【花戦】酔いよ、来い来い
夜月天音
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シナリオID:2146
オープニング
快晴の午後、辺境都市群、シャルガネ居住区、食事処『まんぷく』。
「本日ははないくさ! 豊穣を祝う日です!!」
店の前に立ち、給仕の女性が声を張りあげ、
「偶然生まれた奇跡のお酒、『桜酔い』を飲んでみませんか! 桜色で匂いもほんのり桜で味は甘め、酒精が入っていないのに酔っぱらう! どうですか? しかも大樽1個分しかないという貴重なお酒です!」
通行人に向かって宣伝をしていた。
「……実はですね、店主がおかみさんとの約束をすっぽかし賭け事に興じた事でこっぴどく怒られて、やけ酒飲んで酔っ払った勢いで何か色々配合して出来上がったのがこのお酒です。おかみさんの雷は落ちるわ、賭け事に大負けするわ、前後不覚で製造法を覚えていないわ、さらにこのお酒が片付かなかったらおかみさんにどんな目に遭わされるか、店主のためにもどうか協力して貰えませんか?」
宣伝の時より少しだけ声を落とし、同情を誘うように散々な酒の出生を教えた後、
「協力して下さる方にはお礼も兼ねて料理を1品無料にしますよ!! 是非、いかがですか?」
人差し指を立て、ダメ押しとばかりに謝礼となるサービスを伝えた。
その頃店内では、
「お酒ってこんな感じなんだねぇぇ、何か気分がいい」
「普通のジュースみたいなんだけど、このおにぎり、うまっ」
「きゃはははは」
宣伝に釣られた客達がどんちゃん騒ぎをしていた。
「本日ははないくさ! 豊穣を祝う日です!!」
店の前に立ち、給仕の女性が声を張りあげ、
「偶然生まれた奇跡のお酒、『桜酔い』を飲んでみませんか! 桜色で匂いもほんのり桜で味は甘め、酒精が入っていないのに酔っぱらう! どうですか? しかも大樽1個分しかないという貴重なお酒です!」
通行人に向かって宣伝をしていた。
「……実はですね、店主がおかみさんとの約束をすっぽかし賭け事に興じた事でこっぴどく怒られて、やけ酒飲んで酔っ払った勢いで何か色々配合して出来上がったのがこのお酒です。おかみさんの雷は落ちるわ、賭け事に大負けするわ、前後不覚で製造法を覚えていないわ、さらにこのお酒が片付かなかったらおかみさんにどんな目に遭わされるか、店主のためにもどうか協力して貰えませんか?」
宣伝の時より少しだけ声を落とし、同情を誘うように散々な酒の出生を教えた後、
「協力して下さる方にはお礼も兼ねて料理を1品無料にしますよ!! 是非、いかがですか?」
人差し指を立て、ダメ押しとばかりに謝礼となるサービスを伝えた。
その頃店内では、
「お酒ってこんな感じなんだねぇぇ、何か気分がいい」
「普通のジュースみたいなんだけど、このおにぎり、うまっ」
「きゃはははは」
宣伝に釣られた客達がどんちゃん騒ぎをしていた。
解説
散々な経緯で生まれたお酒を味わい、酔っ払いの気分を味わってみて下さい。
お酒を飲む方は、料理が1品無料になります。
【食事処『まんぷく』について】
そこそこ大きい木造の店です。
シャルガネ料理を中心としたおかずやスイーツ、酒からジュースを楽しむ事が可能です。
【酒について】
見た目と匂いは桜で味は甘めです。ノンアルコールなので未成年でも問題ありません。
店主の滅茶苦茶な配合によりアルコールが無いにも関わらず、酔っぱらう事が出来ます。ちなみに二日酔いになる事はありません。
※こういう冒険者や住民や従業員と交流したいや楽しみたい料理など、希望などがありましたら、プレイングに記載をお願いします。
※公式NPCとは交流出来ません。
マスターより
オープニングを読んで頂き、ありがとうございます。
お酒を飲んで美味しい料理を食べて、豊穣を祝って下さい。
リプレイ
快晴の午後、辺境都市群、シャルガネ居住区、食事処『まんぷく』。
「とりあえずで頼んでみたが、なかなか豪華だな」
サイラスは海鮮丼を美味しく食しつつ、
(今日は賑やかだな。まあ豊穣を祝う日だから仕方は無いだろうが……質の悪い酔っ払いには手加減は無用だな)
