【蒼炎アフター】魔女のお引越し
おおくまねこ
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シナリオID:2401
オープニング
●
「みんな、朗報よ! 独身のエルフ美女から引っ越しの手伝いの依頼が来てるわ! 危険もないし、これは美味しい依頼よ!」
冒険者ギルドの受付嬢は一枚の依頼書を手にし、朗らかに叫んだ。
「引っ越しをしたいんだが、ちょっと家が散らかっていて、一人ではとても片付けられそうにない。あと単純に荷物が多い。引っ越し作業を手伝ってほしい」
冒険者ギルドに舞い込んできた依頼は、そんなごく平凡な依頼だった。体力勝負ではあるが命の危険などは全くない、駆け出しの冒険者向けの依頼といってもいいだろう。ただし、依頼人は少し変わっていた。この依頼を出したのは、リーンエス王国北部の森の奥に住むエルフの女性だ(そしてエルフなので美人である)。名はラピスラズリ・ファーレンハイト。少し前までは、『蒼炎の魔女』と呼ばれ、百年前に無辜の村人を焼き殺した存在として、近隣の住民達から恐れられていた存在である。だが現在はその伝承は冤罪であったことが発覚し、彼女の名誉は回復されている。そして、実際に村を焼き滅ぼした恐るべきクリーパー『蒼炎の魔人』も、ラピスラズリと冒険者の手によって討ち滅ぼされている。危険はないという受付嬢の言葉に偽りはない。
「今回の依頼はとっても簡単よ。単なる引っ越しの手伝いだから。魔女の住んでる森のエーテル溜まりも魔人が討たれたことで解消されたらしいので、危険は全くないわ。せいぜい、猪や熊が出るかもしれない程度かしらね。その分報酬も安いけど……この依頼、いかがかしら? あ、ちなみにこれが依頼人の似顔絵よ。地元領主が描いたらしいわ」
冒険者ギルドの受付嬢は依頼人の似顔絵を見せびらかしながら、にっこり笑った。
「この依頼はおいしい依頼だ!」と強調している受付嬢だが、彼女が失念していたことが一つあった。
果たして、百年間一人暮らしをしていた人間の引っ越しが、普通の引っ越しと同じ物差しで測れるものか?
●
「よく来てくれたな。冒険者達。私が依頼人のラピスラズリだ。世話になる」
今から魔獣狩りでもするんですかというゴツイデザインの長杖を持ち、玄関で冒険者達を待っていたエルフの美女は、威厳たっぷりの様子で頷いた。そのエルフは受付嬢の言う通り、確かにグラマラスな美人さんであった。愛想はないけど。
冒険者達はこの時点で既に嫌な予感がしていた。なぜなら彼女の家のすぐ隣には、家具の残骸と思しき木片や、生ごみが詰まった袋などの、多種多様なゴミが山のように積み上げられていたからだ。これは本当に独り暮らしの女性が出したゴミの量なのか……。ちなみに分別とかは特にされていない。森に埋めていくにしても、かなりの重労働になるだろう。この先、一体どれほどの重労働が待ち受けているのか……。冒険者達は戦慄した。
「ああ、これか? とりあえず明らかにいらん物だけでも捨てておこうと思って外に出したんだ」
エルフはゴミの山を見て戦慄している冒険者達の視線に気づき、そっと目を逸らした。
「自分でも片付けを始めていたんだが、思いの外しんどくてな……まだ持ち出すものと捨てていくものの分別も一割程度しか進んでいないんだ。ちょっと大変かもしれないが、冒険者の体力ならなんとかなると思う。私は見ての通りかよわいエルフ・キャスターなので……どうかよろしく頼む」
あ、これ、一日では終わらないやつだ。しかも依頼人の家がグチャグチャみたいだから寝る時はたぶん外でキャンプだな。冒険者達は追加料金をギルドに請求しようと、固く心に誓ったのだった。
「みんな、朗報よ! 独身のエルフ美女から引っ越しの手伝いの依頼が来てるわ! 危険もないし、これは美味しい依頼よ!」
冒険者ギルドの受付嬢は一枚の依頼書を手にし、朗らかに叫んだ。
「引っ越しをしたいんだが、ちょっと家が散らかっていて、一人ではとても片付けられそうにない。あと単純に荷物が多い。引っ越し作業を手伝ってほしい」
冒険者ギルドに舞い込んできた依頼は、そんなごく平凡な依頼だった。体力勝負ではあるが命の危険などは全くない、駆け出しの冒険者向けの依頼といってもいいだろう。ただし、依頼人は少し変わっていた。この依頼を出したのは、リーンエス王国北部の森の奥に住むエルフの女性だ(そしてエルフなので美人である)。名はラピスラズリ・ファーレンハイト。少し前までは、『蒼炎の魔女』と呼ばれ、百年前に無辜の村人を焼き殺した存在として、近隣の住民達から恐れられていた存在である。だが現在はその伝承は冤罪であったことが発覚し、彼女の名誉は回復されている。そして、実際に村を焼き滅ぼした恐るべきクリーパー『蒼炎の魔人』も、ラピスラズリと冒険者の手によって討ち滅ぼされている。危険はないという受付嬢の言葉に偽りはない。
「今回の依頼はとっても簡単よ。単なる引っ越しの手伝いだから。魔女の住んでる森のエーテル溜まりも魔人が討たれたことで解消されたらしいので、危険は全くないわ。せいぜい、猪や熊が出るかもしれない程度かしらね。その分報酬も安いけど……この依頼、いかがかしら? あ、ちなみにこれが依頼人の似顔絵よ。地元領主が描いたらしいわ」
冒険者ギルドの受付嬢は依頼人の似顔絵を見せびらかしながら、にっこり笑った。
「この依頼はおいしい依頼だ!」と強調している受付嬢だが、彼女が失念していたことが一つあった。
果たして、百年間一人暮らしをしていた人間の引っ越しが、普通の引っ越しと同じ物差しで測れるものか?
