【樹謂】里の違和感、煙と人と

狐野径

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シナリオID:2194

オープニング

●馬車を直す人
 フィルエス大森林にある、灰火(ルイン)の里の一つ。
 最古老の一人であるグレイオンスが住む里であり、そこには依頼や相談のためにやってくるエルフが連日いた。
 大森林を出て旅をしていたナツキ・エルとハルシ・エルは、たまたまシルトラース帝国側から大森林に帰ってきて、アンデッドの群れに遭遇した。
 その際、切り抜けることはできたけれども、馬車が相当やられていた。

「ああああ、救援に行くつもりがぁああああ」
「これも直さないとだめだと思う」
「さくっと直すんだ」
「そうだね」
 聖鳥(メイルアイレ)に向かうアンデッドの群れを討伐しにいくならば、馬車につないでいる馬でも行けなくはない。ただ、何かあれば人や物資を運べる馬車は重要でもある。
 だから、直すようにグレイオンスに言われた。納得できるし状況がわからないまま突撃しそうナツキの行動抑止にもつながっていた。
 ナツキとハルシは、幌については里の手が器用そうな人に頼み、馬車自体の側面等の修繕に取り掛かる。

 材料を集め、止めてある馬車のところに二人は向かう。
 ハルシは見える風景に何か違和感を覚えた。
「どうしたの、ハル?」
「いや、何か違和感ある人がいたような? 物かな?」
「むしろ、私たちが、違和感!」
「確かに! 里の者じゃないもんね。でも、灰火の人も髪はグレーばかりじゃないし、各地からエルフが来ているからそれこそ外見バラバラ」
 ハルシは苦笑した。なお、二人は金髪である。
 いつも妙なテンションが多いナツキであるが、今回はさすがにまじめに考えている。
「ハル、それ、この里の人に言っておこう。警戒を強めてもらった方がいいと思うし」
 そして、警戒に当たっている一団を発見し、その違和感を告げる。
 抽象的であるため困った様子もうかがえるが、それを無視して警戒しないと大変なことが起こる方が問題だ。そのため「気を付けます。具体的にわかれば、教えてください」と表情を引き締めた。
 ナツキは「巫女さんが何か察知してくれるといいなぁ」と他力本願を発揮した。とはいえ、わからないことは知りたいというのも強くて当たり前だろう。
 二人は馬車の修繕に戻った。

●???
 私は一人になった。
 森の中で、一人になった。
 里の人は優しくしてくれる。
 それでも、私は一人だ。

 狩りに行ったあの人は戻らなかった。
 そして、調査に行った里の人も戻らなかった。
 何があったのかよくわからないけれども、あの人が戻ってこないということは現実だった。

 不安なまま時間だけが過ぎる。
 眠れないし、食事も喉を通らない。
 あの人はどうしているのかしら?
 里の人は優しいけれども……何かを隠しているのかしら?

 あの人がいたときまでは感じなかったけれども、今はここが美しくないものに思えた。
 何が起こっているのか、その答えが欲しい。

 私は夢うつつに誰かの声を聞いた。
 その人は、苦しみを終えるならば、好きなことをすればいいと言ってくれた。
 私の苦しみはあの人がいないこと。
 あの人がいない理由は、森で何かが起こっているから。
 だから、森を壊してしまえばいいのかしら?

