【夏果】トロピカルを味わおう!
夜月天音
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シナリオID:2320
オープニング
快晴の昼、エラトゥーン都市同盟南東、ベールコートに佇む喫茶店『エヴァブルー』にもトロピカルな夏が押し寄せて来た。
その証拠に新鮮で甘いトロピカルフルーツを使ったメニューを宣伝する案内版がドアの近くに置かれていた。
『トロピカルな夏がエヴァブルーにやって来た! チョコレートフォンデュ、フルーツジュース、フルーツシャーベット、フルーツケーキなどなど。
一番のおすすめは、新鮮フルーツそのまま! お好きなフルーツを希望の飾り切りで見た目も楽しい!
さぁ、トロピカルフルーツをご賞味あれ!』
上記の案内板に誘われて喫茶店のドアを開けると、フルーツの爽やかな香りと従業員達の笑顔に迎えられた。
「いらっしゃいませ! 当店はエラトゥーンで栽培された新鮮野菜や果物を使った料理が自慢ですが、本日のメニューは『トロピカル祭り』という事で、フルーツを使った料理だけになっております!」
「目玉は飾り切りだよ! お客様のお好きなフルーツをお花や動物や建物など希望の形にあっという間にしちゃうよ!」
「飲み物はお好きな物をどうぞ! ジュース、お酒、百合茶とか色々あるわ! 特にトロピカルフルーツを使ったお酒やジュースがおすすめ!」
従業員は、種族様々だが皆美男美女であった。
その証拠に新鮮で甘いトロピカルフルーツを使ったメニューを宣伝する案内版がドアの近くに置かれていた。
『トロピカルな夏がエヴァブルーにやって来た! チョコレートフォンデュ、フルーツジュース、フルーツシャーベット、フルーツケーキなどなど。
一番のおすすめは、新鮮フルーツそのまま! お好きなフルーツを希望の飾り切りで見た目も楽しい!
さぁ、トロピカルフルーツをご賞味あれ!』
上記の案内板に誘われて喫茶店のドアを開けると、フルーツの爽やかな香りと従業員達の笑顔に迎えられた。
「いらっしゃいませ! 当店はエラトゥーンで栽培された新鮮野菜や果物を使った料理が自慢ですが、本日のメニューは『トロピカル祭り』という事で、フルーツを使った料理だけになっております!」
「目玉は飾り切りだよ! お客様のお好きなフルーツをお花や動物や建物など希望の形にあっという間にしちゃうよ!」
「飲み物はお好きな物をどうぞ! ジュース、お酒、百合茶とか色々あるわ! 特にトロピカルフルーツを使ったお酒やジュースがおすすめ!」
従業員は、種族様々だが皆美男美女であった。
解説
昼から夜までに喫茶店を訪れ、1人でも複数人でもお好きなトロピカルフルーツを使用した料理を満喫して下さい。
【喫茶店『エヴァブルー』について】
新鮮野菜と果物を使った料理が自慢。
食事、デザート、百合茶、ジュース、酒まで種類豊富に扱っています。
従業員は土地柄もあってか種族は様々ですが、皆美男美女です。
本日はトロピカル祭りのため注文出来るのはフルーツを使った料理のみとなります。
※活動時間、こういう冒険者や従業員と交流したいや楽しみたい料理や飲み物など、希望などがありましたら、プレイングに記載をお願いします。
※公式NPCとは交流出来ません。
マスターより
オープニングを読んで頂き、ありがとうございます。
喫茶店でトロピカルフルーツを思う存分味わって下さい。
リプレイ
エラトゥーン都市同盟南東、ベールコートに佇む喫茶店『エヴァブルー』にて、快晴の昼から夜にかけて『トロピカル祭り』に相応しいトロピカルなメニューが店内を華やかにしていた。
「わわ、なんだかすごいところに来ちゃった……! 働いてるお兄さんお姉さんもみんなきれい」
宣伝文句に惹かれて入店したアドルフ・ジーノは、お洒落な雰囲気、美男美女の店員、目に映るもの全てにキラキラな感じを受け落ち着きなくきょろきょろ。実際、アドルフ自身も幼い容姿ではあるが、綺麗な髪に煌めく碧眼となかなかに素敵ではあるのだが。
「あ、そうだ。何を食べよう……」
少々落ち着きを取り戻したアドルフは立て掛けているメニューを手に取り、
「わぁあ、どれも美味しそうだなー!」
