はじめての田植え

馬車猪

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シナリオID:2170

オープニング

「最近の貴族の子は食べ物の大切さを分かっていない!」
 激オコである。
 王都のレストランからの引き抜きにも応じずひたすら食堂の店主(おばさん)を続けて来た料理人が、普段は温和な顔をぷんぷんさせている。
 彼女(おばさん)には何の権利もない。
 料理を残すだけでなく料理で遊んだ学園生(貴族生徒)から馬鹿にされてもいる。
 だが、人間関係は上下以外にも存在するのだ。
「あの人が?」
 在学中に彼女の世話になった(偏食を治してもらった)領主貴族が誰が迷惑をかけたのか調べ。
「彼女が怒るなんてよほどのことだぞ」
 顔馴染みの古参教師が情報を拡散し始める。
 問題の貴族の子等が気付かないうちに、包囲網はとんでもない規模で完成していた。

●
「ようこそ体験授業へ!」
 体格の良い教師が笑顔で学園生(貴族生徒)を出迎えた。
 冒険者に護衛というより護送されてきた少年少女は、これから何をさせられるのか考え一部は怯えて一部は怒ってもいる。
「今日は食料を育てる大変さと大切さを学んでもらう!」
 この教師、うまれも派閥も貴族派ではあるが今だけは食堂店主(おばちゃん)派である。
 筋肉を育てるための食事の恩は大きいのだ。
「つまり……田植えであるっ!!」
 泥の中に踏み込み、泥で手を汚しながら苗を植えろ。
 都会暮らしの平民でも戸惑う内容に、当然のように抗議が続出し……急速に衰える。
 教師が取り出した書類に、貴族派貴族や貴族派教師の名前がずらりと並んでいたからだ。
「この方々も君達には期待している」
 だから逃げたら社会的に殺す、と目だけは笑っていない笑顔で断言するのだった。

●
「依頼の紹介です」
 冒険者ギルドの職員が、パンクリアース学園からの依頼を解説する。
「体験授業で田植えを行うのでその補佐を……」
 えっ、という戸惑い声が複数聞こえた。
 田植えは稲作の一部であり、稲作はエラトゥーン都市同盟があるフェアドゥキア平野で行われている。
 王国でも王都でもない。
「場所は王都近郊の試験農場です」
 職員の説明は淡々と続く。
「そこまで貴族出身の学園生を十数名連れて行き、脱走しないよう見張るのが今回の依頼内容です」
 多少手荒く扱っても問題ないと文章で了承を得ていますと、職員は貴族や大商人の署名がずらりと並んだ書類を広げて冒険者に示す。
 うわぁ、と呆れたような感心したような声が複数生じる。
「今回、学園の教師も同行しますが稲作に詳しくありません。試験農場の農家も知識はあっても子供に教えるのには慣れていないようで……」
 知識と実践に自身があるなら冒険者が教師役をしても構わない。
「試験農場側も米の需要を増やしたいという思惑があるようで、かなりの無茶でも聞いてくれるそうです」
 狭い田圃でじっくり植えさせてもよし。
 広大な田圃に植える過酷な授業にしても構わない。
 護衛や授業に問題がないなら、冒険者自身が田植えを行っても全く問題ない。
「授業の最後に、今回植えられる米と同じ品種の米を使った料理が……冒険者が関わらない場合はおにぎりが振る舞われます」
 疲れた体にはきっと効く。
 米普及の絶好の機会なので料理人として参加する冒険者も大歓迎だ。
「貴族生徒を相手にするので大変な依頼になると思います。ですが報酬は多めですので、参加をご検討頂けると嬉しいです」
 職員は、真顔のまま深く頭を下げていた。

