沼に潜む漆黒の闇

ゆうきつかさ

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シナリオID:2775

オープニング

●リーンエス王国
 リーンエス辺境地域で異臭騒ぎが起こったのは、今から数日前の事だった。
 それは何かが腐ったようなニオイ。
 その原因を探るため、近隣の村の住民が様子を見に行ったところ、森の中にある沼が腐って異臭を放っていたようである。
 この沼には、大量のコケを生やした亀の魔獣が棲んでおり、背中から発する蒸気が異臭の原因となっているらしい。
 どうやら、この蒸気には毒があるらしく、沼の周辺の草木は枯れ果て、小動物は死に絶えていた。
 いまのところ、病で倒れる者や、命を落とす者は確認されていないものの、沼を調査した者達は、毒の影響で命を落としてしまったようだ。
 そう言った意味でも、このまま亀の魔獣を放っておくのは、危険。
 その問題を解決するため、近隣の村々で金を集め、冒険者ギルドに依頼をしてきたようである。
「亀の魔獣は、体長5メートルほどで、性格は温厚。こちらから攻撃を仕掛けなければ、襲い掛かってくることもない……はずだ」
 依頼人の男性が、小さくコホンと咳をした。
 おそらく、近隣の村々の代表として、冒険者ギルドにやってきたのだろう。
 見た目からして、20代後半。
 名を、アルハと言った。
 アルハの話では、亀の魔獣については、よく分かっていないものの、興奮状態に陥ると大量の毒を噴出しながら、毒の塊を吐き出し、体当たりを仕掛けてくるようである。
「まあ、なんというか、アレだ。調査に向かった連中が、ちーっと血の気が多かったから、亀の魔獣を刺激しちまったらしい。んで、あれだ。事態を悪化させちまったと言うか、何と言うか。毒液を吐かれて……ほとんど死んだ」
 アルハが気まずい様子で、小さくコホンと咳をした。
 運よく生き残った者達も、そう長くは生きる事が出来なかったらしい。
 そもそも、村人達にとって、解毒剤は高価なモノ。
 他の場所では違うかも知れないが、アルハ達の村にやってくる行商人が売りつける解毒剤は、決して安くないようである。
 そのため、助ける事が出来なかったものの、キチンと対策しておけば、死ぬような事はない……らしい。
「とりあえず、魔法でフルボッコにしちまえば、何とかなるだろ。いや、何とかなるといいなーって思っているんだが……。ちなみに、怒ると沼から飛び出してくるようだから、魔法で攻撃するなり、石を投げるなりして、刺激して、ガツーンとやってまってくれ」
 そう言ってアルハが、魔獣退治を依頼した。

解説

 沼の大きさは、大きな屋敷一軒分。  亀の魔獣の身体が、完全に沈むほどの深さがあります。  沼の大きさは、大きな屋敷一軒分。  亀の魔獣の身体が、完全に沈むほどの深さがあります。  魔獣は体長5メートルほどで、全身がコケで覆われています。  背中の甲羅には、いくつも穴が開いており、大量の毒が噴出しています。  どうやら、興奮状態に陥ると、毒の濃度が増すため、対策を練っておく必要があるでしょう。  また魔獣の体内で解毒物質が生成されているため、倒す事さえ出来れば、その血で沼の汚染を食い止める事が出来るでしょう。  ただし、魔獣は毒の塊をタンの如く吐いたり、体当たりをしたり、噛みついてきたりするので、注意しておきましょう。

マスターより

 この依頼の目的は亀の魔獣を倒す事です。  基本的には、ノリと勢いで何とかなりますので、キャラクターらしく行動していただければ構いません。  もちろん、ネタに走っても構いませんので、難しく考えず、ガンガン攻めていきましょう。

