【学祭】鶏肉伯爵家の野望
馬車猪
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シナリオID:2484
オープニング
「時代は王党派よっ」
「貴族派は時代後れだぜ!」
若い学園生達が上機嫌に騒いでいる。
王党派へのコネなど持っていないし誰が貴族派か分かっていない。
彼等は気分で言っている。
「おいしーっ」
「うめー!」
食べているのは分厚い鶏肉のソテーにたっぷりのパンと卵スープに少しのサラダ。
偏りがあるが安くて量がある、貧乏学園生には有り難いメニューだ。
「おねーさん勘定お願いっ」
「はーい」
学園生の地元のノリで呼んでも従業員は愛想良く対応してくれる。
貧乏人でも非ヒューマンでも学園生は学園生。
将来社会の上層へ行くはずの人間に鶏肉の味と産地の名前を覚えさせるため、態度も言動も徹底的に教育されていた。
「あっ」
学園生が財布の中身を見て固まる。
従業員は察した上で態度を変えず、同行者にも他の客にも気付かれないよう近づき小声で話しかける
「バイトでしたらいつでも募集中です。前借りも大丈夫ですよ」
「それでお願いしますっ」
何故か支払いをせずにバックヤードへ向かった同級生に不思議そうな目を向ける学園生。
疑問を口にしようとして、店内に張られたポスターに気をとられる。
「料理大会?」
開催されるとは聞いていたが日付が違う気がする。
必ず鶏肉を使うことという条件が変と言えば変だ。
「はい。出場者も観客も無料で参加可能です。食材をたっぷり用意してお待ちしています」
従業員は、通常の料理コンテストと勘違いさせるような説明を意図して行っていた。
●
「僕もせんきょにりっこーほしたい! ねーさまのおっきな像を建てるの!」
桃髪オッドアイの幼児が元気に宣言する。
伯爵家の一粒種であり、40も歳が離れた父から徹底的に甘やかされてる割には普通だ。
「若、編入試験に合格して学園生にならないと立候補の資格はありませんぞ」
「寝言は寝ている間に言って下さい。とこっちの人が言っていました」
「あ、あたし、言ってませんっ」
傅役からも部下からも総ツッコミである。
前者は心を鬼にしているから。後者は採用した人間がこういう人間ばかり採用したからだ。
ふみぃ、泣いた6歳児がじんわり涙を浮かべる。
けれど涙はすぐに引っ込んで、懲りずに新しい計画を口にする。
「料理大会するの! 鶏さんの肉をいっぱい使ってリーラントのことをよく知ってもらうの!」
爺は厳しい表情を崩さず目元を緩め、しかし学園の卒業生である部下は難しい表情になる。
「む、無理、です」
口調も態度もおどおどしているのに傲慢なほどの確信がある。
「料理コンテストの方が、名声稼ぎに向いてます。著名な料理人はコンテストを優先して大会には誰も出てくれない、かもしれないです」
かもしれないです、は表現を柔らかくするための言葉でしかない。
ふみぃ、と泣き声が聞こえたのは一瞬だけ。
6歳児とは思えない真剣さで静かに頷く様は、さすが次期伯爵と言いたくなる態度に見えた。
「若?」
爺が動揺する。
6歳児の叔母を知る部下達も慌てだす。
大失敗をしたときにシリアス顔で誤魔化すと、誤魔化しているときの叔母と同じ顔になるのだ。
「まさか、既に大会の手配を済ませているのですか?」
「ひょっとして、もうキャンセルできない、とか?」
顔だけはシリアスな6歳児は視線を泳がせ、ぷるぷるした肌に汗を浮かばせていた。
●
「依頼の紹介に集まって頂きありがとうございます」
冒険者ギルド職員の声は喧噪にかき消されそうになっている。
ヤキトリの屋台やチキンサンドの屋台やチキンスープの屋台が空き地にずらりと並んで呼び込みの声が非常に大きい。
肉とタレが焼ける匂いも強烈で、呼び込みの他はろくに宣伝もしていないのに運動部所属の学園生がどんどん集まって来ている。
「今回の依頼は料理大会のサポートです」
選挙公約の料理コンテストではない。
ある食堂、正確にはその後援者が宣伝のため開催しようとしている鶏肉限定料理大会だ。
「まず、参加者が不十分です」
王都から料理人も集まってはいるが一流どころはおそらく不参加。
学園内の腕自慢も似たようなものだ。
「逆に客は多くなりそうです」
学園生には貧乏人もいる。
貴族出身でも実家が貧乏だったり家族と不仲だったり、後援者の力が足りず食費を切り詰めていたり、そもそも一切後ろ盾を持たない学園生だっている。
つまりタダ飯狙いの観客だけは多い。
「皆さんにお願いしたいのは……」
料理人への大会の宣伝。
鶏肉を除く食材の調達。
キャンプ場の調理場程度の設備しかない厨房の改善。
芝生の客席はハーフビーストには好評だが偉いひとには向いていないので要改善だ。
「料理人としての参加も歓迎らしいです。しかしこれにも問題があります」
優勝賞品は主催者の後援だ。
現時点では任官等が許可されない冒険者にとって全く意味がない。
主催者が経営する店で優勝料理のメニューが(優勝者が希望すればだが)採用されるくらいの意味しか無いのだ。
「色々事情はありますがイベントを盛り上がれば少々のことは問題視されません」
肉が焼ける匂いと人の気配は徐々に濃くなっている。
楽しんで来て下さいと頭を下げる職員の周囲に、タダ飯狙いの猫まで集まって来ていた。
