【豊穣】コロラト・フェスタ・ラスバブ!

白葉うづき

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シナリオID:2553

オープニング

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 学術都市ヴェルクリエ。そこにあるキャンティ地区の十月末は、今年も鮮やかに賑わっている。毎年開かれる収穫祭、『フェスタ・ラスバブ』は今年も問題なく行われるようだ。
 街にはカボチャやモンスターを模ったオブジェが飾られ、仮装をした人々が街を歩き、広場にある屋台にはこの祭りのために用意された料理や雑貨が並べられている。建物と建物の間には賑やかなガーランドが飾られ、石造りの時計塔も飾り立てられ楽しげに時を刻んでいる。色とりどりの街並みはインクが塗られたようにさらにカラフルなものとなっていた。……若干、いつも以上にカラフルな気もするが。

「あー! 今こっち危ないよ! コロラトが飛んでくるから、んぶっ」

 とある通りに入ろうとしたところ、これまたカラフルな青年に止められた。今しがたボールがぶつかった頭だけでなく、顔や体も色とりどりになっている。インク塗れのヴィンツ・ラッテは楽しそうに笑顔を浮かべた。

「今、この通りは『コロラト投げ』の時間! カラフルなボールを人や建物に投げてカラフルにしちゃうんだ! ボールは何かにぶつかると弾けてインクが広がる! そんなに痛くないよ、ぽよんって感じ!」

 『コロラト投げ』は、広場にほど近いこの通りで行われるインクボールの投げ合いらしい。二時間ごとに三十分間、笛の音を合図に開始されるらしい。コロラトと呼ばれるボールは無害で、インクが目に入っても大丈夫らしい。インク自体も水に弱く、水洗いや雨で流れ落とされるようだ。

「汚れるからいやーって人が多いけど、やってみると楽しいよ! 何も考えずにひたすら目の前のことを楽しむことだって大切だと思うんだ。だって気を張ってばかりじゃ新しいアイディアなんて生まれない! 良い考えが浮かぶのは、いつも心を柔らかくした時だよ」

 楽しげに笑う青年は、再び賑わう通りに飛び込み虹色に染まっていく。周りの人々も楽しそうに笑い、街は明るい声に溢れていた。

●
「今年も無事開催できてよかった……」

 窓の外を見つめ、瞳を細めるのは地区代表のテオドール・ヘルツェンだ。二十代ももうそろそろ終わりそうだという若さで、地区の催事を取り仕切っている。
 不作の煽りを受け、キャンティ地区も一時期は勢いを失くした……ということもなく、農業系のエーテル研究者や発明者がこぞって発明を始め、ある畑を豊作に、ある畑を不毛の地にし、ある畑を新種の作物でいっぱいにしながら、いつもと同じくらいの収穫量を維持していた。最新の施設で開発されたものは確かに素晴らしいと思うが、こちらも負けてはいない。もっとも、安定という点ではまだ白旗を上げるしかないし、そもそも争う気なんてないのだが。

「色とりどりのオンリーワンであることが、この地区の良いところだと思っているからね。……さて、今日は僕もお邪魔しようかな。そういえばイタズラ屋敷(ビリキーノ)にリベンジするって言ったまま避け続けてるな……さすがに行った方が……ううん」