広げて、これまたキラキラ感に目がびっくりしてしまう。
「どれも捨てがたいけど……これに決定だ!」
ちょっぴりメニューに迷った後アドルフは決めて、通りかかった店員を呼び止めて注文をした。
「……みんな楽しそうだなー。あの料理、面白いなぁ」
料理が来る間、アドルフはまたきょろきょろと観察を再開させた。
待っている間に、隣の空席が埋まり、注文していた料理が運ばれて来た。
やって来たのは、
「うわぁ、宝箱みたいだなぁ!」
フルーツポンチだ。それもただのフルーツポンチではない。スイカを半分くり抜き、皮を飾り切りにした器の中に丸や星、花にくり抜いたフルーツがなみなみに満たされているソーダに浮いたり沈んだり。
「すごい! 丸い形や星の形に花の形、色んな形がある! 何か食べるのがもったいないなぁ」
アドルフは目をキラキラ輝かせてスイカの器を上から下に見たり、ソーダの海に浸かるフルーツの形の豊富さに大興奮だ。
ひとしきりフルーツポンチを眺め回した所で、
「でも、こういうのって、冷たい時が一番美味しいんだよね」
アドルフは高ぶる気持ちを何とか落ち着かせ、
「ではでは、いただきまーす!」
ついにスプーンを手に取り、いざ実食だ。
「はぁああ、見ても、食べても楽しいなんてすごい料理だ……!」
口に運んだソーダと瑞々しい果物が織りなす刺激と甘さの絶妙なハーモニーが、アドルフの幼げな顔を一層幼くする。
そうしてまったりと味わっている時、
「すごい! あれ、飾り切りなんだ」
隣の席に運ばれて来た料理が偶然目に入り、アドルフは思わず感想を発してしまった。
それがきっかけで、午後のまったりなひとときに賑やかさが加わった。
「抱っこしてたイュンが暴れたと思ったら、ラーナフさんがいてびっくりしたよ! しかもイュンとそっくりの子兎……家族さんもいて……」
「それは俺もだよ。モネが何か興奮したと思ったらフリューくんがいてさ。依頼では何度か顔を合わせているけど、まさか、店の前で会うなんて」
向かい合って座っているフリューリングスルフト=ティエラことフリューとラーナフは、再会について花を咲かせていた。彼らの側には愛らしい子兎がいた。
「縁やね! ひとりで入るのちょっと迷ってたからありがたかったさ!」
笑顔をキラキラさせるフリュー。思いがけぬ再会に心が弾んでいる。
「こちらこそだよ。モネとイュンくんの久々の団らんも兼ねてお茶を楽しめるんだから」
ラーナフはモネの体を優しく撫でながら言った。言葉の端々からフリューと同じく楽しい気持ちが滲んでいた。
再会のなんやかんやはここまでにして、
「早速、何か頼もうか。フリューくんは何を頼む?」
立て掛けているメニューを取り、テーブルの真ん中に広げた。お喋りもいいが、そろそろ料理を楽しみたい所だ。
「むむむっ。どれもおいしそうで……目移りがすごいさぁっ」
メニューを見たフリューは一瞬にして困った顔に。
「ははっ、確かに。目移りしてしまうね」
ラーナフは急かす事はせず、一緒に迷う事を楽しむ。
「あっ、飾り切り。好きな形にしてくれるとか、あれ頼んでみようさ!」
フリューは店が宣伝する目玉に思い至る。
「いいね。どんな形にするんだい?」
ラーナフも話に乗り、形を訊ねた。
「もう決まってるさぁ!」
フリューは、ニヤっとイュンとモネを見た。
「あぁ、なるほど。それはいいね!」
視線の先を見たラーナフはすぐに察し、賛成した。
「で、あとは、フルーツパフェとタルトも注文するさぁ」
「俺は百合茶とこのフルーツ料理にしよう」
飾り切り以外の料理も決まり、通りかかった店員を呼び止めて注文をした。
注文した料理が来るのを待つ間、
「ラーナフさん、改めましてうちはうん、何度か呼んでもろうてるけどフリューさぁ! こっちはイュン!」
「ラーナフとモネだ、よろしく」
フリューとラーナフは改めて挨拶をし合った。
挨拶を終えた2人は可愛い相棒の話で盛り上がる。
「それでイュンたら……」
フリューは、イュンのおもしろ可愛いエピソードを手振りを混ぜて臨場感たっぷりに語る。
「へぇ、そんな事が」
ラーナフは相槌を打ちながら楽しく耳を傾けている。
