【代像】のばす手、はらう手
菊華 伴
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シナリオID:3174
オープニング
●明け方の迷子
――???
それは、王国のはずれにある貴族の館。
古い使用人の服を纏ったカインが、一人廊下を掃除していると、似たような顔の少年がやってくる。
「兄様、父様がいないから、中庭で遊びましょう!」
「でも坊ちゃま……、掃除が終わらないと、執事に怒られるから……」
カインが辺りを見渡しながら言えば、少年が雑巾を取り上げ、床に投げ捨てる。そして「僕はカインと遊ぶから! お仕事別の人がやって」と通りがかったメイドに行ってカインを引っ張っていった。
「エクレール様! またカインをお連れになるんですか? カインは」
「誰が何と言おうと僕の兄様! ほんとはこんな事させるのが間違ってるんだよ」
窘めるメイドにそう言い放ち、走り去る。カインは戸惑いながらも内心嬉しかった。
中庭にたどり着くと、水で手を洗い、ハンカチを濡らしカインの顔を拭く。カインが止めようとすると、少年は笑う。
「兄様! 僕、いっぱい勉強して、父様を当主の座から降ろしますね。そしたら、兄様も、兄様のお母さまも我が家の一員として認めさせますから」
「でも、そんなことしても嬉しくないよ、エクレール。俺は、傍に居られるだけで、幸せなんだ」
カインは、少年――エクレールに寂しい笑みを向けて窘める。だが、エクレールはにっこり笑った。
「種族が違うだけで、兄様がこんな目に合うのが間違ってるんだ。僕の死んだお母さまも言っていたもん」
エクレールの楽しげな声に、カインは複雑な気持ちになっていると「何を話してらっしゃるのですか?」と、一人のメイドが姿を現す。ハーフリングのメイドは穏やかに、優しい笑みで二人に笑いかけた。
その顔は、その目は、そしてその髪の色は……どこか彼女に似ていた。
(そうだ。あの時の夢をみて、おふくろの魂を、ここに呼び戻す事を思いついたんだった。おふくろに似たエルフの女性を依り代にして)
大森林のどこかにある、小さな小屋。カインはゆっくりと目を覚ますと、傍らで寝ぼけ眼をこするエルフの女性――イザラの髪を撫でて微笑んだ。
「おはよう。早く俺のおふくろになってくれよな」
そう言って、カインは薬を染み込ませた布を彼女の口に含ませた。女性は首をふり嫌がっていたが、やがて瞳を閉ざしされるがままになる。
さらりと黒髪が肩を滑る。カインはそっと櫛で彼女の髪を梳きながら歌を歌い始めた。その歌は優しい旋律の筈なのに、どこか狂気を覚えるような歌詞だった。そして、強風にあおられた木々のざわめきも混じり、より不穏な空気を醸し出していた。
●風の強い日に
冒険者達とレビジュ・バトーたちは、連れ去らわれていたエルフの女性たちを助けることが出来た。だが、ただ一人……イザラという旅の医者だけがカインに囚われたままだった。
その日、強い風に苛まれながらも冒険者達はレビジュたちと共に捜査を行っていた。
「ねぇ、レビジュ。本当にカインはそんな事をやろうとしているのかい?」
考え込むレビジュに、エルフの青年であるスケアクロは問う。レビジュはロバの耳をちょっと力なく倒し、「そうかもしれない」と頷いた。
冒険者たちの調査によって、カインが『フェンヌに似ている女性を生贄にし、彼女を蘇らせようとしているのでは?』という可能性にたどり着いた。
「死霊術に関しては、僕も齧った程度。でも、調べた限りでは『死んだ人間の魂を呼び戻す』なんて出来ないみたいなんだ」
彼はアレから過去に死霊術士に関する記録などを調べ、そう結論を出した。スケアクロは頭を掻きながら「とりあえず別れて調査してみよう」と言った。
彼らは、先日の救助後も追跡を重ねていた。