リプレイ

●リーンエス王国
「うっ、臭い! 何、このニオイ、シャレにならないんだけど……」
 沼に近づいた途端、アステルが発したのは、『臭い』と言う言葉であった。
 事前に、沼の周辺は臭いと聞いていたのだが、まるで見えない壁でもあるかのように、異様なニオイに行く手を阻まれた。
 おそらく、冒険者ギルドで話を聞いていなければ、異様なニオイを吸い込んで、状況を理解する事さえ出来ず、卒倒していた事だろう。
 幾つもの死亡フラグがラインダンスを踊る勢いで危険が迫っているため、心臓が締め付けられるほどの痛みに襲われた。
「……って、うろたえてる場合じゃないっ! でも、魔獣が沼に沈んだままじゃ、何も出来ないし……」
 アステルがハッと我に返った後、鼻と口元をバンダナで覆った状態のまま、超聴覚で水音を警戒しつつ、覚悟を決めた様子で沼を覗き込んだ。
「……」
 次の瞬間、沼の中心に小さな島のようなモノがムックリと浮かび、眠そうな顔をしたカメの魔獣が顔を出した。
「いや……、ほんとでかいな。こんだけ、でかいのが潜んでたって事は、沼にはまると厄介だな」
 ケン・Z・ブラッドリーが、警戒した様子で間合いを取った。
 幸い、カメの魔獣に敵意はなく、睡魔の方が勝っているようだった。
「……とは言え、このままでは、戦えない」
 シャドウが物陰に隠れつつ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
 カメの魔獣は、沼の中央にいるため、攻撃を仕掛けるためには、危険を覚悟で沼の中に入っていくか、遠距離から攻撃を仕掛ける必要があった。
 ただし、例え攻撃が命中したとしても、魔獣の甲羅に命中する可能性が高いため、致命傷を与える事は難しそうだ。
「どうやら、大人しい魔獣のようでございますね。だからと言って、油断は出来ないようでございますが……。強い毒を持っているのなら、余計に無視するなど出来ませんしねぇ。ここは人間様のため、犠牲になっていただくしかないでございます」
 ハリーヌ・ヨツユビが足音を立てないようにしながら、少しずつ距離を縮めていった。
 それでも、カメの魔獣はまったく気にしておらず、息をするようにして周囲に毒を撒いていた。
 そのせいで、ハリーヌ達の身体に焼けるような痛みが走っているものの、我慢が出来ないほどではなかった。
「この毒性に亀が何故負けないのか、疑問ではありますが……。おそらく、生来の耐性……もしくは体内で中和・解毒を行っているという所ですかね? さすがに、自分の毒で死んだら、笑えませんし……。とは言え、詳しく調べるためには、解体してみなければ分かりませんね。それでも、仲間もなく個で居るという所から、その毒性で他の同種を駆逐した可能性もありそうですが……。まぁ、真実はわかりませんね」
 グレイブ・ヤードが痛みに耐えつつ、魔獣の様子を窺った。
 カメの魔獣のまわりには、沢山の魚が浮いており、それが腐臭を放って、毒のニオイをさらに凶悪なモノに変えていた。
 だが、カメの魔獣はまったく気にしておらず、まわりに浮かんだ魚を吸い込んで、胃袋の中に収めていた。
 また、辺りに漂う毒素は、場所によって濃度が異なっており、毒性が強いところでは、飛ぶ鳥が落ちてしまうほどだった。
 逆に、毒性が弱いところに虫達が集まっており、なるべく毒の影響を受けないように潜っているようだ。
「とにかく、これ以上、被害が拡大する前に、手を打っておく必要があるようでございますね」
 ハリーヌがペットのゴリラと連携を取りつつ、茂みから茂みに移動していった。
 カメの魔獣は、ハリーヌ達に敵意がないと判断したのか、途中で威嚇してくる事はなかった。
 その代わり、ゴリラがノーガードで近づいていたため、毒の影響を受けて、気持ちがブルーになっていた。
「どうやら、感情の起伏によって、毒性が異なるようですね。その事から汗や血液等に毒性があるのかも知れませんが……。さすがに、無制限に毒を放出できるとは思えませんから、甲羅の穴を広げるなり、穴を増やすなりしてガス抜きが出来れば、毒の濃度を下げられるかもしれませんね。もしかすると、一見温厚そうに見えているだけで、実際には『毒のお陰で争わなくても餌が手に入る環境だったから』かも知れません」
 グレイブが落ち着いた様子で、カメの魔獣について分析をし始めた。
 その方が色々と辻褄が合うため、なるべくカメの魔獣を刺激しないようにした方が良さそうである。
「……では沼に一射してみるでございます」
 ハリーヌが仲間達の安全を確認した後、ある程度の距離を取って、沼に矢を射った。
 その矢は魔獣の甲羅に当たり、弾き飛ばされた。
 だが、カメの魔獣はまったく気にしておらず、眠そうな表情を浮かべて、アクビをしていた。
「……って、まさかの反応!? おーい、こっち、こっちー」
 それを目の当たりにしたアステルが、沼に向かって石を投げた。
「!」
 その事に気づいたカメの魔獣が興味津々な様子で、石が落ちた方向に近づいていった。
 この様子では、大きな鳥が沼に落ちたのだと勘違いをしたのだろう。
 そのためか、近づくスピードも速く、勢いに身を任せて、陸まで上がってきた。
「”待”ってたぜェ!! この”瞬間”をよォ! 亀魔獣! 貴様を倒す!!」
 すぐさま、アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが、【衝撃刃4】で不可視の衝撃を飛ばし、魔獣の甲羅を傷つけた。
 それに合わせて、グレイブが【レゾナンス・オブ・ヴァロー】を発動させ、声と共にエーテルを解き放ち、仲間達の身体を淡い光に包まんで、身体能力を向上させた。
「!」
 その事に危機感を覚えたカメの魔獣が、周囲に毒を撒き散らした。
 それが辺りにあるモノを蝕み、徐々に腐らせていった。
「んじゃ、一狩りいきますか」
 その流れに乗るようにして、ケンが【天眼】で状況を確認した後、カメの魔獣を挑発するようにして、わざと目立つ行動を取った。
「グルルルルッ!」
 その挑発に乗ったカメの魔獣が激しく唸り声を響かせ、毒のタンをペッと吐き出した。
「これは、さすがに……。当たる訳にはいかないのでございます」
