【初夢】奥山城殺人事件

狐野径

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シナリオID:2726

オープニング

※このシナリオは「夢オチシナリオ」です。シナリオ内容は架空のものであり、アニエピカの世界観に一切影響を与えません。報酬は冒険者ギルドからのお年玉です。

●場所は、現代らしい
 ウル・ヘルバはグレイオンスと温泉巡りの旅の途中だった。
 自動車のハンドルを握るウルは落ち着いているが、耳としっぽが緊張感を漂わせている。
 グレイオンスは移動中はうつらうつらしていた。乗ったころは雪景色を楽しんでいたが、現在は外が真っ白だったりする。

 カーナビが伝えてくるのは「ここ、どこ?」ということ。
「嘘だろ……」
 ウルの耳がピコンと跳ねた後、しおれる。
 雪が降りすぎて、運転に慣れていないウルは危険だと理解していた。
 とはいえ、今いるところがわからないとなると、宿を別に取るのも難しい。
 目的地に向かっていると信じて、慎重に進むしかない。

 雪は降ると言っていたけれども、ドカ雪予報ではなかった。
 明らかに不運で想定外だ。
「狭い道だなぁ……あれ?」
 ウルがたどり着いたのは、城の入り口だった。
 洋館というにはちょっと違い、城壁がある、ヨーロッパでありそうな城。
「嘘だろ……」
 吹雪がひどくなり、ホワイトアウト寸前だ。
「……避難させてくれるか聞いてこよう……その前に、人住んでるのか?」
「……明かりがついている」
「……うわっ、あ、グレイ、起きた? 迷った、すまん」
「うむ……」
 それ以上言わない。
 ウルが下りると、グレイオンスも下りようとする。
「待ってる方が」
「いや、視界がなくなったら、往復は難しい」
「あ、そっか」
 グレイオンスはウルの肩に手を載せ、離れ離れにならないように気を付けた。

 門には、呼び鈴がついていた。
 それも、カメラがついており、呼び鈴の前に立った人を撮影するタイプだ。
 ウルはボタンを押す。
 しばらくすると応答があった。
「いかがされましたか?」
「すみません、雪がひどくて、こちらにたどり着きました。よろしければ、屋内に避難させていただけないでしょうか?」
「構いませんよ。同じようなお客様がいらっしゃっています。どうぞ、お入りください」
「はい! 自動車はどうしましょうか」
 やり取りの後、そのままでいいと言われた。
 グレイオンスには門のところで待っていてもらい、ウルは慎重に車のところに行き、荷物は持って来た。
 ホワイトアウト寸前だったが、嗅覚や視覚がしっかりしているおかげで戻ってくる。

 扉が開き、中から執事らしい人物が出て来た。
「寒かったでございましょう。どうぞ」
「ありがとうございます」
 ウルとグレイオンスは中に入った。
 中は重厚感があり、天井も高く、広さもあった。
 外よりは暖かいがどこかひやりとする。

 執事を名乗る人物は、
「お部屋に案内しますが、まず、居間で暖まってください。温かいお飲み物もお持ちします」
 と、丁寧に言う。
「本当、助かったし、そんな、親切にしてもらって……」
「いえ、この城は人里から離れていますし、なかなか客もおりません。時折、偶然避難してくる人でも大変うれしゅうございます。皆様の不運に対してそう申しますのも大変申し訳ありませんが」
「助けてもらってるのはこっちだし。そうだ……ご主人にもお礼を述べないとな」
「いえ、主のことを気になさらずとも構いません。人前にめったに出ませんが、このような助けをできることは誇りに思っていらっしゃいます。ごゆっくりと不便なく過ごしていただければ嬉しい限りです」
「そうなのか……」
 ウルは首をかしげる。
「色々思うことがあるのだろう。親切には感謝し、ありがたく受け取ろう」
 グレイオンスが淡々というので、ウルは「そうだよな」と首を縦に振った。
 居間に入ると、ウルたち以外の客もいる。
 突然の吹雪に道に迷ったという。
 互いに自己紹介しつつ、無事、安全そうなところにいられることに感謝していた。