 テオドールは悩むように首を捻る。とりあえず赴いて、昔書いた不名誉な落書きは消そう、と決意した。

解説

●目標  「フェスタ・ラスバブ」を全力で楽しむ ●キャンティ地区  学術都市ヴェルクリエの西に位置する地区。芸術家、発明家、紋具職人、鍛冶屋など技術者が多く住み、祭りや賑やかなことを好む自由を重んじた土地柄。地区全体を見渡せる展望広場のある石造りの時計塔がシンボルです。  肌寒く、長袖でないと寒さが募る気温です。 ●フェスタ・ラスバブ  キャンティ地区で毎年10月末に開かれる収穫祭。 ・街中  モンスターなどに仮装した人々が行き交い、悪戯する紋具が飛び交い、屋台には不可思議な食べ物や飲み物、雑貨が並んでいる。広場では芸術家たちがモデルを、発明家や紋具職人は新作の実験台を探し、音楽家たちは収穫祭にぴったりなコンサートを開いている。 ・コロラト投げ  広場に近い通りで、カラフルなボールを投げ合うイベント。ボールが当たると弾けるようにインクが散る。インクは無害で水で落ちる。この広場で最もカラフルになった人が『コロラト・キング』の栄誉を受けるらしい。 ・イタズラ屋敷  キャンティ地区の技術者が協力し、英知を結集したお化け屋敷。びっくりさせる系の紋具や仕掛けが沢山仕掛けられている。屋敷の壁にはこれまでの参加者が残した絵や文字が並んでおり、出てきた記念に何か書くと喜ばれる。 ≪オススメ≫  ・パンプキング(カボチャ尽くしのケーキ。山のようにでかい)  ・モンスタークッキー(お土産に最適)  ・コミシュザフ(ジュース。見た目も味も入っているものもひとつずつ全部違う)  ・ブンテトルテ(キャンティ地区名物の、クリームと果物が乗ったタルト。カボチャを使った新商品有) ●NPC  ヴィンツ・ラッテ   ヴェルクリエの技術者で授恵者。この土地で育ち、街に関しても詳しい。   面白そうなものや人にも興味津々。街案内を頼めば引き受けてくれる。  テオドール・ヘルツェン   ヴェルクリエの地区代表。二十代もそろそろ終わりで体力の衰えを感じている。   イタズラ屋敷の前で、街の人に見つからないよう窺っている。   楽しいもの新しいものは好きだが、唯一びっくりするものが苦手。

マスターより

お世話になっております。白葉うづきです。 お久しぶりなので知らない方も多いかもしれません、初めまして白葉です! 学術都市で開かれる収穫祭のご案内です。 賑やかな街で賑やかなお祭りをお楽しみください。 フェスタ・ラスバブ、通称悪戯祭りは不思議な食べ物や飲み物、雑貨がたくさん売られています。 イタズラ屋敷や、今年から始まった『コロラト投げ』もあります! ヴィンツに関しては、相談板で話しかけていただくと反応します。 テオドールのことについて聞いても教えてくれます。どちらも誘われればご一緒します。 皆さんのアニエピカライフが素敵なものになりますように! ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。

リプレイ

●
「わーい、おまつりだ~っ!!」
 飾り立てられた街並み、仮装に身を包んだ人々、楽しそうな笑い声に威勢のいい店の人の掛け声。賑やかで包まれたお祭りをルルト・アーキスは弾むように歩いていく。赤ずきんの仮装をして、シロ(イイズナの友人)と一緒にこの街に溶け込んでいた。
「どこから見て回ろっか、わ!」
 飛んできた何かを避けると男の人に当たり、クラッカーのような破裂音と共に紙テープを散らす。
「びっくりした~! けどあんな悪戯なら楽しいね、……あ!」
 ルルトが見つけたのはケーキの屋台。中でもカボチャの巨大ケーキが存在感を放っていた。
「すっごく、おっきい! おいしそう!! すみませんこれくださーい!」
 椅子に座り、そわそわうきうきとシロと一緒に完成を待つ。道行く人々は誰も彼もが個性的で、待っている間も飽きなかった。

「面白い紋具だな……」
 カラフルなテープ塗れになりがら、リヒト・コナーは捕まえた紋具をまじまじと見る。突然後ろで破裂音がしたと思ったらご覧の有様だ。
「楽しんでくれた~?」
 振り返ると、黒ぶち眼鏡にぼさぼさ長髪、袖を大分余らせたいかにもな人物がいた。
「貴方が作った紋具なのか? どういう仕組みなんだこれ」
「お、興味ある? 聞いちゃう? これはね~」
 飛行、破裂、収納にランダム性。一方的に喋るのを聞くだけでなく、リヒトも気になることを意欲的に聞いていく。新作発明の実験台になると言ったらぜひ! と懇願された。
「僕はシュクルムだよ~。じゃあ準備してる間にイタズラ屋敷(ビリキーノ)においでよ。悪戯紋具いーっぱい仕掛けてるから~。これサービス!」
「これは……、!?」
 渡された箱を恐る恐る開けてみると、ぽん! とカラフルな爆発が起こった。

