【再起】剣士の墓標
馬車猪
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シナリオID:2693
オープニング
剣の腕で名を残すのは大変だ。
勝敗以前の問題で、勝負の場に立つことが難しい。
「どうだっ」
激痛の中、満足そうな笑みを浮かべて1人の中年男がこときれた。
剣を振ってもなかなか上達せず、ある程度の腕を身につけても得られる仕事は安酒場の用心棒程度。
このまま衰えて終わると諦めかけていたときに請けたのが、この護衛依頼だ。
「やったなジジイ!」
隣で戦っていた若者が歓声をあげ、獰猛に歯を剥き出し剣を振り抜く。
先生が見れば眉をひそめて丁寧に駄目だしする程度の斬撃は、浅手とはいえ手の甲に傷を負った賊に防御を許さない。
頑丈な切っ先が使い込まれた胸甲を破壊。
剣の柄を介して肉と肋骨と肺を破壊する感触が伝わり、断末魔の悲鳴と大量の血が戦場を彩った。
●
「悪くはないわね」
馬上の代官は剣技を高く評価しない。
彼女にとって暴力は目的を達成するための手段であり剣術は暴力の一要素でしかない。
剣を使う冒険者も大活躍しているが、あれは授恵者が剣も使えているだけというのがセニャの認識だ。
セニャは馬を走らせ戦闘直後の場面へ到着。
賊を討ち果たした中年と若者の名を出し華やかに褒め称える。
長大な列をつくる元シュタールシュヴェーアト侯爵領の元住民が、命を賭けて自分達を守ってくれた勇者達の名を繰り返し叫ぶ。
それは生き残りの自尊心を満たし、まだ戦っていない剣士の名誉欲を刺激する。
その全てを、代官は微笑みの表情を浮かべたまま冷めた目で観察していた。
「通してください」
カール・イスターツがここまで乗ってきた馬から下りて代官のもとへ向かう。
馬はついて行きたい態度だが体力が残っておらず、途中で諦めて草を食べ始める。
「これはゴッチ先生」
セニャにとっては戦場ではないので下馬して出迎える。
カールは帝国では名が知られ人材育成にも実績がある著名人だ。
婚約者の師でもあるので代官がへりくだっても問題ない。
「先生に紹介していただいた人材のおかげで助かっています。武に自信があると乱暴になりがちですから」
「護衛で使い潰すことが代官の仕事ですか?」
普段から自らを厳しく律しているゴッチも、数名の死者とその数倍の重傷者を知ったあとでは穏やかではいられない。
「必要であれば」
代官には善意も悪意も露悪趣味もない。
彼女にとって、この戦場は資源を有効活用した結果だ。
(何ということを……)
ゴッチはため息をこらえる。
相手は代官とはいえ17歳になったばかりの少女だ。
伝えるべきことも教えるべきこともいくらでもある。しかし今時間をかけると無駄に人が死ぬ。元住民が難民になるかどうかの瀬戸際なのだ。
「私としてはゴッチ先生には後方での人材育成と監督をお願いしたいのですが」
シュタールシュヴェーアト侯爵領復興計画は始まったばかりだ。
人と物資を復興予定地に戻す際の護衛も、戻した後の防衛戦力も、質はもちろんだがそれ以上に数が必要だ。
貴族らしい計画立案能力と傲慢さで以て代官は親や祖母くらいに歳が離れたゴッチに要求した。
「今回だけです」
ゴッチは迷いを振り払うように、戦闘が起きそうな場所へ駈けていくのだった。
●
(代官様! また魔獣が現れました!)
(種類と数と方向を報告しなさい)
(代官さん代官さんっ。せんとーに悪い人が近づいてますっ)
(申し訳ありません。狼、西……ではなく南西、1匹です!)
(剣士さんが2人げーげきに向かいましたっ)
テレパスは混信しないが送信側が複数の場合は面倒なこともある。
(アナはリンク中のペットを狼魔獣の進行方向へ向かわせ防衛戦力を誘導しなさい)
(エリザベートは監視を続行。迎撃に失敗した場合のみ介入しなさい)
セニャは表情は変えず2人の部下にそれぞれ指示を出す。
(了解しました!)