「貴族派は時代後れだぜ!」
若い学園生達が上機嫌に騒いでいる。
王党派へのコネなど持っていないし誰が貴族派か分かっていない。
彼等は気分で言っている。
「おいしーっ」
「うめー!」
食べているのは分厚い鶏肉のソテーにたっぷりのパンと卵スープに少しのサラダ。
偏りがあるが安くて量がある、貧乏学園生には有り難いメニューだ。
「おねーさん勘定お願いっ」
「はーい」
学園生の地元のノリで呼んでも従業員は愛想良く対応してくれる。
貧乏人でも非ヒューマンでも学園生は学園生。
将来社会の上層へ行くはずの人間に鶏肉の味と産地の名前を覚えさせるため、態度も言動も徹底的に教育されていた。
「あっ」
学園生が財布の中身を見て固まる。
従業員は察した上で態度を変えず、同行者にも他の客にも気付かれないよう近づき小声で話しかける
「バイトでしたらいつでも募集中です。前借りも大丈夫ですよ」
「それでお願いしますっ」
何故か支払いをせずにバックヤードへ向かった同級生に不思議そうな目を向ける学園生。
疑問を口にしようとして、店内に張られたポスターに気をとられる。
「料理大会?」
開催されるとは聞いていたが日付が違う気がする。
必ず鶏肉を使うことという条件が変と言えば変だ。
「はい。出場者も観客も無料で参加可能です。食材をたっぷり用意してお待ちしています」
従業員は、通常の料理コンテストと勘違いさせるような説明を意図して行っていた。
●
「僕もせんきょにりっこーほしたい! ねーさまのおっきな像を建てるの!」
桃髪オッドアイの幼児が元気に宣言する。
伯爵家の一粒種であり、40も歳が離れた父から徹底的に甘やかされてる割には普通だ。
「若、編入試験に合格して学園生にならないと立候補の資格はありませんぞ」
「寝言は寝ている間に言って下さい。とこっちの人が言っていました」
「あ、あたし、言ってませんっ」
傅役からも部下からも総ツッコミである。
前者は心を鬼にしているから。後者は採用した人間がこういう人間ばかり採用したからだ。
ふみぃ、泣いた6歳児がじんわり涙を浮かべる。
けれど涙はすぐに引っ込んで、懲りずに新しい計画を口にする。
「料理大会するの! 鶏さんの肉をいっぱい使ってリーラントのことをよく知ってもらうの!」
爺は厳しい表情を崩さず目元を緩め、しかし学園の卒業生である部下は難しい表情になる。
「む、無理、です」
口調も態度もおどおどしているのに傲慢なほどの確信がある。
「料理コンテストの方が、名声稼ぎに向いてます。著名な料理人はコンテストを優先して大会には誰も出てくれない、かもしれないです」
かもしれないです、は表現を柔らかくするための言葉でしかない。
ふみぃ、と泣き声が聞こえたのは一瞬だけ。
6歳児とは思えない真剣さで静かに頷く様は、さすが次期伯爵と言いたくなる態度に見えた。
「若?」
爺が動揺する。
6歳児の叔母を知る部下達も慌てだす。
大失敗をしたときにシリアス顔で誤魔化すと、誤魔化しているときの叔母と同じ顔になるのだ。
「まさか、既に大会の手配を済ませているのですか?」
「ひょっとして、もうキャンセルできない、とか?」
顔だけはシリアスな6歳児は視線を泳がせ、ぷるぷるした肌に汗を浮かばせていた。
●
「依頼の紹介に集まって頂きありがとうございます」
冒険者ギルド職員の声は喧噪にかき消されそうになっている。
ヤキトリの屋台やチキンサンドの屋台やチキンスープの屋台が空き地にずらりと並んで呼び込みの声が非常に大きい。
肉とタレが焼ける匂いも強烈で、呼び込みの他はろくに宣伝もしていないのに運動部所属の学園生がどんどん集まって来ている。
「今回の依頼は料理大会のサポートです」
選挙公約の料理コンテストではない。
ある食堂、正確にはその後援者が宣伝のため開催しようとしている鶏肉限定料理大会だ。
「まず、参加者が不十分です」
王都から料理人も集まってはいるが一流どころはおそらく不参加。
学園内の腕自慢も似たようなものだ。
「逆に客は多くなりそうです」
学園生には貧乏人もいる。
貴族出身でも実家が貧乏だったり家族と不仲だったり、後援者の力が足りず食費を切り詰めていたり、そもそも一切後ろ盾を持たない学園生だっている。
つまりタダ飯狙いの観客だけは多い。
「皆さんにお願いしたいのは……」
料理人への大会の宣伝。
鶏肉を除く食材の調達。
キャンプ場の調理場程度の設備しかない厨房の改善。
芝生の客席はハーフビーストには好評だが偉いひとには向いていないので要改善だ。
「料理人としての参加も歓迎らしいです。しかしこれにも問題があります」
優勝賞品は主催者の後援だ。
現時点では任官等が許可されない冒険者にとって全く意味がない。
主催者が経営する店で優勝料理のメニューが(優勝者が希望すればだが)採用されるくらいの意味しか無いのだ。
「色々事情はありますがイベントを盛り上がれば少々のことは問題視されません」
肉が焼ける匂いと人の気配は徐々に濃くなっている。
楽しんで来て下さいと頭を下げる職員の周囲に、タダ飯狙いの猫まで集まって来ていた。
解説
●目的
鶏肉限定料理大会を盛り上げること
司会・解説・料理人・食べる人・その他なんでもOKです
●場所
学園にある公園風の場所です