「……今年も賑わっているな」
 騒がしい集団を幾つも抜け、だわはそんな感想を浮かべる。いつでも誰でも両手を広げて迎えるこの街に、安心さえ覚えそうだ。広場や屋台をのんびりぶらついて、ひとつの屋台で止まる。
「コミシュザフをひとつ」
「あいよ! 御所望の味はあるかい?」
「そうだな……秋らしいものがいい」
 しばらく待っていた後に出てきたのは、……少し形容しがたいものだった。カップに入った細長い芋にストローが刺さっている。
「な、なんだこれは……」
「ほら、ずずっと!」
 言われるままにストローを吸ってみる。
「! ……甘い。蜜のような……それでいて芋のような重さがあるな。菓子みたいだ」
「ジュースポテトって新しい品種だよ。驚くことに採れたてをストローで吸うと飲めるんだ」
「ほう……持ち帰りも出来るのか?」
「一日二日はもつね」
 店主の話に耳を傾ける。今年一緒に来れなかった彼女に、いい土産にもなるだろう。

「こんなに大きいものは初めて見ましたわ!」
 フクシア・S・シュルツは目を丸くする。『パンプキング』と呼ばれるケーキに感心しながら通り過ぎると、それを食べるルルトを見つけた。
「まあ! お一人で?」
「うん!」
 口いっぱいにケーキを頬張るルルトに、フクシアは考える。この少女はどうやってこのケーキを食べつくすのだろう。
「食べるところを見ていてもいいかしら」
「いいよー! せっかくだから一緒に食べよう!」
「よろしいの?」
「よろしいよろしい!」
「ありがとうございます」
 店主からフォークを貰い、ルルトの隣でケーキをひと掬い、ぱくり。
「! 美味しいですわ!」
「ね、幾らでも食べられそう!」
 二人でフォークとお喋りを進めながら、賑やかなこの街について楽しく語り合う。
「飲み物でもいただきたいですわね」
「あれなんかどう!」
「わわっ!?」
 突然出てきたヴィンツ・ラッテ(カラフルに染まっている)が向かいの店を指差す。
「コミシュザフは楽しい飲み物! 予想外の驚きがキミを待ってるよ!」
「まあ、ありがとうございます」
 それからヴィンツに街について軽い説明を受け(話している間も飛んだり跳ねたり忙しなかった)、勧められた屋台へ。ルルトには紫、フクシアには真っ赤なジュースが渡された。
「酸っぱいですけど、どこか甘いですわね……」
「甘いけどしょっぱいような……」
 お互い不思議そうに首を傾げ、何のジュースか想像し合った。

●
「なんだか、居心地がいいな」
「ふふ、君もそうかもしれないね」
「ここにはたーっくさん新しいものが転がってるしね!」
 心なしか明るい声で話す海神(うみがみ) 江流(える)に、この地区に関しては先輩であるシルヴィア・A・カペル、ルーンス・ラグネルは揃って同調する。『揺満月くん』(真っ白い小さなカカポ)を頭に乗せた江流は東方にいた、と噂されているらしい(主にシャルガネ地区で)道士と呼ばれる悪霊祓い、シルヴィアは魔女の仮装に身を包んでいた。初めての仮装に落ち着かなかったが、江流もルーンスも似合うと太鼓判を押す。シルヴィアは照れくさそうに礼を言い、街並みに目を移した。
「キャンティ地区は不思議な場所だね。好奇心を刺激される」
「わかるよ、どこを見ても興味を惹かれるものばかりだ」
 辺りを見回せばすぐに紋具や発明品、武具の飾られた鍛冶屋も点在するように並んでいる。作り手が集い、また切磋琢磨する場所。江流もまた作り手としての感性が刺激される街だ。
「ドワーフの真似から入ったが、ここで教えを請うのも悪くなさそうだ」
「江流さんとこの地区の合作かあ、大いに興味あるね!」
 楽しげに話すルーンスは瞳に商売人の色をちらりと覗かせる。ここにしかないもの、すなわち希少性の高いものがここには多い。シルヴィアも瞳を細める。
「商機は逃さず。それが君の良い所でもある」
「そういえば、ルーンス君には紹介してなかったかな?」
 江流が揺満月くんと心を通わせると、ひと鳴きして挨拶をしてみせた。
「初めまして、よろしく! そういえば、前に江流さんから貰ったモザイクグラスのキャンドルグラスも使ってるよ!」
 賑やかな広場を歩きながら、ルーンスが江流に告げる。ご褒美に揺満月くんへ鉱石を食べさせていた江流は、安心したように瞳を細めた。
「よかった。そうして気に掛けてもらえることがありがたいし、嬉しいよ」
「すごく良い雰囲気になるし、重宝してるよ」
 嬉しそうな顔に、ただ楽しむ場だけで使っている訳ではない(進行中の両親に関する密談でも使わせてもらっている)ことは笑顔で伏せておいた。
「シルヴィアも。この前あなたが選んでくれたアベリアの花飾りを彼女に贈ったら、喜んでくれたよ」
「それは何よりだ。あの花は開花時期が長いからね、きっと出会うたびに思い出を深めることが、……」
「シルヴィ?」
 言葉を止めたシルヴィアの視線の先に笑顔のルーンスがいて、思わず笑みを深める。――贈り物をした際、香水にアベリアを使うのもいいかもしれないと調香師を呼ばれた『彼女らしい』(ルーンスの好きな)エピソードがあったのだが、胸に秘めておいた。

