【再起】侵食する緑
馬車猪
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シナリオID:2343
オープニング
賊、害獣、クリーパーに悪天候。
小さな体調不良も人里離れた場所では行き倒れに繋がる。
だから、リットは人間が倒れていても驚かない。
「おいねーちゃんしっかりしろ!」
緑髪のゴブリンにリットが呼びかける。
足下に落ちているハンマーが常軌を逸した重さであることも、周辺の地形が数日前と比べて激変していることも、意識のないゴブリンが大きすぎる気配を持っていることも、リットはなにひとつ気付けなかった。
●
故郷を飛び出した直後に嗅いだことのあるにおいがした。
かみ切れないほど固く、鼻をつままないと食べられないほど不味く、しかし安価ではあったパンのにおいだ。
「おいねーちゃん意識はあるか? 何か言……瞬きでもいい」
若い声は必死だ。
力を求めてそれ以外に目もくれなかった彼女にとって、数十年ぶりに向けられた善意かもしれない。
「ああ」
目を開く。
それだけで目から頭、背筋、筋や内臓まで痛みが走るが感覚ははっきりしている。
呼吸をするたびに、膨大な戦いを経て集められたエーテルが内外の傷を少しずつ癒やしていく。
「よっしゃぁ! これで金が浮くぜ」
医者に連れて行かずに済みそうだと無邪気に喜ぶリットに、生きているのに死体じみた瞳が向けられる。
「少年」
「リットでいいぜねーちゃん! 今なら割引料金でヴィント……じぇねーや村まで運べるけどどうする?」
「危ないぞ」
「へっ?」
ぐん、と荷馬車が加速する。
リットの手から安いパンがすっぽ抜け、地面に雑草に当たった瞬間不自然に消える。
食われたのだ。
荷馬車は加速を続ける。
擬態を止めた緑の絨毯が、ビヒモーが牽く荷馬車を上回る速度で追って来ている。
「なんだありゃあ!?」
リットは混乱し、しかし無意識に剣を引き抜き怪我人とビヒモーを守るため飛び出そうとする。
「落ち着け」
ひょいと。
小柄な見た目より重いリットが子猫のごとく持ち上げられる。
「ねーちゃん力つよいなー、じゃなくて危ないんだって!」
まだ相手の正体と力量に気付けていない。
格が違い過ぎるからかリットが馬鹿なだけなのかは分からないが、いずれにせよ極めて危険な状況だ。
(駄目だな。勘がさび付いたか)
彼女が眉間にしわを寄せる。
リットの戦士としての才能が分からない。
凡人の中でも下位に位置するようにしか感じられないのに、リットの持つ力は中堅冒険者に分類できる。
年齢を考えれば十分に強い。冒険者には劣っても才能があるはずなのに、彼女の勘は現実と違う答えを出したままだ。
(餌にするのは止めだ)
リットをビヒモーの背に置いて、ビヒモーと荷馬車の連結を解除する。
ビヒモーは恐怖の源から逃げるチャンスと判断して全力で走り去る。
「ねーちゃんを置いてけぼりにするなよ、おいっ」
リット1人が危険に気付けなかった。
草色の絨毯が薄く広がる。
守りは薄くても生命力は膨大で、リットや体格の良いビヒモーでは一方的に吸い尽くされるだろう強敵だ。
「雑草は狩れても高い木には届きもせず、か」
鉄槌が振り抜かれる。
空気の壁を突破するほどの速度はなく、しかし高速で移動する特大の重量が秘めたエネルギーは凄まじい。
大きく広がった草色の絨毯が、内側から破裂し荒野へ散らばった。
●
「ってことがあったんだよ」
「ご協力に感謝します」
冒険者ギルドの職員の態度はいつも通りだが額に汗が浮かんでいる。
緑の中指の目撃情報が手に入ったのだ。
左腕よりかなり弱いとはいえ半端な戦力をぶつけても倒せない程度には強い。
帝国軍だけでなく、輸送業者や付近の住人に素早く情報を伝えて警戒を促す必要がある。
