星の雫を希(コイネガ)う。

蓮華・水無月

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シナリオID:2609

オープニング

 境内へと続く石畳を、両脇にぽつり、ぽつりと立つ灯篭が優しく照らす。頭上に差し渡す木々の枝の間から、透かし見た夜空にはきらきらと零れ落ちそうな満天の星。
 ――今宵、この地に星が降る。


●
「――うん、大丈夫やね! 皆さん、ありがとうございました!」

 最後の確認を終えて、ハナユはぺこんと頭を下げた。その先に居るのはハナユの片割れ・ユズを始めとした冒険者たち――祭準備を手伝いにやって来てくれたのである。
 気にしないで、と皆を代表して微笑み首を振るユズに、そうそう、と幾人かが笑顔を見せた。それにほっと息を吐き、ハナユは明るい笑顔になる。

「日が暮れたら祭の始まりやから、皆さん、楽しんで行ってください! 何かあったら、すぐうちらに言うてくださいね」

 はるばるシャルガネまでやって来てもらって、手伝いだけではいさようなら、というのは申し訳ない。是非とも祭本番も楽しんで行ってもらえたら、と告げていたハナユに、そのつもりで来た者は笑顔で頷き、思い思いに歩き出したのだった。


●
 ハナユとユズの実家であるこの神社では、今夜、とある祭りが行われる。『星雫祭(ホシシズクノマツリ)』――流星の降る夜に執り行われる、星見の祭りだ。
 流星の降る夜、といっても実は厳密なものでもない。これまでの経験や積み重ねから『何となくそろそろ流星の時期な気がする』とか、氏子の誰かが流星を見たと言ったから祭をしようとか、そんな風にして毎年この時期になると佳き日を選んで(皆の都合がつくタイミングで)執り行われる、言ってしまえば時期遅れの秋祭りのようなもの。
 壱の鳥居(入り口)から弐の鳥居(境内の手前)へと続く参道には、今年は冒険者にも作成から手伝ってもらって吊るした灯篭が頭上に揺れ、その灯の下では様々な屋台が立ち並ぶ。その奥、弐の鳥居(境内の手前)から境内へと続く石畳にはただ、透き通る静寂だけが落ちるのが常だ。

「皆、楽しみにしとったからね」

 祭準備も終わり、次第に賑やかになっていく参道を弾むように歩きながら、ハナユはその足取り通り楽しげに笑う。彼女自身もまた、少なからずこの祭りを楽しみにしていたのだ、とその様子から伺えた。
 それに目を細めた両親が、後は頼んだよ、と告げて社殿へと向かう。星雫祭の夜は祈願が叶いやすいと言われており、この夜にと祈祷をお願いしに来る者も居るため、神職である2人は祭の夜は社殿にて控えているのがその役目だ。
 そうして、そんな両親の代わりに実質的な祭の差配と、おみくじやお札、お守りの販売といった社務所での雑事を行うのが、ハナユの役目。