●
「何してるさぁ?」
「ひゃ!?」
「あははっ、驚かせてごめんさぁ」
 悪戯な北風をモチーフとした仮装に身を包み、イタズラ屋敷を訪れたフリューリングスルフト=ティエラは気配に気付いて壁を覗く。そこにテオドール・ヘルツェン(地区代表の偉い人)を見つけた。
「うち、フリューって言うさぁ。こっちはイュン(旅人の帽子を被った小さな兎)。お化け屋敷行かないんさぁ?」
「僕はテオドールです。こんにちは、フリュー、イュン。入るために心を落ち着けていて……」
 フリューはそれならと声を掛ける。
「うちと一緒はどうやろか? 一緒にならきっと楽しいさぁ♪」
「ぜ、ぜひ!!」

「どこもかしこも紋具だらけだな……!」
 イタズラ屋敷に赴いたリヒトは、瞳を輝かせて屋敷を周っていく。一階は動く石像、ぬいぐるみや目の動く絵画、二階は突然吹き付けてくる冷気や足を挟むカーペット、いくら進んでも進めない廊下があった。驚きはしたが、それ以上にどういった仕組みかリヒトの好奇心がうずく。
(故郷にないものが溢れている)
 見るものすべてが新鮮で、胸の高鳴りが止まらない。リヒトは夢中になって屋敷を周っていた刹那、叫び声が聞こえた。
「ヒィ!? パワーアップしてる!」
「毎年違うさぁ?」
「新しいものが入ってるんです、皆驚かせるのが大好きでッ!」
 テオは叫びこそすれ、フリューがいることで気を確かに持っているようだ。一方フリューは彼の感じてるような負の感情がわからない。そしてそれはイタズラ屋敷では良い方向に働いていた(ひたすら純粋に仕掛けを楽しめた)。
「おや、人が居たのか。せっかくだから一緒に行ってもいいか?」
「もちろんさぁ! そこ、足元気を付けるさぁ」
「おお、これはどういう仕組みなんだ」
「ぎゃあ!? あ、後で教えてあげるから!」
 床に足を食べられるリヒトとテオに手を貸しつつ、次々と襲ってくる仕掛けにフリューはんふふと楽しげな声をこぼした。

「赤狸&白兎、参上! っと」
 記念に狸と兎と文を書いたフリューが振り返る。
「楽しめたさぁ? 飲み物でも飲んで落ち着くさぁ」
「ありがとう……なら御礼に奢らせて、いいところ知ってるんだ。あ、そこの方もどうかな」
「……俺か?」
 たまたま屋敷の様子を見に来ていただわにも声が掛かった。
「大勢の方が楽しいさぁ!」
「ああ、俺もそう思う」
 三人が連れていかれた屋台で、極彩色の飲み物(コミシュザフ)が出される。フリューとリヒトは面白そうに、だわは注意深く味わった(さっき飲んだものよりよほどジュースらしかった)。