「って、うちばっかり話してるね。今度はモネさんとの思い出話を聞かせて」
フリューは語りに一区切りがついた所で、語り役を交代する。
「いいよ。モネはいつもはね……」
ラーナフはモネに優しい眼差しを注ぎながら、普段の様子や印象に残ったエピソードを語った。
「モネさん、可愛いなぁ」
フリューは、話の中のモネの可愛いっぷりに笑みながら聞く。当の2匹の小兎は手の平サイズのためテーブルの上で仲良くまったり中だ。
大いに話が盛り上がる中、イュンとモネを模したフルーツの飾り切りが運ばれて来た。
「わぁあ、すっっごい! すごいさぁ! 見てみてイュン、君にそっくりさぁ! かわいいっ」
フリューは、目を輝かせてイュンにも見せたりと喜びまくりだ。
「すごいね! とても可愛いモネだよ。ありがとう」
ラーナフはあまりの再現度の高さに拍手をすると共に、店員に礼を言った。店員は残りの料理の進捗を伝えてから他テーブルへ注文を取りに行った。
「すごいねモネ。君にそっくりだ」
ラーナフもモネに飾り切りを見せて話し掛けていると、
「すごい! あれ、飾り切りなんだ」
隣のテーブルのアドルフの感嘆の声が耳に入って来た。どうやら見事な飾り切りに心奪われたようだ。
「そうさぁ! イュンとモネさんの姿を飾り切りにして貰ったさぁ」
フリューは人見知りしない事もあってか、呟きを逃さず笑顔で飾り切りを披露する。
「これがイュンで隣がモネさん!」
フリューは、アドルフに飾り切りを見せると共にモデルを紹介した。
「すごいそっくりだね!」
アドルフは飾り切りと実物を見比べ、精巧さに舌を巻いた。
「でしょ!」
自分の事のようにドヤっとするフリュー。
「そのフルーツポンチの飾り切りも見事だね」
アドルフが注文したフルーツポンチの飾り切りに気付くラーナフ。
「中身もすごいよ」
アドルフは器を僅かに傾け、2人にキラキラの中身を見せた。お人好しもあってか、すっかり2人とのやり取りを楽しんでる。
「うわぁ、まるで宝箱さぁ~」
フリューは、器に詰まった様々な形をした果物に目を煌めかせた。
「スイカにメロンにキウイに……色々なフルーツがあって豪華だね」
ラーナフは具材の豊富さに驚いた。
丁度その時、フリューとラーナフが注文した料理が運ばれて来たため、お喋りはお開きとなった。
「んーー、美味しいなぁ」
食事に戻ったアドルフは、フルーツポンチを目と舌でたっぷりと味わった。
アドルフとの交流の後。
「フルーツたっぷりさぁ」
フリューはタルトやパフェを頬張りつつ、
「ほら、イュンも食べる? あーん!」
飾り切りから食べられそうなフルーツを選びイュンの口元に持って行った。
「にひひ」
パクリと食いつき、もひもひ食べるイュンの様子を微笑まし気に見守るフリュー。
「君も食べるかい?」
ラーナフも飾り切りから食べられそうなフルーツをモネにあげた。
「美味しいね、モネ」
モネの可愛い食べっぷりを見守りながらラーナフも、百合茶とフルーツ料理として頼んだサツマイモとリンゴのはちみつレモン煮を食べた。
食事がひと段落した所で、
「あぁ、そうだ。フリューくん、イュンくん。記念の1枚描かせてくれないか?」
ラーナフの突然の頼み事だ。実は絵を描くのが趣味なのだ。
「もちろん! 可愛く描いてさぁ……なんてね♪」
フリューは勢いよく答えた。ちょっぴりお茶目をつけて。
「任せてよ」
ラーナフは、心を込めてフリューとイュンの姿を描いた。
まったりと過ごした後、
「今日はありがとう。またモネと遊んでね」
「うちこそありがとうさぁ♪ またね、モネさん!」
ラーナフとフリューは店を出て、次の再会を楽しみにしながら笑顔で別れた。
「久しぶりに家族と会えてよかったね、モネ」
ラーナフは、ほっこりとした気持ちで抱いているモネを撫でつつ帰路に就いた。
「元気そうで良かったさぁ♪ また会いに行こうね!」
フリューは、抱っこしたイュンに笑顔を投げながら元気一杯に帰路に就いた。
「窓際を選んで正解だったな」
「……本当に」
窓際で茜色に染まる海を見つめるエル=バ=ノイアンとシルヴィア・A・カペルの姿があった。注文を済ませ料理が来るまでの時間潰しをしている。
しばらくして、女性従業員が現れ注文した料理をテーブルに並べた。
