ワールドプロ拉致リング
革酎
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シナリオID:2884
オープニング
●謎の怪人マスクドメイプルリーフ
とある小都市の、とある下町。
そこには所謂、収容所というものがどっしりと鎮座していた。
軽犯罪で捕縛された者が社会奉仕活動などの短期間労働を課せられる際に、臨時の宿泊所的な感じで利用されるのが専らである。
過日、実家を勘当された元貴族の三男坊がこの収容所に叩き込まれた。
酔っ払い同士の喧嘩で騒ぎを起こし、当事者として捕まってしまったのである。
親の七光りが最早通用しない現在、三男坊は独力でこの収容所から解放されるしかなかった。即ち、自身もきっちり社会奉仕活動に加わって解放権を得なければならないという訳である。
勘当の際には一応、それなりの手切れ金の様な物を実家から渡されている為、財力には当面事欠かない。が、この収容所では保釈金的な制度が扱われていない為、金を積んで出して貰うという手法が使えなかった。そういう事情もあって、三男坊は社会奉仕活動に注力する運びとなったのである。
ところが、妙な噂が立った。
マスクドメイプルリーフなる謎の怪人が、この三男坊を収容所から拉致しようと企てているとの噂が、どこからともなく流れてきた。
実のところ、この収容所では定期的に、マスクドメイプルリーフによるスカウトが行われていた。スカウトといえば聞こえは良いが、要は拉致である。
彼に連れ去られた軽犯罪者は近場の町で更生して、清く正しい人生を送りなおしている姿がたびたび、目撃されている。恐らくマスクドメイプルリーフによる教育の賜物であろう。
そしてこの拉致行為は、この小都市を治める領主公認のもとで行われているらしい。
武器さえ持ち出さなければ身の安全が保証されていることもあり、収容所の看守達も公認の娯楽イベントとして高みの見物に洒落込んでいるのだとか。
領主も最初は驚いたそうだが、収容所自体が常々定員オーバー気味であり、且つ拉致されていった者達がことごとく更生している事実を鑑みて、半ば黙認する格好になっている。この領主の意向を受けて、看守達も見て見ぬふりをするのが最早恒例と化しているとの由。
しかし、ただ一方的に拉致されてしまうのでは収容所としても立場がなくなるので、一応、それなりの用心棒を置いてマスクドメイプルリーフを(形だけ)迎撃することになっていた。
先述した通り、武器さえ使わなければ身の安全は保証される。勿論、多少の怪我程度は覚悟しなければならないのだが、用心棒を買って出るぐらいの者ならば、打撲等はどうってことも無いだろう。
ところがここ最近、マスクドメイプルリーフを相手取って路上プロレスをやれるだけの人材が、やや枯渇気味になっている。このままでは看守達も町の住民達も、このちょっとしたエンターテイメントを継続して楽しむことが出来ない。
誰もが、新たなヒーローの出現を待ち望んでいた。
しかしそんな事情など全く知らない三男坊は本気で拉致の噂を信じ、己の身の安全を守る為、知人を通じて冒険者ギルドに用心棒役の冒険者を雇う依頼を申し入れることにした。
冒険者ギルドの側はマスクドメイプルリーフの日頃の方針をよく理解している為、仲介の際には依頼を引き受ける冒険者に対し、絶対に武器や魔術その他諸々の殺傷攻撃能力は使わぬ様にと口裏を合わせている。勿論三男坊はそんなお約束があることなど、矢張り知らない。
彼はただひたすらに、冒険者達による撃退を期待するばかりであった。
●訪れた魔界の住民
冒険者ギルドに三男坊の依頼を引き受ける男がひとり、早速現れた。
彼の名は、ザ・グレート・ムコ。
妙なニンジャスタイルで、具足には愚零闘婿という刺繍がよく目立つ。顔面は墨で真っ黒に塗りたくられているのだが、右の頬には妻の反転文字、そして左の頬には夫という文字が白塗りで描かれているのが特徴だ。
マスクドメイプルリーフの存在を聞きつけた彼は、故郷であるシャルガネ居住区豪雪地帯の竹之山町から、態々駆けつけてきたらしい。
ザ・グレート・ムコのレスリングは半分ストロングスタイル、半分魔界スタイルというハイブリッドだ。月面宙爆や閃光魔術などの真っ当な技も駆使するが、何よりの武器は毒霧だった。更にラフファイトも得意としているとあって、路上プロレスには最適な人材といえるだろう。
明らかにアウェー感が半端無かったが、しかしここ最近、エンターテイメントにやや飢え気味だった町のひとびとは、ザ・グレート・ムコの来訪を心から歓迎した。
だがザ・グレート・ムコはその挙動が安定しないことでも知られており、下手をすればマスクドメイプルリーフと一緒になって三男坊を拉致する方向に舵を切るかも知れない。
そんな訳で、冒険者ギルドは更に複数名、命知らずの挑戦者を募ることにした。
