【再起】大モグラの逆襲

馬車猪

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シナリオID:2943

オープニング

 モグラの疾走が大地を揺るがす。
 体長5メートルを越える巨体は魔獣の中でも強力で、鋪装されたばかりの街道が1歩踏み出すごとに砕けて破片が後方へ飛んでいく。
 対するのは同じほどの体格のビヒモーだ。
 臆病で知られるビヒモーにしては根性があり、群れの配下を守るために街道で踏ん張り待ち構える。
 重さと力が入りすぎて街道が壊れていくがビヒモーに気にする余裕はない。
「ちょっ、待っ」
 街道整備を請け負った人間(リット)が狼狽えている。
 攻撃側(土竜魔獣)も防御側(特大ビヒモー)もお互いしか見ていない。
 衝突する。
 振動が毛と皮膚と筋肉と内臓と骨を揺らすが双方一歩も譲らず互いを押し合う。
 なお、両者を載せた地面は砕け街道が切断されてしまっていた。
「何がどうなってやがる!」
「落ち着いてリットちゃん。今戦闘中! 指揮して!」
「……おう」
 帝国代官見習いにしてリット商会代表、最近は道路工事も請け負うようになった元難民(リット)が緑の瞳をぎらりと輝かせる。
「みんなは普通のビヒモーを守れ。おめーは伏兵がいるかどうか調べてから伝令を」
 勘に従い部下を庇う。
 直後に感じた痛みは完全に予想外な下(方向)からだ。
 特大モグラ魔獣と比べれば小さくてもリットより一回り大きな魔獣(モグラ)が、地面から顔を出してリットの靴に噛みついていた。
「地面の下を警戒しろぉっ」
 首を引っ込めようとする魔獣を地面ごと剣で(スキルを使い)叩き切る。
 血と骨と中身の混合物が飛び散り異臭が漂い、その中に別のにおいが加わる。
「多いっ」
 人間サイズの魔獣が次々地面から這い出して来る。
 口から見える牙はリットの剣より鋭そう。
 視力の弱い瞳に宿るのは、道路工事(ビヒモーの地ならし)の揺れに苛まれ棲み分けを諦めた怒りだ。
 人類と魔獣の縄張り争いを、白い鳥がじっと見つめていた。

●
「予言?」
 冒険者ギルドからの連絡を受けたリット(代官見習い)は、非情に強く信頼する冒険者が属するギルドだからこそ困惑する。
「本当に襲われるのか? 今日からは警戒を強めるしこいつら結構強いぜ」
 通常の個体でも体格が良いのがビヒモーなのに、リットが飼っている(をお世話係にしている)ビヒモーは特別体格が良い。
 並程度の魔獣なら警戒して近付かないこともあるくらいだ。
「リットちゃん、警戒にするのはいいけど納期がぎりぎりになりそう」
 リット商会の金庫番であり、帝国代官見習いリットの事実上の頭脳でもある少女(授恵者)が深刻な表情だ。
 土木工事に事業拡大したのはつい最近なので皆不慣れだ。
 道を踏み固めている若いビヒモーが、蝶々に気をとられて明後日の方向へ向かっていく。
 資材を運んでいた年寄りのビヒモーは、強い責任感を持ち急ごうとして護衛(リットの仲間)に宥められている。
 なお、どのビヒモーも大きいので足音というより振動が激しく、これまで人類と棲み分けできていた地下のモグラ魔獣達が急速に苛立ちを強めている。
「冒険者(ねーちゃんやにーちゃん)が来るまで休憩と警戒大目にして、来てから一気に工事をやっちまうか!」
 リットはまだ、魔女オペラの予知夢が必ず的中するということを理解できていない。
 予知夢の後は努力で変えられるかもしれないが、予知夢の光景を阻止するのは不可能なのである。