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「よく来てくれたな。冒険者達。私が依頼人のラピスラズリだ。世話になる」
今から魔獣狩りでもするんですかというゴツイデザインの長杖を持ち、玄関で冒険者達を待っていたエルフの美女は、威厳たっぷりの様子で頷いた。そのエルフは受付嬢の言う通り、確かにグラマラスな美人さんであった。愛想はないけど。
冒険者達はこの時点で既に嫌な予感がしていた。なぜなら彼女の家のすぐ隣には、家具の残骸と思しき木片や、生ごみが詰まった袋などの、多種多様なゴミが山のように積み上げられていたからだ。これは本当に独り暮らしの女性が出したゴミの量なのか……。ちなみに分別とかは特にされていない。森に埋めていくにしても、かなりの重労働になるだろう。この先、一体どれほどの重労働が待ち受けているのか……。冒険者達は戦慄した。
「ああ、これか? とりあえず明らかにいらん物だけでも捨てておこうと思って外に出したんだ」
エルフはゴミの山を見て戦慄している冒険者達の視線に気づき、そっと目を逸らした。
「自分でも片付けを始めていたんだが、思いの外しんどくてな……まだ持ち出すものと捨てていくものの分別も一割程度しか進んでいないんだ。ちょっと大変かもしれないが、冒険者の体力ならなんとかなると思う。私は見ての通りかよわいエルフ・キャスターなので……どうかよろしく頼む」
あ、これ、一日では終わらないやつだ。しかも依頼人の家がグチャグチャみたいだから寝る時はたぶん外でキャンプだな。冒険者達は追加料金をギルドに請求しようと、固く心に誓ったのだった。
解説
目標:魔女の引っ越しの荷物を整理し、スノウクレスト村への引っ越し作業を手伝う。出たゴミはきちんと処分する。
依頼人:『片付けられないエルフ』ラピスラズリ
舞台:リーンエス王国北部、スノウクレスト村の近くの森の奥にある木造一軒家。庭には野菜畑はあるが、村は遠く、食事処などは期待できない。
備考:百年間独り暮らしをしていたエルフなので、ちょっと尋常ではない量のゴミと荷物がある。まともにやればゴミと荷物の分別に2、3日はかかる。なお、家はすごく散らかっており、足の踏み場もない状態である。
また、引っ越しの件に関して領主や村には話は通っているが、魔女の家がゴミ屋敷状態であることは誰も知らない。
●登場NPC
ラピスラズリ
今回の依頼人。【蒼炎】シリーズで頑なに誰も自宅に立ち寄らせまいとしていたが、あまりの引っ越し作業のめんどくささについに根を上げ、こっそりと冒険者ギルドに引っ越しの手伝いの依頼を出した。
百年間森に引き籠もっていたため、昨今の世界情勢には疎い。引っ越しが終わったらしばらく旅に出ようかと考えているが、行く先は特に決めていない模様。お勧め観光地をプレゼンすると喜ぶ。
ケット・シー
魔女のペットのヤマネコ。魔女以外には基本懐かないが、「動物交感」のスキルがあれば仲良くなれる可能性がある。おやつにはうるさい。
※猫なのでチョコレートは食べられません。
マスターより
こんにちは。おおくまねこです。今回は個人連作【蒼炎】シリーズの後日談となります。ミステリアスな魔女さんは一体どこへ行ってしまったの……?
