【帝国】昼に見る夢は夜覚める
空色みなも
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シナリオID:2164
オープニング
「君たちに集まって貰ったのは他でもない……草人狩りを保護して欲しいんだ」
エスタルの冒険者ギルド支部の一室で、集めた冒険者たちを前に受付の青年が声を潜めてそう語る。
シルトラース帝国東部鎮守都市エスタル――この町には今、草人と呼ばれる人々が住人と共に生活している。
帝国滅亡前のかつての隣人や家族たちとして住人に愛される草人は、しかし。
人の姿を模したクリーパーであるという衝撃の事実が判明している。
「それをこっそりと間引いているのが草人狩りなんだけど、どうも昨夜に草人を倒すところを目撃されちゃった草人狩りがいるらしくて」
青年の説明によると、エスタル住人は一種の洗脳状態にあり。
クリーパーである草人を倒すにも、住人を刺激しないよう秘密裏に行う必要があるらしい。
冒険者ギルドは草人狩りに協力する立場にあるものの。
市井に潜んで活動する草人狩りの中には、冒険者ギルドが味方についたことを知らない者もいるらしい。
冒険者ギルドとしても、住人に対して堂々とそうした立場を宣言できないので、いたしかたない部分はある。
今回の事件について草人狩りから報告がないことを鑑みるに、当該の草人狩りもそうした冒険者ギルドと関係を持っていない人物なのだろう。
「具体的に誰かっていうのはまだバレてないみたいなんだけど、バレるのも時間の問題かもしれない」
と青年が言いながらも、冒険者ギルドもその草人狩りが誰かは把握できていない、とのことらしいのだが。
「そこで君たちに、草人狩りを住人たちより先に探し出して保護をお願いしたいってわけさ……君たちも大変だと思うけど、よろしくね」
青年から事件のあらましを聞いた後、冒険者たちは草人狩りが行われた現場へと向かうのだった。
●
まずはということで、草人が殺害されたという現場である路地裏を訪れた冒険者たち。
「草人を殺した犯人は、その後、酒場のあるほうへ逃げて行ったわね」
「私は大声が聞こえたから駆け付けたら、クオラルさんが人を呼ぶ声だったって感じだね」
どうやらキュウ・クオラルという女性が事件の目撃者らしく。
アイ・グランドという男性は後からやってきて現場を目にしたらしい。
「恐る恐る草人の遺体に近づいてみたら『夢は終わり』って書いた紙が置いてあったの」
キュウは事件当夜を思い出したのか、ぶるりと身震いをする。
本来、草人の死体を目にすれば、それが人と異なることが分かりそうなものであるが。
住人が受けている洗脳、というのはそういう性質のものなのである。
「第一発見者が怪しいだなんて言われるかもしれないけど、わたしが草人狩りなら、わざわざ人を呼んだりするかしら?」
「私が草人狩りでも、わざわざ姿を現したりしないよ」
キュウとアイは口を揃えて、自分が草人狩りなら静かに現場を立ち去っていたと主張する。
それも尤もな話ではあるので、冒険者たちは一旦、聞き込みの範囲を広げることにした。
●
冒険者たちは事件現場から十分ほど離れた酒場で聞き込みを行っていた。
酒場といっても、支援物資に含まれる酒の提供場所、という意味合いの場所ではあるが。
「オレが事件当時どうしてたかって? 店を開けていたぜ。客として来てたやつに聞けばいくらでも裏を取れるだろ」
酒場の店主、ユー・クリタスは事件への自身の関与をあっさり否定した。
「僕、昨日も飲みに来てたよ。たしかに店長が店を開けていた」
そう証言するのはズィー・シティ。
この酒場の常連客らしい、だらしない格好をした男だ。
「お前がいつも飲んだくれていて助かったぜ。ずっと営業してたから、離れる暇なんてあるわけないわな」
「草人狩り、怖いよね。どうにかするの、よろしくね」
ユーは注文された酒を運びながら、ズィーは運ばれた酒を口にしながら冒険者たちを見送った。
●
次に冒険者たちが話を聞いたのは、一緒に暮らす二人の女性であった。
