【泥乱】ヴァーロゥムと雲霞鳥。そしてメイレ【茜蔓】
岩岡志摩
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シナリオID:3037
オープニング
茜蔓。アカネの別名。込められた意味は「傷」「異端」「私を想って」。
●経緯
イネス・コンテスティという人物は、第三の征竜の巫女とされている。
少し前まで寝込んでいたが、今は快復しギシュム族の若者達へ征竜の言葉を伝えていた。
――神代のときよりも征竜の数は減っている。
――そのためリザードマンには早く竜となってほしい。
「現世で力を得ればいずれ竜にも届くでしょう」
そうイネスは説いた。
実際イネスや付き人は強く、武をもって立つギシュム族の若者たちは、イネスや付き人の教えを受け奮起し、自信をつけていく。
そのイネスからの要請に従い、ある日ギシュム族の集落へと帝国近衛兵連隊という一団がやってきた。
イネスが帝国近衛兵連隊に要請した内容は――「泥血啜る月吸蟲」の討伐。
●陽動
この時ギシュム族の古老達は、冒険者達の調査によって今年の雲霞鳥(うんかちょう)は数が多く、特異個体も複数活動していることを知り、懸念を示していた。
その話を聞いた近衛隊長を含めた帝国近衛兵連隊の半数ほどが、雲霞鳥の巣へ向かうことを決めた。
ただ帝国近衛兵連隊は隠密行動にあまり向いていないらしく、雲霞鳥に気取られることなく巣へ近づくのは難しいと思われた。
そこで帝国近衛兵連隊はギシュム族とも相談の結果、冒険者達にも援護を依頼することにした。
帝国近衛兵連隊をできる限り巣に近づけさせるため、その露払いや別方向に雲霞鳥をおびき寄せる陽動役なども含め、冒険者ギルド支部には様々な依頼が持ち込まれる。
帝国近衛兵連隊が慌ただしく準備を進める中、連隊に属する戦士の1人がヴァーロゥムにある話を持ちかけた。
「雲霞鳥を別方向におびき寄せる陽動を手伝ってほしい、ですか」
ヴァーロゥムは巫女イネスの要請で集落に来た帝国近衛兵連隊という集団に対し、一定の敬意を持って接していた。
言われた内容を復唱するヴァーロゥムに、連隊の戦士は頷きを返す。
「そうだ。できれば君に近しい若手戦士達と一緒に陽動を手伝ってくれるとありがたい」
戦士の説明によると、帝国近衛兵連隊が巣に近づき、退却するまでの短い間だけ雲霞鳥の一部を別の方向へ誘導してくれればいいようだ。
「誘導する数は君達で決めてくれ。途中危険だと判断出来たら、陽動を中止して速やかに逃げてほしい」
雲霞鳥が集団で狩りを行う際、一定数以上集まると薄い靄に包まれ、自分達を強化するという特性があるため、多数を相手取るのは注意が必要になる。
そのことをこの戦士も知っていたようだ。
「巫女イネス様もギシュム族の若手には期待しておられるいるようだ。うまく事を成してくれたら、巫女もお喜びになられるだろう」
「わかりました。引き受けます」
巫女イネスの名を出されたヴァーロゥムは、戦士の要請を受けることにした。
「何を考えている。あの巫女にいいところを見せようと思っているだけなら俺達は協力しないぞ」
戦士がその場から立ち去った後、ヴァーロゥムは周囲の若手戦士達から詰問される。
「わかっている。古老達からも雲霞鳥の脅威を教わったばかりだ。俺達だけで動かず大酋長や古老達にもこの話は報せる」
当初主戦論を唱えていたヴァーロゥムだが、以前冒険者達から受けた教えもあり、古老達からの諫言なども取り入れ、先走りがちだった性根にも若干改善傾向が見られている。
「退路を複数確保してから誘導に移ろう。危なくなったら逃げていいと言われているからな」
ヴァーロゥムの慎重な姿勢に、周囲の若手戦士達も「そういうことなら」と協力の旨を伝え、共に準備を進めていく。
以前の反省を踏まえ、ヴァーロゥムは出発前に大酋長アシムベート・グリオウと面会し、帝国近衛兵連隊所属の戦士より頼まれた内容を報告する。