「それじゃまたなー」
なんだかよく分からないけど俺には縁のない話だろ、と非常に気楽に考えたリットが職員と別れてヴァイセントラフ砦から出る。
「リット!」
「無事かっ」
リットよりずっと頭の良い仲間達が、わらわらと寄ってきてリットの体に触れ怪我が無いか確かめる。
「いきなりなんだよ」
「なにのほほんとしてんだ馬鹿っ」
メドゥの指先は脅威だ。
狂った価値観を持ち悪行を繰り返しても存続しているのは強いからだ。
言葉は荒いが心から心配してくれる仲間達にリットは心の奥底で暖かさを感じる。
その暖かさがリットの心身を強くしていることに、リットは頭の残念さ故に、彼女はその狂気故に気づけていない。
「それはそれとして」
1番リットを心配していた少し年上の少女が真顔になった。
リットはとぼけようとするが無駄な努力だ。
「ビヒモーはどうなったか教えてくれる?」
「と、途中までは一緒だったぜ」
口笛を吹こうとして失敗する。
ビヒモーの群れから3頭連れて北へ向かい、途中で2頭が飽きて勝手に群れに戻っていった。
唯一付き合ってくれた1頭も、緑髪のゴブリンが見えなくなると何故かリットを振り落として群れへと去った。
なお、全員無事で現在草を食べている。
「配達の依頼、できそう?」
「無理!」
相変わらず素直だ。
リット一党を実質的に差配している少女が、リットのために高速で思考する。
(ビヒモーが使い物にならないままじゃ代官に切り捨てられる。どうする? このままだと切り捨てられる前に草しか食べられなくなったビヒモーが逃げ出す恐れが)
(姐さん、被っている猫が脱げてますっ)
仲間に囁かれた少女が冷たい表情を元の可愛らしい表情に戻す。
リットは「いつも頼りになるなー」とお気楽に考えていて少女の本性に気付かない。
「あの緑髪のねーちゃん怖い奴だったんだな。緑で思い出したけど緑のクリーパーに会ったぜ」
「それは最初に言って! すみません職員さん、いまお時間よろしいですか」
少女は慌てて、関係各所への連絡を終えたギルド職員に声をかけた。
●
「依頼のご紹介です」
ここは冒険者ギルドではなく帝国南部にあるヴァイセントラフ砦。
たまたまこの場にいた冒険者だけでなく、物珍しそうな顔の帝国軍兵士も近くにいる。
「帝国の南部でクリーパーが目撃されました。現在領主も代官もいない……はい、このあたりです」
冒険者ギルド職員は地図を広げて指で示す。
主要街道から遠く、人里からも遠く、しかし交易には使えるかもしれない草原だ。
「クリーパーの外見は緑の芝生です」
リットは詳しく観察できなかったが見た目は分厚い絨毯に近い。
「残念ですが詳しい情報はありません。見つけ辛く、1度移動を開始すれば見た目の割には速いそうです。
職員は1度口を閉じ、目に深刻な光を浮かべる。
「現地で凶悪犯が目撃されています。仕留めるチャンスがあれば是非仕留めて欲しいですが、情報を持ち帰ることを優先することを強く勧めます」
草原には真新しいクレーターがあり、それは賊の手によるものと考えられる。
詳しく調べ、遺留品を見つけて持ち帰ることができれば攻略の手懸かりになるはずだ。
「依頼をうける場合は安全第一でお願いします」
職員はそう言って、深く頭を下げるのだった。
解説
マスターより
リプレイ
さらさらの黒髪が揺れる。
いつもは感情の起伏が緩やかなエルが、言動は淡々としたまま瞳に危機感を滲ませている。
「ビヒモーさん達、仕事ができないままだと、ご飯、が……」
黒い巨体達がびくりと震える。
「また、前みたいに野良、に……?」
ビヒモーはそれなりに頭が良い。
動物交感で伝えられると毛の下で顔を青くして右往左往し始める。
