商会による暖房器具の開発実験
椿油
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シナリオID:2731
オープニング
●都市同盟フロルゾン、ローズベルト商会
「婆や!」
ローズベルト商会の若き当主、ジェラルダ・ローズベルトが当主お仕えの婆やに声をかける。
「はい、何で御座いましょうジェラルダ様」
綿が内包された、暖かいシャルガネ風の服に身を包んだ婆やを見てジェラルダは顎に手を当てた。
「正直……着込むより、暖まれるモノを作ってしまえば冬場はいいんじゃないかって思うのよ!」
婆やは目から鱗とばかりに瞼を開けてパチクリさせた。
「……と言いますと?」
婆や、老眼鏡をしっかりとかけて話を聞くモードである。
「先日、とある物を仕入れたのよ。『ウォームコア』っていう、エドゥノーグダンジョンで獲れた温蝸牛の内部にある……臓物じゃあないけど宝石みたいにキラキラしてる物! それを叩くと熱が発生するそうなの」
叩くだけで熱が発生する部位。数は少なく貴重であり、一個のみを仕入れて厳重に収納してあるという。
「それを、部屋を暖める為の器具に改造するという事ですか? ジェラルダ様」
「そう! そういう事よ婆や! 察しが良いわ、流石ね!」
ちなみにジェラルダはエルフ、長年当主お仕えである婆やとの息はピッタリ合う。
「でも――形状が、決まってないのよね。ウォームコアを使うという事ぐらいしか」
「それに一個のみですからねぇ……叩けば叩く程暖まるのなら、叩く仕組みさえ作ってしまえば良いのではないでしょうか、ジェラルダ様」
仕様をメモし始めた婆や。達筆な字でスラスラと「一個」「叩くと熱発生」と書いていく。
「帝国の冬もキツいみたいじゃない? 一つの町村に寄付出来ればと思うのだけれど」
「それは良いアイデアで御座います、奉仕活動も今の世は重要ですゆえ」
しかしすぐにアイデアが纏まるわけも無く、結局ローズベルト商会はいつものようにアイデア募集の為に冒険者を募るのだった。
「婆や!」
ローズベルト商会の若き当主、ジェラルダ・ローズベルトが当主お仕えの婆やに声をかける。
「はい、何で御座いましょうジェラルダ様」
綿が内包された、暖かいシャルガネ風の服に身を包んだ婆やを見てジェラルダは顎に手を当てた。
「正直……着込むより、暖まれるモノを作ってしまえば冬場はいいんじゃないかって思うのよ!」
婆やは目から鱗とばかりに瞼を開けてパチクリさせた。
「……と言いますと?」
婆や、老眼鏡をしっかりとかけて話を聞くモードである。
「先日、とある物を仕入れたのよ。『ウォームコア』っていう、エドゥノーグダンジョンで獲れた温蝸牛の内部にある……臓物じゃあないけど宝石みたいにキラキラしてる物! それを叩くと熱が発生するそうなの」
叩くだけで熱が発生する部位。数は少なく貴重であり、一個のみを仕入れて厳重に収納してあるという。
「それを、部屋を暖める為の器具に改造するという事ですか? ジェラルダ様」
「そう! そういう事よ婆や! 察しが良いわ、流石ね!」
ちなみにジェラルダはエルフ、長年当主お仕えである婆やとの息はピッタリ合う。
「でも――形状が、決まってないのよね。ウォームコアを使うという事ぐらいしか」
「それに一個のみですからねぇ……叩けば叩く程暖まるのなら、叩く仕組みさえ作ってしまえば良いのではないでしょうか、ジェラルダ様」
仕様をメモし始めた婆や。達筆な字でスラスラと「一個」「叩くと熱発生」と書いていく。
「帝国の冬もキツいみたいじゃない? 一つの町村に寄付出来ればと思うのだけれど」
「それは良いアイデアで御座います、奉仕活動も今の世は重要ですゆえ」
しかしすぐにアイデアが纏まるわけも無く、結局ローズベルト商会はいつものようにアイデア募集の為に冒険者を募るのだった。
解説
【目的】