 即座に、ハリーヌが茂みに隠れ、毒のタンを回避すると、ゴリラにアイコンタクトを送った。
 その指示に従って、ゴリラが魔獣の背後に回り込み、戦闘の途中で沼に戻らないようにした。
「!!」
 その事に腹を立てたカメの魔獣が怒りに身を任せ、ハリーヌ達に体当たりを仕掛けてきた。
「クッ!」
 それと同時に、アルベルトが魔獣の行く手を阻むようにして陣取り、【重点硬化】で輝くエーテルをムーティヒ(竜鉄の全身鎧)に収束させ、瞬間的に防御性能を高める事で、体当たりのダメージを軽減した。
「……意外とカッとなりやすいんだな」
 その間に、シャドウがダガーを握り締め、カメの魔獣に飛び掛かるようにして、素早く斬りつけた。
 魔獣の甲羅は、ほとんど傷をつける事が出来なかったものの、顔や手足は柔らかく、斬りつけるたび、多量の血が噴き出した。
 そこにも毒が含まれているのか、魔獣の足元にある土が、みるみるうちに変色していった。
「!」
 その事に苛立ちを覚えたカメの魔獣が、再び毒のタンを吐き出した。
 それは先程のモノより大きく、まるで弾丸のように速かった。
「クッ!」
 すぐさま、ケンが竜鉄の大太刀を握り締め、毒のタンを真っ二つに切り裂いた。
 その拍子に、毒のタンが辺りに散らばったものの、それが仲間達に当たる事はなかった。
「かたじけないでございます!」
 間一髪で、毒のタンを浴びずに済んだハリーヌが、ホッとした様子で溜息を洩らした。
「……」
 その隙をつくようにして、カメの魔獣が甲羅の中に引っ込み、防御態勢を取った。
「流石に亀だけあって、甲羅は硬いね」
 即座に、アステルがダマスカス鋼の大剣をギュッと握り締め、カメの魔獣に斬りかかった。
 だが、魔獣の甲羅は異常に硬く、表面しか傷つける事しか出来なかった。
「……」
 一方、グレイブは【ヒール4】と【解呪4】を使い分け、仲間達が危機的状況に陥らないように対処した。
 その間も、カメの魔獣は甲羅の中に引っ込んでおり、決して顔を出そうとしなかった。
「だったら、引っ込めた首を狙うだけだ!」
 それに合わせて、 アルベルトが【チャージング】で瞬間的に加速し、シュトルツ(漆黒の名剣)で首元を集中的に狙って攻撃した。
「!」
 その事に危機感を覚えたカメの魔獣が、さらに首を引っ込め、周囲に毒を撒き散らした。
 それが原因で、身体がチリチリと痛んだものの、アルベルトは怯む事無く、シュトルツを振り下ろした。
(さすがに、バンダナだけでは、防ぐ事が難しいか。……だったら余計に、のんびりしている暇はないな)
 シャドウが目にも止まらぬ早業を繰り出し、魔獣の首元をダガーでザクザクと突き刺した。
「!!」
 その痛みに耐えきれず、カメの魔獣が両手両足をジタバタさせた。
「意地でも頭を出さないつもりか? ……そう恥ずかしがるな。みんな待っているぜ!」
 ケンが軽く皮肉を言いながら、【破鎧砕】で肉体を蝕むエーテルを竜鉄の大太刀に纏わせ、頭部付近の甲羅を破壊した。
「……!」
 それはカメの魔獣にとって予想外であったのか、頭を隠す事が出来なくなっている状態にもかかわらず、必死に何度も首を引っ込めていた。
「しぶとい亀で、ございますね。……オラ、死ねや」
 そこに追い打ちをかけるようにして、ハリーヌが【精密射撃】でカメの魔獣の頭を狙った。
「ピギャアア!」
 その痛みを耐える事が出来ず、カメの魔獣が悲鳴にも似た鳴き声を響かせた。
「そんなに大きく口を開けたら、狙ってくれって言っているようなモノだよー!」
 次の瞬間、アステルが魔獣の口を狙って、【破鎧砕】を繰り出し、エーテルを纏ったダマスカス鋼の大剣を叩きつけた。
「!」
 その拍子に、魔獣の顎が砕け、大量の血が辺りに飛び散った。
「さすがに、毒を撒き散らす余裕はないか」
 それに合わせて、アルベルトがシュトルツを振り下ろし、魔獣の身体を斬りつけ、大量の返り血を浴びた。
 幸い、返り血の毒素は中和されていたらしく、いくら浴びても痛みが走る事はなかった。
 その代わり、ドブのようなニオイが辺りに漂ってきたため、例えようがないほどブルーな気持ちに襲われた。
「この際、ニオイの事は考えるな」
 そんな空気を察したシャドウがアルベルトに声を掛けつつ、魔獣の身体をダガーで何度も斬りつけた。
 そのたび、ドブのニオイが増していったものの、シャドウは表情ひとつ変えず、魔獣の身体を傷つけた。
「いい加減、終いにさせてもらうぜ。……こいつで逝っちまいな!!」
 それと同時に、ケンが【チャージング】で突撃を仕掛け、【戦士の一断】と【雲耀】を繰り出し、魔獣の首を切り落とした。
「!」
 そのため、魔獣は鳴き声ひとつ上げる事が出来ず、大量の血を撒き散らしながら、地面に崩れ落ちるようにして突っ伏した。
「……終わったか」
 シャドウが魔獣の絶命を確認した後、ダガーについた血を払った。
 カメの魔獣が倒された事で、辺りに漂う毒素が少しずつ消えていき、沼の色も徐々にではあるが元通りになっていった。
 沼の周辺の空気が浄化された事で、小鳥達の囀りが聞こえており、木々の隙間から太陽の光が差し込んできた。
 ただし、枯れ果てた草花が元に戻るまでは、しばらく時間が掛かりそうである。
「とりあえず、毒が中和されたようですね」
 その事に気づいたグレイブが、ホッと胸を撫で下ろした。
 未だに、ドブ臭さがあるものの、毒素が中和されているため、口元を布で覆っておく必要はなくなった。
「それでは、解毒剤の素になるモノを回収しておきましょうか」
 一方、ハリーヌは安全を確保しながら、亀の魔獣を解体し始めた。
 魔獣の身体からは解毒剤の原料となる物質が採れるため、普段の解体よりも少し時間が掛かった。
「さすがに、こんな毒もちじゃあ……、食うのは無理か」
 その後ろでケンが魔獣の肉を眺め、残念そうに溜息を洩らした。
 一応、毒は中和されているようだが、ドブのようなニオイが残っているため、食用には向いていないようだった。
「それにしても、深い沼だねー。みんな、絶対に押したら、駄目だからね。絶対だよっ? 絶対……って、うわあああああああああああ!」
 そんな中、アステルが抜群のボケをかまし、仲間達から壮絶なツッコミを喰らって、沼にドブンと落ちるのだった。

