【奇貨】もう一つの神具
真柄 葉
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シナリオID:2551
オープニング
「噂の件はどうなった」
ベッドに身を横たえながら、ヴィルジニアは側近に問いかけた。
「はい、まず最初のグループですが――――」
側近は手にした報告書を読み上げていく。
「――――ドワーフ王国に調査に行った者がいる? なんだい、噂を真に受けたっていうのかい」
「そう思われます。流行り病と聞いて、症状と治療方法を探ると出立したようです」
「困ったね。長期休暇を出した覚えはないんだけどね」
部下の先走った行動にヴィルジニアは苦笑した。
「まぁいい。それより、シーガル」
「はい」
ヴィルジニアが側近から視線を奥にやると、シーガルが一歩前へと歩み出る。
「タオ商会で、三つの噂を聞いたりはしていないんだね」
「はい、セルッティさんの話題は特に聞こえてきませんでした。同行した冒険者の方も、そう言った話は聞こえてこなかったと」
「ふむ……」
と、シーガルの話を聞き、ヴィルジニアは内心ほっと胸をなでおろす。
冒険者から提案があり流した噂は、内通者の有無を炙り出すためのもの。
セルッティ商会に席を置く従業員は皆、ヴィルジニア自ら声をかけ、その素性も徹底的に調査した者達だ。
とはいえ、全員の行動をすべて把握する事などできない。今回の冒険者達の行動で、ヴィルジニアは『部下の信頼はゆるぎない』と確認できたのは大きな成果だった。
「似顔絵の方はどうだい」
「はい、それに関しては、いくつか情報が集まりました」
シーガルに代わり再び前に出た側近は、報告書を捲った。
側近は従業員達に聞き取りを行った結果を報告する。
あの夜、屋敷を襲った襲撃者は、皆一様に黒い衣装を纏い、目深にフードをかぶっており、殆ど正体がわかっていない。その中でも金髪碧眼のリーダー格の男の姿は、シーガルはじめ何人かの従業員が目撃していた。
「その金髪にくっついていた人間が、似顔絵と似ているというんだね」
「はい、暗闇での目撃情報ですので、確実とは言えませんが、何人かが金髪の男と共に目撃しています」
「他に捕虜を暗殺した奴の情報はなかったのかい」
「そちらは残念ながら……」
「ふむ、となれば別動隊なのか……? ともあれ、よほどの手練れのようだね」
襲撃の混乱から立ち直っていなかったとはいえ、セルッティ商会の本館に捕らえた虜囚をあっさり暗殺してのけたのだ。その腕は侮れるものではないだろう。
「警戒はより厳にしております。ヴィルジニア様に刃が届くような事はありません」
「ああ、頼りにしているよ」
側近にそう言って、ヴィルジニアは再びシーガルに向き直る。
「シーガル、ドルトレスの所へ使いに出てくれるかい」
「え、私がですか……?」
「ああ、これまでわかった情報を、届けてやってくれ」
「わかりました、必ず届けます」
「任せたよ」
そういうとヴィルジニアは、側近から受け取った報告書をシーガルに手渡した。
●
「――――はい、10歳の時の記憶です」
「一年間ですか? 長いですね」
「お願い出来ますか」
「もちろんですよ。貴方の働きにはいつも感謝していますからね」
「ありがとうございます……貴方の貴重な記憶に報いるよう、一層の忠誠を誓うと約束します」
「期待していますよ。では、文字盤をよく見てください。けして目を離さないように」
「はい――――」
●
「ロニスク様」
「え?」
リブラネスタの街中で、突然声をかけられ振り向いてみれば、そこには帽子を目深にかぶった男が立っていた。
「な、なんでしょうか」
シーガルは警戒しながらも、辺りに人目がある事を確認し、男に返事をする。
「貴方と『商談』をしたいという人物が居るのですが、お会いいただけないでしょうか」
「商談……? 残念ながら、私はお売りできる商品を持ち合わせておりませんが」
「持ち合わせていない? それはおかしいですね」
視線鋭く見つめるシーガルに、男は小さく頭を振った。
「貴方の商品は情報だったはずです」
「……なぜそれを」
「是非、我が主とお会いください。損はさせません」
男は腰を折り頭を下げる。
「(……その仕草。なるほど、そういう事ですか。貴方の主は――――)わかりました、話だけでもお伺いしましょう。ご案内いただけますか」