恐らくではあるが、マスクドメイプルリーフとザ・グレート・ムコふたりの禁断のタッグに、冒険者達が挑みかかる構図になるのではなかろうか。
或いはこのふたりをも交えた路上バトルロイヤルに発展するかも知れない。
いずれにせよ三男坊を巡るワールドプロ拉致リングは、大いなる波乱を予感させるものであった。
とある小都市の、とある下町。
そこには所謂、収容所というものがどっしりと鎮座していた。
軽犯罪で捕縛された者が社会奉仕活動などの短期間労働を課せられる際に、臨時の宿泊所的な感じで利用されるのが専らである。
過日、実家を勘当された元貴族の三男坊がこの収容所に叩き込まれた。
酔っ払い同士の喧嘩で騒ぎを起こし、当事者として捕まってしまったのである。
親の七光りが最早通用しない現在、三男坊は独力でこの収容所から解放されるしかなかった。即ち、自身もきっちり社会奉仕活動に加わって解放権を得なければならないという訳である。
勘当の際には一応、それなりの手切れ金の様な物を実家から渡されている為、財力には当面事欠かない。が、この収容所では保釈金的な制度が扱われていない為、金を積んで出して貰うという手法が使えなかった。そういう事情もあって、三男坊は社会奉仕活動に注力する運びとなったのである。
ところが、妙な噂が立った。
マスクドメイプルリーフなる謎の怪人が、この三男坊を収容所から拉致しようと企てているとの噂が、どこからともなく流れてきた。
実のところ、この収容所では定期的に、マスクドメイプルリーフによるスカウトが行われていた。スカウトといえば聞こえは良いが、要は拉致である。
彼に連れ去られた軽犯罪者は近場の町で更生して、清く正しい人生を送りなおしている姿がたびたび、目撃されている。恐らくマスクドメイプルリーフによる教育の賜物であろう。
そしてこの拉致行為は、この小都市を治める領主公認のもとで行われているらしい。
武器さえ持ち出さなければ身の安全が保証されていることもあり、収容所の看守達も公認の娯楽イベントとして高みの見物に洒落込んでいるのだとか。
領主も最初は驚いたそうだが、収容所自体が常々定員オーバー気味であり、且つ拉致されていった者達がことごとく更生している事実を鑑みて、半ば黙認する格好になっている。この領主の意向を受けて、看守達も見て見ぬふりをするのが最早恒例と化しているとの由。
しかし、ただ一方的に拉致されてしまうのでは収容所としても立場がなくなるので、一応、それなりの用心棒を置いてマスクドメイプルリーフを(形だけ)迎撃することになっていた。
先述した通り、武器さえ使わなければ身の安全は保証される。勿論、多少の怪我程度は覚悟しなければならないのだが、用心棒を買って出るぐらいの者ならば、打撲等はどうってことも無いだろう。
ところがここ最近、マスクドメイプルリーフを相手取って路上プロレスをやれるだけの人材が、やや枯渇気味になっている。このままでは看守達も町の住民達も、このちょっとしたエンターテイメントを継続して楽しむことが出来ない。
誰もが、新たなヒーローの出現を待ち望んでいた。
しかしそんな事情など全く知らない三男坊は本気で拉致の噂を信じ、己の身の安全を守る為、知人を通じて冒険者ギルドに用心棒役の冒険者を雇う依頼を申し入れることにした。
冒険者ギルドの側はマスクドメイプルリーフの日頃の方針をよく理解している為、仲介の際には依頼を引き受ける冒険者に対し、絶対に武器や魔術その他諸々の殺傷攻撃能力は使わぬ様にと口裏を合わせている。勿論三男坊はそんなお約束があることなど、矢張り知らない。
彼はただひたすらに、冒険者達による撃退を期待するばかりであった。
●訪れた魔界の住民
冒険者ギルドに三男坊の依頼を引き受ける男がひとり、早速現れた。
彼の名は、ザ・グレート・ムコ。
妙なニンジャスタイルで、具足には愚零闘婿という刺繍がよく目立つ。顔面は墨で真っ黒に塗りたくられているのだが、右の頬には妻の反転文字、そして左の頬には夫という文字が白塗りで描かれているのが特徴だ。
マスクドメイプルリーフの存在を聞きつけた彼は、故郷であるシャルガネ居住区豪雪地帯の竹之山町から、態々駆けつけてきたらしい。
ザ・グレート・ムコのレスリングは半分ストロングスタイル、半分魔界スタイルというハイブリッドだ。月面宙爆や閃光魔術などの真っ当な技も駆使するが、何よりの武器は毒霧だった。更にラフファイトも得意としているとあって、路上プロレスには最適な人材といえるだろう。
明らかにアウェー感が半端無かったが、しかしここ最近、エンターテイメントにやや飢え気味だった町のひとびとは、ザ・グレート・ムコの来訪を心から歓迎した。
だがザ・グレート・ムコはその挙動が安定しないことでも知られており、下手をすればマスクドメイプルリーフと一緒になって三男坊を拉致する方向に舵を切るかも知れない。