●
「オペラ様の予知夢って使いにくくありません?」
「あなたいつか失言で失職するわよ」
 受付嬢が先輩に注意されている。
 しかし先輩受付嬢も使いにくさを否定はしない。
「人類に飼われている大柄ビヒモーの群れ、という1点だけで誰が被害にあるかの特定は簡単ですけど」
 帝国で代官見習いをしているリットだ。
 担当地域の統治と何より大柄ビヒモーの群れの高額な食費を稼ぐため、頻繁に出張を繰り返している。
「いつどこで起こるか分からないんですよね。オペラ様が旅したときと様変わりしてますし」
「冒険者にしばらく護衛してもらえば問題ないわ。多少依頼料が高くなっても依頼人の問題よ」
「それもそうですね」
 見習いとはいえ代官で、冒険者に散々世話になり経営指南もされていて、レイウェスト皇子とのコネまであるのに貧乏なのは本人(リット)の問題だ。
「冒険者のみなさーん! 護衛と戦闘の依頼です!」
「オペラ様がモグラ魔獣の襲撃を予知しました。道路工事に従事中のビヒモーの群れを襲うようです」
 襲撃を受けるのは確定している。
 冒険者ができるのは、襲撃を受けてもビヒモーを守り抜き、魔獣を倒すことだ。
「ビヒモーは頑丈ですけど戦闘に向いていません。怯えて動けなくなる子や、逆に暴れて周辺を破壊してしまう子がいそうな感じなので体だけでなく心も守ってあげてください!」
 リットは、とりあえず放置しても大丈夫だと思われる。

解説

●目的  モグラ魔獣の撃破  ビヒモーの群れを守り抜いたり、街道の被害を少なくしたりすると大勢の人に喜ばれます ●場所  広い平野に通っている街道  冒険者の近くには、飼いビヒモーとモグラ魔獣とリットとその部下しかいません ●敵 ・大モグラ魔獣  とても大きなモグラ型魔獣です  戦闘開始時点で、特大ビヒモーとがっぷり四つに組んで押し合いをしています  体格の割に足は遅いですが移動は4あり、知性と回避を除いた能力はどれも高いです  抵抗も強いですが馬鹿なので挑発や囮にはとても引っかかり易いです  甘いものは特に好きなようです ・モグラ魔獣  だいたい成人男性サイズの魔獣です  20体程度いて、リットとビヒモーを執拗に狙います  地上と地下を自由に行き来できますが速度は移動2しかありません  それ以外の能力も低めで、しかし知性は大モグラ魔獣より高く犬程度に賢いです  大モグラ魔獣が倒れるか逃げ去ると、一目散に人里離れた場所へ逃げていきます ●護衛対象 ・特大ビヒモー  とても大きなビヒモー  大モグラ魔獣と死闘を繰り広げています  とても頑丈ですが長期戦になると負けます ・大柄ビヒモー  大きなビヒモー達  最近野生が薄れてきていて、接近してくるモグラ魔獣に怯えて震えています ●冒険者初期位置  戦場のどこにいてもOKです ●他 ・リット  モグラ魔獣複数相手に苦戦しています ・リットの仲間達  大柄ビヒモーを護衛しつつ宥めようとしていますがうまくいっていません  授恵者はほとんどおらず、強さも控えめです