賑やかな店内をちらりと見た。暴れたりなど周囲に迷惑を掛ける行為を発見した際は、鎖で締めたりと容赦のなさを見せるつもりのようだ。
「確か配合方法が分からないとか、超味覚と醸造知識と併せて何かしら手順とか推察できんかな?」
『桜酔い』をゆっくりと舌に酒を染み渡らせ、
「……見た目と匂いは桜色……味はほんのり甘い……宣伝通りだな」
真面目に味を分析して作り方の手掛かりを得る事が出来ればと挑む。
「……素材も酒造方法もシャルガネ地区によくある物で間違いないな……普通であれば、こんな味どころか酔っぱらう効果は出ないはずだ……となれば、外部的な要因が関係しているのか。どちらにしろ再現は現時点では無理そうだな」
材料の分析と醸造方法は見抜けたが、過程と結果が結びつかず溜息だ。
とにもかくにも、
「とりあえず、料理この動物用の料理も頼もうか。無料だからそれだけで楽しむだと損だろうからな。酒の方も最後残った物は全部引き取るのもいいか。鍛冶屋仲間にでも配って回る為にはちょうど良さそうだしな」
気分転換も兼ねて追加の注文を始めたりとのんびりと満喫する事にした。ペットの犬の大福の土産も忘れない。
随分飲まれたためか、サイラスが最後に購入した酒の量は僅かであった。
「……啓示によれば『飲んだら乗るな 乗るなら飲むな』との事ですが、この後依頼に出る予定はないですし、飲んでも大丈夫でしょう。物は試しです」
フリーダ=ブロムヴィストは予定確認後、『桜酔い』を勢いよくゴクリ。
「……美味しいですね……あとは……」
酔いと一緒に来る眠気に抗いつつ給仕を呼んで、
「……ケーキをお願い……急に眠く……」
料理を注文した後、力尽きて卓に伏した。
給仕が心配する中、
「……おやぁ? どうやらお酒の影響で此方側との繋がりが深くなり過ぎた様ですね。チャートにはありませんがガバではないのでこの世界の住民と会話してみましょう」
フリーダは目を覚ますも、雰囲気が変わり口調は音程がずれた棒読みだ。
異変に眉を顰める給仕に向かって、
「心配は無用です。これは誤差なので、気にするなっテ! それより、今日はお酒と一緒に辛い物が食べたい気分なのでケーキをつまみに変更! お酒も追加で!」
フリーダは軽やかに流して畳みかけるように注文を変更し、
「あぁ~! たまらねぇぜ!」
豪快な酒宴を満喫した。
程なくして、
「……繋がりが薄くなってきましたね。幸い酒は一通り飲み干しましたし、バレへんやろ。最後にケーキを注文してこの世界から撤収を、サラバダー!」
フリーダはいそいそとケーキを注文してから、卓に伏した。
再び目を覚ましたのは、
「……あれ? ちょっと寝てしまいましたか」
ケーキが運ばれた時であった。
「……えっと、私の顔に何か付いてます?」
フリーダの雰囲気は元に戻っており、一連の記憶が無いのか自分を訝しむ給仕に小首を傾げた。
「お魚のお料理が食べたいですが……焼き魚に煮魚……お味噌やお醤油が主体とした味付けが多そうですね」
宣伝を受けて来店したミィアは近くの席に着くなり、お品書きに目を走らせる。
「……どれも美味しそうで……迷ってしまいますね」
ミィアが注文する料理に迷っていると、
「ん?」
海鮮丼を美味しそうに食すサイラスに目が留まり、
「……美味しそうですね」
興味を持ったのか、海鮮丼を注文した。
程なくして『桜酔い』と一緒に海鮮丼が運ばれた。
「これは贅沢ですね」
一番に目がつくのは様々な魚の刺身だ。
「まずは醤油をかけて」
ミィアは醤油を回しかけてから、
「いただきます」
ご飯と一緒にパクリ。
「……ご飯は酢飯ですか。お刺身と合いますね。美味しいです」
口内に広がる海の幸のハーモニーに表情が蕩けた。
「……醤油も甘めで美味しいですね」
丁寧に味を噛み締める様に食べる。
食べながらのんびりと店内を眺めていたミィアは、
「あのお客さん、テーブルに突っ伏しているけど、大丈夫でしょうか」
卓に突っ伏しているフリーダの姿に気付き、心配そうな視線を投げた。
「どうやら大丈夫そうですね」
フリーダが目を覚ました様子に安堵してから、海鮮丼を再び食べた。
「ご馳走様でした。最後は……」
食べ終えてから『桜酔い』を手に取った。
「本当に桜色ですね。それにいい香りです」
