【恨源】その凶刃は何を斬るためなのか?
広大野人
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シナリオID:2802
オープニング
地下室なのか窓がないのか、周囲から断絶された石造りの部屋の中、幾人かの男達がなにやら話し合っていた。
「ほう……それでは、奴等を誘き出す事ができたのか」
「例の王国騎士がこの街に滞在しているという情報を掴めたようです。今後の予定もリークしてあります」
メドゥの指先『黄の中指』ジード・ランスウッドが率いた組織は壊滅しているが、残党の全てが捕らえられた訳ではない。一部が身を潜め、復讐の機会を待っていたのだ。
「奴等の必死さといえば、もう笑えるぐらいですね。本気で王国騎士を暗殺するつもりのようです」
「殺意だけで倒せれば苦労しないがな、勝算があるのか? かなりの強者なのだろう」
「それについては、何か手段があるようです。詳しくは分かりませんが……」
もっとも、残党が何をしようが知った事ではない。
王国騎士の暗殺に成功しても失敗しても、組織の残党がこの街にいたという事。それを排除できれば、一連の調査は終了の目途は立つだろうから。
冒険者共が余計な事まで調べているようで目障りだったが、時間の問題だ。要はバレなければいいのだから。
「……あ、いや……、万が一でも王国騎士が死ねば、やはり、好都合だな」
「トレゾルの事ですか?」
男はその質問にニヤリと笑いながら頷いた。
「勿論だ」
「まさか……本物だったとは……驚きです」
「私が一番驚いたよ。生きていようとは思いもしなかったからな……だが、本人は知らないだろう」
トレゾルという名の手札をどう扱うかは今後の課題だろう。
差し当って急務ではないのだ。
そこに扉を叩く音が響いた。外の見張りからの報告だ。
例の王国騎士が到着したという知らせを持って来たのだった。
●
領主館での定期報告を終えて、王国騎士エナハルト・ティルムは宿へと帰っていた。
思った以上に滞在が長くなってしまい、街中の灯りも少なくなってしまっている。
(……)
警戒しながら歩くエナハルトの脳裏では、屋敷での不可思議な出来事が蘇っていた。
いつもは報告後、すぐに帰れるのだが、今回は夕食が用意されていた上に、酒も振舞われた。領主はエナハルトの世間話を上機嫌な様子で聞き、一つの話題が終わると、筆頭執事が新たな質問をする――そして、注がれた酒瓶の中身は……なんと、ただの水だった。
最初は給仕のミスと思ったが、それぞれ別々に酒瓶が出されている事に意味があるのではないかと読み取り、適当に酔った振りをしてやった。
結局、領主からの気遣いを断って、エナハルトは自分の足で帰る事にした訳だが……。
大通りから伸びる路地の一つで、人の気配を感じた。
(さて、鬼が出るか蛇が出るか)
誘われているだろう……しかし、逆を言えば絶好のチャンスとも言え、エナハルトは迷わず路地へと踏み込むのであった。
その少し前、『青い星』亭の看板娘であるレサタは仕事が遅くなってしまった為、近道となる路地を足早に抜けていた。
治安が良いと言っても夜中に女性一人は流石に危険……なのだが、レサタにとっては夜中の帰宅は珍しい事ではないし、なにより普段から守られているという事実があった。
跳ねるように走っていると、見慣れない一団の姿が見え、反射的に隠れる。
(武装した集団の余所者……? でも、そんな話、聞いてないけど)
首を傾げていると、一団の会話が聞こえてきた。
「そろそろか?」
「あぁ、たっぷりと酒を飲んで酔っ払っているだろうよ」
「俺達は惨めな生活をしているのに、あの王国騎士め」
