暑さの中に、楽しきひと時を
狐野径
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シナリオID:3131
オープニング
シャルガネ地区のある地域にある星駆神社。
豊かな森に包まれた社殿では、夏祭りの準備が進んでいた。
境内に続く石畳の参道は多くの人々が行きかう。
資材をもって屋台を立てたり、明かりの準備などすることは色々あった。
一の鳥居から二の鳥居の間には、参道の石畳に沿って屋台が並ぶ。
地元の有志や生業にしている人などが、飲食や雑貨を扱ったり、的当てなどの遊びを出す。
一の鳥居の近くには、お囃子を披露する席が用意されている。
祭りは見るだけでなく耳も楽しむ物。
小さなものは持ち込むだろうけれども、太鼓など大き目の物は早めに搬入していく。
二の鳥居から本殿はお参りのための場所となる。
社務所では、お札やお守りの授与、おみくじが引ける。
なお、本殿の近くには、木の台がいくつかおかれている。
神輿が来た場合、これを並べ置くことになる。
その神輿は、境内から少し離れた町中の広場にあった。
そこにはここの神職が行き、準備を進めていた。
担ぎ手は何人来るか、どういうルートを通るのか。
さて、神社内では神職を養父母とする巫女のハナユが準備を取り仕切る。
「おみくじの補充置き場はここやで」
社務所で授与に携わる巫女たちは「わかりました」と言い、質問があればする。
また、屋台の準備をしている人も、何かあるとハナユのところにやってくる。
「おおい、花茶の屋台はどこだっけ?」
「それより、ここもう少し広いんじゃないか?」
「お囃子舞台の準備は終わりましたよー。次どこ手伝えばいいです?」
ハナユは数人に一斉に言われて「一気に言わんといて!」というが、「その屋台はここや。で、広さ……今から行くから待ってや。あっちに人手がいる、いうゆうてたね」と一つずつ確実に対応していく。
問うたほうは笑顔で謝り「ハナユに聞けばいいから安心だ」というならば、ハナユも仕方がないと思い笑う。
ハナユも、屋台に関わる人、巫女たちも、つまり、関係者全員、てんてこ舞い。
祭りを楽しみしてくれている人のため。
何より、祭りを自分たちも楽しみにしている。
「暑い夏に、熱い祭りや! たくさんの人が来てくれるとええなぁ」
ハナユは空を見上げる。
雲ひとつない空。
太陽は容赦なく地に照り付ける。
この暑さがあるからこそできる農作物だってある。
だからこそ、暑さを吹き飛ばし、楽しみたい。
祭りの知らせは、冒険者ギルドを通じてあちこちに知らされる。
是非、休息に、旅にどうぞ。
豊かな森に包まれた社殿では、夏祭りの準備が進んでいた。
境内に続く石畳の参道は多くの人々が行きかう。
資材をもって屋台を立てたり、明かりの準備などすることは色々あった。
一の鳥居から二の鳥居の間には、参道の石畳に沿って屋台が並ぶ。
地元の有志や生業にしている人などが、飲食や雑貨を扱ったり、的当てなどの遊びを出す。
一の鳥居の近くには、お囃子を披露する席が用意されている。
祭りは見るだけでなく耳も楽しむ物。
小さなものは持ち込むだろうけれども、太鼓など大き目の物は早めに搬入していく。
二の鳥居から本殿はお参りのための場所となる。
社務所では、お札やお守りの授与、おみくじが引ける。
なお、本殿の近くには、木の台がいくつかおかれている。
神輿が来た場合、これを並べ置くことになる。
その神輿は、境内から少し離れた町中の広場にあった。
そこにはここの神職が行き、準備を進めていた。
担ぎ手は何人来るか、どういうルートを通るのか。
さて、神社内では神職を養父母とする巫女のハナユが準備を取り仕切る。
「おみくじの補充置き場はここやで」
社務所で授与に携わる巫女たちは「わかりました」と言い、質問があればする。
また、屋台の準備をしている人も、何かあるとハナユのところにやってくる。
「おおい、花茶の屋台はどこだっけ?」
「それより、ここもう少し広いんじゃないか?」
「お囃子舞台の準備は終わりましたよー。次どこ手伝えばいいです?」
ハナユは数人に一斉に言われて「一気に言わんといて!」というが、「その屋台はここや。で、広さ……今から行くから待ってや。あっちに人手がいる、いうゆうてたね」と一つずつ確実に対応していく。
問うたほうは笑顔で謝り「ハナユに聞けばいいから安心だ」というならば、ハナユも仕方がないと思い笑う。
ハナユも、屋台に関わる人、巫女たちも、つまり、関係者全員、てんてこ舞い。