解説

●目的  貴族生徒相手の田植え体験授業を成功させること ●場所  水が張られた田植え前の田圃  王都の大商人の出資により成り立つ試験農場です  合計で5000平方メートルまで田植え可能です  稲の苗は5000平方メートル分用意されています  田植えが行われなかった場所は、翌日以降に農家が田植えを行います ●生徒 ・料理で遊んだ貴族生徒  実家の爵位も派閥も関係なく連れて来られました  本人達にとっては日常用の服を着ていますが農作業には向いていません ・巻き込まれた貴族生徒  巻き込まれただけです。実家が下級貴族です  運動用の服を着てきてはいますが田植えで何をするか分かっていない者が大部分です ・上級貴族出身の貴族生徒  冒険者が働きかけ等をしない場合は体験授業に参加しません  料理で遊んだ者は「料理で遊んだ貴族生徒」として強制参加です ●他  調理場所、米や米以外の食材、体を洗うための水や場所など、冒険者が要望すればスポンサーにより素早く大量に用意されます  騒動の発端となった店主は、騒動に気付かず学園で料理を作っています

マスターより

 リクエストありがとうございます!

リプレイ

●
 長衣(ローブ)の上からでも筋骨の凄まじさが分かるリザードマンが貴族生徒達を見下ろしている。
 物理的にであって精神的にではない。
 この子等はこれから地獄を味わうんだよな、と加工前の食用牛に向けるような視線で態度だ。
(リザードマン冒険者で数少ない真っ当な善人を魔王に変える真似するとはなー)
 まだ逃亡阻止の必要はないので時間に余裕はある。
 サイラスは農作業(稲作)用の長靴と作業着の準備と確認を始める。
 残念ながら、サイラスの装備の意味に気付いた生徒は少数派であった。
「――静粛にッ!!!」
 その声は穏やかなのによく通る。
 聞いた瞬間鳥肌が立ち背骨に沿って悪寒を感じた意味を理解した生徒はいない。
 ただ、穏やかな表情のハリス・アル・ターミルから何故か(危機感で)目が離せないのが現実だ。
「皆様は貴族との事ですが……」
 殺気という単語で表現するには全く足りない強さと濃さの思念が、20人近い貴族生徒を呑み込み逃さない。
「万物の礎たる糧を軽んじる者の血が尊いとは私は思いません」
 礼儀も阿(おもね)りも意味しない微笑みがあることを初めて知っても手遅れだ。
「従って、単に『心得違いを正すべき生徒』として扱います。そのつもりで」
 水にひたされた濃い土のにおいが、そよ風に運ばれてきていた。

●
「あ……はは、お手柔らかにね――ハリスさん」
 見上げるトゥーリは人間としても教育者としてもハリスを信用している。
 その上で、気合いの入り方が凄すぎるのに戸惑っている。
 うなずいて応えるハリスはいつも通りに頼もしいけれど、尊敬に加えて男女の恋愛としての思慕も抱き始めた相手の余裕のない(文字通りの全力な)姿を見るのは少し心配でもある。
 どうしよう、と無意識に視線を動かすと生徒の中に見知った顔を見つける。
(フェイサルさん!)
 ハリスの友人繋がりである医家にして戦士は、目だけで任せろと伝えてくる。
(うん!)
 好きなひとと頼れるひとが近くにいることに安堵し、トゥーリは授業のための準備を進めた。
「程々にな、ハリス――いや。お願いします、先生」
 生徒よりもハリスよりも年齢も体格も上のフェイサル・セイフが、徹底して生徒として振る舞い文句一つ言わない。
 理想の生徒となる事で貴族生徒達を誘導する。
 対抗心を煽れそうな生徒にはことさら見せ付ける。
 彼らがこの場で取るべき態度の正解を示すことで、教師側の負担を軽減させていた。
(運動場の土ならまだしも泥まみれにされそうなら都市出身の平民でも嫌がるのだ)
 今日の課外授業は刺激が強烈なのだと冷静に判断した上で思い切り踏み込めるのがストレガ・L・リベルガストラというゴブリナだ。
「貴族とは統べる者であり、国から命を受けて領地領民を護る事が仕事であり、領民から税(小麦や米)を取り立てる者」
 授恵者である以前に研究者であるストレガは、政治的信条の主張ではなく学問の伝授を行っている。
「逆に言えば領民が米(主食)を作らなければ領主も飢える。国も飢える。食わせてもらっている(個は代替可能でも集としては代替不可能な存在)なのだ」
 領主候補であるなら、王党派も貴族派関係なく理解できるのが最低限の資質だ。
「領主の子が自分達が作った食料を無碍に扱うと噂が立てば領民は憤慨するのだ」
 顔にも口にも出さないかもしれないが、間違いなく行動にあらわれる。
「罰を与えて働かせたりすればいいと思ったのだ? そういう者を『圧政者』と呼ぶのだ」
 使えない部下(下級貴族)は上司(上級貴族)にも切り捨てられる。
 心当たりのある生徒の顔色がひどく悪くなる。
「これは領民の苦労を知り、善き統治を行う貴族を育てる為の授業であり、汝等の親達も通ってきた道なのだ」
 ここまで強烈な道ではなかったかもしれないけど気にしないのだ、と内心思いもするストレガであった。