「ありがとう」
ノイアンは爽やかな笑みで女性従業員に礼を言い、チップを渡した。
チップを貰った女性従業員の表情は、収入を喜ぶとはまた違ったときめきのような物があった。
「…………ノイアン」
恋人と女性従業員のやり取りにシルヴィアは、不穏そうに眉を寄せていた。先ほどの幸せそうな様子はどこへやら。
「食べようか、シルヴィア」
女性従業員を見送ったノイアンは、トロピカルな料理に向き直った。
「……そうだね」
頷くシルヴィアの視線は、自分達のテーブルを見て頬を染めながらひそひそ話をする女性従業員達の姿に向いていた。
「……どうした? どこか具合が悪いのか?」
先ほどとは違う恋人の異変に心配になるノイアン。
「いや、大丈夫だよ。ただ、彼女達が君を見ているような気がして……」
シルヴィアは恋人に向き直り、顔を出した嫉妬心を伝えた。
「俺を? シルヴィアの方を見ているのではなく?」
意外な答えに思わずノイアンは頓狂な声を出してしまう。何せ、シルヴィアは軍服のような衣装も着こなす麗人で同性からも人気があるものだから。
「あぁ、そうだ。最近の君はとても優しい雰囲気を纏っていて、今日着ているラフなシャツも何時もと印象が変わって素敵だ。格好良くて……少し妬ける」
シルヴィアは、嫉妬心を告白するどころか褒めちぎり始める。本日の恋人はラフなシャツにサマーボトムと何とも爽やかな服装だ。
「君だって、今日はいつにも増して御令嬢という雰囲気でつい眺めてしまう」
ノイアンは称賛には称賛で返し、言葉通りシルヴィアのいつもとは違う上品なシルエットのサマードレスに釘付けだ。
端から見たら甘々な雰囲気である。
「……ずるいなぁ」
シルヴィアは、真っ直ぐに自分を見つめる青い双眸に頬を染め動揺する。
惚気が落ち着いた所で、
「さぁ、乾杯をしようか」
「あぁ」
ノイアンは下戸のためトロピカルジュース、シルヴィアは青色のトロピカルサングリアで乾杯をした。
「んー、瑞々しい野菜とフルーツの酸っぱさと甘さが絶妙だな」
ジュースを少し飲んでからノイアンは、トロピカルフルーツを使ったカクテルサラダを頬張った。
「……チョコは冷たくても美味しいものだな」
カクテルで喉を潤したシルヴィアは、マンゴーやブルーベリーを冷たいチョコレートフォンデュで楽しむ。
ひとしりき料理を味わった所で、
「ノイアン、知っているかい?」
シルヴィアはチョコとフルーツを見て、悪戯な笑みを口元に湛え始めた。
「何を?」
興味から聞き返すノイアン。
「フォンデュを食べる時、鍋の中に具材を落とした人には罰ゲームをやってもらうことがあるらしい」
シルヴィアは、滔々とフォンデュの楽しみ方を語り始めた。
「へぇ、それは面白そうだな。で、罰ゲームって言うのは?」
すっかりノイアンは話に乗り、参加するも同然の様子。
「同行者に奢ったり、頬にキスしたりだね。どうだい? 挑戦してみないかい?」
シルヴィアは何やら気持ちを込めて罰ゲームの内容を語り、誘った。
(……これは期待されているな。言ってくれればいくらでも差し出せるのに。まあ、理由づけは大事だし)
察したノイアンは、可愛らしくて仕方が無いのかシルヴィアを愛おし気に見つめていた。
「ノイアン?」
見つめるばかりで返答が返ってこず、不審な顔をするシルヴィア。
「あぁ、付き合おう」
名を呼ばれ、我に返ったノイアンは参加を表明した。
途端、
「よし、私が落としたらアイスを奢るよ!」
シルヴィアは喜々と罰ゲームを口にする。
(折角の逢瀬でも頬にキスは人前では……)
本当にしたい事は胸に隠して。
「俺は……そうだな……酒を1杯奢ろう」
ノイアンは僅かに考え込んでから答えるも、
(さすがに公衆の面前では頬にとはいえ控えるべきだしな)
同じく隠し事をして。
そんなこんなで、ゲームが始まったのはいいものの、
「なかなか落とさないな」
「ふふ、落としても良いんだよ?」
ノイアンもシルヴィアも一切落とさない。
「いっそうの事、どちらが落とすか決めてしまう?」
長々と続く勝負にそろそろ決着が欲しいと思ったのか、シルヴィアは不真面目な事を口走った。
「決めるって……それは……うぉっと!?」
