ホムンクルス連続殺人事件
馬車猪
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シナリオID:2204
オープニング
3回目だ。
戦う術を持たないホムンクルスは恐れ、戦う術を持つホムンクルスも敵の神出鬼没ぶりに頭を悩ませる。
賢者の石はそれだけでは意味がない。
普通の賊ならそもそも狙わないか、恐怖で諦めるはずなのだ。
「畜生、まただ」
「こうなったら戦争だ。報酬を積み上げて50人集めろ!」
1人目の被害者が出たときは沈痛な面持ちだった職員達も、賢者の石を奪われた3人目の遺体が発見された今では怒りで目を血走らせている。
冒険者の活躍を通して人類社会の助けになるため活動しているようにも見えるギルドだが、舐められたら殺すという面も持っている。
冒険者ギルドが引き受けたホムンクルスに手を出すとは、巨大な武力が敵にまわるということだ。
「落ち着け」
誰よりも怒っているはずの、直接ホムンクルスの面倒を見ているギルド幹部が職員達を制止する。
「犯人の情報はどれだけ集まっている」
職員達の動きが止まる。
戸締まりを厳重にし、見回りを増やしたのにほとんど情報もない。
遺体発見直後に残留思念感応を使っても痛みと嘆きの記憶しか回収できなかった。
「そうか」
幹部は確信した。
賢者の石連続強盗犯は、精鋭の冒険者並みに頭が切れ実力もあり、なのに倫理観が欠けた授恵者だ。
「あの」
肌が粟立つほどの気配で満ちたギルドに、幼いとすら言える声が響く。
幹部は驚き慌てる。
「危ないから外出しないよう言っておいただろう。早く帰……いや私が送る。少し待っていなさい」
できるだけ優しい態度で語りかけ、被保護者に気付かれないよう部下に仕事を押しつける。
「ちがう、です。ぼく」
まだ冒険者ギルドに登録できない年齢のホムンクルスが、恐怖に耐えて絞り出すように言葉を発する。
「ぼくを、おとりにして、わるいひとつかまえて、ください」
真っ青になった幹部が必死に翻意を促しても、ホムンクルスは自らの主張を曲げなかった。
●
この依頼は冒険者ギルドに張り出されてはいない。
信用できる冒険者にだけ、職員が奥に案内して説明している。
「既にご存じかもしれませんが、ホムンクルスの賢者の石を狙った犯罪が連続で発生しています」
ホムンクルスは賢者の石を奪われれば死ぬ。
連続殺人事件だ。
「犯人は単独の高レベルシーフです」
冒険者ギルドが威信を賭けて徹底した調査が行った結果、敵の正体と能力はある程度ではあるが予測できるようになった。
「賢者の石を闇マーケットに流しても割にあわないはずです。本人の趣味か、極めつけの悪趣味のスポンサーがいるかのどちらかだと思われます」
本人は感情を消して説明しているつもりだが憎悪と嫌悪を隠しきれていない。
「犯行は既に3回行われています」
ギルドに属する授恵者や関係組織の人手を使った警備はことごとく裏をかかれた。
警備をさらに厳重にしたので新たな被害はないが、不審な気配は何度か感知されている。
敵は、まだやるつもりだ。
「現在、志願者を囮にして敵を誘き寄せる計画が立案されています」
わざと一部の警備を緩め、そこに囮と不意討ちのための戦力を置いて敵を迎え撃つという作戦だ。
敵を倒せた場合でも、囮が死んでしまう確率はかなり高い。
「依頼をうけた冒険者が囮役を担当することも可能です」
その冒険者がホムンクルスなら囮役としては十分だ。
変装に自信があるならホムンクルスでなくても問題ない。
「敵は生死不問です」
これ以上被害を出さないために全力を尽くして欲しいと、職員は真剣な表情で頭を下げた。
解説
マスターより
リプレイ
身長184センチの精悍な体型と顔立ち。
左目で紫に輝く賢者の石がチャームポイントの26歳。
彼こそが危険な囮役を志願したルイドである。
「お前は連絡役を頼む」
身長が己の腹あたりまでしかない子供の頭を乱暴に撫でる。
手のひらは厚く、新人とは思えない鍛錬と戦闘力を感じ子供の表情が柔らかくなる。
「死ぬかもわからないってのに志願したその気概は嫌いじゃねぇ。同じホムンクルスのよしみだ、お前の決意は代わりに持って行ってやるよ」
「ありがとうございます」
子供は素直に頭を下げる。
囮をするには強く見えるすぎるんじゃないかな、という思いは「きっと何か考えがあるんだ」という思いでかき消していた。
「でも」
「ああ」
子供とルイドが同時に横を見る。
