【鬼哭】私と戦う権利をやろう!!
馬車猪
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シナリオID:2748
オープニング
「どうなるのかな」
「迷宮の中にいればなんとかなるかもって聞いたぜ」
自作農を目指して帝国にやって来たゴブリンの若者も、ブラックデスに刃向かって帝国まで流れに流れてきたゴブリンの犯罪者も、人相は違っても同じ感情を抱いている。
怖いのだ。
真っ当に働く農民も社会の寄生虫も社会の一部だ。
社会の外に出るなど考えもしないし誘われても嫌悪と怒りで絶対に拒絶する。
「喋るな。大人しくしろ」
見張りであると同時に護衛である帝国軍兵士は緊張している。
暴徒や悪漢相手なら10倍いても鎮圧する自信はあるが、命の価値も知らぬ野蛮な亜人が相手だと5倍でも難しい。
数年前と比べると激減した帝国軍の精鋭や、急速に力をつけている冒険者と比べると平凡な授恵者でしかないからだ。
「はい」
「いいじゃねーか、少しは息抜きさせろよ」
ゴブリン達の反応は様々だが反発は大きくない。
己の面子や感情より人間であり続ける方がずっと大事だ。
だから、少しでも早くヴィントの迷宮に向かえるよう狭苦しい荷台にも激しい揺れにも耐えている。
遠くで笛の音が鳴り不自然に途絶えた。
兵士の緊張が高まり、ゴブリンでなく近づいて来る襲撃者に備えた隊列を組む。
斥候を瞬く間に蹴散らし現れたのは帝国過激派だ。
大重量の武具を装備しても足は早く戦闘中なのに陣形の乱れはほんの少ししかない。
レイウェスト皇子に属する帝国軍に、濃厚な殺意を向け駆け足で近付いて来ている。
「我々は時間を稼ぐ。お前達はヴィントへ向かえ!」
兵士を指揮する士官は緊張を隠せない。
彼等は思想はともかく実力は本物だ。
悪夢のような撤退戦闘や民の防衛に参加せず戦力を温存した部隊もあり、少なくともゴブリンを護送中の部隊よりは間違いなく強い。
(メドゥの指先と揉めてるという話は攪乱情報か)
士官は苦々しく吐き捨てスキルを起動する。
自分自身が先頭で盾になれば、数分程度は持ちこたえられると思いたかった。
「ゴーブゴブゴブ!」
客観的には非常に間抜けで、しかし本人は大真面目な声が真横から聞こえてくる。
破城槌じみた重さのハンマーを小枝か何かのように高速で振り回し、うっきうきの足取りで緑の髪を揺らす何かが真っ直ぐにつっこんで来る。
(どこかで見覚えが……ってあれは緑の中指っ!)
士官は過激派を完全に無視して防御を厳命した。
自らを文字通りに盾にした直後、ハンマーを斜めに撃ち込まれた大地が負けて土砂と石からなる洪水と化す。
(なんて威力だ)
丸い石が兜を歪ませ千切れた岩片が盾を抉るが士官はスキルと体力で耐える。
格が士官より高かった過激派達は、圧倒的格上からの範囲攻撃をまともに食らってしまう。
数十年かけて無数の命を糧に磨かれてきた暴力は、常識の範囲内の鍛錬や才能など無造作に押し潰して流した。
「ゴブ……」
後に残るのは動かなくなった半死体かうめくことしかできない重傷者だけだ。
緑髪のゴブリンが肩を落とし、しかし土砂に汚れたまま毅然と立つ士官を見て笑顔を浮かべる。
「ゴブ! ゴブ、ゴブゴブ!」
超重量のハンマーを片手で士官に向ける。
凄まじい腕力で支えられたハンマーは巨大な岩に支えられているかのように動かない。
「何言ってるのか分からん。人類の言葉を話せ!」
「ゴ……ではなくてすまないな」
ゴブーナは咳払いして誤魔化そうとする。
「最近言葉が苦手になってな」
非常に深刻なことのはずなのにゴブーナはあまり気にしていない。
戦い続ければ治りきらない傷を負うのも当然で、歳をとれば心身に不調を抱えるのも当然。
圧倒的格上と遭遇してこの程度で済んだのだから幸運な方だしそんなことより重要なことがある。
「では改めて。ゴブーナと戦う権利をやろう」