「今年も楽しい祭りになるとええなぁ」

 ゆえに楽しげにポニーテールを揺らし、ハナユは社務所へと消えていくのだった。


●
 さあ、星雫祭が始まる。
 ――この地に星の恵み降る、特別な夜が始まる。

解説

◎目的 シャルガネ地区某所で行われる『星雫祭』に参加しよう。 皆さんはシャルガネ地区某所に在る神社にて、祭準備のお手伝いを頼まれました。 皆さんのおかげで準備は滞りなく終了し、後は始まった祭に参加するだけです。 ぜひ、楽しい一夜を過ごして頂ければ幸いです。 ◎どんな事が出来るの? 1)屋台を楽しもう  今宵は近隣の有志その他の方が集まって、様々な屋台が立てられています。  搾りたて果汁や百合茶、焼き菓子など、食べ歩きの出来る食事を売る屋台もありますし、的当てやくじ引きなどの遊びの屋台もあるでしょう。  もしかしたら神社の外にも少しばかり、占いだったり、何か不思議な屋台が立っているかもしれません。  そういった屋台を巡るのも楽しいかと思います。  (※季節・世界観的にNGなものでなければ大抵の屋台はあるとお考え下さい。不思議な屋台は『こういう系』とのご希望があれば世界観に無理のない範囲で捏造します) 2)流星群を観賞しよう  何とも都合の良いことに、祭の今夜は偶然にも流星が見られるようです。  祭の最中から夜半にかけて、ぽつりぽつりとですが途切れなく流星が見られる事でしょう。  境内から、あるいは少し離れた小高い丘から、はたまた近くの宿の一室から、お好きな場所で流星を見上げてみてください。  社殿も、祈祷中でなければ立ち入り禁止ではありませんのでご自由に。  この神社には、流星の夜には願い事が叶いやすくなるらしい――という言い伝えがあります。 3)お祭りのお手伝い  様々な人がやってくるお祭りの夜ですから、神社の方でも様々なお仕事があります。  基本的にハナユが走り回っていますので、彼女を手伝ってあげてください。  内容としては、祭屋台を見て回ってトラブルが無いか確認したり、社務所にておみくじやお札、お守りの販売を行ったり、保護された迷子のお世話をしたり……といった事があります。  全てをハナユが1人で行っているわけではなく、雑務を手伝ってくれるお手伝いの方への指示出しなども含みます。  時折、祈祷担当の神職からも呼び出しのお手伝い依頼があります。 ◎登場NPC ハナユ……  白の着物に朱色の袴を身に着けた、ポニーテールが元気な女の子。  祭の実務責任者として走り回っていますが、ご近所の方が『ちょっと代わるから休んできな』と適度に声を掛けてくれます。 神職達……  ハナユとユズの両親。  祈祷担当のため、基本的に社殿に居ます。

マスターより

いつもお世話になっております、または初めまして、蓮華・水無月と申します。 流星群にはロマンがありますよね、ということで流れ星のお祭りなシナリオでお邪魔させて頂きます。 流れる星に願いを、というと3回唱えるのが有名なおまじないですが、流星群の夜はきっと3回唱えてる間にたくさん流れるから大丈夫。 そんなノリで行けたならなと思います。 蓮華ですか? そもそも殆ど流れ星にお目にかかった事がないですね…… そんなこんなの『星雫祭』、お気が向かれましたらどうぞお気軽に、よろしくお願い致します。

リプレイ

 ユズにとってここ(この神社)は、慣れ親しんだ故郷で、実家だ。ゆえに、

(みんな、元気そう)

 神職(養父母)を手伝い、祭客(大半が昔馴染みの町の人)を眺めて、ユズは安堵に目を細めた。時折、「お帰り」「元気だった?」と声を掛けられながら戻った社務所では、ハナユ(双子の片割れ)が祭客(参拝者)と話している。

「御祈祷1名ですね。時間は神職(両親)に確認を……」
「今なら、大丈夫」
「ほんま? なら社殿へどうぞ」

 それに割って入ったユズに、ハナユが明るく祭客(よく見れば近所のおじさん)を促した。ほなね、と双子(ユズとハナユ)に手を振るおじさんを見送って、片割れ(ハナユ)を覗き込み。

「ハナユ、疲れてない?」

 そう言ったユズに、ハナユが瞬いた。だがユズ(対)は誤魔化されない。
 御守り販売や祈祷の準備、対(ハナユ)と昔からやって来た事は今も、身体に沁みついている。今日はよそ(地域外)の人も来てるから、緊張するけど――

「頑張る、から、少し、休んで来て。――だって、ボク達は対、でしょう?」
「――うん」

 ユズの言葉に、ハナユがにっこりした。そうして社務所を後にした、対(ハナユ)を見送るユズの眼差しのはるか先には、ファ(エーテルリンクした大鼬)が見つけた迷子を保護するカイン・ステラが居る。
 カインの腕には、自作の腕章(手伝いの証)。他の人(主にご近所の手伝いの人)にも配ったそれは、関係者と示すのに(迷子に怪しい人じゃないと判ってもらうのに)役立った。