そこにいるのは賢者の石より賢者の石に見えるものを体から生やしたリザードマンだ。
ルイドより背の高い233センチ。
膨大な戦闘経験と徹底した鍛錬で形成された筋肉は気配を押さえた状態でも迫力がすさまじい。
「どう?」
サイラスが姿勢と動きを崩して新人っぽい隙だらけの仕草をする。
「えっと」
「駄目だと思うぜ」
子供は言葉を濁したが、エーテルの濃さも戦闘力も既に新人の域ではないルイドがあっさり断言した。
サイラスは怒りもせずに納得顔だ。
変装に使っていた布を器用に折りたたんで包帯や実用的な眼帯に変える。
「事件が終わるまでは石を隠しておくようにね。そっちも眼帯で本物隠して偽物を肌にくっつけておく?」
子供ははっとして頭を下げ、ルイドも変装を頼むことにした。
「賢者の石なんて集めてどうするつもりなんだ……? 何も知らない金持ちに売りつける以外の使い道が思い浮かばないけど」
緊張が解けすぎた空気を元の戻すため、キリクが敢えて物騒な話題を口にする。
(やりたいからやる奴もいるよな)
(いるね)
ルイドとサイラスは目で会話する。
どちらも必要なら残酷な手段も使えるタイプだ。それでも、まだ生き方を決めていない子供に聞かせて極端な影響を与えたくはなかった。
「対象がホムンクルスであった御大層な理由なんて多分ないのでしょう」
バル・ヌール・スケアクロウは2人と比べれば普通に近い。少なくとも表面は。
「ただ証拠が残りやすかった。恐らく余罪は沢山あると思いますよ」
壁に立てかけていた槍を手に取る。
「送っていきます。ここよりは危険は少ないでしょうがギルドに戻るまで気を抜かないように」
同じ種族の、力強さと美しさを兼ね備えた年上から見下ろされ、子供は緊張した面持ちでうなずいた。
●
「懐かしいなぁおい」
ルイドは見習い冒険者用の防具姿で訓練用の剣を振っている。
「最初の依頼をうけて2月経ってないんだぜ」
ホムンクルスになる前の記憶は曖昧だが、ここまで急速に強くなれる人間ではなかったはずだ。
だから今の時期訓練に励んでいるホムンクルスがいてもおかしくないし普通だ。家に閉じこもっていると不審に思われ警戒される危険がある。
初心を思い出しながら、一軒家に住み始めて3日目の夕陽を庭で迎えていた。
(ホムンクルスは授恵者。まだ鍛練を積んだ者は少ないとはいえ臆する事無く連続殺人を成功させている犯人は相当なやり手のはず。手加減をしてよい状況では……)
同居人を装い台所で惣菜パンを作るキリクの手つきには慣れがある。
今のキリクを見て待ち伏せした冒険者と判断するのは非常に難しいはずだ。
油断はなかった
夕方は明け方ほどではないが奇襲に向いている時間帯なのは冒険者全員分かっている。
ただ、敵の隠密能力が圧倒的すぎたのだ。
ルイドが最初に感じたのは痛みだ。
腱のあたりから激痛が全身に広がり、血の臭いと体の揺れを感じる。
手を頭上へ伸ばす。
容量の大きな異空間にただ1つ収納していた灰色の鞘が落下してくるのを受け取り、直後に術を発動。
授恵者として既に中堅の実力を持つルイドの体は急所への攻撃でも破壊されず、ヒールの効果を受けて骨も肉も神経も回復する。
「危険だって聞いた割にゃ、新人一人仕留めきれねぇ腕前なのかよ」
敵の位置は未だ掴めず、夕陽を反射する刃がいきなり至近距離に現れたように見えた。
刃がカソックごと肉を貫く寸前に、ルイドは己の全身を淡い光で包み守りを厚くする。
「その程度で粋がってんのか」
刺さる直前に攻撃を捨て守りに集中する。
カソックの下に身につけた竜鱗の首飾りとルイド自身の頑丈さと戦術により、連続で襲って来た刃物に何とか耐え抜く。
「……いや、別にいいけどな。俺なら恥ずかしくて死ねるってだけだからよ、まぁ気にすんな」
シーザーロアでもないのにその挑発は非常によく効き、目立たぬ服装のシーフがルイドの前に姿を現した。
(位置が分かれば)
キリクが竜骨の魔弓を引き絞る。
家のから射撃すれば安全だが第2射以降で壁を盾にされかねない。
台所を放置して窓から飛び出し、ほんの数歩の距離から矢を放つ。
敵が避ける動きは超高速。身体能力も回避技術も桁違いだ。
しかしキリクがペットとの縁を絶ってまで鍛えた零距離射撃技術は格の差を埋める。
身軽なシーフに矢が追い付き薄い防具に突き刺さり、肌に埋まった矢尻の先端から重力波エーテルを注ぎ込むことに成功した。
どん、と音がした。
一軒家の壁が内側から蹴り破られ、背中から光を噴き出すサイラスが飛び出てくる。