祭りを楽しみしてくれている人のため。
何より、祭りを自分たちも楽しみにしている。
「暑い夏に、熱い祭りや! たくさんの人が来てくれるとええなぁ」
ハナユは空を見上げる。
雲ひとつない空。
太陽は容赦なく地に照り付ける。
この暑さがあるからこそできる農作物だってある。
だからこそ、暑さを吹き飛ばし、楽しみたい。
祭りの知らせは、冒険者ギルドを通じてあちこちに知らされる。
是非、休息に、旅にどうぞ。
解説
●目的・目標
星駆神社の夏祭りを楽しむ。
●時間、出来ることなど
午前中は屋台も神輿も、準備中。
神輿は午後にあり、屋台も販売を開始する。ただし、神輿が通る時間は屋台の販売は一時的な中止がある。
屋台は一の鳥居から二の鳥居の石畳参道に並ぶ。
屋台は搾りたて果汁や百合茶、焼いた野菜や焼き菓子など、的当てやくじ引き等の遊びを提供するところがある。食べ歩きが基本となるが、少しだけ椅子とテーブルを用意した区画がある。
お囃子は祭り開催中、神輿前後から夕方まで行われる。
ずっと演奏しっぱなしではなく、ローテーション組んで行われる。
そのため、笛や太鼓などお囃子ができる人は参加することも可能である。
その場合、ハナユに申し出ていただければ、しかるべき時間に参加できる。
なお、神社は忙しいため、手伝いも歓迎されます。
社務所の御籤やお札の授与、屋台等で問題ないかの見回り、迷子の発生などないとはかぎらないため。
また、屋台出店をしていても構わない。
神輿担ぎは神社の外、地域の広場から出発する。
地域を練り歩き、神社に入る。
担ぐという仕様のため、身長差が問題になるため、担ぎ手はヒューマンの男性が多いということは明記しておく。
一応、子ども神輿もある。これはロープで引っ張るタイプ。
以上を参考に、どこでどう楽しむか……一言で言えば、楽しんで欲しい。
●NPC
・ハナユ 神社で巫女をしている。養父母はそこの神職。
実務のとりまとめはハナユがやっているため、出会うことが多いだろう。
・お祭りに関わる人々 地元の老若男女が見物したり、神輿担ぎ等に参加したり、社務所にいたりする。また、流れで屋台を出す人も。
マスターより
こんにちは、狐野径です。
夏祭りだ、楽しもう、です。
祭り……夜のイメージがなぜかありました。テレビでちょうど祇園祭やら山笠やら……朝やら昼やら……私がでかけたところで、CDではなくお囃子を演奏している地域もあったなぁという流れで、昼間にフォーカスしました。
暑さに負けず、暑さ自体を楽しめればと思います。
よろしくお願いします。
リプレイ
●少しずつ祭りに
ユズは夏祭りに合わせての帰省。
星駆神社が近づくにつれて、足が速くなってくる。
お囃子の準備で聞こえる楽器の音、屋台の設営の声。
祭りに関わる人は顔見知りの地元の人が多く、
「ユズちゃん、お帰り」
「おう、ちょうどいいとこ帰って来たな!」
と声をかけられる。そして、「ただいま、戻りました」とか「間に合った、よ」などユズは応じる。
社務所にたどり着くころには、ハナユにユズ帰還は伝わる。
ハナユは嬉しそうに「ユズ、お帰り」と、手を休めて迎えた。
ユズはハナユの元気そうな顔を見てホッとし「ただいま」という。
「ハナユ……一緒にやる、ボクも」
「ありがとぉ。帰ってきて早々悪いけど、これをあっちに届けといてくれへん?」
「任せて。荷物、置いてくる、ね」
ユズは旅の荷物を置いてから、ハナユに頼まれたものを必要としている人のところに届けた。
セロンガード・シュタインドルフとティトは神社の手伝いもする。
屋台が立ち並び、準備が進むのを見ると、心が浮き立つ。
社務所を覗き、セロンガードが声をかける。
「和装……を、神社の仕事に従事する者の正装をお借りして手伝いをしましょう」
ハナユが「ありがと」といい、セロンガードとティトを見る。
「じゃ、これに着替えてや」
パパッと小袖と袴をそれぞれ渡した。
着方がわからない場合は聞いてほしいと言い残し、ハナユは忙しそうに立ち去った。
セロンガードとティトはそれぞれ部屋で着替える。
普段着慣れているティトは早々に着替え終わり、社務所に向かう。
巫女の装束を身に着けると、背筋が伸びる思いがする。
(ちょっと違うけど、里で社の管理をしていた時を思い出す、よ。規模が違う、けど)
社務所の人たちは新たに加わったティトを見ると「よろしく」「わからないことあったらきいてね」と気さくに声を掛けてくれた。
ティトも「よろしく」と応じる。
一方で、セロンガードも着替え終わり社務所に向かう。
ティトが気づいて手を軽く振る。