「ご快諾感謝いたします。では、こちらへ」
シーガルは男に言われるままに用意されていた馬車へと乗り込んだ。
カーテンが下ろされた馬車が走る事1時間ほど。リブラネスタの街から出るには十分な距離だ。
「――――着きました」
御者台の男に言われ、シーガルは馬車を降りる。
「やはり貴方でしたか、タオさん」
「バレていましたか、流石ですねロニスクさん」
細い目を笑顔に変えて、馬車から降りたシーガルを迎えたのはユベール・タオだった。
「私に何の御用でしょう。貴方が望むような商品をご用意できるとは思いませんが」
「ふむ。では、何故この場へ?」
「私も商人です。『万が一』という言葉がありますので」
「なるほど。では、その『万が一』に賭けてみましょう」
そういうと、ユベールは一枚の紙を取り出した。
「そ、それは……!」
「はい、あの倉庫の権利書です」
それはシーガルが引退するミクニ商会から引き継ぐ予定だった店舗兼倉庫の権利書だった。
「これを貴方に差し上げます」
「……は?」
「どうですか。華江で商売を始めてみませんか」
そういうユベールに、シーガルはすぐに答えを返せなかった。
●
「天秤の情報はなしか」
「申し訳ありません」
「別に責めてやしないよ。犯人の見当はついているんだしね」
「……やはり、あの商会が」
「まぁ、ここまであからさまな態度をとってくるのだから、十中八九間違いないだろうね」
神妙な顔の側近に、ヴィルジニアは肩をすくめた。
「やはり天秤が強奪されたと公表するべきなのではないでしょうか」
「なんでだい? うちで一番厳重に保管していた商品が強奪されたと、わざわざ触れ回るのかい?」
「そ、それは……」
仮に襲撃で奪われたと公表すれば、一時的な同情は集められるだろう。しかし、奪われた事実は消えない。それが神具となればなおさらだ。そして、それは商人としての信用の低下を意味する。誰も好き好んで窃盗団に狙われている商会に、大切な商品を預けようとは思わないだろう。
「相手もいずれ、天秤を手に入れたと公表するだろう。その時、うちに何ができるか」
「秘密裏に取り返すしかないのではないでしょうか。例え少々強引な手を使っても」
「また人死にを出すのかい? アタシはごめんだね」
「しかし……!」
「アンタの言いたい事はわかるさ。でもね、アタシはこれ以上アンタらを失いたくないのさ」
ヴィルジニアの言葉に、側近は押し黙った。
「甘いと思うかい?」
「……いえ」
「はは、正直だね」
言葉とは裏腹に、側近の表情には不服が見て取れる。
「……賭けのテーブルに乗るには、やっぱり『チップ』が必要かね」
「チップ、ですか……?」
「ああ、奴の手に二つの神具が揃っていると仮定すれば、残りの『チップ』はもう一つしか残っていない」
「それは……!」
ヴィルジニアの言わんとしている事を悟ったのか、側近はハッと顔を上げた。
「打つ手なしと、このまま手をこまねいているのも性に合わないんでね。眼鏡に手を出してみようか」
驚く側近を前に、ヴィルジニアは不敵に微笑んだ。
解説
マスターより
リプレイ
キリコの時計を追う『紳士の傘』と、秘密裏に接触を持ったシーガルは、所長であるドルトレスとの情報交換を終え、帰路を急ぐ。
「これで捜査が進むと思うか?」
そう問いかけたナハシュは、ヴィルジニアの密命を受けたシーガルの護衛兼見張りとして傍に侍っていた。
「そうですね。肥料や土の流通からして、大規模な栽培を行っているのは間違いないでしょう。あとは何を目的にしているのかを掴みたい所ですが……」
二人はドルトレスからだけでなく、セルッティ商会の伝手や行商人達からも情報を得ていた。そして、得られた情報の多くが、エルドゥークのダンジョンにまつわるものだった。
「華江に回ってるかと思ったんだがな、当てが外れたか?」
「そうですね。肥料の買い手もタオ商会名義ではありませんでしたし、ダミーの商会と専用の集積地を使って情報を攪乱しているのかもしれませんね」
「攪乱か……それも商売テクニックってやつか」
「そうですね。例えば、セルッティ商会とベイカー商会の繋がりはある程度知られていますが、それを『見せる』か『隠す』かで効果が変わってくるんですよ。わざと見せたり、徹底的に隠したり、大きな商会ともなればその辺りは上手いですよ」