 ウルとグレイオンスは体を温めた後、部屋の準備が整ったということで、荷物を置きに行く。
 そのあと、夕食となる。

 広い食堂、絵で見たことがあるだけの長いテーブル。
「こういうの見ることになるとは思わなかった」
 ウルの尻尾は元気よく振られている。
「そうだな……ただ、尻尾は引っ掛けないようにしないとならないぞ」
 グレイオンスは指摘した。ウルは尻尾を止めた。

 食堂での食事は客だけで、城の主は出てこないという事は確実だった。人前に出ないのだから、それはそうだろうけれども。
 どちらにせよ、緊急で来た自分たちに、温かい料理をしっかり出してくれた人たちに、感謝の念は募る。
 食後、客たちは、居間でくつろぎ、ボードゲームや話をしたりしていた。
 外の吹雪はひどくなるばかり。
 電気が通っているのが嘘のようだが、ありがたい。ただし、携帯電話などの通信機器は全く使えない状況だった。
 山の中だし仕方がないと考える。

 そろそろ寝ようか、というとき、
 ――キャアアアアアアアアアアアアア
 という、悲鳴が城のどこかから聞こえて来た。

 居間にいる人たちは不安がり、見に行こうとする人とここにとどまろうとする人がいる。
「グレイはここで待ってろ」
「一緒に行った方がいいのでは?」
 グレイオンスが理由など言おうとしたときには、ウルはすでに走っていった。
 ウルや居間にいた客がが悲鳴がしたらしい部屋に到着したときには、ここの使用人や執事がいる。
「何があったんだ」
 声を掛けられ、執事は、動揺した様子を抑えつつ、
「……申し訳ありません……お騒がせして……」
 と頭を下げる。声は震えているしウルが「真っ青じゃねぇか」と指摘する顔色だった。
 執事は事実を伝える。
「……主が……倒れて……息をしていません……」
「なんだって!」

 ウルは中を覗き込む。
 テーブルのそばに倒れる人物をとらえた。
 粉々に砕けた何かの破片。
 テーブルの上にはティーポットとソーサー。
(ソーサーが二つ? 誰かいたってことか? カップ二つ割ったってことか?)
 ウルは冷静に考えると、一つ大きな問題に気づいた。

「まさか……殺人なんじゃね?」

 執事たちは一気に現実に引き戻された顔になる。
 ウルは外を見て「外部に連絡しても……救急車も来られねぇよな……」とつぶやく。
 執事が申し訳なさそうになる。
「あの……それどころか、ここには、外部に連絡する手段は一切ありません」
「は? 固定電話は?」
「ありません」
「……光ファイバーとか、そういうのも?」
「ございません。無線もございません。伝書鳩はおりますが、このような天候では飛べません。携帯電話の電波が届かないとなると、完全に連絡手段はありません」
「え、ええ……」
 ウルは内心頭を抱えた。

 さて、何があったのか?
 救援要請もできないし、情報収集もままならない。
 目の前にあることが事実であり、誰かが知っている可能性があるのかもしれない。

 皆のアリバイは、どうなのだろう?
 ここにあるのがすべてなのか?