その台詞にレサタは驚きの声を挙げてしまう。
すぐに反対方向へ逃げようとしたが、不幸な事にそっちからも一団の仲間らしき人物が迫っていた。
「聞かれたぞ! その女も殺すしかないな」
「顔を見られた以上は……仕方ないな」
「こんな夜中に出歩いているからだよ、お嬢ちゃん」
妙に冷静な、まるで凍てついたような表情で一団は近づいて来る。
その内の一人が、スラリと音を立てて剣を抜いた。
「あ……い、いや……私……」
迫る剣に恐怖で声が出ない。
振り下ろされる凶刃は――だが、別方向から突然飛んできた剣によって弾かれる。
「失礼っ!」
爽やかな青年の声と共にレサタは抱えられる。
そのまま一団から逃げるように別の路地へと駆けた。
あまりの速さに一団は驚いたものの、すぐに標的だと分かり、殺気立った表情で追いかけてくる。
驚いているのはレサタも同様だった。凶刃から助けてくれた人はびっくりするほどのイケメンだったのだから。
惚れ惚れはしないけれど、心臓に悪いのは間違いない。
「え、と……」
「詳しい事は後で聞くから」
「そ、そうじゃなくて……この先、行き止まりです」
と発した言葉は既に遅かった。
周囲を家の壁に囲まれている。窓はしっかりとうち止めてあって容易に入れそうにない。
「まだだ! 僕の肩に乗って!」
「えぇぇぇ!?」
もたもたしている暇はない。言われるがままにイケメンの肩に乗ると、その足を支えられながら、高く飛び上がった。
「とん――」
「とどけ!」
レサタは辛うじて屋根の縁にしがみつく。
それを見届けて、エナハルトは地面に華麗に降り立った。授恵者だからできる芸当だろう。
「ここは僕に任せて、衛兵の詰所に行くんだ!」
「は、はいっ!」
助けてくれたイケメンを置いていくのは心苦しいが、残っていても邪魔になるだけだと、理解しているレサタは短く返事をして屋根を登っていった。
●
若い女性の姿が見えなくなった所で、追いかけて来た一団に対峙するエナハルト。
かなりの速さで逃げていたはずだが逃げ切れなかった所を見るに、奴等は授恵者なのだろう。ここに来て、先程、剣を投げてしまった事が悔やまれる。
「女性に血生臭い所は見せたくないからね。君達には素手で十分だよ」
「言ってろ……ここがお前の墓場だ!」
一団の一人が進み出ると手に錠剤のようなものを持っていた。
月明りの中、それはハッキリと見えなかったが、エナハルトは直感的にそれが何か理解した。
「まさか……『瞳』!? 全て、失われた訳じゃなかったのか……」
「俺達は別動隊だったからな。これで『瞳』は最後だが、不足はねぇだろ!」
身構えるエナハルト。
組織が生み出した『神実の瞳』。服用者に変異をもたらすと同時に授恵者の力を増大させる劇薬だ。それを大量に飲んだ組織の幹部は異形の姿に変貌し、猛威を振るった。
各自一粒ずつといえども、丸腰のエナハルトにとっては脅威だ。
「「「ガアァ!!」」」
「本気という事か……だけど、僕は死ぬ訳にはいかないんでね」
狂ったように叫ぶ一団に対し、エナハルトは拳を構えるのであった。
解説
マスターより
リプレイ
その『切っ掛け』が思いもしない形になったのは偶然か必然か。
定時報告を待っていたが戻りの遅いエナハルトに対し、エリザ・A・ミシャールは『青い星』亭に赴き、レサタと一緒に仕事をしていた。
「時間が遅くなったのはちょっと心配だね」
住み慣れた街と言っても、夜更けに娘が一人で帰宅するのだ……授恵者としての能力を活かしながら距離を取って尾行する。
「アタシが授恵者だってのは、バレない方がいいかね」
変装を解き始めた所で、不幸にもレサタを見失った。