「念のため冒険者ギルド支部にも、緊急時の救援を出してもらえるよう依頼をしたいのですが――」
ヴァーロゥムはアシムベートに説明する中、自分達が辿るルートと退却路を記した手製の地図を差し出す。
その内容を確かめたアシムベートは少し思案した後、ヴァーロゥム達の活動を承認する。
「わしの名前でその依頼は出しておく。だが無理は禁物だ」
そしてアシムベートより出されたヴァーロゥム救援の依頼に、冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスが応対する形となった。
●敵か味方か
そして雲霞鳥の巣に接近し、一部の誘引に成功したヴァーロゥム達は、予め決めたルートで退却を続けていたが、その途上で思わぬ存在と遭遇する。
「お初にお目にかかります。メイレと申します」
白で統一された装束と白に近い銀髪。
そして赤い瞳の女性はそう名乗って一礼すると、ヴァーロゥム達の前に立ち塞がる。
「何の用だ」
後方からの雲霞鳥が気がかりなヴァーロゥムや若手戦士達に対し、メイレはヴァーロゥムに向け片手を差し出し、次いで手のひらを上に向ける。
「貴方が採取した卵と魔獣。その代金をお支払い願います」
言われた内容にヴァーロゥムが戸惑う中、メイレは順を追って説明する。
説明を受けたヴァーロゥムは自身が採取し、冒険者達の手で倒された骨鳥と卵のことだと理解できた。
「お支払い下さるなら巣を荒らしたことは不問にしましょう。追加の取引にも応じます」
メイレはそう言ったが、今のヴァーロゥム達はメイレの話に応じる余裕はない。
「後にしてくれないか。俺達は雲霞鳥の群れに追われている」
ヴァーロゥムの言葉を裏打ちするように、後方を警戒していた若手戦士が叫びをあげた。
「奴らが来たぞ!」
その声に従い、ヴァーロゥムが後方へと視線を向ける。
周囲にディズル大湿地特有の靄が漂う中、靄の向こうより雲霞鳥と思しき鳥の群れが押し寄せてきた。
よく見ると群れの中には大型と思しき個体も含まれている。
「予想よりも早く追いつかれたな」
「恐らくあの大型の奴が周りを強化したからだろう」
彼我の距離と雲霞鳥の速度から、ヴァーロゥム達は逃げ切れないと悟り、この場での迎撃を選ぶ。
「すまん。誰か先に集落へ急行して救援を求めてほしい」
ヴァーロゥムは集落を出発する前、万が一に備えて大酋長を介し、冒険者ギルド支部へ救援要請を出していた。
今はそれが頼みの綱だ。
若手戦士達が慌ただしく人選を済ませ、ヴァーロゥムを含めた残りが上空を飛ぶ雲霞鳥に向け弓弦を鳴らし、複数の矢が雲霞鳥へと突き刺さる。
射抜かれた雲霞鳥が血霧を撒いて落下するが、全体から見ればごく一部にとどまり、残る雲霞鳥達がヴァーロゥム達へと次々と急降下する。
だが宙で何かが閃き、雲霞鳥達は血飛沫をあげ地面に叩きつけられた。
「邪魔です」
それはメイレと名乗った女性の攻撃だった。
メイレの周囲に刃の輝きが帯びていき、メイレが片手を振ると幾つもの光条が周囲を奔り、雲霞鳥の血飛沫がくすんだ陽光に煌めいた。
切断された雲霞鳥の体がまとめて落下する中、ひと際大きな個体がメイレめがけて飛来し、激突する。
ここでヴァーロゥム達は呆然から立ち直ると、「今のうちに行ってくれ」と仲間の1人を集落へと向かわせる。
思わぬ形で助けられたものの、メイレという存在が味方と言えるのか不明である以上、危機を脱したとは言い難い。
ヴァーロゥム達の援護を受け、若手戦士が救援を求めて集落へと駆け込んだのは、ちょうどアルヒが依頼に応じてくれた冒険者達と共に集落へと到着した後のことだった。
解説
マスターより
リプレイ
既にヴァーロゥム達のいる現場は、文字通り戦場と化していた。
