君の相談に応じよう! 雑談もするよ!
狐野径
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シナリオID:3149
オープニング
その街に、時折開く喫茶店があった。
店は8人も入ればいっぱいとなる広さ。
カウンター席が基本で、テーブル席も一つある。
外からの光を取り込んでいるため、それなりに店内は明るい。明るいとは言っても、飲食してしゃべるのに困らない程度。もちろん、必要に応じてろうそくなどの照明も使う。
店内に入っているのは年季を感じさせる家具。
全体的に落ち着いた雰囲気で、ほっと一息つけるような所。
店の中や飲食できるものについては「特に珍しいものがあるわけでも、美味しいというわけでもない」という。
それでも、店が話題になる理由――店主が話し上手に、聞き上手ということ。
悩みを聞いてもらうと心が軽くなり、世間話や自分のことなど話したいことを話すだけでも楽しく時間を過ごせるという。
お茶と菓子を楽しみながら、自分の心を満たすひと時となることは間違いない、というのだった。
冒険者たちは情報収集の傍らこの街に来て、その喫茶店について聞いた。
喫茶店について話してくれた人によると、今日は開いているのを見たという。
「店名はないけど、行けばわかるよ」
大通りから一本入った所だという。
冒険者たちはあえて行く必要もないと考えるが、物は試しと行ってみてもいいとも思える。
調べていることについての情報の集まり方は芳しくなかったこともあった。
気分を替えるために休憩その店に行ってみるか、それとも、世間話のついでに何か得られるかもしれないと情報収集の一環としていくか――。
喫茶店に入るのに理由はいるだろうか?
色々考えていると、空が急に暗くなり、冷たい風が吹いてきた。
黒い雲が空にあったのを思い出す。
通り雨だと思われるが――ぽつぽつ雨粒が頬を濡らした。
迷っている暇はなかった。
例の喫茶店に飛び込んだ。
「いらっしゃい。――初めてのお客様だね。空いている席にどうぞ、と、言っても、見ての通り狭いけれどもね」
柔らかい笑みと共に招き入れられた。
狭い店内だからと追い出されることもなく、土砂降りの雨を避けられたので安堵もした。
「何を頼むかな?」
メニューを差し出した。
店は8人も入ればいっぱいとなる広さ。
カウンター席が基本で、テーブル席も一つある。
外からの光を取り込んでいるため、それなりに店内は明るい。明るいとは言っても、飲食してしゃべるのに困らない程度。もちろん、必要に応じてろうそくなどの照明も使う。
店内に入っているのは年季を感じさせる家具。
全体的に落ち着いた雰囲気で、ほっと一息つけるような所。
店の中や飲食できるものについては「特に珍しいものがあるわけでも、美味しいというわけでもない」という。
それでも、店が話題になる理由――店主が話し上手に、聞き上手ということ。
悩みを聞いてもらうと心が軽くなり、世間話や自分のことなど話したいことを話すだけでも楽しく時間を過ごせるという。
お茶と菓子を楽しみながら、自分の心を満たすひと時となることは間違いない、というのだった。
冒険者たちは情報収集の傍らこの街に来て、その喫茶店について聞いた。
喫茶店について話してくれた人によると、今日は開いているのを見たという。
「店名はないけど、行けばわかるよ」
大通りから一本入った所だという。
冒険者たちはあえて行く必要もないと考えるが、物は試しと行ってみてもいいとも思える。
調べていることについての情報の集まり方は芳しくなかったこともあった。
気分を替えるために休憩その店に行ってみるか、それとも、世間話のついでに何か得られるかもしれないと情報収集の一環としていくか――。
喫茶店に入るのに理由はいるだろうか?