ノイアンが苺にチョコを纏わせようと鍋に近付けるも、恋人の想定外の発言のためか手元が見事に狂い、チョコの海にダイブしてしまった。
「ノイアン、見事な落としっぷりだ」
気付いたシルヴィアが、恋人の見事な落としっぷりに拍手を送った。
「これで、落とす方を決める必要が無くなったな」
ノイアンはチョコにダイブした苺を救出してパクリ。
「さぁて、シルヴィア、何が飲みたいんだ?」
頬張った苺を消化してから、ノイアンは立て掛けてあるメニューを広げて訊ねた。宣言した罰ゲームを実行するために。
「そうだね。実はもう1つ気になっていたお酒があって……」
シルヴィアは口元を楽しそうに歪ませた。
賑やかな食事を終えて、店を出た頃にはすっかり外は夜になっていた。
「今日は楽しかったね」
シルヴィアは、デートの余韻に浸かりながら人気の無い中、恋人と共に帰り道を歩く。
「……シルヴィア」
突然ノイアンに呼ばれて振り返った瞬間、
「!!」
頬に柔らかな感触を感じ、シルヴィアは心臓が飛び出すほど驚いた。
「……約束だからな」
驚く彼女に向かって、不敵な笑みのノイアン。
「何だか、随分余裕だね?」
シルヴィアは少し悔しそうに目許を朱に染め、大いに鼓動を高まらせ、唇をきゅっと結んだ。
「わわ、なんだかすごいところに来ちゃった……! 働いてるお兄さんお姉さんもみんなきれい」
宣伝文句に惹かれて入店したアドルフ・ジーノは、お洒落な雰囲気、美男美女の店員、目に映るもの全てにキラキラな感じを受け落ち着きなくきょろきょろ。実際、アドルフ自身も幼い容姿ではあるが、綺麗な髪に煌めく碧眼となかなかに素敵ではあるのだが。
「あ、そうだ。何を食べよう……」
少々落ち着きを取り戻したアドルフは立て掛けているメニューを手に取り、
「わぁあ、どれも美味しそうだなー!」
広げて、これまたキラキラ感に目がびっくりしてしまう。
「どれも捨てがたいけど……これに決定だ!」
ちょっぴりメニューに迷った後アドルフは決めて、通りかかった店員を呼び止めて注文をした。
「……みんな楽しそうだなー。あの料理、面白いなぁ」
料理が来る間、アドルフはまたきょろきょろと観察を再開させた。
待っている間に、隣の空席が埋まり、注文していた料理が運ばれて来た。
やって来たのは、
「うわぁ、宝箱みたいだなぁ!」
フルーツポンチだ。それもただのフルーツポンチではない。スイカを半分くり抜き、皮を飾り切りにした器の中に丸や星、花にくり抜いたフルーツがなみなみに満たされているソーダに浮いたり沈んだり。
「すごい! 丸い形や星の形に花の形、色んな形がある! 何か食べるのがもったいないなぁ」
アドルフは目をキラキラ輝かせてスイカの器を上から下に見たり、ソーダの海に浸かるフルーツの形の豊富さに大興奮だ。
ひとしきりフルーツポンチを眺め回した所で、
「でも、こういうのって、冷たい時が一番美味しいんだよね」
アドルフは高ぶる気持ちを何とか落ち着かせ、
「ではでは、いただきまーす!」
ついにスプーンを手に取り、いざ実食だ。
「はぁああ、見ても、食べても楽しいなんてすごい料理だ……!」
口に運んだソーダと瑞々しい果物が織りなす刺激と甘さの絶妙なハーモニーが、アドルフの幼げな顔を一層幼くする。
そうしてまったりと味わっている時、
「すごい! あれ、飾り切りなんだ」
隣の席に運ばれて来た料理が偶然目に入り、アドルフは思わず感想を発してしまった。
それがきっかけで、午後のまったりなひとときに賑やかさが加わった。
「抱っこしてたイュンが暴れたと思ったら、ラーナフさんがいてびっくりしたよ! しかもイュンとそっくりの子兎……家族さんもいて……」
「それは俺もだよ。モネが何か興奮したと思ったらフリューくんがいてさ。依頼では何度か顔を合わせているけど、まさか、店の前で会うなんて」
向かい合って座っているフリューリングスルフト=ティエラことフリューとラーナフは、再会について花を咲かせていた。彼らの側には愛らしい子兎がいた。
「縁やね! ひとりで入るのちょっと迷ってたからありがたかったさ!」
笑顔をキラキラさせるフリュー。思いがけぬ再会に心が弾んでいる。