予め天眼や宗波を駆使し、雲霞鳥(うんかちょう)の位置を把握していたハヤト=ガラン=ヴォルファングは、瞬間的な加速を披露して駆けつける。
「うるぁ! ブレイブファング傭兵団のハヤト様のお出ましだぁ!」
ハヤトは咆哮すると、そのままヴァーロゥムやギシュム族の若手戦士達の前を通過する。
「俺が相手になってやるぜ!」
ハヤトは軍神の祝福を駆使して最適解を導き出すと、北側より押し寄せる雲霞鳥の1体を捉える。
一気に雲霞鳥との距離を詰めたハヤトは竜巻と化したかのような連撃を披露し、その両手に握る双神刀 紅狗璃と、両足に嵌めた天狼の蹴甲が交互に繰り出される。
立て続けに攻撃を浴びた雲霞鳥は血霧を撒いて横転し、動かなくなる。
続いてトーラがエーテルを体内に巡らせて反応速度を高め、救援に駆けつける。
「あれは……ロコ?」
ここでトーラは東側で別の雲霞鳥と交戦している人物を見て、それがロコだと気づき内心驚く。
(詮索は後にして、まずは救出を優先します)
意識を眼前に引き戻したトーラは、周囲にいる仲間達に向け声を張り上げる。
「先手必勝です! 一つの群に集まって強化されない内に倒してしまいましょう!」
そしてトーラはハヤトを援護するため、北側に残る雲霞鳥達を捕捉すると、光り輝くエーテルを高速で収束させた後、爆発を巻き起こす。
その威力が周囲にぶちまけられ、範囲内にいた雲霞鳥2体をまとめて引き裂いた。
「この隙に下がってください!」
トーラがヴァーロゥム達に後退を勧めたころ、入れ違いにヴィルヘルミナやロゼットも到着した。
「間に合いました。これより追ってきた雲霞鳥の迎撃に移ります」
ヴィルヘルミナは天眼を駆使して敵味方の位置や動向の把握に努める。
雲霞鳥は南北と東の3方向から押し寄せてきたが、北側はハヤトとトーラがおさえ、東側はメイレと名乗った人物が攻防を続けているようだ。
戦況を確認したヴィルヘルミナは、南側より迫る雲霞鳥達とヴァーロゥム達の間へと割り込む。
「こちらの足並みも乱すことにしましょう」
ヴィルヘルミナは急速に迫る雲霞鳥を迎え撃つため、抜き放った月虹にエーテル光を纏わせ長大な刃と成し、不可視のエーテルを張り巡らせていく。
雲霞鳥のうち2体は真殺界の範囲内まで迫っていたので通過を阻止され、ヴァーロゥム達のもとへ向かうことができなくなった。
「ロコ、いえメイレね」
ロゼットは東側にいるメイレの存在とその正体に気づいていた。
「彼女の行動の全てを知っている訳じゃないけれど、彼女は必ずしも敵対的でないことの方が多かったのよね」
メドゥの指先、それも『黄の小指』にあたるロコは、これまでの経緯から単なる敵とは言い難い。
ヴィルヘルミナが真殺界で雲霞鳥達を足止めするまで行動を手控えていたロゼットは、自身も攻撃に移る。
ロゼットが天へ祈りを捧げると、ヴィルヘルミナによって足止めされた雲霞鳥達の周りに霧が発生し、その身を包み込む。
やや遅れて霧の中に眩い雷の嵐が荒れ狂い、稲光が雲霞鳥達の生命を削り取っていく。
「負傷した人はいるかしら?」
ここでロゼットは背後にいるヴァーロゥム達に怪我をしていないか尋ね、負傷者に向け治癒の光を飛ばしてその傷を癒す。
そして真殺界に閉じ込められた雲霞鳥達へ、ヴィルヘルミナの斬撃がそれぞれ襲いかかる。
既にロゼットの攻撃で損傷を蓄積させていた雲霞鳥達は、斬撃を浴びて生命が尽き、倒れていった。
●防衛
冒険者達は南北両方から迫る雲霞鳥達を押し返し、ヴァーロゥム達への攻撃を防いでいた。
――北側。
その中でハヤトはヴァーロゥム達から話を聞き、情報の共有を進める。
「今のところ、東側から俺達に向かってくる鳥はいないようだな」
ハヤトの駆使した天眼では、東側の雲霞鳥達は同じ場所で右往左往し、西への突破をせき止められている様子が確認できた。
ハヤトの言葉を聞き、トーラもロコがいる方角へ視線を向ける。
(ロコはこちらに向かってくる気はない……?)