部屋を効率よく暖める暖房器具の開発・アイデア出し。
【ウォームコアについて】
エドゥノーグダンジョン、上層の枝場で発見された温蝸牛と呼ばれる敵から取れた物。
我々が占いでよく見る水晶玉サイズ、オレンジ色です。
商会は1個のみ入手し、数に限りがある為今回は量産できません。叩くと熱を辺りに発生させる性能を持ちます。割ったりしても熱が発生するかはまだ不明なので、分割などは慎重に行いましょう。
(欠片程度なら試せるかもしれません)
叩く機構はローズベルト商会が製作を手伝ってくれます。叩き方や叩く棒などの素材を指定すれば商会の製作担当が試作します。
なお、上手く完成したら帝国の貧しい町村に寄付される予定です。
【NPC】
ジェラルダ・ローズベルト(エルフ/女性)
ローズベルト商会当主歴、百ウン十年。頼みがあれば仕入れや冒険者の手伝いはお茶の子さいさいだそうです。
婆や(ヒューマン/女性)
当主ジェラルダに長年使えている商会のNo.2。実はシャルガネ出身です(本名:お椎)。同じく仕入れ作業や開発業務を手伝ってくれます。
マスターより
椿油です。冬の間にしか出来ない、商会シリーズ番外編をお送りします。
シナリオ「エドゥノーグダンジョンと温蝸牛」に登場した温蝸牛(コタツムリ)の素材を使った暖房作り、割れ物注意なコアを上手く扱いましょう。
皆様のアツいプレイング、お待ちしております!
リプレイ
●商会に集った開発者達
4人の冒険者がローズベルト商会に来たが、その中には先日温蝸牛を倒した者も居た。
「先日倒したクリーパーが落とした素材ですか。確かに有効利用できれば寒冷地での生活に役立ちそうですね」
フリーダ=ブロムヴィストもその一人である。実はあのコタツムリはクリーパーというより魔獣であった。フリーダの脳裏にどこかから啓示が入ったが、理解出来ないので気にせずウォームコアを見つめた。
「元々は外敵を柔らかい身体で包み込み、その温かさで逃げられなくする性質を持つ魔獣から取れたものだそうで。狭い範囲を温めるとより効率的なのではないでしょうか?」
ベアトリーチェ・カロッサは図解していく。机の中にウォームコアを置き、上に布を重ねて熱が逃げないようにしていくものだ。
「おぉ、炬燵ですね」
シャルガネ生まれの婆やが反応した。
「叩く……衝撃を与える……。あんま強いと割れちまうし、例えば木製か重過ぎない範囲で金属製の玉あたりをぽとぽと落としてぶつけるのとか、どうだ?」
ルイドがイメージしたのは砂時計。底をウォームコアと同じ形状にして球の逃げ道にして、更に順番に暖まるなら時間も計れるという仕組みである。容器越しに熱気が伝わればなお良しだ。
「これなら場所取るのは上部だけで済むんで、例の温蝸牛のような形なら四方から人が入れるな」
「掘り炬燵状にしてしまうのもありでございますね」
婆や曰く、上がただの容器ならそれを机にして足を突っ込んでしまうのもありだとか。その場合、問題は炬燵の高さになるが。
そしてシャドウの提案はというと、とても真面目に提案された物だった。
「俺の提案する装置は名付けて『あったかハムスケマシーン』だ」
「あったか……ハム? スケ?」
ジェラルダが首を捻った。
「と、とにかく聞かせて頂戴?」
鼠型魔獣、一部地域ではハムスターと呼ばれているとかいないとか。それらを捕獲して車輪のような物『回し車』の中を走らせ、定期的な回転力でウォームコアに箒をぺちぺち当てるという機構をシャドウは説明する。
「ハムスケを何頭か用意して交代で走らせれば24時間稼働させることも可能だ」
「そうね、問題はハムスケを探さなきゃいけないけれど……」
ジェラルダは真剣にメモしていく。
「可愛らしいハムスケたちを愛でることも出来、一石二鳥だ。とても素晴らしい案だと思うが、どうであろうか?」
「そうね、素晴らしい案よ。……ねぇ婆や、ハムスケってどこにいるのかしら?」