その住居は、酒場から十分ほど離れた場所にあった。
「あたしは事件前後の時間、大井戸にいたわ」
その一人がエス・カイラル。
身にまとっているワンピースこそ質素だが、その左耳にはイヤリングが揺れている。
「あたしはドルディーさんに薬を貰いに。ちょうど切らしちゃって」
そしてもう一人のアール・カイラルは、エスに瓜二つの容姿をしていた。
そう、二人は双子の姉妹なのだ。
もし向かい合うように二人が立ったとしたならば、ちょうど鏡映しのように見えただろう。
「それを証明できる人? 薬屋のドルディーさんが覚えていてくれてるはずよ」
「あたしは、ええと」
アールは薬屋に寄っていたと主張していたのだから、そう答えるのも当然か。
エスは昨夜の出来事を思い出そうとしているのか、一瞬、考え込む仕草を見せる。
「お姉ちゃんはトライアルさんに会ったって言ってたよね」
「そうだったわね」
アールに促されたエスも、自身の会った相手を証言する。
「そういうわけだから、ドルディーさんとトライアルさんにそれぞれ話を聞いてみて」
「草人狩り探し、頑張ってね」
エスとアールに見送られ、冒険者たちは次の聞き込みに回った。
●
姉妹の家からさらに十分ほど離れた場所に、薬屋はあった。
「ええ、アールさんなら確かにお越しになりましたよ。なんでも胃がもたれて眠れないので薬が欲しいとかで」
薬屋の主だというディー・ドルディーは、やせ細った翁だった。
羽織った白い上着は着古した様子だが、清潔さは保っている。
「やり取り自体はそんなに長くかからなかったですね。別れた後に事件現場に向かって事件を起こす? あの時間からじゃ無理でしょう。ここから現場まで三十分はかかりますよ」
ディーの話を聞く限りでは、確かに事件の直前までこの場にいた者が、事件を起こすことは難しいだろう。
「それにしても、むごいことをしますよねえ……どうしてこのようなことができるのか」
冒険者を見送るディーの言葉には、悲しみと憤りが入り混じったような、複雑な色が見えた。
●
大井戸は薬屋からもう五分ほど歩いたところに存在した。
「俺がここに居たことをエスが請け負ってくれたんだろ? もちろん、俺もエスと会ったぜ」
このジェイ・トライアルという男がこの大井戸の管理を行っているらしい。
普段から力仕事を行っているためか、その体つきはずいぶんとたくましい。
「五分ほど立ち話をしたぜ。時間的には事件の後になるだろうな。事件を起こした後に駆け付けて来る? そいつぁ無理な話だろうよ」
ここにいた者が事件を起こすなど荒唐無稽な話だと、ジェイは笑い飛ばした。
「俺が思うに、事件を起こしたのは外部のやつじゃねえかな。ここの住人がこんな酷い事件を起こすとは信じたくねぇってのもあるがな……」
しかしすぐに、ジェイは痛ましいことを思い出したように顔を曇らせたのだった。
●
以上が、事前の聞き込みの成果である。
今一度、状況を整理し、どういったアプローチで草人狩りに接触するか考える必要があるだろう。
そのうえで、忘れてはならないことがある。
目的となっている草人狩りの人物は、冒険者たちが協力者であると知らないことを。
エスタル住人は、冒険者たちが草人狩りに敵対してくれると思い込んでいることを。
冒険者たちが草人狩りを保護しようとしていることをエスタル住人に明かすことなく。
草人狩りの保護を達成することが求められている――。
解説
マスターより
リプレイ
「疑惑段階ですが、双子のカイラルさん――エスさんとアールさんが臭いですね」
これまでの聞き込みを整理し、アリッグ・レイダーは草人狩りとして目星をつけた人物の名を挙げた。
エス・カイラル、そしてその双子の妹、アール・カイラル。
「エスさんの証言の際、アールさんが横入した点。大井戸と薬屋が近い点、瓜二つの双子で変装が容易な点……加えてエスさんのイヤリングが片方ない点」
「あたいも双子が疑わしいと思うね。肉親どうしだから口裏合わせもしやすいだろうし、そのイヤリングが片側というのも気になる」