一般人とは思えない速度で移動したからだ。急いで元の姿に戻った上で、異変のあった場所に到着すると、落ちているのは一振りの剣。
「この剣は……」
王国騎士エナハルト・ティルムの剣だ。ただ、周囲に彼の姿は既に見えない。エリザはレサタの姿を求め、路地の奥に向かって駆け出すのであった。
一方、キオルティスとシルヴィア・A・カペルの二人は、エナハルトが宿に戻って来ない事を不思議に思い、他の冒険者と同様、街へ繰り出し、変わった事がないか確認して回っていた。
エリザに対して情報共有する手段が無かったものの、暗視と超聴覚を頼りに『青い星』亭と領主館への道を考慮しつつ、警戒した事が功を期した。
シルヴィアが不審な多数の足音を感知した方角をキオルティスに伝え、彼はそこに向かって全速力で駆け出す。
幾つもの路地の角を抜けた所で、飛び出してきた女性と出逢い頭にぶつかりそうになり、見事なステップを踏み、バランスを崩して転倒しそうになった彼女の身体を支えるキオルティス。
「おや。レディ、美しい貴女に憂い顔は似合わないね」
「え、えと……」
突然の事に驚きを隠せないレサタ。今晩二人目のイケメンの登場に困惑しているようだ。
閃光塗弾の合図を確認し、シルヴィアが現地に到着するのと追手が現れるのは同時だった。
「酔っ払いではないね。彼女に何の恨みがあるんだい?」
「冒険者か!? 飲むぞ!」
シルヴィアの質問には答えず、4人の内の3人が小瓶のような物を取り出すと素早く呷る。
「ジード様からの命令?」
驚きつつもシルヴィアの鎌掛けは、まだ服用していない一人の注意を引いた。
「エナハルトとその一味はゾンバルダ様の仇だ!」
その返答にぐっと手に力を入れるシルヴィア。その名をまた聞くとは思いもしなかったからだ。
「そう……それは不幸中の幸い、だよ」
「なんだって?」
意味を理解できなかったその下っ端は、手に持っている小瓶の中身を飲む事もなく、奇襲の形で割って入ったエリザによって一撃で落とされる。
(出遅れたかと思ったが、逆に丁度良いタイミングだったか)
拾ったエナハルトの剣を偶然にも出会った他の冒険者に託していたからだ。
残った敵3人は唸り声を発して迫ってきた。もはや、正常な判断がつかず、戦っても勝てないと分からないらしい。
「あのさ、しつこい男は嫌われるよ?」
不敵な笑みを浮かべ、キオルティスは細剣を向けて挑発するように揺らした。
それが効いたかどうか不明だが、対峙する一人が拳を繰り出しながら迫る。威力は十分だが単調すぎる動きにキオルティスは表情を崩さず、僅かに上体を傾けた。
虚しく宙を過ぎる腕をそぎ切りつつ、肩口を貫き、身体を捻るように回転し首元へと短剣を突き刺す。
「思った以上にあっけないものなんだ」
口から血の泡を噴き出しながら崩れ落ちる敵。
幾ら身体能力が向上すると言っても、それなりに経験を積んだ冒険者が苦戦するはずもない。
手応えの無さ……というよりも、冒険者達が成長した証ともいえようか。
ただ突進してくるだけの敵をエリザは余裕で避けると、長杖をくるりと回しつつエーテルを注ぐ。
「攻撃一辺倒な所も、変わらないな」
容赦なく攻撃魔法を放つ。
範囲内に存在するもう1体と共に、次々に着弾した無数の光弾が敵を完膚なきまで叩いていく。
レサタにいつでも支援魔法を行使できるように、かつ、戦いの経過を観察していたシルヴィアは、わざわざ魔霞を掛けるまでもないと判断し、眩いエーテルを纏わせた扇を振って舞う。
「この程度が妥当という所だね」
青い光が消えては散り、幾重にも軌跡を描くと、次の瞬間、無数のエーテルが敵に襲い掛かる。
先ほどのエリザが放った分も合わせれば、打ち倒すのには十分過ぎる程だった。