百ウン十年生きているジェラルダも、ずっと商会周りの仕事をしていたので魔獣については詳しくなかった。
「鼠型魔獣で御座いましたら、そこかしこに……ハム助は存じ上げませんが」
「24時間自動で叩き続ける機構でしたら、水力ないし風力はどうでしょう」
フリーダは一つ、提案してみる。
「自然の力ね!」
ジェラルダはメモを引き続き取っていく。
「例えば水車や風車を利用して穀物の製粉を行う機構はどこの国でもある仕組みですから、穀物の代わりにウォームコアを設置して叩く仕組みを作ってあげれば良さそうです」
「大がかりになりそうだけど、ローズベルト商会に出来ない物はないわ。まず砂時計と炬燵から、そしてハムスケと風車を試してみましょう!」
婆やの眉がピクピクッと動いた。
「ジェラルダ様、ハム助を捕獲なさるのですか? 一体どこで?」
「まずは鼠魔獣で良いわ、目の前に餌をぶら下げておけば充分よ」
達筆な字で「はむ助の捕獲」とメモしていく婆やだった。
●試作開始
まずは商会の開発部が、ウォームコアの入る砂時計型装置を作ってくれた。落とす玉はごく軽い金属製のものに決まった。
「じゃあ、セットするわね……開始!」
徐々に落ちていく玉がウォームコアに当たると共に、熱が発生して周囲を温める。落ちるスピードは調整が必要だったが、ウォームコアは問題なく稼働してくれた。
「容器に使う素材の滑り具合や玉の数を調整すりゃ、そのまま砂時計みたく時間を計る方にも使えっかなと。1個だけとなると順番待ちとかでトラブルもあり得ると思うんだが、時間で区切りを付けられるならその予防になるかもしれねぇ」
「成程ね、時間制で温まれるのは平等で良いわ」
火傷防止に、燃えにくい素材で格子状に柵を作ったのも正解のようだ。
続いて炬燵。シンプルに布を重ねて、熱気を逃さない。叩く機構はとりあえず仮に開発部が作った物を、ウォームコア上部に取り付けてある。
「ぬくぬくで御座いますねぇ……」
婆やが試しに入ってみる。成程、これは心も体もほっとする。
ベアトリーチェは更に思いついた。
「小さな欠片でも温かくなるなら、手軽に持ち運べる暖房器具も作れるのでは!」
「そうね、欠片を拝借してみましょうか。叩く機構は手でパンパンするなり工夫が必要だろうけど……」
ほんのひと欠片を慎重に削り、試しに厚めの燃えにくい素材でサンドしてみる。サンドした直後に上の素材を外すと、柔らかい熱気がぽかぽかと漂って、少し経つと冷めていった。
「うん、これなら小型化も可能ね!」
どこまで削って良いものかは慎重に考える必要があるが、ひとまず小型化が可能だと気づけたのは大きな収穫だ。小さめの袋に入れてしまえば持ち歩きながら暖まれるだろう。
「旅人や冒険者が服の下や靴の中に仕込めば、手を塞ぐことなく暖を取れる便利な道具になるのではないでしょうか」
「そうね、問題はウォームコアの削れる量にも限りがありそうだって事ぐらいかしら」
量産できる物ではないし、既に温蝸牛の枝場が消えている可能性だってある。このウォームコアからいくらの小型ウォームコアが作れるだろうか。
そして約一時間後。鼠型魔獣、通称「ハムスケ」が3匹ほど捕獲されてきた。
「言う事を聞きますかねぇ、ジェラルダ様」
婆やは心配そうにジェラルダとハムスケを交互に見つめる。一時間のあいだに作られた箒付きの回し車の中に連れていき、餌を目の前にぶら下げると――勢いよく走り、いや回し始めた。箒がウォームコアをペシペシと叩き、熱が瞬く間に広がっていく。
「おお、俺が求めていたのはこういう物だ」
シャドウは回し車を駆けるハムスケを愛でながら、控えのハムスケ2号とハムスケ3号を餌で手懐けていた。
「友好的な魔獣で良かったわ!」
餌で懐柔出来る程度なら、これはハムスケによる一大ブームが来てしまうやもしれない。
そして、最後は風車。これは規模も相まって外で試す必要があった。