 状況は調べないとわからない。
 これで終わるとも限らない――。

解説

●目的・目標  殺人事件が起こった雪山の城の出来事に何等かかかわる。  犯人は、お前なのか――?  リプレイの開始はOP直後から、朝になると電波は届くし、雪かきさえすれば出られる。 ●状況  部屋数もたくさんある西洋の城のような建物。  外は大雪で出ることは難しい。  悪天候により連絡手段は絶たれている。携帯電話等の電波も届かないようだ。  城主が寝室で苦悶の表情を浮かべて、倒れている。こと切れているようだ。  テーブルの上にはティーポットが一つ、ソーサーが二つある。  カップは床の上で粉々になっている。  聞き込みをすると部屋の鍵は閉まっていたという。  あとのことは――登場人物次第――。 ●名前のあるNPCの状況  ・ウル・ヘルバ 近所のおじいさんに付き合って、温泉はしご旅行中。  自動車の運転をしてきた。超嗅覚と超視覚があるらしい……。  なお、行動はOPの通り。  ・グレイオンス 近所のウルにくっついて、温泉はしご旅行中。  居間に残った客の一人。 ●皆様の立場  城にいる誰かとなります。  種族や性別、年齢などキャラクターの根幹はプレイングのままです。そこから変装して、活動するみたいなことは可能です。無茶な変装でなければ……。  出来ることのイメージは、通常の行動やスキルの範疇です。つまり、念動力で心臓をつぶすとかはできません。  探偵役がいない場合、ウルが探偵役となります。探偵役が一人とは限りません?  立場は「冒険者」ではなく、探偵でも犯人、訳ありで侵入して使用人のふりをしているとか、雪に迷ってここに来た客などとなります。  なお、OP登場の名前のないものたち、ということではまっていただくことも可能です。  執事、使用人、客たち。  城主は死んでいるはずです。苦悶の表情を浮かべているとか曖昧なことしか書いてません。要確認事項だったり、実は――? ●プレイングについて  立場。客なのか、何か探しに来た人か……といったもの。  城主殺しでのアリバイ。客でも全員居間にいたとは限らないため。  犯人の立場、殺される被害者の立場になることへの可否。  状況によってはMSが独断と偏見で選ぶ可能性があるため。  記載がない場合は避けます。 ●おまけ  城にはマニア垂涎のお宝がある、とか?  城主の性格や評判はOP記載以外規定なし。

マスターより

 こんにちは、狐野径です。  新年早々、血なまぐさい内容になりました。  殺人事件の現場に居合わせた誰かとなるミステリ劇です。  客でも使用人でも、また、何等かで逗留していても、隠れている人でも……よいです。  NPCは殺害されても、犯人にされても構いません。そこは、明記しておきます。  よろしくお願いします。

リプレイ

●聞こえた悲鳴
 ヴァン・ローラントはすぐさま部屋を飛び出した。
 主から請け負ったことを考えれば、最悪な状況よぎる。
 シャドウとアラン・スミシーが続く。
 ウル・ヘルバはグレイオンスをとどめた後、追う。
 ベアトリーチェ・アルカディア・ローゼンクロイツは居間にとどまる。グレイオンスがとどまるのだし、残ることも一つの選択肢だ。

 主の部屋に到着すると、苦悶の表情を浮かべ、息をしていない主を見ることになる。
「っ、何のために」
 ヴァンは奥歯をかみしめるが、すぐに調査に移る。
「発見者は?」
 当時の状況を知ることになる。

 ユニス・ソロアーヌ・アクエリリーアは自室にいたが、部屋の外が騒がしい。
 情報を求め、やって来た。
「私は医者よ。よければ、死因を確認しようと思うのだけれど」
 そして、主と対面した。

●ひとつ
 ユニスは手袋をはめ、しゃがみ込み、主の状況を観察した。タイトスカートからのぞくは、黒いタイツに包まれたなまめかしい脚。
「少なくとも、心臓発作とか脳卒中のような病死ではないわね」
 上がった裾を抑え、立ち上がる。
 テーブルを見て「見たところ、遺書もないみたいだし、自殺なら苦しくない毒を選ぶと思うのだけど」と、集まっている者を見た。
(ダイイングメッセージはあるかしら?)
 粉々になった二客のカップ。
 アランが「この近辺に死に至る危険もある毒草が自生していたぞ」と飄々と言う。
「趣味では登山をしていてねぇ! ここがなければ死ぬかと思った! て状態だったんだ。どことも知れない客を入れてくれたことに感謝しているんだ」
 真摯に主に対して頭を下げた。
「その毒草は遅速だし、主が一人になったときに鍵をかけ自分自身で、という事もありうる。それに、茶の種類によっては混ぜることは難しくないと思うよ」
 ヴァンが「仮に毒草だとして、味でわかるのでは?」と問う。
 アランは首を横に振る。
「山菜と混じっていると独特な苦みがわからなんだ。山菜採りの時にきちんと調べていなかったら、おじさん、今頃冷たくなっていたかも……なんてね」
 シャドウも部屋の中を眺めていた。
(この部屋にヒントがあるかもしれないから、見ておいて損はない)
 このようなことに居合わせてしまった哀れな学生であるが、目的は別だ。また、このことがどう影響するかはまだわからない。
 しばらくして「一旦居間に戻ろう。全員、集まってもらおう」とヴァンがいった。