「名前は言えるか?」

 怖がらせないよう膝を突いて話しかけるカインの前には、大泣きしている迷子(カインの声も聞こえてなさそうな4歳くらいの男児)が居る。ゆえに涙を拭ってやったり、まずは落ち着かせようとしたカイン(孤児院の母ちゃんポジション)にシルヴィア・A・カペルとエル=バ=ノイアンが「お疲れ様だ」と声を掛けた。
 そんな2人に、カインは肩を竦める。

「家(孤児院)と同じようなもんだ。……っと、落ち着いたか?」
「ねぇちゃん……」
「ん。兄ちゃんの肩に乗って探そう」

 そうするうちに話せる程度に落ち着いた、子どもに優しく声を掛けてかがめば肩によじ登った。落ちぬよう頭に手を回させて、それじゃ、とカインが歩き出し。
 見送ったノイアンとシルヴィアも歩き始めた。――なぜだかいつもシャルガネは、ノイアンの心を落ち着かせる。
 立ち並ぶ屋台も、王国では見られないものばかり。――恋人(シルヴィア)も楽しんでくれると良いが。
 そう考える眼差しがふと、屋台の1つに惹きつけられた。足を止めた恋人(ノイアン)に、シルヴィアもまたそちらを見る。
 竹串に刺さった、平べったい、初めて見る(きっとシャルガネ風の)食べ物。あれは、と瞬くシルヴィアに答えるような、ノイアンの呟きが耳を突いた。

「あれは……五平餅、か?」
「五平餅……?」
「ああ、米菓子のひとつだな。味噌やたれを塗って焼いたものだ」

 そうして説明してくれる彼は楽しげで、シルヴィアは嬉しく目を細める。彼女が幸いに想うこの逢瀬が、彼にとってもそうであれば良いのだが。
 そう思いながら「良い香りだね(食べてみたいな)」と微笑むシルヴィアに、ノイアンは考える。彼自身はどちらも(味噌もたれも)好きだが、強いて言えば味噌はその風味を楽しみたい時、たれ(みたらし)は甘じょっぱいものを食べたい時に食べる事が多いと、告げてどちらが良いか問えば、シルヴィアが考える眼差しになった。

「味噌も気になるけれど、今は甘いものが食べたい気分かな」
「そうか――なら、たれ(みたらし)から食べてみるのが良いだろう」

 味噌は慣れてからが良いと、言ってノイアンがたれ(みたらし)を注文すると、すぐに美味しそうなたれ(みたらし)の五平餅が木舟皿で出て来る。串のまま齧るのも醍醐味だ(屋台飯らしい)が、

「串から外して小さく切り分ければ、ほら」

 ノイアンは木舟皿の上で一口大に切り分けると、あーん、と一片を恋人(シルヴィア)に差し出した。それと恋人(ノイアン)の眼差しを見比べて、シルヴィアは仄かに頬を染め口を開く。
 ん、と食めば口一杯に甘じょっぱさが広がった。だが噛み締めるうち、違う甘さが生まれる。
 それをじっと見つめる恋人(ノイアン)の眼差し含め、何度してもらっ(あーんされ)ても慣れる気がしないと、シルヴィアは微笑んだ。

「甘くて美味しいよ。お米の味を強く感じる」

 新米で作られたというそれ(五平餅)は、今年のシャルガネの豊穣の証。お返しに、と恋人(ノイアン)の口元に五平餅を差し出す(あーんする)。
 そんな(身も心も甘やかな)2人から、少し離れた所でギーゼラと海神 江流も、甘い空気に包まれていた。

「ギーゼラちゃんのお眼鏡にかなう甘味ねぇ……あれ(たい焼き)なんかどうだ? 帝国焼きの派生みたいなもんだが」
「たい焼き! 興味深いですねぇ! 形も可愛らしくていいじゃないですかぁ!」