そして、冒険者と共にカインがイザラを連れて逃げたと思わしき場所へとたどり着いた……筈だった。
カインはあれから何度もイザラに薬を飲ませていた。
何度も吐こうとするイザラだったが、カインは飲むまでその場を離れず、結局飲むほかなかった。その度に頭がぼんやりとしてくる。その上甘ったるい香りの何かを嗅がされ、記憶が曖昧になりそうになっていた。
それでも、彼女は心を強く持って抵抗し、対話でもって解放されることを目指していた。
「カインさん、また少しお話しませんか?」
少しでも時間を稼ぎたいイザラは、そっと穏やかに声をかける。だが、何かを察知したのか、カインの表情は険しい。
「ごめん、お袋。そんな時間ねぇんだ。……冒険者達が来やがった」
カインは二人分の荷物を纏めるとイザラの手を引いた。
地面が僅かに揺れる。
レビジュが振り返ると、大きな人形のような物がそこにいた。よく見れば継ぎ接ぎされた肉の塊だ。しかし、何故だろう。所々ひくついているようにみえる。
(これ、資料にあったやつかな? それにしてはちょっと嫌な予感がする)
レビジュと冒険者は、一先ず自分たちで戦おうと身構える。
「まだカインはどこかにいる筈。隠れているあいつを気絶させれば……」
レビジュが周囲を見ながらそういった時、少し離れた場所ががさがさと音を立てる。よく見れば、カインがイザラを連れたままそこにいた。
「カイン、馬鹿な真似はやめるんだ!!」
「お前に、俺の空虚な気持ちが分かるわけないだろ?」
真剣なレビジュの声に、カインは煩わしそうな表情を浮かべる。彼は4人と冒険者達を見渡し、深くため息を吐いた。
「てめぇは裏切ったし、エクレールも出てこねえ! もう、オレが縋れるのはおふくろだけなんだ……!!」
カインが、泣きそうな声で怒鳴ると目の前の人形がレビジュたち目掛け拳を振り上げる。冒険者達は目の前の敵に身構えた。
「あばよ、冒険者ども! オレを止められるもんなら止めてみろよ!!」
遠ざかるカインの声。だが、彼の声はどこか苦しそうでもあった。
目の前に迫るは、死肉を継ぎ接ぎして作られた人形。
はたして冒険者達はこの人形にどう対処するのだろうか?
そして、カインはイザラを連れどこへ向かっているのだろうか?
解説
マスターより
リプレイ
●
目の前に迫る、肉の塊。様々な色の肌、種族特徴を持ったそのゴーレムに、一同息をのむ。だが、ちらりと振り返ったトーラは僅かに見えた女性の影に目を向ける。
「イザラさん、必ず助けに行きますからそれまで耐えて下さい!!」
声は聞こえたか分からない。でも、僅かに頷いたようにトーラには見えた。
「おいおい、何だこの悪趣味な肉の塊はよ!?」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングが怪訝そうな声を上げつつも、よく観察を行う。そして、意味深な目を敵のつぎはぎに向けた。
その視線が何を意味するのか、トーラには理解できた。僅かに頷き合い、まずハヤトが仕掛ける。
鋭い三連撃に重なる、トーラの三連撃。ゴーレムは痛みを知らないのか、何も反応が無い。ハヤトが僅かに唸る横を、レビジュが駆け抜けた。
「! まさか、お前とこうして一緒に闘う事になる日がくるとはな!」
その言葉に笑みを浮かべつつも、レビジュはゴーレムへと三連撃。僅かに刃が赤く見えるのは彼が持つ毒のエーテルの所為だろうか。
(今の所、変化はなさそうですが……)
レティシア・レインフィールもまた注意深くゴーレムを観察する。そうしながらも太陽の光を思わせる黄金色を纏った仲間達が傷ついたらすぐにでも癒す所存だ。
彼女の全身から強力なエーテルの波動が広がれば、仲間達の身体から太陽の光を思わせる黄金色が立ち上る。
(まだ何も話せていないし、のばした手が嫌がられるのも想定内さ。でも、そっちがその気ならば……!)