依頼の内容は引っ越しの手伝いですが、作業量が多く、また食事の調達にも苦労する立地のためキャンプの準備なども必要になってくるでしょう。なんでだ。さあ、コミュ障で愛想のない魔女とキャッキャウフフしながら(?)、楽しく引っ越しのお手伝いをしましょう! ご興味がありましたらよろしくお願いいたします。
リプレイ
●
「まぁ……働き甲斐がありますわね……」
マスクとエプロンで完全武装したサシャ・テーリングは廃墟を見てにっこり微笑んだ。
「ラピスラズリだっけ、魔人戦でも助かったぜ、サンキューな」
「そういうお前は……会うのはこれで四度目だな。礼を言うのはこちらだ。お前達のお陰で私はようやく仲間達の仇を討てた」
ナキルとラピスラズリは握手を交わした。ラピスラズリの隣では、彼女の飼い猫(ヤマネコなので大きい)のケット・シーが少し離れた所から冒険者達を静かに見つめている。
「今日はよろしく。しかし、引っ越し荷物の整理と聞いていたが……どう控えめに考えても発掘……割り切らないとキリがないな」
ロイ・アウレアは足の踏み場もないほどぐちゃぐちゃになったラピスラズリの家を見て呟いた。
「お、お久しぶりです。ラピスラズリ様。お掃除はあまり経験はございませんが出来る限りお手伝いをさせて頂きます」
(こ、こんな所にラピスラズリ様は百年間もお住まいに……!? い、いえ、引っ越しの準備をする過程でここまで散らかったのでしょう)
伯爵家令嬢レティシア・レインフィールはあまりの惨状に内心動揺しつつ、ラピスラズリへと微笑んだ
「……よく、此処まで溜め込んだものですね。まあこれも知り合った縁です、最後まで付き合いましょう」
ハア、と溜息を吐くリコリス・アデュラリア。
「そんなに酷いか? 一度家ごと引っ越しをしているから、この家はまだ築四十年ぐらいなのだが……」
ラピスラズリは冒険者達の態度に不満そうだ。
「ラピスラズリ……お前さんもしかして家に招くのを頑なに拒んでたのはこれか? ごみ屋敷を見せたくなかったからなのか? ……多少片付けられない女は可愛げがあるが、このごみ屋敷は可愛げがないな」
シグルド・オルセンは真顔でトドメを刺した。
「おい、ゴミ屋敷とは失礼にもほどがあるぞ!」
憤慨するラピスラズリ。だが冒険者達は「これはシグルドが正しい」「ちょっと非文明的過ぎるんじゃないか」「荷馬車四台もあるのにどう見ても詰め込めそうにないってのはどういうことなんだ」「荷物が多すぎると馬がかわいそうなので、厳選していただけると助かります」と口々に辛辣なコメントを送った。
「くっ……私が引き籠もっている内にずいぶんとシャバは世知辛くなったようだな……」
ラピスラズリは地面に突っ伏した。
●
「なあラピス、村の連中や領主に知らせていいか? 頼めば手伝ってくれると思うんだけど。特にアンタに助けてもらったチビ達は、直接魔女にお礼言わないと気がすまないだろうし! なー?」
ナキルがそう提案すると、ラピスは首を横に振った。
「駄目だ、断る。何の為にこっそり依頼を出したと思っているんだ。私の神秘的なイメージが崩れるだろう。蒼炎の魔女の名は捨てても、私はエルフなんだぞ」
「えー。なんだよ、神秘的なイメージって。エルフってのは笑いながらその辺を走り回ったり、雑草とか鍋に入れたがる生き物だろ?」
ナキルは唇を尖らせた。ナキルは自分のよく知るエルフを思い浮かべてみたが、ちょっと神秘的なイメージとは結び付きそうにない。言った後でやべ、と思い、リコリスの方をチラっと見たが彼女はいつもの無表情のままだった。
「なんだそれは。蛮族か何かか? ともかく、エルフは森に住む知的でクールな存在なのだ、お前達なら分かるだろう」
ラピスラズリはそう言うと、同意を求めるように同胞に視線を送った。どうやらラピスラズリは割と種族のイメージとか気にする方らしい。
(百年間悪党だと思われても平気だった癖に、妙な所にこだわるんだなあ)
ナキルは思ったが、今度は口には出さなかった。
「神秘的かどうかはさておき、私の住まいはここまで荒れ果ててはいませんね。種族のイメージにこだわるならば、まずは自身の身の回りから整えるべきでしょう」
「エルフが神秘的かどうかは知らんが、俺の部屋もお前を招ける程度には整理整頓してあるぞ」
真顔で返すリコリスとシグルド。残念ながら味方はいないようだ。
「なーなー。良いのか? 今度は村を影で救った恩人ってずぅぅっと伝承されちまうぜ?」
ナキルに詰め寄られ、ラピスラズリは言葉に詰まる。
「わ、わかった。じゃあ村の子供だけには知らせていい。だが領主には黙っておけ。あいつは一緒に住めとうるさいのだ。先祖と同じでどうも私に気があるらしい」
「なるほど、分かった。ナキル、知らせるのは村の子供だけにしようか」
結局シグルドの取りなしもあり、魔女の引っ越しはスノウクレスト村の子供であるチェリオとミレディだけに知らされることとなった。
「あ、見た事ある! 魔女だ! あの時はありがとう!」
「美人だ! あなたが魔女だったのね! 村を守ってくれてありがとう!」
「い、いや、私は……そ、そうだ。大きな猫がいるんだぞ。ほら、子供は好きだろう、猫」
「ギニャー!」
ラピスは子供達に詰め寄られ、居心地悪そうにしていた。
●
「まずは要るものと要らないもの、そして保留のものの3つに大別しましょうか。大き目の箱を用意していたのですが……想像以上に分量が多いので、とりあえず要るものは荷馬車に、残りは地面に円を描いて置いていきましょう」
リコリスの言葉に、シグルドは頷く。
「ごみも燃えるものとそうでないものを分けておいた方が良いだろ。使えるものは軽く修繕して、本人が要らなければ売っても構わないだろう。路銀が多少は増えるだろうし」
「私は衣類(特に下着)など、同性以外が触れると問題ありそうなものを仕分けいたしますね」
レティシアは衣類の仕分け担当を希望した。レティシアは魔窟と化したラピスの家に飛び込み、衣服を発掘し、てきぱきと衣類用の荷馬車に放り込んでいく。ラピスラズリはあまり意識していなかったが、貴族の淑女に汚部屋の掃除なんか手伝わせた依頼人はなかなかいないだろう。またレティシアの実家には報告できない秘密の冒険が増えてしまった。
「私も衣類や日用品を担当しますね。一纏めにしてマジカルポケットに詰めましょう。クローゼットにぎゅうぎゅうに詰めれば三棹分ぐらいイケるんじゃないかと思います」
続いて衣類・日用品の分類にサシャも名乗りを上げた。サシャは一度クローゼットを空にしてから、折りたたんだ衣服をロープで縛ってコンパクトにし、圧縮してクローゼットに詰め込んでいった。
「ちなみに衣類はご自身で作られたのですか? 百年前のものにしては新しいですけど」
サシャがラピスラズリに尋ねると、ラピスラズリは目を逸らし。
「……スノウクレスト村でこっそり調達をして、仕立て直していた。干されていた洗濯物を貰い、代わりに猪の肉などを置いていったりしていたんだ……いわば、物々交換だな」
「なるほど、物々交換ですか」
ラピスラズリの言葉にサシャは頷いた。
(それは泥棒なのでは……?)