 たい焼き屋を指さす江流に、顔を輝かせるギーゼラである。1人が寂しいなら同行してあげようと、言ったギーゼラに「連れが居たほうが気分もいいか」と頷いた江流が支払う報酬だ。
 ゆえにギーゼラは太っ腹に(自分の懐は一切痛まないので)「取り合えず餡子とカスタードとチョコの3つを頂きましょう」と注文した。紙袋を受け取って、まずは1つ齧り付き。
 大きく目を見開いた。

「帝国焼きより薄皮で中身がぎっしり! 甘さも程よく、バランスがいい! 合格です! 追加でもう1つずつ頂きましょう!」
「はいはい。――俺も貰うかな」

 あっという間にお腹に収め、お代わりと飲み物(トロピカルジュース)を所望したギーゼラに、肩を竦めて江流も注文する。飲み物は濃茶だ。
 フフフフフ、とご機嫌でたい焼きを齧るギーゼラの横で、江流も齧り付けば案の定、口中に濃厚な甘みが広がった。それを飲み込んで、ずず、と濃茶をすする。

「甘いの食べると濃いめの茶が旨いわ」
「ジジ臭いですねぇ」

 そんな江流を、ギーゼラが揶揄しつつ2つ目(通算5個目)を齧った。ほっとけ、と濃茶で甘味を流し、何となく眺めた人混みに、見知った顔。
 あぁ、

(……カイン君も来てたんだな)

 江流に、カインもすぐ気付いた。軽く頭を下げ、肩車の子どもと去って行くカインを見送る江流の横で、ギーゼラは次はどの屋台に行こうかと品定めしている。
 何しろ今日は、江流(財布)のおかげで最強である。奢りなら美味しさ3割増しと、ご機嫌なギーゼラ達に背を向けたカインは、肩の上の子に声を掛けた。

「しゃがむぞ」
「うん」

 そのままかがめば、子ども(シンという名らしい)が飛び降りる。カインが設営したここ(迷子の保護場所)には他にも、人(近くにいた手伝い)に保護された迷子が集まっていた。
 覗きに来たハナユが、幾人か(顔見知りの子)を見て保護者を呼んで来ると出て行った。他の子(ハナユの顔見知り以外)から名前を聞き、似せ絵を描いて周知を頼んだら、迎えが来るまで子ども達の相手だ。
 暖を取るためにも甘湯(コーディアルのお湯割り)を配り、ご近所の人がくれたお菓子を食べさせ、

「兄ちゃんが色々作ってみるから、当ててみ?」

 手遊び(シャルガネの折り紙というらしい)で花や鳥、毬を折って見せれば俺も折れる、私もっと凄いの折れる、と賑やかになった。どうやら子ども達のお迎えより、折り紙が尽きるのが速そうだ。


●
 空に流星が見え始めた頃。

「……いらっしゃいませ。私の占いを通して、自分らしい道を進む為のお手伝いをさせて下さい」

 ユズは占いの屋台(占いの館ミーティア出張鑑定所)を開けた。"占い師モード"の(流暢に喋る)ユズの前に、何人かがやって来ては去って行く。
 ――そうして。

「海神さん、いらっしゃい」
「やぁ、また占って貰いに来たよ」
「前の続き、だね」

 微笑んだユズに、江流は頷いた。前の続き――彼の抱く恋の行方。
 彼女(愛しい人)が生きていく世界で、まだまだそ(愛しい人)の力になれない(至らない)らしい自分。がむしゃらに学び、体験し、だがまだ足りないのだとしたら……?
 ふぅ、と溜息。そんな江流を見つめ(洞察し)て水晶玉を撫でたユズは、眼差しを空へ(地に降る星の雫へ)向けた。

「……星の囁きが聴こえて来ます」

 紡ぐ言葉(行われる占星術)は厳かだ。

「――貴方には、貴方が思っている以上に、周囲への影響力があります。願えば叶う時ですが、願い事は熟慮しましょう。冷静さを保ち、周りを信頼すること――自分と周りが皆幸せになれる最良案を模索して下さい」

 滔々と紡がれる言葉(占いの結果)に耳を傾ける、江流の背後でたい焼き(また買った)を食べながらギーゼラは、

(僕が聞いてていい話でしょうかねぇ?)