その論拠をアリッグが並べると、ルチル・プルメリア・グレイハーツが頭蓋を被った頭を深く縦に振って頷いた。
「その双子が本当に手を下したかはともかくとして、あまり腕がいい者じゃないのかね。しかし後々、草人対策に大きく動く必要があるとはいえ、住人感情を放置すると不利を招くだろうね」
「何人か怪しい人はいるけど、住み慣れた街で殺しをしながら潜むだなんて、きっと居心地は悪いんだろうな」
ルチルの言葉に、洗脳された住人の中で目覚めてしまった草人狩りの心情に思いを巡らせたか、アウレーリウスが呟きを漏らす。
「……早く探してあげなきゃ。俺たちを味方と思ってもらえるかどうかは別としてね」
「わたしも微力ながらお手伝いいたします」
アウレーリウスの呟きを拾い、ミィアがそっと声をかけた。
もしかするとミィアもまだ正体も知れぬ草人狩りの心を慮っているのかもしれない。
「そうと決まれば、まずは現場検証からしましょう」
ナハト・シュライバーは現場保存として残された草人の死体を検めるべく、その傍らにしゃがみ込む。
草人に傷が存在しているのは背中側、そこを包丁のような刃物でめった刺しにした後が見られた。
周辺を簡単に見渡す限りは遺留品のようなものは無し。
鼻をひくつかせ、鋭い嗅覚を働かせてみたところ――。
「……人の死体が放っていい匂いではないですね」
草人の死体がクリーパーとして放つ嗅ぎ慣れない匂いに、ナハトは思わず顔をしかめた。
「夢は終わり……? 何のことでしょう?」
レイヤ・ダライ=カホールが草人の死体に置かれていたという紙片を前に首を捻る。
「人魚の神の教えに曰く。ケーキも世界も結局、各々のその瞳に映るものである。その瞳を開いていても、いなくても。うつしよは夢、夜の夢こそ……あっ、これ違いますね」
レイヤはこほん、と咳ばらいを一つして。
「なんにせよ、さらに知るべきことも浮かび上がってきましたし、聞き込みをして情報の整理をいたしましょう」
レイヤはとりあえずと言って、事件現場の近くにいたキュウ・クオラルとアイ・グランドを捕まえた。
それに乗じて、アウレーリウスも二人に聞いてみたいことがあると合流する。
「草人殺害事件が起こる前、近くでちょっとした事件とかがあったりはしませんでしたか?」
「んー、ちょっとした事件……特には思い当たらないかしら」
レイヤの質問には、キュウが答え。
「これまでも近辺で草人の殺害とかは?」
「近辺では、ないかな」
アウレーリウスの質問に答えたアイの言葉に、アウレーリウスの耳がぴくり、と動く。
「近辺では?」
「エスタルの中じゃ、他にそういう話があるというのは聞いたね」
アウレーリウスが気になった言い回しについて尋ねると、アイはあっさりと言葉の意味を答えた。
「そうそう、ちょっと訪ねたい場所があるんだけど、地図を描いて貰えないかな? 悪いけど、複数の場所をあたるから分担してお願いできる?」
そこでアウレーリウスはアイとキュウに紙とペンを渡す。
地図に『夢は終わり』に含まれる文字をそれとなく書かせ、筆跡を入手しようというのだ。
「ご協力ありがとうございました。必ず草人狩りを見つけるから」
そして聞き取りの最後に、アウレーリウスはアイとキュウそれぞれに握手を求めた。
差し出されたアウレーリウスの手を、素直に握り返す二人。
(どっちも『微かな期待と微かな不安』か……)
実はその際、アウレーリウスは触れた相手の感情を読み取っていた。
草人狩りを見つける、という言葉に対し期待を抱くのは、二人はシロということだろうか。
だとすると不安を感じるのは、草人狩りという事件に対し抱く不安といったところか。
(残留思念としては……強い恐れのようなものを感じるな)
一方で、アリッグは現場に残された思念を辿っていた。
すでに事件から一晩は経過しているため、感じ取ることができたのは原始的な感情のみであるが。
草人を殺害する、という行為に対して恐怖を抱くのは、草人狩りの正体が一般人であるからだと推量できた。
「どうですか、何か見つかりましたか?」