「はぁ……それもいわゆる、商売の知恵ってやつか」
「いわゆるそういう奴です」
ウンザリと両手を上げるナハシュに、シーガルは小さく微笑む。
「ん? それならリサに頼んどけばよかったな」
「流通の件ですか? でも、彼女は『噂』を広めに向かったのですし、全部お任せするのは――――」
「呼びました?」
二人が会話していると、後ろからリサ・ベイカーの声がした。
「リサか。よく見つけたな」
「ええ、お金の匂いがしましたので……って、冗談ですからね?」
嫌そうに舌を出すナハシュに、リサはくすくすと笑う。
「そちらはどうでしたか?」
そんなナハシュに代わり、シーガルがリサに問いかけた。
「この街のベイカー商会の支店を使って噂を流してくれるようお願いしてきました。ただ、それだけだと信ぴょう性にかけるかと思ったので、商業ギルドにもこっそりと」
「なるほど、それは随分高く売れたでしょうね」
「ええ、それはもちろん。一応、アレだとは言っていないんですけど、聡い人は勘付くでしょうね」
「セルッティさん、天秤所有者ですしね」
「はい。だから噂を耳にした商人達は随分ざわついてましたよ。『ついに同盟領を取りに来たか』って。
噂をどういう風に解釈してくれるかは、情報を受け取った側次第ですけど、真実をぼかしましたので、後々、解釈による相手の立場とか、どこまで『調べた』『知っている』なんかを探る事で、利用できるようにもしました」
「すごい、そこまで考えて……」
二人が情報交換をする横でナハシュは周囲の警戒を怠らない。この街がタオ商会やキリコの時計の勢力圏ではないとはいえ、どこに耳があり目があるのかわからない。
「まだ手を付け始めたばかりで、成功するかどうかわからないと言っているんですが、興味と警戒の雰囲気がビンビン伝わってきましたよ。きっと、表でも裏でも方々へ噂を広めてくれるはずです」
雑踏に紛れながら三人は歩き、街外れの馬車停留場へ辿り着く。
「そういえばリサ、ちょっと調べて欲しいもんがあるんだが、いいか?」
エスト・ポーラへ向かう馬車へ乗り込もうとしたリサに、ナハシュは先ほどの話をした。
「……肥料の流れですか。わかりました、うちの商会にも聞いてみますね」
リサは頼まれごとを心のメモに刻むと、ふとナハシュの横にいるシーガルへ向き直る。
「あ、そういえば、シーガルさん」
「はい?」
「……最近、めっきり冷え込んできたので体調管理には十分お気を付けくださいね」
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。まだ若いですから」
「ふふ、そうでした。失礼しました。それじゃ、わたしは行きますね。また何かあれば連絡してください」
こうしてリサは馬車へと乗り込んでいった。
「さて、俺達も行くか」
「え、ええ」
リサを見送り、二人も馬車へ乗り込む。行先は『華江』――――。
●
風穏やかな秋の空の元、船がローレラウラの港を出た。
見送りに来たセルッティ商会の面々に、トーラが「行ってきます!」と元気に別れを告げる一方、サイラスは……。
「やっと見えなくなったか」
船倉からひょこっと顔を出した。
「何も隠れなくても」
「いいんだよ、俺はこれで」
人影が見えなくなったことを確認して甲板へ出たサイラスは、床に水域図を広げる。
「沈んでる所はここで間違いないな。沈んだ当時の船員の証言とかばっちり文献に残ってたわ」
事前に調べた情報を開示しつつ、サイラスは水域図を指さす。
「でも、この辺りってマーマンの生息域との境なんですよね」
「みたいだなー。そもそも船が沈んだのもマーマンの仕業らしーし」
「どのくらいの深さに沈んでるとかは、調べた人はいなかったですか?」
「んー、居たかもしれねーけど、記録は残ってなかったな」
「なるほど……という事は、まだ船や積み荷が残っているかも不明なわけですよね」
「……ま、そうなるわなー」
船はゆっくりとローレラウラ湖を進んでいく。
目的の水域は陸からかなり離れた位置にあった。
「あの小島がこれで……ん、文献とも一致する。ここだな」
サイラスが再度水域図を確認し、いよいよ調査が始まった。
「それじゃ、沈めていきますね」
トーラが先端に重りを取り付けたロープを用意すると、船縁からゆっくりと垂らしていく。ロープには10m感覚で結び目が結われており、目印となるリボンが幾つも結ばれていた。