トーラが見る限り、今のところロコはその場にとどまり、大型を含めた雲霞鳥達との交戦を続けている。
「メイレに関してはこちらから攻撃はしない。それでいいだろう?」
「そうですね。成り行きとはいえ、ヴァーロゥムさん達を助けてくれた訳ですし」
ハヤトは軍神の祝福が導き出した答えに従い、手出しされない限りメイレとは交戦しない旨をトーラに伝えると、トーラも同意する。
そしてハヤトが再び疾風足を駆使し、北側に残る雲霞鳥達へと駆け出した。
トーラも再び体内にエーテルを巡らせ反応速度を向上させると、雲霞鳥達を捕捉していく。
距離を詰めてきたハヤトに対し、雲霞鳥の1体が嘴で突いてきた。
ハヤトは見切り3を駆使して嘴の軌道を瞬時に見定めると、その頭上へと跳躍して躱し、宙でその体を横に傾ける。
「うるぁ! 喰らいやがれ!」
叫びと共に落下しながらハヤトの体が旋回し、竜巻と化したかのような3連撃を雲霞鳥へと撃ちおろす。
二振り一対の双刀と蹴甲が交互に雲霞鳥の身を斬り裂き、穿ち、その命を刈り取った。
絶命した雲霞鳥が地面に倒れこみ、骸と化す中、ハヤトは着地する。
「このまま鳥の撃破に集中します」
敵味方の動向をある程度把握すると、トーラは自身の周囲に大量の小光弾を顕現させ、雲霞鳥達へと解き放つ。
トーラのメテオライト4は、雨のごとく雲霞鳥達へと降り注いでその身を手荒く打ち据え、その生命を削っていく。
先の業風2によって損傷を受けていた雲霞鳥達は、トーラの範囲攻撃に耐え切れずその生命が尽きて倒れ、動かなくなった。
――南側。
ヴィルヘルミナは盾役となってその場にとどまり、ロゼットは援護役として雲霞鳥からヴァーロゥム達を守り抜いていた。
「こちらの戦闘が先に決した場合は、東側にいる雲霞鳥も倒す。それでいいかしら?」
ロゼットは今後のことを見据え、ヴィルヘルミナの意思を確認する。
ヴィルヘルミナはロゼットが攻撃対象にロコを含めていないことに気づいたが、承諾の意を返す。
「その方針に従います。現状では戦力の確保も十分ではなく、ロコへの攻撃は悪手になりかねません」
そしてヴィルヘルミナが一度天眼を駆使して戦場全体を確認し、危険な状態に陥っている味方はいないと分かり、ロゼットにも報せる。
「正面は任せるわ。このまま一気に仕留めるわよ」
「承知しました。敵を防ぎ止めてから反撃に移ります」
ロゼットとヴィルヘルミナは短くやり取りを交わし、まずヴィルヘルミナが竜の外套にエーテルを通し、部分的に硬化させることで雲霞鳥2体の攻撃を受け止める。
その間にロゼットが雲霞鳥の側面へと回り込むと、ダマスカス鋼の祭棍に眩く光輝くエーテルを収束させ、肉薄した雲霞鳥に向け素早く一撃を叩き込む。
ロゼットが攻撃を打ち込んだ瞬間、収束していたエーテルが解放され、爆発的な衝撃力を浴びた雲霞鳥は、大幅に生命を削られる。
そしてヴィルヘルミナも残る雲霞鳥2体を範囲内に捉えると、振り上げた月虹の刀身へと巨大な光塊を纏わせ、強く振り下ろした。
ヴィルヘルミナの一撃は雲霞鳥のみに撃ちおろされ、その威力を叩きつける。
既にロゼットの攻撃で損傷が蓄積していた雲霞鳥は、生命が尽きて倒れ、骸と化す。
残る1体はなおも抵抗したが、ヴィルヘルミナとロゼットに挟撃される形となり、おさえ込まれていた。
●共闘
やがてヴィルヘルミナとロゼットが最後まで抵抗していた雲霞鳥を倒し、ヴァーロゥム達の近くから雲霞鳥達を退けることはできた。
しかし東側では依然としてロコと雲霞鳥達の交戦が続いていたため、冒険者達は次の行動に移る。
「あの大型から先に倒したほうがよさそうだな」
ハヤトは軍神の祝福より最適な行動を導き出すと、東へと駆け出す。
ハヤトが向かう先では、ロコの周囲に斬撃の嵐が荒れ狂い、急降下を仕掛ける雲霞鳥達を切り刻んでいた。
雲霞鳥達が血霧を撒いて落下する中、大型個体は怒ったのか叫喚を発して急降下に移る。
その先にはロコがいた。
ここでハヤトが跳躍し、降下中の大型個体へと横撃をかける。
「割り込ませてもらうぜ」
ハヤトの呟きと共に、双刀と蹴甲がそれぞれ唸りを上げた。
ハヤトの身が宙で回転して竜巻めいた暴風を巻き起こすと、双刀と蹴甲の軌跡が陽光を弾き、交互に大型個体へと撃ち込まれる。
攻撃を受けた大型個体が宙でのけぞり、そのまま落下する。