もとは猫や小型動物の憩いの場の1つでしたが、憩いの場はそのままに芝生の領域を大拡張してトイレや野外厨房(だいたいキャンプ場)も設置されました
●準備期間
冒険者が学園に到着してから3日間です。4日目が大会になります
既に気の早い屋台が会場に入り込んで知名度アップも狙った金稼ぎをしています
●食材
肉と卵は新鮮で良質なものが無料で豊富に提供されます
それ以外の食材は無料で提供はされますが質は良くて並程度です
冒険者が調達する場合は、常識的な金額であれば主催者が全額負担します
●冒険者が関与しない場合の出場者
・王都の二流以下の料理人達
野心も技術もありますが飛び抜けた存在はいません
一部は既に会場入りして屋台で商売しています
・リーラント伯爵領の料理人
領内では一番優れていますが王都の二流未満です
・鶏肉食堂の料理人
若く技術も発展途上ですが学園内の食の流行には敏感です
●審査員
・主催者(1票)
代理としてジョセフが出席します。
チキンライスとオムレツとチキンハンバーグが大好きです
・ギルド職員(1票)
酒が好きです
・猫(全部で1票)
野菜は基本的に苦手です
・観客(全部で3票)
学園生達です。運動部は量重視。貴族や富豪出身は質重視。それ以外は不明です
●他
・鶏肉食堂
リーラント伯爵家が肉と卵と人材を提供している食堂
学園のすみっこにあり、チキンサンドなどの屋台も展開中です
・ジョセフ
リーラント伯爵家の次期当主
現時点では活発で良い子。堕落の誘惑が父親を始め周囲に大量にあるので、色々な人に心配されている6歳児
容姿はセニャ・リーラントを10歳若くした感じです
・リーラント伯爵家
冒険者が領内の亜人を殲滅した後、大規模な開拓を行い麦の増産が進行中です
以前からあった養鶏業も盛んになり輸出先を探しています
マスターより
鶏肉パーティです!
リプレイ
●
「せっかくなので盛り上がるのをお手伝いしようかと思いましたが……」
困り顔でも遠目で見ただけの男女の目を離さないのがリディリディ・トゥラ・イェレミースというエルフだ。
なお、彼女を冷静に見ることのできる人間であれば、すごい勢いでよく噛んだ上で消費される焼き鳥やチキンサンドや創作チキン軽食の量に気付けたかもしれない。
「大会まであと3日しかないということですので、今から著名な方を呼ぶのは難しいでしょう」
口元のソースをハンカチで拭く所作も美しい。
6歳児は、自身の計画に改めて駄目出しされてふみゅんと鳴いた。
「私は無論、料理を食べる者として出場します」
もぐもぐと食べているのに口の中はもちろん歯も見せないのは長年の修練の結果かもしれないし生活習慣の結果かもしれない。
「元気そうでよかったよー……」
アルマ・ヴァレンタインは6歳児のころころ変わる表情を見てほっとする。
途中で冒険者に救出されたとはいえ、心に深い傷を負ってもおかしくない事件だった。
ヴィノニスの手を握って離さない程度で済むなら十分以上の結果だろう。
「でもー……」
アルマは料理もできるし最近は酒にも凝っている。
パンや麦や大麦を見せてもらってテンションがダウンする。
保管はきちんとできているのに味は平凡だ。
(あたしが仕込めば……でも時間足りないよー……)
リーラント産のエールを一口飲んで眉を寄せていた。
アルマの反応を見て察した6歳児が涙目になる。
「リーラントの事をよく知ってもらいたい、というその志はとても立派ね」
師は厳しい。
「知名度には悪名も含まれるの。あなたのお友達も、あなたのお姉様も、すみからすみまで全て大好きとは思えないでしょう」
ジョセフは反論しようとしてうまく言葉がまとまらないことに気付く。
「リーラントの特産品について、正しく、良い評判として覚えてもらう為には準備が必要よ」
アルマだけでなく大勢の専門家がああでもないこうでもないと議論しながらまとまった意見を具体的な手段に変えていっている。
権力の中身が具体的にどう動いているか知るための教材ともいえる光景だ。
「権力を正しく使うことは施政者にとって何よりも大事なことよ。まずは、周りの大人に相談してね?」
「うん! とーさまに相談する!」
伯爵への相談は止めとけ、と多くの人間の内心が一致していた。
「料理コンテスト前にリーラントの宣伝をしたいと堂々と言えばいいのだ。学園では鶏肉屋で存在感を示せばいいのだ。つまり持ちネタなのだ」
ストレガ・L・リベルガストラは、鶏糞臭というのがリーラントに対する主要な罵倒であることを知った上で正面から指摘する。
「うん。持ちねた? はよく分からないけどそのつもり……ううん?」
部下や爺の渋い反応に気付き小首を傾げる様は、本人は真剣なのに愛嬌があった。
●
リーラントは伯爵の中でも豊かな家で、会場設営に集められた中に授恵者まで混じっている。
「貴族サマもくるのに芝生のままの青空食堂はさすがにアレかも」
「折角キャンプ場みたいなのだからキャンプ場にするといいのだ」
アルマやストレガの指摘はもっともであると同時に容赦がない。
「イスなりテーブルなりセットしてオープンカフェとかビアガーデンてきな感じにできるようにー……だめ?」
アルマの言葉に6歳児が紫と金の目を輝かせる。
が、王国中央部にあるとはいえ基本が田舎のリーラントには学園基準でうまくこなせる人材がいない。
「少し休んで見ておくのだ」
ストレガは人足を一時止めて自身で動く。