「こちらこそだよ。モネとイュンくんの久々の団らんも兼ねてお茶を楽しめるんだから」
ラーナフはモネの体を優しく撫でながら言った。言葉の端々からフリューと同じく楽しい気持ちが滲んでいた。
再会のなんやかんやはここまでにして、
「早速、何か頼もうか。フリューくんは何を頼む?」
立て掛けているメニューを取り、テーブルの真ん中に広げた。お喋りもいいが、そろそろ料理を楽しみたい所だ。
「むむむっ。どれもおいしそうで……目移りがすごいさぁっ」
メニューを見たフリューは一瞬にして困った顔に。
「ははっ、確かに。目移りしてしまうね」
ラーナフは急かす事はせず、一緒に迷う事を楽しむ。
「あっ、飾り切り。好きな形にしてくれるとか、あれ頼んでみようさ!」
フリューは店が宣伝する目玉に思い至る。
「いいね。どんな形にするんだい?」
ラーナフも話に乗り、形を訊ねた。
「もう決まってるさぁ!」
フリューは、ニヤっとイュンとモネを見た。
「あぁ、なるほど。それはいいね!」
視線の先を見たラーナフはすぐに察し、賛成した。
「で、あとは、フルーツパフェとタルトも注文するさぁ」
「俺は百合茶とこのフルーツ料理にしよう」
飾り切り以外の料理も決まり、通りかかった店員を呼び止めて注文をした。
注文した料理が来るのを待つ間、
「ラーナフさん、改めましてうちはうん、何度か呼んでもろうてるけどフリューさぁ! こっちはイュン!」
「ラーナフとモネだ、よろしく」
フリューとラーナフは改めて挨拶をし合った。
挨拶を終えた2人は可愛い相棒の話で盛り上がる。
「それでイュンたら……」
フリューは、イュンのおもしろ可愛いエピソードを手振りを混ぜて臨場感たっぷりに語る。
「へぇ、そんな事が」
ラーナフは相槌を打ちながら楽しく耳を傾けている。
「って、うちばっかり話してるね。今度はモネさんとの思い出話を聞かせて」
フリューは語りに一区切りがついた所で、語り役を交代する。
「いいよ。モネはいつもはね……」
ラーナフはモネに優しい眼差しを注ぎながら、普段の様子や印象に残ったエピソードを語った。
「モネさん、可愛いなぁ」
フリューは、話の中のモネの可愛いっぷりに笑みながら聞く。当の2匹の小兎は手の平サイズのためテーブルの上で仲良くまったり中だ。
大いに話が盛り上がる中、イュンとモネを模したフルーツの飾り切りが運ばれて来た。
「わぁあ、すっっごい! すごいさぁ! 見てみてイュン、君にそっくりさぁ! かわいいっ」
フリューは、目を輝かせてイュンにも見せたりと喜びまくりだ。
「すごいね! とても可愛いモネだよ。ありがとう」
ラーナフはあまりの再現度の高さに拍手をすると共に、店員に礼を言った。店員は残りの料理の進捗を伝えてから他テーブルへ注文を取りに行った。
「すごいねモネ。君にそっくりだ」
ラーナフもモネに飾り切りを見せて話し掛けていると、
「すごい! あれ、飾り切りなんだ」
隣のテーブルのアドルフの感嘆の声が耳に入って来た。どうやら見事な飾り切りに心奪われたようだ。
「そうさぁ! イュンとモネさんの姿を飾り切りにして貰ったさぁ」
フリューは人見知りしない事もあってか、呟きを逃さず笑顔で飾り切りを披露する。
「これがイュンで隣がモネさん!」
フリューは、アドルフに飾り切りを見せると共にモデルを紹介した。
「すごいそっくりだね!」
アドルフは飾り切りと実物を見比べ、精巧さに舌を巻いた。
「でしょ!」
自分の事のようにドヤっとするフリュー。
「そのフルーツポンチの飾り切りも見事だね」
アドルフが注文したフルーツポンチの飾り切りに気付くラーナフ。
「中身もすごいよ」
アドルフは器を僅かに傾け、2人にキラキラの中身を見せた。お人好しもあってか、すっかり2人とのやり取りを楽しんでる。
「うわぁ、まるで宝箱さぁ~」
フリューは、器に詰まった様々な形をした果物に目を煌めかせた。
「スイカにメロンにキウイに……色々なフルーツがあって豪華だね」
ラーナフは具材の豊富さに驚いた。
丁度その時、フリューとラーナフが注文した料理が運ばれて来たため、お喋りはお開きとなった。
「んーー、美味しいなぁ」
食事に戻ったアドルフは、フルーツポンチを目と舌でたっぷりと味わった。