(はいっ)
報告は拙いし平時なら訓戒や減給相当の言動まで混じってはいるが文句は言い辛い。
訓練不十分の部下を危険地帯に連れ出したのはセニャ自身なのだ。
(私達は戦わなくて良いのでしょうか)
(代官さんは戦わないんですかっ)
(指揮に専念しないと住民の列が崩れすぎて剣士連中の配置も滅茶苦茶になるわ)
(指揮に専念しないと住民の列が崩れすぎて剣士連中の配置も滅茶苦茶になるわ)
2度同じことを伝えるのは面倒だがテレパスの性質上やむを得ない。
冒険者や一部の例外を除けば、若さは未熟を含むのだ。
(了解しました……)
(はい……)
納得できていない反応を聞き、セニャはため息を我慢する。
侯爵領復興という巨大事業を動かすためには大量の人材が必要で、実家からついて来て古参人材は管理職に配置するしかなくなった。
(うまく行けば夕方までに到着か。我ながら余裕がない計画ね)
自身が実行可能な計画の中では最良という確信はあるが、問題が多いことも自覚している。
それでも今実行しなければ今より犠牲者が増える。セニャの資金にも限りがあるのだ。
(冒険者の頑張りに期待するしかないか)
結局、いつも通りの結論になった。
●
「シュタールシュヴェーアト侯爵領復興計画が始動しました」
ギルド職員が口にした名前は大袈裟だが内容は簡単だ。
半年持久できる食料と物資を持たせた元住民を元シュタールシュヴェーアト侯爵領の中心部へ送り込む。
日常的に発生する戦闘は冒険者以外に任せ、クリーパーやメドゥの指先などの強力な敵対戦力には冒険者で対処する。
要約すると、大量の資金投入が必要な金満計画である。
「今回は人員輸送の護衛補助です」
名目は補助でも実質は主力だ。
冒険者以外が時間を稼ぎ、冒険者が敵を撃破すること依頼人は期待している。
「これは冒険者以外の被害が多く出る計画です」
餓えた魔獣。
大地に潜むクリーパー。
凶悪な犯罪者が潜んでいることも珍しくはない。
それらに対し民間人を守りながら戦うのだ。
多少腕に覚えがある程度では時間稼で精一杯。
高名な剣士の門下である授恵者まで参加してはいるが、冒険者のような人材はとても少ない。
「出発地はシュタールシュヴェーアト最後の生き残りの村、目的地はここです。
職員が示したのは荒野が載っている地図だ。
地図には大規模な柵が描き込まれ、砦と呼ぶは広く城塞都市と呼ぶには小さすぎる場所が確保されているように見える。
帝国軍と代官が協力して作り上げた復興拠点だ。
「護衛対象の数は多く、大量の馬が同行しているとはいえ移動速度は遅いです」
だから少しでも早く目的地に到着できるよう既に出発している。
依頼をうけた冒険者は現地に急行して彼等を守ることになる。
「目的地に到着した後は帝国軍と代官の私兵が護衛を引き継ぐことが可能です。できる範囲で、被害を少なくした上で輸送を成功させてあげてください」
職員はそう言って、深く頭を下げるのだった。
解説
マスターより
リプレイ
「南東の2匹はおれがやる」
サイラスの声が戦場全体に響き渡る。
(時間をとられるのが面倒だな)
サウンドボマーの性質上、発動までに時間がかかるし戦いながら使うことも難しい。
しかし広範囲に情報を伝えるという利点は巨大だ。
体格とカリスマを兼ね備えたサイラスの良さを引き出し、膨大な人間が作る列を落ち着かせ人々を守る剣士達の士気を鼓舞する。
「まず1匹」
護衛が長時間続き戦いの回数も大量になるのは確実なのでスキルの無駄遣いはできない。
サイラスは長距離走としては十分以上に速い速度で狼に追いつき刃を振り下ろす。
固く滑らかな毛と皮膚も、肉厚でありながら恐るべき切れ味を誇る名刀には抗せず肉と血管と骨ごと切り裂かれた。
(剣は使えるようだけどねー)
人々を守る剣士達の腕は悪くない。
しかし冒険者でも軍人でも傭兵ですらないので護衛としての高くない。
相棒の死に気づかず人の群れに突撃した狼と剣士が、もつれ合うように泥臭い戦いを行っている。
「そのまま動くなよー」
サイラスは背中から炎の翼じみたエーテルを噴き出し加速するだけでなく名刀を介して衝撃波を放つ。
巻き添えになりそうなものなのに、狼の背中から腹までだけを断ち割って1つの戦いを終結させた。