「審査員や偉い人の席は芝を多少刈り取って机と椅子を置くのだ」
芝生の上に直接置く。
近くにいた猫がにゃぁと鳴き、猫用の鶏肉料理に気付いて喜んで退去した。
「天幕などで屋根を作ると『あれは偉い人の席なんだ』とよくわかるので良いのだ」
指さしと手振りでも説明する。
私兵経験のあるベテランほど納得し、ストレガの言うとおりの指示を人足へ出し始めた。
(後は野菜と調味料なのだ)
王都の商家から取り寄せたリストを高速で読み込む。
(……高いのだ)
タダ飯狙いの学園生と獣が大勢集まるのが確実なので量が必要。つまり少し質を上げただけで必要な資金は大きく増える。
「経費で落ちない分は私の方で負担したいのだ」
タダ酒狙いで居着いてリディリディと酒をとりあっていた冒険者ギルド職員が、真面目な顔のまま駄目ですとジェスチャーした。
少額なら大丈夫なこともあるが、これほどの額になると色々難しいのだ。
「むう。輸送費が上乗せされていて厳しいのだ」
ディズル大湿地帯の野菜や香草、シャルガネ居住区の醤油や料理酒も欲しい。
扱っている商家と担当者の連絡先を覚えるほど、リストを注視するストレガであった。
●
料理大会当日である。
普段より人も獣も3倍は集まっているのに、微かな囁きも聞こえないほど静まりかえっている。
「今日はリーラントのとりにくを楽しんでいって欲しいの!」
好奇心できらきらしている瞳で周囲を見渡してから、6歳児はカズマ クレセントブラッドに向かって大きくうなずいた。
「さぁリーラント家主催鶏肉限定料理大会、始まりました!」
カズマの宣言で全てが動き出す。
早速火に肉を入れた者もいれば調合を始めた者もいる。
「今料理人冒険者が一斉に包丁を手に取りました。激しい『料理』バトルの開始です!」
カズマはまず冒険者に観衆の意識を誘導する。
派手で目立つ。特にアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトは。
「俺の記憶が確かならば、最高の鶏肉と卵はリーラント伯爵領から産出されるはずである」
漆黒のマントを翻す。
髪と口元を覆うマスクが子供向け物語の登場人物用のような存在感を演出している。
「今日はここを【美食倶楽部】にする! 俺が至高の鶏肉料理と卵料理を作ってやるぜ」
用意された食材は、運動部部員がメイン顧客の食堂基準でも多い。
竈の数も多く、既に熱せられた鉄板からは脂のにおいが、湯が沸いた鍋からは蒸気がわきあがっている。
「メニューはチキンライス! オムレツ! チキンハンバーグ!」
ジョセフが早速1票を投じようとしてヴィノニスに注意されている。
「順々に食べるのもいいが1度に試してみてくれ。酒の飲むならこっちのチキンガーリック炒めもいいぞ」
個々でも手間がかかるが、料理の腕と授恵者の体力でなんとかする。
さすがに配膳まですると余裕がなくなるのでバイトも使っていた。
「学園の行事ですから出ないかもしれないと覚悟していましたが」
エルフは辛口で度数の高い酒を顔色はそのままに味わって、肉と卵の甘さが染み出た料理を賞味する。
「お酒に投票を……駄目ですか?」
本人曰くあんまり強くないらしいが、冗談のつもりで用意されたジョッキが既に2つめだ。この調子なら樽で用意した酒も足りないかもしれない。
「じゃあもうちょっと食べてから考えます」
食べる速度は衰えず、隣で食べていた運動部員も顔を引きつらせていった。
(水の動線を確保して正解だったのだ)
料理人としても名が知られたストレガではあるが今回の担当は裏方……というより大会全体の指揮だ。
準備した物資を適切に配置し、人を動かし、大会を破綻させないことに力を注いでいる。
料理人として参加しないのは、領と食堂料理人に研鑽の機会を与えるためでもあった。
くつ、くつとクリームが適度に熱せられて料理へ昇華していく。
熟練の牧畜家でもあるアルマが自前の乳牛を持ち込み、熟練の技を振るって仕上げた一品だ。
「これが鶏肉のクリーム煮でー……」
別の鍋から麺を取り出し皿に載せてクリーム煮に似た者をかける。
「これが鶏肉入りクリームパスタだよー」
おお、と鶏肉に詳しいものほどその香りに惹きつけられる。
6歳児も当然そのうちの1人だ。
「飲み物はハチミツエール……は学園生さんには出せないかなー……」
体格は良くても10代前半の者も多いので仕方がない。年齢詐称してでも飲もうとする子供が多いのだ。
自分と某エルフでエールを楽しむアルマに6歳児の不思議そうな視線が向けられる。
「こーみえてもセニャさんと同い年のおねえさんだからね、えっへん」
ハーフリングのことをいまいち理解できていない6歳児が、完全に混乱していた。
6歳児が気付いたときにはヴィノニスの野外厨房にいた。
次期伯爵が見ることのある厨房とは違って料理人はヴィノニスしかいない。
「自分で料理をすることなんてないとは思うけど、商品の事を正しく知ることはとても大事よ」
丸鶏から各部位への食肉加工、下処理などどれだけの手間が掛かるかを簡単に肌感覚として覚えてもらうつもりで呼んだ。
領主に現場の技術は必要ない。
しかし現場を正しく認識するための知識がなければ領主の命令が的外れになる確率が激増する。
だからジョセフの周囲の人間も止めはしない。
「自分で料理をすることなんてないとは思うけど、商品の事を正しく知ることはとても大事よ」