濃厚な死の気配が真正面から押し寄せる。
「賊相手に真正面から戦うとでも?」
「戦わなくてもいいが私を撃退しないとゴブリンが巻き込まれるぞ。……止める方法がないんだ」
後半は情けなさそうに言うが効果はろくでもない。
既にかなり距離があるはずなのに、ゴブーナが撒き散らす強大な気配とイダ本人から直接撃ち込まれた刻印が影響しあって凶悪な悪影響をゴブリンに押しつけている。
「ゴブ?」
「しっかりしろ! 糞っ、縄で縛るぞ!」
亜人化だ。
「お前がやっているのか」
「ゴブ。じゃなくてそうだ」
ゴブーナは悪びれない。
半ば亜人ゴブリンになっているからではなく、昔から己の行動が引き起こす被害を気にしないからだ。
だから大勢殺し続けて今も生死不問の高額賞金で指名手配されている。
「軍に包囲される前には逃げるからそれまで頑張れ。私を殺しても冒険者を呼んでもいいぞ!」
刻印の影響か加齢の影響かは分からないが、ゴブーナはより軽くより迷惑な存在と化していた。
●
ヴァイセントラフ砦に出張中の冒険者ギルド職員が、知らせを受けてすぐに冒険者に呼びかけた。
「緊急依頼です」
ヴィントへ護送中のゴブリンを帝国過激派が襲ったのも大問題だが真の問題はメドゥの指先だ。
「緑の中指……メドゥの指先の古参幹部が乱入して現地の帝国軍と戦闘中です。
強者や強くなる可能性が高い者には甘いがその他の命など気にしない凶悪な犯罪者だ。
「ゴブリンの避難も進んでいません。至急現地へ向かい、可能な限り被害を少なくして下さい」
全員の救出は不可能に近いと判断される、非常に難しい依頼であった。
解説
マスターより
リプレイ
「ゴーブゴブゴブ」
良い所なしで翻弄された後であるのに、ゴブーナは怒るどころか上機嫌だ。
頑丈さと重さだけを追求した鉄槌を構え直し、帝国在住ゴブリンを守ろうとした士官に止めを刺そうとした。
プリズムシャドウという技がある。
瞬間的に術者と対象の位置を入れ替える劇的な技だ。
ただし実戦で使うのは極めて高難度。
何故なら、取得可能なのはシーフであり防御は薄くなりがちだからだ。
格上相手に回避を成功させるのは難しく、格上からの一撃で重傷かそれ以上になりかねない。
「この痴れ者が! うち《レイウェスト派》の貴重な人財を減らそうとするでないわ!!」
ベルク・オスマットが犠牲者と入れ替わる。
確実に躱すことなど不可能。
しかし心の芯を冷たく保って最も回避の可能性がある動きを選択する。
髪にも当たらず頭部から十分離れているのに、ハンマーが押しのけた空気により小柄な体が本人の意思に反してゆらりと揺れる。
「ゴブッ」
ゴブーナは驚いても攻撃は止めない。
より早くより正確にベルクを狙うがベルクの方が早い。
「これ以上付き合いきれん、というかこれ以上放置して完全にイダ妃に取り込まれる前に討たせてもらうぞゴブーナ!」
「ゴブゴブ!《逃げるな戦えっ》」
「誰が貴様なんかと真正面から戦うかっ!」
ベルクとゴブーナが騒いでいるうちに他の冒険者も到着した。
●
(弓の届かない距離では気付いても反応しないか。歳をとった野生動物のような人間だな)
セリオス・オーガストは殺気を送り込むの止めて前進する。
矢はつがえない。
あれは時間と集中力が必要なので、今は距離の調節に集中したい。
ゴブ! と良くも悪くも純粋で闘志に満ち満ちた鳴き声が遠くで響いた。
ゴブーナはぎりぎり追いつけそうだったベルクを無視して鋭角的に向きを変えてセリオスを目指す。
今度はベルクに追いつかれ足に後ろから斬りつけられても膨大な生命力で耐えてベルクを今度こそ置き去りにする。
「待ってたぜェ!! この瞬間をよォ!!」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトはゴブーナの進路を予測していた。
戦術眼だけでも幸運だけでも足りない。
これまで何度も戦った経験が活きている。