(ティトの巫女服姿をきちんと見るのは初めてでしょうか? ふむ……)
普段からティトは和装をしているので、変わったことはないだろうと考えていた。しかし、違う何かを感じる。
(なかなか様になっているではありませんか。属性が盛られすぎて、渋滞気味になっておりますが……そこは割愛しましょう)
色々納得するころには、社務所の人たちから「よろしく」と声をかけられ、応じるのだった。
ネーヴェ・グラヌローザはアルフィー・リッパーと祭りを見て回る約束をした。
神社の境内だと人混みが予想されたし、ちょっと離れたところで待ち合わせ。
それでも人が多いと不安にもなるが、ネーヴェもアルフィーも互いにすぐ見つけた。
服装がいつもと違うことで目が留まり、しばらくしてから互いに手を振り、会うために移動する。
ネーヴェは浴衣に、髪はアップにして青い石のかんざしを挿す。
一方で、アルフィーも浴衣着て、水引で作ったアクセサリーを耳に。
アルフィーはネーヴェを見た瞬間、尻尾が大きく揺らしながら、
「すごく似合ってる。髪型可愛いし、髪飾りもネーヴェにぴったりだな」
と、目を輝かせる。大絶賛しつつ、頬は真っ赤。
「ふふ、ありがとうございます。アルフィーさんの浴衣姿も、よく似合っていらっしゃいますわ」
ネーヴェはくすくすと微笑み、アルフィーを見上げた。
真正面からの気持ちがくすぐったいし、どこか心地よい。
アルフィーはハッとして「祭りではしゃぎすぎたみたいだ」とごまかす。
「私も……その、少し高揚しているみたいでして」
気持ちが色々動く。
アルフィーはホッとする。
「はぐれるといけないから、手をつないでおこう」
大人相手に何を言っているんだと一瞬同様したが、ネーヴェが応じてくれて心臓が跳ねる。
また、ネーヴェも気にしていなかったが、手が触れるとドキリとした。
●土地を思う
ユズはハナユにかかる負担を少しでも減らし、休憩時間をとれるように心がける。
まず、夏祭りや準備について記憶を掘り起こしつつ、今回どうであるか確認した。
大きく変わったところは見られない。タイムテーブルを考え、社務所に行く。社務所は落ち着いて参拝者を迎える準備を終えていた。
喉を潤す用の茶がすでに少ないのに気づいたので、新たにつくる。
巫女や神職は「疲れてませんか?」と、ユズを気遣ってくれる。旅をしてきたと考えているからだろう。
「別に、大きな仕事、してきた、後ではない、から。夏祭りは楽しみ、だし」
「では、何かあったら頼りにします」
「うん」
ユズは社殿の方に向かう。
社務所の様子を考えて「さすが、ハナユだね……」と思う。段取りが良いから、そこで働く人もゆとりがあるのだ。
本殿の前の神事の準備は途中だ。台や道具はあるけれども、最後の仕上げが終わっていない。
「ボクがしておこう……」
手順に則り、紙を敷き足つきの台、小皿等を置いていく。
配置終わったころ、ハナユがやって来た。
「ユズ、やってくれたんやね」
「うん……あってる、よね?」
ハナユは確認し「問題ないや」とニコリと笑う。
ユズは「ハナユ、あっちに冷えた茶あるよ」と声をかけた。
「おみこしは、もう少ししたら出発だよね。今のうちに、休憩、とろう」
ハナユは休憩をとっていないことを思い出す。
「そやね、一息ついとこ。楽しいから、つい」
社務所に向かっていくハナユを見送った後、ユズはしばらく、境内の神輿が通るあたりの警備状況を見た。時折、参拝者に声をかけられるので、神輿がそろそろ来ることや屋台について説明したりするのだった。
時間になり、神輿がやってくる。
担ぎ手が勢いよく揺らす。
ハナユと一緒に見る。
暑いはずなのに、どこか、気持ちがスッとする。
見物人にも目を配る。
神輿が本殿の前に着き、丁寧に台に置かれる。
本殿に皆が向くと、祝詞が読まれる。
ユズはしっかり見、聞く。
「ボクたちも、この儀式……、できるのかな、いつか」
養父母の姿は凛としている。
人々の視線を受けても動じることなく、優し気に真っ直ぐ。
「できるようになるやろ」
「ハナユは自信、ありそう。ボクは……あんまり自信、ない、けど」
「ユズも、覚えればいいやろ? さっきだって覚えてた」
「……うん、覚える」
パサリ、ご幣が振られる音。
「この神社を大切にする、それが、ボクたちを育ててくれた、両親たちと、この町への恩返しになる。そう思ってる」
「そうやね。ユズは色んな世界見てるやろ?」
「だから、だよ……」
「それだって、恩返しや。ユズが色々見るのも必要なことや」
ユズは冒険者になった理由を考える。恩返しだといわれるとこそばゆいが。