やがて大型個体は地面に叩きつけられると、その近くへと舞い降りたハヤトは巧みな身のこなしで距離を置く。
その間に先手必勝を駆使したトーラは、続けて疾風足を発動して一瞬加速すると、飛行する雲霞鳥達を射程に捉えていく。
「ここは豪風で確実に当てていきましょう」
周囲を見渡したトーラは、味方(及びロコ)を巻き込まないことを確認すると、雲霞鳥達のただ中へと光輝くエーテルを高速で収束させ――解放した。
宙に強烈な爆発が巻き起こり、周囲にいる雲霞鳥達はまとめて引き裂かれ、地面へと落下していく。
トーラよりやや遅れてその場に到着したロゼットは、一瞬ロコに視線を向ける。
(……彼女とどの程度歩み寄りが可能なのか、知ることができると良いのだけど)
そう考える一方、今は雲霞鳥の排除が先だと意識を引き戻し、先程トーラが叩き落とした雲霞鳥のうち、いまだ息がある個体に狙いを定める。
ロゼットが雲霞鳥へと祭棍を突き出すと、その先端より光の矢を撃ち放ち、そのまま命中させた。
既にロコの攻撃で生命を削られていた雲霞鳥は、ロゼットの一撃に耐え切れずに絶命し、動かなくなる。
「飛行している雲霞鳥は弓で対処して下さい」
そしてヴィルヘルミナは天眼を駆使して残る雲霞鳥や見方の動向を確認すると、ヴァーロゥムや若手戦士達に対し、雲霞鳥への射撃を指示する。
「わかった。本来なら俺達がやることだからな」
ヴァーロゥムは頷きを返すと、仲間の若手戦士達と共に弓を上に向ける。
やがて弓弦が矢を放つ響きに矢羽根の飛翔音がいくつも重なり、頭上を飛ぶ雲霞鳥達へと突き刺さる。
雲霞鳥達は一矢ごとに体を震わせ、そのまま生命が尽きた個体から勢いよく大地に落ちていく。
それを見届けたヴィルヘルミナは、瞬間的な加速によって、東へと駆け抜ける。
――今回の依頼は救出であって、ロコ当人の討伐依頼ではありませんから。
いずれ討伐の機会はあるだろうが、今はその時ではない。
ヴィルヘルミナは自身にそう言い聞かせると、未だ地上で息のある大型個体との距離を詰めていく。
そのまま肉薄したヴィルヘルミナより威力を重視する鋭い一撃と化した月虹が斬り下ろされ、大型個体の身を斜めに斬り裂いた。
既にハヤトの連撃で大幅に生命を削られていた大型個体は、ヴィルヘルミナの一撃によって生命を断たれ、その場に倒れ伏す。
大型個体が討たれたことで何らかの影響があったのか、残る雲霞鳥達がにわかに崩れ出す。
その隙を突く形で、冒険者達はヴァーロゥム達と共に雲霞鳥達を次々に討ち取っていった。
●交渉
雲霞鳥の殲滅を確認した冒険者達は、ロコとの交渉を始める。
「あんたが要求する対価が何か聞いておこうか」
まずハヤトがロコに問いただすと、ロゼットも話に加わる。
「この湿地で魔獣が野生か私有のものかを区別するの困難なことよ」
ロゼットは交渉スキルも駆使して、ヴァーロゥムがロコ配下の魔獣とは知らずに巣を荒らしたことから、一方的な言い値は承諾できないと釘をさす。
「代金というからには、命を寄越せという話じゃないわよね?」
「その場合は、対価を別のものに替えてもらうぜ」
ロゼットやハヤトとしては、ヴァーロゥムが支払うことのできるものが望ましい。
「貴女が言う代金とは金銭の事ですか? それは幾ら位になるのでしょう?」
そしてトーラもロコとの交渉に加わる。
「ヴァーロゥムさんが払えるかにもよりますが、金銭で退いて貰えるなら前回の事もありますし、やむを得ないと思っています」
まずトーラは支払いを拒否する意思はないとロコに告げる。
「テメェのケツはテメェで拭かなきゃな」
支払いについてはハヤトもトーラと同意見なのか、否定はしない。
「場合によっては、若手戦士達の救出の応援ということで、アシムベートさんから報酬が出せないかの交渉も引き受けます」
交渉スキルと駆使しながら、トーラはロコに対してそのような申し出も行う。
「ただし、ヴァーロゥムさんへの報復が対価となる場合は断固拒否します!」
その一方でトーラはヴァーロゥムへの攻撃は認めないと宣告する。
「大酋長様と話ができるなら、そこにいる若者達への手出しはしないと誓いましょう」
そんなトーラに対し、ロコはヴァーロゥムへの攻撃はしないと約束した。
トーラは洞察スキルを駆使して、ロコが嘘をついていないか見定めていたが、嘘はないようだ。
「これは追加の取引になるのだけれど、雲霞鳥の誘引を手伝ってくれないかしら?」