色々考えていると、空が急に暗くなり、冷たい風が吹いてきた。
黒い雲が空にあったのを思い出す。
通り雨だと思われるが――ぽつぽつ雨粒が頬を濡らした。
迷っている暇はなかった。
例の喫茶店に飛び込んだ。
「いらっしゃい。――初めてのお客様だね。空いている席にどうぞ、と、言っても、見ての通り狭いけれどもね」
柔らかい笑みと共に招き入れられた。
狭い店内だからと追い出されることもなく、土砂降りの雨を避けられたので安堵もした。
「何を頼むかな?」
メニューを差し出した。
解説
●目的・目標
喫茶店で一時を過ごす。
●喫茶店内部の様子
カウンターがあり、店主がいる。
カウンター席が主体だが、一応テーブル席もある。
八人入れば満席。
外から明かりは十分入るとはいえ、適度に薄暗い。
甘い焼き菓子、果物や花茶等の香りが漂う。
●メニュー
果実を絞ったもの、花茶。
焼き菓子盛り合わせ。
全体的に味は美味しいか不味いかと言われると美味しい。
非常に美味しいかと言われると普通より美味しい。
●店主
老年というよりは若くも感じるけれども、老紳士という雰囲気。
表情は落ち着いたもので、特に大きく変化は見られない。
顔立ちについては、印象に残りづらい。特徴がつかみづらいのかもしれない。
しゃべり方もは落ち着き、人を安心させるような低い声音である。
●念のため
関連EXCにしっかり記載がありますが、当人と接触があった人であっても「その人だ」とわかりません。例えばその人らしい匂いというものもありますが、香水や衣類に着いた匂いの状況等をコントロールしているため、あてになりません。そもそも、店内の茶や菓子等の匂いが程よく香るだけで、来店した皆さんの匂いは分かるとしても、その場にい続けている人の匂いはあてになりません。
むろん、しゃべっていくうちにばれる可能性はありますが、万が一そのようなことになれば逃げます。
マスターより
こんにちは、狐野径です。
皆さんからすると「初対面」、相手からすると「おやおや?」という状況です。いや、楽しいですね! いじわるはしませんから、雑談でも相談でもウエルカムです?
何等かの聞き込みをしていたとOPにありますが、気にしなくても、フレーバーとして利用しても良いです。
通り雨……OP考えつつ散歩していた時の出来事がそのまま……でもないんですが。
遠くには黒い雲やら入道雲やら……この地域は取り囲まれている……という感じの中に散歩に出たのがそもそもの誤りですね……うん。幸い、小雨で済みました。
よろしくお願いします。
リプレイ
●街でのそれぞれ
ルアンナ・ミュラーとディレイン・オールドケイジは同じ依頼を受けての帰りだった。
ルアンナは色々やらかした後であるが、自覚はあるようなないような。それがわかるのはディレインは何ともいえない疲れた表情で胃のあたりをおさえているから。
目の前に喫茶店のようなものがあった。
看板がないけれども、営業していることはわかる。
ディレインは「休憩しよう」と扉を開けた。
ルアンナはディレインが相当疲れていると感じ取り、休むことはいいことだと考え続いた。
コルネリウス・アーラはたまたま情報を集めていたところに、喫茶店のことを耳にした。
茶やハーブ類が好きなため、メニューにあるという花茶が気になるので、後で行ってみることに。
「特に心配事や悩みは……」
あったとしても話す相手は考えたい部分もある。
ただ、気分を変えるのにはいいと考え、あと少し仕事を頑張ることにした。
レピド・クロサイトは悩みもあるけれども、探す物もあった。
街で情報を集めつつ、名もなき、いつ開くかわからない喫茶店を知り、興味を引かれた。今日開いているらしいというので、あとで覗いてみようかと考える。
情報収集を続けようとしたけれども、雲行きが怪しい。
「どうしようか……」
レピドは飼い猫の様子を見た。
ショウガは立ち止まると顔を洗う。
●まずはおじさんの悩み
「いらっしゃい。お好きな席にどうぞ」
喫茶店の中に入ると、一瞬その暗さにドキリとする。