マスターより

 この依頼は、帝国のすみっこで復興を進めていく連作依頼でもあります

リプレイ

●
 大型の魔獣(モグラ)と魔獣じみた家畜(ビヒモー)が真正面からぶつかり合う。
 壮絶な重さに地面は凹み、岩盤すら抉る脚により完成していた街道が土と石へ戻っていく。
「おーおー、派手にやってやがンな。確かにこの喧しさは近所迷惑だわ」
 アーテミシアがにやりと笑う。
「ねーちゃんとにーちゃん達が来てくれたぞー!」
 リット(代官見習い)は小型の(全長2m近い)魔獣を防ぎながら仲間を鼓舞している。
(誰だよアイツを代官見習いにしたの。他人を引っ張れても抑えつけることなんて出来ねえだろうに)
 一匹狼に見えて集団(群れ)の統率に何が必要か心得ているアーテミシアである。
「皆の者~、静まれっ! 静まれっ! 静まれーぃ!」
 このときのアルマ・ヴァレンタインの言動で最も重要なのはスキル(ウェイブ・オブ・インフィニティロア)の使用であり、次に重要なのは剽げた態度で冗談を言えるほど落ち着いた態度を見せたということである。
 強力なエーテル波動が約50秒(10ラウンド)に渡って冒険者とビヒモーの能力を引き上げ、アルマの頼り甲斐のある態度は言葉が通じないビヒモーにも伝わり落ち着かせる。
 アルマの行動はそれだけではない。癒やしの力を持つ光球が手から飛び特大のビヒモーに吸い込まれる。
(相手すごくつよくないー……?)
 バフの直後に使った回復(サイドヒール改)は非常に強力だ。なのに、ビヒモーの巨体は1度では癒やしきれない深刻なダメージを負っていた。
「街道工事というのは中々良い案だと思いますね」
 フリーダ=ブロムヴィストは、自身の助言が起点となって始まった事業(街道整備)を目にして感慨深そうだ。
「とはいえモグラ型魔獣は流石に予想外でしょ。啓示でも『このランダムイベントは結構レアです』との事ですし、その運は別の所で発揮して欲しかったですね……。嘆いていても始まりませんし、眼前の危機に対処しましょうか」
 フリーダは合図は送らない。
 敵(モグラ)に気付かれて対策されると困るし、味方(ビヒモー)なら察してくれると判断しているのだ。
 フリーダの青髪が揺れる。
 体から噴き上がるエーテル光が白銀の盾と鎧を眩しく輝かせる。
(大きいですが)
 敵(モグラ)は巨大だ。
 真正面からぶつかれば良くて通常の半分程度、悪ければぶつかっても相手を動かせないほど重そうだ。
(体勢が崩れているならいけます)
 特大の目玉がぎょろりとフリーダを向くが既に遅い。
 至近の敵(特大ビヒモー)に向けていた注意の量が減り押し込まれてさらに体勢を崩す。
「今です!」
 冒険者と魔獣の衝突は、攻撃を仕掛けた側にも衝撃を与えるが仕掛けられた側の被害は甚大だ。
 本体へのダメージは豊富な生命力で耐えられるが、その巨体と重さを活かすための踏ん張り(地面との接触)が失われる。
 再び地面でふんばれるようになるまで20メートルも吹き飛ばされ、そのときには至近距離までアーテミシアが近付いていた。
(オペラ殿の予言は見えている光景までは概ねは当たる。概ねだから変えてみせるわけだが)
 今回はほぼ100パーセント当たっていた気はするがストレガ・L・リベルガストラのやることは変わらない。
 大目的は知の探求とその継続、身近な目的としては依頼の遂行、つまりこの場合は足止めだ。
「できるだけ派手な戦闘は避けたいところだが、難しいのだ」
 どこまで飛ぶか分からなかったので、モグラの巨体が止まった瞬間に術を使う。
「そこにとどまれ」
 不可視の重力場は重力場(オブジェクト)自体をどうにかしなければ抵抗不能な代物だ。
 重さの割に速い(移動4ある)巨大モグラは、まだ移動はできるが速度が激減する。
「大モグラ魔獣! 貴様を討つ!!」
 重装(INI低め)のため少しだけ到着が遅れたアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが両手剣じみた大きさの刃を振り上げる。
 豊富な実戦経験で磨かれた戦術眼が、敵(モグラ)の評価を一段階上げると同時にモグラが逃走する際使うだろうルートを複数導き出す。
(確実にいく)
 反撃に備えて黒くて大きな盾をしっかりと構え、速度と重さをのせて刃筋を立てたまま脇腹へ叩き込む。
 回避するには技量が違い過ぎ、強靱な皮膚で受け流そうとしても攻防の能力ではアルベルトが上だ。
 斬撃(千鳥雷切斬)の速度と重さが切断する力へ変わり、固さと柔軟さを兼ね備えた皮膚を切り裂き脂肪を掻き分け筋肉にぶつかる。
「一撃で」
 肉を抜いても骨に当たって剣の軌道が逸れる。
 魔獣(モグラ)は怒りで目を光らせながら、アルベルトに痛打を浴びせようとして黒盾に阻まれる。
「終わらなくても!」
 アルベルトは振り落としから振り上げに切り替える。
 その斬撃(鋭撃3)は特別な技(千鳥雷切斬)と比べれば弱いかもしれないがアルベルトの素の能力の高さがあれば破壊力は十分に強力だ。
 今度は骨が折れ、一部の内臓に深い傷が刻まれた。
 モグラは血を流しながらも移動を除いて高速だ。
 攻めるのも守るのも、熟練の冒険者複数相手に負けていない。
「すごく元気なのだ」
 ストレガは新たな術を準備する。
 ストレガほどの術者でも集中が必要なほど高度な、高密度で白い大蛇じみた形になった術(エーテル)がモグラの巨体に巻き付き頭にあたる箇所を巨大な傷口に埋める。
「しばりつけるのだ」
 魔獣の凄まじい抵抗(命への執着)をストレガの付与技術が上回り、移動を完全に封じると同時に命中と回避を激減させた。
「ここで仕掛けてくるかよ」
 アーテミシアが舌打ちしつつ振り返る。
 背後からの頭突き(鼻アタック)を躱せなくなるが籠手(ガントレット)で受け流す。
 曲面装甲を多用した重装甲でも傷は防げないがアーテミシアなら耐えられる。
 放っておけばアルマかシルク・メイプルリーフが治してくれると判断し、アーテミシアは竜骨の戦槌を腕だけでなく全身を使って振り回す。
 戦槌からは光刃が伸びて凶悪な外見となってはいるが敵(魔獣)にとって最も脅威なのはアーテミシア自身の動きだ。
 四肢だけでなく骨格と胴にある筋肉まで使いこなして得物(光刃と槌)を操ることで、本来より強力な威力を発揮させるだけでなく広範囲を同時に攻め立てる。
 巨大な魔獣には打撲痕が生じるだけ。
 しかし少し大きい程度でしかない魔獣達は、一撃で死にはしなくても逃げたくなるほど痛い傷を負う。
 包囲が完成する前なのにアーテミシアから距離をとろうとする魔獣も少なくなく、アーテミシアに届いた反撃はかなり少なかった。
「この程度じゃちっとばかり物足りねえが、メシ前の運動程度にゃ丁度いいかね」
 気合いを入れた(アダマントボディ使用中の)彼女に雑魚からの攻撃はまず効かない。
 不敵に笑って、背後の大型魔獣まで含めてモグラの相手をしていた。

