死者に鎖された村
おおくまねこ
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シナリオID:3162
オープニング
シルトラース帝国南部にあるメモリア村は、帝都崩壊後に再開拓された村だ。朽ちることなく残っていた古い神殿を中心に再建された村は、きれいな円形状に作られた防護柵を外周とし、数十名の人々と、ヴィントより派遣された十名あまりの駐屯兵が貧しいながらも平和に暮らしていた。だが、そんな平穏はある日突然、終わりを告げることとなった。村の外からやってきた、一体の怪物の手によって。
ルールールー。ルール―ルールー。
「なんだ、唄声? 村の外から……?」
夕暮れ時に、村の入り口を見張っていた兵士は、荒野から聞こえてくる歌声に気付き、目を凝らした。すると、荒野から黒いボロ布を纏った髪の長い女が近づいてくるのが見えた。髪がジャマで、顔はよく見えない。村の総人口は知れているので、村人なら顔を見ればわかるのだが。
ルールールー。ルール―ルールー。
「あれは、女か? たった一人でこの村まで辿り着いたのか?」
腑に落ちない点はあったが、難民や旅人ならば無視するわけにはいかない。兵士は女の様子を注視し、彼女が近づいてくるのを待った。
「やはり、旅人か? だが怪しいな。村に入れる前に素性を聞かねば……」
女は唄を歌いながら、村へとまっすぐ歩いてきた。男は女の様子を注意深く観察していたが、ようやく女の顔が見えるぐらいの距離まで近づいてきた時、ぎょっと固まった。なんと女には、顔がなかったのだ。目もなく、鼻もない顔には、岩のひび割れのような、横一列に走る口のみが刻まれていた。ぼろ布のように見えた黒いものも、服ではなく、クリーパー自身の体の一部だった。
「クリーパーだ! こっちに向かってくる!」
兵士が叫んだ時、突然女の唄声が大きくなった。その瞬間、兵士の体はすさまじい悪寒に包まれた。そして次の瞬間、兵士は耳から血を流し、地面に倒れていた。
「敵襲! 敵襲! クリーパーだ!」
「すぐに門を閉めろ! 怪物を村に入れるな!」
村はたちまち騒然となった。正体を見破られたと悟ったのか、怪物は走り出し、門番達が村の門を閉じてしまうよりも早く、村の内側へと滑り込んだ。
「このっ!」
村の入り口に集まった兵士たちは一斉に槍を突き出し、怪物を串刺しにした。しかし、怪物はまだ倒れない。怪物は貌の無い頭をぐりん、と傾けると、口を大きく開いた。
ルールールー。ルール―ルールー。
「ぐあああっ!」
「ぎゃあああっ!」
耳から血を噴き出した兵士たちの態勢が崩れた。その瞬間を見逃さず、怪物は兵士の一人に駆け寄ると、短剣のように伸びた鉤爪でその喉を貫いた。
「がは……」
絶命し、ドサリと地面に倒れる兵士。ほぼ同時に、ドォン、と村の門が閉まる大きな音が響いた。
しかし、それはさらなる恐怖の始まりに過ぎなかった。なんと、たった今死んだはずの兵士が槍を握り直し、むくりと起き上がったのだ。
ルールールー。ルール―ルールー。
怪物の口から、再び忌まわしい唄声が響く。眩暈を覚えた兵士たちの目や耳からは、ぼたぼたと血がこぼれていた。
「……」
リビングデッドと化した兵士の屍はちぎれそうな首をぐりんと傾け、槍を同胞へと向けた。そのあまりの凄惨な光景に、兵士たちの顔は恐怖に引き攣っていた……。
●
「緊急の依頼だよ。すぐにシルトラース帝国に向かって欲しい」
張り詰めたクママンの声が冒険者の店に響いたのは、夕食を取っていた冒険者達がそろそろ寝室に移動を始める時間の頃だった。
「シルトラース帝国の辺境の村に……まあ今は国土全土が辺境のようなものだけど、正体不明の怪物が出現したようだ。すでに多数の被害も出ている。すぐ現場に急行し、怪物を撃破してほしい、という内容の依頼が帝国から出ている。断定はできないが、怪物の正体は恐らく這い寄るものだろう」
『天霧りに消ゆる幽界樹』がエフレムによって召喚されたことで、シルトラース帝国全土の人類の文化圏は壊滅した。ヴィントやオルセンなど、各地の都市でわずかに残った者達が復興を急いでいるが、未だ帝国はクリーパーが跳梁跋扈する過酷な土地なのだ。