目が慣れてくると、家具は落ち着いた雰囲気であり、明かりの最小限であるため、心地いい暗さであると分かる。
カウンターには老紳士と呼んでも構わないような雰囲気の男性がいる。
入店後、ディレインはカウンター席に座り、休憩できるとばかりに机に突っ伏す。
その隣にルアンナが座った。
ルアンナは室内の様子をじっくり観察する。
花茶や菓子の香りに、ほっと息を吐いた。
「お疲れのようだね」
カウンターにいる老紳士はディレインに声をかけた。
「そうなんだよね……」
「ディレインさん、何か頼みましょう。依頼終わりの一杯……紅茶と焼き菓子をください」
「おすすめの一杯を」
マスターは穏やかに微笑み、注文通りのものを用意する。
湯気が上がる茶と菓子を前に、ルアンナは笑みを浮かべる。
ディレインは頭を起こし、茶を一口飲むと、
「ルアンナちゃん、無茶しないでね、って、何度も言っているのに無茶するの」
と、愚痴の第一声が発した。
ルアンナは心配させていることは申し訳なく思っているし、傷自体はディレインやヒール技能を持つ人に治してもらっているのは理解している。つまり、相当ダメージは負っているし、色々負荷があると分かっている。
さらに他の状況を考えると、ルアンナは「無理なことはしてませんから」と反論する。
「それに、新たな武器を手に入れて、さらに強くなれたので、これからもっと頑張らないと!」
と意気込む。
ディレインはガクッとテーブルに突っ伏した。
「いやいやいやいや……さっきだって、キャスターが生命力吸う杖持って、最前線に特攻かけるとかさあ……胃が何個あっても足りないよ……自分で胃薬煎じるのも慣れたし……」
「胃薬はディレインさんに頼めばいいんですね」
笑顔のルアンナに対し、ディレインはうつろな目で胃をおさえた。
「生きていれば治すけどさ、血まみれの若い女の子を治療するおじさんの気持ちもわかってほしい」
ディレインは袖を目に当て、さめざめと泣く。
ルアンナは困ったような顔になり、マスターに「あ、すみません。飲食店で血なまぐさい話で」と謝罪する。
マスターは「いや、別に、そこまではないよ。それに他に客はいないから」と何となく応じた。
ディレインはパッと顔を上げた。
「いいお年っぽいマスターなら、この気持ちわかってくれるんじゃないかなあ」
どうだろう、と同意を求めて見上げる。
「そうだね。確かに、若い子が無茶するのは限度があるね」
ディレインはマスターに抱き着かんばかりに明るい顔をした。
ちょうどその時、扉が開いた。
●悩みの自己完結
「あら?」
コルネリウスは例の喫茶店が本当に開いていたことと、中には顔見知りがいるという2つで驚いた。
「コルネリウスちゃん」
「コルネさん」
ディレインとルアンナが手を振る。
コルネリウスは空いている席に座り、花茶と菓子を頼んだ。
来た経緯を互いに話す。
コルネリウスは「確かに、それは……心配事ですね」と応じる。
ルアンナに「そうなんですか」と問われれば、部分的に力説する。
「部下やレピドさんとレピドさんとかがよく戦いの中で無茶するので、いついなくなってしまうかとハラハラしてまうことは非常に増えました……」
「コルネリウスちゃん、その気持ちわかる」
「ええ……私も心痛お察します」
花茶が出て来たところで、香りを楽しみ、口に含んだ。
ほっと息を吐く。
「私はちょっとした悩み……というほどではありませんけど」
前置きをした後、話し始めた。
「冒険者としての依頼を終えたら、パンクリアース学園の寮に戻って、着替えてそのまま登校して……ロモズ歩兵団の団長職は定期的な訓練や団員の様子の把握、自警団としてやることは多くあります」
店主は「目が回るようだね」と相槌を打つ。
「さらに、幽界樹の調査や状捜楔の開発のお手伝いもありますし、花鳥園の経営も、今はお手伝いさんを雇っていますが……定期的にベールコートに戻って鳥さん達の様子を見たり花の仕入れをして……資金繰りの為の花で匂い袋などを作って売らないと……」