鎧を着たまま仮眠という苦行の直後でも技に乱れはなく構えた刃が間が禍々しく光る。
もともと老朽化して取り壊し予定だったとはいえ果断だ。
(手下はいない。本人は防御が薄い回避頼りか)
強引に加速し剣を振り下ろす。
サイラスから見て長寸肉厚の刀だ。
当たれば少々のレベル差など関係なくダメージが通る。回避特化のシーフなら2度当たっただけで戦闘不能もあり得た。
「このっ」
猛烈な反撃が先にサイラスを襲う。
攻撃集中しているサイラスの守りは平常時よりは薄いが軽いシーフの連撃では削り切るには遠い。
サイラスの斬撃は止まらない。
躱されても速度と威力を維持したまま執拗に賊を襲う。
刀から伸びた長大な光刃の先端が、賊の腹筋を切り裂きいた。
「やっと効いたか」
サイラスが鼻を鳴らす。
傲慢な精神力で殺界改に耐えていた賊も限界だ。逃げて腹を応急処置しないと死ぬのが分かっているのに体と心が言うことをきかない。
「抵抗する? 抜け出すまで縄跳びしような?」
冒険者の数が増える前から殺しに殺してきた賊の殺意を、サイラスは真正面から受け止めた上でつまらなそうに見返した。
●
「旦那、負けてるんじゃ」
「あいつが負けるかよ。遅れたら俺達が解体されちまうぞっ」
甲冑を着込んだ上、両手持ちの大型棍棒を肩に担いで小走りで移動する男達。
人格がまともなら貴族の私兵部隊で活躍する人生を送ることもできたしれない。
「冒険者ギルドに自ら出向いて罪を認めることを勧めます」
道沿いの木立の陰からバルが現れる。
「なんだおめぇ」
特に気の荒い鎧男が籠手で覆われた手を伸ばす。
ギルドへの義理立てを済ませたバルは、遅い鎧男より遅く槍を動かし始めて手が達する前に激しく突く。
鎧男は苦鳴をもらしながらよたよたと後退する。
バルの顔に笑みが浮かぶ。
普段はおっとりした表情が浮かんでいる整った顔に、敵の苦しみを心から楽しむ不吉な笑みが張り付いて消えない。
「冒険者だ」
「分かれて攻めろ!」
賊は場慣れしている。
相手がどれだけ強くても複数方向から同時に攻めれば不利になる。多少経験を積んだ程度の授恵者でも互角に戦えるし戦ってきた。
しかしバルが積んだ経験は多少ではない。
正面にいる負傷した賊は無視し、左右から息をあわせて棍棒を振り下ろしてくる4人の賊に狙いを定める。
(関節の可動域を知るため医者に学んでもいいかもしれませんね)
物理に特化した槍を、美しさを保ったまま鍛え上げた体で旋回させる。
防具の下の筋肉が連携して効率よく力を伝え、高速の穂先で甲冑を切り裂き頑丈な柄で衝撃を与える。
賊達は痛みで喘ぎ嫌な汗を滲ませる。
対するバルは、棍棒が2度体をかすめて手傷を負ったのに痛みを感じている様子がない。
(加虐趣味というのはわかりきっている話ですが、それに加えて正面切ってその欲を通す程精神面に支障をきたしているわけではない、という感じでしょうか)
楽しむための手段はいくつも思い浮かぶが実行はしない。
構えを変えて逆向きに振り抜くと、鎧ごと足が曲がった男達が受け身もとれずに倒れる。
「やったらやり返されますよね?」
やられたのは罪なきホムンクルス。
今からやられるのは犯人の一部。
まだ腕しか壊れていない賊が、土下座して必死の命乞いを始めていた。
「確かに渡したぜ」
ロープで縛った上で雑に応急手当をして、ルイド達は賊を冒険者ギルドまで運んだ。
「あそこで死んだ方が楽だったろうな」
やったことを考えれば末路は確実に悲惨なものになるはずだ。
ルイドは子供と保護者に軽く挨拶してギルドを出る。
空に、星が瞬いていた。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:標準4 / 4〜8人
2022年06月02日 22時31分19秒 公開
参加者
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー とりま ・護衛は三名以下、軽装が良い(ポケットで武器隠すくらいはありではなかろか) ・手下も犯罪者(甲冑と棍棒のため物理攻防より?) ・PCが誰も囮役できない場合の囮役はレベル一より弱い のかね。どうしよかと
ウォーリア、ルイド。 どーぞ良しなに。 ホムンクルスなんで他特に希望なけりゃ囮役はできるぜ。元の志願者よりかは多少は持つはず。 マジポケも持てるんで武器隠しは可能なんだが、これ防具はどの程度まで許されんのかね。 ノービス防具くらいなら着てても良さげか?