「事件現場は帝国の南部にある村『メモリア』。人口数十名ほどの再開拓された村で、シル・ウァキア帝国時代から存在する古い神殿があった以外は取り立てて特徴の無い村だった。だが、クリーパーが這入り込んだことで、村は地獄となり果てたらしい」
村からの脱出に成功した唯一の生存者(『エアーライド』で防護柵を乗り越えて村の外に逃げた兵士)の話によると、村の外からやってきた『顔の無い女』のような姿の怪物はあっという間に村に駐屯していた帝国兵を殺害した。だが、それはさらなる恐怖の始まりに過ぎなかった。なんと、殺された帝国兵はむくりと起き上がり、クリーパーの手下となって、今度は村人を襲い始めたのだという。
「犯人はクリーパーに扮した死霊術師、という線もないではないけど……恐らく、このクリーパーは寄生型クリーパーを従えているタイプだ。珍しいケースだけど、『生ける屍』は、クリーパーに憑依された場合も発生するからね」
いわゆるアンデッドと呼ばれる存在は、死霊術の産物であることが多い。だが稀に死霊術に依らず、偶発的に死者の怨念がゴーストと化したり、クリーパー由来のアンデッドが出現するケースもある。
「事件発生からまだそう時間は経っていない。急げばまだ生存者がいるかもしれない。クリーパーの能力には謎が多いけど、もたもたしている時間はない。行ける人はすぐにメモリア村に向かってくれ。じゃあ、頼んだよ」
解説
マスターより
リプレイ
「あそこがメメント村です。門はあそこですが、今は閉まっています。中がいまどういう状況なにか分かりません。気を付けてください」
道案内役の生存者は前方を指差した。そこには円形の村があり、頑丈そうな扉が道を塞いでいた。
「俺が確かめよう」
セリオス・オーガストはその辺に生えていた木によじ登り、村の中を覗き込んだ。
「……中はリビングデッドだらけだ。クリーパーらしきものはここからは見えないな」
セリオスは木から降りてきた。
「ふうん、なんかよく分からねえが面倒くさそうなヤツなのは確かかね。ちったぁ面白くなるかね?」
アーテミシアはボキボキと指の骨を鳴らした。
「急ごう! 放っておいたら、他の場所でも同じ様な被害が出るかもしれないし、生き残ってる人は絶対助けたいから!!」
ララベル・サン・ディーベルは木の上から飛び、村の防御柵を乗り越えると、音もなく村の隅に降り立った。柵は先端が尖っている。上に乗るのは難しかったので、ロープを結ぶことは断念した。
(ひどいな。生きてる人は外にはいないみたい……)
ララベルは熱源探知の力を発動させ、周囲に目を凝らす。外にいる者は動いてはいるが、みな冷たい。どうやらみんな生ける屍のようだ。内側から扉を開けられるか確認してみたが、相当大人数で開け閉めするものらしく、どうにも無理そうだった。
「よし、オレ達も入るぞ。……よっと!」
アーテミシアは勢いよく門に戦槌を叩きつけた。三度ほど戦槌で攻撃すると門に穴が穿たれ、冒険者達はそこから村へと侵入した。ララベルとセリオスとアーテミシアは依頼人から聞いたクリーパーの能力対策の為、すぐ耳栓を付けた。
「今の音で気づかれたみたい! リビングデッド達が集まってくる!」
ララベルは大きく手を動かした。
「外に出られると困りますね。ここで迎撃しましょうか……おっと、耳栓をしているのでしたね」
フリーダ=ブロムヴィストは発言の後、ハンドサインで「ここで戦いましょう」と合図をした。
「こいつらを外に出すわけには行かない!」
ララベルは一番近くにいたリビングデッドに向かって細剣を振った。剣から飛んだエーテルの刃がリビングデッドを一撃で両断したが、リビングデッドは上半身だけでもぞもぞ動いている。そしてその背中には、明らかに人体のパーツではない、黒い内臓のような肉塊がくっついていた。
「これがリビングデッド達を操っているのかな? トドメは刺しとく?」
ララベルが首を刎ねるジェスチャーをすると、グレイブ・ヤードは首を大きく横に振った。
「やめておきましょう。何が起こるか分かりません。手足を切り落として無力化に留めましょう」
グレイブは「殺すな」と伝えるため、指で空中に文字を書いた。
「? 殺すな、だよな? なら大丈夫だ。武装してるだけの兵士のリビングデッドなら、一般人と大差ねえし」