●
 俄かに辺りが騒がしくなる。第一投が投げ込まれ、投げ合いが始まり、あっという間に建物も道も人々も色とりどりになっていった。『コロラト投げ』の開始だ。
「すっごいカラフルだねぇ」
「ええ、皆さまとても楽しい姿になっていますわ、きゃっ」
「わぁっ!?」
 ルルトとフクシアが通りを覗いていると流れコロラトが飛んでくる。ぱしゃんと球が弾け、二人の肩や腹が青や黄色に染まった。
「あらあら、まぁまぁ!」
「これはもう! ボクらもやってみよう♪」
「ええ! 混ざらない訳にはまいりません!」
 両手にコロラトと呼ばれるボールを持ち、ルルトは狙った人の背後に回る。
「わっ!」
「ひゃあ!?」
 驚いた隙にぶつけ、水色に染めた。緑や黄色、橙色とコロラトを投げ、ルルトの周りを明るい色に染めていく。
「ルルト様お見事です、私も負けていられませんわ!」
 腕を捲り、フクシアは一人ずつ狙いを定めて投げていく。投げる感覚も、誰かにぶつかり弾ける感触も、綺麗に染まる瞬間も楽しくて仕方がない。
「ふふっ、子どもの頃を思い出しますわね」
「おてんばフクシア?」
「ええ、お父様の執務室でお洋服をインクまみれにしてしまったの」
 ここで使われているインクとは違い色が落ちなかったため大変怒られたが、卒倒しそうな顔を思い出して悪戯っぽく笑みを浮かべた。
「けれど、今日はむしろインクまみれになる、させるのが礼儀。遠慮なくいかせていただきますわ!」
 そう意気込んで次々にコロラトを投げる。調子よく人々をカラフルにしていったが、どうしても当たらない相手が出てきた。途中でルルトも一緒に投げたが、当たらない。

 その避け続けている相手はフリューだった。フリューの本分とも言うべき本能(フェザーステップ、疾風足、反応強化に回避集中、オマケに双波に看破の欲張りセット)が当たるのを許さない。
「こうなったら!」
 コロラトが乗った荷車に近付くと、両手で掴み周囲の人々へ投げつける!
「皆をコロラトキングにして、うちがコロラトゴッド(フリュー命名)になるさぁ!」
「す、すごい量と速さですわ!」
「全然避けられないよぉ!」
 壁歩きも使い縦横無尽に投げまくるフリューによって、二人は瞬く間に染まっていった。

●
「これは……何味だ?」
「ベリーのようなレモンのような……」
 江流とシルヴィアが、コミシュザフを手に首を捻る。
「コミシュザフはデバガメの味なんだ」
 楽しそうに笑い、ルーンスは不思議そうな二人にあの日のことを教える。去年星を、兄たちを覗き見て(デバガメして)いた時に飲んだものだ。
「にいさまの幸せは僕らの幸せだからね」
「驚いたが、なるほどね。今日もデバガメの味かな?」
「うーん、その時とは違うのを選んだんだ。今日のはシャルガネのカボチャの煮物みたいな、甘じょっぱい味がする」
「野菜という線もあるのか」
 同じものを小さなコップに貰い、三人で飲み比べながらのんびりと時間を過ごす。ふと向こうに目当ての店を見つけ、シルヴィアは二人を手招いた。
「あ、ブンテトルテ!」
「これは……タルトだな」
「ここは来るたびに新商品に出会えるんだ」
 新作というブンテトルテは、黄色のクリームの上に葡萄の形をしたオレンジ色の粒が二つ乗り、カボチャの飴細工が乗っていた。食べてみると、不思議なことに粒にカボチャが詰まっている。下のクリームはサツマイモの味だ。
「これはまた……美味しいし面白いね?」
「俺もシルヴィと同じものにしようか」
「ううん、迷うなあ」
 江流は同じもの、ルーンスは選びきれなかった三種類を頼む。ナイフを借りて一口ずつ切り、分けたものを二人に差し出した。
「ありがとう、ルーンス。これは……」
「こっちは青空ベリーメイン、こっちは夜明けニンジンとかくれんぼイモだよ」
「夜明け、……ん?」
「詳しいね、流石だ」
「知識はあって悪いもんじゃないからね」
 青いベリー、赤と黒の人参、目を離すと消えるというイモ。それから房カボチャ(ぶどうのようなカボチャ)とジュースポテト(飲めるサツマイモ)という新しい知識に、ルーンスは満足そうに頷いた。その横で、見かけた人影にシルヴィアが声を掛ける。
「ヴィンツ」
「やっほー! 今日も面白いもの探し? 案内するよ!」