●
 巨大な鏡の如き平面が、そよ風により微かに揺れる。
 田植え直前の田には確かに美があった。
「見事ですわ」
 シリアス顔で決めるリリリリスは頑丈な作業着に着替え……てはいない。
 気品と清楚と華憐を兼ね備えたリリリリス本人に負けないドレスアーマーを着こなし、優雅な足取りで田圃へ近づいていく。
(見知った子はいませんわね? いませんわね?)
 実家の没落前も後も派手に活動しているのでリリリリスの顔を知っている者は多い。
 仮面で隠した美麗な顔に、結構な焦りの色が滲んでいる。
 そしてこの状態でも全力前進できるのがリリリリスだ。
「私の高貴で可憐な勇士を見てくださいませ!」
 予想以上に柔らかな泥にブーツが滑る。だが圧倒的な身体能力で倒れず済ます。
(あっ)
 しかし装備(主に木の大剣)の重さが泥を罠に変える。
 爪先だけ深く泥にめり込んで、カリスマすら感じられる見た目と気配のまま泥水の中に叩き込まれた。
 それでも彼女はへこたれない。
 あくまで優雅に立ち上がり、滑らかな泥で顔からドレスまで覆われたまま高らかに宣言する 
「さぁ! 私を見習って皆様もそのまま!!」
 生徒達が、顔に冷や汗を浮かべて1歩後退した。
「なぜ来ませんの??」
 小首を傾げたリリリリスの背を力づけるように軽く触れ、フェイサルが率先して田圃へ入り腰を屈める。
 容器から稲の苗を取り出し少し植えては少し移動しまた植える。
 泥で体が汚れるだけでなく、体の動かし方を知る人間なら非常に体に負担がかかることが分かる苛酷な労働だ。
「多く植えても根付かねば無意味です。苗の扱いは丁寧に!」
 ハリスは丁寧に、分かり易く、そして容赦なく教える。
 知恵も体力も精神力もあるフェイサルに対しては特に苛酷だ。
 ハリスの態度は丁寧なままなのに、平民生徒を虐め慣れている悪質貴族生徒でも逃げたくなるほど執拗で要求水準が高い。
「先生、植える深さはこれくらいで良いのですか」
「それはですね……」
 水面や土や苗の状態に言及しつつ具体的な深さと苗への負担まで指定される。
「なるほど、より深く。かつ余計な力を入れずに? わかりました」
(分からないよ! と生徒の思考が一致する)
 解放されるまでの数分が、通常の授業1つ分にも感じた。
「今回の私は生徒側だ、教えを乞う以上は先生と呼び指導を受けるのは当然。……ところで、君達貴族の社会は上下関係や礼節には厳しい物と思っていたが。違うのかね?」
 鱗も服も泥に汚れ、多くの新(農業)知識を身につけるため精神的に疲労した状態でフェイサルが振り返って言う。
 冒険者を軽視する気配は消えたが、怯えの気配が強くなっていた。
(短時間で一定水準まで身につく良い授業だが)
 フェイサルは考える。
 ハリスの気合いは良い方向にも悪い方向にも影響している。
 フェイサルのような熟練冒険者並みの気力体力がある生徒にとっては最高の授業だ。
 授恵者でなくても気力体力に優れた生徒にとっても良質ではある。
 が、並かそれ以下の生徒にとっては苦行であった。
「先生、もう一度教えて頂きたいのですが」
 だからフェイサル自身は理解した内容をもう一度質問する。
 体を大きく動かし貴族生徒の五感を通して理解させるつもりだ。
「ええ、何度でも質問して下さい!」
 ハリスの授業は、まだ始まったばかりだ。
(ハリスさん……)
 食べ物で遊んだ貴族生徒にオコだったルアンナ・ミュラーは、オコの桁が1つ違いそうなハリスを見て冷静になった。
 だってこれ以上教育側が増えると虐めになってしまいそうだ。
 要するに「あ、ここは私の出る所じゃないな……」である。
 だが大人しく縮こまったりはしない。
 ルアンナはパン屋の職人であると同時に経営者だ。
 米粉パンも当然のように扱っていて、職人としても経営者としても知りたいことは沢山ある。
「この田は石がないから素足で入れるよー」
 試験農場の農家の呼びかけに、ルアンナが真っ先に応えて素足で足を踏み入れた。
 (((;'∀')))
 緑の目が軽く見開かれ、動揺が顔に表れる。
 ぬるぬるの泥が指と指の間を抜けて足の甲まで届く。
 姿勢を少し変えるだけで泥が動いて新たな感触がうまれる。
「し、しかし慣れてしまえばこちらのもの」
 泥が付かないよう髪を清潔な布で覆い、農家に渡して貰った器から苗を取り出し泥の中に植えていく。
 ((('∀')))
 指越しの感触も独特だ。
 だが動揺は最初ほどではない。
 ルアンナの内心を無視すれば、一生懸命に田植えをする少女という絵になる光景になっていた。
(飴ですか……)
 シルク・メイプルリーフが腕を組んで悩むと、男子生徒と一部女子生徒の顔が赤くなる。
 薄手の体操着では豊かな胸を隠せない。
 生命力に溢れているのは下半身も同様で、色気と美しさが両立した体の線は価値観と性的嗜好に大きな影響を与えてしまう。
「せっかくですから素足でいっちゃいましょう」
 少し跳ねた泥が染みのない艶めいた肌に付着するのは冒涜的であると同時に蠱惑的だ。
 ハリスが少し困った顔になるほど授業が混乱する。
「泥は怖くないですよー」
 引っ込み思案そうな少女の腕を引いて田圃へ導く。
 圧倒的過ぎる戦力差に嫉妬を感じることもできず、少女は夢見心地のまま田植えを始めて半ば無意識に植え続けた。