アーテミシアは首を捻りながら、突っ込んできた人間のリビングデッドの膝を勢いよく殴りつけた。戦槌で殴られたリビングデッドは吹き飛び、起き上がろうともがいている。
「犬や家畜のリビングデッドは少し手ごわいようだ。不意討ちに気を付けろ」
セリオスは飛びかかってきた犬のリビングデッドの前足を射抜きながら言った。
「ここに集まってきているようですし、あらかた片付けたら生存者の捜索に向かいましょうか。エーテルは温存しましょう。クリーパーはどうも手ごわそうですし」
(耳栓をしていない)フリーダはセリオスの言葉に頷いた。
「みんな、先に行っていいよ。ここは一人で十分だ。俺はこの人達を動けなくしてから後を追うよ」
キオルティスは三体のリビングデッドを瞬時に切り伏せ、ハンドサインで仲間達に「先に行け」と促した。
●
村の入り口に集まったリビングデッド達はキオルティスに任せ、冒険者達は、生存者の捜索を開始した。ほとんどのリビングデッドは村の屋外にいたらしく、ほとんどリビングデッドに出会うことはなかった。冒険者達はどこにいるか分からないクリーパーとの接触を避けるため、なるべくリビングデッドに気付かれないよう、隠密行動を心掛けた。
「あっちにまだ生きてる人がいる!」
ララベルはエーテルを飛ばして周囲を探索し、生物らしき気配がする方向へと駆けていく。
「あの建物の中から気配がする。リビングデッドと区別はつかんが、一か所で止まっているからおそらく生存者だ」
ハンドサインを出しながら言ったセリオスの言葉に、フリーダは頷いた。
「動けない状態かもしれませんね。すぐに向かいましょう」
(ここなら、生存者がいるかもしれませんね)
グレイブは大きめの家屋の扉を三度ノックした。反応はない。グレイブは少し間を置き、もう一度ノックをし、耳を澄ませた。
ガタッ。
扉が空くことはなかったが、中で確かに何かが動く音がした。
「救援に来ました。誰かおられるなら、開けていただいても?」
グレイブは小声で囁いた。すると、わずかに扉が開き、クワを持った老人がグレイブに向かって首を縦に振った。グレイブは急いで部屋に滑り込む。中には、避難してきたと思しき数名の人々が緊張した表情でグレイブを見つめていた。
「あんた、レイウェスト様の兵隊か?」
「まあ、似たようなものです。冒険者ギルドから帝国の依頼を受けて救援に来ました。安全な場所までお連れしますので、ついてきて下さい」
「おお……ありがとうございます……! 助かった!」
「チマチマと隠れながらってのはイマイチ性に合わねえな……ったく、別な意味で厄介だぜ」
民家の中にいたリビングデッドの手足を不意打ちで潰し、アーテミシアは鼻をクンクンした。クリーパーの対策として、アーテミシアは耳栓をしている。嗅覚が頼りだった。
(どこもかしこも死臭だらけだが……微かに違う匂いがするな。これは、ニンニクの匂いか?)
アーテミシアは鼻を鳴らし、ニンニクの匂いを辿る。匂いは二階へと続いていた。
「ここか。おい、助けに来た。開けるけど、叫ばないでくれよ。敵が来ちまう」
アーテミシアは小声で囁くと、タンスの扉を開けた。中にいた獣人の女性はおっかなびっくりアーテミシアを見た。
「助けに来た。とりあえずついてきてくれ」
(さすがに今だけ耳栓は取るか……)
●
冒険者達が数名ずつで手分けして捜索すると、数名の生存者が見つかった。冒険者達は村の外で待機していた帝国兵に生存者を預け、再び村へと戻る。
「まだ探索していないのは、あの建物だけだね。神殿かな?」
ララベルは村の中央にあった古い建物を指差した。屋根に女神の像が付けられた、宗教施設風の建物だ。
「ええ。あれは人と地の神の神殿ですね」
「確か、地下墓地があるんだよね?」
キオルティスが問うと、グレイブは頷いた。
「ええ。そのはずです。恐らく地下墓地に引きこもっているのでしょう」
「よし。さっさと片付けようぜ。すげえ嫌な臭いがあそこからプンプンする」
アーテミシアは戦槌をぶんぶんと素振りした。
●
冒険者達が神殿に突入すると、地下墓地への入り口を塞ぐように五体のリビングデッドが待ち構えていた。これまでのリビングデッドとは明らかに佇まいが違う武装した授恵者のリビングデッド達だ。
「暗いですね。足元に気を付けて」