「ゴブーナ! ここで決着を付ける!!」
気合いを入れた加速でゴブーナと進路を交差させる。
アルマ・ヴァレンタインによるバフで高められた漆黒の斬撃が、格は高くても攻撃に偏りすぎた古強者を襲った。
高速の斬撃に鉄槌の防御は間に合わず、肩から肘の近くまで深く鋭い傷が刻まれる。
新鮮な赤い血が零れて赤い染みが長く伸びる。
「ゴーブッブ!」
ゴブーナは速度を緩めずアルベルトに目も向けずに、1度己を仕留めかけた狩人を目指す。
「そういやまともにやりあった事はなかったな」
アーテミシアは相手の強さを正確に理解した上で獰猛な笑みを浮かべる。
「ゴブ!」
「ずいぶん頭が軽くなったようだなおい!」
重く扱いも難しい腕部装甲を使いこなして立ち塞がる。
武器の性質上大きく振る必要なある鉄槌対策で、ほとんど密着するような至近距離だ。
「ゴーブ!」
言葉は亜人であるのに判断は無数の戦いを生き抜いた授恵者。
移動速度の有利を活かしてアーテミシアを大回りで回避し疾走を続行する。
「緑の中指なんて大層な肩書きが泣いてるぜ?」
「ゴブゴブ、ゴブ」
アーテミシアが挑発しゴブーナが戦いの喜びで顔を上気させる。
なお、双方雰囲気で言葉を交わしているだけで意味は半分未満しか通じていない。
(距離を保とうとすれば攻撃できずに攻撃を受けることになる)
凶悪犯罪者に近付かれている状況でもセリオスは冷静だ。
ハンマーに耐えられるのは良くて2度、接近前にセリオスが攻撃できるのは2度と判断して最初から大技を使う。
(手応えが浅いか)
光を弓矢に集めて矢を放ったときには当たった感覚がある。
しかし命には届いていない。
「ゴブッ!」
回避動作まで読んで撃ち込んだのにゴブーナは読まれたことを読んで自らの骨で受け致命傷を避ける。
(効くか?)
思考は2本目の矢を放った後のものだ。
継続ダメージ狙いだが元の技量と武器の性能が非常に高いので威力は攻城兵器じみたものだ。
胸の装甲に矢を受けたゴブーナがゴブとも言わずにごほりと息を吐き、しかし鉄槌の旋回は速くそして楽しげだった。
(指1本分残ったか)
直撃を裂けても被害が甚大だ。
セリオスは致命傷を負った野生動物のように力を振り絞って第3の矢を放つ。
「ゴブッ……ゴブゥ」
体の内側から苛んでくる力に、ゴブーナは震えると同時に満足そうに笑った。
●
(これはいけませんね。負けパターンかもしれません)
頻繁に啓示を受け取るフリーダ=ブロムヴィストは使う言葉にも影響が出ているかもしれない。
しかし思考も行いもその結果もフリーダ自身のものだ。
(石焼きがほかほかとかお茶がどうとか、久々に分かりづらい内容でしたね)
個性を感じて口元を柔らかくする。
(『脳筋なので、物理的会話で何とかしましょう』ですね、本当に)
白金色の武具を普段着のように自然に使いこなし、絶妙な集中を維持したまま前へと落ちる。
「ゴブ」
ゴブーナは最も警戒していた相手を気絶させた直後であるのに緊張を解かない。
帝国の士官は逃げることができたが今のセリオスがゴブーナの範囲攻撃に巻き込まれると危険だ。
(本質的に命なんてどうでも良いと思っているタイプでしょうから……。まずは注意を引き剥がしましょう)
フリーダは決戦の備えをしてから、戦意にエーテルをのせて真正面から叩きつけた。
シーザーロア3はゴブーナに抵抗された。
しかし抵抗成功はぎりぎりだ。
次の行動の途中でシーザーロア3を浴びて執着を押しつけられると数手番を無駄にされかねない。
「ゴブ? ゴブゴブブゴッブブ」
「そのまま帰ってもらっても構いませんよ」
両者はうまれも育ちも種族も違うのに、自然体のままで戦えるという一点では良く似ていた。
最短の軌道で駆け寄り最短の軌道でハンマーを振る。
白金色の盾と鎧を磨き抜かれた技術と知識で以て防御用に配置する。
飛び散る火花で目が痛くなっても、ゴブーナもフリーダも五感の全てを使って互いを認識し続け戦いのための資源を削りあう。
