【再起】荒れ狂う炎の獅子
馬車猪
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シナリオID:2501
オープニング
シュライバーの地は宝石で潤っていた。
人類の領域で無くなった後も、宝石の鉱山は無傷で残っていた。
今では腕に覚えのある犯罪者と魔獣と時折襲撃するクリーパーが混在する、地獄としかいいようのない土地だ。
そんな地獄に業火が燃える。
賊の死体ごと肉食の魔獣が焼かれていく。
そのにおいは奇妙に甘く感じられ、宝石鉱山の入り口を奪取した兵士達は真っ青な顔になり一部は耐えきれず嘔吐している。
「風向きは完璧ね」
炎が作り出す風に桃髪を揺らし、金と紫の瞳の代官が口元をほころばせる。
隣の領地に避難中の古老から聞き出した情報は驚くほど正確だった。
地形、風向き、気候の変化まで詳しく分かっていれば、賊の住み処に奇襲をかけて燃やす程度簡単だ。
炎が混乱を呼び、混乱の中で殺された賊が魔獣を呼び寄せ、魔獣による肉を取り合う騒ぎが強力なクリーパーを呼び寄せる。
全てまとめて倒すつもりなら、理論上は有効な作戦であった。
「あれが俺達の雇い主?」
「誰だよ小娘って言ったの。バケモンじゃねぇか」
セニャが連れて来た兵士は心が折れている。
そこそこ高品質な革鎧も槍も傭兵基準では立派なものだが、今は子供用の玩具よりも頼りなく感じる。
「隊列を維持しなさい」
セニャの姿と声は炎上する戦場でもよく目立つ。
地面が揺れ、炎のように赤い獅子が飛びかかってきても優雅に躱して鼻先に杭を叩き込む。
しかし敵はセニャより強い。
鋼を貫く打撃を浴びても赤い皮膚は破れず、着地した瞬間固い地面に蜘蛛の巣を思わせる亀裂が生じた。
「怪我しても最期まで面倒を見てあげる」
逃げても獅子に食われるだけだ。
高給に釣られて雇われた元傭兵現私兵達は、恐怖で以て躾けられている最中だった。
●数日前。再開発中の土地
セニャは見回りを欠かさない。
戦闘に備えて地形を把握するためだけでなく、配下の生活や次の納税額を把握するためにも幼い頃からできる限り行ってきた。
冒険者とその仕事を信用はしているが、これだけは欠かせない。
だから気付けた。
「帝国の土地はいつもこうかしら」
冷静な声を作れたか自信がない。
へぃ、と気弱な態度で応える新規領民は隠す余裕もなく自信なさげだ。
代官が汗もかかずに魔獣を屠っているのを目撃して怯えているのもあるが、農業についての理解も経験も浅いので本当に分からないのだ。
「ガキの頃に手伝わされてた畑は、もちっと育ってた気も……」
これ以上の情報は引き出せないと判断し、セニャは後を部下の部下に任せて砦へ向かう。
建物1つが狼煙の代わりに燃やされたそこは煙臭く、焼け焦げた跡がいくつもある。
犠牲者は出なかったとはいえビッグオウムのための設備は焼けてしまったので、いつもなら1組か2組は休んでいるビックオウムと御者も今はいない。
いるのは後片付け中のヒューマンだけだ。
「げっ」
放火した本人であるリットが露骨に怯える。
代官が浮かべた優しい表情を見て、命の危険を感じて逃げようとした。
「落ち着きなさい」
悠然と振る舞っているのに足は速い。
短時間でリットの行く手を遮り、細剣に手を伸ばすこともなくリットを見下ろす。
「よくやってくれたわ」
変わらない笑顔が怖くて、リットはぴぃと鳴いた。
代官は微かに眉を動かすがリットの奇行に言及はしない。
信賞必罰は上に立つ者の義務だ。
幼少時から上に立つ者として生きてきたセニャにとり、今のリットは賞賛すべき対象だ。
「帝国と冒険者ギルドにあなたの働きは伝えておく。ゴールディにもギルド経由で届くでしょう」
セニャが軽くうなずくと、部下が報償を恭しく運んで来る。
銀貨と思ったリットが表情を明るくし、金貨であることに気づいて殺される直前のプレゼントかと勘違いして真っ青になった。