短杖をゴーレムに向け、筋力を脆くさせるエーテルを放つはイズル・M・ヴォルゴール。
ゴーレムの縫い目が僅かにほつれた気がするのは、シーフ三人組の攻撃が的確だったからだろうか? その上筋力を脆くさせるエーテルが放たれるのだ。
人型であるが故に怯まず、臆せず、バル・ヌール・スケアクロウは得物を握り締め、鋭い一撃を放った。
確かに感じた手ごたえ。その筈なのにゴーレムはやはり反応しない。
「遺された人に出来る事なんて、その人が遺したかった思いを継ぐ事だけなんですよ」
まぁ、私はホムンクルスですけど、と続けつつもその眼は鋭い。
「みんな油断しちゃダメだよ~!」
アリア・ティーダもそう叫びつつ祈れば、黄金の光に青白い物が混じる。発動を確認した彼女は、盾を握り締めいつでもフォローできると仲間達に姿勢で見せた。
と、その時だ。僅かに解れの見える足が上がろうとしたのを。
「来るぞ!」「来ます!」「来るよ!」
ハヤトが、レティシアが、アリアが同時に叫び、散開。遅れて吸い込まれるゴーレムの足。一番近くにいたトーラは間一髪で回避に成功した。しかし、あまりにも重量感のある足の一撃に、冷たい汗が流れる。
(もし回避できなかったら、大けがしていたかもしれません!)
トーラが安心したのもつかの間、すぐさま真っ赤な霧が襲い掛かってくる。
「きゃあ!」
「危ない!」
トーラを庇うようにアリアが立ちはだかり、盾で赤い霧を受け止める。他の面々もどうにか回避し素早く隊列を整え、トーラはアリアへ礼を述べるとすぐに向き直る。
その視線の先、ハヤトやレビジュが視界外より変則的な動きで攻撃。僅かな時間差をもって放たれる三連撃が苛むも、人形は何も反応しない。
「死霊術から解放させて貰います!」
トーラが持つ神材製の武器が透明な空色と、緑青色の軌道を描く。
「援護します」
レティシアがエーテルの矢で足の継ぎ目を狙い打てば、イズルが「みんな、速攻で落とそう!」とイズルが肉体を脆くさせるエーテルを放ちながら檄を飛ばす。
人形はどんなに攻撃を喰らっても身じろぎ一つしない。うめき声も上げない。痛覚が無いのだろう。イズルは僅かに表情を曇らせ、唇を噛む。
「破壊するのは関節部及び首、人型を模しているなら骨格などもほぼ同じで間違いないでしょう。腕や足を支える骨や背骨が壊せれば弱体化も……」
バルが人形の膝の皿を割った……つもりだった。だが、意外にも固い。ならば継ぎ目を狙った方がいいだろうか、と青白く輝く神材の剣を構えなおす。
アリアはけが人がいないか確認すると、盾を構える。恐らくそろそろ何らかの攻撃がくる。
予想があたり、一番近い位置にいたハヤトを踏みつぶそうとする。ハヤトは軽い足さばきで回避し、次の瞬間赤い霧が溢れる。アリアが注意を促し、バルを庇えば緊張が走った。
「予想通り、手ごわそうですね」
バルの言葉に皆が頷く。そうしている間に、ハヤト、トーラ、レビジュの3人が攻撃を仕掛けていた。
●
人形との闘いは、順調だった。
緩慢な動きの人形の地団太を耐えた冒険者達は、シーフ達とバルの攻撃を中心にダメージを与えていた。
途中、バルが握りつぶされかけ、トーラが潰されかけたが、双方とも紙一重で回避している。
特に素早いハヤトが翻弄し、傷つけばレティシアかアリアが回復させる。
イズルが光を宿した神材の戦鎚を振るい、鋭い一撃を継ぎ目に叩きつけて継ぎ目を緩めれば、バルが強力な一撃を反対側から打ち込む。
黄金と青白いオーラが消えれば、アリアが祈れば全員の武器が淡い透明な光に包まれる。だが、油断したのか、彼女は鷲掴みされてしまう。盾ごと鷲掴みにされたアリアは呻くまいと歯を食いしばる。
「っ! アリアさんっ!」
「落ち着け、レビジュ」
咄嗟に動こうとしたレビジュをハヤトが諫める。彼をすり抜けトーラがアリアを掴んだ腕を攻撃するが、その手は緩まない。
ハヤトとレビジュ、イズルが彼女に続けと攻撃を繰り出し、レティシアは苦悶するアリアへと治癒のエーテルを放つ。