「……占い師も、続ける。ボクにとって、なくしたくないもの、だから」
「占いも神事の一つや」
「ちょっと違う……かな」
二人は笑った。
神事で使う太鼓の音がドンと響く。
自然と二人は手を打ち鳴らした。
●手伝いと
セロンガードとティトは社務所で待機していた。
静かだった境内に、お囃子の第一声が鋭く走った。
他の笛や楽器が加わり、お囃子が始まった。
気持ちが高揚するし、参拝者も多くなってくる。
自然と忙しくなる。
不意に来訪者が減ったと思ったら、掛け声が聞こえた。
社務所の人が「神輿が来る時間ですよ」と教えてくれ、「見に行ってもいいですよ」と言ってくれる。
セロンガードもティトも「ここでいい」ということを異口同音に伝えた。
しばらくすると、掛け声と金属の涼やかな音が近づいてくる。
涼やかな音は神輿の飾りが立てる音なのだろうと想像する。
参道両脇で神輿を迎える人々の波。
社務所からも人越しに見える。
ティトは背伸びする。
「抱えましょうか?」
セロンガードに言われ、ティトは「うん、見えてる、よ、ありがと」と答えた。
神輿は本殿前に着く。
お囃子が止まり、神事が始まる。
厳かな空気に包まれる気がした。
太鼓の音と共に神事が終わった後、社務所はまた忙しくなった。
茶で喉を潤すくらいで、休むタイミングがつかめない状況。
時間がわからなくなるほど。
さすがに慣れている巫女が、夕方に「まだ手伝ってくれるなら、休憩行っておいでよ」と声をかけてくれる。
「この恰好のままでいいんでしょうか?」
セロンガードは尋ねると「気にしなくていいよ」とか「気になるなら休憩中つける?」とか社務所の人たちが言う。
気にしないでいいということで、二人はそのまま出かけた。
ティトはお腹に手を当てる。
「おなかが空いている……よ」
「そうですね。頑張ってましたからね。何か買いましょう」
飲食から雑貨の屋台まで様々ある。
空腹のため、飲食の方に目が向くのは自然。
ティトは匂いに釣られるように屋台の前に立った。
「これにしますか?」
「そうしよう、かな?」
セロンガードは屋台の人に二人前頼み、お金を払う。
「あとは飲み物ですか?」
「美味しそう」
「あれで潤いながら、食べましょう」
二人は屋台で買ったものを食べ、祭りを眺める。
人々の笑顔が夕日に照らされる。
夜も参拝できるとしても、徐々に人は退けてくだろう。
社務所に戻りつつ、二人は見て回る。
ティトは少し涼やかな風に顔を上げる。
「お囃子も屋台の匂いも、お祭り独特のもの……終わり際になると寂しくなってしまう……よね?」
セロンガードは「そういうこともありますよ」と同意を示す。
ティトは「そっか」とうなずく。
「ぼくの里は北にあって、夏祭りが終わると気温が徐々に下がり始めて、秋を感じ始めるから、お祭りの終わりは、ぼくにとっては夏の終わりとほとんど一緒……だよ。だから、それも相まって少し寂しいのかな」
気候によっては違いがあるだろうから、セロンガードは静かに「季節も変わるんですね」とティトが見た世界を想像した。
祭りが一つの区切り、というのは分かから。
「でもね、そんな哀愁漂う雰囲気もひとりじゃなければ、少し楽しく感じてしまうけど、ね」
ティトがセロンガードを見上げていう。
「特に変わらない、また、来年も来る、だけ。ね?」
「ええ、来年もあります」
二人は後で食べられそうなものを見つけ、購入し、社務所に入った。
●二人でいると――
ネーヴェとアルフィーは神社の本殿に向かう。
神輿が通るという声がするので、二人は足を止め、眺める。
担ぐための棒を多くの人たちが肩に載せ、運ぶ。
揺れると、涼やかな音が響く。
神輿にある、家の装飾の部分が、金属でできており、音を立てていることがわかる。
また、屋根の上に鳥と思われる物が乗っている。細工は細やかであり、尾が揺れ、光る。
家の梁や扉等には彫刻もあり、細かい部分まで作りこまれている。
本当の神社のようだ。
「立派なおみこしですわね」
「ああ。あの重さを担ぐのもすごい。それに神輿自体の細工がきれいだな」
アルフィーに言われて、ネーヴェは目を凝らしてみる。
「確かに、あの花の細工は本物のようですし、あの柄はとても凝ってますわ」
「あんな繊細な飾りとかいつか作ってみたいな」
「アルフィーさんなら、作れますわ。この指先はとても器用でいらっしゃいますもの」
握る手を軽く動かした。
アルフィーはどきりとした。
(ネーヴェといるとドキドキすることが多い……不整脈か? でも、なぜ、彼女といるときだけ!?)