それは、緑と白金の暴風にも見えた。
「こいつ頭亜人のときの方が強いんじゃねーか?」
それに割って入って死なないのはアーテミシアくらいだ。
チャージング抜きでは移動速度にやや劣るがその分防御の厚さと巧みさは別格でフリーダをわずかとはいえ上回るほどだ。
「馬鹿の一つ覚えかよ!」
アーテミシアが嘲笑する。
鉄槌にはたかれた地面が鳴動し爆発する。
並の前衛冒険者なら骨まで持っていかれそうな土と石の大波を、2人の冒険者は平然と耐えて戦線を維持していた。
「ここで終わりにするぞゴブーナ! これ以上厄介な相手に増えられてたまるか! エフレム卿やサチコだけでもめんどくさい極みなんだぞ!!」
死角から一撃離脱を徹底するベルクは大声を出しても攻撃に成功し続ける。
その大声は本音でもあるが布石でもある。
(……アナタが一番危険、排除する……)
ラビリアは冒険者になって日が浅い。
これが2回目の依頼であり、仲間と比べると戦闘力では劣る。
(……浅い)
短剣というよりそれに纏わせた赤光を当てることには成功したがエーテルに対する抵抗を突破できなかった。
ラビリアは怯まずに次の攻撃の準備をするが、ゴブーナの構えとエーテルの性質が攻撃的になったことに気付いてゴブーナが攻撃に移る前に速度を活かして距離をとる。
ラビリアはもともと格の割に早く、エーテルによる反応速度強化も効いている。
「ゴブ……ではなく、有望な新人とは羨ましいな」
ここで手加減をするような人格なら緑の中指になどなってはいない。
フリーダからの呪縛を振り解いたタイミングで対単体攻撃から対集団攻撃に切り替え土砂による爆発を引き起こす。
(……いける……)
前衛との激しい攻防と遊撃からの攻め全てに意識を向けている分ラビリアに向けられる意識は不十分だ。
そして、ラビリアが健闘すればするほど仲間に向けられる意識も少なくなる。
敵の強みと弱みと自分自身を正確に認識した上で後退しては攻めを繰り返し、ラビリアは篭手に内蔵した針を突き立てるのだった。
●
「ゴブ―ナ様、どんどん馬鹿になるのはやめてくだいまし」
バンビは半世紀は年上の同族に苦言を呈する。
「知恵のある種族として、めんどくさくても人語を話すことは力あるものの責務ですわよ」
これは説得でも降伏勧告でもない。
今からぶっ殺すけどみっともない振る舞いをするなという宣告だ。
(どうせ言っても無駄でしょうけれど)
飛び抜けた速さを活かして高確率で先手をとる。
ゴブーナが移動したい場所に光弾を向かわせ的確に打撃を与え、冒険者の前衛と激しくぶつかるときは霧をぶつけて状態異常への抵抗を強いる。
(亜人に成り下がってしまうのは怖い。だから)
できる人にはきちんと義務を果たしてもらうことで恐怖心を和らげたいし、人間の言葉を話して貰わないと何言っているかもわかりにくいのでとっとと元に戻って欲しい。
「ふははははー。効かんなー」
回復役から殺せを受けた直後のアルマの反応である。
凶悪な攻撃でクレーターの重なりと化した地面を見事なバランス感覚で移動し、超広範囲に撒き散らす癒やしと自身に使ったヒールで万全の状態まで回復してみせる。
(一瞬意識が飛んだかもー……)
気絶したら次の攻撃で死んでいたことにアルマは気付いている。
(この前ぶりだけどもう元気になってるー……? タフだねー)
ゴブーナがシーザーロアに引っかかったことを確認してアルマは息を吐く。
回復能力を維持できるのは後10秒程度だ。
短時間での回復力に特化したスキル構成なのは、そうでもしないと緑の中指の猛攻に耐えられないからだ。
勝っても負けても引き分けに終わっても戦いは短時間で終わると判断しての行動であり実際その判断は正しい。
(『ヒール』や『オーラ』の続くうちに撃退~……できるといいなあ)
アルマができることは全てした。後は仲間を信じるだけだ。
(オレから意識が外れ……た!)