そんな訳で、冒険者ギルドは更に複数名、命知らずの挑戦者を募ることにした。
恐らくではあるが、マスクドメイプルリーフとザ・グレート・ムコふたりの禁断のタッグに、冒険者達が挑みかかる構図になるのではなかろうか。
或いはこのふたりをも交えた路上バトルロイヤルに発展するかも知れない。
いずれにせよ三男坊を巡るワールドプロ拉致リングは、大いなる波乱を予感させるものであった。
解説
状況:
PCの皆様は人的物的被害を出さぬ様に敢えて武器防具を取り外し、攻撃手段となる技能も一切使用不可の状態で、拉致を阻止する用心棒として路上プロレスに参戦して頂きます。
尚、防御系の技能は使用OKです。
拉致は必ずしも阻止する必要はありません。仮に拉致されたとしても、三男坊は後にマスクドメイプルリーフにきっちり更生されますので、約束通りに依頼料は支払ってくれます。
どちらかというと、しっかりプロレスをやり切って住民や看守の皆さんを楽しませてあげて下さい。
NPC:
EXCとしてマスクドメイプルリーフが登場します。NPCは貴族の三男坊とザ・グレート・ムコの他、観客の看守や住民達がモブとして登場することになるでしょう。
マスターより
皆様、こんにちは。
路上プロレスをやれとの天啓を頂きましたので、本ショートシナリオRを担当させて頂きました。
およそ一年とちょっと前に実況中継風プロレスシナリオを公開させて頂きましたが、多分今回も同じ様な形になるかと存じます。
完全に革酎個人の趣味の話になりますが、昭和~平成のプロレスシーンにノスタルジーを感じた皆様にも楽しんで頂ければと存じます。
それでは、もしご縁があればご参加のご検討宜しくお願い致します。
リプレイ
●収容所前の狂騒
和らかに早春の陽射しが降り注ぐ、暖かく穏やかな午後。
大勢の観衆がやんやの喝采を送る石畳の路上に、恐怖で彩られた悲鳴が細々と響き渡った。
頑丈な縄で全身を戒められた貧相な男――元貴族の三男坊が、ふたりの巨漢に引きずられて収容所の正門前へと姿を現したのである。
巨漢のひとりは、鍛え抜かれた筋肉の峰が美しい覆面男。ひと呼んでマスクドメイプルリーフ。
彼が三男坊を引きずり出してきたのは、まぁ分かる。最初からこの貧相な男を拉致するぞと宣言していたのだから。
問題はもうひとり。真紅のニンジャスタイル、愚零闘婿という刺繍入りの具足、そして漆黒の魔界ペイント。三男坊の拉致を阻止する為に雇われた筈の冒険者ザ・グレート・ムコは、どういう訳かマスクドメイプルリーフと一緒になって拉致する側に廻っていた。
元々この男は挙動が安定しておらず、どっちにつくか分からないことでよく知られていたから観衆は別段気にも留めていなかったが、依頼した三男坊からすれば堪ったものではない。
助けてくれと情けない悲鳴を喚き散らし同情を誘おうとするが、ひとびとはただ歓声を送るばかりで誰ひとりとして救いの手を差し伸べようとはしなかった。
最早これまでかと三男坊が絶望に打ちひしがれようとした時、救世主が現れた。
収容所門前の広い大通りに、三つの人影。
ひとりはベルク・オスマット。極寒の北壁から馳せ参じたスピードファイターだ。一応真面目にエンターテイメントを貫く様だが、何やら腹黒い思惑を抱えている様子。油断ならない。
ひとりはク・サーヤ・クッセーワ。フローラルな香り漂うミニマムサイズのマスクドレスラー、フローラル仮面としての入場だ。これまた一癖ありそうなレスラーだが、今はまだ本性をひた隠しにしているだけか。
最後のひとりはアルマ・ヴァレンタイン。何故か濛々と湧き上がるスモーク(念写で投影したらしい)の中からのっそり現れた彼女は棺桶をずりずりと引き摺り、マントとブランケットを重ね着した正体不明の怪奇レスラーといういで立ち。その癖何故か木刀(祭刀を若干アレンジ)をぶら下げている辺り、少々ギミックが迷走気味だ。
「さぁ、かかってくるが良い!」
三男坊を観衆に預けたマスクドメイプルリーフが逆三角形の筋骨隆々な上半身を盛大に披露しつつ、かかってこいとばかりにやや独特な構えのファイティングポーズを取った。
その傍らではムコが、舌を出しながら親指で喉を掻っ切るポーズ。
ゴングは無いがこの瞬間、戦いの火蓋が切って落とされた。
この時、収容場内からマスクドメイプルリーフの動向をこっそり追いかけていたシルク・メイプルリーフは、近くの屋台で購入したフランクフルトをもぐもぐと味わいながら、内心で小首を捻っていた。
(あの構えはもしや我が教会の訓練施設の出身者では)
早速ベルクがマスクドメイプルリーフとの一騎打ちに突入している様子を眺めつつ、シルクは頭の中に幾つもの疑問符を並べている。
(それにあの身のこなし、膂力。神父様に勝るとも劣りませんね)
シルクがよく知っている人物――即ち神父キング=メイプルリーフもまた同様の体格、同様のパワー、同様のテクニックを持つが、しかし彼は覆面を被ることはない、ともシルクは思う。