 ベアトリーチェは居間で待機するが、沈黙だけが漂う。
「落ち着いているでございますね」
 と、ベアトリーチェが話しかける。
「年の功というべきか」
「そういうものなのでございますか?」
「君も落ち着いている。ならば、年の功というのもおかしいか」
 立ち上がるグレイオンスに、ベアトリーチェは、
「他の人を待った方が良いのではございませんか?」
 グレイオンスは「そうだな」と苦笑する。
「君の方が落ちついている。近所の子のことが心配になってしまう」
「……ウルさんでございますね」
 居間で客が顔合わせしたとき、軽い自己紹介はしていた。
「グレイオンスさんとウルさんは、こちらでは一緒に行動されているのでございますか?」
「別行動する理由もない」
「そうでございますね」
 もやもや何かが残る沈黙が漂い始めた。

●アリバイ
 客と使用人のすべてが居間に集まる。
 ヴァンはその者たちを見て、
「最後に動いている主の姿を見た人は誰か、全員の行動を知りたいです」
 と仕事として切り出す。
「俺たちは、会ってない。グレイとは自室から食堂、居間にいた」
 ウルが見ると、グレイオンスがうなずく。
「テーブルに残っているものは私が用意しました」
 と使用人の一人が告げる。二客用意したのは、主の指示だったという。鍵はかけていないため、主が掛けたと推察される。
 使用人がヴァンを見ていたため、アランが「きみが二客あるカップの人?」と問う。
 ヴァンは名刺を取り出す。
「主人に依頼された探偵です。確かに、二人きりになったことは事実。ただし、吹雪となる前です」
「私がそれは下げております」
 使用人が裏付けた。
 シャドウは驚き、
「……主が何か気にしていたってことか? そんなところに居合わせるなんて、小説みたいだ」
 と言った後、突然「犯人はこの中にいる! 犯人はお前だ!」と叫び、グレイオンスを指さした。
 グレイオンスは反応がないが、ウルが耳と尻尾の毛を逆立て怒っている。
「何でだよ! グレイは、俺とずっと一緒にいたんだぞ! それに、こんなところに城があるなんて知らなかったんだし」
「冗談だ。俺だってハイキングしていて予想外の大雪に見舞われて、この館に避難しただけの学生だ。居間にずっといて、そこに来たのは見てる」
 シャドウは肩をすくめた。
「元々雪の予報は出ておりましたが、それでもハイキングに向かったのでございますか?」
 ベアトリーチェの言葉にシャドウは「は?」と言葉を返すが、答えた。
「まぁ、計画は立てたし、雨天決行ならぬ雪天決行だな」
 ベアトリーチェは「それもそうでございますね」と納得をみせた後、ヴァンに向く。
「どういうことか聞いてもよいでございますか? ぼくはただの学者でございますが、事件の解決の手助けを行いたいでございます」
 できることして、協力する方が良いだろうと判断していた。
 ヴァンは「本来なら、守らねばならなかったんだ」と後悔が口を突く。
「脅迫状が届いたんです『お前を許さない、殺してやる』という。本当にことを起こすとは考えにくいが、念のために見張りを頼む、という依頼です」
 パソコンなどを使って作られたものだったという。
 ヴァンの視線はユニスに向かった。彼女は夕食以外見かけていない。
 ユニスは艶然と微笑む。
「あら? 疑われているのかしら?」
「夕食前後の行動を聞きたいだけです」
「そうね、夕食は皆一緒だったものね。その前については私以外もバラバラではないの?」
 夕食前についてはそれぞれ話してもらうことになる。居間にいるかあてがわれた部屋にいるかのいずれかだ。
 その上で、ユニスの一人の時の状況は、
「用意してもらった部屋で過ごしていたわ。本を読んだり、バスルームでシャワーを浴びたりしてたの」
 といい、湿り気がほんのり残る髪に触れた。