春を感じさせる桜色と優し香りにふんわり笑顔になる。
そして、
「……甘くて美味しいですね」
ミィアはそっと飲み、口内に広がる優しい甘さにほわっと表情を緩めた。
「『桜酔い』に合う品はどれかな、塩味や菜の花等少し苦めの物も合いそうだよね」
「ボクはね、ツクネ食べたい! あと、串焼きもっ!!」
お品書きと睨めっこ中のアルバスとルルト・アーキス。
「串焼き? 辛めの酒もいるやつじゃないか!」
ルルトにツッコミを入れるアルバス。
「依頼達成のお疲れ様会なんだから、食べたい物頼もうよ!」
食べる事が大好きぶりを発揮させるルルト。
「そうだな。よし、スイーツはどれにする? わらび餅というのも美味しそうだぞ」
アルバスはノリの良さを見せた。
「わらび餅? 食べてみたいんだよ♪」
ルルトは速攻で決めた。
散々物色してから注文し、
「おつかれさまでしたー! かんぱーい!」
「お疲れ様! かんぱーい!」
『桜酔い』と料理が揃った所で、ルルトとアルバスは乾杯をした。
「ふふふー、お酒なんて飲んだ事ないから大人の仲間入りができたみたいで嬉しいな」
「普段酔わない方なのだが、これは酔えるかもしれんな」
ルルトとアルバスは、目と鼻で酒を味わってから喉に流した。
途端、
「ふわふわして気分がいいよ……あっ、冒険! どんな冒険したの!」
酔ったルルトは冒険話が大好物で人懐こさもあり隣席の冒険者達に絡み、
「アルバスもおいで、おいで」
歓迎されるとアルバスを手招きした。
「あぁ」
アルバスが加わった所で、冒険者達の話が始まった。
その度にルルトは、
「親子が無事に再会出来てよかった。再会に乾杯!」
涙を流して感動したり、
「その悪党は絶対に許せないよ。勝利に乾杯!」
悪に怒ったりと度々の乾杯や話に感情移入をする。いつも以上に感情豊かに。
時には、
「ボク達の出会いはね、ボクが住んでる村にアルバスが依頼で来てくれたからなんだ。ボク、冒険者になりたかったから、リブラネスタまで連れて行ってもらったんだ。あ、この間の決戦にも参加して頑張ったんだよ!」
ルルトが懐かしそうに語る。
「……懐かしいな」
聞き手に徹し飲み物を注ぐアルバスも回顧し、
(あの時の子が立派になったもんだ……当時からしっかりしていたからな。伸びるべくして伸びたと言えよう)
口元を優しくする。
「アルバスはいつも落ち着いてて一緒にいてすごく安心するんだ。とっても頼りになる自慢の相棒なんだよ」
ルルトは褒めて相棒の顔を綻ばせる。
「ルルトこそ……最高の相棒だよ。いるだけで場が明るくなる。笑顔は花が咲いたようで目を惹かれる。可愛らしくて心優しい。前向きで、聡明で、共にいて学ぶ事が多い。お互い距離感が合うのかな、俺にとって丁度いい。一緒にいて安らげるんだ。接していて心地いいのはそういうところなんだろうな」
見た目は素面だがアルバスも酔っており、普段思っている事が滑らかに口から出る。
「そ、そんなことないんだよ」
称賛に赤面するルルトは視線を逸らし、気恥ずかしさから『桜酔い』を一口飲んだ。
「ルルト、いつもありがとう。これからもよろしくな」
「こちらこそ、よろしくなんだよ」
アルバスをルルトは上目遣いに見つめ、はにかみの笑顔で乾杯をした。
(ルルトは可愛いな)
アルバスは照れるルルトにほっこり。
後ほど酔いが冷めると、
「俺は何を言……ああもう顔が見れない」
アルバスは恥ずかしさで赤くなる顔を覆った。
「見た目も綺麗だし、香りも味も悪くないね」
「美味しいし名の通り桜の香りがするのもいい。何よりこの甘さだと、いくらでも飲める」
ジュスト・ヴェルジーとローザリカ・L・ディオールは、仕切りのある席でゆっくりと『桜酔い』を満喫していた。
「ロゼ、飲みすぎないようにね」
ジュストは心配から注意をするが、
「心配は無用だ。シャルガネについては僕の方が詳しいんだから」
軽やかに流してローザリカはドヤ顔でお品書きを手に取り、
「春の旬は外せないから筍と山菜は外せない。菜の花のおひたしなども香りがいいし」
給仕を呼んで、ジュストが口を挟む隙を与えず次々と料理を注文した。
程なくして注文した料理が卓に揃うと、