「……ここは、180mくらいですね」
「180mな。おっけ」
手に伝わる感触にロープを止めたトーラが、サイラスに伝える。
水深の確認が終わると、船を移動させ、別の場所でまた測る。
これを繰り返す事十数回。目標地点付近の水深は大体180~220m程だと確認できた。
書き込みが増えた水域図を眺めながら二人が相談していると、船長が話しかけてくる。
船長曰く、湖の中層や下層には水の流れがあり、トーラが垂らしたロープが流されているのかもしれないとの事だった。
「ロープが流されるなら、沈没した時に船も流されてる可能性があるって事か」
「……なるほど。それじゃ捜索範囲をもっと広くみないといけませんね」
二人は改めて船長と話し合い、調査の範囲を広げた。
「なぁ、もし船が見つかったとして、どうやって引き上げるんだ?」
次のポイントでトーラが作業するのを見つめていたサイラスに、ふと船長が話しかけた。
「うん? 普通に網で引っ掛けるか、クレーンで巻き上げるかするんじゃねーの? そういうのは、船長の方が詳しいだろ」
「いやまぁ、そうなんだが……調べてきたんだろ、ハンテルー号の事」
「うん? ま、調べられる分はな。なんだ、引き上げと関係あんのか?」
「関係あるというか、引き上げは正直言って無理だぞ」
「無理?」
「ハンテルー号はこの船の倍ほどある大型帆船だ。そんなもん何百mもの湖の底から引っ張り上げる手段がない」
「ロープ引っかけてとかできるんじゃねーの?」
「どうやってひっかけるんだ? もし仮にそれができるなら、もう誰かがやってるさ」
船長の言葉に、サイラスの眉間にしわが寄る。
「ならどうしろって? 潜って取って来いとでもいうのか? この下にはマーマンもいりゃ、でかい蛇もいるんだろ? そんなん無理だろ」
「ああ、だから200年間誰も手出しできなかったんだよ」
「……あ!」
サイラスと船長が話していたら、トーラが声を上げた。
「当たりました! 多分、船だと思います。感触が今までと違います!」
手に伝わってくる感触に、トーラはロープの目盛りを確認する。目盛りは丁度200m。船体のどの部分に当たったかわからないが、誤差があっても数mだろう。
「……ちょっと流されてるな。でも、この場所なら問題ないか?」
トーラが見つけた船の場所を水域図に書き込んだサイラスがそれを見せつつ船長に問いかける。
「ああ、これならギリギリで人間の勢力圏だ」
それは、人とマーマンの支配域を分ける赤線の内側だった。
「それじゃ、潜って詳しく調べてみます。サイラスさんはどうしますか?」
「一応潜る用意はしてきたから、行くわー」
「わかりました。でも、きっと寒いので覚悟してくださいね?」
「うへ……」
季節は10月。気温も随分下がってきた。きっと水温も冷たくなっているだろう。
寒さに弱いリザードマンであるサイラスは、嫌そうに眉をしかめる――――。
●
「て、敵です!!」
水着に着替え、いよいよ潜って調査を行おうとした矢先、見張りの水夫が緊張した声を上げた。
「やっぱ出やがったかー」
見張りの指さす方角を見つめるサイラス。そこには水面から頭だけを出し、じっとこちらを見つめている数匹のマーマンの姿があった。
「攻撃は……今のところしてこないようですね」
「偵察役かなんかだろうな。数は……3か?」
サイラスが見張り台の水夫に向けて三本指を立てると、肯定の返事が返ってきた。
「一当たりして実力を見るのもありっちゃありだけど……どうする?」
「距離が遠いですね……【捜波】が届かないので、水の中に沢山いたら大変ですよ?」
「あー……その可能性もあるか。なら餌でも撒いておびき寄せてみるか?」
「それは流石に逆効果だと思いますよ。マーマン種って頭いいですから」
と、サイラスの呟きに、トーラはあるマーメイドの少女の顔を思い浮かべながら答える。
「とりあえず、見張りは任せつつ、当初の予定通りに」
「りょうかいー」
二人はマーマンを刺激しないよう、船の影から静かに湖へ降りた――――。
●
ナハシュとシーガルを乗せた馬車は、一路華江へ向かう。
「はぁ……一体何考えてんだ、タオ商会の奴」
「私にも意図は読めません……いえ、裏で何か画策している事は確かなんでしょうが、私ではタオさんの真意を掴めない」