●
「よーしよし、もう大丈夫だ」
 ディレイン・オールドケイジはアクティブなスキルは使っていないし今やっているのも汎用スキル(医療・薬学)というより純粋なふれ合いだ。
 体格だけはディレインを赤子扱いできそうな大柄なビヒモー達が、ディレインに撫でられるたびに落ち着きを取り戻し周囲を見る余裕が復活する。
 リットの仲間達が深く頭を下げる。
 ディレインはちらりと見るが意識は大柄のビヒモーの群れへ集中している。
 アルマが派手にやってくれていたのでやり易くはあったがそれでも結構ぎりぎりだった。
「いつも面倒見てくれてるこの人たちと一緒に、おとなしく待っててくれよ」
 そしてブラッシング用のブラシをリットの仲間の授恵者に渡す。
「こっちが弱気になったらビヒモーたちにも伝わっちゃうから、気張ってよろしくね」
 ディレインも意識して日常の態度を保ってビヒモーもそれ以外も落ち着かせ、役目(ビヒモー係)を引き継ぎを完了させる。
(参ったね。普通のモグラでも厄介なのに魔獣が群れでか)
 戦場(主に地面)に意識を集中させると地上のモグラだけでなく地面の動き(凸部分の移動)まで見えてくる。
 捜索用スキルがなくても倒すだけなら簡単だが、臆病で暴走し易い群れ(ビヒモー)を守りながらとなるとかなりの高難度だ。
 その特大ビヒモーは全身から湯気のような汗を発しながら、太い脚で大地を踏み締めモグラ魔獣をにらみつけている。
「……やっぱり、相棒さん、は、すごい」
 淡々としているので分かりづらいがエルは感動している。
 命を危険に晒して戦うのはとてもすごいことで、その上で仲間を守り抜いたのはもっとすごい。
「皆さん、も、頑張って、ください。絶対、に、守、り、ます、から」
 群れ(ビヒモー)は露骨に安堵し最低限の緊張感まで消えていく。
(……うん)
 守ってあげないと本当に駄目だと頭と心で確信し、エルはビヒモー達から許可をもらってその体を登る。
(アーテミシアさん、倒してる、けど)
 敵の数が多い。
 エルはもともと視力が優れているが、地面すれすれから遠くを見るより高所から見下ろした方がより多くの情報を容易く得られる。
 怪しい場所に集中して捜波(1度に直径約15メートルを調査可能)を飛ばせば、エルの表情が深刻になるほどの数と位置を把握できた。
「よろ、しく」
「りょーかい」
 ディレインは疲れで移動も難しそうな特大ビヒモーを守る形で祈雷を設置する。
「リットくんは元気そうだしねー。あとは適当に迎撃して、大きいモグラが倒れるまでがんばろうか」
 ダマスカス鋼に特殊な加工を施した盾と防具を使いこなすディレインは、並の魔獣相手なら複数を単独で相手取っても互角以上に戦える。
 魔力を帯びた祭刀で切り裂くのがディレインなら、通常サイズの矢を向上兵器級の魔法じみて放つのがエルだ。
 強大な威力はモグラ魔獣の防御を易々貫通して戦闘能力を奪う。
(ウィル、一撃離脱、厳守)
 狼(ペット)はエルと離れて戦闘中だ。
 ただの魔獣(モグラ)では全く追いつけないので、一撃離脱を徹底すれば一方的な攻撃と牽制が可能だった。