 私は一番効率いい方法を考えた。
 森に住むからわかる。
 燃やしてしまえばいいのよ。
 あとは――。

●そして、事件が起こる
 ナツキとハルシはのこぎりを使い板を切り、やすりを掛けて形を整え、馬車を直す。
 車輪は問題ないのは幸いだった。
 ナツキはあまり作業していないが、
「結構重労働」
 と悲鳴を上げている。
 ハルシは「まぁね」と同意はする。そこから指摘する。
「ここに直してくれる人がいればいいけどいないし、森の外の職人を呼んでくるのも一苦労よ?」
 ナツキはあきらめてため息をつく。
「仕方がないかぁ。幌だけでも直してくれるのは重要だね」
 ナツキは木くずを集めてゴミ袋に入れた。
「ごはんかおやつ」
「作る余裕がないよ」
「そう来るのか! そうだ、爺様に頼もう!」
「……作る人いなさそうだけど……」
 グレイオンスが料理を作るかどうか、二人は知らない。
 それに、顔見知りであるハーフビーストの青年ウル・ヘルバは別件で今ここにいない。
「ナツが作れば?」
「うーん」
 ハルシは分担を提案したが、ちょうど、グレイオンスが家から出てきた。
 二人に手招きをしている。
 ナツキは胃袋の窮状を訴えに走り出す。
「爺様だ。ごはん、ほしい! おやつでも可!」
「ナツ……すごく迷惑な人になってる気がする。本能に忠実なのは……ん?」
 ハルシはあきれてその背中を見ていたが、改めて風景に違和感を覚える。
 グレイオンスの家のそばにある枯れ枝の山。
 別の家のそばにある枯れ枝の山――。
 森だから、枯れ枝は転がってくるだろうけれども、やけに目につくのだ。
 何より位置が不自然なのだ。
 ハルシは馬車の近くに置いてあった長弓と矢筒を取る。
「ナツ、そのまま走って、爺様の方にいて!」
 ハルシはナツキに指示を出す。
「え? あ? よく、わかんないけど!」
 わからないが、ナツキはハルシの言葉に従う。
 ナツキはグレイオンスの死角となっている方から見知らぬ灰色の髪の女を見た。
「ふおおおう、不審者!」
 ナツキが叫び走る。
 ハルシから放たれたけん制の矢がグレイオンスの家の壁に刺さる。
 グレイオンスが一歩下がった。
 そのため、女が振り下ろしたナイフは空を切った。

 ナツキとハルシの声、矢が壁に刺さる音は、周囲の人たちに危険を知らせるに十分だ。
 グレイオンスの方に目を向けたものは、女がナイフを振り下ろしたのを見た。
 目撃者から悲鳴が上がる。

 ナツキはそのまま女にタックルする。
「ふおおおおう!」
 ナイフは怖いし、どうやって応戦していいか実はわかっていない。
 ハルシは「ナツ」と叫び、走り出す。
 ナツキはグレイオンスに、
「扉を閉めてよ!」
 と告げるが、その場所にナツキともみ合う女はいる。
 グレイオンスは「二人がいるから閉じられない」と告げた。
「キャスターなのに、もみ合いだからねっ!」
 ナツキは必死に女を取り押さえようとしていた。グレイオンスの杖に気付いてひったくり、それでどうにか女を抑えようと必死だ。

 ハルシは数歩走ったところで、背後で悲鳴を聞いた。
 煙がどこからか立ち上がった――。
「これは……」
 ハルシはナツキを信じて火元を確認に行くか、それを里の自警団に任せてナツキのところに行くべきか、瞬間迷うのだった。

解説

●目的・目標  依頼の状況か何かでこの里に来ていた。  事件が発生しているようなのでその対応。  里にいるエルフたちの安全確保、不審者の確保。 ●里の状況  広場あったり、家があったり、特徴はないけれども人が住むのに手入れされている里。  グレイオンス宅、この里の一般的な住宅。  入り口でもみ合う灰色の髪のエルフと、ナツキがいる。  グレイオンスは手を出せず、どうにかして止めたいと様子はうかがっている。  火の手が上がっているところ。  里でも家が何軒かまとまっているところの間。木の枝の山に火がついている。  住人が留守にしていたり、家のことをしたりで動いていたりで火が大きくなるまで気づけなかった。  近くに水をためているところやバケツはある。  一応、川は里を出て人が住むあたりを離れたあたりにはある。 ●NPC  ・グレイオンス 家の前で襲われそうになったが、無事。  ナツキが女を抑え込むのは難しいと気づいているけれども、手を出せない状況。  ・ハルシ・エル シューターであるエルフの女性。  火災現場に行くべきか、人員の誘導か、グレイオンスのところか悩む状況。  ・ナツキ・エル キャスターであるエルフの女性。  発動体ないし、目の前にナイフを振りかざす人がいるし、もみ合い状態でどうしていいかわからない。できれば、助けてもらいたいと思っている。  ・ナイフを振りかざした女 灰色の髪の年は若いエルフ。  とりあえず、状況変化についていけていない。  彼女の目的は聞く必要があるけれども……?  ・その他 里の住民や依頼や相談に来たエルフたちがいる。  里の住民の方は自警団などもいるので、避難や消火など分担して行動していくかもしれない。  とはいえ、全体的に当初は衝撃により、パニック気味である。