レティシアは疑問に思ったが、百年ものの古着が登場しないことにほっとしたのだった。
●
「これは……獣の毛皮かな?」
「あ、たぶん冬用の毛布だ。とりあえず保留で」
「OK」
ロイは双波を駆使し、ゴミの山の中から使いそうなものを掘り出していく。ほとんどが燃えるゴミっぽい感じだったので、まさしく発掘作業という感じだ。
「さて、この辺りのゴミの分類方法はどうなっているのでしょう」
「だいたいのものは燃やしてるぞ。燃えた灰は森に埋めてる。燃えないもの……鉄とかは専用のゴミ置き場が村の外れにあるんだ」
リコリスが尋ねると、ナキルに連れてこられた村の少年、チェリオが答えた。
「燃えないもの、というのは多分無いと思うぞ。ほとんどのものはこの森で調達したものだからな。生ごみなどは自分で燃やして埋めていた」
「ならば、要らないものは野焼きにしてしまいましょうか。馬で周りに木がない場所に運びましょう」
リコリスは頷き、連れて来た黒汗馬を撫でた。
「こないだ魔人が出た遺跡のあたりならちょうど良さそうだな。戦いの時に木も燃えてたし、ほぼ更地だろ。。……なあラピスラズリ、そういえば魔人と戦ってた時の熱を防ぐバリアはもう使えないのか?」
「あれは、触媒ありきの魔法だ。触媒はあの戦いで全部使い潰してしまった」
「そうか」
シグルドが問うと、ラピスラズリは首を横に振った。
「よし、あそこならそう遠くはないな。俺が穴を掘っておくよ。初日はゴミの始末だけで終わりそうだし」
ロイはそう告げ、穴を掘るために遺跡へと向かっていった。
「ロイ兄ちゃん、俺も手伝うよ」
「そうか、助かる」
ナキルが申し出ると、ロイはニコリと笑った。
●
「よっこらせっと」
ナキルは大量の燃えるゴミを抱え上げると、袋に入れ、マジカルポケットにぶちこんだ。その後はロイと掘った大穴へと猛ダッシュしていく。ぽいと穴にゴミを放り込んだ後は再びラピスの家まで走り、また燃えるゴミを受け取って穴へと走る。それの繰り返しだ。
仕分け中、書籍の山を発見したサシャは一冊一冊本のタイトルを確認し始めた。
「本の中にドゥジンシとかお宝は無いかしら……」
「ドゥジンとはなんだ?」
ラピスはきょとんとした表情でサシャへと尋ねる。
「ドゥジンシとは、芸術の神ドゥジンがごにょごにょ……」
「ふむ……よく分からんが、本の類ならそっちにいっぱいあるぞ。仲間と旅をしていた時にあちこちで貰った」
「気に入ったものがあったら頂いてよろしいでしょうか?」
「構わんぞ、全部読み終わっているからな」
……。
「まあ、これは……参考資料になりそうですわね」
サシャは山積みの本の中から『王国貴族・純愛伝説』という名の本を発見し、ほくほくと持参したカバンに放り込んだ。
「書籍類は売ればお金になりそうですね。古い書物ばかりですし、貴重な魔導書の類もたくさんあります。全部持ち出しましょう」
「こちらの書物は王国の歴史書ですね。学園の図書館に置きたいほどの内容です」
「そうか、まあ百年前のものだからな。もう飽きるほど読んだものだし、売れたら嬉しいよ」
リコリスとレティシアは本の山を抱え、荷馬車へと運び出していた。本を読んでいる間はサボっているように見えるが、内容を検分するという名目でちゃんと仕事をしているという高度な仕事術である。
(掃除後はこの家ごと売ってしまっても良いのでは? とも思いましたが、設備は山小屋レベル……この有様だと掃除代の方が高くつくでしょうね……)
リコリスは片付けても片付けても綺麗にならない部屋の惨状を見て、遠い目をするのだった。
初日は「要らないもの」……ようするにゴミを運び出し、焼きに行く作業だけで精一杯だった。肉体的疲労と気疲れでヘロヘロになった冒険者達は、ラピスに家から少し離れた場所で野宿をすることにした。ラピスラズリを含む女性陣はレティシアの用意した六人用のゲルに宿泊し、ナキル、ロイ、シグルドの男性三名はロイの荷馬車で雑魚寝スタイルだ。ちなみに村人のチェリオとミレディは村に帰ったが、明日また手伝いに来てくれるそうである。
●
冒険者達が来て三日目の夕方。ようやく荷物の整理が終わり、ラピスラズリは正式に村の空き家に引っ越しが完了した。もっともラピスラズリは村に荷物を置くだけで、すぐに旅に出てしまうのだが。
「お疲れ様です。お茶を用意してきましたわ。ケトルと食器は台所から発掘いたしました。よく洗いましたから使用には問題ないかと」
サシャは持参した初詰み茶をカップに入れ、全員に配った。
「みんな、お肉も焼けたぞ!」
ロイは家具の残骸で作った炭で迷宮産お肉セットを焼いていた。分量は成人男性10人分。ラピスラズリと子供達二人、ついでにラピスラズリのペットのケット・シーを入れても、全員に行きわたるに十分な量があった。
(最後に火種として役立ってくれたなぁ……)