●
「腰が」
 休ませろ、と言いたくてもリザードマンが怖くて口にできない。
 特に怖く見えるのはサイラスだ。
(今回だけははしゃぐんじゃないぞ。王国に別に縁もゆかりもないし、好意的な物もないし、人間関係と生存本能的にハリスさん側の味方するけど精神的に殺す気まではないからな)
 貴族生徒が逃げようと、または手を抜こうとしたタイミングで攻撃術をぶっ放す。
 もちろん絶対に中(あ)てないよう注意はしているが被せている幻影が凶悪すぎる。
 シルクが宥めて落ち着かせる工程が必要なほどだ。
(水とか塩、一応見学する人とか用に日除けとか、そういう生命活動に必要なものとかは出して問題は起こらん様にするけど、ハリスさんに殺しに来られたくないから助けるとか逃すとかしないよ?)
 ハリス本人が聞けば礼儀正しく抗議されそうなことをサイラスは考えているが、今のハリスは迫力がありすぎるので仕方がないかもしれない。
(どうしたもんかね)
 敵を仕留める方がずっと楽だなと感じつつ、サイラスは重い荷物を背負った上で油断なく中(生徒)と外(外敵)を警戒していた。
 ハリスは指導を丁寧にするだけでなく生徒の理解度と集中できているかどうかもしっかり観察している。
(シルク殿の指導が……飴にはなっている?)
 苛酷な授業の息抜きにも多分なっている。
 生徒の体力と精神力が当初予想より低いと判断して、生徒の付き人に風呂の準備を早めるように伝える。
(ハリスさん頑張ってるなー)
 仲間にも畏れられている男に、トゥーリが熱い視線を向けている。
 肉体は地上にあるが、意識は幽体離脱してふよふよ浮きながらハリスを眺める時間を楽しんでいる。
(たぶん逃げる人は逃げるんだろうなあ……。貴族だしね。いきなり言われてもしょうがないよね)
 貴族生徒でなくても逃げたくなる苛酷さだ。
 だがハリスの授業から逃げるなどトゥーリは決して許さない。
(この子逃げそう。あの子も?)
 授恵者である冒険者は幽体離脱中のトゥーリを知覚可能だ。
 指示されたサイラスが移動して退路を塞ぎ、ハリスが穏やかに質問して知識の復習を強制する。
「子供みたいな屁理屈こねないの!」
 トゥーリも肉体に戻って捕獲している。
 まさか縄まで使うことになるとは思わなかった。
(ハリスさん頑張ってー)
 連行しながら心の中で応援する。
 自分自身の目的とは関係ない活動なのに、ハリスの助けになることが、ハリスの近くにいるだけでも楽しく感じる。
 暖かい気持ちになっている理由をはっきり自覚しないまま、トゥーリはこの時間を楽しんでいた。
「いかんな」
 生徒の顔色を確認した瞬間、フェイサルの意識が生徒から医家のそれに切り替わる。
「サイラス」
「指示頼むよ」
 医療ならフェイサルの得意分野だが泥まみれの状態ではできることが限られる。
 フェイサルは大人しくするよう生徒に言って、乾いた地面へ運んで日陰を作る。
「お洒落目的の帽子ではな」
 自身のつば広帽とは違う小さく薄い帽子を見比べ、軽く息を吐く。
 サイラスから渡された適度な濃度の塩水を飲ますと、少しずつ顔色が良くなっていく。
(ハリス、1度休憩させるべきだ)
(そうですね。ありがとうございます、教えてくれて)
 小声で会話し相談を終える。
 あくまで教師(ハリス)が気付いたことにして、体力の足りない生徒達を一時休ませた。
 リリリリスは元気だ。
「オコメは美味しいですわね。美味しい物を実らせると、言うことはこの苗も美味しいと言う事ですわね?」
 こっそり食べてみる。
「これは、前に生えてたキノコよりは美味しいですわ……」
 常人は真似しちゃ駄目ぜったい、であった。