マスターより

 こんにちは、狐野径です。  連動【樹謂】が始まりました。「じゅい」と読みますです、はい。  さて、シナリオについてですが、冒険者はこの里にたまたまいたことになります。  依頼の中間地点かもしれませんし、里で訪れるエルフたちの対応補助とかの依頼が出てたかもしれません。理由はともかく、たまたま居合わせたので、対応をする必要がある状況です。  フリーアタックに近いですが、方針は解説にありますのでご参考に行動してくださいませ。  よろしくお願いします。

リプレイ

●それぞれ
 ライナ・フレイヴァルツは故郷であったことが糸口にならないかと思い、伝えるために来た。
 故郷の里のエルフは、外出していたライナを除き消えてしまった。その後、調査したことでわかったことなどもある。今回のエルフや動物などの失踪とどこが違い同じか、情報を突き合わせられればわかることも出てくるかもしれない。
 フロマーシュ・ダイヤドロップはライナに付き添う。今回の件について状況など尋ねるためもあった。
 以前も来た事のある里であるが、人が多く、雰囲気が違う。
「グレイオンス様のお宅はあちらでしたね」
 フロマーシュの確認にライナはうなずく。
「森全体で何かが起こっている……不安だろうな」
 ライナは集まっている人々を見て思った。

 ハルシ・エルの鋭い声がした。
 グレイオンスの前にナイフを持った女が一人いたがナツキ・エルが突き飛ばす。
 さらに、別のところで火の手が上がる。
 事件が起こるという認識が薄かったこともあり、里に来ている者たちは大なり小なりパニックになっていた。

 フロマーシュは目を見張る。
「里に火の手が! 急いで助けに行かないと!」
「すぐに助けに行こう。助けられる命も助けられなくなってしまう」
 ライナは答えつつ、状況を考える。
「争っている同胞が気になるが……そちらはフロマーシュに任せよう」
「任せてください! 争いの理由はわかりませんが、止めて、お守りしないと!」
「ああ、私は安全確保と避難誘導を図る!」
 二人は走り出す。

 ミィアは超視覚と天眼を用い、状況の確認をした。
 安全そうな場所、または、治癒の力など助けが必要なところを見定める。
 そこにハルシが声を掛ける。
「冒険者だよね、手伝ってもらえる?」
 ミィアは「もちろんです」と答える。
「ケガした人の回復を主に行います。担架も持ってます」
「火災の方が今何かありそうだから見てもらってもいい?」
 ミィアは「そちらの方が状況わかりませんね」と同意する。
「回復魔法必要なら声を掛けてください」
「わかった、ありがと」
 ハルシはフロマーシュを、ミィアはライナを追う形で火災現場方面に向かった。

 レイラ=ルナフィニスは帰郷して、冒険者の仕事に戻ろうとしていたところで寄った。
「大変なことになってしまいましたわ」
 つぶやきはおっとりしているが、周囲に走らせる目は鋭い。
「ひと段落したら、恋人へ数日遅れると手紙を送らないといけませんわね」
 レイラは横を通ったハルシに声を掛けた。
「状況をお聞きしてもよろしいですかしら?」
「彼女は不審者を抑えに行き、あの人たちは消火と避難だよ」
 それぞれ該当する冒険者を指差してハルシは答える。
「では、わたしも貴方の方に加わりますわ」
 弓を手にした。
 レイラはハルシと、争いのある現場が見える位置に向かう。

 エルは依頼の帰り、寄り道としてここに来ていた。
 休憩を取ろうとしていたが、早々、それの状況は吹き飛ぶ。
「不審者に火事に……? とにかく、どうにか、しないと」
 エルは二手に分かれている冒険者を見て、人手がいりそうな方に向かうこと考える。
 まずはパニックになっている人々の意識を、どうにかしないといけないと思う。
 手には管楽器が握られた。
 それを、ただ音が出るように、思いっきり息を吹き込んだ。
 ピィイイイイと鋭い音が響く。
 周りのエルフたちの視線がエルに集まった。