「脂がぬるぬるするっ」
「床に落としては駄目」
ヴィノニスは押さえるべきはしっかりと押さえる。
教導というものへの理解と習熟も深く、良い師弟関係が成立している。
「今日はサラダチキンの密封保存に挑戦してみましょう。コストが高くなるからあの食堂では不人気になるだろうけど……。そうね、使い道を思いつくかしら」
料理が間に合わず負けてしまうかもしれないが、ヴィノニスは悩みもせず教育を優先した。
●
「さぁ、早くも順番に料理が出来上がってきました! さっそく皆さんに食べて貰いましょう!!」
カズマの解説はのりにのっている。
動きもカリスマも派手なアルベルトを最初に解説する。
「お子様昼食、あるいは大人様昼食と名付けるべきでしょうか。後続に胃のキャパシティを残さないという意図も感じます。さすがベテラン冒険者!」
まずは上げる。
事実であり彼を讃える声は非常に大きく、しかし数は予想外に多くない。
「味もパフォーマンスも酒飲み対策も極めて高水準! しかし猫……失礼、お猫様や文化系学園生への訴求が弱いのが不利かもしれません!」
カズマの言葉に演出はあっても嘘はない。
アルベルトの料理を全種類実際に食べて、自分自身に対する魅力だけでなく他の種類の人間や生き物に対する魅力も把握している。
まあ、小首を傾げた猫や色々食べ過ぎて苦しむ文化系学園生という判断材料もあるが。
「そしてこれは……っ」
小型のスプーンで掬って舌の上にのせる。
無難な食レポをするつもりが、芳醇で鮮烈な香りと旨みが舌を通して脳から全身へ広がり演技でなく驚愕する。
「んー、うめぇ!」
カズマの本心からの感想を聞き、アルマが小さな拳を握りしめる。
「どれも味がしっかりついてて噛みごたえも絶妙だな! 古くなったり焼きすぎたりじゃなく、鮮度と技だこれ!」
アルマの料理に向かう大きな人の波ができる。
その直後。
ふみぃ! と可愛らしいのに断末魔じみた鳴き声と猫がダッシュで逃げる音も発生。
そして逃げ遅れた学生達が鼻を押さえてうずくまる光景が出現する。
「やめろー! 捨てんでくれー!! 料理だけは食ってくれ!!!」
連行される原因の台詞である。
ク・サーヤ・クッセーワは魂をかけて要求はするが反抗はしない。
「何作ったんだよ。毒の気配がしないのが逆に凄いぞ」
カズマはテンションを高くしているのが半ば演技でなくなってしまうほど衝撃を受けている。
サーヤのメニューはもも肉のソテーというオーソドックスな物だ。
肝は鶏肉のソース。
それが超絶臭いのになんとも表現し辛い魅力もある
「ほんとにほんとだぞ。だから臭いからってだけですてるなぁぁぁ」
学園に生息するマッドの協力を得て極北の低温を目指した環境で鶏を腹の中に仕込んだ大型動物の……とサーヤの説明を聞いているだけで頭が痛くなる。
「内部の鳥が程よく発酵してし」
サーヤを遮りカズマは失格を宣言した。
「予想外ですが良い味ですよ。翌日に仕事があるなら食べられませんが」
酒飲みなギルド職員は好評価しているが失格に抗議はしない。いろんな意味で刺激が強すぎる。
「そーじゃろーそーじゃろー」
つまみ出されたはずのサーヤが一般客として舞い戻る。
フローラルないい香りで職員を除いた人間が逃げ出しているので、程度は違っても職員も同類なのかもしれない。
「良い食べっぷりに飲みっぷりじゃのう! ほれーほーれいっきいっきいっき何をするきさまらー!」
職員とまとめて、連行されていった。
「審査員が2人消えましたがまあいいでしょう!」
カズマは豪腕を発揮して料理大会を混乱させない。
(安くて美味くて沢山食べられる需要と量より質の需要かー……。腕がなるな)
カイン・ステラの気合は十分だ。
においから逃げてきた猫とそれ以外へ、茹でたささ身を提供する。
猫は人間用の刺激の強いものに興味を示しているがカインはそれだけは許さない。
(人と同じのは食わせねぇ。票より猫の身体だ)
猫の側には不満はない。
肉は特に新鮮で、単純だからこそ腕が必要な料理を超味覚持ちのカインが担当しているのだ。
遠慮なく用意した大量のささ身を食べ尽くしてうとうとし始める。誰から見ても猫票がどこにいくか分かる。
(パスタスナックは食材の質の分不利かー。なら)
鶏肉のクリームパイとオムライスにぎりを出して観客の注目を集め下準備。
本命はチキンコンソメスープで炊いた飯を使用した|ライスキッシュだ。
生地に包む際はミンチにした鶏肉、卵液、チーズを入れ、野外に設置された大型竈を使い大火力で焼き上げる。
香りが観客の食欲を刺激する。焼き上がった一枚を取り出して切り分けると零れた肉の汁と香りが観客だけでなく猫も魅了し覚醒させる。
「食堂向け、アレンジのしやすさや持ち帰り可能、時間経過しても食べやすい料理で考えました」
カインの言葉にたくさんの観客の喜びの声が返ってくる。
カズマが票の集計結果を読み上げるまでもなく、勝者が誰か明らかだった。
●
「猫票の影響が大きかったな」
司会進行という大仕事を終え、カズマは片付けを食堂関係者に任せて休憩する。
「食い過ぎた……」
まだ平然と飲み食いしているエルフやそろそろペースが落ちている運動部連中相手に意地を張ってしまった。
多才で実力もあるカズマではあるが、食べられる量は普通なのだ。