「やっぱり頼みすぎじゃ……」
ジュストはさすがに苦言を呈さなければと思ったが、口をつぐんだ。
なぜなら、
(よく見たら、俺が好きなタイプの料理ばかり)
筍や山菜を使った物や豆腐など、淡泊で歯触り、舌ざわり、香りが良い物ばかりという自分の好みの料理だったから。
「ロゼ……」
ジュストはほろ酔いのローザリカを見た。
「どうせまた食事を疎かにしていたに違いないんだから、酒と共にガンガン箸を進めてしまえばいい!」
見ての通り元々食が細く他を優先する彼を気遣っての事だ。
「あぁ、これなら量があっても食べられる」
ジュストは、ローザリカの心遣いを噛み締めつつ箸をつけた。
瞬間、
「もしかして、寝不足もある?」
ローザリカはジュストの目元にクマを発見し卓に乗り出して、叩きのめしてでも寝かすつもりで訊ねた。
「ちゃんと寝てる」
ジュストはしれっと嘘を吐く。真実は最近夢見が悪くて寝不足なのだが。
そんな事よりも気になるのは、
「ロゼ、その、距離が近い」
至近距離に迫る可愛い顔だ。
「慎みを持てと説教する教師もいないから今こうしているんじゃないか……それに昔みたいに話せるようになったのに」
ローザリカは酔いもあってか、幼子のように拗ねて素直な気持ちをこぼす。
「た、確かにここは王国じゃないし、あまり人目につかない場所だから多少は良いとは思うし……僕だって……本当は、もっと話をしたいし、一緒にいたい」
それを聞いたジュストはほろ酔いのせいか口調や表情がいつもより緩み少しあどけなくて、顔が赤くなるのを隠せていない。ちなみに一人称も変わっている。
「ジュスト」
ローザリカは真っ直ぐにジュストを見て、最近呼べるようになった彼の名を噛み締めるように口に出した。
同時に、
(名前を呼べることがこんなに嬉しい事だとは)
心が満たされ自然とジュストの頭に手を置いた。
(今日くらい。酔いを言い訳に出来る今だけは、許されるだろうか。ジュストはこれから多くのことを背負っていく。その重責を、努力を。誰よりも知っていて甘やかしてやれるのが僕ならいい)
ヴェルジー伯爵家次期当主と指名された愛しい人の未来を想像しながら。
「嫌ならやめる」
ローザリカは予防線を張ってから、優しく撫でた。
「嫌じゃないけど。子ども扱いされてるみたいで悔しい」
撫でられているジュストは拗ねたような顔で視線を逸らした。いつもの気だるげが今日ばかりは可愛い。
(かっこつかないのは全部酔いのせい……)
ジュストはされるがまま構い倒された。
「ちょっと舐めたことあるけどうまくないんだよなー、しかも人によっては性格変わるし」
御堂・秀哉は酒に対する辟易を見せるが、
「……私もあまり飲んだことはありません……」
恋人のシャルロッテ・レッフラーに格好良い所を見せようと、
「まー物は試しだ、やってみるか」
景気よく『桜酔い』を飲み、
「ははは、これ、案外うめぇなぁ」
見事な笑い上戸に変貌し、
「なぁ、もっとないの? 続きとか!」
隣席の冒険者の話に乱入した。
「他のお客さんの邪魔をしちゃ……って、秀哉!?」
秀哉はおろおろと自分を止めようとするシャルロッテの肩を抱き寄せ、
「どうだ、俺の嫁は綺麗で可愛くて気立てがいいんだぞ!」
全力の惚気話を始めた。
「しかも見ろ、この綺麗な金髪! 俺んところの村に金髪っていなくてさ、凄くない?」
シャルロッテの何もかもが秀哉にとって愛しくてたまらないようだ。
「え……あの……」
シャルロッテは、いつもはされない大胆な行動と惚気話に赤面直下。
聞き手の冒険者達の反応は羨望、呆れ、微笑ましさと様々だ。
「でさぁ、同棲してるんだけど……いやー、もうほんとね。料理がね、うまいのよ。解る? この歳でだよ? それにねぇもうね、健気なのよ聞いて! この前チョコ作ってくれたんだけど結構前から準備しててくれたみたいでさぁ。もうね、感動だよね!」
秀哉が饒舌に語る中、
「……」
シャルロッテは気恥ずかしそうに身を小さくして、『桜酔い』を遠慮がちに舐めるように飲んでいた。
「それにさー、スタイルもよくてさぁ、やっぱりこう……おう何見てんだよ」
冒険者がシャルロッテを見ると、すかさず秀哉が鋭い眼光で牽制。なかなかに面倒だ。