彼女を掴んだ腕のほつれ具合をみたバルは、投げられる前に腕を落とそうと得物を強く握りしめた。
「切り落とします」
伸びきったタイミングで、彼女は肘目掛け力と速度を兼ね備えた、研ぎ澄まされた鋭い一撃を放った。僅かな間を置き、落ちる腕。ぐったりとしたアリアが解放されるも人形がバルを踏みつぶさんと足を上げる。
バルは僅かに足が掠めたがそこまでダメージを喰らわず、呼吸を整える。
一方、手から解放されたアリアをイズルが治癒し、彼女自身は盾を手に構えなおす。
「アリアさん、無茶しないでくれ!」
「ここで倒れてなんかられないよ! ボクも頑張らなくちゃ」
アリアは同じ轍は踏むまいと敵の動きを読んで盾を構え、赤い霧から彼を庇う。
「ここで落とすぞ」
人形のほつれが大分増えてきたことを悟ったハヤトが、バルたちを見る。その言葉にレティシアとイズル、アリアもまた攻撃の術を準備。
「「そこだ(です)!!」」
ハヤトとトーラの三連撃に合わせたレティシアの〈魔矢〉が足の継ぎ目を完全に破壊し、その身を崩した人形の首へ、バルとレビジュが攻撃を放つ。
「止めを!」
アリアが念のための反撃に備え、イズルが戦鎚に眩い光を宿したまま首へと叩きつければ鈍い音を立てて糸がちぎれ、その首が転げた。
「下がって!」
アリアがすぐさまイズルを庇う。と同時に刺し違えんとしたのか、最後の力を振り絞るような赤い霧が辺りに立ち込める。
だが、アリアの盾とハヤトの合図により全員が被害に合わずに済んだ。
しばらく様子を見る一同。だが、それ以上、人形が動くことは無かった。
トーラは黙祷をし、他の仲間もそれに倣う。しばし身近けれど命を捧げたのち、埋葬を念のためしておくことにした。
「これで、一先ずは……安心して調査に移れそうですね」
レティシアはそういいながら、バラバラになった人形を見つめていた。
●
黙祷を終えたころ、ガクとスケアクロが合流した。彼は「遺体の埋葬はしておくから、カインを追え」と冒険者達に言う。
調査を開始した所で、シトラスが漸く合流した。
アリアは、シトラスがそろったところでガクとスケアクロからも話を聞くことにした。
「あっちに猟師が使う休憩小屋っぽいのがあって、そこに人がいた形跡があった。それも2人分。多分、カインとイザラさんだと思う」
ガクの言葉にスケアクロが頷き、メモしているとシトラスが手招きした。
「足跡、うっすらだけど見つかった。辿ってみる?」
「俺がそっちに行っていいか?」
「俺も行くぞ」
嗅覚を強化しておく、と呟きながらイズルが挙手すれば「狼の鼻ナメんなよ」とハヤトも頷く。
その様子を見ながら、トーラはそっとレビジュに問いかけた。
「あなたは、カインとは古い付き合いだそうですけれど……、止められない場合、討つ覚悟はありますか?」
「うん」
レビジュの声色に迷いはない。トーラは、その冷たい眼に僅かに息をのむ。
「元とはいえ、『デゼスポワル』の仲間だった。命を絶つ覚悟は、もう出来たよ。でもそれは、最後の手段だ」
レビジュはそれだけ言うと、調査へ向かったイズル達の後を追う。
「……杞憂だといいのですが」
もしレビジュが「出来ない」と言うのであれば自分が討つつもりだった。だが、レビジュは本当に討てるのだろうか? トーラは、ほんの少しだけ不安に思った。
(確か、デゼスポワルはレビジュとカインを始めとする面々が……)
しかし、今は調査するしかない。トーラは首を振るとレビジュの後を追った。
カインがいた痕跡は、山小屋近くにもあった。
残留思念を探っていたレティシアは、そこで微かに「母さんの墓へ」という思いを聞いたような気がした。
その他にも「早くおふくろに会いたい」というカインの思いと「この子を救いたい」というイザラの思いが感じ取れた。
(救いたい……)
イザラは、この死霊術士を哀れに思っているようだった。その思いにレティシアの表情が曇る。