アドルフとの交流の後。
「フルーツたっぷりさぁ」
フリューはタルトやパフェを頬張りつつ、
「ほら、イュンも食べる? あーん!」
飾り切りから食べられそうなフルーツを選びイュンの口元に持って行った。
「にひひ」
パクリと食いつき、もひもひ食べるイュンの様子を微笑まし気に見守るフリュー。
「君も食べるかい?」
ラーナフも飾り切りから食べられそうなフルーツをモネにあげた。
「美味しいね、モネ」
モネの可愛い食べっぷりを見守りながらラーナフも、百合茶とフルーツ料理として頼んだサツマイモとリンゴのはちみつレモン煮を食べた。
食事がひと段落した所で、
「あぁ、そうだ。フリューくん、イュンくん。記念の1枚描かせてくれないか?」
ラーナフの突然の頼み事だ。実は絵を描くのが趣味なのだ。
「もちろん! 可愛く描いてさぁ……なんてね♪」
フリューは勢いよく答えた。ちょっぴりお茶目をつけて。
「任せてよ」
ラーナフは、心を込めてフリューとイュンの姿を描いた。
まったりと過ごした後、
「今日はありがとう。またモネと遊んでね」
「うちこそありがとうさぁ♪ またね、モネさん!」
ラーナフとフリューは店を出て、次の再会を楽しみにしながら笑顔で別れた。
「久しぶりに家族と会えてよかったね、モネ」
ラーナフは、ほっこりとした気持ちで抱いているモネを撫でつつ帰路に就いた。
「元気そうで良かったさぁ♪ また会いに行こうね!」
フリューは、抱っこしたイュンに笑顔を投げながら元気一杯に帰路に就いた。
「窓際を選んで正解だったな」
「……本当に」
窓際で茜色に染まる海を見つめるエル=バ=ノイアンとシルヴィア・A・カペルの姿があった。注文を済ませ料理が来るまでの時間潰しをしている。
しばらくして、女性従業員が現れ注文した料理をテーブルに並べた。
「ありがとう」
ノイアンは爽やかな笑みで女性従業員に礼を言い、チップを渡した。
チップを貰った女性従業員の表情は、収入を喜ぶとはまた違ったときめきのような物があった。
「…………ノイアン」
恋人と女性従業員のやり取りにシルヴィアは、不穏そうに眉を寄せていた。先ほどの幸せそうな様子はどこへやら。
「食べようか、シルヴィア」
女性従業員を見送ったノイアンは、トロピカルな料理に向き直った。
「……そうだね」
頷くシルヴィアの視線は、自分達のテーブルを見て頬を染めながらひそひそ話をする女性従業員達の姿に向いていた。
「……どうした? どこか具合が悪いのか?」
先ほどとは違う恋人の異変に心配になるノイアン。
「いや、大丈夫だよ。ただ、彼女達が君を見ているような気がして……」
シルヴィアは恋人に向き直り、顔を出した嫉妬心を伝えた。
「俺を? シルヴィアの方を見ているのではなく?」
意外な答えに思わずノイアンは頓狂な声を出してしまう。何せ、シルヴィアは軍服のような衣装も着こなす麗人で同性からも人気があるものだから。
「あぁ、そうだ。最近の君はとても優しい雰囲気を纏っていて、今日着ているラフなシャツも何時もと印象が変わって素敵だ。格好良くて……少し妬ける」
シルヴィアは、嫉妬心を告白するどころか褒めちぎり始める。本日の恋人はラフなシャツにサマーボトムと何とも爽やかな服装だ。
「君だって、今日はいつにも増して御令嬢という雰囲気でつい眺めてしまう」
ノイアンは称賛には称賛で返し、言葉通りシルヴィアのいつもとは違う上品なシルエットのサマードレスに釘付けだ。
端から見たら甘々な雰囲気である。
「……ずるいなぁ」
シルヴィアは、真っ直ぐに自分を見つめる青い双眸に頬を染め動揺する。
惚気が落ち着いた所で、
「さぁ、乾杯をしようか」
「あぁ」
ノイアンは下戸のためトロピカルジュース、シルヴィアは青色のトロピカルサングリアで乾杯をした。
「んー、瑞々しい野菜とフルーツの酸っぱさと甘さが絶妙だな」
ジュースを少し飲んでからノイアンは、トロピカルフルーツを使ったカクテルサラダを頬張った。
「……チョコは冷たくても美味しいものだな」
カクテルで喉を潤したシルヴィアは、マンゴーやブルーベリーを冷たいチョコレートフォンデュで楽しむ。
ひとしりき料理を味わった所で、