「あっ、秀哉くん、駄目ですよ!」
シャルロッテが慌てて間に入るが、
「ほら、優しくて可愛いだろ!!」
それすらも惚気話に組み込んでしまう。
「ちなみに一番かわいいのは寝起きの時なんだけど、はーー俺もうね、世界で一番恵まれてるかもしんない」
秀哉は件の姿を想像してか至福の顔だ。
惚気話がひと段落した所で、
「わ、わりぃ……はしゃぎ過ぎた」
酔いが冷めた秀哉は、凄い気まずそうにシャルロッテに謝った。
シャルロッテから返って来たのは、
「秀くん。そこに座ってください」
お叱りの言葉。よく見ると顔が赤い。酔いが一気に攻めて来たようだ。
「お、おう」
秀哉は勢いよく背筋を伸ばして座った。
「私、怒ってるのです。怒ってるのですよ? 聞いてますか。秀くんは今日ずっと他の人と話してて、私、ぷんぷんです。私の事ほっておきすぎです、すねちゃいますよ、すねちゃいますからね?」
呂律が回らぬシャルロッテは拗ねてしまい、
「それに言っておきますけど、私の方が秀くんのこと、うーーーーーーんと好きなんですからね、そこは譲りません。ぜーーーーったい、譲らないんですからねっ」
先程の惚気話に子供みたいに張り合った後、
「だから、許してあげません! 許してあげないんですから、今日、私をほったらかしにした時間だけぎゅっとし続けてくれなきゃ許してあげませんからね」
怖くない怒った顔で恋人に迫った。
「ロッテ!」
秀哉はすぐに彼女を抱き締めてキスをした。
シャルロッテの幸せな酔いの記憶は翌日には消えているだろう。
皆のおかげで大樽1個分の『桜酔い』は一掃され、店主はおかみさんに雷を落とされずに済んだそうだ。
「とりあえずで頼んでみたが、なかなか豪華だな」
サイラスは海鮮丼を美味しく食しつつ、
(今日は賑やかだな。まあ豊穣を祝う日だから仕方は無いだろうが……質の悪い酔っ払いには手加減は無用だな)
賑やかな店内をちらりと見た。暴れたりなど周囲に迷惑を掛ける行為を発見した際は、鎖で締めたりと容赦のなさを見せるつもりのようだ。
「確か配合方法が分からないとか、超味覚と醸造知識と併せて何かしら手順とか推察できんかな?」
『桜酔い』をゆっくりと舌に酒を染み渡らせ、
「……見た目と匂いは桜色……味はほんのり甘い……宣伝通りだな」
真面目に味を分析して作り方の手掛かりを得る事が出来ればと挑む。
「……素材も酒造方法もシャルガネ地区によくある物で間違いないな……普通であれば、こんな味どころか酔っぱらう効果は出ないはずだ……となれば、外部的な要因が関係しているのか。どちらにしろ再現は現時点では無理そうだな」
材料の分析と醸造方法は見抜けたが、過程と結果が結びつかず溜息だ。
とにもかくにも、
「とりあえず、料理この動物用の料理も頼もうか。無料だからそれだけで楽しむだと損だろうからな。酒の方も最後残った物は全部引き取るのもいいか。鍛冶屋仲間にでも配って回る為にはちょうど良さそうだしな」
気分転換も兼ねて追加の注文を始めたりとのんびりと満喫する事にした。ペットの犬の大福の土産も忘れない。
随分飲まれたためか、サイラスが最後に購入した酒の量は僅かであった。
「……啓示によれば『飲んだら乗るな 乗るなら飲むな』との事ですが、この後依頼に出る予定はないですし、飲んでも大丈夫でしょう。物は試しです」
フリーダ=ブロムヴィストは予定確認後、『桜酔い』を勢いよくゴクリ。
「……美味しいですね……あとは……」
酔いと一緒に来る眠気に抗いつつ給仕を呼んで、
「……ケーキをお願い……急に眠く……」
料理を注文した後、力尽きて卓に伏した。
給仕が心配する中、
「……おやぁ? どうやらお酒の影響で此方側との繋がりが深くなり過ぎた様ですね。チャートにはありませんがガバではないのでこの世界の住民と会話してみましょう」
フリーダは目を覚ますも、雰囲気が変わり口調は音程がずれた棒読みだ。
異変に眉を顰める給仕に向かって、
「心配は無用です。これは誤差なので、気にするなっテ! それより、今日はお酒と一緒に辛い物が食べたい気分なのでケーキをつまみに変更! お酒も追加で!」
フリーダは軽やかに流して畳みかけるように注文を変更し、