 わりと繊細(デリケートでプライベート)な話では、と考える。まあ、一時期凹んでた(うじうじしてた)江流が行動した(占って貰った)なら、少しは未来に向けて進む覚悟が出来たのだろう。
 そう考えるうちに占い(ユズの占星術)は終わった。――ちら、とギーゼラを見る。
 何を言われるやら、と思った。いつも自分(ギーゼラ)は無関係だって顔をして、痛い所を突いてくるのだから。
 そんな江流の眼差しに、ギーゼラが口を開いた。

「そもそも平民が貴族を好きになったら厳しいに決まってるでしょう。今更弱気になるなんて情けない」

 飛び出すのは、鋭利な刃のような容赦のない一言。それは、らしくない気遣いを(お祭りに連れ出して気分を変えさせようと)してしまった、決まり悪さを誤魔化すためでもあって。

(――あれ、そういやこの子(ギーゼラ)平民ではなかったんだっけ?)

 ふと思った江流の口から出たのは、だがまったく違う言葉だ。

「たい焼き、まだ食うか? 今なら熱いお茶もつけよう?」
「――もらっておきます」

 それに誤魔化されてあげる事にしてギーゼラは、お茶は要りませんと嘯く。はいはい、と肩を竦めて歩き出した江流の背に、ギーゼラは呟いた。

「いらない気遣いでしたかねぇ」
「……馬鹿言え。有り難いよ……」

 その声音に、江流は小さく呟きを返す。きっとギーゼラにも聞こえていない(聞かせる気はない)けど。
 必死になりすぎて周囲が見えなくなる前に、この子(ギーゼラ)の存在に幾らか救われているな、と思う。ぶん、と頭を振った江流の目に、幾つもの輝きが映った。

「あ……」

 満天の夜空に、今更気付く。こういう景色があの娘に届けられたら良いのに、と立ち尽くす江流に、ギーゼラが無責任に笑った。

「取り合えず星に願いでもかけておけばいいのでは?」
「そう……かな」

 呟き、江流は流れる星に瞑目する。そこから離れた迷子保護所でシン(最後の1人)を引き渡し、カインは手を振った。

「じゃあな」
「またな!」

 笑顔のシンの横で、姉が頭を下げる。そうして去って行く2人を、見送りカインは息を吐いた。

(俺もあの位の時があったな)

 もう家族誰も生きてないけど、呟いてふと江流を思い出す。命の恩人が江流に似てることを、ずっと(出会って年単位経過したのに)聞けていない。
 ――いつか、聞ける機会があるかもな。
 ぼんやり考えるカインの眼差しのはるか先、風車の屋台の前でシルヴィアは足を止め、目を細めた。風に吹かれてくるくる回る玩具――いつも元気に働けますようにという願いの込もる、商売繁盛を表す縁起物だとか。
 ふふ、と笑う。

「とても綺麗だ」
「風情があるな」

 シルヴィアの傍らで、ノイアンもまた目を細める。冒険者(自分達)にはぴったりのお土産じゃないか、と笑う恋人(シルヴィア)に頷いた。
 ノイアン、と彼女が楽しげに呼ぶ(悪戯に笑う)。

「お揃いで買おうよ。青と赤、どちらが良いかな?」
「もちろん青……空色(シルヴィアの瞳)があればそれを」

 返された言葉は恋人(シルヴィア)への想いに満ちている。それが嬉しくて愛おしくて、胸を暖かくしながらシルヴィアは、空色の風車を2つ(お揃いで)購入した。
 大切にするよと微笑む恋人(シルヴィア)にノイアンが、そうだ、と提案する。

「せっかく境内にいるんだ。お詣りしていかないか? 挨拶は大事だからな」
「そうだね。シャルガネの神様にご挨拶に行こう。今年見守って頂いた御礼も伝えたいしね」

 恋人(ノイアン)に頷き手を差し出したのは、手を繋ぎたくなったから。――どうか、この時間が永遠に続きますように。
 そう願い、歩き出した恋人達の居る神社で、一通りは楽しみ後にしたサラとだわは、人気のない丘で空を見上げていた。
 「わ、ぁ」とサラが目を輝かせる。