「――やられたね」
 お土産を探す三人にヴィンツが教えたのは、コロラト投げが開催されている通りを通る道だった。当の本人は『楽しんで?』と姿を消している。
「コロラト投げか……インク塗れになった方が誉なんだね」
 王国での似た催しを思い出しながら、江流は流れ弾を避けていく。シルヴィアとルーンスも掻い潜り、無事な姿のまま土産屋へ辿りついた。
「このモンスタークッキーはいいね、二人にも買って行こう!」
 江流の頭に、一人浮かぶ。それから小さく息を吐くと、クッキーを買って空を見上げた。同じ空に通じているのだろうかと、想いを巡らせて。

「わーい!」
「嬉しいですわ!」
 陽が傾いた頃、コロラト投げの通りにあるステージに、これでもかとカラフルに染まったフクシアとルルトが立っていた。二人が今年のキングだ。
『そして特別賞として、コロラトゴッド!』
「ありがとさぁ♪」
 手を振るフリューはまったく汚れていなかったが、一番人を染めたと賞をもらっていた。三人にはカボチャを模した小さな王冠が授与される。
「……なかなか白熱していたな」
「ああ、本当に」
「参加したのか?」
「見物だが当たってしまっただけだ」
 幾つかの色に染まりながら髪の毛の端が少し焦げている(だわは聞かないことにした)リヒトは、楽しげに瞳を細める。家族にも見せてやりたい。
「面白いところだな」
「……そうだな。そういえばここは初めてだろうか。土産を買いに行くんだが、一緒に行くか?」
「ぜひ」
 軽快な音楽が聞こえてくる。収穫祭によく合う曲を聴きながら、だわとリヒトは屋台へと向かった。購入したオレンジのぶどう?(サツマイモ味) が乗ったブンテトルテを、だわは他の土産(ジュースポテトやモンスタークッキー)と纏めて異空間へ格納する。今年も賑やかで結構だなと、暮れていく空の下の祭りを眺めた。

マスターコメント

楽しんでいただけましたでしょうか! 『コロラトゴッド』は面白い! と地区代表が急きょ新設したそうです。 めいっぱい詰め込んだので、皆様に楽しい想い出が生まれていれば幸いです。 MVPは記録には残りませんが、楽しんでくださった皆さまへ。 ご参加いただきありがとうございました!
ショートシナリオ

ショートシナリオ易しい 報酬:少ない8 / 4〜8人

2022年10月31日 11時12分50秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ヴィンツ・ラッテ

    あ! あいさつ忘れてた! ヴィンツだよ、よろしくね! 今年はコロラト投げもあっていつもよりカラフル! それにいつも通り屋台も店も裏通りにもたくさんの驚きや未知や不思議や新しい発見が口を開けてキミを待っている! 今日という日は今日しかない、キミたちも思うままに楽しんでねー!

  2. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。ヴィンツ、久しぶりだね。 ブンテトルテの新商品が気になって来てみたよ。友人達と回ってみるつもりだ。 皆にとって良い一日になりますように。

  3. ルルト・アーキス

    ルルト・アーキスだよ。 コロラト投げが楽しそうだから参加してみるつもりだよ。 どこかで見かけたらよろしくね!

  4. ヴィンツ・ラッテ

    やあシルヴィア、久しぶり! 相変わらず未知を楽しんでくれてるようで嬉しいよ! 今年のブンテトルテは何かなー。甘いかな、しょっぱいかな、酸っぱいかな? 注文してみてのお楽しみだね! やあやあ赤ずきんさん、コロラト投げが楽しみだなんて嬉しいね! 思いっきり投げてキミ好みのカラフルにしよう! キミもどんな風に染まるだろう? 楽しみだね!

  5. ルーンス・ラグネル

    ルーンス・ラグネルだよ。 よろしくね! 当日は楽しく過ごすつもり。

  6. フリューリングスルフト=ティエラ

    わぁー!挨拶遅うなってしもうてごめんさぁ! フリューリングスルフト=ティエラ、フリューって呼んでさぁ♪ コロラト投げやお菓子を楽しむつもりさぁ♪

  7. ヴィンツ・ラッテ

    ルーンスもフリューもよろしくねー! さあて、そろそろ楽しい楽しいフェスタ・ラスバブの幕が開けるよ。 楽しむ準備は万端? 驚く準備は? 驚かせる準備は? 今日は今日限りのお祭り騒ぎ! さあ、心のままに楽しもう!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0