『力』を使う間もなく倒された一人のみはまだ息があったので、素早く縄で拘束。
「ほら、起きなよ」
キオルティスがペシペシと頬を叩き、拘束した下っ端を覚まさせた。
下っ端は唸り声を発しながら起きると状況を理解したようだ。グッと口を固く結ぶが、それは僅かな間。エリザが長杖を首元へ強引に押し当てる。
「さて、エナハルトを仇と言ったが、どこで情報を得た?」
「ま、待っ……。お、俺らは……上の連中の、言う事に……従って……」
所詮は下っ端。すぐに口を割ったが、その内容は薄っぺらいものだった。
ゾンバルダの元部下の授恵者達と共に、エナハルトが滞在しているという情報を聞いてやって来たという。ただ、情報の出どころは聞かされていないみたいだ。
「神実の力と共に、後で突き出すようだね」
尋問の様子を眺めていたキオルティスの言葉にエリザは頷く。
周囲には他に監視の目は無いようだった。後は……と気が付かれないように視界の隅でレサタの姿を収めた。彼女にはシルヴィアが声を掛けていたからだ。
「無事で良かったよ。君は巻き込まれただけで、元々この男達に狙われていた訳では無いんだね?」
「はい。誰かを待ち伏せしていた所に遭遇してしまったようで……あ! 私を助けてくれた人が、きっとその人です。私を逃す為にあの御方は……」
「それは大丈夫。私達の仲間が駆け付けているはずだから」
シルヴィアの台詞にレサタはホッとしたようだった。そこに、キオルティスが質問を投げかける。
「キミはこんな時間に外出して大丈夫なのかい?」
「あんまり……大丈夫ではないのですが、一応……慣れてはいるので」
そうは言ったが一瞬、目が泳ぐのをキオルティスは見逃さなかったのであった。
●
予定時刻を過ぎても帰って来る気配どころか連絡すらもないエナハルト。
その身に何かあったのではないかと思い至るのは当然の事。と言っても広い街中を探すのは大抵の事ではない。
落ちていたという剣をエリザから受け取ったミア=リゼルはルベア・ベルニとセリオス・オーガストの二人を交互に見て深く頷く。
「……大丈夫です。私達でエナを迎えに行きましょう」
「分かってるわ」
ミアの細い肩に手を置いてルベアは告げると路地を駆け出した。
その後ろを追いかけるようにセリオスが耳に手を当てながら話す。
「微かに……戦いの音が聞こえる。南西の方角だ」
路地が入り組んでおり、探索は骨が折れたが、冒険者達にとって幸運だったのは静まった夜中であって、超聴覚が役に立った事と人の通りが少なくて走りやすかったという事だろう。
やがて、路地の奥の奥。
騒ぎがミアやルベアにも聞こえるような近さになった時、セリオスが炸光矢を放った。狙って撃ったものではない。注意を引き、牽制する為だ。
「そろそろ近くにいるはずだ」
セリオスからの指示に応え、先頭を行くルベアが強引に壁を登り、屋根に上がると、袋小路に4人ばかりの何者かが見えた。
『瞳』による異形を認めると、ルベアは屋根の縁から衝撃波を放ちつつ、エーテルの軌跡を残して飛び降りる。
そうして、エナハルトの真横に並んだ。
「『瞳』がまだ残ってたなんてね……私たちの分まで恨まれちゃって、アナタには、少し同情するわ」
「残党が何処かに存在する事は分かっていましたからね。予定とは異なりますが、探す手間が省けたというものです」
いつもながら爽やかな笑みを向けて応えるエナハルト。
彼の故郷に移したジードらの墓の情報をリークさせて残党を誘き出すつもりだったのだ。
「……まぁ、王国騎士の覚悟は良いけど、ミアさんを心配させないで」
「そこは反省するよ」