「それじゃあ、開始よ!」
開発部が作り上げた仮の帆が風を受けて回り出すと、ウォームコアは熱を発生させ始める。帆と風の力で、徐々にそれは強くなっていった。
「町の中央にこの機構を持つ風車を用意して、24時間叩き続けてもらう事で村全体を温めることが出来るかもしれません」
フリーダは嬉しそうだ。
「そうね、規模としては村全体を温めるのに問題ないわね!」
風速によっては、隣の商会の人たちも熱気に気付いて集まってくる程であった。
「あるいは発生した熱を使って水を温めて温水を作って、それを村の家々の床下に通す事で床を暖める事もできるかもしれません」
実用化すれば冬でもとても快適に過ごせるとの啓示。だが、そこまで行くためには風車や水車を作った後に、温水を循環させるポンプや床下を循環させるパイプを作る必要がある。とても大規模な工事になってしまうという欠点はあった。
「ちょっと大がかりだし、とりあえずこの風車でも充分そうね」
ジェラルダは集まって来た近隣の店主達を見つめていた。
●なんという事でしょう
どれも出来が素晴らしかった為、試作品は改良をしたのち全て寒冷部の村へと配る事となった。その為に、コアを4つに分ける必要があった。この作業は慎重に行われたが無事に成功し、一番大きい物を風車へ、次いで大きい物二つを炬燵二種へ、一番小さい物をあったかハムスケマシーンへと取り付けた。勿論、ハムスケや炬燵に入る人に怪我の無いように加工済みである。
ルイドは寄付される前に、もう一度だけ砂時計式炬燵に入ってみた。
「たぶんこれ、手軽に水分補給できるものとかあるとひたすら居続けられると思うんだよな……蜜柑とか……」
「蜜柑で御座いますか、それなら故郷から送られた品が御座いますのでどうぞお一つ……」
婆やが提供した蜜柑でうっかり長居する所だったが、ルイドは蜜柑を食したのち何とか炬燵の魔力から出る事が出来た。
「ちゃんと村の方々の言う事を聞くんだぞ」
『チュウ!』
『チュア♪』
『ヂュウ!!』
シャドウは村へ送られるハムスケ1号から3号に別れを告げた。彼らの餌は手軽に手に入る物で充分な為、定期的に食事をやれば充分回り続けてくれるだろう。
「送る村が増えちゃったわね。婆や、他の村のリストアップは?」
「済んでおりますとも、ジェラルダ様」
こうして、帝国の村4か所に暖房が寄贈されたのだった。
4人の冒険者がローズベルト商会に来たが、その中には先日温蝸牛を倒した者も居た。
「先日倒したクリーパーが落とした素材ですか。確かに有効利用できれば寒冷地での生活に役立ちそうですね」
フリーダ=ブロムヴィストもその一人である。実はあのコタツムリはクリーパーというより魔獣であった。フリーダの脳裏にどこかから啓示が入ったが、理解出来ないので気にせずウォームコアを見つめた。
「元々は外敵を柔らかい身体で包み込み、その温かさで逃げられなくする性質を持つ魔獣から取れたものだそうで。狭い範囲を温めるとより効率的なのではないでしょうか?」
ベアトリーチェ・カロッサは図解していく。机の中にウォームコアを置き、上に布を重ねて熱が逃げないようにしていくものだ。
「おぉ、炬燵ですね」
シャルガネ生まれの婆やが反応した。
「叩く……衝撃を与える……。あんま強いと割れちまうし、例えば木製か重過ぎない範囲で金属製の玉あたりをぽとぽと落としてぶつけるのとか、どうだ?」
ルイドがイメージしたのは砂時計。底をウォームコアと同じ形状にして球の逃げ道にして、更に順番に暖まるなら時間も計れるという仕組みである。容器越しに熱気が伝わればなお良しだ。
「これなら場所取るのは上部だけで済むんで、例の温蝸牛のような形なら四方から人が入れるな」
「掘り炬燵状にしてしまうのもありでございますね」
婆や曰く、上がただの容器ならそれを机にして足を突っ込んでしまうのもありだとか。その場合、問題は炬燵の高さになるが。