神父服も着ていないから、きっと別人なのだろう。他人の空似というやつだ。多分。
だがいずれにせよ、相手に廻さなければならない。シルクもまた、三男坊の依頼を受けた冒険者のひとりなのだから。
とはいえ、今はまだ出番ではない。
ベルクがマスクドメイプルリーフとのマッチアップに臨み、フローラル仮面はムコとのキャラ被り対決に挑もうとしている。
そしてアルマは、
「ビッシビシ行くからなー!」
と吠えながら何故か光り輝く六角柱を出現させ、被り物を脱いだり木刀置いたり、更にはプロレスLOVEポーズで水芸キメたりと何やかんややっており、全然違う方向で観衆を楽しませている。
要するに、ちょっと今は入るタイミングが悪い。主役は遅れて登場するとのセオリーもあることだし、もう少し様子を見た方が良さそうだ。
●変則ダブルシングルマッチ
さぁ始まりました、ワールドプロ拉致リングのお時間です。
硬い石畳の路上は今まさに戦いのワンダーランド、ファイティングストリートと化しております。
見守る観衆のボルテージは最高潮、割れんばかりの歓声の中、変則ダブルシングルマッチの火蓋が今まさに、切って落とされました。
冒険者側、先陣を切ったのは手綱を失った暴れ馬、獰猛なる狐ことベルク・オスマット。対するは永遠の不敗神話マスクドメイプルリーフだ。
チョップとキックの連打で攻めるベルク、しかしマスクドメイプルリーフ微動だにしない。
ベルクが打ち込む、マスクドメイプルリーフがぶん投げる。ちぎっては投げ、ちぎっては投げの様相だ。
その隣ではフローラル仮面、香しいリングコスチュームに相応しい空中殺法、ルチャでリブレな華麗なテクニックを披露したかと思えばいきなりの毒霧、これはムコも完全に翻弄されているぞ。そのハイブリッドなファイトスタイルは魔界の権化、ムコ相手に一歩も引かない勢いだ。
先に大技を出したのはフローラル仮面だ、グラウンドの展開からいきなりスメルクラッチ、これはムコ堪らずエスケープ……しようにも、ロープが無い。そう、ここは路上プロレス。四角いジャングルとはまるで様子が違う。
ムコ、苦しそうだがその顔つきは一体何だ。苦しいというよりも、今にもゲロ吐きそうだ。
おぉっとこれはフローラル仮面必殺のスメルテクニックのオンパレード。これは臭い。これはくさい。ムコは今や嘔吐感マックスか。
フローラル仮面はかつて語っておりました。
ひとつ、ひとよりいい匂い。
ふたつ、不埒な悪臭三昧。
みっつ、魅せるぞ最臭奥義。
その悪魔的思想は今尚健在だ。
香りだけで我慢せいと高らかに嗤うフローラル仮面。いやいや、香りだけで十分だ。これは辛い。
更にスメルスペシャル炸裂。これは吊天井固めwithワイルドスメル。技と臭いのコラボレーション、まさにフローラル仮面の真骨頂だ。
おっとベルク、一段と手数を増やしてきたぞ。依頼人の三男坊の目の前で、勇猛果敢にキックの連打、マスクドメイプルリーフを一気に押し込んでいった。
何か叫んでいるぞベルク。その腹の底から響くシャウトに三男坊、希望を見出したか。これなら助かる、解放はもう目の前だ。いいぞベルク、押し切れベルク。今こそ時代が暴れ狐に追いついた。
あっとここで思わぬアクシデント。ベルク、石畳で足を引っかけた。もうあと一発でフィニッシュかというその瞬間。何という不運、何という悲劇。
ここでマスクドメイプルリーフ、必殺の楓落としだ。チョークスラムならぬアイアンクロースラム。ベルクの顔面をがっしと掴み、高く高く持ち上げてからそのまま後頭部を一気に路面へと叩きつけた。
ベルク、ダウン。
ベルク、超絶ダウン。
たった今の今まで希望を見出していた三男坊、まさに天国から地獄、解放の夢が途絶えてしまった。嬉しさで喜び爆発の笑顔がすっかり消えた。今や恐怖の愕然モード。三男坊の心中推し量るに余りある。
ここで、一部の有志がベルクを担架で運び出しいくぞ。
おっとしかし、これはどういう訳だ。ベルク、気絶している筈なのに、何だその悪そうな顔は。物凄く悪そうな顔で満足げに笑っているぞ。
まさかこれは。まさかまさかの、他人の不幸は蜜の味というやつか。
ベルクの故郷、極寒の北壁では『他人の不幸で飯が美味い』ともいわれている、あの言葉か。
よもやベルク、希望を抱いた顔が絶望に叩き落とされて心が折れる様を見たいが為に、マスクドメイプルリーフに挑んだのか。
何という腹黒さ、何という悪辣さ。日頃から、悪人のツラが絶望に染まる瞬間は快感すら覚えると嘯いていたが、今ここでその願望を成し遂げたか。
恐るべしベルク。肉を切らせて骨を断つ。楓落としを喰らって絶望を嗤う。
この女だけは敵に廻すな。世の中にそう強く印象付けた瞬間であります。
●カオスとエロスとワロス
ベルクが退場したところで、やっとアルマの出番だ。
小さな桃色弾丸、大歓声に背中を押されてファイトIN!