 サイラスは煙が上がっている方に向う。
 自警団らしいエルフは動いているが、不安はぬぐえないままの行動に見える。
 一方で、住民や他の里から来ていたエルフらしいものは、どうしていいかわからなくて動けていない。
 いずれの立場のエルフたちも、よろしくない状態。
 ただ声を掛けるだけでは、効果的な反応は出ないだろう。
 正常な対応を取るためには意識がはっきりしていることが必要だ。
 パニックになっている人たちに、改めて違う衝撃を与える。それにより、頭の働きが止まるため、話を聞きやすくなる、と言われている。
 そのために、独自のスキルを用いる。

●炎
 サイラスが【焔翼】を発動させ、耳目を集め進む。
 背に炎でできた翼が浮かび上がったこともあり、人々は驚愕し、注目する。
 サイラスは質問と指示を出していく。
「そっちは離れるんだ! 水場はどこだ? 火を消すため、バケツリレーできるはずだ。ここと水場をつなぐように並んで」
 現場から逃げる人、自警団や里または来訪者で動ける人たちはバケツリレーの準備に入る。
「ここの住人は? 逃げ遅れている人は?」
 その問いかけに近くにいるエルフは首を横に振る。
「皆動いている時間でわからない」
 ライナが合流し「状況は」と問う。
 サイラスは手短に告げた。
「わかった、家の中は私が見てくる。温度耐性があるから」
「頼んだ。おれは火元見て、壊せるもの壊すかとか……」
 ライナは火元に接する家に入る。壁から熱を感じた。
 口元を布で覆い、中を見ていく。
 鋭い聴覚をもち、音は意識した。
 奥の部屋から身を低くしてやってくるエルフがいる。
 ライナは急いで近づき、自身も身をかがめた。
「動けるか」
 相手はうなずく。目はしっかりしているため、彼女を先に行かせた。
 外に出ると女性は「ありがとうございます」と頭を下げる。
「無事でよかった。冷静に行動しているので安心した」
 ライナは相手の勇気をたたえる。
 隣家も見に行こうとしたが、
「冒険者さん、私たち、いますから」
 と、数人のエルフが声を掛ける。
 ここの住民であり、情報が伝わり、戻ってきたという。
 火の手が上がっている家の住民の無事は確認された。

 エルは周囲の人たちに声を掛ける。
「犯人はわたしたちが、対処します。だから、落ち着いて避難と消火、をお願いします!」
 避難場所には狼のウィルにいてもらうつもりであった。
 ミィアが立ち止まり、言う。
「あの、私のところが今、安全です」
 適宜、超視覚や天眼で状況を見ている。
「ありがとうございます。では、わたしは消火の方に行きます」
「避難してくる方だけでなく、怪我人もありましたら手当できますので、遠慮なく言ってください」
 ミィアとウィルに任せエルは消火活動が始まった場所に向かった。
 エルは風向きを確認し、人々に声を掛ける。
「風は今、こっちに流れています」
 火や煙が流れる方向について注意を促す。
 危惧することがある。
「もし、襲撃者が複数いたら問題です」
 今のところ、襲撃者は刃物を抜いた一人が有力だがわからない。
 火の勢いを考えると、火を付けて、一直線に襲撃するべきところに向かったということもありうる。
 現場を見た後、バケツリレーに加わることも考えていたが、他の家を見て気づく。
 木製の家の周りに妙に乾燥した草や枝がある。
 火の粉が飛んでくると火災につながりかねない。
 エルはそれを集める。どの家にもあるようだ。
「明らかにおかしいです」
 ミィアがいるところに戻ると、ウィルにこの枝などの管理を頼んだ。