「そうねぇ、私が犯人なら、わざと探偵側に身を置いて疑いを逸らすとか、推理を見当違いに導くとか? 検視を買って出たのも、自分が犯人と示す証拠品を回収するためとかね」
 ウルが「毒草がどうのって?」というと、アランが「例えばだね」という。
「この辺で生えているから、それを使えば、事故に見せかけることもできるっておじさんは思ったんだ」
「そっか」
「遅速性だし、一人きりだったのに主人が毒殺に見立てた……という事もありうるかもしれない?」
 ベアトリーチェ「脅迫文があったのでございます」というが、アランは「そこも自作自演のための裏付けかもしれない」と推測する。
「とはいえ、あくまでそうだろうということだ。調べないとわからないわけだ」
 アランはヴァンを見る。
 ヴァンがうなずく。毒の特定は簡単ではないから、見落としたことがないか、一つ一つ見ていくしかない。
 ベアトリーチェはここまで聞いたことから情報を紐解き「検視?」とつぶやく。
 ユニスが怪訝そうに「そうね、どうかしたかしら?」と聞く。
「貴殿がしたのでございますか」
「ええ、そうよ」
「その際、すでに死亡は確定していたのでございますか?」
 ヴァンは「息はしていないと話はしていた」思い出すように言う。
 ユニスは「あら? やっぱり、私が疑われているのね」とベアトリーチェを見る。
「婚約者の命日で墓参りの帰りに、雪のせいで避難したのよ?」
「墓はどこにあるのでございます?」
「近くの村の外れよ。あの人の故郷がこっちなのよ」
「このような雪の中を移動しなくてもよいのではないでございましょう」
「仕方がないわよ。有給休暇は今日までなのよ? 医者として勤めているのだから」
 ユニスは立ち上がる。
「探偵さん、私は部屋で過ごしていいかしら? ここにいても、疑われるぽいし。隠し扉とか通路とかあるのかしら? それがないなら、部屋で過ごす方が安心できるわ」
 ヴァンは城の構造に関しては使用人の方を見る。
「ない……はずです。使用人も知らないものがある、ならば、それは主のみ知っていることになります」
 隠し通路があるならば、それを利用して殺害した可能性も出てくる。
「ない、ようだし、今、戻るのが一番安全ということよね」
 ユニスは自室に戻った。

 アランは「おじさんはここにいるつもりだよ」と告げる。
「へたに動かない方がこういう時はいいだろう。それと、何かあれば手助けはするよ」
 シャドウは「トイレ、行ってくる!」と急いで部屋を出た。
 ウルが「追いかけるか?」とヴァンに問う。
「いや……無理にしなくてもいい」
 ユニスとシャドウは何か知っているようであり、関係ないのかもしれない。
 わからないことがあるのだから、調査をするのだった。

●消える
 ベアトリーチェは主の経歴や城の構造の確認など、資料調査を始めた。恨みを持つのは誰なのか、隠し通路や部屋の有無は一つに手助けになるかもしれない。
 居間に客の半分はいる状態。使用人たちは二人以上で行動するように取り決めた。
 アランは手持無沙汰である。時間が経つのが遅いとはいえ、
「それにしても、シャドウくんはどこのトイレまでいったのか」
 と気になった。
 ウルが「確かに」と立ち上がる。
「探しに行くのかい?」
「心配じゃね?」
「犯人かもしれないぞ」
 ウルは心配そうにグレイオンスを見る。
 アランは少し考える。
 遭難した場合は動かないのが鉄則だが、犯人がいる場所はどうだろうか、と。
「ヴァンくんに声を掛けておこう」
「ぼくはここで調べるでございます」
「よろしく。知らないところに紛れ込んで、白骨死体として発見、は嫌だね」
 グレイオンスが「私も行こう」という。
 ウルが難色を示すが、グレイオンスに押し切られ、三人で居間を出た。
 アランはまずヴァンがいるはずの場所に向かった。