「あぁ~! たまらねぇぜ!」
豪快な酒宴を満喫した。
程なくして、
「……繋がりが薄くなってきましたね。幸い酒は一通り飲み干しましたし、バレへんやろ。最後にケーキを注文してこの世界から撤収を、サラバダー!」
フリーダはいそいそとケーキを注文してから、卓に伏した。
再び目を覚ましたのは、
「……あれ? ちょっと寝てしまいましたか」
ケーキが運ばれた時であった。
「……えっと、私の顔に何か付いてます?」
フリーダの雰囲気は元に戻っており、一連の記憶が無いのか自分を訝しむ給仕に小首を傾げた。
「お魚のお料理が食べたいですが……焼き魚に煮魚……お味噌やお醤油が主体とした味付けが多そうですね」
宣伝を受けて来店したミィアは近くの席に着くなり、お品書きに目を走らせる。
「……どれも美味しそうで……迷ってしまいますね」
ミィアが注文する料理に迷っていると、
「ん?」
海鮮丼を美味しそうに食すサイラスに目が留まり、
「……美味しそうですね」
興味を持ったのか、海鮮丼を注文した。
程なくして『桜酔い』と一緒に海鮮丼が運ばれた。
「これは贅沢ですね」
一番に目がつくのは様々な魚の刺身だ。
「まずは醤油をかけて」
ミィアは醤油を回しかけてから、
「いただきます」
ご飯と一緒にパクリ。
「……ご飯は酢飯ですか。お刺身と合いますね。美味しいです」
口内に広がる海の幸のハーモニーに表情が蕩けた。
「……醤油も甘めで美味しいですね」
丁寧に味を噛み締める様に食べる。
食べながらのんびりと店内を眺めていたミィアは、
「あのお客さん、テーブルに突っ伏しているけど、大丈夫でしょうか」
卓に突っ伏しているフリーダの姿に気付き、心配そうな視線を投げた。
「どうやら大丈夫そうですね」
フリーダが目を覚ました様子に安堵してから、海鮮丼を再び食べた。
「ご馳走様でした。最後は……」
食べ終えてから『桜酔い』を手に取った。
「本当に桜色ですね。それにいい香りです」
春を感じさせる桜色と優し香りにふんわり笑顔になる。
そして、
「……甘くて美味しいですね」
ミィアはそっと飲み、口内に広がる優しい甘さにほわっと表情を緩めた。
「『桜酔い』に合う品はどれかな、塩味や菜の花等少し苦めの物も合いそうだよね」
「ボクはね、ツクネ食べたい! あと、串焼きもっ!!」
お品書きと睨めっこ中のアルバスとルルト・アーキス。
「串焼き? 辛めの酒もいるやつじゃないか!」
ルルトにツッコミを入れるアルバス。
「依頼達成のお疲れ様会なんだから、食べたい物頼もうよ!」
食べる事が大好きぶりを発揮させるルルト。
「そうだな。よし、スイーツはどれにする? わらび餅というのも美味しそうだぞ」
アルバスはノリの良さを見せた。
「わらび餅? 食べてみたいんだよ♪」
ルルトは速攻で決めた。
散々物色してから注文し、
「おつかれさまでしたー! かんぱーい!」
「お疲れ様! かんぱーい!」
『桜酔い』と料理が揃った所で、ルルトとアルバスは乾杯をした。
「ふふふー、お酒なんて飲んだ事ないから大人の仲間入りができたみたいで嬉しいな」
「普段酔わない方なのだが、これは酔えるかもしれんな」
ルルトとアルバスは、目と鼻で酒を味わってから喉に流した。
途端、
「ふわふわして気分がいいよ……あっ、冒険! どんな冒険したの!」
酔ったルルトは冒険話が大好物で人懐こさもあり隣席の冒険者達に絡み、
「アルバスもおいで、おいで」
歓迎されるとアルバスを手招きした。
「あぁ」
アルバスが加わった所で、冒険者達の話が始まった。
その度にルルトは、
「親子が無事に再会出来てよかった。再会に乾杯!」
涙を流して感動したり、
「その悪党は絶対に許せないよ。勝利に乾杯!」
悪に怒ったりと度々の乾杯や話に感情移入をする。いつも以上に感情豊かに。
時には、
「ボク達の出会いはね、ボクが住んでる村にアルバスが依頼で来てくれたからなんだ。ボク、冒険者になりたかったから、リブラネスタまで連れて行ってもらったんだ。あ、この間の決戦にも参加して頑張ったんだよ!」
ルルトが懐かしそうに語る。
「……懐かしいな」
聞き手に徹し飲み物を注ぐアルバスも回顧し、