(これだけの人と物を守るのは、工夫が必要そうですね……)
戦場と化した荒野で上品な装束と所作と武威を兼ね備えたミア=リゼルは、実力主義が行き届いた帝国人にとっては理想的貴族令嬢に見える。
代官は傲慢さと酷薄さが強すぎて理想とはとてもいえない。
「見物せずに列に戻った戻った。見世物が見たいなら生活を立て直してからにした方がいいよ」
最後尾のサイラスも列の縮小と速度の維持に協力してくれている。
(速度も上げないと柵すらない荒野で一晩すごすことになります)
ミアが身につけた戦術指揮はどちらかというと襲撃側の理屈と手法だが、ミアの知性と実戦経験があれば防御側の手法としても使える。
使えるから荒野での一晩が大量の死を意味することが分かってしまう。
「みなさん大丈夫です。私達が安全確実にシュタールシュヴェーアト領までお送りします」
ミルクティー色の柔らかな髪が冷たい風でふわりと揺れ、灰色の瞳は知性と気品だけでなく力強い芯も感じさせる。
「でも遅くなると食事の用意が大変になりますからね。1、2と掛け声をかけあって元気に参りましょう」
敢えて子供の遊びのように説明してはいるが実際は行進を行軍に近づける戦術指揮だ。
(ああ、なるほど)
戦う力のない人々の不安と期待と視線を意識する。
これに応えながら誘導するのには時間も集中も必要だ。
(セニャさんが馬を使って指揮に専念しているのはこれが理由ですか)
戦えるのに戦わないのは非情で酷薄だが納得はともかく理解はできる。
(無茶をしないといいですが)
ミアはちらりとアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトを見る。
黒汗馬を乗りこなし馬上で大型剣を片手で操る様は理想の騎士にも見える。
「領民の諸君を無事に送り届けてみせる! 安心してくれ!」
アルベルトの宣言に即座に歓声の反応がある。
彼が侯爵家を血を引くことを知る民など、侯爵継承が既になったかのように考え喜んでいる。
しかし見た目ほどの成果はない。
黒汗馬は戦闘に向いていない。黒汗馬の安全に配慮するとどうしても戦える回数と範囲が減ってしまうのだ。
(気持ちは分かるがなというかアルベルト殿を焦らせたのはセニャ嬢ではないか!)
ベルク・オスマットは時間をかければ確実に勝てる相手の頭上に閃光塗弾を投げる。
閃光を直視せずに済んだ賊が嘲笑を浮かべるがベルクは既にそこにはいない。
(ゴッチ様に挨拶もできんという不義理をっ……いましましいっ)
索敵、迎撃、伝令に遅滞戦闘とベルクは多方面で活躍中だ。
高速には大きな価値があり、単独で中装備の同格とも戦える戦闘力を兼ね備えているので価値はさらに上昇する。
(だが、なあ)
やるべきことも言いたいことも無数にある。
(セニャ嬢め、まだ王国時代の感覚が抜けておらんな)
問題が多々あろうと健在な王国と違い、崩壊後の帝国は人材を使い潰せるほど人材が潤沢ではない。
剣についてわずかに才があるだけの人材ですら貴重なのだ。
(代官としても未来の侯爵夫人としてもそれでは……)
現実に成果が出ているのもタチが悪い。最悪の状況で最悪の形で問題が現れる可能性があると、冒険者を始まる以前の経験が囁いている気がする。
ベルク=タークと視線があう。
修羅場に慣れた黒い馬は、荷車に疲れた民を載せて速度より振動の軽減に腐心している。
(ともかくセニャ嬢の意識改革は後回しでこの集団を目的地まで移送することが優先だ)
先送りに過ぎないことは分かっていても、まず今を乗り越えないと明日もないのだ。
●
3対1という数の差は圧倒的有利をもたらす。
多少以上の腕の差があっても、1人が耐えて1人が支えてもう1人が背後から不意討ちするだけでだいたいの相手には勝ててしまう。
「3対1を崩すな」
アーテミシアは剣士達に厳しく命令する。
「ですがっ」
裏の世界でそこそこ名の知られた賊剣士を追い詰めつつ若き剣士が、1人で1集団を食い止めるアーテミシアに視線と意識を向ける。
「オレは命令したぞ」
アーテミシアは舌打ちし、若き剣士は奥歯を噛みしめる。
5対1で、賊がアーテミシアを包んで潰すかのように攻め立てたのだ。
(切り札を使わされるとはなぁ!)