 ヴァンは主の部屋を確認した。
 砕けたカップとその周りを見る。カップの状態や茶の様子を確認する。
 ティーポットを持つが、なみなみと入っている。
 蓋を開けて匂いを嗅ぐ。
「……何の茶だ?」
 茶の成分はすぐにはわからないため、死体の手や首の肌が露出したところを中心に見る。
 ノックされた扉が開き、アランの顔がのぞいている。
「ちょっといいかい? 実は……」

 ユニスは一人部屋にいた。
「あの人が死んだきっかけ……」
 彼の訃報が届いた時、我が耳を疑った。
 勤めていた大きな病院で不正を働き、共犯者に殺されたということだった。
 一方で、調べると「理事長やその一族の不正を暴いて、殺された」という噂がでてきた。それが真相らしいが、告発するには証拠がない。
 病院自体、評判がすこぶるいい。それと同じくらい経営者一族には悪評があった。
「だから、誰かが脅迫した……?」
 ノックの音。扉を開けていいか悩んだ。

 シャドウはほくそ笑む。
 色々鋭いところがある人達には慌てたが、目的が見抜かれなかったので安堵していた。
(この館にはお宝があるって話だし。あの病院の経営にかかわる一族……の持ち物なんだ。一見宝に見えなくとも、世間では垂涎の的の物品もあるはず。意外と隠すことなく、あったり?)
 内部の軽い視察が目的だったがた、堂々と入れたことは幸運だった。
(まさか、こういう事態にあるとはな……あー、トイレが長いってなりかねないから一旦戻ろう)
 下の階から「おおーい、シャドウ、どこだ。無事か」とウルの声がする。
 こちらにやってくるようなので、シャドウは隠れてやり過ごそうとした。
 壁に触れた瞬間、そこが消えた。
「え? うわああああ」
 シャドウの悲鳴が響き渡る。
「おい、どうした!」
 急いで駆けつけるが、そこには誰もいなかった。

●解決へ
 ウルは居間ると、ベアトリーチェが隠し通路を教えてくれた。ウルは一人でそこに向かったが、尻尾をたわしのように膨らませて居間に戻った。

 一方でヴァンはベアトリーチェから主の人間関係についてメモを受け取る。
 ユニスに危害が加えられることも考え、アランとともに部屋に見に行く。ノックしても反応はないため、中に入る。
 部屋には雪が舞い込む。窓の下には倒れる人影がある。急いで救援するが、ユニスはすでに冷たくなっていた。