「ラトの視界も使って探したけど、草人狩りが落としたらしいものは見つからないね。特にイヤリングがないかは注意を払ったんだけど」
聞き込みの間も、ナハトとルチルは遺留品の捜索にあたっていた。
ルチルの手で、捜索を手伝っていた小さな相棒が鳴いている。
「あたいとナハトで探してないってことは、本当にないんだろうね。エスのイヤリングが片側だったのは現場で落としたからかと思ったけど」
ルチルの言うように、エスは左耳にしかイヤリングをつけていなかった。
それは何かしらの意味を持つと考えられるのだが――。
「全ての推測が当たっているもの、とは思わないほうがいいかもしれませんね。いずれにせよ、これも真実の確認作業の一つです。次をあたりましょう」
ナハトはそう言って、酒場へ向かうことを提案したのだった。
●
「ズィーさんも時間に関する証言は特になかったんですよね。ユーさんの証言も、わざわざ印象付けようとするような言葉づかいが気になりますし」
レイヤは酒場に向かう間、そこで証言を行っていた二人の不審な点について整理していた。
「お邪魔いたします」
「おう、いらっしゃい!」
ミィアが扉を開けて酒場に入ると、店主であるユー・クリタスが威勢のいい声を上げた。
「いえ、わたしたちは飲みに来たわけでは。事件についてのお話を伺いに」
「まだ聞き込み続いてるんだね? お疲れ様」
ミィアが訂正を行うと、常連のズィー・シティが労うように声をかけた。
どうやらズィーもまだ飲み続けていたらしい。
(特に店内に怪しい様子はありませんね。包丁がある――というのもお店なら当たり前といえば当たり前ですし)
ミィアは透視能力を生かし、屋内をこっそりと捜索する。
証拠がそれで見つかれば言うことなしであるし、怪しい点が見つからなかったとして、草人狩りの絞り込みの役には立つ。
「調査の一環として、注文書か帳簿のようなものがあれば見せて貰えますか」
「まあ、悪用しないなら、見せてやれるものはあるぜ」
ナハトの求めに応じ、ユーは自身で記したという帳簿を見せた。
これも筆跡を確かめる目的だ。
見れば、ズィーにはやはりアウレーリウスが地図を描かせ、握手を求めている。
アウレーリウスがユーとも握手をし、その反応を確かめたところで、冒険者たちは店を出た。
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「そういえばクリーパーの血痕とか残っていればよかったのですが、あの草人についてはやはりクリーパーと言いますか、ヒトみたいな血は出ないんですね。他の草人まで同じかは分からないんですけど」
レイヤは洗脳された住人には草人の血痕があっても見えていないだろう、と思っていた。
しかし、事実はもっと複雑怪奇で。
住人たちは『血が見えないということのおかしさが、見えていない』のだ。
「次は薬屋ですね。お邪魔します」
「どうぞ、お入りください」
ミィアが薬屋の扉をノックすると、中から主のディー・ドルディーの声がした。
冒険者たちは最も疑わしい双子の調査を最後に回し、先に薬屋へ寄ることにしたのだ。
「ひとつ聞かせてもらってもいいかい? 前に証言してもらったとき、なんで事件を『むごいこと』と表現したんだい?」
薬屋に招き入れられたルチルは、気にかかっていた証言についてディーに尋ねる。
「草人を殺すだなんて、それだけで可哀想なことじゃあございませんか」
「なるほど、ありがとう。それならおかしなことはないね」
ディーの言い分に、ルチルもひとまず納得したようだ。
もともとは、特に聞かされてもないはずの殺害方法をディーは知っているのかと疑っていたのだ。
「帳簿まで見せて貰ってありがとうございます」
「草人狩りは俺たちが見つけるよ」
筆跡についてはナハトが調査し、アウレーリウスがディーの手を取って声をかける。
一通りの調査を終えた冒険者たちは、薬屋を後にした。
●
「ここまでの方は特に怪しい様子はありませんでしたね」