「もー今日は何も食いたくねーぜ……」
2食くらい抜こうかと考えている間も豊かな香りが食欲を刺激し、熟練授恵者らしい高性能な胃腸が力強く消化を進める。
「1食抜くだけでいーか……」
お土産に包んで貰って立ち上がる。
元気に挨拶してくる6歳児と何度も礼を言ってくる食堂関係者を躱すのは、なかなか大変だった。
「せっかくなので盛り上がるのをお手伝いしようかと思いましたが……」
困り顔でも遠目で見ただけの男女の目を離さないのがリディリディ・トゥラ・イェレミースというエルフだ。
なお、彼女を冷静に見ることのできる人間であれば、すごい勢いでよく噛んだ上で消費される焼き鳥やチキンサンドや創作チキン軽食の量に気付けたかもしれない。
「大会まであと3日しかないということですので、今から著名な方を呼ぶのは難しいでしょう」
口元のソースをハンカチで拭く所作も美しい。
6歳児は、自身の計画に改めて駄目出しされてふみゅんと鳴いた。
「私は無論、料理を食べる者として出場します」
もぐもぐと食べているのに口の中はもちろん歯も見せないのは長年の修練の結果かもしれないし生活習慣の結果かもしれない。
「元気そうでよかったよー……」
アルマ・ヴァレンタインは6歳児のころころ変わる表情を見てほっとする。
途中で冒険者に救出されたとはいえ、心に深い傷を負ってもおかしくない事件だった。
ヴィノニスの手を握って離さない程度で済むなら十分以上の結果だろう。
「でもー……」
アルマは料理もできるし最近は酒にも凝っている。
パンや麦や大麦を見せてもらってテンションがダウンする。
保管はきちんとできているのに味は平凡だ。
(あたしが仕込めば……でも時間足りないよー……)
リーラント産のエールを一口飲んで眉を寄せていた。
アルマの反応を見て察した6歳児が涙目になる。
「リーラントの事をよく知ってもらいたい、というその志はとても立派ね」
師は厳しい。
「知名度には悪名も含まれるの。あなたのお友達も、あなたのお姉様も、すみからすみまで全て大好きとは思えないでしょう」
ジョセフは反論しようとしてうまく言葉がまとまらないことに気付く。
「リーラントの特産品について、正しく、良い評判として覚えてもらう為には準備が必要よ」
アルマだけでなく大勢の専門家がああでもないこうでもないと議論しながらまとまった意見を具体的な手段に変えていっている。
権力の中身が具体的にどう動いているか知るための教材ともいえる光景だ。
「権力を正しく使うことは施政者にとって何よりも大事なことよ。まずは、周りの大人に相談してね?」
「うん! とーさまに相談する!」
伯爵への相談は止めとけ、と多くの人間の内心が一致していた。
「料理コンテスト前にリーラントの宣伝をしたいと堂々と言えばいいのだ。学園では鶏肉屋で存在感を示せばいいのだ。つまり持ちネタなのだ」
ストレガ・L・リベルガストラは、鶏糞臭というのがリーラントに対する主要な罵倒であることを知った上で正面から指摘する。
「うん。持ちねた? はよく分からないけどそのつもり……ううん?」
部下や爺の渋い反応に気付き小首を傾げる様は、本人は真剣なのに愛嬌があった。
●
リーラントは伯爵の中でも豊かな家で、会場設営に集められた中に授恵者まで混じっている。
「貴族サマもくるのに芝生のままの青空食堂はさすがにアレかも」
「折角キャンプ場みたいなのだからキャンプ場にするといいのだ」
アルマやストレガの指摘はもっともであると同時に容赦がない。
「イスなりテーブルなりセットしてオープンカフェとかビアガーデンてきな感じにできるようにー……だめ?」
アルマの言葉に6歳児が紫と金の目を輝かせる。
が、王国中央部にあるとはいえ基本が田舎のリーラントには学園基準でうまくこなせる人材がいない。
「少し休んで見ておくのだ」
ストレガは人足を一時止めて自身で動く。
「審査員や偉い人の席は芝を多少刈り取って机と椅子を置くのだ」
芝生の上に直接置く。
近くにいた猫がにゃぁと鳴き、猫用の鶏肉料理に気付いて喜んで退去した。
「天幕などで屋根を作ると『あれは偉い人の席なんだ』とよくわかるので良いのだ」
指さしと手振りでも説明する。
私兵経験のあるベテランほど納得し、ストレガの言うとおりの指示を人足へ出し始めた。
(後は野菜と調味料なのだ)
王都の商家から取り寄せたリストを高速で読み込む。
(……高いのだ)
タダ飯狙いの学園生と獣が大勢集まるのが確実なので量が必要。つまり少し質を上げただけで必要な資金は大きく増える。
「経費で落ちない分は私の方で負担したいのだ」
タダ酒狙いで居着いてリディリディと酒をとりあっていた冒険者ギルド職員が、真面目な顔のまま駄目ですとジェスチャーした。
少額なら大丈夫なこともあるが、これほどの額になると色々難しいのだ。
「むう。輸送費が上乗せされていて厳しいのだ」
ディズル大湿地帯の野菜や香草、シャルガネ居住区の醤油や料理酒も欲しい。
扱っている商家と担当者の連絡先を覚えるほど、リストを注視するストレガであった。
●
料理大会当日である。
普段より人も獣も3倍は集まっているのに、微かな囁きも聞こえないほど静まりかえっている。
「今日はリーラントのとりにくを楽しんでいって欲しいの!」
好奇心できらきらしている瞳で周囲を見渡してから、6歳児はカズマ クレセントブラッドに向かって大きくうなずいた。