そしてシャドウの提案はというと、とても真面目に提案された物だった。
「俺の提案する装置は名付けて『あったかハムスケマシーン』だ」
「あったか……ハム? スケ?」
ジェラルダが首を捻った。
「と、とにかく聞かせて頂戴?」
鼠型魔獣、一部地域ではハムスターと呼ばれているとかいないとか。それらを捕獲して車輪のような物『回し車』の中を走らせ、定期的な回転力でウォームコアに箒をぺちぺち当てるという機構をシャドウは説明する。
「ハムスケを何頭か用意して交代で走らせれば24時間稼働させることも可能だ」
「そうね、問題はハムスケを探さなきゃいけないけれど……」
ジェラルダは真剣にメモしていく。
「可愛らしいハムスケたちを愛でることも出来、一石二鳥だ。とても素晴らしい案だと思うが、どうであろうか?」
「そうね、素晴らしい案よ。……ねぇ婆や、ハムスケってどこにいるのかしら?」
百ウン十年生きているジェラルダも、ずっと商会周りの仕事をしていたので魔獣については詳しくなかった。
「鼠型魔獣で御座いましたら、そこかしこに……ハム助は存じ上げませんが」
「24時間自動で叩き続ける機構でしたら、水力ないし風力はどうでしょう」
フリーダは一つ、提案してみる。
「自然の力ね!」
ジェラルダはメモを引き続き取っていく。
「例えば水車や風車を利用して穀物の製粉を行う機構はどこの国でもある仕組みですから、穀物の代わりにウォームコアを設置して叩く仕組みを作ってあげれば良さそうです」
「大がかりになりそうだけど、ローズベルト商会に出来ない物はないわ。まず砂時計と炬燵から、そしてハムスケと風車を試してみましょう!」
婆やの眉がピクピクッと動いた。
「ジェラルダ様、ハム助を捕獲なさるのですか? 一体どこで?」
「まずは鼠魔獣で良いわ、目の前に餌をぶら下げておけば充分よ」
達筆な字で「はむ助の捕獲」とメモしていく婆やだった。
●試作開始
まずは商会の開発部が、ウォームコアの入る砂時計型装置を作ってくれた。落とす玉はごく軽い金属製のものに決まった。
「じゃあ、セットするわね……開始!」
徐々に落ちていく玉がウォームコアに当たると共に、熱が発生して周囲を温める。落ちるスピードは調整が必要だったが、ウォームコアは問題なく稼働してくれた。
「容器に使う素材の滑り具合や玉の数を調整すりゃ、そのまま砂時計みたく時間を計る方にも使えっかなと。1個だけとなると順番待ちとかでトラブルもあり得ると思うんだが、時間で区切りを付けられるならその予防になるかもしれねぇ」
「成程ね、時間制で温まれるのは平等で良いわ」
火傷防止に、燃えにくい素材で格子状に柵を作ったのも正解のようだ。
続いて炬燵。シンプルに布を重ねて、熱気を逃さない。叩く機構はとりあえず仮に開発部が作った物を、ウォームコア上部に取り付けてある。
「ぬくぬくで御座いますねぇ……」
婆やが試しに入ってみる。成程、これは心も体もほっとする。
ベアトリーチェは更に思いついた。
「小さな欠片でも温かくなるなら、手軽に持ち運べる暖房器具も作れるのでは!」
「そうね、欠片を拝借してみましょうか。叩く機構は手でパンパンするなり工夫が必要だろうけど……」
ほんのひと欠片を慎重に削り、試しに厚めの燃えにくい素材でサンドしてみる。サンドした直後に上の素材を外すと、柔らかい熱気がぽかぽかと漂って、少し経つと冷めていった。
「うん、これなら小型化も可能ね!」
どこまで削って良いものかは慎重に考える必要があるが、ひとまず小型化が可能だと気づけたのは大きな収穫だ。小さめの袋に入れてしまえば持ち歩きながら暖まれるだろう。
「旅人や冒険者が服の下や靴の中に仕込めば、手を塞ぐことなく暖を取れる便利な道具になるのではないでしょうか」
「そうね、問題はウォームコアの削れる量にも限りがありそうだって事ぐらいかしら」