「となると、いよいよ双子のお二人の線が濃くなってきましたね。そろそろエスさんとアールさんについて探りを入れてみてもいいかもしれません」
ミィアがこれまでの情報を整理したメモを書きながら話しかけると、アリッグも自らの考えを口にする。
そうこうしているうちに、大井戸が見えてきた。
そこには管理人のジェイ・トライアルが掃除をしているのが見える。
「そういえば事件とは関係なく、ちょっと聞きたいんだけどさ。昨晩エスに会ったとき、エスは耳飾りをしていたかい?」
「ああ、していたぜ」
ルチルの質問へ、ジェイが返答する。
「それは、両耳に、ですか?」
「いや。いつものように、左耳にな」
ナハトの問いのほうに、ジェイが答えた時。
冒険者たちは一つの思い違いに気付いた。
エスが片耳にしかイヤリングをしていないのは、事件の際に片割れを失くしたからではないか、と想像していた。
しかしエスは常日頃から、左耳だけにイヤリングをつけていたのだ。
「……そういえば、双子のお二人はそっくりなのに、どうしてジェイさんがお会いしたのはエスさんだと?」
レイヤもエスとアールが変装により誤認を起こすことでアリバイを作ったと目星をつけていた。
しかし、具体的にアールが自身をエスと見せかける方法までは予測がついていない。
そこで、思い切ってジェイに尋ねてみることにした。
「なぜって、そりゃあ。もしあれがアールだったら、イヤリングは右耳だろ?」
ジェイからこの言葉を引き出したレイヤは、あ、と思わず言いそうになるのを堪えた。
そういえば、アールを見た時に抱いた印象は、服装を含め『エスと鏡映しのよう』であった、と。
「……ご協力ありがとうございます」
アウレーリウスが例の儀式をジェイに対して済ませたところで。
冒険者たちは急ぎ、双子の家に向かった。
●
「どうでした?」
ミィアはエスとアールの姉妹の背中が扉の向こうへ消えたのを確認し、二人との握手を済ませたアウレーリウスにそっと問いかけた。
「純粋な不安を感じたね。俺たちの仕事がただ期待されてないってだけかもしれないけれど」
「筆跡のほうを調べてみましたが、かなり近いと思います」
アウレーリウスが答える間に、ナハトも双子に書かせた地図の文字を調べ上げていた。
「ここはあと一押し、僕が幽体離脱で二人の会話を聞きに行きましょう」
そう言ったアリッグの体から、魂が抜けだした。
この魂は授恵者である冒険者たちからは見えているが、予想通り双子が一般人なら知覚されないはずだ。
それはそれとして、念のため魂は身を隠して行動するけども。
「その間、あたいが体のほうを警護しよう。それと部屋内へはラトをつけるよ」
ルチルはアリッグのもとへ残り、代わりに感覚を共有した小さな相棒を双子の家に侵入させた。
「覗き見、聞き耳ならわたしにもできます」
ミィアも透視能力を発動し、鋭い聴覚を働かせる。
そして冒険者たち三人が聞き取った姉妹の会話は――。
「どうする、お姉ちゃん。あたしたち、きっと疑われてるよ? このままじゃ――」
「でも今更どこにも行けないわ。それに――みんなの目を覚まさなきゃ」
アールとエスのやりとりが聞こえたルチルとミィアは、顔を見合わせて頷き合った。
アリッグの体はただいま抜け殻なので、頷くことこそできないが。
そこでルチルは、部屋の天井に張り付かせていた相棒に、咥えていた紙を落とさせる。
「お姉ちゃん、これ――」
「そうだったの――」
紙片に気付いたアールとエスの姉妹は、そこに書かれたメッセージを見て目を見開いたのだった。
●
「戦うことを選んだきみにこんな事を言うのは筋違いかもしれないけど、逃げたっていいと思うよ……嫌だったよね、こんなの」
アウレーリウスが涙ぐむエスとアールに優しく声をかけている。
結論として、双子の姉妹はまさしく草人狩りであり、冒険者たちにより保護された。
姉妹が読んだ紙片には、草人がクリーパーであることを冒険者たちが知っている、ということが書かれていた。
また、集めた情報から姉妹が草人狩りであると考える論拠も記載。
