研究成果ごと止めを刺すのだった。
狂気は倒れ、指先の数が1つ減った。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2023年10月13日 11時16分39秒 公開
相談掲示板
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回は『鍛冶場の破壊が最優先』とあるが、そろそろゴブーナを討っておかないと、手が付けられなくなってしまう恐れもある。 そこで、今回俺はゴブーナを討とうと思う。 一緒にゴブーナ討伐に向かってくれないだろうか?
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 とりあえずリット坊は後で締める、もとい説教として早めに助けてやらんとな。 ゴブーナもここでなんとかしとかないと、試作品だけでも持ち出されたら驚異度が跳ね上がるから何とかせんとな。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー ゴブーナさんがLv70相当なのは初めて知ったよ、どうりでつよつよさんな訳だ これに神材以上の装備が入ったら手が付けられないし討伐はいいと思うんだけど とっても逃げ足速い(移動6?)からなにかいい作戦でもあればー…? ひとまず注意力散漫な鍛冶師の護衛さん達の気を引くため用で 猿魔獣さん達にお肉セット&発酵食品でひと騒ぎしてもらおうかなと
No.4
豊穣の使徒シルクです さて今回はリット君に手を出されたとみるべきかまだセーフとみるべきか迷っています。 危害を加えられたならもはや生かしてはおけないのですが今のところリット君を教育してくださっているので( とりあえず魔獣をけしかけて鍛冶場を大混乱させるのは大賛成です
>メイプルリーフさん ゴブーナは 『嫌がるリットに無理矢理いろんなことをしている』、そのうえ成長させてゴブーナの強さ(経験点)にしようとしているわけでアウトでは無いかと思われるが
トゥーリだよ、よろしくね! レベル70かぁ……どうりで。強いわけだね。 ゴブーナさんについてはそろそろ何とかしなくちゃいけないかなって言うのは賛成だよ。 逃げるところに追撃までできるかは分からないけど、やれるところまではやりたいね。 とはいえ、先にドワーフさん達その他もろもろに対応して、ゴブーナさんのスキル使い切らせるところまではいかないといけないよね。挙げてもらってる通り、猿魔獣をけしかけてまずは工房の機能を止めて、護衛も老ドワーフさんもぜんぶ無力化した後にゴブーナさん……かなあ。 さすがに工房が滅茶苦茶になっててもリットくんの鍛錬続けますかっていうのはちょっと疑問があるよね。警戒は怠らずに、ぐらいしか言えないかなあ。
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 ゴブーナ様は元より鍛冶師も護衛と戦力は相当な数になりますね。 幸い猿魔獣は実力差を理解しているようですし、 餌等で上手く鍛冶場に誘導する事で乱戦に持ち込めるとベストですね。 可能であればゴブーナ様を鍛冶場に誘い込んで鍛冶場に攻撃、 激昂した鍛冶師との同士討ちが狙えるとベストなのですが…… お肉セットを使う手は良いと思います。 可能であればマジカルポケットに隠しておく事で直前まで匂いを抑えられるとより良いかと。
ゴブーナさんを逃がさず仕留める案は思いつかないけど、 武器が「折れたぁ!?」するまでは交戦できるだろうからその間になんとか…? 猿魔獣さん利用は問題なさそうなのでマジカルポケットも合わせて準備していくね
発言した気でいたのだ。ストレガなのだ。よろしくなのだ。 猿魔獣けしかけ了解。そこにつけこんでアーケインストリームばらまく予定。 もう一つはスネアジャベリンだがゴブーナ殿の足止めができるかは未知なので期待しないでもらいたいのだ。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 確かにゴブーナの奴は倒しとかねぇと後々面倒になりそうだな… 猿共を護衛にぶつけてゴブーナを誘導、鍛冶場を破壊させドワーフの鍛冶師と同士討ちさせる狙いでって方針は賛成だ! 俺は最初っからゴブーナに仕掛けて鍛冶場破壊へ誘導する役を買ってでるぜ! ゴブーナが逃亡したとしても俺の脚なら追いつけっから何とか足止めして皆の追撃も可能な様に時間稼ぎしてみんぜ!
追撃には我も加わろう。 二人がかりなら足止めもギリギリ行けるだろう。
No.13
ゴブーナさんを素通りしてリット君を保護 その後鍛冶場をめちゃくちゃにしようかと思います。 リット君の保護を邪魔するならば