冒険者達が駆け付けるのがもう少し遅かったら致命的なダメージを受けていた可能性もあったが、ルベアの加勢で集中攻撃を受ける必要がなくなり、少しは余裕が出て来たようだ。
路地の角を曲がり、射程内に敵の姿を認めた所でセリオスが短弓にエーテルを流し込みつつ、矢を番える。
「まずは数を減らすか」
袋小路を塞ぐように立つ敵を倒さないと飛び越える手段を持たないセリオスとミアは合流できないからだ……いや、このまま挟み撃ちというのも手か。
「援護する。リゼルはそのまま前に」
最後尾となった仲間に振り返らずに声を掛けるとセリオスは強力な一撃を放った。
それは並みの人間なら即死する威力はあるのだが……『瞳』を服用した敵の腕を吹き飛ばすだけに留まった。異形に成り経てしまった為か、怯みもしないのは厄介だ。
ただ、十分な隙は生じた。
ミアが開いたスペースに向かって全力で走る。
「私はミア=リゼル! あなた方の仇敵です!」
異形の彼らにとってその言葉の意味を理解したかどうかは兎も角、注意が向いたのは確かだ。エーテルを込めた一撃を、先程、片腕を失った異形に叩きつけた。
「大通りに逃げられる心配は……なさそうですね」
「このまま一気に押し切った方が良さそうかな」
身軽な動作で異形の側面に回り短剣でそぎ落とすように切り裂くルベア。
傷口からまとわりつくようなエーテルがぶわっと広がった。回避行動を阻害させる効果を持つそれを見て、セリオスは次の目標と定めて素早く矢を引く。
「攻撃を集中させて各個に撃破するぞ」
「合わせます」
ミアがエーテルを解放しつつ、再びエーテルを打ち込む。
結局、冒険者達の連携攻撃によって異形は1体ずつ確実に葬られていくのであった。
●
打ち倒した異形は全て塵となって消滅。
ミアから癒しの魔法と剣を受け取ったエナハルトは視線を袋小路の出口を見つめた。
周囲を警戒していたセリオスが戻って来たのだ。その表情を見るに、他に伏兵や監視の目は無さそうだ。
「キオルティスが騒ぎに巻き込まれた女性を一先ず、安全な所に連れていったようだ」
淡々と告げるセリオスの後ろには、シルヴィアとエリザの姿が続いた。微かに残る戦いの後の様子に二人は言う。
「組織の残党を討伐した事は領主側にも伝わるだろうね」
「ここも程なく、衛兵が駆けつけるだろう」
そして、女性を追っていたのが『力』を隠し持っていた組織の残党である事と尋問から得られた情報を皆に伝える。
それを聞いて、ルベアがエナハルトに訊ねた。
「『神実』が関わっている以上、ただ偶然、絡まれたってわけじゃあないわよね?」
組織の残党がこの王国騎士を執拗に狙うのは分かる。
問題は、用意周到過ぎるのだ。待ち伏せされていたとしか思えない。騒ぎに巻き込まれた女性は不幸というべきだが、そのおかげで残党の連携が乱れたのは、エナハルトにとっては思わぬ幸運だったかもしれないが。
「一刻も早く、この街から出て行って貰いたい人がいるようかな」
命を危険があった割りには、変わらない爽やかな表情で応えるエナハルトにルベアは苦笑を浮かべる。
「その心当たりもあるんじゃないの?」
「あるとすれば領主館の誰か……という事になるけど……」
そう前置きしながらエナハルトは領主館であった予定に無い晩餐への誘いと酒瓶の中の水という不思議な出来事を伝えた。
ミアが首を傾げる。
「領主はこの襲撃を予測していたのでしょうか?」
「どうだろうか。一応、気を遣われた事は違いないけど」
「組織の残党が居たとなれば、それを理由に調査の継続を願い出ましょう」
王国騎士を暗殺しようとしたのだ。今回の襲撃で残党が全員とは限らない。