グレイブは光球で辺りを照らしながら言った。
「奥の方に何かいますね」
「この人達ももう死んでる。リビングデッドだ」
フリーダが指差した方向には、鎧を着た兵士達が立っていた。しかし、その体は冷たく、この世のものではなくなっていた。
「クリーパーはこの下だ。この人達は守衛のようだね」
エーテルで地下を探知したキオルティスが言った。
「分かりやすいんじゃねえか。クリーパーにしちゃ、ちと賢いみてえだが……」
アーテミシアは戦槌を握り締めた。
……。
「まずは一体だ」
セリオスの放った矢がリビングデッドの下半身ごともぎ取った時、異変が起こった。
「なん、だ……!?」
「ぐっ……!」
耳栓をしていなかったキオルティスとグレイブの顔が歪む。この唄声は、生者を蝕む呪いの唄声だ。フリーダだけは強靭な抵抗力で呪いを跳ねのけ、平然としていたが。
●
リビングデッド達は速やかに排除された。グレイブが急いで負傷者の傷を癒した後、冒険者達は足早に地下への階段を下りていく。
(オレだって怒るんだよ。もう数が少ねぇんだよ、かつてあった時代の名残は。それ以上、『我らの場所』を踏み荒らしてんじゃねえよ)
グレイブの瞳は静かな怒りに燃えていた。この土地の民を殺戮し、死者を弄び、この『人と地の神の神殿』を乗っ取ったクリーパーに対する怒りだ。
「それは少し未来の貴方の姿。歩みを止めぬ限り、それは明日の己となるでしょう」
グレイブが呪文を紡ぐと、冒険者達は幻想の鎧に包まれた。英雄幻想。グレイブの生み出した幻の鎧により、冒険者達全員の潜在能力が一気に引き出された。
「あれが怪物のようですね。啓示によれば、かなりの強敵とのことでした。数では有利ですが、油断しないようにしましょう」
金色の姿になったフリーダがそう警告すると、墓地の奥にいた黒い影がゆらり、と動き出した。
●
ルールールー。ルール―ルールー。
クリーパーの唄声が響く。耳栓を付けていなかったキオルティスとグレイブの耳から血が流れる。同じく耳栓をつけていなかったフリーダは、敵の唄声を抵抗力で弾き飛ばした。
「……」
侵入者達に気付いたクリーパーはもぞ、と腕を動かした。だが、クリーパーが攻撃を開始するよりも早く、ララベルが地下墓地を駆け抜け、クリーパーに肉薄していた。
「喰らえ、旋風三連撃!」
竜巻のような勢いでララベルはクリーパーを三度斬りつけると、そのまま後方へと通り抜けた。
「俺はご機嫌斜めだ……最悪な歌だね、レディ?」
キオルティスは不機嫌そうに告げると、クリーパーの喉を細剣で一突きした。喉を貫かれても、クリーパーの唄声はまだ続いている。しかし、少し音が小さくなった。剣の先からキオルティスの猛毒が染み込んでいくが、クリーパーはエーテルを弾き飛ばしてしまった。キオルティスは唄声の苦痛を表に出さないように努めながら、静かにクリーパーを睨みつける。
「耳栓無しでいけそうです!」
フリーダはギリギリまでクリーパーに近づき、闘気を叩きつけた。パァンと、炸裂音がしたが、フリーダのエーテルは霧散してしまった。
「弾かれました!」
叫びながら、フリーダはパラッシュを一突きした。空を裂いて飛んだ衝撃は遠く離れた位置にいるクリーパーに命中し、クリーパーの体から黒い何かが噴き出した。
「長期戦は不利だな。速攻で仕留める!」
セリオスは弓を引き絞り、渾身のエーテルを籠めて矢を放った。放たれた巨大な光の矢はクリーパーの上半身を飲み込んだ。しかし、一撃で仕留めるには至らず、クリーパーはギロリ、と冒険者達の方を睨み付けた。
りぃん。鈴のような音が地下墓地に鳴り響く。
「アアアアアアア!!」
骸の女王は大きく口を開くと、セリオスに向けて不可視の轟音を解き放った。セリオスの体は一瞬で血まみれになり、後ろの壁にまで亀裂が走る。
「ホホホホ」
感情はあるのか、クリーパーは嬉しそうに口を歪めた。
「爪や牙はない。どうやら特殊能力が主体のクリーパーのようです」
グレイブはそう呟きながら、すぐにセリオスにヒールをかけた。しかし、彼の傷は深い。完治には至らなかった。
「そんなに歌いたきゃ一人でやってろ、このヘタクソが!」
アーテミシアはエーテルを背中から噴射して一気に加速すると、フリーダの反対側から弧を描くように接近した。
ゴキン!