ベルクと同じくスピード重視、しかしアルマ、立体戦法でマスクドメイプルリーフを翻弄だ。先程までの接近戦シューティングスタイルへの対応から、いきなりのルチャ、これは反応が難しいぞ。
全身をがっちがちに守りで固めて桃色スイシーダ炸裂、マスクドメイプルリーフもんどりうって客席へ雪崩落ちた。
しかしここは路上プロレス、ファイティングストリート。そもそもリングと客席の垣根はありません。全てが戦場、全てがオーディエンス。そこのけそこのけアルマが通る。
二発目の桃色スイシーダはしかし、受け止められた。流石の膂力、マスクドメイプルリーフ。そのまま小脇に抱えてのDDTでアルマ轟沈か。
いやいや、まだだ。アルマはまだ健在。驚きの硬さ。頑固な汚れもびっくりだ。
おっとここで、更にもうひとりの戦士が現れた。シスターシルクだ。打撃と快楽のエロティカクイーンがここで参戦。
「豊穣神の加護のもと、シスターシルク参ります」
シルクが飛んだ。さっきまで賞味していたフランクフルトを少年に譲り渡し、門柱の上から豪快にダイブ、マスクドメイプルリーフの分厚い胸板に超高角度ドロップキック炸裂だ。
立ち上がった両者、その場で逆水平の応酬だ。お互いの胸元が見る見るうちに赤く染まってゆくぞ。双方一歩も引かない攻防に観衆更にボルテージアップ、大歓声が耳に痛い。
ムコの方はどうだ。こっちはフローラル仮面の悪臭毒霧が空振りに終わったところでムコがパワーボムで反撃だ。ああっとしかしフローラル仮面、ウラカンラナで切り替えしか。いやいや違う、これはスメルケンシュタイナーだ。足裏の強烈な臭いがムコの嗅覚を再三破壊しにかかるぞ。
さぁそのまま体固め、カウントを奪えるか。
駄目だ駄目だ、真下から毒霧が飛んできた。フローラル仮面、これはまともに真正面から浴びてしまった。魔界スタイルをかけた勝負はいよいよ混沌としてきたぞ。
臭きこと、腋臭の如し。
匂うこと、どぶの如く。
鼻つまむこと、肥溜めの如き。
香ること、屁の如し。
まさにこの両者、肉体の交響曲、戦いの輪舞、どこまでもドラマチックスメル。
だがしかし本家は俺だ、この俺様だ。ムコの毒霧三重奏、フローラル仮面は三度続けての被弾だ。
ここでアルマ、対ムコ戦に参戦だ。油断したムコ、シャルガネ・オーシャン・サイクロン・スープレックスに捉えられた。アルマの全身から気合の炎、淡いブルーのファイティングオーラを存分に撒き散らしながら、一気にフィニッシュムーブだ。
さぁカウントが入る。1、2、3。
アルマの勝ちだ。アルマがスリーカウントを奪った。ああっとしかし、ムコはぐるりと一回転してアルマを真正面からとらえた。四発目の毒霧炸裂だ。アルマの視界が潰された。
アルマ、ダウン。アルマ毒霧ダウン。
3カウントなど関係無い。拉致が出来ればそれが勝利。今日のルールは俺が全てだ。ムコまさに、やりたい放題だ。
一方シルク、マスクドメイプルリーフとの逆水平の応酬から、今度はエルボーのガチ連打。意識が飛んできたが、両者笑い声が止まらない。
まさにワロスの殿堂。
シルクの前にシルク無く、シルクの後にシルク無し。
行きは良い良い、帰りはシルク。
マスクドメイプルリーフが通ってきたこの栄光の花道は、引き上げる際は敗者としての惨敗模様かも知れません。
●本日はご来場誠にありがとうございました
シルクは戦いの高揚感の中で、ある疑問を抱いた。
(こちらの攻撃を受ける時……逆に、こちらに一撃を見舞う時……確かにそこに、LOVEを感じます。それに奇しくも、同じ家名ですね……一体、何者)
これ程の素晴らしいファイターは、そう数は多くない筈だ。今まで出会ってこなかったのが奇跡。ここで出会えたのも、また奇跡。
激しく楽しく、気持ち良いプロレス。この出会いを授けてくれた神に感謝せねばなるまい。
シルクはマスクドメイプルリーフに最上の敬意を込めて、スピニングヒップアタックをお見舞いした。マスクドメイプルリーフはこれも正面から受け止め、その衝撃に耐えきれずよろよろと後退した。
ところがその直後、アルマとフローラル仮面を毒霧葬で打ち破ったムコが、最後の獲物だとばかりにシルクにも毒霧を浴びせてきた。
これがムコにとっての自爆行為となった。毒霧に僅かに含まれている酒精が、シルクの中でリミットブレイクを起動させた。
直後、シルクは物凄く愛おしそうな表情でムコの頭を自身の豊満な胸元へと誘い、そのままむぎゅっと力強く抱きしめた。
ムコ、抵抗虚しく窒息。チョークスリーパーをも上回る必殺の巨乳スリーパーが炸裂した瞬間だった。
尚、シルクは酔うと可愛い判定が3000倍程度、ガバくなってしまうハグ魔仕様らしい。そして更にタチの悪いことに、その前後の記憶が無い。罪の意識など欠片も無いから、何度でも同じことをやらかす。
ある意味、最も恐ろしい存在といえるだろう。
ここでマスクドメイプルリーフはゆっくりと立ち上がった。
最早立ち向かってくる者はひとりも居ない。
即ち、本日の興行はこれでお開き。怯える三男坊を引きずって、彼は静かに去っていった。
アルマは己の顔面に残る毒霧を拭ってから、歩き去ってゆくマスクドメイプルリーフの背中に、
「お前、ヒラタだろ!」