「……見て、だわおにいちゃん。とても、きれい。鉱石、みたいだ、ね」
「……ああ、見事な星空だ」

 それに頷いただわは、だが夜空よりサラが気になった。星がたくさん見られると、はしゃいでいた彼女は今は少し、震えている。
 「……寒いか?」と尋ねれば頷きが返った。

「何も、遮るものが無いから、かな……?」
「そうか……羽織るといい。旅で使っていたものだから、寒さは凌げるだろう」
「……え? で、でも、だわおにいちゃん、それ……いいの?」

 羽織っていたマントを脱いで差し出すだわに、サラはおろおろした。彼はいつも、人目を避けるために身に着けているのに。
 戸惑うサラに、人気のないこの場所でなら、とだわが頷いた。

「無理にとは言わないが。遠慮はしなくていい」
「……あの、……ありがと、う。……えへへ、あったかい」

 ゆえにマントを受け取って、身に着け身体の前で掻き合わせたサラが、嬉しそうに笑う。その笑顔に目を細めてから、眼差しを空へと向けた。
 今宵は流星の、願いが叶いやすくなるという夜。星に願い、神に祈り――それで誰かが叶えてくれるのか、或いは気休めなのだとしても。
 それでも願うのは、故郷の平穏だろうか。否、サラが健やかに過ごせるように――?

「今日のこの空も、見に来られて良かった」
「――うん。わたし、だわおにいちゃんと、一緒に見られて、よかった。ずっと、忘れない、よ」

 噛み締めるように呟いた、だわに頷きながらもサラの胸には、暗い想いが過る。――この人(だわおにいちゃん)といつまで一緒に居られるのだろう。

(いつか)

 その時(別離の日)が来る。そう思って、でもそれは嫌だと、頑是ない子どものように願う。
 もはや彼と離れる未来を、サラには想像出来ない。だわが隣に居ないいつかを――想像、したくない。

(……いつから、だろう)

 こう思うようになったのは。ずっとそばに居て欲しいと、願うようになったのは。
 嗚呼、いつからかこんなにも、

(――すき)
「……どうかしたか?」
「……あ、ううん! だいじょう、ぶ……!」

 ふいに響いただわの声に、はっと慌てて首を振った。それに、だわがますます不思議そうな顔になる。
 えっと、と焦りながら言葉を絞り出した。

「お祭り、楽しかった、ね。明るくて、にぎやかで、あったかくて。みんな、この日を楽しみにしてたんだろうね、って、思った、の」
「……そうだな。俺も楽しみにしていたから、来られて良かった」

 必死の形相(『誤魔化してます』と言っている表情)に、だわは誤魔化されてやることにする。そうして、神社の灯を見遥かした。

「穏やかで、心地いい。文化と息づく人の活気が感じられる、良い祭りだった」
「へへ。また、来よう、ね。――あ、流れ星! お願い事、しよ! ね?」

 そんなだわを嬉しく見つめたサラの提案に、「そうだな」と頷く。

「サラは何か願いたいことでもあるのか?」
「わたしは……えっと、ひみつ……! だわおにいちゃんは?」
「俺は……そうだな……まあ、日々のささやかな願いと思ってもらえれば」

 他愛なく話しながら、流れる星に願いを掛ける。――どうか。この願いが、どうか叶いますように。


●
 祭が終わる頃には、人も少なくなってきた。社務所で流れる星を見るハナユの傍らに、誰かが来る。
 見ずとも判る対(ユズ)に、語り掛けた。

「どうやった?」
「ん。今年も流星群、見られて良かった。この景色、見ると安心、する」
「そぉかぁ」
「……ハナユ。家のこと、全部任せて、ごめん」

 ユズはぽつり、呟く。――自分自身が嫌いで、違う自分になりたくて、逃げだした過去を想う。
 でも、今は違う(それは過去の話だ)。今は自分を慕ってくれる、1人前まであと少しの弟子が居て、師としてその成長を見届けたい。
 ――それが終わったらもう1度、向き合うから。