店主の微笑みに「まだあるのか」という驚きがかすかに浮かぶ。
「つまり時間が、時間が足りないですね……!」
店主は「そうだね、聞く限りでもそう思えるね」と同意する。
コルネリウスが「ですから」と言い、
「最近は自分がもう一人欲しいな、なんて思ったりしています」
と、続けた。
「けれど、私は我儘で欲張りですから、どれも手離したくなくて、手を抜きたくもありませんから、自分に納得できるよう、頑張るしかありませんね」
コルネリウスが笑う。
ディレインが「うん、コルネリウスちゃんも、無理はしないでね」と胃のあたりをおさえる。ルアンナとは違う意味で、心配になる。
空が曇ったのか、窓から入る光が減る。
店主がランプに明かりを灯した。
●真打登場、悩ましきもの
レピドは空から大粒の雨が降ってきたため、歩いてついてきていたショウガを抱きかかえた。
「突然の雨とはまいった、なぁ……ショウガ」
情報にあった喫茶店を見つけたので入ることにした。
「いらっしゃい」
店主が入って来たレピドを一瞬凝視した――いや、レピドと目が合っただけか……レピドは何か違和感を覚えた。
ディレインは「レピド君」と手招きして、隣に座らせる。
レピドは偶然とはいえ友人たちがいるということで、気が休まった。
ディレインが、肩をポンと叩いていう。
「そういえば、無茶するのは若い女の子だけじゃなかったわ、ねえ、レピド君!?」
「……? 何のことかよくわからないが……」
レピドはディレインが言っていることに困惑する。
なお、店主を見ていると、なんとなくどこかで会ったような気がした。
「どうかしたかな?」
店主の声を聞き、聞き覚えがあるようなないような不思議な気持ちになる。
その知っている人を前に、違う状況――夢の世界で違う役割で出会った――というような感覚に近いのかもしれなかった。
だから、気のせいだろうということで考えをまとめた。
「いや……なんでも……」
メニューを見て「おすすめは?」と尋ねると、焼き菓子の説明や本日の花茶について説明された。
断る理由もないので花茶と焼き菓子にした。
焼き菓子と花茶の香りで、息をつく。
「そういえば……ここでは、悩み事を、聞いてもらえるのか」
店主に向かって声をかけた。
「おしゃべりに付き合うということがそれにつながるということだよ。結果、悩み事を聞くことになる」
店主は「他に客もいるけれどもいいのかな」というようにカウンターを見渡した。
レピドは「彼らになら聞かれても構わない」という。
気心が知れているし、レピドがどういう道を歩んできたかも知っている。
「ずっと胸にとどめていたそれを聞いてもらっても構わない……できれば、話を聞いてくれそう人がいれば……そんなつもりはなかったんだが……今日、なぜか、そういう気持ちになった」
コルネリウスやディレイン、ルアンナはレピドを静かに見ていた。
レピドは友人だから、無茶したとしても助ける。そして、心配していることを話そうとするならば、聞いて受け止める。
レピドはぽつぽつと語り出す。
「俺はホムンクルスだから、昔の記憶は殆ど無くて。でも生前の俺は確かに生きていて、俺がやってきた事も色々あって」
口にすることがはばかられ、一旦切った。
店主の反応を見つつ、進める。
「……その僅かに残る記憶によると、昔の俺は罪人──暗殺者だった、らしい。暗殺者という事は余程ポンコツでなければ被害者は絶対いて、そしてその被害者には友人や家族もいただろう」
レピドは茶を一口飲んだ。
「標的だった人を大切に思う人がもし、復讐者として目の前に現れたら?」
膝の上のショウガが何か言いたげに見上げる。その頭をレピドはなでた。
「過去の罪を悔いるのならこの命を差し出すべき、とは思う。命と釣り合うものはまた命しかないから……生き返った直後にそうなっていたら、本当にそうするつもりだったんだ」
ディレインが「レピド君……」とつぶやく。
「……けれど、一年程経って俺にも大切な者が沢山出来てしまった。彼等を悲しませるなら、勝手な話だが生き続けたい……とも今は思う」