と半ばお約束に近しい遠吠えを叩きつけた。
その隣ではフローラル仮面が同じ様に何かステージ挨拶パフォーマンスに興じようとしていたが、急に尻を押さえて慌てて右往左往し始めた。
屁が出そうになっていたらしい。
後日、シルクは改心した三男坊からの依頼料を受け取り、ほくほく顔で教会に帰ってきた。
そこで久々に、キング神父と顔を合わせた。
「あら……神父様、胸元が随分赤く腫れていらっしゃいますね。どうかなさったのですか?」
「あぁこれですか。ははは、いやお恥ずかしい、ただの打ち身です」
シルクは何ひとつ疑うことなく、ふぅんそうですかと相槌を返すばかり。
それっきり、この件はうやむやになった。
和らかに早春の陽射しが降り注ぐ、暖かく穏やかな午後。
大勢の観衆がやんやの喝采を送る石畳の路上に、恐怖で彩られた悲鳴が細々と響き渡った。
頑丈な縄で全身を戒められた貧相な男――元貴族の三男坊が、ふたりの巨漢に引きずられて収容所の正門前へと姿を現したのである。
巨漢のひとりは、鍛え抜かれた筋肉の峰が美しい覆面男。ひと呼んでマスクドメイプルリーフ。
彼が三男坊を引きずり出してきたのは、まぁ分かる。最初からこの貧相な男を拉致するぞと宣言していたのだから。
問題はもうひとり。真紅のニンジャスタイル、愚零闘婿という刺繍入りの具足、そして漆黒の魔界ペイント。三男坊の拉致を阻止する為に雇われた筈の冒険者ザ・グレート・ムコは、どういう訳かマスクドメイプルリーフと一緒になって拉致する側に廻っていた。
元々この男は挙動が安定しておらず、どっちにつくか分からないことでよく知られていたから観衆は別段気にも留めていなかったが、依頼した三男坊からすれば堪ったものではない。
助けてくれと情けない悲鳴を喚き散らし同情を誘おうとするが、ひとびとはただ歓声を送るばかりで誰ひとりとして救いの手を差し伸べようとはしなかった。
最早これまでかと三男坊が絶望に打ちひしがれようとした時、救世主が現れた。
収容所門前の広い大通りに、三つの人影。
ひとりはベルク・オスマット。極寒の北壁から馳せ参じたスピードファイターだ。一応真面目にエンターテイメントを貫く様だが、何やら腹黒い思惑を抱えている様子。油断ならない。
ひとりはク・サーヤ・クッセーワ。フローラルな香り漂うミニマムサイズのマスクドレスラー、フローラル仮面としての入場だ。これまた一癖ありそうなレスラーだが、今はまだ本性をひた隠しにしているだけか。
最後のひとりはアルマ・ヴァレンタイン。何故か濛々と湧き上がるスモーク(念写で投影したらしい)の中からのっそり現れた彼女は棺桶をずりずりと引き摺り、マントとブランケットを重ね着した正体不明の怪奇レスラーといういで立ち。その癖何故か木刀(祭刀を若干アレンジ)をぶら下げている辺り、少々ギミックが迷走気味だ。
「さぁ、かかってくるが良い!」
三男坊を観衆に預けたマスクドメイプルリーフが逆三角形の筋骨隆々な上半身を盛大に披露しつつ、かかってこいとばかりにやや独特な構えのファイティングポーズを取った。
その傍らではムコが、舌を出しながら親指で喉を掻っ切るポーズ。
ゴングは無いがこの瞬間、戦いの火蓋が切って落とされた。
この時、収容場内からマスクドメイプルリーフの動向をこっそり追いかけていたシルク・メイプルリーフは、近くの屋台で購入したフランクフルトをもぐもぐと味わいながら、内心で小首を捻っていた。
(あの構えはもしや我が教会の訓練施設の出身者では)
早速ベルクがマスクドメイプルリーフとの一騎打ちに突入している様子を眺めつつ、シルクは頭の中に幾つもの疑問符を並べている。
(それにあの身のこなし、膂力。神父様に勝るとも劣りませんね)
シルクがよく知っている人物――即ち神父キング=メイプルリーフもまた同様の体格、同様のパワー、同様のテクニックを持つが、しかし彼は覆面を被ることはない、ともシルクは思う。
神父服も着ていないから、きっと別人なのだろう。他人の空似というやつだ。多分。
だがいずれにせよ、相手に廻さなければならない。シルクもまた、三男坊の依頼を受けた冒険者のひとりなのだから。
とはいえ、今はまだ出番ではない。
ベルクがマスクドメイプルリーフとのマッチアップに臨み、フローラル仮面はムコとのキャラ被り対決に挑もうとしている。
そしてアルマは、
「ビッシビシ行くからなー!」
と吠えながら何故か光り輝く六角柱を出現させ、被り物を脱いだり木刀置いたり、更にはプロレスLOVEポーズで水芸キメたりと何やかんややっており、全然違う方向で観衆を楽しませている。
要するに、ちょっと今は入るタイミングが悪い。主役は遅れて登場するとのセオリーもあることだし、もう少し様子を見た方が良さそうだ。
●変則ダブルシングルマッチ
さぁ始まりました、ワールドプロ拉致リングのお時間です。
硬い石畳の路上は今まさに戦いのワンダーランド、ファイティングストリートと化しております。
見守る観衆のボルテージは最高潮、割れんばかりの歓声の中、変則ダブルシングルマッチの火蓋が今まさに、切って落とされました。
冒険者側、先陣を切ったのは手綱を失った暴れ馬、獰猛なる狐ことベルク・オスマット。対するは永遠の不敗神話マスクドメイプルリーフだ。