「さぁリーラント家主催鶏肉限定料理大会、始まりました!」
カズマの宣言で全てが動き出す。
早速火に肉を入れた者もいれば調合を始めた者もいる。
「今料理人冒険者が一斉に包丁を手に取りました。激しい『料理』バトルの開始です!」
カズマはまず冒険者に観衆の意識を誘導する。
派手で目立つ。特にアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトは。
「俺の記憶が確かならば、最高の鶏肉と卵はリーラント伯爵領から産出されるはずである」
漆黒のマントを翻す。
髪と口元を覆うマスクが子供向け物語の登場人物用のような存在感を演出している。
「今日はここを【美食倶楽部】にする! 俺が至高の鶏肉料理と卵料理を作ってやるぜ」
用意された食材は、運動部部員がメイン顧客の食堂基準でも多い。
竈の数も多く、既に熱せられた鉄板からは脂のにおいが、湯が沸いた鍋からは蒸気がわきあがっている。
「メニューはチキンライス! オムレツ! チキンハンバーグ!」
ジョセフが早速1票を投じようとしてヴィノニスに注意されている。
「順々に食べるのもいいが1度に試してみてくれ。酒の飲むならこっちのチキンガーリック炒めもいいぞ」
個々でも手間がかかるが、料理の腕と授恵者の体力でなんとかする。
さすがに配膳まですると余裕がなくなるのでバイトも使っていた。
「学園の行事ですから出ないかもしれないと覚悟していましたが」
エルフは辛口で度数の高い酒を顔色はそのままに味わって、肉と卵の甘さが染み出た料理を賞味する。
「お酒に投票を……駄目ですか?」
本人曰くあんまり強くないらしいが、冗談のつもりで用意されたジョッキが既に2つめだ。この調子なら樽で用意した酒も足りないかもしれない。
「じゃあもうちょっと食べてから考えます」
食べる速度は衰えず、隣で食べていた運動部員も顔を引きつらせていった。
(水の動線を確保して正解だったのだ)
料理人としても名が知られたストレガではあるが今回の担当は裏方……というより大会全体の指揮だ。
準備した物資を適切に配置し、人を動かし、大会を破綻させないことに力を注いでいる。
料理人として参加しないのは、領と食堂料理人に研鑽の機会を与えるためでもあった。
くつ、くつとクリームが適度に熱せられて料理へ昇華していく。
熟練の牧畜家でもあるアルマが自前の乳牛を持ち込み、熟練の技を振るって仕上げた一品だ。
「これが鶏肉のクリーム煮でー……」
別の鍋から麺を取り出し皿に載せてクリーム煮に似た者をかける。
「これが鶏肉入りクリームパスタだよー」
おお、と鶏肉に詳しいものほどその香りに惹きつけられる。
6歳児も当然そのうちの1人だ。
「飲み物はハチミツエール……は学園生さんには出せないかなー……」
体格は良くても10代前半の者も多いので仕方がない。年齢詐称してでも飲もうとする子供が多いのだ。
自分と某エルフでエールを楽しむアルマに6歳児の不思議そうな視線が向けられる。
「こーみえてもセニャさんと同い年のおねえさんだからね、えっへん」
ハーフリングのことをいまいち理解できていない6歳児が、完全に混乱していた。
6歳児が気付いたときにはヴィノニスの野外厨房にいた。
次期伯爵が見ることのある厨房とは違って料理人はヴィノニスしかいない。
「自分で料理をすることなんてないとは思うけど、商品の事を正しく知ることはとても大事よ」
丸鶏から各部位への食肉加工、下処理などどれだけの手間が掛かるかを簡単に肌感覚として覚えてもらうつもりで呼んだ。
領主に現場の技術は必要ない。
しかし現場を正しく認識するための知識がなければ領主の命令が的外れになる確率が激増する。
だからジョセフの周囲の人間も止めはしない。
「自分で料理をすることなんてないとは思うけど、商品の事を正しく知ることはとても大事よ」
「脂がぬるぬるするっ」
「床に落としては駄目」
ヴィノニスは押さえるべきはしっかりと押さえる。
教導というものへの理解と習熟も深く、良い師弟関係が成立している。
「今日はサラダチキンの密封保存に挑戦してみましょう。コストが高くなるからあの食堂では不人気になるだろうけど……。そうね、使い道を思いつくかしら」
料理が間に合わず負けてしまうかもしれないが、ヴィノニスは悩みもせず教育を優先した。
●
「さぁ、早くも順番に料理が出来上がってきました! さっそく皆さんに食べて貰いましょう!!」
カズマの解説はのりにのっている。
動きもカリスマも派手なアルベルトを最初に解説する。
「お子様昼食、あるいは大人様昼食と名付けるべきでしょうか。後続に胃のキャパシティを残さないという意図も感じます。さすがベテラン冒険者!」
まずは上げる。
事実であり彼を讃える声は非常に大きく、しかし数は予想外に多くない。
「味もパフォーマンスも酒飲み対策も極めて高水準! しかし猫……失礼、お猫様や文化系学園生への訴求が弱いのが不利かもしれません!」
カズマの言葉に演出はあっても嘘はない。
アルベルトの料理を全種類実際に食べて、自分自身に対する魅力だけでなく他の種類の人間や生き物に対する魅力も把握している。
まあ、小首を傾げた猫や色々食べ過ぎて苦しむ文化系学園生という判断材料もあるが。
「そしてこれは……っ」