レピドは真っ直ぐ前を向いた。
「いつか来るかも知れないその時、俺は一体どうすればいいのだろう?」
店主は少し考えて「生きることの意味もあるよ」という。
ディレインはそれを引き取るように、告げる。
「それもそうだけれども……おじさんがみんなに望むのは健やかに生きて欲しいってことだよ。心身ともにね」
ディレインは仲間を見る。
「ただ、その邪魔してくれちゃう相手には、ちょっと、こう、わかってもらいにくいことかもだけど。あ、若いころの苦労的なことは別としてね。そういうのは人生の充実にもってこいのものだから。無理のない範囲で、自分を大切にしながら、もがいてほしいね」
コルネリウスが「そうですか」とうなずく。
ディレインはレピドの悩みはどうすべきかとうめく。
「とはいえ……一番どうしてくれようかって思うのは、レピド君を邪魔するティーチャーだからね。人の話を聞かない系はタチが悪い」
ルアンナが手をあげ、発言する。
「それなら、復讐者になった人たちをうまく説得して、元凶であるティーチャーをやっつけるのに誘っちゃえば?」
店主が「え?」と思わず言い、ディレインが手を打つ。
「それは面白いかもしれないね、無茶か、無謀かは相手によるだろうけれども」
コルネリウスが「交渉力がいりますね」という。
「私たちが近くにいれば、協力できるかもしれませんが……レピドさんがきちんと説明して、協力を仰ぐというのは良いかもしれません」
レピドは「そういうものか?」と困惑して店主と友人たちを見る。
店主は「お、面白い発想だね……で、その変態仮面とか、仮面先生とは何だい?」と問う。
レピドは「暗殺の技術を教える人だ」とざっくりとした説明をした。
降ってわいた解決策について、レピドは考える。
「協力を仰ぐ……か……交渉する力が、確かにいる」
レピドは胸のつかえがとれた気持ちだった。
「おや、雨がやんだみたいだね」
店主が外を見て言う。
ディレインは「そろそろでようかな」という。
雨宿りのつもりだったし、レピドはうなずく。
コルネリウスとルアンナも「では、お暇しましょう」「ごちそうさまでした」と続いた。
冒険者たちはお金を払い、店を後にした。
残された店主は面白い話を聞いたのだけれども、釈然としない思いが胸の奥に湧くのだった。
ルアンナ・ミュラーとディレイン・オールドケイジは同じ依頼を受けての帰りだった。
ルアンナは色々やらかした後であるが、自覚はあるようなないような。それがわかるのはディレインは何ともいえない疲れた表情で胃のあたりをおさえているから。
目の前に喫茶店のようなものがあった。
看板がないけれども、営業していることはわかる。
ディレインは「休憩しよう」と扉を開けた。
ルアンナはディレインが相当疲れていると感じ取り、休むことはいいことだと考え続いた。
コルネリウス・アーラはたまたま情報を集めていたところに、喫茶店のことを耳にした。
茶やハーブ類が好きなため、メニューにあるという花茶が気になるので、後で行ってみることに。
「特に心配事や悩みは……」
あったとしても話す相手は考えたい部分もある。
ただ、気分を変えるのにはいいと考え、あと少し仕事を頑張ることにした。
レピド・クロサイトは悩みもあるけれども、探す物もあった。
街で情報を集めつつ、名もなき、いつ開くかわからない喫茶店を知り、興味を引かれた。今日開いているらしいというので、あとで覗いてみようかと考える。
情報収集を続けようとしたけれども、雲行きが怪しい。
「どうしようか……」
レピドは飼い猫の様子を見た。
ショウガは立ち止まると顔を洗う。
●まずはおじさんの悩み
「いらっしゃい。お好きな席にどうぞ」
喫茶店の中に入ると、一瞬その暗さにドキリとする。
目が慣れてくると、家具は落ち着いた雰囲気であり、明かりの最小限であるため、心地いい暗さであると分かる。
カウンターには老紳士と呼んでも構わないような雰囲気の男性がいる。
入店後、ディレインはカウンター席に座り、休憩できるとばかりに机に突っ伏す。