そして冒険者たちが受けている依頼は、草人狩りを罰するためのものではなく、保護するためであることが記されていた。
これを渡したうえで冒険者たちが姉妹に接触したため、説得はスムーズに進んだのだ。
ちなみに『夢は終わり』のメモを草人の死体に残したことについて。
ルチルが尋ねたところ、少なくとも姉妹にとっては他の草人狩り事件の模倣であり、もし仲間がいた際に伝えるメッセージを意図したものだという。
また、自分たちのように、それを見て『夢から覚める』者がいれば、との祈りも込めて。
「お二人は外部の草人狩りに脅されて、このような凶行に走ってしまったようです。彼女らを脅した草人狩りはもうこの街にはいないようなので、彼女らには草人狩り探しに協力して貰うため、冒険者ギルドで身柄を保護します」
というのは、ナハトによって住人向けに行われた説明だ。
「悪いのは黒幕の草人狩りなんです。もし脅しを無視すれば、今度はお二人の身が危なかったでしょう」
同時にアリッグも今回の事件に黒幕がいることを強調する。
脅されてやったこと、としたことで住人たちも姉妹に対して多少は同情を感じたのか、大きな混乱は回避された。
「住人の方々も夢から覚めれば、お二人のことを正しく理解してさしあげられるでしょうにね」
「そう考えると、わたしたちこそが夢を見ているのではない、と言えるのはなぜなのでしょうね。人魚の神の教えは、そうした驕りに対する戒めなのでしょうか」
ミィアの呟きに、ふとレイヤが漏らした疑問。
夢を見ている間は、それを夢と気づけない。
冒険者たちが見ている世界と、住人たちの見ている世界。
果たしてどちらが空蝉で、果たしてどちらが夢なのか。
「僕たちにできることは、僕たちが夢を見ていないと、信じる。それだけでしょうね。せっかく草人狩りの姉妹を保護できたのですから、ここは喜んでおきましょう」
ナハトは緊張の糸が切れて泣き崩れる姉妹を見ながら、深い息を吐いたのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜8人
2022年05月16日 21時18分52秒 公開
相談掲示板
さて、人数はまだそろってませんが……揃う事を願いまして。 ヒーラーのアリッグ・レイダーと申します! 皆様よろしくお願いしますね! さて、OPを見る限りですが……。 草人狩りについては、 エスさんとアールさんがどうにも怪しい感じがしますね。 エスさんが証言をする際、横からアールさんが人物についての助言をした点。 大井戸が薬屋から5分も歩けばたどり着ける点。 そして何より、瓜二つの容姿の双子である点でしょうか。 アールさんがエスさんに変装したと考えれば、 大井戸でのアリバイは簡単につくれますからね。 とはいえ、あくまで一番怪しいというだけですけど。 今回の調査で難しいのは、裏付けと味方だと信用させる事ですかねぇ。 裏付けは、スキルや現場の検証なんかで色々と見つかりそうですが、 僕達が味方だと信用させるには、信じてもらえるような材料が必要かもしれません。
わたしもあの双子が草人狩りかと思います。 アリバイがくっきりしすぎている。 聞き込みとかで詳しいことを調べてもいいかも。 あとはこのズィーさん?もちょっと怪しいでしょうか。 酒場の店主さんはずっと仕事をしてたので、時間的な証言はないんですよね。 ただ、みんな証言しか証拠がないです、実行者は一人でも、協力者はいると思います。 凶器の類とか見つかれば完璧なんですけど。 問題は…草人狩りの味方であること、どうやって伝えましょうか。 なにか、草人狩りにしかわからないメッセージみたいなものがあればいいんですけど。