「私はしばらく留守にするから守りは……」
紫と金の瞳がリットを観察する。
セニャの基準ではリットを有能な人物と分類できない。
しかし現実に成果を出している。
「ねえ、提案があるのだけど」
怯えきったリットは、深く考えずにうなずいてしまった。
●代官
リットが見えなくなってから代官としての態度を止める。
表情に疲れが出て、眠気を堪える仕草が自然に出る。
若く強力な授恵者でもあるセニャは見た目以上の体力を持っている、しかし最近の生活は苛酷すぎた。
(セニアーラ様、少し休まれては)
(休むのは今を乗り切ってからよ。冒険者に助けてもらうしかないけど、どこを助けて欲しいか分からないまま助けを求めるわけにもいかないでしょう)
部下との会話ではテレパスを使うので外には漏れない。
(ですが)
(土地の状態が予想を下回ってる。最良で例の事件の黒幕の破壊工作。最悪の場合は帝国全土がこの状態よ)
メイドの表情が強張った。
復興予定地の収穫量予想は理論上の下限近くだったはずだ。
それを下回るとなると復興事業の破綻も有り得る。
(食料は多めに確保しているけど来年には足りなくなる。今のうちに手を打たないと……)
セニャは使えるものと必要なものを脳内に列記し思考する。
喉が乾ききっていることにも気付けない。
(計画を早めるわ。訓練中の私兵部隊で一番マシなのは?)
(昨日届いた報告では2日後に行軍訓練を終えヴァイセントラフ砦に到着すると)
(旧シュライバー領に向かわせて。連絡には早馬を使っていいわ)
(でしたら私が指揮を)
部下からの提案をセニャは首を振って却下する。
初歩的な部隊訓練が限界の現指揮官を王国での指揮経験を持つ腹心に代えたなら安心はできるが今度は文官が致命的に不足する。人材不足なのだ。
(私が現地に出向いて直接使う。冒険者ギルドと帝国軍にはうまく伝えておいて)
セニャは、仮眠もとらずに次の復興予定地へ向かった。
●冒険者ギルド
「討伐依頼、になるでしょうか」
受付嬢がうーんと悩んでいる。
視線があった冒険者にすすっと近づき地図を渡す。
どうやら、帝国国内の未奪還地域での依頼らしかった。
「もともとはシュライバーさんってお家が治めていた土地みたいです」
支配者一族も住民も多くが死に土地を失ったという、よくある話だ。
「宝石がとれたみたいです!」
今もとれる。
真っ当な人間ではなく、腕に覚えのある賊が一部の鉱山に入り込んで乱暴に採掘しているが。
「あっ、ちょっと待って下さい」
一度奥へ引っ込んで、部外秘と書かれた報告書を2つ持って来てテーブルに広げる。
右の報告書には精悍な赤い獅子が描かれている。
「クリーパーの目撃情報が届いてます。それと魔獣も!」
左の報告書には、形は猫に近いが姿も行動も獰猛に過ぎる魔獣が描かれている。
不自然なほど牙が発達している。一度帝国が崩壊したときに多くの人肉を食らった可能性あるとも、別の紙に書かれていた。
「今は代官の人が一時的に預かっている……のかな? とにかく代官の人が先に現地入りして露払いをするみたいです」
賊の拠点に真正面から突撃し、適当に惨殺しながらマジカルポケットで出した可燃物で炎上させるともいう。
「大事なのは対クリーパー戦です。ほんとーに強そうなので、がんばって倒してください!」
受付嬢は、冒険者の勝利を確信していた。
解説
マスターより
リプレイ
セニャの回避は有効で、しかし獅子の爪を躱すには遅すぎた。
「廃村で誰もいないとは言え、これはまた随分と盛大な焚き火ですね。まだ焼き芋のシーズンには早くありませんか?」
フリーダ=ブロムヴィストが割り込む。
重機じみた重さと頑丈さの爪と白銀の盾が真正面からぶつかり均衡する。
「啓示にも『そろそろ秋の季節を感じますが、暑さが残ってます』とありますが」
炎の揺らめきと紅獅子の小刻みな位置変更がセニャもフリーダも惑わす。