ここでロゼットがロコに対し、新たな取引を持ちかける。
あくまでもヴァーロゥム達ギシュム族や冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスと相談した上での話になるが、協力することでロコが求める代金を増やせないか、交渉する用意はあるとロゼットも言い添える。
(メドゥの指先を辞めるわけにはいかないのかしら……)
ロゼットは無理な話と理解しつつも、ロコがメドゥの指先から抜けることを内心願っていた。
一連のやり取りを、ヴィルヘルミナはヴァーロゥム達の傍で聞いていた。
「話の内容次第では間に入る事もあったかもしれませんが……」
いざというときには、ヴィルヘルミナも介入するつもりだったが、今のところロコから無茶な要求を行う素振りは見られない。
(お金の話ですし、当人で何とかするでしょう)
ここでヴィルヘルミナは、ヴァーロゥム達からの話として、ロコが魔獣を取引材料として提示してきたことを知る。
「魔獣の商売ですか……牛とか馬の取引みたいな感じになるのでしょうか?」
ヴィルヘルミナにはどういう取引になるのか想像しづらいようだ。
そして交渉の結果、ヴァーロゥムとロコ達の取引は以下の形で落ち着いた。
ヴァーロゥム達をギシュム族の集落まで護送し、雲霞鳥達の追撃があれば共同で撃退する。
そしてヴァーロゥム達の安全が確保できた後、一連の代金をロコに支払う。
口頭だが取引内容を確定させた冒険者達は、ヴァーロゥム達を集落まで護送し始める。
「貴女は何の為に、ここに居るのですか?」
最後にトーラはロコに対しディズル大湿地帯へ現れた理由を問いかける。
「残してきた罪を拾うために、ここへ来ました」
ロコはトーラの目を見据え、そう答えていた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜6人
2023年06月26日 11時45分57秒 公開
相談掲示板
シーフのトーラです。 よろしくお願いします! メイレ……ロコ。 代金を払えば帰ってくれるのでしょうか。 しかし、それが幾らか、もしくは何かは明言してませんよね。 ヴァーロゥムさんの命だとか言うのでなければ応じても良いかとは思いますけれど、まずは救出が先ですよね。
冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスだ。 メイレがロコだという情報は、私から聞いたという形でみんなが知っている扱いで問題ない。 今回はよろしくお願いする。
あと1名かしら。ロゼットよ。前日の参加ゴメンなさいね。 とりあえずヴァーロゥムの救出、メイレとの交戦は、 この場では避けるということで良いのかしら。 >代金 「代金」というからには、金銭で良いのかなと。 対価とか、代償と言われたら別の物も想像するけれど。
ギリギリですが、これで成立でしょうか。このまま流してしまうのも勿体ないので。 ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 とりあえずメイレとは共闘という事でよろしいでしょうか。 リザードマンの方々は戦力として数えていいですが、犠牲が出るのはよろしくない感じと。 雲霞鳥は接近戦のみとの事なので、片方を殺界で止めて足並みを乱してみようかと。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 何とか成立したみてーだから張り切っていこうぜ!! メイレの方はとりあえず手出ししねぇで対価が何かを聞いてみるって方針でりょーかいだぜっ! 俺は雲霞鳥を回避盾として引きつけつつヴァーロゥム達に攻撃しに突撃して来た奴等を迎撃するスタイルで動くな! 大型個体が厄介そうならそっちを優先に動くかもしんねーが、その辺は臨機応変ってことでよろしく頼む!!
成立ですね! よろしくお願いします! こちらの人数も少ない上に救出対象を巻き込む可能性もありますし、ロコとは争わないのがいいと思います。 ヴィルヘルミナさんが殺界を使うなら、わたしは魔法で別の群を狙ってみますね。 代金については内容を聞いてみるのがよいでしょうか。 メイレとロコについてもありがとうございます。
成立に尽力してくれて本当にありがとう。 現地ではこちらこそよろしく頼む。