 サイラスは火の元を見る。
 家と家の間は一面の炎で、壁を這っている。
 ライナが住民のエルフたちと話しているところに、サイラスは行くと問う。
「壁を壊してもいいか?」
「構いませんが壊せますか?」
 住民が逆に驚いて質問してくる。
 ライナは魔法で火の勢いを止められないかと考えたことを告げる。
 サイラスも消火に使えないか考えてはいた。
 ただ、現在バケツリレーが進んできており、水が次々にかけられている。
 壊すにしても魔法を試すにしても、その動きを止める必要が出てくる。
 サイラスは風や火の動きを見る。
「今はバケツリレーを信じていいか? 火の粉の対応をした方がいいかもしれないな」
 火の粉はそれなりに飛んでいるし、新たな火種になる。土をかけてそうそうに対応した方がいい。
 ライナも消火の状況を見て、
「私は、避難誘導に尽力しよう。襲撃者がいたのもあるし、逃げる場所が限られているからな」
 と告げた。

 ミィアの現状の役割は、避難してきた人たちに声をかけ安心させることだった。
 火災の方から来た人はすぐにホッとしているが、襲撃者がいた方から逃げてくる人たちは火災を見て動揺してしまうから。
 ミィアは都度、安全確保のため広い視界を生かし確認する。
「消火も進んでいますし、あちらの方も冒険者が対応しています。犯人も取り押さえられます」
 安全を見ているという事がわかれば心も変わるだろうと考えられた。
 担架を持ってきたけれども、役に立たない方がいい。
 それだけ大きなけががなく対応できるという事だから。
 消火活動をするにつれ、火に近づきすぎてけがを負うものも出て来た。
 傷に対しヒールを掛ける。
「治せるけがですので安心してください。皆さんのおかげで消火も進んでいるみたいです」
 ミィアが言うように、炎は収まり、鎮火に向かっていた。

●刃
 フロマーシュは「今行きます」と声を掛け、【チャージング】を使う。
 一瞬でも早く到着すること目指した。
 レイラは襲撃者らしい人物を見たら矢で射抜くつもりでいたが、位置が悪くて狙いは定まらない。
 そうこうしているうちにフロマーシュが到着しているため、レイラは家の近くに移動することに専念した。屋内になだれ込みそうな乱闘だと、矢は向けづらい。
 近づく前に、襲撃者の仲間がいることを疑った。
 【暗視】や【ホークアイ】を用いて、家の周囲を見た。
 特に異変はないようだ。妙な枯草と枝の山以外は。

 フロマーシュは交戦も辞さない強い気持ちで臨んだが、灰色髪の女は簡単に取り押さえられた。
 ナツキが肩で息をつきながら、座り込んで「た、助かったよ」という。
 フロマーシュは女に静かに声を掛ける。
「なぜ、刃を向けたのですか? 罪もない人に、刃を向けてはいけません!」
「罪がない! だって、森があるから、森があるから苦しいんだもの!」
 抽象的な返答がある。
 フロマーシュは彼女のいう事を丁寧に聞く。
「フィルエス大森林が何かしたのですか?」
「あの人は必要だからって木を伐りに行って、でも、木の下敷きになって! 罪がないわよ! なのに殺されないといけないの!」
「そうであっても! 誰かを傷つけてしまったら、同じようにつらい思いをすることになります。あなたにも怒りが向けられてしまいかねません!」
「知らないわ! この人がいなくなれば、森は消えやすくなるもの!」
 女は絶叫する。
 レイラはグレイオンスを見る。
 大森林に暮らしていれば名前は聞くし、冒険者としてもエルフ側の折衝役としてよく聞く。
 表に出ることがあるエルフだからと言って、女がいう事は飛躍しすぎている。だから、一つずつ聞いていかないとわからない。
「事故があったということですの?」
「一緒にいた人は事故だっていうわ! 周りの人も親切にするわ! それが本当かなんてわからないもの」
 その里に行かないと状況がわからないような気がしてくる。
 レイラはわかる範囲から話を進める。
「木を切るとき事故もありえますわ」
 女は「それを利用したのよ!」という。
「森がを見て悲しくなるなら、なくしてしまえばいいって! 火を付ければ森は消えるわ! でも、消されてたら終わりだもの。なら、助けを求めづらくすればいいって考えたわ。好きなことをすればいいって教えてくれたのだから、好きなことをしてみただけだわ!」
 フロマーシュが「教えてくれた、ですか?」と返す。
 レイラも「共犯者がいるということですの?」と眉を顰める。
「共犯者? 違う! あの声は、私のためにって教えてくれたのよ」
 女は嬉しそうだった。
 自分に寄り添ってくれる存在がいるということで安心しているのは明白だ。
 ナツキが立ち上がり、言う。
「爺様……おかしくない? 声って何? それって……」
 グレイオンスは答えない。
 ハルシがロープをもって、来た。
「抑えているのもあれだから、縛っておこう」
「あ、そうですね」
 抑え込んだまま話を続けていたし、素直にフロマーシュは提案を飲む。
「なんで、私が! だって、森なければ! なければいいって」
 女は叫ぶ。