ロイは哀愁が漂う表情で燃えカスになった家具を見つめていた。
全ての作業が終わり、スノウクレスト村から引き上げていく冒険者達をラピスと子供達が見送っていた。
「世話になったな。これで私もようやく身軽になれたよ。ありがとう」
「どういたしまして。ラピスラズリ様。お預かりしている書物の類は領主様を通じて学園の図書館に寄贈させていただきますね。百年前の貴重な文献ですから」
「ああ、構わない。あの坊ちゃんもパンクリアース学園の卒業生だと言っていたから、うまくやるだろう」
「その他の骨董品や書物も領主に任せれば適当な値段で捌いてくれるでしょう。路銀には十分な額になるかと」
「うむ。換金が終わったら私も旅に出るよ。帝国) と大森林( ) は物騒みたいだから、とりあえず王都に向かおうと思う」
「そうか。旅をするなら気を付けろよ。財布をすられたり、物の価値がわからずにぼられる可能性もあるからな」
シグルドがそう言うと、ラピスは頷いた。
「旅自体は慣れているんだ。この森に引き籠もる前は仲間と冒険者をしていたからな。当時はあのビッグオウム( ) もいなかったからな、徒歩で旅したものさ。と、百年前の旅事情ならお前も知っているはずだったな」
「ああ、俺も100年前ならもう傭兵になっていた頃だな。お前と違って授恵者に覚醒したのはごく最近だけど」
(そうか、ラピスは元々冒険者だったのか。まあ大森林から出たエルフはたいていそうだしな……)
「観光地は色々あるだろうが……リブラネスタ( ) に顔を出してくれれば良いとこ案内しよう」
シグルドはそう言い、自分が拠点にしている酒場の地図をラピスラズリに渡した。サシャはそんなシグルドの様子をニコニコと眺めている。
「そっか。グランスパーダに来るんだな。せっかくだし、学園も見てけよ。最近は憩いの森も出来たんだぜ」
「ドゥジンシもたくさんあるんですよ! ぜひ!」
「そうか。考えておくよ」
ラピスラズリがそう口にすると、ナキルとサシャはクスリと笑った。
「ラピスラズリ様には少し早いですけれどお引越しと旅立ちのお祝いにこれを」
レティシアはたおやかに微笑み、白地に青の日々草の刺繍をした手巾を差し出した。
「この地で長きの間、献身を続けられた貴女に多くの楽しい思い出が出来ますように。お祈りをしております」
「ありがとう、レティシア」
最後にラピスとレティシアは握手を交わし、冒険者達は荷馬車で引き揚げていった。
それから一週間が経ち、ラピスラズリの出発の日がやってきた。
「さて、行こうか、ケット・シー。はぐれるんじゃないぞ。森と違って、街道は危ないんだからな」
「ニャア」
晴れやかな顔をしたラピスラズリが優しくヤマネコの頭を撫でると、いい風が吹いた。
「まぁ……働き甲斐がありますわね……」
マスクとエプロンで完全武装したサシャ・テーリングは廃墟を見てにっこり微笑んだ。
「ラピスラズリだっけ、魔人戦でも助かったぜ、サンキューな」
「そういうお前は……会うのはこれで四度目だな。礼を言うのはこちらだ。お前達のお陰で私はようやく仲間達の仇を討てた」
ナキルとラピスラズリは握手を交わした。ラピスラズリの隣では、彼女の飼い猫(ヤマネコなので大きい)のケット・シーが少し離れた所から冒険者達を静かに見つめている。
「今日はよろしく。しかし、引っ越し荷物の整理と聞いていたが……どう控えめに考えても発掘……割り切らないとキリがないな」
ロイ・アウレアは足の踏み場もないほどぐちゃぐちゃになったラピスラズリの家を見て呟いた。
「お、お久しぶりです。ラピスラズリ様。お掃除はあまり経験はございませんが出来る限りお手伝いをさせて頂きます」
(こ、こんな所にラピスラズリ様は百年間もお住まいに……!? い、いえ、引っ越しの準備をする過程でここまで散らかったのでしょう)
伯爵家令嬢レティシア・レインフィールはあまりの惨状に内心動揺しつつ、ラピスラズリへと微笑んだ
「……よく、此処まで溜め込んだものですね。まあこれも知り合った縁です、最後まで付き合いましょう」
ハア、と溜息を吐くリコリス・アデュラリア。
「そんなに酷いか? 一度家ごと引っ越しをしているから、この家はまだ築四十年ぐらいなのだが……」
ラピスラズリは冒険者達の態度に不満そうだ。
「ラピスラズリ……お前さんもしかして家に招くのを頑なに拒んでたのはこれか? ごみ屋敷を見せたくなかったからなのか? ……多少片付けられない女は可愛げがあるが、このごみ屋敷は可愛げがないな」
シグルド・オルセンは真顔でトドメを刺した。
「おい、ゴミ屋敷とは失礼にもほどがあるぞ!」
憤慨するラピスラズリ。だが冒険者達は「これはシグルドが正しい」「ちょっと非文明的過ぎるんじゃないか」「荷馬車四台もあるのにどう見ても詰め込めそうにないってのはどういうことなんだ」「荷物が多すぎると馬がかわいそうなので、厳選していただけると助かります」と口々に辛辣なコメントを送った。