●
 苗が整然と並ぶ田と乱れた田の差は非常に大きい。無論後者が貴族生徒の仕事だ。
「お疲れ様でした! 手と顔は必ず洗ってください。労働の対価はその後です!」
 厳しい授業の後に大げさなほど褒め称え餌(食事)まで勧める。
 ハリスの意図を看破した上級貴族出身生徒もいたが分かっていても耐えられない。
「急がないとなくなりますよ」
 トゥーリが用意してくれた瓶から清水を汲んで手を洗い流す。
「血統の貴賤を抜きに、我々は誰もが支え合っている。1個のパン、1杯の米とて労せずにはできません。皆様が植え整えた田園と、この料理の味と共にそれを想って頂ければ、農民として喜びに堪えません」
 心身が疲れた状態で新たな価値観を塗り込む、完璧なやり方であった。
「ハリスさん!」
「ありがとうございます、トゥーリ殿」
 手作りおむすびを受け取るハリスは、称賛が熱烈なことに気付いて少し途惑っている。
(頑張ったのだ)
 ストレガは赤くなったトゥーリの手に気付き、言葉には出さず目だけでエールを送る。
「最初の苦労だけ伝えても、育つ様子とか収穫した部分を味わう機会がないと足りなくない?」
 サイラスはギルド経由で強い要望を学園に送ることにする。
「今回の授業は、汝等の親の食事の面倒も見た女傑が発起人なのだ。第二の親ともいえる。食に関しては理事長より偉い立場なのだ」
 本人(おばちゃん)が聞けば混乱間違いなしな情報を生徒に吹き込む。
 食育と調理と食堂経営しかできないししないから大勢に信用されていることを生徒が理解するのは、理解できたとしても数年後だろう。
「食は万世共通の幸福なれば、誰もが力を尽くして携わっている。感謝を忘れずに頂くのだ」
 ストレガの後ろではシルクがおにぎりを配っている。
 頑張ったあとの美味しいおにぎりに技術など不要かもしれないが、米の本場以外で調理するのはストレガ(調理の熟練者)と協力しても大変だった。
 ルアンナが菜箸を使って網の上のおにぎりをひっくり返す。
 表面に塗られた醤油がご飯と一緒に焼けて、その素晴らしい香りが厳しく躾けられた少年少女の腹を鳴らした。
「田んぼの土も美味しいかもしれませんわ」
 リリリリスが泥の調理を始めて料理人に制圧されるまで、少し時間がかかった。