ネーヴェはアルフィーの悩みは知らないため、神輿について話を続けた。
「どれくらいの月日をこの神輿に注ぎ込んだのでしょう」
「作った後、それを維持していく……作るのも直すのも技術がいるから……日々考えるから素晴らしい姿を俺たちに見せてくれるんだ」
「それを聞いたら、もっとじっくり見たくなりますわ」
「そうだな……」
二人は神輿を眼で追う。近寄るとしても、人込みがあるから進まない。
神輿を見送り、動き出した人の波に乗り、屋台に向かう。
神輿が離れると、屋台の人の呼び込みも大きくなる。
アルフィーの耳が色々な声を拾い動き、目もあちこちに向かう。
「リンゴ飴に……チョコバナナ……あと金平糖……アップルパイ……もあるかな……はっ、甘いものばかりだな」
ネーヴェは「ええ、でも、食べたいものならいいですわ」と笑う。
「ネーヴェは食べたいものはあるか?」
「私はたこ焼きが食べたいですわね」
「せっかくなら、お互いに少しずつシェアしながら食べないか?」
「ええ、是非。二人で分ければ色んなものが食べられますし」
屋台を覗き、気になった物を購入して、分けられるものは分ける。
ネーヴェは熱々のたこ焼きを軽く冷ましてから、
「はい、どうぞ。ふふ、なんて」
と、差し出されたたこ焼きにアルフィーがドキドキする。
そんな中射撃や輪投げ等ゲームの屋台が多いところにたどり着く。
色々食べたこともあるし、ゲームにチャレンジすることになった。
「いくら、ネーヴェでも勝負の世界では手加減しないぞ!」
アルフィーは意気揚々という。
「負けませんわよ。負けた方が勝った方のいうことは聞くなど定番ですわよね」
「いうことを聞く? よーし」
輪投げ、一回戦、ネーヴェが勝つ。
二回戦、辛勝するアルフィー。
場を変え、的当てに。一回戦は引き分け、二回戦目はアルフィーが文句なく勝つ。
童心に帰り、勝負が白熱していく。
気づけば、提灯に明かりがともされる。
子どもは帰り始め、静かに参拝する人たちが多くなる。
そろそろ、お開きとなる時間だった。
名残惜しく境内を歩く。
人が減り手をつなぐ理由は薄くなるが、二人はそのままにしている。
アルフィーはネーヴェの隣にいるとドキドキするけれども、そこは心地よい。
別れがたく感じる。
「なぁ、また、こうやって出かけたいな」
ネーヴェもまた、名残惜しいと感じていた。
「……ええ、私も」
「ネーヴェとの勝負も楽しかった」
「私が勝ちですわね」
「え? 俺の方が勝ってた」
途中まで勝敗を数えていたけれども、段々、勝ったか負けたかだけになってきていた。
「仕方がないですわね。次は負けませんわよ」
「いつでも受けて立つ。あれ? 俺が譲られる?」
二人は笑う。
静かに寄り添いながら、とりとめのない会話をして。
ユズは夏祭りに合わせての帰省。
星駆神社が近づくにつれて、足が速くなってくる。
お囃子の準備で聞こえる楽器の音、屋台の設営の声。
祭りに関わる人は顔見知りの地元の人が多く、
「ユズちゃん、お帰り」
「おう、ちょうどいいとこ帰って来たな!」
と声をかけられる。そして、「ただいま、戻りました」とか「間に合った、よ」などユズは応じる。
社務所にたどり着くころには、ハナユにユズ帰還は伝わる。
ハナユは嬉しそうに「ユズ、お帰り」と、手を休めて迎えた。
ユズはハナユの元気そうな顔を見てホッとし「ただいま」という。
「ハナユ……一緒にやる、ボクも」
「ありがとぉ。帰ってきて早々悪いけど、これをあっちに届けといてくれへん?」
「任せて。荷物、置いてくる、ね」
ユズは旅の荷物を置いてから、ハナユに頼まれたものを必要としている人のところに届けた。
セロンガード・シュタインドルフとティトは神社の手伝いもする。
屋台が立ち並び、準備が進むのを見ると、心が浮き立つ。
社務所を覗き、セロンガードが声をかける。
「和装……を、神社の仕事に従事する者の正装をお借りして手伝いをしましょう」
ハナユが「ありがと」といい、セロンガードとティトを見る。
「じゃ、これに着替えてや」
パパッと小袖と袴をそれぞれ渡した。
着方がわからない場合は聞いてほしいと言い残し、ハナユは忙しそうに立ち去った。
セロンガードとティトはそれぞれ部屋で着替える。
普段着慣れているティトは早々に着替え終わり、社務所に向かう。
巫女の装束を身に着けると、背筋が伸びる思いがする。
(ちょっと違うけど、里で社の管理をしていた時を思い出す、よ。規模が違う、けど)
社務所の人たちは新たに加わったティトを見ると「よろしく」「わからないことあったらきいてね」と気さくに声を掛けてくれた。
ティトも「よろしく」と応じる。