シューターのキリクだ。賢者の石なんて持ち去ってどうするつもりなんだと思ったけど、なんか同類の奴と売り買いしてコレクションしてるらしいな。気持ち悪い趣味だ…。 ルイドが囮役をやってくれるなら、OPで立候補してくれてるホムンクルスには待機しててもらうか。 犯人はすごい自信家ってあるから、ターゲットが多少戦えそうな相手でもそのまま襲ってくるんじゃないか?
ホムンクルス、ウォーリアのバル・ヌール・スケアクロウです。 バルさんとでも >マジカルポケット (Q&Aより) 一応「1種類」だけ収納可能という条件ですので、武器を仕舞ったらそれまでかと。 ウォーリアの場合甲冑とかは結構厳つくなりますから、他職のローブ的なもので覆い隠せるレベルの武器を持つ、とかでしょうかね? >待機 そうですね、無理に危険な目に合わせるわけにもいきませんし 人質などに使われる危険性もありますし
ああ悪ぃ、言い方が紛らわしかったな。 防具については「どの程度まで重武装にならずに済むか」って疑問だった。 経歴偽装可能なら、ノービスの武器防具持って完全な新人装うとかもできっかね。 OPのホムンクルスは連絡役につくっぽいな。 特にこっちからなんか指定する必要は無さげか。
No.6
まあ普通に鎧は重武装でない? とりまシーフかキャスターの鎧着てポケットに太刀入れるか細剣使うつもりだけども。
>鎧は重武装 金属系だと見た目的にいかにもですし。 ただまあ、警備が2~3名程度なら襲撃をかけるような手合いみたいですし 皮鎧レベルなら誘い出せるかもしれませんね
店売り防具なら性能なんかでも判断してくっかな……と思ったんだが、 ガチガチに鍛えてなけりゃどの道そんな大差ねぇか。 そんじゃ、見た目にもごつくならねぇ範囲で用意しとくな。 スキルの方は耐久優先で組みつつ、殺人犯にゃ挑発なりも飛ばしておこうかと。 一応手下も鑑みて範囲攻撃とかも持つが、攻撃面は概ね頼らせてもらうかもしれねぇ。
No.9
とりあえず変装で宝石の場所を別に見せるとか試してみよかと?装備も長衣なら普通に見せられるかもやし。 とりあえずポケットに剣入れといて戦闘になったら取り出しと殺界とかになるかと
ん-、とりあえずですが 「囮」は非武装(に見せかける)な必要はあるでしょうが、それ以外の方は通常でもいいのですよね? 挑発程度はやろうかなとは思っていますが。 >ギルド関係 直接的な支援はできないようですけど、間接的な・・・それこそ 「悪趣味な方」との繋がりの洗い出しなどはお願いできるのでしょうかね? そこまで行かなくても、さりげなく一帯の封鎖などができると安全かなと思うのですが。
持ち込むスキルとしては、グラビティボルトでシーフの行動の邪魔をしようかなと。 戦う場所は一軒家の中だし、孤高の零距離殺撃者で回避を上げて行こう。
一応最初に「手下相手」を行うことをプレイングに入れて現時点で送信済みです。
囮以外は通常通りで大丈夫じゃねぇかな。 ただ、戦場付近を固めすぎてたら襲ってこない可能性もあるみたいなんで、 どっか隠れておくとか多少距離を取っておくとかはあった方がいいかもしれねぇが。 戦場は一軒家とその周辺ってことだが、手下の方潰してもらえるんなら 殺人犯については一軒家内に絞って戦り合う感じに思ってもいいのかね。 そんなら出入り口や窓を押さえられりゃ逃走阻止もできそうだなと。 繋がりの洗い出しなんかは殺人犯を殺さずに捕まえられるか、でも変わりそうだな。 余裕次第にゃなるが、一応捕縛用のロープは用意しておくわ。