●原因と謎と
 消火も済み、協力しあった冒険者たちが集まる。
「結局どういう状況だったんだ?」
 サイラスが問うと、レイラとフロマーシュが適宜答える。
 加害者たる女の境遇について、ライナは彼女の親しい人が今回の消失の異変にかかわっているのではと想像もしていた。そうでなかったようだが、親しい人を失うことは、つらいとは理解できる。
「奪われた……。それにしても、声とは……」
 ライナは【ハイアイヴ】からお告げを聞く巫女の存在が脳裏によぎる。
 ハイアイヴのお告げがどういうものか、姿がどうかなどは、氏族によって異なる。
 お告げを受けて行動したというようにもとれそうだった。
 何にせよ、情報は不足している。

 ミィアは縛られている女に声を掛けた。
「あの……お怪我はありませんか?」
 女はミィアを見た直後、ツンと顎を逸らした。
「念のため……【ヒール】と【聖別】を掛けておきますね」
 と、ミィアは言うが、彼女は反応しなかった。
 フロマーシュは困惑する。
「先ほどまで話をしてくださいましたが」
 心変わりしたのだろうかと。
 ハルシがため息をつく。
「まぁ、頭が冷えているというより、怒り心頭中じゃないの?」
 エルは「そういこともありえます」とうなずいた。
「つかまったときは、勢いでしゃべっていた、ということ、です?」
 ナツキが「はいはーい、私もけがしているから治して」とミィアをつつくのだった。

 ライナはグレイオンスに言う。
「死者は出ていない。できれば、穏便に済ませてやってほしいと願う」
 グレイオンスはそれに対しては明言はしない。
「彼女の里に状況を確認する」
 ライナは「確かにそうだな」と同意する。
 グレイオンスは「異変も起こっている可能性もあるからな」とも言った。
 レイラはうなずいた。
「事故が起こっただけでないかもしれませんものね」
 グレイオンスは一同に声を掛ける。
「この里にいたというたけで、助けてもらって嬉しく思う」
 頭を下げた。

 この後の調査により、襲撃者の住まいである里はあったし、木を伐る際の事故が遭ったことは事実だった。
 彼女の心情の原因は、木を伐りに行く際の仲間の中で、直前にケンカがあったということだろう。些細な事でのけんかが事故につながったという風に。
 事故に見せかけて殺すということは否定した。
 なお、彼女に森を壊せばいいと告げたものについてはわからなかった。

マスターコメント

 ご参加ありがとうございます。  里に寄った理由もあって、なるほど、って思いました。  なお、各所の対応につきまして、皆さんのおかげで状況は最小限に抑えられました。  ご縁があればお会いしましょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜8人

2022年05月31日 17時41分00秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ライナ・フレイヴァルツ

    キャスター、ライナ・フレイヴァルツだ。 近頃起こっている事件に関連して、何か私の体験が手掛かりになればと思い 最古老の一人であるグレイオンス様に話を聞こうと出向いた所だったが…。 火の手もあがっていれば、何やらもめている様子もある。 いったいこれはどうした事か…。 里の者の安全を確保することと、灰色の髪のエルフを抑え込む者を 並行して分担することが必要になりそうか?