 居間には生きている人が集まる。
 アランは言う。
「犯人は誰か目星がついたかな? そろそろお聞かせ願いたいものだよ」
 ヴァンは「グレイオンスさん、あなたが犯人の一人です」と静かに告げた。
 ウルは「なんでだよ! 俺、ずっといたし」と反論する。
 グレイオンスはウルの頭をなでた後、「殺すつもりはなかったのだ」と口を開いた。
「ウルが少し寝ている間に、旧知だから顔を見せに行った。その際、昔、看護部長だった私に、病院の状況を暴露されるとでも思ったのか、注射器を取り出してきた。もみ合った末刺した。介抱されるのも嫌がり、私を部屋を追い出した。カギを閉める音がした。注射器は私の部屋にある」
 アランは「ユニスは?」と問う。
「ユニスさんは状況を隠したんです。毒物の影響か針の痕は変色していたから」
「で、なんで転落?」
「脅迫文を出した人に殺されたんです」
「え?」
「ユニスさんの部屋には遺書があったんです。脅迫文と同じフォントの。内容は『婚約者の敵をとって死ぬ』と。そうするとグレイオンスさんの証言と矛盾します」
 執事の方を見た。
「脅迫状を出したのと、ユニスさんを自殺と見せかけたのは、あなたです」
「……!?」
「グレイオンスさんが病院のことを知っている。それ以上にあなたは主や一族のことを知っている。アンタの孫が倫理に反するような延命をさせられている……それも、主の意向で。それを止めるには、主を殺すか、脅迫で悪事に気付いて止めてくれることを願うこと」
 執事は膝を折り「なぜ、それを」とうめいた。執事は事情などを話した。
 なお、主たちの行動が悪化したのは、悪い部分をやめさせ常識ある医療に引き戻していた人々が定年退職後であり、現在である。
 主の殺害については解決した。
 ベアトリーチェは静かに切り出した。
「それよりも、ウルさん、尻尾がたわしのようになっているでございましたが、何かあったのでございますか?」
 ヴァンは「シャドウを見つけられなかったと言っていたが……まさか」
 ウルの耳がビクッと立った。
「だって、あいつ、グレイにひどいこと言ったから!」
 子どもの言い訳。
 ヴァンはアランを連れ、該当の隠し通路に向かった。
 扉を開けると、血臭が漂うが、シャドウの姿はなかった。

 後日、記憶を失った青年が村で保護されることになる。

マスターコメント

 ご参加ありがとうございました。  犯人やら被害者OKの方もあり、色々考えた結果――NPC二人とも何等か犯人になるし、追加被害が出る状況になりました。  一本筋は通ったと思いたいです!  ご縁があれば、お会いしましょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜6人

2023年01月22日 00時59分35秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ユニス・ソロアーヌ・アクエリリーア

    ユニスよ。 今の時点では、客の一人として居合わせた「女医」として、 検屍をしてみようかと思っているわ。 死因とか、この時点でハッキリさせられるものはさせておくわよ

  2. ヴァン・ローラント

    ヴァンだ、探偵役として事件を捜査するつもりでいる。 事件のあらましも犯人も参加者次第らしいが、さてどうなるか…。

  3. ベアトリーチェ・アルカディア・ローゼンクロイツ

    ぼくはベアトリーチェごさいます。 ただの学者ございます。 さて、客として来た訳ございますが、このような事が起きた訳ございます。 聴き取り調査して紙にも使うが……

  4. アラン・スミシー

    わぁ、人が集まったねえ!よろしく~! おじさんは想定外の積雪を見込んで慌てて駆け込んできた登山家だよ~。 ヴァンさんは何度かご一緒させていただいているねー夢に出てきても探偵……。 むにゃむにゃ……。

  5. シャドウ

    シャドウだ。よろしく。 俺はたまたま居合わせた学生だ。 正直、大したことはできないと思うので 他のメンバーからこんな風に動いてほしい、みたいな要望があれば それに応えたいと思う。 特にないなら適当な賑やかしになるかな。

  6. ベアトリーチェ・アルカディア・ローゼンクロイツ

    ぼくは汎用スキルの看破と記憶力を持っているございます。 この場に残っている客に話の内容を覚えていく事は出来るございます。

  7. アラン・スミシー

    こちらは戦術眼・資料検索を持っていくねえ。 おじさん、わりとロジカルなトリックとかは考えるの苦手でねえ……。 持ってる知識でヒント役!みたいな感じになりそう!

  8. ユニス・ソロアーヌ・アクエリリーア

    検屍役に手を挙げた者として確認したいのだけれど。 「自殺」「自然死」は「無し」で大丈夫よね? 「隠し通路とかはないわよね?」「こういう時、第一発見者を疑うんじゃないの?」みたいな突っ込みはしたいわね。

  9. ベアトリーチェ・アルカディア・ローゼンクロイツ

    紙、羽ペン、インクを持っているございます。 資料検索のヒントを掴んだ時に探偵役に渡してございます。 犯行の矛盾を気づいたは看破をかけます。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0