「くっ……私が引き籠もっている内にずいぶんとシャバは世知辛くなったようだな……」
ラピスラズリは地面に突っ伏した。
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「なあラピス、村の連中や領主に知らせていいか? 頼めば手伝ってくれると思うんだけど。特にアンタに助けてもらったチビ達は、直接魔女にお礼言わないと気がすまないだろうし! なー?」
ナキルがそう提案すると、ラピスは首を横に振った。
「駄目だ、断る。何の為にこっそり依頼を出したと思っているんだ。私の神秘的なイメージが崩れるだろう。蒼炎の魔女の名は捨てても、私はエルフなんだぞ」
「えー。なんだよ、神秘的なイメージって。エルフってのは笑いながらその辺を走り回ったり、雑草とか鍋に入れたがる生き物だろ?」
ナキルは唇を尖らせた。ナキルは自分のよく知るエルフを思い浮かべてみたが、ちょっと神秘的なイメージとは結び付きそうにない。言った後でやべ、と思い、リコリスの方をチラっと見たが彼女はいつもの無表情のままだった。
「なんだそれは。蛮族か何かか? ともかく、エルフは森に住む知的でクールな存在なのだ、お前達なら分かるだろう」
ラピスラズリはそう言うと、同意を求めるように同胞に視線を送った。どうやらラピスラズリは割と種族のイメージとか気にする方らしい。
(百年間悪党だと思われても平気だった癖に、妙な所にこだわるんだなあ)
ナキルは思ったが、今度は口には出さなかった。
「神秘的かどうかはさておき、私の住まいはここまで荒れ果ててはいませんね。種族のイメージにこだわるならば、まずは自身の身の回りから整えるべきでしょう」
「エルフが神秘的かどうかは知らんが、俺の部屋もお前を招ける程度には整理整頓してあるぞ」
真顔で返すリコリスとシグルド。残念ながら味方はいないようだ。
「なーなー。良いのか? 今度は村を影で救った恩人ってずぅぅっと伝承されちまうぜ?」
ナキルに詰め寄られ、ラピスラズリは言葉に詰まる。
「わ、わかった。じゃあ村の子供だけには知らせていい。だが領主には黙っておけ。あいつは一緒に住めとうるさいのだ。先祖と同じでどうも私に気があるらしい」
「なるほど、分かった。ナキル、知らせるのは村の子供だけにしようか」
結局シグルドの取りなしもあり、魔女の引っ越しはスノウクレスト村の子供であるチェリオとミレディだけに知らされることとなった。
「あ、見た事ある! 魔女だ! あの時はありがとう!」
「美人だ! あなたが魔女だったのね! 村を守ってくれてありがとう!」
「い、いや、私は……そ、そうだ。大きな猫がいるんだぞ。ほら、子供は好きだろう、猫」
「ギニャー!」
ラピスは子供達に詰め寄られ、居心地悪そうにしていた。
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「まずは要るものと要らないもの、そして保留のものの3つに大別しましょうか。大き目の箱を用意していたのですが……想像以上に分量が多いので、とりあえず要るものは荷馬車に、残りは地面に円を描いて置いていきましょう」
リコリスの言葉に、シグルドは頷く。
「ごみも燃えるものとそうでないものを分けておいた方が良いだろ。使えるものは軽く修繕して、本人が要らなければ売っても構わないだろう。路銀が多少は増えるだろうし」
「私は衣類(特に下着)など、同性以外が触れると問題ありそうなものを仕分けいたしますね」
レティシアは衣類の仕分け担当を希望した。レティシアは魔窟と化したラピスの家に飛び込み、衣服を発掘し、てきぱきと衣類用の荷馬車に放り込んでいく。ラピスラズリはあまり意識していなかったが、貴族の淑女に汚部屋の掃除なんか手伝わせた依頼人はなかなかいないだろう。またレティシアの実家には報告できない秘密の冒険が増えてしまった。
「私も衣類や日用品を担当しますね。一纏めにしてマジカルポケットに詰めましょう。クローゼットにぎゅうぎゅうに詰めれば三棹分ぐらいイケるんじゃないかと思います」
続いて衣類・日用品の分類にサシャも名乗りを上げた。サシャは一度クローゼットを空にしてから、折りたたんだ衣服をロープで縛ってコンパクトにし、圧縮してクローゼットに詰め込んでいった。
「ちなみに衣類はご自身で作られたのですか? 百年前のものにしては新しいですけど」
サシャがラピスラズリに尋ねると、ラピスラズリは目を逸らし。
「……スノウクレスト村でこっそり調達をして、仕立て直していた。干されていた洗濯物を貰い、代わりに猪の肉などを置いていったりしていたんだ……いわば、物々交換だな」
「なるほど、物々交換ですか」
ラピスラズリの言葉にサシャは頷いた。
(それは泥棒なのでは……?)