小型のスプーンで掬って舌の上にのせる。
無難な食レポをするつもりが、芳醇で鮮烈な香りと旨みが舌を通して脳から全身へ広がり演技でなく驚愕する。
「んー、うめぇ!」
カズマの本心からの感想を聞き、アルマが小さな拳を握りしめる。
「どれも味がしっかりついてて噛みごたえも絶妙だな! 古くなったり焼きすぎたりじゃなく、鮮度と技だこれ!」
アルマの料理に向かう大きな人の波ができる。
その直後。
ふみぃ! と可愛らしいのに断末魔じみた鳴き声と猫がダッシュで逃げる音も発生。
そして逃げ遅れた学生達が鼻を押さえてうずくまる光景が出現する。
「やめろー! 捨てんでくれー!! 料理だけは食ってくれ!!!」
連行される原因の台詞である。
ク・サーヤ・クッセーワは魂をかけて要求はするが反抗はしない。
「何作ったんだよ。毒の気配がしないのが逆に凄いぞ」
カズマはテンションを高くしているのが半ば演技でなくなってしまうほど衝撃を受けている。
サーヤのメニューはもも肉のソテーというオーソドックスな物だ。
肝は鶏肉のソース。
それが超絶臭いのになんとも表現し辛い魅力もある
「ほんとにほんとだぞ。だから臭いからってだけですてるなぁぁぁ」
学園に生息するマッドの協力を得て極北の低温を目指した環境で鶏を腹の中に仕込んだ大型動物の……とサーヤの説明を聞いているだけで頭が痛くなる。
「内部の鳥が程よく発酵してし」
サーヤを遮りカズマは失格を宣言した。
「予想外ですが良い味ですよ。翌日に仕事があるなら食べられませんが」
酒飲みなギルド職員は好評価しているが失格に抗議はしない。いろんな意味で刺激が強すぎる。
「そーじゃろーそーじゃろー」
つまみ出されたはずのサーヤが一般客として舞い戻る。
フローラルないい香りで職員を除いた人間が逃げ出しているので、程度は違っても職員も同類なのかもしれない。
「良い食べっぷりに飲みっぷりじゃのう! ほれーほーれいっきいっきいっき何をするきさまらー!」
職員とまとめて、連行されていった。
「審査員が2人消えましたがまあいいでしょう!」
カズマは豪腕を発揮して料理大会を混乱させない。
(安くて美味くて沢山食べられる需要と量より質の需要かー……。腕がなるな)
カイン・ステラの気合は十分だ。
においから逃げてきた猫とそれ以外へ、茹でたささ身を提供する。
猫は人間用の刺激の強いものに興味を示しているがカインはそれだけは許さない。
(人と同じのは食わせねぇ。票より猫の身体だ)
猫の側には不満はない。
肉は特に新鮮で、単純だからこそ腕が必要な料理を超味覚持ちのカインが担当しているのだ。
遠慮なく用意した大量のささ身を食べ尽くしてうとうとし始める。誰から見ても猫票がどこにいくか分かる。
(パスタスナックは食材の質の分不利かー。なら)
鶏肉のクリームパイとオムライスにぎりを出して観客の注目を集め下準備。
本命はチキンコンソメスープで炊いた飯を使用した|ライスキッシュだ。
生地に包む際はミンチにした鶏肉、卵液、チーズを入れ、野外に設置された大型竈を使い大火力で焼き上げる。
香りが観客の食欲を刺激する。焼き上がった一枚を取り出して切り分けると零れた肉の汁と香りが観客だけでなく猫も魅了し覚醒させる。
「食堂向け、アレンジのしやすさや持ち帰り可能、時間経過しても食べやすい料理で考えました」
カインの言葉にたくさんの観客の喜びの声が返ってくる。
カズマが票の集計結果を読み上げるまでもなく、勝者が誰か明らかだった。
●
「猫票の影響が大きかったな」
司会進行という大仕事を終え、カズマは片付けを食堂関係者に任せて休憩する。
「食い過ぎた……」
まだ平然と飲み食いしているエルフやそろそろペースが落ちている運動部連中相手に意地を張ってしまった。
多才で実力もあるカズマではあるが、食べられる量は普通なのだ。
「もー今日は何も食いたくねーぜ……」
2食くらい抜こうかと考えている間も豊かな香りが食欲を刺激し、熟練授恵者らしい高性能な胃腸が力強く消化を進める。
「1食抜くだけでいーか……」
お土産に包んで貰って立ち上がる。
元気に挨拶してくる6歳児と何度も礼を言ってくる食堂関係者を躱すのは、なかなか大変だった。
マスターコメント
お疲れ様でした。
ショートシナリオ易しい 報酬:多い8 / 4〜8人
2022年09月28日 00時30分57秒 公開
成功
参加者
相談掲示板
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 料理するか食材調達するか悩みどこなのだ。
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回は、料理人として参戦するぜ。 ・・・っと、よく見たら、健啖家として高名な方も参加か・・・ よし、決めた。 その方をギブアップさせる位の量を作ろうじゃないか。 俺の店で料理人として協力してくれる人を募集するぜ。
カイン・ステラ。 よろしくな。 料理する側で参加。 口に合えばいいんだが。
アルマだよ、どーぞよろしくねー お料理とー…あとなにかしてみようか考えちゅうだよ
遅くなった、カズマだぜ 俺は食べるぜ!
No.6
もぐもぐ。 リディリディです。よろもぐ、もぐもぐがいします・・・。
いつも通りの臭い飯で勝負じゃ