(あの時の子が立派になったもんだ……当時からしっかりしていたからな。伸びるべくして伸びたと言えよう)
口元を優しくする。
「アルバスはいつも落ち着いてて一緒にいてすごく安心するんだ。とっても頼りになる自慢の相棒なんだよ」
ルルトは褒めて相棒の顔を綻ばせる。
「ルルトこそ……最高の相棒だよ。いるだけで場が明るくなる。笑顔は花が咲いたようで目を惹かれる。可愛らしくて心優しい。前向きで、聡明で、共にいて学ぶ事が多い。お互い距離感が合うのかな、俺にとって丁度いい。一緒にいて安らげるんだ。接していて心地いいのはそういうところなんだろうな」
見た目は素面だがアルバスも酔っており、普段思っている事が滑らかに口から出る。
「そ、そんなことないんだよ」
称賛に赤面するルルトは視線を逸らし、気恥ずかしさから『桜酔い』を一口飲んだ。
「ルルト、いつもありがとう。これからもよろしくな」
「こちらこそ、よろしくなんだよ」
アルバスをルルトは上目遣いに見つめ、はにかみの笑顔で乾杯をした。
(ルルトは可愛いな)
アルバスは照れるルルトにほっこり。
後ほど酔いが冷めると、
「俺は何を言……ああもう顔が見れない」
アルバスは恥ずかしさで赤くなる顔を覆った。
「見た目も綺麗だし、香りも味も悪くないね」
「美味しいし名の通り桜の香りがするのもいい。何よりこの甘さだと、いくらでも飲める」
ジュスト・ヴェルジーとローザリカ・L・ディオールは、仕切りのある席でゆっくりと『桜酔い』を満喫していた。
「ロゼ、飲みすぎないようにね」
ジュストは心配から注意をするが、
「心配は無用だ。シャルガネについては僕の方が詳しいんだから」
軽やかに流してローザリカはドヤ顔でお品書きを手に取り、
「春の旬は外せないから筍と山菜は外せない。菜の花のおひたしなども香りがいいし」
給仕を呼んで、ジュストが口を挟む隙を与えず次々と料理を注文した。
程なくして注文した料理が卓に揃うと、
「やっぱり頼みすぎじゃ……」
ジュストはさすがに苦言を呈さなければと思ったが、口をつぐんだ。
なぜなら、
(よく見たら、俺が好きなタイプの料理ばかり)
筍や山菜を使った物や豆腐など、淡泊で歯触り、舌ざわり、香りが良い物ばかりという自分の好みの料理だったから。
「ロゼ……」
ジュストはほろ酔いのローザリカを見た。
「どうせまた食事を疎かにしていたに違いないんだから、酒と共にガンガン箸を進めてしまえばいい!」
見ての通り元々食が細く他を優先する彼を気遣っての事だ。
「あぁ、これなら量があっても食べられる」
ジュストは、ローザリカの心遣いを噛み締めつつ箸をつけた。
瞬間、
「もしかして、寝不足もある?」
ローザリカはジュストの目元にクマを発見し卓に乗り出して、叩きのめしてでも寝かすつもりで訊ねた。
「ちゃんと寝てる」
ジュストはしれっと嘘を吐く。真実は最近夢見が悪くて寝不足なのだが。
そんな事よりも気になるのは、
「ロゼ、その、距離が近い」
至近距離に迫る可愛い顔だ。
「慎みを持てと説教する教師もいないから今こうしているんじゃないか……それに昔みたいに話せるようになったのに」
ローザリカは酔いもあってか、幼子のように拗ねて素直な気持ちをこぼす。
「た、確かにここは王国じゃないし、あまり人目につかない場所だから多少は良いとは思うし……僕だって……本当は、もっと話をしたいし、一緒にいたい」
それを聞いたジュストはほろ酔いのせいか口調や表情がいつもより緩み少しあどけなくて、顔が赤くなるのを隠せていない。ちなみに一人称も変わっている。
「ジュスト」
ローザリカは真っ直ぐにジュストを見て、最近呼べるようになった彼の名を噛み締めるように口に出した。
同時に、
(名前を呼べることがこんなに嬉しい事だとは)
心が満たされ自然とジュストの頭に手を置いた。
(今日くらい。酔いを言い訳に出来る今だけは、許されるだろうか。ジュストはこれから多くのことを背負っていく。その重責を、努力を。誰よりも知っていて甘やかしてやれるのが僕ならいい)
ヴェルジー伯爵家次期当主と指名された愛しい人の未来を想像しながら。
「嫌ならやめる」
ローザリカは予防線を張ってから、優しく撫でた。