一方で、セロンガードも着替え終わり社務所に向かう。
ティトが気づいて手を軽く振る。
(ティトの巫女服姿をきちんと見るのは初めてでしょうか? ふむ……)
普段からティトは和装をしているので、変わったことはないだろうと考えていた。しかし、違う何かを感じる。
(なかなか様になっているではありませんか。属性が盛られすぎて、渋滞気味になっておりますが……そこは割愛しましょう)
色々納得するころには、社務所の人たちから「よろしく」と声をかけられ、応じるのだった。
ネーヴェ・グラヌローザはアルフィー・リッパーと祭りを見て回る約束をした。
神社の境内だと人混みが予想されたし、ちょっと離れたところで待ち合わせ。
それでも人が多いと不安にもなるが、ネーヴェもアルフィーも互いにすぐ見つけた。
服装がいつもと違うことで目が留まり、しばらくしてから互いに手を振り、会うために移動する。
ネーヴェは浴衣に、髪はアップにして青い石のかんざしを挿す。
一方で、アルフィーも浴衣着て、水引で作ったアクセサリーを耳に。
アルフィーはネーヴェを見た瞬間、尻尾が大きく揺らしながら、
「すごく似合ってる。髪型可愛いし、髪飾りもネーヴェにぴったりだな」
と、目を輝かせる。大絶賛しつつ、頬は真っ赤。
「ふふ、ありがとうございます。アルフィーさんの浴衣姿も、よく似合っていらっしゃいますわ」
ネーヴェはくすくすと微笑み、アルフィーを見上げた。
真正面からの気持ちがくすぐったいし、どこか心地よい。
アルフィーはハッとして「祭りではしゃぎすぎたみたいだ」とごまかす。
「私も……その、少し高揚しているみたいでして」
気持ちが色々動く。
アルフィーはホッとする。
「はぐれるといけないから、手をつないでおこう」
大人相手に何を言っているんだと一瞬同様したが、ネーヴェが応じてくれて心臓が跳ねる。
また、ネーヴェも気にしていなかったが、手が触れるとドキリとした。
●土地を思う
ユズはハナユにかかる負担を少しでも減らし、休憩時間をとれるように心がける。
まず、夏祭りや準備について記憶を掘り起こしつつ、今回どうであるか確認した。
大きく変わったところは見られない。タイムテーブルを考え、社務所に行く。社務所は落ち着いて参拝者を迎える準備を終えていた。
喉を潤す用の茶がすでに少ないのに気づいたので、新たにつくる。
巫女や神職は「疲れてませんか?」と、ユズを気遣ってくれる。旅をしてきたと考えているからだろう。
「別に、大きな仕事、してきた、後ではない、から。夏祭りは楽しみ、だし」
「では、何かあったら頼りにします」
「うん」
ユズは社殿の方に向かう。
社務所の様子を考えて「さすが、ハナユだね……」と思う。段取りが良いから、そこで働く人もゆとりがあるのだ。
本殿の前の神事の準備は途中だ。台や道具はあるけれども、最後の仕上げが終わっていない。
「ボクがしておこう……」
手順に則り、紙を敷き足つきの台、小皿等を置いていく。
配置終わったころ、ハナユがやって来た。
「ユズ、やってくれたんやね」
「うん……あってる、よね?」
ハナユは確認し「問題ないや」とニコリと笑う。
ユズは「ハナユ、あっちに冷えた茶あるよ」と声をかけた。
「おみこしは、もう少ししたら出発だよね。今のうちに、休憩、とろう」
ハナユは休憩をとっていないことを思い出す。
「そやね、一息ついとこ。楽しいから、つい」
社務所に向かっていくハナユを見送った後、ユズはしばらく、境内の神輿が通るあたりの警備状況を見た。時折、参拝者に声をかけられるので、神輿がそろそろ来ることや屋台について説明したりするのだった。
時間になり、神輿がやってくる。
担ぎ手が勢いよく揺らす。
ハナユと一緒に見る。
暑いはずなのに、どこか、気持ちがスッとする。
見物人にも目を配る。
神輿が本殿の前に着き、丁寧に台に置かれる。
本殿に皆が向くと、祝詞が読まれる。
ユズはしっかり見、聞く。
「ボクたちも、この儀式……、できるのかな、いつか」
養父母の姿は凛としている。
人々の視線を受けても動じることなく、優し気に真っ直ぐ。
「できるようになるやろ」
「ハナユは自信、ありそう。ボクは……あんまり自信、ない、けど」
「ユズも、覚えればいいやろ? さっきだって覚えてた」
「……うん、覚える」
パサリ、ご幣が振られる音。
「この神社を大切にする、それが、ボクたちを育ててくれた、両親たちと、この町への恩返しになる。そう思ってる」
「そうやね。ユズは色んな世界見てるやろ?」
「だから、だよ……」
「それだって、恩返しや。ユズが色々見るのも必要なことや」