●
 敵と己の骨格と筋肉を把握しているだけでは全く足りない。
 全力のエーテルと祈りを込めてようやくそれに手が届く。
 聖女の鯖折り(真・シスターブリーカー)。
 成長を続けるシルクの現時点での到達点であり、形としては抱きつかれたモグラが悶絶する絞め技である。
「ねーちゃんすげー!」
「リット君は念入りにヒールしときましょうね?」
 シルクは反撃が来る前にふわりと後ろへ跳ぶ。
 豊穣の加護を得たしたとしか表現しようのない肢体全体が視界に入り、リットはごくりと生唾を飲み込み普通のモグラ魔獣に足を噛まれた。
「遊んでんじゃねーよ。……コイツら自体はマズそうだな」
 アーテミシアの傷は極少ないが返り血は凄まじい。
 それだけ激しく戦い前線を維持しているのだ。
「もうモグラせないのだ」
 ストレガは冗談で味方の精神をほぐすと同時に苛烈な攻撃を行う。
 本来なら部位狙い機能のない魔弾で前脚を狙えるほどに敵(モグラ)は大きく、そして大きさに正比例して頑丈だ。
「長期戦になりましたからね。援護します!」
 シルクが気合いを入れる。
「生存競争大いに結構、しかし我が神の御加護は人類にあり」
 善良で熟練のシスターという極上フィルターを通しても危なさが感じられる何かの加護っぽいものが押し寄せる。
 怪しげなピンク色のオーラが冒険者とついでにリットを包むが、冒険者には悪影響はないだろうしリットにも直ちには悪影響はない。多分。
 冒険者が追えなくなるほど潜る前に、フリーダはモグラの意識を縛ることになんとか成功する。
「もう少しなのですが」
 装甲(白銀の盾)を巧み活かして巨大な重量を防ぐ。
 相変わらず重い手応えで、しかし敵の余裕は完全に消えていた。
「これに耐えるか」
 通常攻撃が駆けだし冒険者の必殺技以上のアルベルトが何度目になるか分からない斬撃を繰り出す。
 肉と骨が弾けてもまだ巨体は動く。
(ヒールもうないんだけどねー……。なんとかなるかなー……)
 アルマが十字架型の鈍器を振り切った。
(おやー……?)
 それまでは決定的な所に届く前に防がれていたのに最後まで届いた感触がある。
 それから10秒も経たないうちに、思考はもちろん生命維持のための命令も届かなくなった巨体が生きるのを止めた。