「……それまで、待ってて」

 吐き出したユズの手を、ハナユがぎゅっと握り締めたのだった。

マスターコメント

いつもお世話になっております、または初めまして、蓮華・水無月です。 この度はご参加頂きまして、本当にありがとうございました。 祭屋台を楽しんだり、祭のお手伝いをしたり、星を見上げたりする物語、如何でしたでしょうか。 皆さまのプレイングでふわふわと楽しみながら、お祭りの雰囲気を楽しんで頂けるよう精いっぱい紡がせて頂きました。 蓮華自身はご縁が無くてしばらくお祭りには行っていないのですが、屋台と言えば唐揚げが大好きです(聞いてない 皆さまが星にかけたりかけなかったりした願いも、どうか叶うと良いのですが。 このシナリオが皆様にとって、楽しんで頂けるものでしたら幸いです。 またのご縁がございましたら、どうぞ宜しくお願いいたします(深々と
ショートシナリオR

ショートシナリオR易しい 報酬:少ない8 / 4〜8人

2022年12月12日 10時12分16秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ユズ

    えと……ボク、ユズ。占い師。そして、この家の子。 今回は皆、神社のお祭り準備、手伝ってくれて、ありがとう。お祭り、それぞれ、楽しんでくれたら、嬉しい。 ボク、ハナユの手伝い、してる。けど、空いた時間で占いの屋台、開く予定。もし興味ある人、いたら、来てくれると、嬉しい。 詳しく観て欲しい人、メッセージくれたら、もっと丁寧に観ることも、出来る。 蓮華MSさん、素敵なお祭りにしてくれて、ありがとう。

  2. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。ユズ、素敵なお祭りへのお誘いありがとう。 星降る夜を楽しもう。今回はよろしくね。 星雫祭ではノイアンと屋台巡りをする予定だよ。 まぁ、その……久しぶりに二人でゆっくり過ごせたら、と。 皆にとっても良い一日になりますように。

  3. だわ

    招待券をありがとう。サラと共に参加させてもらう。よろしく頼む。 ……星降る祭か。どこで見るかな。

  4. カイン・ステラ

    カイン・ステラ。よろしくな。 色々な人がやってくるみてぇだし、そうすると、親からはぐれた迷子が心配なんで、迷子を保護したり、世話してると思う。

  5. サラ

    サラ、です。ユズおに…おね…えっと…えっと… Σ(,,ºΔº,,*)ハッ! …ユズ、さん! お誘い…ありが、とう。 わたし、だわおにいちゃんと、一緒に、参加する、ね。えへへ、楽しみ…。 みんなにとっても、楽しい一夜になるといい、な。 えっと、よろしくお願い、します。

  6. ギーゼラ

    ギーゼラです。ユズさんお誘いありがとうございます。 取り合えず江流さんのお財布を頼りにして、屋台の甘味を貪りましょうかね。

  7. エル=バ=ノイアン

    ノイアンだ、顔出しが遅れてすまない…誘ってくれてありがとう。 シルヴィアと共にゆっくりと過ごさせてもらうつもりだ。

  8. 海神 江流

    顔出し遅れまして。海神 江流だよ。 今回はお誘いありがとう。 俺は…ギーゼラちゃんを餌付けしつつ ユズさんところに、前の占いの続きを聞きに行こうかな?

  9. ユズ

    >海神さん 前回の続き、大丈夫。プレイング、触れておく。 ご来店、感謝。

  10. ハナユ

    実務責任者のハナユです。改めて今回は皆さんありがとうございました! 依頼はいよいよ明日出発やけど、皆さん準備は出来ましたか? 屋台を楽しむも良し、流星群を眺めるも良し、めいめいお好きなように過ごしてくれはったら嬉しいです。うちらの手伝い表明して下さってる方はおおきに、ありがとうございます。 思い思いにこの星雫祭を楽しんでってな!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0