その隣にルアンナが座った。
ルアンナは室内の様子をじっくり観察する。
花茶や菓子の香りに、ほっと息を吐いた。
「お疲れのようだね」
カウンターにいる老紳士はディレインに声をかけた。
「そうなんだよね……」
「ディレインさん、何か頼みましょう。依頼終わりの一杯……紅茶と焼き菓子をください」
「おすすめの一杯を」
マスターは穏やかに微笑み、注文通りのものを用意する。
湯気が上がる茶と菓子を前に、ルアンナは笑みを浮かべる。
ディレインは頭を起こし、茶を一口飲むと、
「ルアンナちゃん、無茶しないでね、って、何度も言っているのに無茶するの」
と、愚痴の第一声が発した。
ルアンナは心配させていることは申し訳なく思っているし、傷自体はディレインやヒール技能を持つ人に治してもらっているのは理解している。つまり、相当ダメージは負っているし、色々負荷があると分かっている。
さらに他の状況を考えると、ルアンナは「無理なことはしてませんから」と反論する。
「それに、新たな武器を手に入れて、さらに強くなれたので、これからもっと頑張らないと!」
と意気込む。
ディレインはガクッとテーブルに突っ伏した。
「いやいやいやいや……さっきだって、キャスターが生命力吸う杖持って、最前線に特攻かけるとかさあ……胃が何個あっても足りないよ……自分で胃薬煎じるのも慣れたし……」
「胃薬はディレインさんに頼めばいいんですね」
笑顔のルアンナに対し、ディレインはうつろな目で胃をおさえた。
「生きていれば治すけどさ、血まみれの若い女の子を治療するおじさんの気持ちもわかってほしい」
ディレインは袖を目に当て、さめざめと泣く。
ルアンナは困ったような顔になり、マスターに「あ、すみません。飲食店で血なまぐさい話で」と謝罪する。
マスターは「いや、別に、そこまではないよ。それに他に客はいないから」と何となく応じた。
ディレインはパッと顔を上げた。
「いいお年っぽいマスターなら、この気持ちわかってくれるんじゃないかなあ」
どうだろう、と同意を求めて見上げる。
「そうだね。確かに、若い子が無茶するのは限度があるね」
ディレインはマスターに抱き着かんばかりに明るい顔をした。
ちょうどその時、扉が開いた。
●悩みの自己完結
「あら?」
コルネリウスは例の喫茶店が本当に開いていたことと、中には顔見知りがいるという2つで驚いた。
「コルネリウスちゃん」
「コルネさん」
ディレインとルアンナが手を振る。
コルネリウスは空いている席に座り、花茶と菓子を頼んだ。
来た経緯を互いに話す。
コルネリウスは「確かに、それは……心配事ですね」と応じる。
ルアンナに「そうなんですか」と問われれば、部分的に力説する。
「部下やレピドさんとレピドさんとかがよく戦いの中で無茶するので、いついなくなってしまうかとハラハラしてまうことは非常に増えました……」
「コルネリウスちゃん、その気持ちわかる」
「ええ……私も心痛お察します」
花茶が出て来たところで、香りを楽しみ、口に含んだ。
ほっと息を吐く。
「私はちょっとした悩み……というほどではありませんけど」
前置きをした後、話し始めた。
「冒険者としての依頼を終えたら、パンクリアース学園の寮に戻って、着替えてそのまま登校して……ロモズ歩兵団の団長職は定期的な訓練や団員の様子の把握、自警団としてやることは多くあります」
店主は「目が回るようだね」と相槌を打つ。
「さらに、幽界樹の調査や状捜楔の開発のお手伝いもありますし、花鳥園の経営も、今はお手伝いさんを雇っていますが……定期的にベールコートに戻って鳥さん達の様子を見たり花の仕入れをして……資金繰りの為の花で匂い袋などを作って売らないと……」
店主の微笑みに「まだあるのか」という驚きがかすかに浮かぶ。
「つまり時間が、時間が足りないですね……!」
店主は「そうだね、聞く限りでもそう思えるね」と同意する。
コルネリウスが「ですから」と言い、