間合いに入った瞬間、アーテミシアは思い切り戦槌を叩きつけた。槌はクリーパーの側頭部にクリーンヒットし、頭が反対側にはじけ飛ぶ。しかし、クリーパーはぐりんと、首をひねり、アーテミシアを睨みつけた。
「今ので大人しく死んどけよ、クソが」
●
「フリーダ君に注意が向いてる。今がチャンスだ!」
「その歌への侮辱……償って貰うよ」
二つの赤い旋風がクリーパーを巻き込んで切り刻む。交差するように連撃を浴びせたララベルとキオルティスは、一瞬でクリーパーの間合いの外へと退避した。クリーパーはぐりん、と二人の方を向こうとしたが、その瞬間、クリーパーへとエーテルの斬撃と闘気の塊が飛来した。
「あなたの相手は私です!」
再びシーザーロアと衝撃刃を浴びせたフリーダは、白金の剣の切っ先をクリーパーに向けて存在をアピールした。すると、今度はクリーパーはフリーダの方を向いた。
「もう一度だ」
セリオスは再び弓に矢を番えた。鋭く放たれた矢は正確にクリーパーの眉間に突き刺さり、顔面の上半分を吹き飛ばした。だが、まだクリーパーが倒れる様子はない。
(ゾンビ並の耐久力だな……見た目は人間に近いがクリーパーだ、内臓も人間とは違うのだろう)
「――」
「攻撃、来ます! 離れて!」
クリーパーの攻撃の予兆を感じ取ったフリーダは警告を発した。その直後、フリーダ目掛けて先ほどセリオスをズタズタにした死の絶叫がフリーダを飲み込む。フリーダは全身を切り刻まれたが、セリオスよりは軽傷だ。
「しばらく持ちこたえてください」
グレイブはすぐにフリーダにヒールをかけ、彼女の傷を癒した。
「そら、もう一発!」
アーテミシアの戦槌が唸り、クリーパーの頭がまた跳ね飛ばされた。
●
「オラァ!」
アーテミシアの戦槌がクリーパーの側頭部にめり込む。今のは効いたのか、クリーパーの体がぐらりと、よろめき、口から黒い血のようなものがこぼれた。
「アアアア!」
このままでは消される、と悟ったのか。クリーパー地下墓地を捨てて地上に逃げようとした。しかし、地上にたどり着くには冒険者達をすり抜けて階段を上がらねばならない。それを許す冒険者達ではなかった。
「逃がすか!」
「レディ、途中退場は許されない」
ララベルとキオルティスはすぐにクリーパーの背に追いつき、容赦のない攻撃を浴びせた。背中を切り刻まれたクリーパーは転びそうになり、態勢を立て直そうと、一瞬動きが止まった。
「終わりだ!」
「アアアア!」
そして、セリオスの放った矢に体を引き裂かれ――クリーパーは塵となって消滅した。
「終わりましたか……。キオルティスさん、こちらへ。すぐに治します」
耳から血を流しながら、グレイブは手招きした。
●
「ありがとうございます。おかげでメメント村は救われました」
冒険者達が地上に戻ると、まだ動いていたゾンビ達はみな停止していた。本体が倒されたことで取り憑いていたクリーパー分身達は死滅したようだ。
「どうか、安らかに……」
犠牲者達の葬儀に参列したキオルティスは鎮魂歌を歌った。クリーパーに殺された人々が安らかに眠れるように。そして、歌で亡くなった方々が歌を嫌いにならないようにと、祈りを込めて。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い6 / 4〜10人
2023年08月27日 15時25分29秒 公開
相談掲示板
ヒーラー、グレイブ・ヤードです 少々事情がありまして頑張らせていただきます
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 兎にも角にも村全体が射程のスキル攻撃が厄介ですね。 耳栓でブロックできるとは言え聴覚による探知手段が取れなくなりますし、 何より敵の数も相当なものですから無策で挑むのは危険ですね。 とりあえずまずは村全体を探して生存者の救助とリビングデッドの排除、 その後は神殿に侵入して最深部の敵を撃破といった流れになるでしょうか。 後半戦を考慮するとリビングデッドとの戦いではなるべく消耗を避けたい所ではあります。 スキル攻撃の届かない村の外から遠隔攻撃でリビングデッドを釣りつつ少しずつ排除、 ある程度掃除できたら救助という流れなら比較的安全かと思われますが、 この場合は救助までの時間がネックになりそうですね。