効きはしたが倒れはしない。
冒険者基準でも結構な強者である賊5人は、物理的な攻撃や技しか使えない。
攻撃を防がれても防具の上からの打撃で命を削り取るという手段を潰された今、アーテミシアを倒す手段は事実上存在しない。
「弱い奴を狙え」
「甘ぇ!」
離れようとした賊を背後からぶちかます。
戦槌から伝わった感触は柔らかい部も潰した独特のものだ。
「狼を近付いてきてるぞ。倒した後も気を抜くな」
アーテミシアは目も耳も優れているので、人の列の先頭で戦いながら索敵するのも大得意だ。
「はいっ」
剣士達は士気高く、そして容赦なく賊を1人1人切り捨てる。
代官に部下越しに指揮されていたときとは別人のような働きぶりだ。
(戦士を従えるなら自分も戦士にならにゃならねーってのは……)
重い打撃に切り替えて逃げようとした賊を1人仕留めたところで代官が見えた。
馬を椅子として使う代官は敵味方の数しか見ていない。
(到底理解できそうもねーな、ありゃ)
アーテミシアは鼻を鳴らし、戦闘を継続した。
●
「復興計画の為とは言え、大分行列が長くなってしまいましたね」
フリーダ=ブロムヴィストの背後には長大な列がある。
冒険者による指揮と戦闘により少し短くなってはいるがまだ3桁後半メートルある。
幅も短いところで数人、長い所では数十人いる。
「啓示によれば『外様大名の参勤交代よりはマシ』との事ですが……何なんでしょうね」
フリーダには小さな都市1つ分の人口が移動するより大変なことなど想像し辛い。
仮にセニャがフリーダの言葉を聞いていたら「隣領の貴族とかに配慮しないで済むのはすごく楽よ」と計画立案に疲れ果てた顔でコメントしていたはずだ。
「守る対象が非常に多くいつもと勝手が違いますが」
フリーダの透視能力があるので敵が土の浅い場所にいて見つけることが可能。
ティトが使う双波のような効果範囲はないが、巨大な列の先端のしかも中央にいるので敵の意識と敵意はフリーダに集まりがちだし透視で天然人工問わず落とし穴を見つけられるという効果は非常に重要だ。
「連携、とは違いますね」
餓えた狼数頭ずつの群れと、場慣れした様子の賊が嫌らしい位置とタイミングで列の先端を半包囲する。
「先生方には打ち合わせ通り最終防衛ラインとして行動してもらいましょう。啓示でも『最後の壁って名前だけでも凄そうに見えるよね』との事ですし」
最も強く頭が良さそうな狼に走り寄って殺意をぶつける。
手応えを感じた後は狼の接近を待たず賊の迎撃に向かい、脅威から民を守るのだった。
●
「小休止をとります」
カール・イスターツは決断した。
巨大な人の列が停止するにも再び動き出すのにも時間がかかって大休止以上の時間がかかってしまうだろうが、無理をして大勢の脱落者が出るよりはマシだ。
「お久し振りです。ゴッチ先生! またご一緒できるとは光栄です!」
「それはこちらの台詞です。成長したアルベルト君の力になれて嬉しい」
子弟が握手を交わす様は物語の一幕めいている。
本人達にとっては感謝のやりとりでも、周囲の人間にとっては政治的なイベントでもある。
「ゴッチ先生。セニャはああ言っていますが領民を救うのに精一杯頑張っています。セニャをお見捨て無きようよろしくお願いします」
アルベルトは声を小さくして強く頼み込む。
先生と婚約者の価値観の相性が最悪に近いと懸念している故の行動だ。
「可能であれば、今回の護衛の後もセニャや俺にご指導ご鞭撻の程お願いします。セニャに、もう少し周りを思いやる余裕を持つようにご指導をお願いします」
(若人と弟子を応援するのは私の喜びでもありますが、既にあの形で性格が完成した人間は難しいですよ)
本音を言いたいが言えない。
挑戦は誰もが持つ権利であり、可能性が皆無ならともかく低くても存在するなら否定はしたくない。
「微力を尽くします」
ゴッチは会話を終えても休憩する時間はなく、弟子達に次々指示を出して民達の面倒を見ていた。