「最近は自分がもう一人欲しいな、なんて思ったりしています」
と、続けた。
「けれど、私は我儘で欲張りですから、どれも手離したくなくて、手を抜きたくもありませんから、自分に納得できるよう、頑張るしかありませんね」
コルネリウスが笑う。
ディレインが「うん、コルネリウスちゃんも、無理はしないでね」と胃のあたりをおさえる。ルアンナとは違う意味で、心配になる。
空が曇ったのか、窓から入る光が減る。
店主がランプに明かりを灯した。
●真打登場、悩ましきもの
レピドは空から大粒の雨が降ってきたため、歩いてついてきていたショウガを抱きかかえた。
「突然の雨とはまいった、なぁ……ショウガ」
情報にあった喫茶店を見つけたので入ることにした。
「いらっしゃい」
店主が入って来たレピドを一瞬凝視した――いや、レピドと目が合っただけか……レピドは何か違和感を覚えた。
ディレインは「レピド君」と手招きして、隣に座らせる。
レピドは偶然とはいえ友人たちがいるということで、気が休まった。
ディレインが、肩をポンと叩いていう。
「そういえば、無茶するのは若い女の子だけじゃなかったわ、ねえ、レピド君!?」
「……? 何のことかよくわからないが……」
レピドはディレインが言っていることに困惑する。
なお、店主を見ていると、なんとなくどこかで会ったような気がした。
「どうかしたかな?」
店主の声を聞き、聞き覚えがあるようなないような不思議な気持ちになる。
その知っている人を前に、違う状況――夢の世界で違う役割で出会った――というような感覚に近いのかもしれなかった。
だから、気のせいだろうということで考えをまとめた。
「いや……なんでも……」
メニューを見て「おすすめは?」と尋ねると、焼き菓子の説明や本日の花茶について説明された。
断る理由もないので花茶と焼き菓子にした。
焼き菓子と花茶の香りで、息をつく。
「そういえば……ここでは、悩み事を、聞いてもらえるのか」
店主に向かって声をかけた。
「おしゃべりに付き合うということがそれにつながるということだよ。結果、悩み事を聞くことになる」
店主は「他に客もいるけれどもいいのかな」というようにカウンターを見渡した。
レピドは「彼らになら聞かれても構わない」という。
気心が知れているし、レピドがどういう道を歩んできたかも知っている。
「ずっと胸にとどめていたそれを聞いてもらっても構わない……できれば、話を聞いてくれそう人がいれば……そんなつもりはなかったんだが……今日、なぜか、そういう気持ちになった」
コルネリウスやディレイン、ルアンナはレピドを静かに見ていた。
レピドは友人だから、無茶したとしても助ける。そして、心配していることを話そうとするならば、聞いて受け止める。
レピドはぽつぽつと語り出す。
「俺はホムンクルスだから、昔の記憶は殆ど無くて。でも生前の俺は確かに生きていて、俺がやってきた事も色々あって」
口にすることがはばかられ、一旦切った。
店主の反応を見つつ、進める。
「……その僅かに残る記憶によると、昔の俺は罪人──暗殺者だった、らしい。暗殺者という事は余程ポンコツでなければ被害者は絶対いて、そしてその被害者には友人や家族もいただろう」
レピドは茶を一口飲んだ。
「標的だった人を大切に思う人がもし、復讐者として目の前に現れたら?」
膝の上のショウガが何か言いたげに見上げる。その頭をレピドはなでた。
「過去の罪を悔いるのならこの命を差し出すべき、とは思う。命と釣り合うものはまた命しかないから……生き返った直後にそうなっていたら、本当にそうするつもりだったんだ」
ディレインが「レピド君……」とつぶやく。
「……けれど、一年程経って俺にも大切な者が沢山出来てしまった。彼等を悲しませるなら、勝手な話だが生き続けたい……とも今は思う」
レピドは真っ直ぐ前を向いた。
「いつか来るかも知れないその時、俺は一体どうすればいいのだろう?」
店主は少し考えて「生きることの意味もあるよ」という。
ディレインはそれを引き取るように、告げる。