マスターコメント

 お疲れ様でした。
ショートシナリオR

ショートシナリオR易しい 報酬:多い8 / 4〜8人

2022年05月19日 20時32分17秒 公開

成功

相談掲示板

  1. No.1

    シスターシルクです 農業は国の礎 故に真剣に挑まなければなりません。 ハリスさんがいらっしゃるということは豊作間違いなしですね

  2. ストレガ・L・リベルガストラ

    ストレガなのだ。よろしくなのだ。 何で貴族派の中でも上も上の方々が怒っているのかまだわからない生徒はいるだろうからそちらから攻めようかと思うのだ。 あと調理するのだ。米料理で希望あればできる限り作るのだ。

  3. ルアンナ・ミュラー

    ルアンナです、早くも満員御礼ですね。参加して頂きありがとうございます! 私のお店でも米粉で作ったパンを扱っていますけど、稲作をした事はないので体験が楽しみです♪ この体験を通じて食べ物を作る事の大変さを学んでもらえれば良いのですが…。

  4. リリリリス

    私(ワタクシ)、リリリリスですわ!!!!!! おこめ!おこめはおいしいですわね!!!! モグモグですわ!! はっ…!!(…おこめを美味しく作れる土…もしかして、美味しいのでは)

  5. ハリス・アル・ターミル

    ハリスと申します。この度は良き機会を頂きましてありがとうございます。 さて、端的に言いまして私は大変に怒っております。 生徒の方々には厳しく当たることになると思いますが、ご容赦下さい(

  6. リリリリス

    厳しいんですの…?(そわ)

  7. No.7

    サイラスだ、よろしくなー とりあえず貴族の普段着クラスで作業するとか地獄かな? まあ汚れた程度なら今回気にしないだろけど

  8. リリリリス

    …では、すこし真面目に…いえ、私はいつでも真面目ですわ。えぇ、えぇ、真面目ですわよ。 >貴族の方々 ……私の家に縁のある方は…きっと居ませんわね。(ふう) 作業着と言うのを着て頂いたほうがよいですわね。私も『そうした方が良い』と思えるように 説得はしようと思いますわ。えぇ、えぇ、説得………になると思いますわ。

  9. フェイサル・セイフ

    フェイサル・セイフだ、今回は宜しくお願いする。 ……ハリス、程々にな(← さて、私は……農業に詳しい、どころか特に熱心な面々がいる以上不要かも知れんが、 万が一の事故などへも備えつつ、その時が来なければ今回は「生徒側」に回ってみたい。 私も一度きちんと学んでみたいと思っていたし、教わる側でも手本になる者は必要だろう。 >服装 動き易く肌の露出は少なく、そして汚れても構わない服装に着替えさせるのは必要だな。 単に作業に適さぬだけでなく、彼らの着る上等な服も「誰かが苦労して作り上げた物」の筈だ。 後は……そうだな、子供の体力も考慮すると帽子など、脱水への備えも肝要だろう。

  10. ハリス・アル・ターミル

    >シルク殿 はは、豊作はともかく心得違いはしっかりと改めて帰っていただきますとも(← ……差し支えなければシルク殿には生徒への「飴」のほうを頼みたく思っております。 彼らも一応は誇りある血筋のようですから、農民から怒鳴られ通しでは鬱屈するでしょう( >リリリリス殿 ああいえ、あくまで怒っているのは貴族の方々に対してです。 リリリリス殿が田植え教室にご参加下さるならば誠心誠意指導させていただきますので( >フェイサル殿 解っております、血が流れるようなことにはなりません。恐らくは(← おお!そちらもご参加頂けますか!ではお手本役などをお願いできれば助かります!

  11. No.12

    飴ですか……なるほど やってみましょう

  12. リリリリス

    >ターミル様 えぇ、えぇだいじょうぶですわ わたくしに掛かればこのくらいの作業、華麗に優雅にこなしてみせますわー!(あふれでるかりすま感)

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0