バンビが同じ術を素早く2度使う。
厚さ30センチの鉄の壁が2枚、クレーターの側面から生えてゴブーナの片足を挟むように伸びる。
攻撃しなくても1歩下がるだけで無効化できてしまう罠だ。
が、ゴブーナは7人の冒険者を1度に相手にしているため冒険者1人1人に向ける意識は少なく、驚かせるのが得意なバンビとは相性が悪い。
つまり自分自身を巻き込むのを覚悟して地面破壊する方がマシになる。
バンビは容赦なくとっておきを繰り出し、土煙の中に光の矢を撃ち込んでダメージを与えると同時にさらに注意を引きつけた。
土砂混じりの煙を漆黒の刃が切り開く。
あらゆる迎撃よりも早く、アルベルトは一撃に全てを込めて最後まで振り抜く。
鉄槌は追いつけず、猛烈な加減速と方向変更を繰り返す足もアルベルトの攻めに対応しきれない。
強い血のにおいと土が血を吸う気配が、アルベルトとゴブーナがいた場所に生じた。
「調子こいていられるのもここまでだぜ、鬼風情がよ!」
そこがお前の墓穴だと眼光で語り、アーテミシアは酷い足場に踏み込み粉塵の中を突き進む。
迎撃の鉄槌の威力も狙いも戦闘開始直後と同じだが、それを支える本体の体はぼろぼろだ。
アーテミシアの竜骨の戦槌がゴブーナの脇腹に突き刺さる。
濃厚なエーテルに支えられた筋骨が衝撃に耐えられず傷つき血とエーテルを流す。
「目が覚めたぞ……」
腐った水が凍り付いたような瞳が強く光る。
「クセぇなおい」
「歳だからな」
鉄槌に敵意はない。
相手が防ぐという信頼と、それを乗り越えることで己の望みに近付くという確信だけがある。
「鬼が勝手なこと言うんじゃねぇ!」
アーテミシアは直撃の危険を覚悟の上でさらに踏み込み接触する位置をずらす。
鉄槌が当たった箇所から力が伝わり、受け流しが追いつかずにパーツが歪んで骨に激痛が生じる。
「人の言葉を話してますわね。これで討っても問題ありませんですわ」
バンビは半ば以上本気で安堵している。
悪名も名声だ。著名なゴブリンが亜人のまま死ぬのは非常に迷惑であり殺すなら今だ。
少しだけ温存していたエーテルを使って早さを増したバンビは、ゴブーナの方針を完璧に見抜いた上で術攻撃。
威力の点で牽制にしかならないかもしれないが、行動の邪魔という点では半端なデバフよりずっと効果的だ。
アーテミシアが舌打ちして鉄槌を防いで耐えずにわざと吹き飛ばされる。
乱戦に巻き込まれないよう下がっていたアルマからヒールが届いて命と意識が繋がる。
入れ替わりに前へ出たフリーダとアルベルトが、今が好機と判断して鋭く重い一撃を攻撃直後のゴブーナに浴びせた。
緑の瞳がアルマを観察する。
ゴブーナの体はぼろぼろだ。
冒険者がまだ回復できるなら己が死に、もう回復できないなら冒険者が死ぬ。
そして、伸び代があるかどうか分からない己とは違い冒険者には確実に伸び代がある。
「ゴーブ! ゴブッ、ゴブゴブゴブ!!」
敵前逃亡を平然と敢行してゴブーナが逃げる。
追撃する余力も、追撃する意味も冒険者には存在しなかった。
●
「みんな大丈夫か?」
アルベルトは警戒を解かず、仲間と一般ゴブリンの護衛を担当している帝国軍を見る。
全員生きている。
冒険者が来る前にゴブーナに蹴散らされた帝国過激派がうめいてはいるが助けようとする者はまだ現れない。
「……貴様等などどうなろうと知ったことでは無い。助ける義理など無い」
味方の治療が終わって余裕があれば何かをする者がいるかもかもしれないがその程度だ。
「なんとかー……。包帯足りるかなー……」
アルマが言葉を発したのはゴブーナが見えなくなってからだ。