「嫌じゃないけど。子ども扱いされてるみたいで悔しい」
撫でられているジュストは拗ねたような顔で視線を逸らした。いつもの気だるげが今日ばかりは可愛い。
(かっこつかないのは全部酔いのせい……)
ジュストはされるがまま構い倒された。
「ちょっと舐めたことあるけどうまくないんだよなー、しかも人によっては性格変わるし」
御堂・秀哉は酒に対する辟易を見せるが、
「……私もあまり飲んだことはありません……」
恋人のシャルロッテ・レッフラーに格好良い所を見せようと、
「まー物は試しだ、やってみるか」
景気よく『桜酔い』を飲み、
「ははは、これ、案外うめぇなぁ」
見事な笑い上戸に変貌し、
「なぁ、もっとないの? 続きとか!」
隣席の冒険者の話に乱入した。
「他のお客さんの邪魔をしちゃ……って、秀哉!?」
秀哉はおろおろと自分を止めようとするシャルロッテの肩を抱き寄せ、
「どうだ、俺の嫁は綺麗で可愛くて気立てがいいんだぞ!」
全力の惚気話を始めた。
「しかも見ろ、この綺麗な金髪! 俺んところの村に金髪っていなくてさ、凄くない?」
シャルロッテの何もかもが秀哉にとって愛しくてたまらないようだ。
「え……あの……」
シャルロッテは、いつもはされない大胆な行動と惚気話に赤面直下。
聞き手の冒険者達の反応は羨望、呆れ、微笑ましさと様々だ。
「でさぁ、同棲してるんだけど……いやー、もうほんとね。料理がね、うまいのよ。解る? この歳でだよ? それにねぇもうね、健気なのよ聞いて! この前チョコ作ってくれたんだけど結構前から準備しててくれたみたいでさぁ。もうね、感動だよね!」
秀哉が饒舌に語る中、
「……」
シャルロッテは気恥ずかしそうに身を小さくして、『桜酔い』を遠慮がちに舐めるように飲んでいた。
「それにさー、スタイルもよくてさぁ、やっぱりこう……おう何見てんだよ」
冒険者がシャルロッテを見ると、すかさず秀哉が鋭い眼光で牽制。なかなかに面倒だ。
「あっ、秀哉くん、駄目ですよ!」
シャルロッテが慌てて間に入るが、
「ほら、優しくて可愛いだろ!!」
それすらも惚気話に組み込んでしまう。
「ちなみに一番かわいいのは寝起きの時なんだけど、はーー俺もうね、世界で一番恵まれてるかもしんない」
秀哉は件の姿を想像してか至福の顔だ。
惚気話がひと段落した所で、
「わ、わりぃ……はしゃぎ過ぎた」
酔いが冷めた秀哉は、凄い気まずそうにシャルロッテに謝った。
シャルロッテから返って来たのは、
「秀くん。そこに座ってください」
お叱りの言葉。よく見ると顔が赤い。酔いが一気に攻めて来たようだ。
「お、おう」
秀哉は勢いよく背筋を伸ばして座った。
「私、怒ってるのです。怒ってるのですよ? 聞いてますか。秀くんは今日ずっと他の人と話してて、私、ぷんぷんです。私の事ほっておきすぎです、すねちゃいますよ、すねちゃいますからね?」
呂律が回らぬシャルロッテは拗ねてしまい、
「それに言っておきますけど、私の方が秀くんのこと、うーーーーーーんと好きなんですからね、そこは譲りません。ぜーーーーったい、譲らないんですからねっ」
先程の惚気話に子供みたいに張り合った後、
「だから、許してあげません! 許してあげないんですから、今日、私をほったらかしにした時間だけぎゅっとし続けてくれなきゃ許してあげませんからね」
怖くない怒った顔で恋人に迫った。
「ロッテ!」
秀哉はすぐに彼女を抱き締めてキスをした。
シャルロッテの幸せな酔いの記憶は翌日には消えているだろう。
皆のおかげで大樽1個分の『桜酔い』は一掃され、店主はおかみさんに雷を落とされずに済んだそうだ。
マスターコメント
参加して頂き大変ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
店主の身の安全のために酒を飲んだり料理を食べたりと豊穣の日を祝って頂き、ありがとうございました。
僅かでも楽しんで頂ければ、幸いです。
ショートシナリオ普通 報酬:標準9 / 4〜10人
2022年05月23日 03時12分49秒 公開
大成功
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