●
「ハグでヒールするとお互い癒やされてお得です」
 リットを抱きしめたシルクは満足そうで、抱きしめられたリットは必死に耐えてはいるが顔が赤い。
「さあ、街道の舗装を進めよう」
 哀れな……と思いつつ義兄(アルベルト)が助け船を出す。
 フリーダも、派手に戦った(街道が滅茶苦茶になった)分を放置すると評判的に拙いと判断して協力している。
「皆、で、分ける、と、ちょっとずつ、だけど」
 とても大柄なビヒモー達が野生を取り戻したような俊敏さでエルの前に整列する。
「動物のおやつ、も、どうぞ。ウィル、も、お疲れ様」
 一度もダメージを受けない代わりに延々走り続けていた狼も、エルのもとへ戻り大人しく撫でられている。
「道路工事、リットさんたちの仕事の種類、増えて良かったです」
 エルは素直に喜んでいる。
「道路工事、が、終われば、少し、は、静かに……?」
 魔獣(モグラ)には全滅に等しい被害を与えたとは思うが、再起可能かどうか調べる手段がない。
「交通量、増えたら。やっぱり、ダメ?」
「そうだよねえ。いずれまたモグラが来るかもしれない……この道をずっと授恵者が守るわけにもいかないよねえ……」
 ディレインがエルに相づちを打つ。
「モグラが嫌がる植物とかなかったっけなあ」
 いくつか思い浮かびはするが魔獣に効くほどとなると他に害がでかねない。
「壁を一定の深さの地面に埋め込むのが確実ではあるのだ」
 ストレガは実行のためのコストを計算できるので、防御的手段ではお手上げと言っている。
「たしかモグラさんて嗅覚が敏感……だよね?」
 アルマの疑問に肯定の回答が返ってくる。
「なるほどー……!」
 戦場だった場所を少し離れて、馬鹿馬鹿しいほど大きなモグラが出てきた穴へ移動。
 ロープを使って降下するのは正直危険だとは思うが、アルマほど格(レベル)が高いなら崩落が発生してもつぶれはしないだろうし窒息死する前に掘り出して貰えるだろう。
「中身を投入ぅーっ!!」
 香水というものは微量が適量であり全量投入は嫌がらせを通り越して攻撃だ。
 土地のヌシの死臭に上書きされたにおいは、まだ地面の中に潜む魔獣(小モグラ)に対する強烈な警告になった。
「キミも大変だね」
 ディレインは大柄ビヒモーの長を労う。
 法的には飼い主であり実質は相棒である少年(リット)は、ビヒモーを含む仲間の食い扶持を稼ぐため一生懸命働いている。
「勇ましき者よ、御苦労だったのだ」
 ストレガは大柄ビヒモーの援護に向かわせていたミニビヒモー(フォルゴーレ)を労う。
 怪我はないようだが野生のない連中の面倒を見るのは大変だったようだ。
「……雑食だからか食えないことはないのだ」
 数十分後、火をおこして解体した大モグラを焼いて毒味した結果である。
「皮と骨は有用だからこれを頂いていくのだ」
 ストレガは仕事ができる上に抜け目がないのだ。
「片はついたけどこのまま同じことやってたらまた似たようなことになるぜ? とりあえず手付ける前に下調べして裏取っとけよ。あともう少し戦力増やせ。リスク回避もオメーがやる仕事だ」
「それ難しすぎない?」
「お前が代官だろうが」
 リットはアーテミシアに指摘されて落ち込んでいる。
 そんなリットを放置して回復・伸張していく街道の隅っこには、工事担当者の署名代わりにビヒモーとリットのディフォルメ顔が小さく刻まれていたらしい。