しかし、領地内の治安は本来、その領主の責任のものだ。領主からすれば面子の為にも王国騎士には早々に引き上げて貰いたいはず……。
ただ、ミアの言う通り、言わないよりかは言った方が良いのは違いない。
「冒険者からの助言という形でその旨、領主には伝えようかと思います」
率直に言ったエナハルトに対し、シルヴィアが確認するように言った。
「晩餐で酒ではなくて水が出たというのは、作為的なものかい?」
「僕はそう感じたよ」
「だとしたら、襲撃がある事を知っていて守ろうとしたのかな」
角が立たないように調査を終わらせる締めとして、エナハルトに襲撃を返り討ちさせたかったのではないかと推測したが、むしろ、状況を整理すると領主館の誰かが彼を手助けした形に想えた。
エリザは長杖を壁に立てかけつつ、騒ぎに巻き込まれた女性が衛兵の詰所ではなく、領主館へと向かった事を思い出していた。
「保護した女性は領主館に頼れる人がいるようだが、エナハルトを守ろうとした人物もいるというのは偶然とは思えないな」
集まった情報と推測にセリオスが唸る。
「つまり、領主館の誰かが組織の残党に情報を流し、今回の襲撃のお膳立てをしたが、それに対抗する者が別にいたという事か」
不可思議な点は、これまでの調査で家臣団内の派閥は確認されていない事だ。
思案するように口元に手を当てていたルベアが改めてエナハルトに言った。
「それこそ、その人物に心当たりがあるんじゃないの?」
「そうだね。僕の事を知っていて、この地に誘った人物が」
即答したエナハルトに続いて、ミアが少し自信少な目に言葉を口にする。
「……匿名の手紙を持って来た人、ですか……」
わざわざ王国騎士を指名して手紙を出してくる人物だ。今回の襲撃に至る事も考慮していた可能性は高い。
「その人物と接触したい所だよね」
シルヴィアが領主館の方角をみつめるのであった。
●
レサタという人物は保護先に衛兵の詰所ではなく、領主館をお願いしてきた。
なんでも頼れる知り合いがいるらしい……話しぶりから彼女は一市民ではあるようだが、夜中に領主館に訪れても追い返されない理由を、キオルティスは領主館に到着してから理解できた。
事件に巻き込まれていた女性を保護した事を警備の者に説明した所、裏口から血相を変えて飛び出してきた人物は緑髪赤眼の品の良さそうな青年だった。
一目、レサタの無事な姿を見て安堵しつつ、しっかりと彼女を抱き締める。
「良かった……。よく無事だったね」
「冒険者に助けて貰ったから」
青年はキオルティスに視線を向けると、畏まって丁寧にお辞儀をした。
「ありがとうございます。実は……彼女は僕の婚約者なのです」
まだ認められてないけれど……と小さく続けながらそう話す。
なるほど、血相を変えるだけの理由はある訳だ。口調や態度から、青年が嘘を言っていない事はすぐに分かったから。
「申し遅れました。僕はプラザ・ゼィパムと言います。筆頭執事であるオーキサ・ゼィパムの息子です」
その青年はキオルティスにそう名乗るのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2023年03月05日 13時28分20秒 公開
相談掲示板
さて、と。今回もよろしく頼むよ。 エナハルトも気になるが、話の流れとしては『レサタの保護』に回りたい。 もちろん、分担や状況次第で別のところを担当するのもやぶさかではないよ。 『エナハルトへの加勢』も、2人か3人は必要だろうからね。
おはようございます、ご挨拶が遅れましたっヒーラーのミア=リゼルです。よろしくお願いします。 そうですね、では私はエナハルトさんの元へ。取り急ぎそちらのみ表明させていただきますね…!