同じように山小屋を調査していたバルは、ふと呟く。
「よくは知りませんけど、継ぎ接ぎの人形だったじゃないですか、今回戦ったあれ」
「えぇ」
レティシアが相槌を打てば、彼女はふと、僅かに表情を曇らせる。
「もし死者と生者の一部を繋げたらどうなるのでしょうね? 例えば、顔の皮とか」
「それが、死霊術にどう関係するかはわかりませんが……、少し怖いですね」
バルが零した言葉に、レティシアは少し頭を抑える。
彼女もまた、カインの事について考察をしていたところだった。
(母親となる事への呼び掛け、香炉の甘い香り……)
彼が死霊術で『母』と慕うフェンヌを呼び戻す事が不可能なら、現在の意識を消し『母親』だと思い込ませようとしているのではないか、という考えが頭をよぎる。
それに、カインの交換人格、『エクレール』の事。レティシアはふと、こんな考えに至っていた。
(エクレール様も元々カイン様が二重人格だったというわけではなく、亡き弟君がカイン様の意識と共にこれまで居たのも本来は不可能なら……)
彼も誰かに洗脳されたか、弟の死に耐え切れず『自身の意識の中に生きている』と思い込む事で精神の安定を図ったのでは?
レティシアの脳裏に過るのは、己が幼かった頃――母親の自死という辛い事実に耐え切れず、その記憶を一時的に忘れていた事だった。
「……フィール様、……レインフィール様っ」
「!?」
バルが呼んでいることで我に返ったレティシアは、一先ず調査内容を彼女と共にアリアに伝える事にした。
二人が調査している中、アリアは前回の報告書やガク達も含めたデータを皆が調べやすい様にファイリングしていた。そして、情報を整理する中で行き先以外にも儀式への対処法等も残っていないか調査していた。
そこで見つけたのが、ボロボロになった地図。アリアはそれをそっと手に取り、爪の痕を見つける。そして、「○」がつけられた場所があった。
「他に何かあった?」
「……報告書にあった、甘い香りが少し残っているようです」
バルの報告にアリアが頷いた時、彼女達は何かに気付いた。地図に書かれた文字がなんとなく読めたのだ。
「ここって……、重要な場所だったりしますか?」
「もしかしたら、過去の資料にあるかもしれないね」
二人は、ギルドから借りた資料を開き、地図に書かれた文字と同じ物を調べ始めた。
一方、足跡と匂いを辿った面々は……表情を厳しくしていた。
イズルとハヤトは甘い香りがまだほんのりと続いていることに気付く。だが、足跡はぷっつり途絶えてしまった。
「方向的に、あっちですよね。匂いで何か分かりますか?」
トーラの問いかけにハヤトはこくりと頷く。
「ちょっくら匂いが途切れるまで向かってみるぜ」
「お願いします」
ハヤトがそう言って姿を消し、イズルは匂いが別の方向に向かっていないか念のため調査する。トーラも何かヒントになる物を探せないかと、レビジュと協力して調査し続けた。
イズルは少し考えこむ。辿る香りが何か、医学的な知識と照らし合わせながら、周囲を見渡す。
(これは少量なら眠りを呼ぶ物。だけど量を増やせば意識を混濁させ、洗脳にも用意られた。そこに別の催眠に適した薬草を加えるとより効果を出したけど匂いが強くなる。……イザラさんを洗脳しようとしている?)
最初は『母親の素体』にしようとしているのかとも思った。しかしそれならすぐに殺してもよいのでは? とも考えるたが……。
(母親の魂を手に入れるまでに、何か足りない工程があるのか?)
イズルは思う。自分の都合よく考えるなら、逃げ回っているのは『母親作り』に迷っているからだと思いたい、と。
(誰にも見えていなくても、エクレールが止めてくれている。……そう信じたい)
ハヤトは、香りが切れた所で馬車の轍を見つけていた。そして、道がどこに続いているのか、看板を見つけることが出来た。その文字を読んだ彼は表情を険しくする。
「……ここって、確か……」
彼の記憶が正しければ、《彼女》の故郷だっただろうか?