悔し気に拳を握るシーガルに、ナハシュは「俺もわからん、気にするな」と声をかける。
馬車の中でシーガルは、ユベール本人から接触があった事を正直に話していた。
「そんで、答えたのか?」
「いえ、まだです」
「ふむ……ま、結局どうするかはお前次第なんだが……権利書を受け取るって事は、タオ商会の傘下に入るって事だ。それはわかってるよな」
「……」
きっと心の内には色々な想いが渦巻いているのだろう。即答しないシーガルにナハシュはふっと表情を緩めると、声のトーンを落とし改めて話しかけた。
「だが、権利書は取り返したいよなぁ。俺も一応、冒険者商会の一員だし、その気持ちわかるぜ。だからだ、これは『取引』なんだが」
「取引?」
顔を上げたシーガルに、ナハシュは不敵に微笑む。
「一計案じてみねえか?」
ナハシュはちょいちょいと指でシーガルを呼び、『一計』を耳打ちした。
●
「すみません、噂の流布をお願いしたばかりなのに」
「気にしないでください。他でもないお嬢さんの頼みですからね、気合を入れて調べますよ」
「ふふ、頼りにさせてもらいます」
エスト・ポーラへ戻ったリサは実家を訪れ、顔見知りの従業員へ肥料の流通を調べてくれるよう頼んでいた。
「それにしても、肥料や土なんて……農業でも始めるんですか?」
「いえ、そういう訳ではないんですけど……もしかしたら、今回の件と関係があるかもしれないんです」
「今回の件というと、神具の件ですか……わかりました、いい返事が出来るよう努力します。でも、無茶しないでくださいね。お嬢さんに何かあったら、お父様もお義母様も悲しまれますから」
「ありがとうございます。これでも分はわきまえているつもりなので、大丈夫ですよ」
そう言ってリサは従業員へ微笑む。
「……わかりました。では、これ以上何も言いません。頑張ってください!」
「はいっ、それでは行ってきます!」
沢山の従業員に見送られ、リサは実家を後にした。
●
トーラとサイラスはマーマン達を刺激しないようゆっくりと湖へ身を沈めていく。
船が沈んでいる場所は授恵者であっても容易に到達できる深度ではない。それでも二人は限界までと、深く潜っていく。次第に日の光が届かなくなり辺りを闇が覆い始めたところで、二人は潜行を止めた。測量に使ったロープを確認すると、深度は50mほど。これ以上潜るのは、息も身体も持ちそうにない。
トーラはすぐに【宗波】で沈没船の位置を確認するも、効果範囲外なのか、その全体像をとらえる事は出来なかった。どうにかして確認する方法はないかと、暗い湖の底へ視線をやるが徐々に息も苦しくなってくる……そんな時だった、命綱代わりにしていたロープが引かれた。
二人は頷き合い、すぐに浮上を始める。
「ぷはっ!」
水面に顔を出した二人を船長は急いで回収すると、すぐに船を出発させる。
「増えてやがるなー」
濡れた体を拭きつつ、サイラスが見たのは、無数のマーマンの頭。追ってくる気配はなく、遠ざかっていくこちらをじっと見つめていた。
「水深もそうですけど、マーマンの群れがやっぱり厄介ですね」
タオルでぐるぐる巻きになったトーラは、得られた情報を漏らさず記録に残している。
「いっそ、あそこに顔出してるマーマンでも雇えばいいんじゃねーの? 魚頭は賢いんだろ。なんか、好きなもんちらつかせて交渉とかできんもんかね」
そんなサイラスの言葉を聞きながら、トーラは考えた。
「交渉、ですか……もしかして、出来るかもしれません。いえ、それしか方法がないかもしれませんね」
「え、出来んの? マジで?」
適当に提案した案がまさかの採用の流れに、サイラスは驚く。
「あのマーマン達ではないですけどね」
そんなサイラスに苦笑したトーラは、水面から顔を出すマーマン達を見つめた。
●
華江へと着いた二人は、『一計』を試すために、タオ商会へ向かっていた。
「うまくいくでしょうか」
「どうだろうな。ま、失敗しても知れる事は多いだろ。それも『情報』だ」
不安気に呟くシーガルにシーガルが答える。
「だが、俺があいつと会ってる間はお前一人になる。重々注意しろよ?」
「大丈夫ですよ。これでも冒険者ですよ?」
と、シーガルは軽口で返すが、シーガルの表情は硬い。
「いいか、お前は既に状況を左右しかねない程の情報を持っている」
「え、ええ……」