シーフのキオルティス。今回も宜しくね。 俺はレサタさんの方に行こうかな。 特に固執しているワケではないから、もしも担当が変わっても構わない。 2人共、無事に救出出来るよう、尽くすつもりだよ。
シーフのルベアよ、宜しく。 私は出来ればエナハルトへの加勢に向かいたい、かな。 バランス次第だけど。 ひとまずそれだけ。
シルヴィアだ。今回もよろしくね。 ヒーラーは別々の班に行った方が良さそうだ。私はレサタの方へ行こう。同班のエリザとキオはよろしく頼むよ。 レサタを追いかけている非授者四人はまだ『神実の力』を使用していないようだから、使用前に一人だけでも動きを封じられたら良いのだけれど……一般人を装って不意打ちしてみようかな。ちょっと考えてみるね。 スキルはレサタ保護用の光縛封とスケープセイント、回復スキルを持っていく予定だ。特性スキルは変更するかもしれない。
・・・ん、最後か。シューターのセリオスだ、よろしく頼む。 基本的にはエナハルトの生存とレサタの保護とあるから 今回はそちらを優先でいいと思うので俺もエナハルトの加勢に回るとする。 エナハルト:ルベア、ミア、セリオス レサタ:シルヴィア、キオルティス、エリザ
同じレサタさん保護班のエリザさん、シルヴィさんは宜しくね。 とりあえず俺は足が速いの活かしてなるべく早くレサタさんの許へ 到達した方が良いかな…と思っているけど、大丈夫かな? 全員同時に到着した方が良ければ、また違った対応なんかを 考えるけれど、何か希望があれば…。 それにしても…まずはどうやってレサタさんやエナハルトさんの 居場所を見つけるか…だよね。 此処は共通しているし、皆で考えても良いかな、と。 俺だと双波くらい…かな。ホライゾナルジャンプで高い所から 四方を見てみるのも良いかもだけれど、現実的じゃないか。 全方位を調べるには時間が掛かり過ぎるし。 うーん。 それとも立ち会った所からのスタート、なのかな…。
>レタサの保護 レタサの安全確保が第一だし、キオが急いでレタサの元へ向かってくれるなら助かるよ。是非お願いしたい。 私は不意打ちは止めて賊の捕縛に集中しよう。 >レタサとエナハルトの居場所の確認 今回は立ち合ったところからのスタートかもしれないから悩ましいけど、念のため捜索プレも書いておきたいな。 エナハルトが集合時刻に宿に来ないことを不思議に思い、領主館への道を辿りつつ超聴覚で周囲に異変がないか探る……という形になると思う。方向に目星がついたら屋根等の高所から確認してみるのも良さそうだ。 >神実の力 小瓶に入った液体で、一定時間で効果は切れる。 驚異的な怪力を手にする他、あらゆる身体能力も向上させるが、常時怒りに我を忘れた状態(攻撃集中状態)になる……だったかな。一応伝えておくね。 (『【獗烙】狂怒の海賊』 https://alpaca-connect.com/world/world0/scenario/1519)
あ…プレイングで指定すれば、その場からスタート…だと思っていましたけど、たしかにOPからして「探す」アクションはかけておいたほうが良さそうですね…。 神実を使った人たちが相手ですから、油断はできませんね。今回はインフィニティロアによるバフと、回復を中心に持っていこうと思います。特性の残りひとつはまだ考え中ですが…ライフアンカーかスケープセイントか… 確かエナハルトさんはシーフでしたので…、あっこれは盾役がいたほうがいいですね。防備、万全にして前へ出ます! であればライフアンカーをセリオスさん、そして希望者に付与しますね。
>レサタさん 了解。 じゃあレサタさんの場所が分かり次第、彼女の許へ向かうよ。 その際に2人が到着するまでレサタさんを保護…護衛するか、 それとも敵勢力を誘導するか…で迷うね。 非授恵者だから、何とか護衛しきれるかもしれないけれど 真実の力を全員が確実に使うなら、誘導も有りかなとかね。 >居場所確認 うん、少しでも探すことに触れた方が確実かな、と。 確かにシルヴィさんの言うように、未知を辿りつつの超聴覚は かなり有効な手段かも!それに応じて双波も乗せてみる、か。 あとは捜波系じゃないなら位置感覚も良いかな。
>レタサの保護 授恵者並みの能力になった4人が一斉に襲い掛かってきたら流石に不味いのと、神実の力を使うと挑発に乗りやすくなるようだから、もし賊が全員神実の力を使うなら誘導も有りだと思う。 逆に敵の半数が神実の力を飲まない等、理性を残した敵がいる場合はレタサの護衛をしていて貰えると有難いかな。 >居場所確認 キオが双波を使ってくれるなら有難い。位置間隔も妙案だと思う。 超聴覚で索敵して、妙な音があればすぐにキオとエリザに共有出来るようにしておくよ。
>レサタさん 了解、じゃあ手筈通りに。 護衛するにしても誘導するにしても、接敵時には閃光塗弾を打ち上げるんで そこを目印に来て貰えれば…。 >居場所 じゃあ取りも取りあえず、俺は双波を持って行くね。