レティシアは疑問に思ったが、百年ものの古着が登場しないことにほっとしたのだった。
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「これは……獣の毛皮かな?」
「あ、たぶん冬用の毛布だ。とりあえず保留で」
「OK」
ロイは双波を駆使し、ゴミの山の中から使いそうなものを掘り出していく。ほとんどが燃えるゴミっぽい感じだったので、まさしく発掘作業という感じだ。
「さて、この辺りのゴミの分類方法はどうなっているのでしょう」
「だいたいのものは燃やしてるぞ。燃えた灰は森に埋めてる。燃えないもの……鉄とかは専用のゴミ置き場が村の外れにあるんだ」
リコリスが尋ねると、ナキルに連れてこられた村の少年、チェリオが答えた。
「燃えないもの、というのは多分無いと思うぞ。ほとんどのものはこの森で調達したものだからな。生ごみなどは自分で燃やして埋めていた」
「ならば、要らないものは野焼きにしてしまいましょうか。馬で周りに木がない場所に運びましょう」
リコリスは頷き、連れて来た黒汗馬を撫でた。
「こないだ魔人が出た遺跡のあたりならちょうど良さそうだな。戦いの時に木も燃えてたし、ほぼ更地だろ。。……なあラピスラズリ、そういえば魔人と戦ってた時の熱を防ぐバリアはもう使えないのか?」
「あれは、触媒ありきの魔法だ。触媒はあの戦いで全部使い潰してしまった」
「そうか」
シグルドが問うと、ラピスラズリは首を横に振った。
「よし、あそこならそう遠くはないな。俺が穴を掘っておくよ。初日はゴミの始末だけで終わりそうだし」
ロイはそう告げ、穴を掘るために遺跡へと向かっていった。
「ロイ兄ちゃん、俺も手伝うよ」
「そうか、助かる」
ナキルが申し出ると、ロイはニコリと笑った。
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「よっこらせっと」
ナキルは大量の燃えるゴミを抱え上げると、袋に入れ、マジカルポケットにぶちこんだ。その後はロイと掘った大穴へと猛ダッシュしていく。ぽいと穴にゴミを放り込んだ後は再びラピスの家まで走り、また燃えるゴミを受け取って穴へと走る。それの繰り返しだ。
仕分け中、書籍の山を発見したサシャは一冊一冊本のタイトルを確認し始めた。
「本の中にドゥジンシとかお宝は無いかしら……」
「ドゥジンとはなんだ?」
ラピスはきょとんとした表情でサシャへと尋ねる。
「ドゥジンシとは、芸術の神ドゥジンがごにょごにょ……」
「ふむ……よく分からんが、本の類ならそっちにいっぱいあるぞ。仲間と旅をしていた時にあちこちで貰った」
「気に入ったものがあったら頂いてよろしいでしょうか?」
「構わんぞ、全部読み終わっているからな」
……。
「まあ、これは……参考資料になりそうですわね」
サシャは山積みの本の中から『王国貴族・純愛伝説』という名の本を発見し、ほくほくと持参したカバンに放り込んだ。
「書籍類は売ればお金になりそうですね。古い書物ばかりですし、貴重な魔導書の類もたくさんあります。全部持ち出しましょう」
「こちらの書物は王国の歴史書ですね。学園の図書館に置きたいほどの内容です」
「そうか、まあ百年前のものだからな。もう飽きるほど読んだものだし、売れたら嬉しいよ」
リコリスとレティシアは本の山を抱え、荷馬車へと運び出していた。本を読んでいる間はサボっているように見えるが、内容を検分するという名目でちゃんと仕事をしているという高度な仕事術である。
(掃除後はこの家ごと売ってしまっても良いのでは? とも思いましたが、設備は山小屋レベル……この有様だと掃除代の方が高くつくでしょうね……)
リコリスは片付けても片付けても綺麗にならない部屋の惨状を見て、遠い目をするのだった。
初日は「要らないもの」……ようするにゴミを運び出し、焼きに行く作業だけで精一杯だった。肉体的疲労と気疲れでヘロヘロになった冒険者達は、ラピスに家から少し離れた場所で野宿をすることにした。ラピスラズリを含む女性陣はレティシアの用意した六人用のゲルに宿泊し、ナキル、ロイ、シグルドの男性三名はロイの荷馬車で雑魚寝スタイルだ。ちなみに村人のチェリオとミレディは村に帰ったが、明日また手伝いに来てくれるそうである。
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冒険者達が来て三日目の夕方。ようやく荷物の整理が終わり、ラピスラズリは正式に村の空き家に引っ越しが完了した。もっともラピスラズリは村に荷物を置くだけで、すぐに旅に出てしまうのだが。
「お疲れ様です。お茶を用意してきましたわ。ケトルと食器は台所から発掘いたしました。よく洗いましたから使用には問題ないかと」