冒険者達はそれぞれの調査結果を持ち寄り、カインがイザラを連れ逃走した場所について目安を立てた。
「これを見てくださいませ」
と、バルが出した古い地図。そのやや中ほどに書かれた文字に一同は頷く。
――モルアモ、フェンヌ・ダーニの墓があるとされる里だ。
「この地図と、足跡の向かった先からここだろうな」
ハヤトが静かにいい、レビジュはそっとため息を吐いた。
「追いかけよう。カインが、何かする前に捕まえなきゃ」
迷いはない。けれど、酷い痛みを堪えたような声で少年は言った。
帰り支度前、休憩をとった時の事。アリアはそっとレビジュを抱きしめた。。少年は身じろぎしたが、やがて静かに抱きしめられる。
「カイン君にとって嘗ての君は? 君にとってカイン君って?」
「……友達でありたかったよ。ううん、そうでありたい」
可能な限りは。レビジュの声が震えている事に気付き、アリアはそっと少年のロバ耳を撫でた。
「君のやさしいとこ、ボクは好きだよ」
カインの心にかけてしまった何か。それを埋めるものはあるのだろうか。
ふと漏らした言葉に、レビジュはただ黙って目を閉ざした。
(終)
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 6〜8人
2023年09月14日 10時47分03秒 公開
相談掲示板
ぬぁーっ…揃う事を願って祈願…! 願って…祈って…? とまれ、挨拶だけでも! ヒーラーのアリア、よろしくだよーっ!
ウォーリア、バル・ヌール・スケアクロウです。 よろしくお願いしますね。
ご挨拶がおくれてすみません。 ヒーラーのイズルです。 出発2時間前に成立とかよくある話ですので、最後まで成立への希望を持っていようと思います。 とりあえず戦闘は、デバフと攻撃をメインにして回復は他の方に任せて自分は捨てても大丈夫だろうと考え中。 あとは、最後の爆発抑制に一か八かの光縛封かな。 あと、カインを追うのに超嗅覚と、前回のお香等の関係から医学薬学を乗せようかと計画してる。 あと、少ないですが友達に声かけてみます。
トーラです。 よろしくお願いします! これであと一人ですね。 とりあえず戦闘では前衛と、調査では看破で痕跡を追ってみるつもりです。
皆ぁ…っ…ありがとうっ! トーラ君に倣って、戦闘では前衛&バフ 調査ではトーラ氏やイズル氏の調査を纏めて、 前回の報告書も基に、後から合流する3人の調査データを集める役目に文を割こうかなっとっ!
プレイングに関しては一応役割的に7割以上は戦闘関係に割り振っております。 ・関節部や背骨関係の破壊狙いや、妙な挙動(一時停止)があれば離れるとか。 ・継ぎはぎなら継いだ部分は弱いのでは?とか 追跡に関しましては ・彼(カイン)の狙いを考えればその基になった人(母?)はどこにいる(安置)のでしょう? という疑問程度ですね。 いえ、「接ぐ」技術があるのなら「死者」と「生者」を接がせてかなり近づける事はできるのではと
成立ですね。 あらためてよろしくお願いします! 前回の報告書を軽く読んで来たんですけれど、母親を作るつもりなんですね。 イザラさんという方のことも心配ですし、早く行き先を探さないと。
わーっ…成立っ…! 本当に参加してくれた方々に感謝…っ。ありがとーっ! 頑張ろうねーっ(ぐっ
報告書(プレイング)は本日23:00締め切りだよ。道具とか抜けに注意してね。 それと、集まってくれて、ありがとう。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、ギリギリの参加だがよろしくな!! ひとまず、肉塊潰して跡を追えばいいわけだな!
ごきげんよう。 ヒーラーのレティシア・レインフィールと申します。 ご挨拶が遅くなり、大変失礼を致しました。 皆様、よろしくお願い致します。 私は主に戦闘では回復とBS解除を主にしつつ 隙を見て魔矢で攻撃を致しますね。 全体回復手段もございますので恐らく数度なら立て直しも可能かと存じます。