●
「足をとめたときが襲撃の好機なのだ」
賊と狼が襲撃側で、冒険者は守る側である。
ストレガ・L・リベルガストラの足は速く、高速を維持したまま巨大列の側面の守りを担当する。
遠くに見える賊の顔に嘲笑が浮かぶ。
停止した食料を目指して殺到する狼を囮にして、賊は民の命ではなく民の財産を狙い荷車を目指している。
俺達を止めることはできないだろうと、卑怯であると同時に理知的に考えていた。
「狼一匹とてただの人を傷つけるには十分。混乱が伝播すれば瞬く間に死傷者が増えるのだ」
ストレガはわずかに速度を落として雷蛇大禍を発動させる。
稲妻じみた光が広い範囲を覆い、物理的なダメージはないが狼の速度は激減して何より光が警戒心を抱かせる。
「狼は任せた。行軍を阻む輩一切を通すな」
足を止めての大声である。
見た目にも派手な術はストレガを超火力キャスターと誤認させる。
剣士達はストレガの期待に応えようと、戦闘装備以外の全てを捨ててとにかく全力で迎撃へ向かう。
「考えが浅いのだ」
敵も友軍もだ。
雷蛇大禍とは逆に目立たない効果が大きな重力場も設置しておいたので、喜劇じみた効率で賊達が引っかかる。
「この程度で勝てるとっ」
「逃げないと死ぬのだ」
術による氷嵐を広範囲に撒き散らす。
一撃で授恵者を倒せるほどの威力はないが、賊の中にヒーラーがいてもいなくても継戦能力が減少する。
襲撃が成功しても賊にとって安全な場所までたどりつくにはクリーパーまでうごめく荒野を渡る必要があるのだ。
「勝ち鬨をあげるのだ」
顔を真っ赤にして逃げていく賊に、剣士達と民とともに勝ち鬨の音で精神的に追い打ちをかける。
セニャの部下が感動している。
「民においては目的地まで我々護衛が身を挺して守り切る事を約束し、そして子供一人とて列を乱さず進む事にご協力頂く。これがこの計画を生き残る策だと納得させるのだ」
単に言葉で伝えるだけで納得を得られるほど甘くはなく、自らのふるまいと成果も利用し状況を動かすのが最低限必要だ。
ストレガは剣士もセニャの部下も民も誘導することで、なんとか片側の側面の守りを維持していた。
●
誰が活躍したのかは諸説あるが、誰が最も走り続けたかは明らかだ。1番がベルク、2番がティトだ。
「引き継ぎ、これでいい……かな」
足と双波を活かして列の先頭とその周囲の警戒を延々行ってきたティトが、長大な柵の切れ目から内側に入って行く人々を眺めて息を吐いた。
「お疲れ様でした」
帝国軍士官が心からの感謝と敬意を込めて礼をするがティトに答礼をのんびりする余裕はない。
「夕方……だから」
授恵者の優れた五感があっても索敵が難しくなっている。
2つの波を同時に使って地形と敵の気配を同時に探るティトは、冒険者だけでなく帝国軍部隊にとっての目でもある。
「全く、護衛するならもう少し頭数を増やせってンだ。見通し甘いンじゃねえの? ま……普段書類弄ってるようじゃ、こンなもンか」
アーテミシアの不満は真っ当なものだ。
思わず頷きかけた士官が咳払いしてごまかしている。
「馬じゃ間に合わねぇ。ここは見ているから気になるなら行け」
馬車の上に乗り耳をすませるアーテミシアは、この状況では特に頼り甲斐があった。
ティトは速度を活かして3分の2ほどの長さになった列を逆走する。
最後尾付近で特に強く警戒しているサイラスを見て波で協力。
ティトは地上ではなく地下に強い反応と穴が開いた地形を見つけた。
「荷馬車で持ち帰っても余るなー」
にょろりと身をもたげた巨大ミミズを、サイラスは真正面から挑んで日が落ちる前に削り切った。
●
「驚きました、かの名高き剣神たるゴッチ様がご無事であられたとは。その武勇と名声は父より寝物語で聞きかじったことがあれば」
ようやく挨拶ができたベルクが複数の意味で安堵している。
ゴッチは控えめに喜び、そして少し照れてもいるようだ。
(少し手合わせを……『負けイベントはガ=バなのでダメです』?)