魔獣は体格の優位を生かしてフリーダの脇腹に重さと速度が両立した猫科パンチが突き刺す。
いくら装甲が厚く防御技術が巧みでも衝撃は通るはずなのに、フリーダはやせ我慢をする必要もなく平然としていた。
「冗談はさておき、囮に釣られた哀れなクリーパー達をなんとかしましょうか」
時間制限ありとはいえ神話の金属のごとく固いフリーダが、一瞬だけ紅獅子の前から消えたように見えた。
意識が散漫になったセニャを狙っていた山猫が、頭から胸のあたりまで切り裂かれてセニャの足下へ落下。フリーダは何事もなかったかのように紅獅子と向かい合う。
「だいぶお疲れみてぇじゃねーか! そっちの赤獅子は恋人に任せて後ろから指揮に専念しときな!」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングは呵々と笑いながら足を止めない。
体重ではハヤトの半分程度はありそうな巨体の山猫をリズムよく蹴りつけそして速度を維持している。
煙も賊も死体も死骸も魔獣も、彼の行く手を遮ることはできない。
宗波による位置把握と地形把握による障害物が障害物にならないのだ。
魔獣の骨から削り出された具足は、山猫魔獣に打撃を与えるだけでなくハヤトの足を保護して地面に足跡をつける。
「うるぁ! にゃんこ共が狼に喧嘩売るたぁいい度胸だぜ!!」
暴力に慣れぬ人間なら身をすくめること確実な音と悲鳴が響く。
即死はしなくても骨に大きな亀裂が生じ、山猫は口から人肉の欠片と血を吐き出し悶絶する。数秒で2頭目も同じ有様になる。
(宝石鉱山の安全運転確保か……成功させりゃ報酬も期待出来そーだな♪)
楽観視はせず軽視もせず必要以上に深刻に捉えることもなく、ハヤトは冷静に戦況を冒険者有利に変えていく。
「貴様ら……貴様らは」
ベルク・オスマットは機嫌が悪い。
宝石鉱山を掘るために必要な拠点を焼いたセニャに対しても言いたいことはあるがそれ以外に対してはもっと言いたいことがある。
「帝国の資産に手をつけるとかいい度胸だ、利子付きで取り立てを行うとしようか。利払いは貴様らの命でな」
怒りはあっても刃には込めず、情報を引き出させなさそうな下っ端にはどんどん慈悲をくれてやる。
(人手も時間も足りないから一網打尽狙いも理に適ってるとは思うんだけど、餌の選定がセニャさんらしいというかなんというかー……?)
超高速で行われる攻防の中にいてもアルマ・ヴァレンタインは自身のすべきことを見失わない。
「いつもの行くよー!」
探知用のエーテルとは異なる、しかし同等以上に濃く膨大なエーテルが日光の色で戦場を照らす。
回避用スキルが尽きて動きが鈍っていたセニャもかなりマシになり、紅獅子を真正面から防ぎとめるフリーダも邪魔者を始末していくシーフ達も明らかに有利になる。
「隊列維持で警戒がんばってー……」
鉱山を守る私兵達にアルマから声援が飛ぶ。
「獅子に構わず命に従うといい。陣形を保ち武器を向け警戒。敵を直視するのだ。待ち受けていると相手は躊躇し飛び出すタイミングを測るもの」
カリスマ溢れるストレガの言葉が追い詰められた私兵達に染みこむ。
セニャが何か言いたげな表情なのを気付いた上で、ストレガは平然と仕事をこなす。
「そこにとどまるのだ」
見えるものは何も変わらないのに下向きの力が発生する。
それは敵にだけ影響を与え、巨体の割には平凡な移動速度しか持たない紅獅子の位置変更を事実上封じる。
「念には念をなのだ」
青藍に光る錨が現れる。
同色の鎖で回転させて勢いをつけ、脚を狙うと躱されてしまいそうな気がしたので胴あたりを狙って投げつける。
よく狙った一投は獅子に回避を許さない。
威力はなさそうな錨に獅子が安堵したのは一瞬だけで、巻き付いた鎖から己に染みこむ何かに気付いて悲鳴をあげた。
「おまえのあしはうごかないのだ」