「俺、同じことを何度も言ったんだけど」
リットはビヒモーの群れとうまくつきあうエルを見て落ち込んでいる。
「おいしいご飯のために、リットさん達のお仕事、手伝ってください」
エルが丁寧に依頼する。
「お願い、します」
群の長には特に丁寧に。
長が「あんたが言うなら」という態度でうなずき、他のビヒモーも本当にしぶしぶ荷車の前で整列を始める。
「……リットさん、相棒さんの名前、いいの、思いつきました? わたしも、ネーミングセンスは、ない、から。人の事は言えない、けど」
「おう! ニンニク山盛り牛丼だ!!」
ビヒモーの体当たりで、リットが真横へ吹っ飛んだ。
「リットくんー……とビヒモーさん達も無事でよかった!」
常人にとっては悲惨な事故現場でも並以上の授恵者にとってはただのじゃれあいだ。
地面で受け身をとったリットを、アルマ・ヴァレンタインが素早く診察して「後2回同じ目にあってからヒールを使うね」と伝える。
「今回の敵は這い寄る緑の芝生ぅ……つまり草ァ! ってことは!!」
アルマは独特な味覚を持つ。
「お味が良ければただの草よりビヒモーさんたちのご馳走になるかも? だね」
明らかに、別のことも考えている。
(ここままじゃリットくんのお仲間さんの胃痛が心配だし、失敗続きだとビヒモーさん達がお仕事に拒否反応を出すかもだし)
ビヒモーは頭が良いので口には出せない。
「最初の休憩でこれあげるよー?」
動物のおやつを用意し、ビヒモーのやる気を引き出していた。
「ビヒモーは……置いてかない? 別に草を食べさせるのは別の草原でもいい気が」
餌遣りと調教を並行しながら面倒にも対処しきる自信はトゥーリにはない。
リットは珍しく申し訳無さそうな顔だ。いつも危ない目にあう可能性はあるので、頼りになる冒険者がいるときに危険を冒す方がマシだと考えている。
「リット、君が出会ったゴブリンの女性は『緑の中指』でかなり危険な存在なんだ」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトの表情は厳しい。
「今後出会ったら、すぐに逃げるんだ。決して関わってはいけない。いいな」
「そんなにやべー奴なの?」
「そういう言葉が出てくる時点で理解してないな」
義弟のあまりの鈍さに正直いらっとしていると、ベルク・オスマットが目配せしてきた。
(この件は任せろ。出発の準備を進めてくれ)
ベルクはアルベルトから面倒ごとを引き継いだ。
「リット坊の悪運に呆れるべきかゴブーナの食指に引っかからなかったのに感謝すべきか、どっちなのだろうな?」
ほれ、とリットにとって見覚えのある紙束を渡す。
「これ軍のおっさんが見せてくれねー奴じゃねーか。こうなってんのかー」
見覚えのある顔をいくつか見つけて驚いている。
(危険地帯で案内人をするだけあって顔が広い。凶悪な指名手配犯とその同類の手配書なのだがな)
後で抜粋版以外も見せてやると伝え、紙をめくってはしゃぐリットから取り上げた。
●
ひとつ、人よりいい匂い。
ふたつ、不埒な悪臭三昧。
みっつ、魅せるぞ最臭奥義。
風下にあたる位置にして乗せてくれないビヒモーの尻の上で、見た目は幼いエルフが揺れを感じさせずに踊っている。
火蜥蜴革製ポイントアーマーから漂う生臭さは風で消えるが、本人のえもいわれぬにおいは風に逆らうかのようにビヒモーとリットを襲う。
「やべ。酔ったかな」
文字とか読んでないんだけど、とつぶやくリットの隣にク・サーヤ・クッセーワが着地する。
彼にとって不幸なことに、香りがにおいより先に届いてしまって逃げ損ねた。
「リットよ、久しぶりじゃの」
元気な幼子にするかのように、美しく整えられた爪と指先でリットの髪をガシガシする。