「もしそれが漏れるようなら、俺はお前を殺してもいいと思ってる」
「え……」
「情報を扱うってのはそういうもんだろ?」
一転、おどけたように笑うシーガルに、シーガルは神妙に頷いた。
「おっし、それじゃ行ってみるか」
シーガルそっくりに変装したナハシュは、フードを深くかぶり正体を隠したシーガルに別れを告げ、タオ商会の門をくぐった――――。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い4 / 4〜5人
2022年10月26日 11時03分40秒 公開
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー とりあえず2をメインに据える予定。資料調べてから船とか?場所くらいは抑えたいが 1はまず話す内容決めないとでない?反応とか予想してないとだし 話す先はどこに広めたいかなんかね?例えば相手の商会には噂広い辛いルート通せば相手の初動遅らせれるかもだし 3はまあフリーハンドみたいなもんやね。人次第? どれにしろそれぞれ他の人にやって欲しい事とか有ればぶん投げて、擦り合わせできるならした方がいいやろなと。多分人数的に場所絞って情報に穴開けるか、それぞれバラバラに動いてくかだろうし、俺は後者の方がいいんでないかと思う。 何かしつつ普通のお店とかで噂広がるとかならともかく、NPCとか団体使うとなれば俺は相性が死ぬ程悪いんで1と3はお荷物にしかならん、じゃあ絞るとなると絞って開いた穴が次かなり大きくなるだろなと。
リサです、よろしくお願いします。 わたしとしては、1を担当かなと思ってます。 そもそも、わざわざ噂を流せっていうのは、タオ商会を誘い出すもしくは動きを伺う為だと思いますので、 商人の間での噂として、流すのが良いかなと。 内容としては、どこまで言うかですが、 「セルッティ商会が神具の調査を行っているらしい」はそのままとして、 「だいぶ詳細を掴んでいるらしい」というのと 「いやいや、まだ手を付け始めたばかりで見つかるかはわからないって話しだ」という感じで、 進捗はぼかす感じでどうでしょう? まあ、いずれにせよ、ユベール氏には怪しまれるでしょうけど。 何かしら動きはみせるかな?と。
ナハシュだ!今回もよろしく。 1の噂ついては上がっている内容で賛成だな!これでタオ商会が動くなら、3で程よく調べることもできると思う。 個人的にはシーガルを見張っておきたい気持ちはあるな。放置しておくと少し面倒そうだ。 動きとしては3になるかもしれねえ。 ただ2も妨害が予想されるなら人手がもう一人くらいはいてもいいんじゃねえかと思うし、3にあるキリコの時計とも接点ねえから、このまま人数が増えねえなら2でもいいと思ってるぜ。
トーラです。 よろしくお願いします! 2に行こうかと思ってますけど、3も気になってます。
少し考えたんですけど、2の調査には双波か宗波で(ある程度潜った上で)地形とマーマンなどの敵性体について調べれる人がいれば調べれることは多いですよね。 なので現状だとナハシュさんかわたしが行くのがいいと思うんですけど、2と3を分担しませんか? わたしはどちらでも構いませんので。
>トーラ 2と3を分担か!そういうことならもちろん構わねえ。 なら3の方に行ってもいいか?先に言った通りシーガルを放置するのが面倒そうだから、タオ商会の動き辺り兼ねつつこいつを見ておきたい。 もしキリコの時計関係で動いてほしいことがあれば言ってくれたら書くようにするぜ。
はい。ナハシュさんよろしくお願いします! わたしは湖の地形と敵性存在の調査に集中しますね。 なにか要望があればこちらも対応しますよー。 キリコの時計関連ですけど、謎の植物の栽培を重視しているので、肥料や土などの流れの調査をお願いして良いでしょうか?
No.8
NPCとの関係とか気にせんでええん?いや戦力とか考えると2に人居た方が良いけどNPCとの交流とか他の人は好きだろうから3の種類多いし頑張るかと思ってたけども。 とりあえず人いるなら一応殺界とか水泳持ち込むねーと宣言しとく。今更だがほぼ確実にマーマンいるし船出すだろうから襲われた時殿するつもりで。
ちょっと体調を崩していた!すまねえな!! とりあえず土と肥料の調査については了解した。書いておくぜ!