シーフのキオルティス。キオでもルティスでもお気軽に。 今回は宜しくね。 聴覚、テレパス以外での探知、意思疎通などの手段…か。 探知は宗波辺りを使うとして…意思疎通とかは仲間内なら読唇術とかハンドサイン? どちらも目を使わなきゃ伝わらないのが厄介かもしれないけど。 個人的には神殿以外の村全体を攻略すると同時に生存者の救助。 救助完了次第、神殿を攻撃していく感じが無難なのかな、と。 時間が掛かれば掛かるだけ、難航しそうだし。 もう少し人数がいれば少数精鋭で先んじてクリーパーの喉潰しに向かうのも 有りだとは思うんだけれど…ちょっと現実味に欠けるよね、今のトコロ。
情報的にはリビングデッドの感知手段は視界・・・とみていいのですよね。 情報が行くことを考えれば発見されても逃げおおせるかしないと継続ダメージが続くことになりそうですが。 (倒すと情報が本体に行くようですし) 一通り村の中を確認してクリーパーが見つからなければ遺跡行き、という感じかなと。 幸い、今回は情報がありますからリビングデッドを後回しにもできます
ウォリアーのアーテミシアだ。 とりあえず唄に関しては知ってていいなら対処は難しいこっちゃねえか 飛び道具があるなら建物の上に登って撃ち下ろすのがいいか。カッターも普通に売ったら屋根の上には届かねえだろ。 …小型の打楽器をドラ代わりにでもするか?
ふと思ったのですが、痛覚や感情(意志?)がないのであれば捕縛技術系で転がしておく、という対処も取れるとみていいのでしょうか? 死ななきゃどうにでもなるという割り切りで四肢破壊までにとどめるのもありかとは思いますが
・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえずフリーダが言ったような方針でいいとは思う 先に見える範囲で兵隊以外のリビングでッとはなるべく排除して本体と兵士たちと戦う際に邪魔を入らせないようにしたいところだが <捕縛 襲い掛かってくるだろうから縛り上げるなどするより四肢破壊したほうが手っ取り早そうではあるがな。捕縛するための道具も必要だろうし ただ思考力は相当低そうにも見えるので,足元に縄はって待ち構えてれば勝手に引っかかって倒れそうな気もする。 あとは生存者を発見したら可能ならエリアサイレンスで歌が聞こえない状態にして会話で避難の方法を教えたほうがいいか
確かにグレイブさんの言うように、リビングデッドを敢えて倒して排除せず、 捕縛なり、四肢破壊なりでその辺りに転がしておくのは妙案だね。 そうすれば向こうに情報は行かないワケだし、良いんじゃないかな。 リビングデッドが動けなければ、クリーパー以外からの被害は 俺たちも要救助者にも出ないだろうし。 あまりに数が多いし、強さも個体差があるとなると、やって損はないと思う。 因みに足元への罠は俺も賛成だよ。 ところで今回の舞台は夕方から夜間になると捉えて良いのかな。 そうでなくとも、地下墓地は暗い、か…
まあ、そうだなあ。這いずりにしちまえば大した脅威でもねえか …頭数がちいっとばかり足りねえか。こりゃ攻めるの絞ったほうがいいかな?
最低限脚部を使用できなくすれば、建物の二階など生存者の避難場所は増えますからね。 ただ、その場合同士討ち(同族食い)などで自害も可能かと思うので、何らかの形で動きを封じる必要はあるかもしれません。 >絞るかどうか あちらへ情報さえ行かなければ時間制限はないようなものですし 生存者探索ついで位の認識でよいのでは? 一通り回ったのち、神殿を目指すようにと
さて、明日には出発ですが準備はよろしいですか?
僕は、シーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、宜しくね。 僕も暗視もって、後温度変化で生存者さん見つけられるかも知れないから、サーマルアイを持って行くね。 それと宗波で探す感じに。 後、ロープも持って行くから、上手く転ばせられるといいな。
今更だけど侵入は門をぶっ壊していくぞ。どうせすぐバレるだろうし
>音 そういえばそもそも「エリアサイレンス」が使えますね。 私のほうで準備しておきます。 どうせばれる、というのは兵士ゾンビまで取っておいてもいいかと思います。 あれは完全に倒す以外の止めようがありませんし。 ウォーミングアップがてら、という感じでいかがです?