これでは重力場が切れた後もまともには動けない。
極めて高度な付与術を扱うストレガが、特に誇るでもなく事実を指摘した。
「セニャ! すごい疲れてるじゃないか。ここは俺に任せて、無理をせずに後方に下がるんだ」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトの到着が皆より遅かったのは重装甲故だ。
加速でセニャに追い付き追い越し、フリーダと激しくやりあう紅のクリーパーに突撃する。
(黒汗馬は……黒汗馬だな)
後方から戦場までの移動では大活躍の馬も、エーテルリンクができないので戦場入り即ち高確率で再起不能以上である。
アルベルトは己の足で駈け、不吉なエーテルを纏わせた黒い刃を紅の毛皮の中に叩き込む。
凄まじい技と腕力とアルマの術で強化された刃は毛も皮膚も肉も裂いて骨まで届く。
しかし避けた骨の範囲は狭く、骨を壊すには足りない。
紅獅子は大型に近い強力なクリーパーなのだ。
「だがっ」
抵抗に邪魔されないアルベルト発のエーテルが巨体を蝕む。
「今なのだ」
ストレガがエーテルを蜘蛛糸のごとく細くして紅獅子に伸ばす。
獅子の移動は既に封じ、魔獣や賊は味方が相手してくれているので安心して攻撃集中 できる。
当たり前にように紅の毛に触れた糸から精緻に制御されたエーテルが注ぎ込まれ、今度は移動速度ではなく回避のため速度が掻き乱された。
「赤い獅子! 貴様を倒す!」
徹底的にアルベルト個人にあった設計ではあるが大重量装備を複数身につけているのに踏み込みの速度は凄まじい。
威力とついては言及するまでもない。
強靱さと鋭さを兼ね備えた漆黒の刃の先端が赤い皮膚と筋肉を裂いても止まらず臓器を破って背骨に食い込みようやく止まる。
悲鳴は断末魔めいて悲痛で、しかし頑丈な体は気絶も即死も許してくれない。
「何度でも繰り返してやる!」
刃を捻る前に獅子が後退して刃が再び姿を見せる。
熱い血に覆われた刃から、むわりと死の気配が感じられた。
●
鎖が大気を貫き短剣が魔獣を撃ち抜く。
物理的な攻撃にも見えるかもしれないが実際は魔法攻撃だ。
即死できないことが不幸とすらいえる重傷で、倒れた山猫魔獣から血が流れて乾いた地面に染みこんでいく。
体格も筋肉も見事なサイラスが鎖を引っ張り短剣を回収。
鎖を振るって回転させるながら次の獲物を狙う。
「馬鹿じゃね?」
目線が一瞬桃髪に向く。
人間の血肉の味を覚えた魔獣を確実に殺し尽くす準備がないのに今回の作戦を決行したのは正直どうかと思う。
近くの獲物は仕留めたので、鉱山以外に向かった魔獣を狙うことにする。
移動に集中させたエーテルが炎の翼を思わせるものを形作り、周囲のエーテルも巻きこんで大柄なサイラスを30メートル前方へ運ぶ。
広大な戦場でたった30メートルでもあり、攻撃動作の邪魔をせずに30メートルの移動でもある。
「クリーパーと違って増えるのが良くもあり悪くもあり、と」
全長50センチほどの個体複数を連れ逃げる雌を狙う。
空から舞い降りるように顕現した紅玉竜はまだほぼ幻ではあるが敵に対する危険は特大だ。
爪に引っかかった子等が負傷して二度と目覚めない気絶状態になり、ぼろぼろになった母が怒り狂ってサイラスを睨み付ける。
止めは、5秒後に行われた。
●
各々の冒険者が果たしている役割はどれも重要だ。
誰の働きが一番素晴らしいかなど誰にも決められない。
しかし、誰が精神的に疲労するかは容易に分かる。
「兵士の皆さん、私の周りに。加護の神聖術を使います!」
艶やかな金の髪は美しく、髪を結んだ青紐は決意を感じさせ、身に纏う覇気はどちらが上からを本能的に叩き込む。
セニャに雇われているだけの元傭兵達が、不揃いながら士気高くロゼットの命令に従い整列する。
ここまで持ってくるのは本当に大変だった。
ウェイブ・オブ・インフィニティロアのエーテル波動が私兵達を通過しその体に力を残す。