シューターのナハトです、よろしくお願いしますね。 証言でいくつか気になる所はありますが、確証を得る為には物証があった方が良いでしょう。 ご丁寧にも遺体に書置きを残していったようですし、僕はそのメモや犯行現場周辺で痕跡を追いたいですね。 信用取りですが、草人狩りと冒険者達だけの場で草人がクリーパーであると発言するのはどうでしょうか? 洗脳状態のエスタルの住人からは出ない言葉だと思うんですけど。 もしくは住民に対して草人狩りに疑惑の目が向くようにしておいて、その上で草人狩りに助け舟を出すマッチポンプを仕掛けるか。 草人狩り発覚後の住民たち及び草人狩りへのフォローですが、外部の草人狩りをでっちあげて、そいつに脅されて草人を害してしまったようだから犯人捜しの為にも罪を償って貰う為にもギルドで身柄を預かる、なんて説明で納得して貰えるでしょうか。 現状思いついた案はそれ位なのですが、他に良い案があれば乗りたく。
こんにちは、俺はアウレーリウス。 実践経験はまだ少ないけど、人探しならもしかしたら手伝えないかなと思って仕事を受けてみたんだけど……出来る限り全力を尽くすよ。 >草人狩り? 確かに双子さんは気になるね。 もし協力者の助けを得ながら草人狩りを行ってるんだとしたら、今のところそれらしい理由があるのは彼女達だけだし… 大井戸の管理人のジェイさんも何か知っているようだったけど、以前の草人殺しについて何か思うところがあるとか、かなぁ…? >書き置き これ、どうして現場に残していったんだろう? 住民達へのメッセージ……かもしれないけど、それにしてはあまり効果が無さそうというか。 難しそうだけど、なにかしらの理由を付けて事件関係者の方に文字を書いてもらって、筆跡でメモを書いた人を特定する事は出来るかも、って考えたんだけどどうだろう? >草人狩りへの信用 ナハト君のクリーパーの話題を出すって案なら拗れも少なそうだね。 ……できればだけど、草人狩りと街の人達の関係性があまり拗れないようにできればいいな。 もし他の草人狩りの存在を知っているなら、冒険者ギルドに協力してくれている草人狩りの名前を出すのも手かも? >住民達へのフォロー 今回の草人狩りと彼らの関係性を丸く納めるのと同時に、ここの住人同士が疑心暗鬼にならない方法があるといいんだけど… 草人狩りの実行犯の正体は伏せて保護、は難しいかなぁ。 住民達が草人狩りが誰かを知ったらその親近者を疑いかねないし。 そういう方面でも、外部の草人狩りのでっち上げは良さそうかなって俺も思ってるよ。
無事に依頼が成立しましたね。改めてよろしくお願いします! >草人狩り 今の所怪しいと感じるのは、 双子とズィーさんという感じですかね? ジェイさんは、可能性があるとしたら協力者って感じもしますね。 何にせよ、双子のエルさんとアールさんがお互いに協力できるのが、 一番、狩りにおいて都合がいいと思うんですよねぇ。考えも共有してそうですし。 >信用 草人=クリーパーという言葉で揺さぶるのは良さそうですね。 そのうえで冒険者はクリーパーを排除するのが目的と説明し、 最終的に草人狩りの話と草人狩りの排除は「フェイク」であることを説明するといいかも? 順序を立てるのが大事そうかな? >書き置き 確かにちょっと気になりますね。 筆跡を収集するのであれば、何か偽の署名書類とか作ってみます? 「忘れてましたが、冒険者が事件の解決をするためには、署名が必要なんですよー(テヘペロ」 みたいな感じで、署名をでっちあげて名前を書いてもらうとか。 >住民達へのフォロー 外部の草人狩りをでっちあげ、ですか。なるほど。 脅されてやった、と言えば確かに悔恨も残りにくいかもしれませんね。 罪を償って貰う為、脅した犯人を捜すため、そして脅した犯人に殺されないため、と言って ギルドで身柄を預かるって感じにすれば納得しそうですね。 僕はその方向でよいのではないかと思います。