今回は特に明瞭な啓示だったとフリーダは思う。
しかし肩を落とす前にゴッチに気付かれる。
急成長する若手授恵者との手合わせは、彼自身興味があるのだ。
(なるほど)
お互い剣は抜かず無意識にお互いどう動くか考え感じ取る。
(ダメみたいですね。剣技だけだと引き出しの数が違い過ぎます)
戦闘を含む依頼解決能力ではそうそう負けるつもりはないが、剣技だけの勝負だと勝ち目が見つからなかった。
闇の中に数十のキャンプファイアが焚かれ、巨大な集団を構成していた中小の集団がそれぞれの場所へ散って行く。
「みなさんこちらです」
ミアは揉めそうな集団と集団の間に割り込んではやんわりと問題を解決する。
大切な者を守り抜くための矜持は小柄な体にカリスマをもたらし、瞳に宿る熱が民に勇気と希望を与える。
(まだ始まったばかりです)
各所に膨大な物資が積み上げられた拠点の中を先頭に立って歩く。
闇の中に浮かび上がる白き令嬢は、代官よりもずっと頼もしく見えた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年12月29日 00時06分42秒 公開
相談掲示板
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回俺は、隊列の後方で護衛をする予定だ。 ゴッチ先生には、逆に隊列の先頭に立っていただくよう話をするつもりだ。
ティトです。よろしくお願いします、ね。 うーん…列の先頭で偵察のお手伝いしてこよう…かな。 それで、できるならそのまま敵を始末しちゃったりして…。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 列の側面で偵察と警戒に回る、何かあれば閃光弾で合図になるかな?
ウォリアーのアーテミシアだ。 まあ、オレは前列で相手に積極的に当たっていく感じにするか。 とりあえずあの代官は指揮させねーほうがいいンじゃねえの? ハッキリ言ってオレはアレの下で戦うのは御免被るぞ。 あれならゴッチのオッサンに指揮させたほうがマシだ。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 隊の側面中央位置で全方位に早めの足止めか範囲攻撃ができるようにするのだ。
(列の長さを勘違いしていたので再投稿します…!) ヒーラー、ミア=リゼルです。よろしくお願いしますね。 今回は隊列中央で回復を中心に動こうと…したのですが、列の長さが1kmということでこれは…! 冒険者がうまく整列させられるかどうかも影響する、とのことですので、カリスマや戦術眼で整列を試みます。もし汎用スキルに余裕のある方がいらっしゃいましたら、サウンドボマーでの誘導をお願いできないでしょうか? またその結果、最終的な隊列の長辺・占有規模がどれほどになるかは判定次第なのですが、配置によってはこちらのヒールやバフが届かない可能性が高いため、ご自身でリカバリー手段を持っていただくか、防御スキルやヒットアンドアウェイなどの戦法で損耗を抑制していただけると助かります。できるだけ動き回る予定ですが列が予想以上に長くて、各方面への到着に時間を要すると思うので…! 私の初期位置は隊列中央を予定しています。列の端と中間地点ですらテレパスが届かない状況なので、ベルクさんの合図案など、詰めておくと良さそうですね。
No.8
サイラスだ、よろしくなー とりあえずサウンドボマー、カリスマ持ち込めばええかね。 誘導なさそうだし、最後尾の方担当でついでにミミズ狙おうかと
……こりゃ各自が各々の判断で行動するって事でいいのか?
そうですね…相談のチャンスは明日夜までですが… 余計な提案をしてしまっていたらすみません。サイラスさんはありがとうございます! ちょっと用事で出発ギリギリまで張り付けるかわからないので、今夜仮プレを提出いたしますね。
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 それではこちらは中央での迎撃を中心に行っていこうと思います。 基本的には雑魚戦には範囲攻撃で数を減らす事を優先し、 ミミズ型クリーパー等の強敵に対してはシーザーロアで注意を引いて、 隊列への被害を抑える事を優先します。
我は中央左側面から警戒と哨戒を行う、合図は閃光弾を持っていくのでそれで。