大勢から黄金色の光を立ち上らせる光景非常に派手で、鉱山を目指していた魔獣を警戒させる。
「皆さんの負傷は私が治します! 焦らず1体ずつ倒していきましょう!」
声をかけて勇気づけはするが信頼できない。
彼等は非授恵者なのだ。
(賊に魔獣にクリーパー、長い間まともに統治されていなかった土地だけあって混沌としているわね……)
住民が踏みとどまっている場所はともかく、無人の場所は酷いものだ。
前方では山猫が凶悪な牙を剥きだして威嚇し、背後からは期待を通り越して尊崇に近い視線を感じる。
(ここに住人が戻ってくる日のためにも、治安の回復と復興の財源にするための鉱山の確保は必要でしょうね……。代官の部下の面倒も)
自身の身長より長い祭棍を掲げて光の矢を飛ばす。
鉱山の中に逃げ込もうとしても隊列が邪魔で突破どころか接近もしきれず、魔獣は何もできずに撃ち抜かれて次々倒れていった。
●
「逃げても無駄じゃ。苦痛が長引くだけじゃぞ」
ベルクはとても早くて速い。
スキルも有用な移動用をずらりと取りそろえ、その上無視できない程度の打撃力と回避手段まで持つ。
つまり軽装の賊にとっては悪夢そのものだ。
「山猫もやるもんだ」
ハヤトは苦笑半分舌打ち半分の表情で鋭角的に進路変更。
逃げた山猫魔獣後の始末は私兵や他の冒険者に任せて獅子の包囲へ参加する。
血まみれの獅子が横向きに体当たりを繰り出そうとするが、ハヤトは一撃離脱を徹底して獅子に攻撃の機会を与えない。
「固ぇなおい」
拳を開閉して適度に脱力させ、枝分かれした稲妻を思わせる連撃を次々に叩き込んだ。
刃や拳と比べれば魔法は少しだけよく効く。
「身体が残るか残らないか、それが問題なのだ」
デバフが切れ次第デバフをかけ直すための準備を整えた上で、ストレガは魔弾を打ち込み流血を強要する。
「がんばれー……!」
アルマの声援は元気一杯だ。
なお、2~3秒に1回の頻度で行使される術は凄い勢いでフリーダの負傷を癒やしている。
「これは効きますね」
全長で倍以上、体重では1桁上の敵を相手にフリーダは優位に戦っている。
(不壊があれば別の強敵も……。いえ、この獅子相手に丁度良いスキルを選んで成功しただけです。気を引き締めていきましょう)
フリーダは言動は独特でも戦い方は堅実だ。
相手が死にかけでも絶対に油断せず、的確に反撃を浴びせつつ相手が倒れるまで守り切った。
●
新たに火がおこされる。
「細い針金にペンチといった代表的な所から使っていこうか、さて? どこまで指が悲惨になれば、妾の問いに素直に答えてくれるのじゃろうな?」
ベルクの目からも表情からも嗜虐性が一切感じられないのが最も恐ろしい。
「なに、難しいことはない、知っている全ての隠し場所を教えてくれればいいのじゃよ? 仮にも裏に生きる者が、全ての財を一ヶ所に隠すというリスク管理が出来ていない訳がなかろう?」
「まって、待ちなさい! ここよその土地だからっ、融通利かせられないからっ」
ほとんど涙目の代官がベルクを引きずっていく。
だがそれは捕縛された賊の安全を意味しない。
引き渡される予定のシュライバー家が、宝石鉱山を荒らした賊に情けをかけるかどうかこの場にいる誰にも分からない。
ストレガは全滅した山猫の肉の始末と毛皮の回収を手早く済ませ、紅獅子の元へ向かう。
「死体が残っているのだ」
「また取り合いか」
サイラスも紅獅子の前にいる。
利用目的は異なるが欲しいものは同じだ。
無言の目配せでどちらが何を得るか交渉している。
「セニャ、無理をしないで少し休むんだ。ここしばらく少しも休んでないだろう? 君の体調が心配だ」
「今無理をしないでいつ無理をすると……」
聞き慣れた男女の声が聞こえる。
サイラスは代官には触れない。馬に蹴られる趣味は無いし素材に興味を持つ者は少ないほど美味しいからだ。