マスターコメント

 今回はMVP候補者が多数いたため、総合点で判断させていただきました。  かなり僅差ではあったため、誰もがMVP候補でありました。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜8人

2023年02月04日 18時11分55秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. グレイブ・ヤード

    さて、ヒーラー。グレイブ・ヤードです。 現状主として解毒担当のつもりではおりますが、よろしく

  2. シャドウ

    シャドウだ。よろしく。 とにかく攻撃するよ。

  3. No.3

    ウォーリアのアステルです。よろしくね! 私は陸に上がってくる様に仕向けて、ガンガン攻撃していきたいと思ってるよ。

  4. グレイブ・ヤード

    まぁノリと勢い任せでいいのであれば香草というか香辛料というか激辛物質類を沼に流し込んだらそれなりの面白いことになるかなと思いつきましたがたぶん実行しません

  5. ハリーヌ・ヨツユビ

    顔出しが遅れて申し訳ないでございます。 ワタクシはハリーヌ。しがないヨツユビハリネズミのシューターでございます。 皆様、今回はよろしくお願いするでございますよ! ワタクシは射程がございますから、沼に一射して亀を誘き出すでございます!

  6. グレイブ・ヤード

    とりあえずプレイングは送信済みです。 解毒他いろいろ考えてはおりますが多分そんなに意味はないです

  7. ケン・Z・ブラッドリー

    ぎりぎりに顔出しですまん ウォーリアのケンだ 沼から出てきたら一気に行くつもりなんでよろしくな

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0