量産できる物ではないし、既に温蝸牛の枝場が消えている可能性だってある。このウォームコアからいくらの小型ウォームコアが作れるだろうか。
そして約一時間後。鼠型魔獣、通称「ハムスケ」が3匹ほど捕獲されてきた。
「言う事を聞きますかねぇ、ジェラルダ様」
婆やは心配そうにジェラルダとハムスケを交互に見つめる。一時間のあいだに作られた箒付きの回し車の中に連れていき、餌を目の前にぶら下げると――勢いよく走り、いや回し始めた。箒がウォームコアをペシペシと叩き、熱が瞬く間に広がっていく。
「おお、俺が求めていたのはこういう物だ」
シャドウは回し車を駆けるハムスケを愛でながら、控えのハムスケ2号とハムスケ3号を餌で手懐けていた。
「友好的な魔獣で良かったわ!」
餌で懐柔出来る程度なら、これはハムスケによる一大ブームが来てしまうやもしれない。
そして、最後は風車。これは規模も相まって外で試す必要があった。
「それじゃあ、開始よ!」
開発部が作り上げた仮の帆が風を受けて回り出すと、ウォームコアは熱を発生させ始める。帆と風の力で、徐々にそれは強くなっていった。
「町の中央にこの機構を持つ風車を用意して、24時間叩き続けてもらう事で村全体を温めることが出来るかもしれません」
フリーダは嬉しそうだ。
「そうね、規模としては村全体を温めるのに問題ないわね!」
風速によっては、隣の商会の人たちも熱気に気付いて集まってくる程であった。
「あるいは発生した熱を使って水を温めて温水を作って、それを村の家々の床下に通す事で床を暖める事もできるかもしれません」
実用化すれば冬でもとても快適に過ごせるとの啓示。だが、そこまで行くためには風車や水車を作った後に、温水を循環させるポンプや床下を循環させるパイプを作る必要がある。とても大規模な工事になってしまうという欠点はあった。
「ちょっと大がかりだし、とりあえずこの風車でも充分そうね」
ジェラルダは集まって来た近隣の店主達を見つめていた。
●なんという事でしょう
どれも出来が素晴らしかった為、試作品は改良をしたのち全て寒冷部の村へと配る事となった。その為に、コアを4つに分ける必要があった。この作業は慎重に行われたが無事に成功し、一番大きい物を風車へ、次いで大きい物二つを炬燵二種へ、一番小さい物をあったかハムスケマシーンへと取り付けた。勿論、ハムスケや炬燵に入る人に怪我の無いように加工済みである。
ルイドは寄付される前に、もう一度だけ砂時計式炬燵に入ってみた。
「たぶんこれ、手軽に水分補給できるものとかあるとひたすら居続けられると思うんだよな……蜜柑とか……」
「蜜柑で御座いますか、それなら故郷から送られた品が御座いますのでどうぞお一つ……」
婆やが提供した蜜柑でうっかり長居する所だったが、ルイドは蜜柑を食したのち何とか炬燵の魔力から出る事が出来た。
「ちゃんと村の方々の言う事を聞くんだぞ」
『チュウ!』
『チュア♪』
『ヂュウ!!』
シャドウは村へ送られるハムスケ1号から3号に別れを告げた。彼らの餌は手軽に手に入る物で充分な為、定期的に食事をやれば充分回り続けてくれるだろう。
「送る村が増えちゃったわね。婆や、他の村のリストアップは?」
「済んでおりますとも、ジェラルダ様」
こうして、帝国の村4か所に暖房が寄贈されたのだった。
マスターコメント
開発協力お疲れ様でした!
全て開発に成功したので、4つの村に暖房が送られる事になりました。
小型化にも成功したので、商会で数量限定で販売を開始した模様です。
またのご参加をお待ちしております!
ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜8人
2023年01月26日 10時16分55秒 公開
大成功
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