サシャは持参した初詰み茶をカップに入れ、全員に配った。
「みんな、お肉も焼けたぞ!」
ロイは家具の残骸で作った炭で迷宮産お肉セットを焼いていた。分量は成人男性10人分。ラピスラズリと子供達二人、ついでにラピスラズリのペットのケット・シーを入れても、全員に行きわたるに十分な量があった。
(最後に火種として役立ってくれたなぁ……)
ロイは哀愁が漂う表情で燃えカスになった家具を見つめていた。
全ての作業が終わり、スノウクレスト村から引き上げていく冒険者達をラピスと子供達が見送っていた。
「世話になったな。これで私もようやく身軽になれたよ。ありがとう」
「どういたしまして。ラピスラズリ様。お預かりしている書物の類は領主様を通じて学園の図書館に寄贈させていただきますね。百年前の貴重な文献ですから」
「ああ、構わない。あの坊ちゃんもパンクリアース学園の卒業生だと言っていたから、うまくやるだろう」
「その他の骨董品や書物も領主に任せれば適当な値段で捌いてくれるでしょう。路銀には十分な額になるかと」
「うむ。換金が終わったら私も旅に出るよ。帝国
「そうか。旅をするなら気を付けろよ。財布をすられたり、物の価値がわからずにぼられる可能性もあるからな」
シグルドがそう言うと、ラピスは頷いた。
「旅自体は慣れているんだ。この森に引き籠もる前は仲間と冒険者をしていたからな。当時はあのビッグオウム
「ああ、俺も100年前ならもう傭兵になっていた頃だな。お前と違って授恵者に覚醒したのはごく最近だけど」
(そうか、ラピスは元々冒険者だったのか。まあ大森林から出たエルフはたいていそうだしな……)
「観光地は色々あるだろうが……リブラネスタ
シグルドはそう言い、自分が拠点にしている酒場の地図をラピスラズリに渡した。サシャはそんなシグルドの様子をニコニコと眺めている。
「そっか。グランスパーダに来るんだな。せっかくだし、学園も見てけよ。最近は憩いの森も出来たんだぜ」
「ドゥジンシもたくさんあるんですよ! ぜひ!」
「そうか。考えておくよ」
ラピスラズリがそう口にすると、ナキルとサシャはクスリと笑った。
「ラピスラズリ様には少し早いですけれどお引越しと旅立ちのお祝いにこれを」
レティシアはたおやかに微笑み、白地に青の日々草の刺繍をした手巾を差し出した。
「この地で長きの間、献身を続けられた貴女に多くの楽しい思い出が出来ますように。お祈りをしております」
「ありがとう、レティシア」
最後にラピスとレティシアは握手を交わし、冒険者達は荷馬車で引き揚げていった。
それから一週間が経ち、ラピスラズリの出発の日がやってきた。
「さて、行こうか、ケット・シー。はぐれるんじゃないぞ。森と違って、街道は危ないんだからな」
「ニャア」
晴れやかな顔をしたラピスラズリが優しくヤマネコの頭を撫でると、いい風が吹いた。
マスターコメント
汚い家はそのまま残りましたが、魔女の引っ越し準備は無事完了しました。お疲れ様でした! 個人連作【蒼炎】シリーズはこれにて完結ですが、しばらくしたら次の個人連作【蒼月】シリーズを始める予定です(連作設定の根幹部分は運営様と打ち合わせ済)。またご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
ちなみにものすごくどうでもいいことですが、リプレイでチラっとでてきた「領主は学園の卒業生である」という情報は領主が魔女相手に盛った嘘情報です。本当は中退です。
イベントシナリオ易しい 報酬:標準6 / 4〜25人
2022年09月05日 11時11分41秒 公開
成功
相談掲示板
成立したね! ロイです。よろしくお願いします。 現状の人数では片付けまではとても行きそうにないので… 魔窟から暮して行くのに必要な荷物を選別する事から…かなぁ? あ、荷馬車と馬は持込みますね。 身の回りの品の選別は親しい方が確認しつつ仕分けてくれると有難いな。 自分は馬車に詰める状態に整えるとか、歩く場を作るとか? 或いは肉とお茶を持込んで休憩に備えるとか、補助的な事をするつもりです。
ナキルだ、よろしくな! ちっと顔出しおそくなったぜ、ワリィ! 片付け気張って、その後は魔女に絡みたいネタがあれこれと。 前に助けたチビ達とかもな、魔女に直接的お礼くらい言いたいんじゃねーかなって思うしな!
依頼主のラピスラズリだ。世話になる。出発は明日の朝8時だ。プレイングの送り忘れには注意してくれ。
サシャと申します。お見知りおき下さいませ。 荷馬車と馬の持ち手は沢山居て良いかとお手伝いに参りました。 後はマジカルポケットも…有効でしょうか?(所持) マスクとエプロンを身に着けて、細かい動きは皆様に合せますね。