触れる肌の感触はリットにとって心地良く、においから逃げる意欲を鈍らせるという罠になってしまっている。
「ひさしぶり。ねーちゃんでいいんだよな。いやちょっと待って何だよこれ」
自らの鼻をつまんでも既に侵食したにおいは追い出せない。
「む。それは少し傷つくのう」
サーヤはリットを可愛がりながら、必死に距離をとろうとするビヒモーに寂しげな目を向けていた。
「そろそろいいでしょう」
口を開けても閉じても、シルク・メイプルリーフはヒトを惑わす色気の化身である。
冒険者は耐えられているが、種族が違うビヒモーも恋愛対象としては諦めたリットも明らかに惑わされている。
シルクが大きく息を吸う。
とても豊かなのに形も見事なことが防具の上からでも分かる胸が上下し、リットが慌てて余所を向いてサーヤのにおいに轟沈した。
「とりあえず聞こえているかいないかはわかりませんがゴブーナさん、返事は結構ですしかし礼儀として言っておかなければいけません」
とても、大声である。
風とは別方向に草が揺れシルクの近くのビヒモーがよろめいている。
「リット君を助けてくださってありがとうございます」
真剣な顔で言い切り深く頭を下げる。
「たとえあなたにそのつもりがなかったのだとしても私はあなたに感謝します」
相手の具体的な位置など分からないが気持ちはこもっている。
それから数秒、誰も何も言わない。
リットが何かを言おうとしたそのとき、地平線よりは近い場所から緑髪の何かが立ち上がり駈けてきた。
「――こんな所で何やってたの?」
トゥーリの視線は冬の乾いた風のようだ。
年齢不詳なゴブリンが冒険者の顔を順々に見て、ただでさえ生気の少ない目が死体じみたものになる。推しにつれなくされると精神的にダメージをうけるのだ。
「礼儀は大事だ」
感謝を受け取ったとシルクに伝える。
付き合いが長くなってしまったトゥーリとハヤト=ガラン=ヴォルファングは、シルクが高位授恵者だから出て来たのだろうなとゴブーナの頭の中を正確に把握していた。
「ドラゴンに食べさせたのはちょっと悪かったかなとは思ってるけど」
相手が相手なので罪悪感は薄いが一応口にする。
「そもそも何を目的に指先やってるの?」
死体の目が老人の目に変わる。
資格がある者に正面から尋ねられたのは久々だ。
「いやそこまで知りたい訳じゃないし」
完璧に近かった身体の制御が乱れ、ゴブーナの瞳は死体を通り越した何かに見えた。
「戦わずに済みそうで、助かりました」
エルは状況を理解した上で平然と行動する。
「みなさんは、リットさんと一緒に避難、していてもらいたい、です」
強者に対する恐れを隠せないビヒモーを落ち着かせる。
相棒を牧童犬として配置し、ビヒモーの思考と行動を誘導することも忘れない。
「ウィルも、一緒に行って。気を付けて、ね」
この土地には芝生型クリーパーもいるし、今は大人しいとはいえ悪行を繰り返して来た指先もいる。
「わたしは、こちらから調べます」
エルは探知用のエーテルを放ちながら移動を開始する。
エーテルリンクで狼と情報をやりとりしているので、かなりの広範囲を同時に調査可能だった。
「狼の鼻は誤魔化せねぇぜ?」
狼ではなくハヤト自身のことである。
エーテルリンクはなくても高度な看破技術と捜波・改と超嗅覚の組み合わせは強力だ。
しかも本人の白兵戦能力が高いので危険度が高い場所にも積極的に踏み込める。
(孫につれなくされて落ち込む祖母のような態度だが)
ベルクは惑わされない。
腐った返り血の気配は鼻が曲がりそうなほど強い。
(どんな相手からも情報は取り出せる)
残留思念感応を有効に使うため、ベルクは索敵と看破技術による捜索と同時にゴブーナの立つ位置と触れたものを脳裏に刻みつけるように記憶していく。