「獅子はそこまでポンポン出るもんでもないし。いやポンポン出るのなんてオークとかくらいだが」
「全くなのだ」
両者の間に情はなく駆け引きのみ。
誘き寄せられずに戦えば強敵になれていたはずのクリーパーが、瞬く間に切り分けられていった。
「そこまでだよー。戦闘後はセニャさんもさすがに疲れが隠せない感じになってるし、せめて報告に帰る道中くらいは休んでおいたほういいと思うよー?」
アルマはセニャに声をかけると小さな体全体を使ってセニャに抱きつきうんしょと投げる。
黒パカさんが牽いてきた荷馬車は毛布で簡易の寝台になっていて、多少痛くはあるがある程度柔らかくセニャを受け止めた。
「お節介かもしれないけど、だいぶお疲れのように見えるわ。急いては事を仕損じる、とも言うし無理のしすぎには気をつけて」
ロゼットはこれで終わらせたいが関わった以上やるしかないこともある。
「鉱山を守っていた兵士さんに、被害は出ていないわ。診断も問題なし」
関わったのは短い時間でも与えた影響は大きい。
ロゼットはできる限り短くまとめて報告をしていた。
「それにしても……何時ぞやのパーティーで見た限り中々難しいとは思いますが、そろそろ手足として使える駒を増やした方が良いと思いますよ? 啓示によれば『ブラック企業に務める社畜かな?』との事ですし」
「言葉は分からないのに意図はなんとなく分かるのが怖いわ」
フリーダの忠告に、兵士から見えない場所で寝転んだセニャが「そうしているつもりではあるのよ」と言い訳する。
「当座の復興資金の足しにはなりそうかな?」
ベルクが戻ってくる。
疲れた顔の私兵達が大小様々な略奪品や宝石の原石を運び、ベルク自身は体格の良い黒馬に乗って彼等を監督している。黒馬の眼光と古傷はとても迫力があり、ベルクの凄さが理解できない私兵も大人しくしていた。
「よその家のことは分からないけど、私の婚約者の領地よりはなんとかなりそうだと思うわ」
住民がいて収入源の1つがあるのは大きい。
「彼等は更正すると思うか?」
「私からは何も言えないわね」
婚約者の言葉に、セニャは微かに表情を歪めた。
「死体埋めは黒パカさんとやっておくねー」
アルマは高度な建築技術と黒アルパカを持っているので問題なく行える。
「鉱山は……入りたいけどねー……」
「そうね。私も立場が許せば見学したかったわ」
すぐに引き渡すことになるのでできないことも多い。
アルマとセニャは同時に息を吐いて、それぞれの仕事を再開した。
シュライバーの復興は、まだまだこれからである。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年10月06日 00時15分31秒 公開
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー とりあえず班わけせなあかんかねぇ? 獅子に全部回すと魔獣が餌狙いで入り口に行くし。 それか光縛封とか?物理しかない時点で時間経過以外ではまあ難易度的にもどうにかなるんでない?その代わりさっさと片付けないと班わけしないとあかんのでまあ班わけしといた方がいいと思うが。 後は出来れば賊の対処もかね?安全の確保だし逃げられるとそこに影響が出る
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回俺は、赤い獅子に向かおうと思っているぜ。 セニャは、疲労が酷い状態みたいだし、後方に下がってもらうように頼んでみるぜ。
ヒーラーのロゼットよ。よろしくね。 初期配置で班分けして、廃村では赤い獅子、 鉱山で山猫、賊も討つなら廃村周辺ぐらいで 分かれておいた方が戦いやすいかな。 とりあえず、鉱山入り口で山猫の迎撃に手を挙げておくわ。 ヒーラーのアルマとは、配置は分けた方が良いかしら。 >敵 ・赤い獅子:廃村でセニャと対峙中 ・残酷な山猫:廃村から鉱山の兵士を標的中 ・賊:廃村から生き残りが逃げ出す途中