マスターコメント

 お疲れ様でした。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2023年05月01日 16時16分14秒 公開

成功

相談掲示板

  1. No.1

    シスターシルクです。 とりあえずモグラさん達をお片付けしたほうが早いような気もしますね。 ビヒモーさん達はハグでおとなしくなってくれたりしませんか?

  2. ディレイン・オールドケイジ

    ヒーラーのディレイン・オールドケイジ、よろしく。 大モグラを倒せば他のモグラは逃げてくれるっていうし、狙いどころかな。 ただ特大ビヒモーから離さないと、場合によっては巻き添えにする可能性もありそう。 他のビヒモーを宥める手段かあ… おじさんはブラッシングかな。 ブラシ複数持ち込みで、リット君の仲間たちにも手伝ってもらうとか…特に非授恵者だと、魔物の前に出てもらいにくいもんね。

  3. アーテミシア

    ウォリアーのアーテミシアだ 特大は・・・ドラチャリ使えばいいンじゃね? あれダメージ入らねえだろ。 ところでコレ、モグラぶちのめしただけじゃ根本的な解決にならねえンじゃねえの? 場合によっちゃまた湧いて出てくる可能性あるけど

  4. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 とりあえず狙うべきは大型モグラなのは間違いありませんね。 相手はモグラですし、敵を察知する方法を用意しないと奇襲続きで面倒な事になりそうです。 とりあえず大型についてはドラゴンチャリオット等の吹き飛ばしと、 併用して挑発等を仕掛ければ安定するでしょうか?

  5. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 特大ビヒモーさんと大型モグラへの対応案は固まってきそうな感じなので 動物交感で大柄ビヒモーさんをなだめてまわったり リットくんのモグラ叩きの支援にまわろうかなと 汎用は先に挙げた動物交感や地面下のモグラさん察知に看破 もしくは街道整備のアフターケアや始め立てで不慣れっぽい? 土木工事の手ほどきに建築・土木あたりをもっていこうか考え中だよ

  6. リット

    みんなよろしく! 今回はいい感じで終われると思ってたんだけどご覧の通りだよ…

  7. ディレイン・オールドケイジ

    アーテミシアちゃんもフリーダちゃんも、頼もしい限りだねえ。 今回が片付いても、またモグラが来るかもしれない…そりゃそうだ。 モグラが嫌がる植物とかなかったっけなあ。 てことで、造園スキルを持ち込んでみるつもりだよ。

  8. アーテミシア

    ま、とりあえず大型はドラチャリやらなんやらで引っ剥がすのは確定でいいだろ。 あの様子ならアイテムでも良さそうだしな。 大型は2・3人いれば十分だろうし、後は普通タイプの相手とビヒモーの保護だな。

  9. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルトだ。 よろしくな。 重体期間も終わった事だし、また暴れるぜ。 今回は、大型モグラに向かう予定だ。 戦闘が終わったら『土木・建築』で道路工事の支援かな

  10. エル

    エル、です。…シューター、です。 どうぞ、よろしく。 捜波、で、モグラ魔獣の位置、を、把握、できたらいい、と思い、ます。

  11. ストレガ・L・リベルガストラ

    ストレガなのだ。宜しくなのだ。 移動4でも地面にモグラれる前なら足止めできるのだ。私はそっちに行くのだ。

  12. フリーダ=ブロムヴィスト

    >方針 こちらでシーザーロアとドラゴンチャリオットを用意しましたので、 初手に大型モグラをノックバックさせてすぐにシーザーロアを使うことにします。 その後は主に大型モグラを狙う形になります。

  13. アーテミシア

    ンじゃ大型は任せる オレは小型相手にボチボチやっとくか

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0