風が弱くなる。
なのに極一部の草の揺れは変わらず、ハヤトの捜波・改が見えているかのように死角から迫る。
起き上がり網のように広がる様は、草原の捕食者にふさわしい威があった。
「テメェのことは丸っとお見通しだぜ!!」
気付くのに少しだけ遅れたが許容範囲だ。
もとから高度な回避技術を回避に集中することで高め、さらに敵の動きを見切ることで困難な行動を容易な行動へ変える。
鼻先を掠めた芝の中に、消火し損なった装飾品が見えた。
「うらぁ!!」
魂に宿る狼鬼の本能が表に出る。
鋭く鍛え抜かれた肉体と武技を通して敵にぶつかり、闘気まとう籠手と具足で凹ませ伸びきった草を鋭い刃で切り裂く。
「もう1っ、2体来やがるっ」
追撃は可能だが味方との連携を優先する。
仲間に索敵結果を伝えながら斜め後ろへ後退。敵の進路を塞ぐと同時に新手を警戒した。
●
「狼藉もそこまでじゃ!」
香りの粒子を宙に残しながらサーヤが飛ぶ。
大技の準備をしていた芝相手に先手をとり、十分強力と言える針で草を削る。
「ぬ」
反撃が始まってからでは隠れるのには遅い。
サーヤは本当にぎりぎりで回避して、安堵の息を吐く間もなく奥義?で姿を消した。
「貴様を斬る!」
アルベルトが突進する。
サーヤを見失った直後の芝は周囲から浮いて看破の必要もない。
迎撃の草が盾と甲冑を削っても、立ち止まるどころか速度を緩めすらしない。
最後に強く踏み込んで、速度はそのままに重さを加えて最上段から地面へ振り抜いた。
「クリーパーか!」
魔獣ではないので頑丈だ。
4分の3ほど断ち割られた芝生が、断面から血に似た液を垂らしながらアルベルトに甲冑ごと巻き付く。
だが巻き込まれ終わった頃には大太刀を引き戻して草に刃を当てている。
「温いぞ!」
不利な体勢もアルベルトの頑丈さと筋力があれば問題にはならない。
ぶちぶちと草が引きちぎられ、まだ無事な芝生が這ってアルベルトから離れようとした。
シルクが即座に治癒するがアルベルトの消耗は小さくない。
1度大きく息を吸って吐いて心身の状態を元に戻し、しかしそのときには敵の姿は地面の緑に紛れていた。
「そぉい!」
狼を象った本体に載った猫を引き抜き投擲する。
アルマの目は素晴らしくで、戦闘で舞い上がった土煙を見通し敵の位置を特定済みだ。
強制♪桃色弾が緑の敵に広がって、ピンクのきらきらした光を放つ。
「そこだよー」
アルマ自身は攻撃より支援を優先する。
ときにヒールの効果範囲を直径5メートルに拡張し、味方の得物を光らせ前線は前衛冒険者に任せる。
「3体目だっ」
「そぉい2つめ!」
アルマは光の六角柱を草原のど真ん中に建てる。
まだ無傷の草が巻き込まれ、効果のない攻撃を内側から行い時間を無駄にした。
(ゴブーナさんは……)
いつもの態度ではあるが気配が薄い。
こっそり包囲して一気に攻めれば討ち取れるかもしれないが、戦死者を出さずに仕留めるには後数人は欲しい。
(念のためスキルはできるだけ温存で)
面倒臭くはあるがこれも仕事だ。
トゥーリは意識して後ろへ下がり、前衛が攻撃に集中できる環境を整える。
具体的には適切なタイミングでの治癒とその際の自己防衛だ。
速度も守りも優れるトゥーリには、準備なしの攻撃では全く通用しない。
開戦直後にかけたバフの効果も素晴らしく、光弾でちくちく直接攻撃できるほど余裕がある。
(最初は戦闘に反応して襲ってきたのに今は新手が来ない。クリーパーの索敵漏れやエーテル溜まりとかないのかな)
戦闘後の安全確認作業を考えると今から憂鬱だ。
物理的な邪魔はしなくても精神的には邪魔になりそうな緑髪おばさんもいるし。
光の柱が消える直前にアルベルトが1体に止めを刺し、退路をベルクに塞がれた1体がハヤトの猛攻で削り潰される。