「それもそうだけれども……おじさんがみんなに望むのは健やかに生きて欲しいってことだよ。心身ともにね」
ディレインは仲間を見る。
「ただ、その邪魔してくれちゃう相手には、ちょっと、こう、わかってもらいにくいことかもだけど。あ、若いころの苦労的なことは別としてね。そういうのは人生の充実にもってこいのものだから。無理のない範囲で、自分を大切にしながら、もがいてほしいね」
コルネリウスが「そうですか」とうなずく。
ディレインはレピドの悩みはどうすべきかとうめく。
「とはいえ……一番どうしてくれようかって思うのは、レピド君を邪魔するティーチャーだからね。人の話を聞かない系はタチが悪い」
ルアンナが手をあげ、発言する。
「それなら、復讐者になった人たちをうまく説得して、元凶であるティーチャーをやっつけるのに誘っちゃえば?」
店主が「え?」と思わず言い、ディレインが手を打つ。
「それは面白いかもしれないね、無茶か、無謀かは相手によるだろうけれども」
コルネリウスが「交渉力がいりますね」という。
「私たちが近くにいれば、協力できるかもしれませんが……レピドさんがきちんと説明して、協力を仰ぐというのは良いかもしれません」
レピドは「そういうものか?」と困惑して店主と友人たちを見る。
店主は「お、面白い発想だね……で、その変態仮面とか、仮面先生とは何だい?」と問う。
レピドは「暗殺の技術を教える人だ」とざっくりとした説明をした。
降ってわいた解決策について、レピドは考える。
「協力を仰ぐ……か……交渉する力が、確かにいる」
レピドは胸のつかえがとれた気持ちだった。
「おや、雨がやんだみたいだね」
店主が外を見て言う。
ディレインは「そろそろでようかな」という。
雨宿りのつもりだったし、レピドはうなずく。
コルネリウスとルアンナも「では、お暇しましょう」「ごちそうさまでした」と続いた。
冒険者たちはお金を払い、店を後にした。
残された店主は面白い話を聞いたのだけれども、釈然としない思いが胸の奥に湧くのだった。
マスターコメント
ご参加ありがとうございます。
悩みやら雑談が……冒険者あるあるといいますか……現実にあると怖いといいますか。胃痛の原因になったり、皆様、ハードな人生です。
リアルを考え、頑張らないとなぁと私が思ったりしたり……。
さて、悩みの解決につながりましたでしょうか?
ご縁があればお会いしましょう。
ショートシナリオR易しい 報酬:無し4 / 4〜8人
2023年08月29日 10時45分03秒 公開
大成功
相談掲示板
レピド・クロサイトだ、よろしく頼む。 なんとなく店主にデジャブを感じるが気のせいだろう、うん、多分。 折角の機会なので俺は悩みを聞いて貰おうかなと思っていた。 (まずはご参加下さりありがとうございます。レピドは「いつか生前の悪行から親兄弟の仇!と襲われた場合、自分はどうすれば良いのだろう」という悩みを打ち明ける予定です。触れてくださるの歓迎ですが、スルーでも構いません)
はい、ディレインおじさんですよー。 各自でばらばらに入店する感じ? (何度言っても無茶する友人たちについて愚痴りたく… 依頼帰りに立ち寄った、もありかなと思いました) 看破は持ってかないつもり!
ルアンナです、よろしくお願いします♪(今回は企画ありがとうございます!) >ディレインさん それなら同じ依頼帰りって事でご一緒しても良いでしょうか?
>ルアンナちゃん 了解、そうしようか。 (つまりルアンナちゃんがやらかした後ということ…!?)
すみません遅くなりました。コルネリウスです、よろしくお願いします! (何について話そうかな、というのはまだ考え中ですが)お茶のためにふらっと寄っていく予定です。 洞察などのスキルも今回は持ち込まずに過ごす予定でいます。
(バラバラに集まるけど最終的には「みんな集まっちゃったじゃん!」になるのかな…?)
俺は雨に降られて飛び込んだ感じにしようかな…… >ディレイン (多分そんな感じになりそう?)