チョップとキックの連打で攻めるベルク、しかしマスクドメイプルリーフ微動だにしない。
ベルクが打ち込む、マスクドメイプルリーフがぶん投げる。ちぎっては投げ、ちぎっては投げの様相だ。
その隣ではフローラル仮面、香しいリングコスチュームに相応しい空中殺法、ルチャでリブレな華麗なテクニックを披露したかと思えばいきなりの毒霧、これはムコも完全に翻弄されているぞ。そのハイブリッドなファイトスタイルは魔界の権化、ムコ相手に一歩も引かない勢いだ。
先に大技を出したのはフローラル仮面だ、グラウンドの展開からいきなりスメルクラッチ、これはムコ堪らずエスケープ……しようにも、ロープが無い。そう、ここは路上プロレス。四角いジャングルとはまるで様子が違う。
ムコ、苦しそうだがその顔つきは一体何だ。苦しいというよりも、今にもゲロ吐きそうだ。
おぉっとこれはフローラル仮面必殺のスメルテクニックのオンパレード。これは臭い。これはくさい。ムコは今や嘔吐感マックスか。
フローラル仮面はかつて語っておりました。
ひとつ、ひとよりいい匂い。
ふたつ、不埒な悪臭三昧。
みっつ、魅せるぞ最臭奥義。
その悪魔的思想は今尚健在だ。
香りだけで我慢せいと高らかに嗤うフローラル仮面。いやいや、香りだけで十分だ。これは辛い。
更にスメルスペシャル炸裂。これは吊天井固めwithワイルドスメル。技と臭いのコラボレーション、まさにフローラル仮面の真骨頂だ。
おっとベルク、一段と手数を増やしてきたぞ。依頼人の三男坊の目の前で、勇猛果敢にキックの連打、マスクドメイプルリーフを一気に押し込んでいった。
何か叫んでいるぞベルク。その腹の底から響くシャウトに三男坊、希望を見出したか。これなら助かる、解放はもう目の前だ。いいぞベルク、押し切れベルク。今こそ時代が暴れ狐に追いついた。
あっとここで思わぬアクシデント。ベルク、石畳で足を引っかけた。もうあと一発でフィニッシュかというその瞬間。何という不運、何という悲劇。
ここでマスクドメイプルリーフ、必殺の楓落としだ。チョークスラムならぬアイアンクロースラム。ベルクの顔面をがっしと掴み、高く高く持ち上げてからそのまま後頭部を一気に路面へと叩きつけた。
ベルク、ダウン。
ベルク、超絶ダウン。
たった今の今まで希望を見出していた三男坊、まさに天国から地獄、解放の夢が途絶えてしまった。嬉しさで喜び爆発の笑顔がすっかり消えた。今や恐怖の愕然モード。三男坊の心中推し量るに余りある。
ここで、一部の有志がベルクを担架で運び出しいくぞ。
おっとしかし、これはどういう訳だ。ベルク、気絶している筈なのに、何だその悪そうな顔は。物凄く悪そうな顔で満足げに笑っているぞ。
まさかこれは。まさかまさかの、他人の不幸は蜜の味というやつか。
ベルクの故郷、極寒の北壁では『他人の不幸で飯が美味い』ともいわれている、あの言葉か。
よもやベルク、希望を抱いた顔が絶望に叩き落とされて心が折れる様を見たいが為に、マスクドメイプルリーフに挑んだのか。
何という腹黒さ、何という悪辣さ。日頃から、悪人のツラが絶望に染まる瞬間は快感すら覚えると嘯いていたが、今ここでその願望を成し遂げたか。
恐るべしベルク。肉を切らせて骨を断つ。楓落としを喰らって絶望を嗤う。
この女だけは敵に廻すな。世の中にそう強く印象付けた瞬間であります。
●カオスとエロスとワロス
ベルクが退場したところで、やっとアルマの出番だ。
小さな桃色弾丸、大歓声に背中を押されてファイトIN!
ベルクと同じくスピード重視、しかしアルマ、立体戦法でマスクドメイプルリーフを翻弄だ。先程までの接近戦シューティングスタイルへの対応から、いきなりのルチャ、これは反応が難しいぞ。
全身をがっちがちに守りで固めて桃色スイシーダ炸裂、マスクドメイプルリーフもんどりうって客席へ雪崩落ちた。
しかしここは路上プロレス、ファイティングストリート。そもそもリングと客席の垣根はありません。全てが戦場、全てがオーディエンス。そこのけそこのけアルマが通る。
二発目の桃色スイシーダはしかし、受け止められた。流石の膂力、マスクドメイプルリーフ。そのまま小脇に抱えてのDDTでアルマ轟沈か。
いやいや、まだだ。アルマはまだ健在。驚きの硬さ。頑固な汚れもびっくりだ。
おっとここで、更にもうひとりの戦士が現れた。シスターシルクだ。打撃と快楽のエロティカクイーンがここで参戦。
「豊穣神の加護のもと、シスターシルク参ります」
シルクが飛んだ。さっきまで賞味していたフランクフルトを少年に譲り渡し、門柱の上から豪快にダイブ、マスクドメイプルリーフの分厚い胸板に超高角度ドロップキック炸裂だ。
立ち上がった両者、その場で逆水平の応酬だ。お互いの胸元が見る見るうちに赤く染まってゆくぞ。双方一歩も引かない攻防に観衆更にボルテージアップ、大歓声が耳に痛い。
ムコの方はどうだ。こっちはフローラル仮面の悪臭毒霧が空振りに終わったところでムコがパワーボムで反撃だ。ああっとしかしフローラル仮面、ウラカンラナで切り替えしか。いやいや違う、これはスメルケンシュタイナーだ。足裏の強烈な臭いがムコの嗅覚を再三破壊しにかかるぞ。