「シーザーロアを使えるひとがいないからね」
緑の異形が冒険者の前衛をすりぬける。
狙いは細身で脆そうに見えるトゥーリだ。
ゴブーナの目に光が戻る。
トゥーリは気配だけでそれに気付いた上で、迫る緑にも注意を向けて絶妙なタイミングでの加減速と方向変更を実行。
馬鹿には踊りとしか見えない動きで、掴まれば大量の血を抜かれるはずだった芝を避け反撃を浴びせる。
遠くから飛んで来たエルの矢が止めになる。
最後のクリーパーが滅ぶ様を、緑の中指が満足そうに眺めていた。
●
「よぉ、久しぶりだな……随分手酷くやられたみてぇだが、アンタをそこまでボコボコにするとは……相手は何モンだ?」
ハヤトがにやりと笑う。
同じ種族であるゴブーナは、ますます機嫌を良くする。
「苦労して調べるのも」
「ならいいや」
じゃあなと一声かけて武装の手入れを始める。
これは演技だ。
ゴブーナ程の手練を倒した相手が自分達の敵になれば脅威になる。
だから極力情報を引き出すため押すのではなく引いて釣る。トゥーリがしたように。
「帝都の」
推し2人の関心を引きたすぎて言ってはならないことをつい漏らしてしまった。
咳払いをして誤魔化そうとするが既に遅い。
「今日は帰る。強くなれるうちは頑張って強くなるんだ。後で悔いるのは苦しいよ」
実感がこもりすぎた言葉を残し、凶悪犯は北の地平線に消えていく。
(やっぱり指先やってるのは強さが目的かな。装備も真新しいのから古いのまでパズルみたいに組み合わせてるの全部同じ感じだし)
どれも嘆きと呪いが染みこんでいるような、忌まわしい気配を放っていた。
「強くなるのは大事だよな」
どれだけ危険だったか理解できないまま馬鹿が言う。
「リット君。俺が稽古をつけてやろうか?」
「君……って俺何が怒らせることした?」
義兄の言動に距離を感じて大慌てだった。
●
ヴァイセントラフ砦。
厳重な鍵がかかった1室に、リットと1人の冒険者がいた。
「おぼえきれねー」
持ち出し厳禁の書類を凝視したまま、リットは頭から湯気が出そうなほど頑張ってはいる。
(能力は信用しきれなくても裏切らないと信頼はできる人間だ。殿下の精神的な癒やしのためにも健在であってもらわねば困るのだがな)
ベルクは珍しく報告書に苦戦中だ。
回収できた情報が重要かつ曖昧なのでどこまで書くべきか迷っている。
(闇の底で蠢く人でなしじゃな)
微かに残った思念を読み取っただけで酷い悪酔いをした気分になった。
あれが向かったのは帝都の方向だ。
読み取り結果とその解釈が正しいなら、力試しのつもりらしい。
だから帝都の勢力の敵、とはならない。あれは強さのためなら何でもする外道だ
「何故に揃いも揃って殿下の胃に強烈なボディブローを叩き込むがごとき所業をしでかしてくれるか」
報告書の提出と書類の返却が完了したのは、日付が変わってからである。
なお、何故か芝生型クリーパーの味についての詳細な情報も載っていたらしい。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年07月25日 06時17分11秒 公開
相談掲示板
トゥーリだよ、よろしく! 芝生型クリーパーってなに……人工芝のマットみたいな感じなのかな……( ヒーラーとウォーリアしかいません 看破が無いよ。力技で解決だね! とりあえず個人的にはゴブーナさんと会って、うわぁって顔をしようと思います。 今回は保護者会してくるだけなら放置かなあ……何か最近チートっぽいアクセサリとかも使い始めたみたいだし、個別にちょっと対策したい感じ。 対芝生は……そうだなあ。攻撃力に優れているわけでもないから…… 力技かなあ。3体ってそこまで数が多く無いのは良かったけど、囲まれると怖いね。 布団虫みたいにされちゃうかも。