情報屋のルチルだ。よろしく。 草人狩りを当てるだけでなく論拠を提示した上で草人狩りと接触し、他の住人に向けてアフターケアも行う必要があると。 やれやれ、中々やる事が多い依頼だ。 >草人狩り アタイも双子が怪しいと睨んでいる。 入れ替わりによる一人二役ができる容貌だし、最も共謀してアリバイを作りやすい立ち位置にある。 考え込んだ理由が「直接会ってなかったから思いだせなかった」だとしたら筋が通るだろうね。 それに「左耳にあるイヤリング」の描写が気になる。 そういうアクセサリーでないなら両耳に揃ってないのは違和感があるね。 >信用 メモなどでこっそり「草人=クリーパー」である事を知っていると伝える方向でいいと思うよ。 別の草人狩りと会った時の話だが…草人狩りは草人の正体を知っているからこそ彼らを排除しなければと考えているのだろうし、何も知らない住民とは違うと伝えるのに十分な論拠になると思う。 >書き置き 夢の女神を疑わせるために残したと思うにしても、迂遠な所はある。 草人狩りが残したのなら本人に直接聞けばわかるだろうが…。 筆跡を調べるために使用するのはいいと思う。 >住民へのフォロー 外部の草人狩りに脅されてやった事にする、で異論はない。 草人がクリーパーだと認めてもらおうにしてもパニックは必須だろうし、それが角が立ちにくいだろう。
>左耳にあるイヤリング 右の方をどこかで落としたとか色々可能性はありそうですね。 エスさんが付けているみたいですが、アールさんは描写がないしつけてないっぽい? そう考えると、例えばアールさんがエスさんになりきる時にイヤリングをつけて、 その過程で不慣れなために片方を落としたとかありえるかな。 スキルについてですが、エンパシーと残留思念感応を持っていくつもりです。 ただ、もしこの二つでどちらか一方を持っていく予定の方がいたら、 僕はスキルを切り替えて、幽体離脱の方を持っていくつもりです。 エンパシーは、筆跡で文字を書いてもらう時にさりげなく体に触れて感情を読み取り さらに残留思念感応でその場所の感情を読み漁るって感じの予定です。 誰かが同じような使い方をする予定の場合、 スキルを変えて幽体離脱で忍び込みをする予定なので宜しければ言ってください。
あ……エンパシーはこっちでも準備できるし、俺も筆跡を調べる+住民と接触するつもりだったから、もしよかったらアリックくんには忍び込みをお願いしてもいいかな? 今考えてるのは ・事件を調査している ・この街のルートについて詳しくないので、ここ(接触場所)から現場までの簡単な地図を書いてほしい ・それに付随した理由を付けて『夢は終わり』と同じ文字を含む単語を書いてもらう って感じ。 接触した感じではみんな協力的な姿勢を見せてくれてるしね。 現場について言及した時に何か感情が動かないか、洞察+エンパシーで調べてみれば何かわかるかなって。 ただこれだと、筆跡以外の物的証拠はほぼ得られないからその他は皆にお任せになるかも……
>アウレーリウスさん 了解しました!ではエンパシーはお願いしますね。 僕は幽体離脱を使って双子の家に忍び込み、 さらに他に犯人が濃厚となった人物がいた場合、そちらへの侵入も考えてます。 念のため、相手が授恵者である事を想定して身を隠しながら 怪しい言動や怪しい動き、証拠品などがないかなどを調べるつもりです。
イヤリングの片側を落とした物と仮定して看破の持ち込みを考えている。 アリッグの幽体離脱とは別口で栗鼠に潜入捜査をしてもらおうとも。 どうせなら万一に備えて幽体離脱後の肉体の方を見張っておこうか? 他は聞き込みに洞察をと考えていたが、持ち込む予定の者もいるしここはフォローのために交渉か演説を用意しておこうかね。 意見があったら対応可能だ。
僕も筆跡鑑定用に看破は持ち込み予定ですね。 判断材料は多い方が信憑性増すと思うので、酒場や薬屋に双子他住民が書いた注文書など無いかも聞いてみます。 あと今回殺された草人の遺体がまだ残っているならそちらにも何か痕跡ないか超嗅覚も使って探ってみて物証に繋がりそうなものがないか調べてみますね。 その辺りで入手した情報と、他の皆さんが集めた情報とすり合わせていければ良いな、と。
>グレイハーツさん ありがとうございます! 一応、幽体離脱時に身を隠しておきますが、 見張っていただけるなら助かります! プレイングに支障をきたさない範囲で大丈夫ですので! 僕も得た情報は全て皆さんと共有するので、 お役に立てればと思います。