ユズは冒険者になった理由を考える。恩返しだといわれるとこそばゆいが。
「……占い師も、続ける。ボクにとって、なくしたくないもの、だから」
「占いも神事の一つや」
「ちょっと違う……かな」
二人は笑った。
神事で使う太鼓の音がドンと響く。
自然と二人は手を打ち鳴らした。
●手伝いと
セロンガードとティトは社務所で待機していた。
静かだった境内に、お囃子の第一声が鋭く走った。
他の笛や楽器が加わり、お囃子が始まった。
気持ちが高揚するし、参拝者も多くなってくる。
自然と忙しくなる。
不意に来訪者が減ったと思ったら、掛け声が聞こえた。
社務所の人が「神輿が来る時間ですよ」と教えてくれ、「見に行ってもいいですよ」と言ってくれる。
セロンガードもティトも「ここでいい」ということを異口同音に伝えた。
しばらくすると、掛け声と金属の涼やかな音が近づいてくる。
涼やかな音は神輿の飾りが立てる音なのだろうと想像する。
参道両脇で神輿を迎える人々の波。
社務所からも人越しに見える。
ティトは背伸びする。
「抱えましょうか?」
セロンガードに言われ、ティトは「うん、見えてる、よ、ありがと」と答えた。
神輿は本殿前に着く。
お囃子が止まり、神事が始まる。
厳かな空気に包まれる気がした。
太鼓の音と共に神事が終わった後、社務所はまた忙しくなった。
茶で喉を潤すくらいで、休むタイミングがつかめない状況。
時間がわからなくなるほど。
さすがに慣れている巫女が、夕方に「まだ手伝ってくれるなら、休憩行っておいでよ」と声をかけてくれる。
「この恰好のままでいいんでしょうか?」
セロンガードは尋ねると「気にしなくていいよ」とか「気になるなら休憩中つける?」とか社務所の人たちが言う。
気にしないでいいということで、二人はそのまま出かけた。
ティトはお腹に手を当てる。
「おなかが空いている……よ」
「そうですね。頑張ってましたからね。何か買いましょう」
飲食から雑貨の屋台まで様々ある。
空腹のため、飲食の方に目が向くのは自然。
ティトは匂いに釣られるように屋台の前に立った。
「これにしますか?」
「そうしよう、かな?」
セロンガードは屋台の人に二人前頼み、お金を払う。
「あとは飲み物ですか?」
「美味しそう」
「あれで潤いながら、食べましょう」
二人は屋台で買ったものを食べ、祭りを眺める。
人々の笑顔が夕日に照らされる。
夜も参拝できるとしても、徐々に人は退けてくだろう。
社務所に戻りつつ、二人は見て回る。
ティトは少し涼やかな風に顔を上げる。
「お囃子も屋台の匂いも、お祭り独特のもの……終わり際になると寂しくなってしまう……よね?」
セロンガードは「そういうこともありますよ」と同意を示す。
ティトは「そっか」とうなずく。
「ぼくの里は北にあって、夏祭りが終わると気温が徐々に下がり始めて、秋を感じ始めるから、お祭りの終わりは、ぼくにとっては夏の終わりとほとんど一緒……だよ。だから、それも相まって少し寂しいのかな」
気候によっては違いがあるだろうから、セロンガードは静かに「季節も変わるんですね」とティトが見た世界を想像した。
祭りが一つの区切り、というのは分かから。
「でもね、そんな哀愁漂う雰囲気もひとりじゃなければ、少し楽しく感じてしまうけど、ね」
ティトがセロンガードを見上げていう。
「特に変わらない、また、来年も来る、だけ。ね?」
「ええ、来年もあります」
二人は後で食べられそうなものを見つけ、購入し、社務所に入った。
●二人でいると――
ネーヴェとアルフィーは神社の本殿に向かう。
神輿が通るという声がするので、二人は足を止め、眺める。
担ぐための棒を多くの人たちが肩に載せ、運ぶ。
揺れると、涼やかな音が響く。
神輿にある、家の装飾の部分が、金属でできており、音を立てていることがわかる。
また、屋根の上に鳥と思われる物が乗っている。細工は細やかであり、尾が揺れ、光る。
家の梁や扉等には彫刻もあり、細かい部分まで作りこまれている。
本当の神社のようだ。
「立派なおみこしですわね」
「ああ。あの重さを担ぐのもすごい。それに神輿自体の細工がきれいだな」
アルフィーに言われて、ネーヴェは目を凝らしてみる。
「確かに、あの花の細工は本物のようですし、あの柄はとても凝ってますわ」
「あんな繊細な飾りとかいつか作ってみたいな」
「アルフィーさんなら、作れますわ。この指先はとても器用でいらっしゃいますもの」
握る手を軽く動かした。
アルフィーはどきりとした。
(ネーヴェといるとドキドキすることが多い……不整脈か? でも、なぜ、彼女といるときだけ!?)