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 どれの相手をしてもいいのだが、人数の足りないところの対応に行こうと思うので今は保留としておくか。
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 どの敵も物理一辺倒ですから戦線維持自体はそこまで苦戦はしないかと思われます。 ただ、赤獅子の方は抵抗値が高いという事ですのでシーザーロアが通らない可能性を考慮すると、 カバリング等で凌ぐ方が確実かもしれませんね。 こちらはとりあえず赤獅子狙いで行こうかと思いますが、 人数が偏る様であれば他の所を担当したいと思います。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 獅子の動きはグラビティで封じ込めできるのだ。オブジェクト召喚は抵抗値によらないので有用なのだ。 私は獅子の方に行こうかと思うのだ。
シーフのセニャよ。よろしくね。
No.8
人数8人、獅子3人 なら山猫に行こうか。
>行動予定 検討中だけど、鉱山を守る兵士には損害を出さない方が 良さそうだから彼らと、同行する皆の回復支援が優先かな。 回復と強化に専念するか、援護まで入れるか。 >初期配置、第1希望 廃村(獅子):アルベルト、フリーダ、ストレガ 鉱山(山猫):ロゼット、サイラス 村周辺(賊): 保留:ベルク
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 相談や配置まとめどうもありがとー それじゃあ獅子側対応のほうにまわらせてもらうね >初期配置、第1希望 廃村(獅子):アルベルト、フリーダ、ストレガ、アルマ 鉱山(山猫):ロゼット、サイラス 村周辺(賊): 保留:ベルク
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よよしくな!! 今んとこの配分だと俺は山猫に回るかな。 >初期配置、第1希望 廃村(獅子):アルベルト、フリーダ、ストレガ、アルマ 鉱山(山猫):ロゼット、サイラス、ハヤト 村周辺(賊): 保留:ベルク
ベルクの希望も残ってるけど、希望は廃村と鉱山に集まったわね。 で、廃村から逃げる途中の賊への追撃はゼロと。 >皆 廃村から逃げ出そうとしている賊に、追い討ちはしない? 「宝石鉱山とその周辺の安全を確保すること」が成功条件だから、 賊を放置してしまうと、ちょっとマイナス点…かも? 賊の追撃に移動しても良いけど、鉱山の兵士はそのままだと 損害を出しそうだから、フォローはした方が良いかなって。 明日夜まで待って賊の追撃役が居ないなら、私が行こうかな? とりあえず、今のまま鉱山防衛か、賊の追撃かで準備しておくわ。
では我は山賊追撃に回ろう。 とりあえずは殲滅して回るとするか。 >初期配置、第1希望 廃村(獅子):アルベルト、フリーダ、ストレガ、アルマ 鉱山(山猫):ロゼット、サイラス、ハヤト 村周辺(賊):ベルク
No.14
とりあえず廃村開始のつもりでいた 廃村から時間経過で鉱山らしいからダメージでヘイト稼ぎつつ鉱山へさっさと誘導兼魔獣によるNPCへのダメージ確率ケア、ついでに賊にちょっと被害出せればと 多分これその辺対応無いと厳しくならんかね?と思って
廃村から開始して山猫を攻撃はありだと思うわ。 ただ山猫の移動が4あるから、私だと付いていけるだけで 攻撃できないから、私は鉱山で兵士と迎撃準備しておくわ。 インフィニティロアで兵士を強化して、 兵士と山猫を迎撃する準備をしておくから。
んじゃ、俺は廃村スタートで山猫共を狩りながら鉱山の方に逃げ出す山猫を追撃してくって方向で動くな!