回復術を使い尽くしたことを知られる訳にはいかなかった。
「全くムチャクチャやりやがる。歳だけくったガキだな、ありゃあ」
アーテミシアは警戒を解かず、しかし武器はそのままに武具の状態を確かめる。
「修理はできるがなぁ」
過酷な戦いを経ても機能が維持できているが、それはそれとして修理は必要だ。
血はもちろん防具の切れ端やそれ以外も散らばっているので、ベルクも回収には苦労したが多少は読める。
「イダめらへの忠誠心も帰属意識もなさそうだが……。安心できる材料ではないな」
あの暴力が予測不能な動きをするのは非常に鬱陶しい。
無意味に帝都に突撃して無駄死にするなら楽でいいのだがと考えると同時に、そういう展開にはならないとほとんど確信しているベルクであった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2023年01月22日 19時59分51秒 公開
相談掲示板
ウォリアーのアーテミシアだ。 あー、うン、とりあえずオレが盾やってる間にボコる感じだな…
ハイスピードキャスターのバンビですわ。 最速で魔法をぶち込みましょう。
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 出来る事なら今回でゴブーナを討ち取りたいものだな。 俺は、いつも通り攻撃に専念してドデカい一発をぶち込んでいくぜ!
ラビリア…です… ゴブーナにBSを与えていくよ …
・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしくたのむ まあ可能なら討ち取りたいというところだが、優先はゴブリンたちや帝国兵の生存だからな。まずは急いでたどり着く必要があるか。200Mだからそれなりに離れてるからサウンドボマーなどで大声を上げてゴブーナの注意を引いた方がいいかもしれんな
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 とりあえず帝国士官は早急にゴブーナから引き離そうかと思う。 200Mと言うと40へクスか、早ければメインサブの移動最大限使用で2ラウンドで行けるか?
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー わごんせーる…?は置いておくとして インフィニティロアに治療強化積んでヒール!ヒール!…の予定
オレの場合メイン移動とチャージング併せても4ラウンドかかるな それまで頑張ってなんとかしてくれ。後は装甲防御と防御態勢で何とかする あっちの攻撃力が1500までなら1発は耐えられるな…
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 ではこちらはアーテミシア様が合流するまでは盾役として行動する事にします。 機動力を確保した状態で可能な限り物防を固めておきますね。
俺も前線に着くまで、4・5ラウンドはかかるな。 申し訳ないが、それまでは皆に任せるしかない・・・。 ただし、前線に着いたら全力で闘わせてもらうぜ。 ゴブリンや帝国軍(過激派以外)を護らなきゃだからな。 ※過激派なんてどうなろうと知ったこっちゃない >ラビリアさん 可能な限り、ゴブーナに逃げられないようにして下さい。 よろしくお願いします。
俺もINIは早くても足は並ですので、みなさんと足並みは同じですわね。 到着次第ていたい一撃をぶち込みますので辛抱ヨロ