「ノイアン、知っているかい?」
シルヴィアはチョコとフルーツを見て、悪戯な笑みを口元に湛え始めた。
「何を?」
興味から聞き返すノイアン。
「フォンデュを食べる時、鍋の中に具材を落とした人には罰ゲームをやってもらうことがあるらしい」
シルヴィアは、滔々とフォンデュの楽しみ方を語り始めた。
「へぇ、それは面白そうだな。で、罰ゲームって言うのは?」
すっかりノイアンは話に乗り、参加するも同然の様子。
「同行者に奢ったり、頬にキスしたりだね。どうだい? 挑戦してみないかい?」
シルヴィアは何やら気持ちを込めて罰ゲームの内容を語り、誘った。
(……これは期待されているな。言ってくれればいくらでも差し出せるのに。まあ、理由づけは大事だし)
察したノイアンは、可愛らしくて仕方が無いのかシルヴィアを愛おし気に見つめていた。
「ノイアン?」
見つめるばかりで返答が返ってこず、不審な顔をするシルヴィア。
「あぁ、付き合おう」
名を呼ばれ、我に返ったノイアンは参加を表明した。
途端、
「よし、私が落としたらアイスを奢るよ!」
シルヴィアは喜々と罰ゲームを口にする。
(折角の逢瀬でも頬にキスは人前では……)
本当にしたい事は胸に隠して。
「俺は……そうだな……酒を1杯奢ろう」
ノイアンは僅かに考え込んでから答えるも、
(さすがに公衆の面前では頬にとはいえ控えるべきだしな)
同じく隠し事をして。
そんなこんなで、ゲームが始まったのはいいものの、
「なかなか落とさないな」
「ふふ、落としても良いんだよ?」
ノイアンもシルヴィアも一切落とさない。
「いっそうの事、どちらが落とすか決めてしまう?」
長々と続く勝負にそろそろ決着が欲しいと思ったのか、シルヴィアは不真面目な事を口走った。
「決めるって……それは……うぉっと!?」
ノイアンが苺にチョコを纏わせようと鍋に近付けるも、恋人の想定外の発言のためか手元が見事に狂い、チョコの海にダイブしてしまった。
「ノイアン、見事な落としっぷりだ」
気付いたシルヴィアが、恋人の見事な落としっぷりに拍手を送った。
「これで、落とす方を決める必要が無くなったな」
ノイアンはチョコにダイブした苺を救出してパクリ。
「さぁて、シルヴィア、何が飲みたいんだ?」
頬張った苺を消化してから、ノイアンは立て掛けてあるメニューを広げて訊ねた。宣言した罰ゲームを実行するために。
「そうだね。実はもう1つ気になっていたお酒があって……」
シルヴィアは口元を楽しそうに歪ませた。
賑やかな食事を終えて、店を出た頃にはすっかり外は夜になっていた。
「今日は楽しかったね」
シルヴィアは、デートの余韻に浸かりながら人気の無い中、恋人と共に帰り道を歩く。
「……シルヴィア」
突然ノイアンに呼ばれて振り返った瞬間、
「!!」
頬に柔らかな感触を感じ、シルヴィアは心臓が飛び出すほど驚いた。
「……約束だからな」
驚く彼女に向かって、不敵な笑みのノイアン。
「何だか、随分余裕だね?」
シルヴィアは少し悔しそうに目許を朱に染め、大いに鼓動を高まらせ、唇をきゅっと結んだ。
マスターコメント
参加者の皆様、参加して頂き大変ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。
トロピカルなフルーツを楽しんで頂き、大変大変ありがとうございました。
ほんの僅かでも楽しんで頂ければ、幸いです。
ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜10人
2022年07月30日 15時42分18秒 公開
大成功
相談掲示板
ノイアンだ、よろしく頼む。 ひとまず成立を祈願して、取り急ぎ挨拶まで。
わぁ、誰かが来てくれたようで良かった。 僕はアドルフだよ、よろしく。 僕も1人誰か来てくれないかを探してみるよ。
ぎりぎりの参加失礼するさぁ! シーフのフリューさぁ、よろしくね!
キャスターのラーナフだ。 出発前日だけど、参加させてもらうね。
依頼が成立して良かった……! シルヴィアだ。今回はよろしくね。
僕の方だと誰か一人見つけられなかったから良かったよ。 みんなよろしくね。