No.2
シスターシルクです つまりなんとか見つけてみんなでぶん殴れということですね わかります
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 芝生…草ァ!ってことはビヒモーさんたちの餌にできたり…しないかなあ? (趣味と実益を兼ねて)超味覚で味もみておこう、してみるね 戦闘は手間取ってると敵が増えて面倒なことになりそうだし 看破を持ってくかシーフさん増えたので索敵スキルで捕捉してもらえたら 光縛封で閉じ込めて数ラウンド稼いでみようかなーと 特性もう1枠は被らなければコモンブラッドで輝刃の範囲がけにでも
シーフのベルクだ。よろしく頼む。 索敵はともかく遠距離型が居ないのに草が生えそうだ。 とりあえずは索敵特化で行こうかな?
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 『看破』は俺も持っていこうかな。 芝生型クリーパーを倒して余裕があればゴブーナに挑もうかとも思っている。 その時、何人が一緒に挑んでくれるだろうか?
ウォーリアのリットだ! 冒険者のねーちゃんやにーちゃんの邪魔にならないよう頑張るぜ!
>芝生 ・看破は持てる人は持っていく ・双波や探波があれば安心 ・殴る ・お味見はご自由に ……まあ、普通難易度だしね。そうそうへんな事しなきゃ大丈夫かな? >ゴブーナさん これについてはもう、背景みたいな感じで徹底無視を推奨するよ…… 世間話ぐらいなら普通に成り立つとは思うけど、芝生のあとのついでぐらいの勢いで挑むと死にかねない気がしてるよ。 https://alpaca-connect.com/world/world0/scenario/1971 https://alpaca-connect.com/world/world0/scenario/1878 アルベルトさんもいたから覚えてるかなとは思うんだけど。 この時のワタシ、確か素の回避が197に反応強化2(+12)とブルーフレア(×1.2)持って行って、常時回避集中(×1.2)してるんだよね……だから回避の判定値は300.96。 それで、当たる可能性がまだクリティカルファンブル以外に残ってるってことだから、命中が500以上あるんだよ。その上、多分ワタシぐらいの防御だと当たったら一発重体コース。 なので、少なくともワタシは「今回は絶対に戦わない」かな……
>トゥーリさん 了解した。 予定は変更してゴブーナは無視しよう。
直前に、すみません。 エル、です。…シューター、です。 どうぞ、よろしく。 ビヒモーさんたちの、ご飯のために頑張ろうと、思い、ます。 とりあえず、捜波と、戦闘は、遠距離、です。
(食べるのが)許された!戦闘後のオマケだからまあ…うん いちおう攻撃は遠距離…というか魔矢もってく予定だけど 看破で見つけても本職さんみたくマークしたりできないから 居場所を掴んだときにペイントボ…閃光弾(ボクのは色付きだけど)で 位置が分かるようにマーキングもしてみようかなと
おーっす! ギリギリになってすまねぇ! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 俺も捜波と看破で索敵出来るようにしとくぜ。 ゴブーナに関しちゃ話を聞くに留めて戦わねぇってのには賛成だ。 あのゴブーナを倒した奴がいるってんなら俺達にも脅威になる可能性があるだろーから情報は引き出しときてぇしな。
久しぶりすぎで出遅れてしまったがサーヤである。 香れ、薔薇の如く。 索敵は任せる故、わらわは草原を駆けつつ攻撃に当たるとしよう。