さぁそのまま体固め、カウントを奪えるか。
駄目だ駄目だ、真下から毒霧が飛んできた。フローラル仮面、これはまともに真正面から浴びてしまった。魔界スタイルをかけた勝負はいよいよ混沌としてきたぞ。
臭きこと、腋臭の如し。
匂うこと、どぶの如く。
鼻つまむこと、肥溜めの如き。
香ること、屁の如し。
まさにこの両者、肉体の交響曲、戦いの輪舞、どこまでもドラマチックスメル。
だがしかし本家は俺だ、この俺様だ。ムコの毒霧三重奏、フローラル仮面は三度続けての被弾だ。
ここでアルマ、対ムコ戦に参戦だ。油断したムコ、シャルガネ・オーシャン・サイクロン・スープレックスに捉えられた。アルマの全身から気合の炎、淡いブルーのファイティングオーラを存分に撒き散らしながら、一気にフィニッシュムーブだ。
さぁカウントが入る。1、2、3。
アルマの勝ちだ。アルマがスリーカウントを奪った。ああっとしかし、ムコはぐるりと一回転してアルマを真正面からとらえた。四発目の毒霧炸裂だ。アルマの視界が潰された。
アルマ、ダウン。アルマ毒霧ダウン。
3カウントなど関係無い。拉致が出来ればそれが勝利。今日のルールは俺が全てだ。ムコまさに、やりたい放題だ。
一方シルク、マスクドメイプルリーフとの逆水平の応酬から、今度はエルボーのガチ連打。意識が飛んできたが、両者笑い声が止まらない。
まさにワロスの殿堂。
シルクの前にシルク無く、シルクの後にシルク無し。
行きは良い良い、帰りはシルク。
マスクドメイプルリーフが通ってきたこの栄光の花道は、引き上げる際は敗者としての惨敗模様かも知れません。
●本日はご来場誠にありがとうございました
シルクは戦いの高揚感の中で、ある疑問を抱いた。
(こちらの攻撃を受ける時……逆に、こちらに一撃を見舞う時……確かにそこに、LOVEを感じます。それに奇しくも、同じ家名ですね……一体、何者)
これ程の素晴らしいファイターは、そう数は多くない筈だ。今まで出会ってこなかったのが奇跡。ここで出会えたのも、また奇跡。
激しく楽しく、気持ち良いプロレス。この出会いを授けてくれた神に感謝せねばなるまい。
シルクはマスクドメイプルリーフに最上の敬意を込めて、スピニングヒップアタックをお見舞いした。マスクドメイプルリーフはこれも正面から受け止め、その衝撃に耐えきれずよろよろと後退した。
ところがその直後、アルマとフローラル仮面を毒霧葬で打ち破ったムコが、最後の獲物だとばかりにシルクにも毒霧を浴びせてきた。
これがムコにとっての自爆行為となった。毒霧に僅かに含まれている酒精が、シルクの中でリミットブレイクを起動させた。
直後、シルクは物凄く愛おしそうな表情でムコの頭を自身の豊満な胸元へと誘い、そのままむぎゅっと力強く抱きしめた。
ムコ、抵抗虚しく窒息。チョークスリーパーをも上回る必殺の巨乳スリーパーが炸裂した瞬間だった。
尚、シルクは酔うと可愛い判定が3000倍程度、ガバくなってしまうハグ魔仕様らしい。そして更にタチの悪いことに、その前後の記憶が無い。罪の意識など欠片も無いから、何度でも同じことをやらかす。
ある意味、最も恐ろしい存在といえるだろう。
ここでマスクドメイプルリーフはゆっくりと立ち上がった。
最早立ち向かってくる者はひとりも居ない。
即ち、本日の興行はこれでお開き。怯える三男坊を引きずって、彼は静かに去っていった。
アルマは己の顔面に残る毒霧を拭ってから、歩き去ってゆくマスクドメイプルリーフの背中に、
「お前、ヒラタだろ!」
と半ばお約束に近しい遠吠えを叩きつけた。
その隣ではフローラル仮面が同じ様に何かステージ挨拶パフォーマンスに興じようとしていたが、急に尻を押さえて慌てて右往左往し始めた。
屁が出そうになっていたらしい。
後日、シルクは改心した三男坊からの依頼料を受け取り、ほくほく顔で教会に帰ってきた。
そこで久々に、キング神父と顔を合わせた。
「あら……神父様、胸元が随分赤く腫れていらっしゃいますね。どうかなさったのですか?」
「あぁこれですか。ははは、いやお恥ずかしい、ただの打ち身です」
シルクは何ひとつ疑うことなく、ふぅんそうですかと相槌を返すばかり。
それっきり、この件はうやむやになった。
マスターコメント
皆様、LOVEでした。
ショートシナリオR易しい 報酬:標準4 / 4〜8人
2023年03月26日 18時00分50秒 公開
大成功
参加者
- メイプルリーフ シルク
ベルク・オスマット
アルマ・ヴァレンタイン
ク・サーヤ・クッセーワ
相談掲示板
No.1
マスクドメイプルリーフ 何者かは知りませんが迎えうたせていただこうではありませんか(なにがあってもシルクが正体に気づくことはありません)
ふふふ、サーヤである。 わがスメルクラッチをお見せしようではないか。(キャメルクラッチ的ななにか
面白そうな依頼だったのでお邪魔してみたアルマだよ、どーぞよろしくねー 飛んだり跳ねたりのルチャドーラすたいるで頑張る予定だよ
ベルクだ、楽しそうなのでお邪魔した。 とりあえず依頼人に夢ぐらいは見せてやろうと思うので頑張って一瞬だけ上回ってみようと思う。 希望が出た後の絶望程心折れるものは無いからなぁ(邪笑)