ネーヴェはアルフィーの悩みは知らないため、神輿について話を続けた。
「どれくらいの月日をこの神輿に注ぎ込んだのでしょう」
「作った後、それを維持していく……作るのも直すのも技術がいるから……日々考えるから素晴らしい姿を俺たちに見せてくれるんだ」
「それを聞いたら、もっとじっくり見たくなりますわ」
「そうだな……」
二人は神輿を眼で追う。近寄るとしても、人込みがあるから進まない。
神輿を見送り、動き出した人の波に乗り、屋台に向かう。
神輿が離れると、屋台の人の呼び込みも大きくなる。
アルフィーの耳が色々な声を拾い動き、目もあちこちに向かう。
「リンゴ飴に……チョコバナナ……あと金平糖……アップルパイ……もあるかな……はっ、甘いものばかりだな」
ネーヴェは「ええ、でも、食べたいものならいいですわ」と笑う。
「ネーヴェは食べたいものはあるか?」
「私はたこ焼きが食べたいですわね」
「せっかくなら、お互いに少しずつシェアしながら食べないか?」
「ええ、是非。二人で分ければ色んなものが食べられますし」
屋台を覗き、気になった物を購入して、分けられるものは分ける。
ネーヴェは熱々のたこ焼きを軽く冷ましてから、
「はい、どうぞ。ふふ、なんて」
と、差し出されたたこ焼きにアルフィーがドキドキする。
そんな中射撃や輪投げ等ゲームの屋台が多いところにたどり着く。
色々食べたこともあるし、ゲームにチャレンジすることになった。
「いくら、ネーヴェでも勝負の世界では手加減しないぞ!」
アルフィーは意気揚々という。
「負けませんわよ。負けた方が勝った方のいうことは聞くなど定番ですわよね」
「いうことを聞く? よーし」
輪投げ、一回戦、ネーヴェが勝つ。
二回戦、辛勝するアルフィー。
場を変え、的当てに。一回戦は引き分け、二回戦目はアルフィーが文句なく勝つ。
童心に帰り、勝負が白熱していく。
気づけば、提灯に明かりがともされる。
子どもは帰り始め、静かに参拝する人たちが多くなる。
そろそろ、お開きとなる時間だった。
名残惜しく境内を歩く。
人が減り手をつなぐ理由は薄くなるが、二人はそのままにしている。
アルフィーはネーヴェの隣にいるとドキドキするけれども、そこは心地よい。
別れがたく感じる。
「なぁ、また、こうやって出かけたいな」
ネーヴェもまた、名残惜しいと感じていた。
「……ええ、私も」
「ネーヴェとの勝負も楽しかった」
「私が勝ちですわね」
「え? 俺の方が勝ってた」
途中まで勝敗を数えていたけれども、段々、勝ったか負けたかだけになってきていた。
「仕方がないですわね。次は負けませんわよ」
「いつでも受けて立つ。あれ? 俺が譲られる?」
二人は笑う。
静かに寄り添いながら、とりとめのない会話をして。
マスターコメント
ご参加ありがとうございます。
夏のひと時という風情になりました。
リプレイ執筆中、夏の祭があったり、神輿は二トンという記事をみたり……季節ですね。四年ぶりの開催とか、台風があったりとか色々ありますが。
ご縁があれば、お会いしましょう。
ショートシナリオR易しい 報酬:無し5 / 4〜8人
2023年08月22日 13時41分33秒 公開
大成功
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