  2. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    ウォーリアのフロマーシュ・ダイヤドロップと申します。皆様よろしくお願いいたしますっ! 今起こっている事件…ライナ様の身に降りかかった事にも関わりがありそうな感じがありました… ともあれ、里やグレイオンス様達、そして皆様の無事をお守りできるよう、できる限りのことをしていきますのでっ!

  3. レイラ=ルナフィニス

    シューターのレイラですわ。よろしくお願いしますわね。 故郷の里に用があった帰りでしたが…巻き込まれちゃいましたわ♪ ライナさんがおっしゃるように、里の方々の安全確保をする方々と灰色の同族さんをなんとかする方々の二つの班を、大まかにでも分けて取り組んだ方がいいと思いますわ。 余裕があれば消火も…と考えましたが、自警団の方々も里の方々の避難に行かれているでしょうし難しいかしら。 わたしはどちらの班でもかまいません。

  4. エル

    エル、です。…シューター、です。 どうぞ、よろしく。 灰色の髪のエルフさんと、里の安全確保で分かれるので、いい、と思います。 できたら、消火もできるといい、です、けど…。 里の住民の方は自警団などもいるので、避難や消火など分担して行動していくかも、なので。 それを手伝う、っていうのも、できる、かも? でも、まずは、パニックを押さえる方法が、要りそう、です、ね。

  5. ライナ・フレイヴァルツ

    成立したようだな、来てくれてありがとう。 マーシュにレイラさんにエルさんもよろしく頼む。 私は安全確保の方の班に行こう。 ある程度安全確保が出来、自警団のみであとは何とかなるようなら 灰色の髪のエルフを抑えに行くのを手伝う形で考えている。 消火活動に関しては、一応ダメ元で氷嵐でも使ってみようか? マーシュには灰色の髪のエルフを取り抑える方にいってもらえたら助かるよ。

  6. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    レイラ様とエル様も来ていただき、ありがとうございますっ! 改めまして、皆様よろしくお願いいたしますっ! かしこまりましたっ! それでは、私は灰色の髪のエルフの方を抑え、皆様をお守りして参りますっ! できる事なら傷つけずに、説得もできればいいのですが… また、より確実に抑えて守れるよう、 シーザーロアを使ってしっかり引き付けていきますのでっ!

  7. エル

    あ、こちらこそ、どうぞよろしく、です。 >消火活動に氷嵐 そうですね。凍ってくれれば火が消える、かも。 ええと、わたしは、安全確保の方に行かせてもらえれば、と思います。 まずは避難誘導、その後消火、な感じ、です、か?

  8. No.8

    サイラスだ、よろしくなー とりあえず安全確保側に回ろかと 必要なら建物壊して延焼避けと、水出す汎用とか、カリスマ辺り持ち込もかと

  9. ミィア

    ヒーラーのミィアです。 怪我した人たちの回復にまわります。 よろしくお願いします。

  10. ライナ・フレイヴァルツ

    サイラスさん、ミィアさんも宜しく頼む。 >安全確保、消火活動 そうだな…まずは避難誘導をしたいが、円滑に行う為にも自警団を落ち着かせることも必要だ。 最前線に立ち絶対に命を救うという姿勢や、カリスマがあればパニックになっている自警団も 落ち着きを取り戻す筈。 消火は正直、後になるか先になるかは分からないが… 安全確保が先であろうと消火が先であろうと問題ないかと思う。

  11. レイラ=ルナフィニス

    安全確保の方が多いようですので、わたしは灰色のエルフさんを抑える方へ行きますわね。 フロマーシュさんはよろしくお願いしますわ♪ まずは言葉で宥めようと考えています。武力行使は奥の手ですわね。 もし力で抑えることになった場合は…。 精密射撃による真ハーツベインショットかグラヴィティボルトを状況で使い分けますわ。 あ。傷はヒールで治せますが専門家ではないので応急処置どまりですわね。

  12. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    サイラス様とミィア様も来ていただき、ありがとうございますっ! そして、レイラ様は加勢していただき、重ねてありがとうございますっ! こちらこそ、よろしくお願いいたしますっ! 私は抑えながら、洞察しつつ説得していこうと思いますっ。 ヒールでの回復は、私もしていきますのでっ!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0